両肩がやや湾曲し、肩装甲の長さが左右非対称の鎧。スリットの入った仮面の側頭部には、突き刺したバナナの様な角が生えている。
戒斗が変身したライダー──仮面ライダーバロンは、手を前に出す。すると、その手に皮を剥かれたバナナを模した槍──バナスピアーが握られた。
ゲイツは、バロンの姿を見て仮面の下で一瞬だけだが顔を顰めた。自分をここに送ったアナザーライダーを思い出したからである。
すぐに気を取り直し、ゲイツはジカンザックスを召喚する。
『ジカンザックス! Oh! No!』
斧モードのジカンザックスを握り締め、群れて襲い掛かってくるインベスへ切り込んでいく。
「いくら群れても無駄だ。意志無きお前たちに、本当の強さを見せてやる」
群れて行動するインベスたちを鼻で笑い、バロンもまたバナスピアーを構えて突進する。
ゲイツは、接近と同時に目の前インベスを上から下に掛けて斬り、そのインベスが後退するタイミングを狙って蹴り飛ばす。蹴飛ばされたインベスは、周囲のインベスたちを巻き込んで転倒。
『You! Me!』
すかさず弓モードにし、前方のインベスたちが倒れたことで遮蔽物が無くなった奥のインベスたちを光弾で撃ち貫き、爆散させる。
バロンは四方をインベスに囲まれていたが、背後から襲い掛かってきたインベスに即座に反応、体勢を反転させると同時にそのインベスの額を穂先で貫く。
その隙を狙って別のインベスが爪を振り翳すが、相手の動きを予測していたバロンは、振り向くことなく後方へ蹴りを放ち、そのインベスの胴体を蹴り抜く。
相手の強さに本能的危機感を覚えたのか、他のインベスたちが襲うのを躊躇するのを見て、バロンはベルトのカッティングブレードを一回倒す。
『カモン! バナナスカッシュ!』
ベルト中央に填め込まれたバナナの錠前──バナナロックシードからバナスピアーにエネルギーが供給される。
充填された力で輝くバナスピアーをインベスに突き刺す。すると、インベスの胴体を貫くバナナ状のエネルギーが発生。バロンはそのまま二体、三体とインベスの胴体をバナスピアーで貫いた。
三体のインベスたちの体に残るバナナ状のエネルギー。やがて、そこから流し込まれる力の負荷に耐え切れなくなりインベスたちは爆散する。
『タイムバースト!』
「むっ?」
目の前に突如数体のインベスが現れたので、バロンはバナスピアーを構える。が、よくよく見ればそのインベスに実体は無く、空間に投影されたものであった。
その直後にゲイツが跳躍する。空中で静止しキックの構えをとると、顔に向けて『らいだー』、突き出し右足底に向けて『きっく』の文字が無数に並び始める。
ゲイツを導く様に並ぶ文字列。その行き付く先にはゲイツを見上げるインベス。
「はあっ!」
並ぶ文字列をポインターの様にし、顔と足裏でその文字を受けながら空中を疾走する。
ゲイツが迫ってくるのを見て、インベスは背を向けて逃げようとするが、判断したときには既に遅く、ゲイツのキックがインベスへと炸裂する。
背中に強烈な蹴りを受けてよろめきながら移動する。足がもつれ真っ直ぐ歩くことが出来ず、ふらつきながらインベスが向かう先にはバロンの前に立つインベスの幻影。
インベスとインベスの幻影が、寸前違わずに重なり合ったとき、インベスの肉体は打ち込まれた破壊の力に耐え切れず爆発した。
着地したゲイツは、振り返ってバロンを見る。
「お前も仮面ライダーだったとはな……」
「バロンだ。覚えておけ」
すると、バロンは二つのライドウォッチを取り出し、それをゲイツに見せる。
「ライドウォッチ!」
「これはお前から渡されたものだったな」
バロンは手の中にあるライドウォッチを片手で玩ぶ。
「これが欲しいか?」
「……」
「欲しいなら、俺に勝って奪え。何かを得るには、それに相応しい強さを見せることだ。尤も、今の迷いがあるお前に俺が負けることなど無いがな」
「見透かした様なことを……! 俺は迷ってなどいない!」
「なら証明してみせろ」
上からものを言うバロンに、ゲイツも段々と苛立ち、声に熱が入り始める。
ゲイツが弓モードのジカンザックスがバロンに狙いを定める。
バロンもまた、バナスピアーを構えた。
歪んだ景色が広がるヘルヘイムの森の中で、それとは別に一触即発の空気が彼らの周囲をより歪ませている様に錯覚させる。
張り詰めた空気の中で、ゲイツはジカンザックスの引き金を引く。
引き絞られる音。それに反応しバロンの鎧が擦れ合う音。沈黙する両者の中では、よく聞こえる。
限界まで引き絞った引き金を離す。ジカンザックスから撃たれる光弾。バロンもまた横に移動しながら構えていたバナスピアーを投擲する。
狙いがずれた光弾はそのまま何処かへ──消えるのではなく、頭部横を通り抜けてバロンを背後から襲おうとしていたインベスへ着弾。と同時にゲイツの背後からも悲鳴が上がる。
ゲイツの後ろには、バナスピアーで胴体を貫かれたインベスが、爪を振り上げた体勢のまま立っていた
二人は、武器を構えるときからインベスたちの存在に気付いていた。互いにいい感情を持っていないが、それでも倒すべき敵を見誤ることはしない。
「どうやら気付いていたみたいだな」
「当たり前だ」
「ふん。数でダメなら背後からの不意打ちか。弱い奴や卑怯者の考えそうな手だ」
奇襲に失敗したインベスたちの悲鳴を聞きつけ、わらわらと他のインベスたちが集まってくる。
「おい」
無手となったバロンに、投げ放ったバナスピアーを渡そうとするが、バロンの手に握られた物を見てそれを止める。
「俺の力は一つでは無い」
「そうらしいな」
バロンの手にある新たなロックシード──赤い楕円形の果実のマークがある──のを見て、ゲイツも腕のホルダーからライドウォッチを取り外す。
『ロック・オフ!』
バロンはドライバーからバナナロックシードを取り外す。バロンのバナナの鎧は消え、鎧下のチェーンメイル状のスーツが露わになる。
『マンゴー!』
ロックシードの錠を外して鳴る音声。それをドライバーにセットする。
『ロック・オン!』
カッティングブレードを倒し、ロックシードを開錠させる。
『カモン! マンゴーアームズ!』
バロンが換装している間に、ゲイツもライドウォッチの力を起動させる。
『ウィザード!』
ウィザードライドウォッチをジクウドライバーに填め込み、それに宿る力を呼び起こす。
『アーマーターイム!』
バロンの頭上に光が走り、何も無い空間から巨大なマンゴーが。ゲイツの頭上にも赤い光で描かれた魔法陣が浮き上がる。
『ファイトオブハーンマー!』
『プリーズ! ウィザード!』
巨大なマンゴーは変形しながらバロンに頭から被さり鎧と化し、ゲイツも現れた魔法陣を潜ると、その身にウィザードアーマーを纏う。
頭部に下向きに生えた角。黄と銀のバナナアームズとは違い、赤を主とした鎧にマントを装備。両肩、腹部にブロック状の黄色の装甲が付いており、バナナアームズよりも防御に厚みが増していた。
ゲイツは両肩に指輪を模した肩装甲。下半身にはローブ。そして背には実体化した魔法陣が二つに分かれ、帯状になって付けられている。
バロンはその手に花切りにされたマンゴーを思わせるメイス──マンゴパニッシャーを握り、ゲイツの顔は装着が完了されたことを告げる様に『うぃざーど』の文字が填め込まれる。
バロンはマンゴパニッシャーを引きずりながら、インベスたちとの距離を詰める。余程の重量らしく、マンゴパニッシャーが引きずられた後は深く地面が抉れていた。
重圧を放つバロンに恐怖を覚えたのか、パニックを起こした様に手を滅茶苦茶に動かしながらインベスが迫る。
「ふん!」
それを迎撃するバロン。インベスの腹にマンゴパニッシャーを叩き込み、インベスの体をくの字に曲げる。一撃で悶絶するインベス。そこに容赦の無い追撃の振り下ろしが放たれ、インベスの頭を砕き、爆散させる。
その攻撃で、インベスたちはバロンの強さに呑まれてしまう。
一方で、ゲイツの方もインベスたちを相手に華麗に立ち回っていた。
周囲をインベスに囲まれていようと、四方から来る攻撃を、ローブを翻しながら避けてジカンザックスの斬撃をカウンターで叩き込んだかと思えば、舞う様に跳び上がり、インベスの顔面を蹴り飛ばす。
数で上回っている筈のインベスたちも簡単に数が減らされていくことに怖じ気付いたのか、段々と攻撃の手が緩み始めてくる。
そこに止めの一撃が打ち込まれる。
バロンはカッティングブレードを二回倒し、ゲイツはウィザードライドウォッチをジカンザックスに填める。
『カモン!』
『フィニッシュタァァイム!』
『マンゴーオーレ!』
『ウィザード! ザックリカッティング!』
マンゴパニッシャーを振り回し始めるバロン。その先端にエネルギーが収束されていき、振り回す度に角切り状のエネルギーが振り回した軌跡に残る。
ゲイツは、ウィザードライドウォッチを填めたジカンザックスをインベスたちに投げ放つ。
ジカンザックスは、回転しながらインベスの一体を裂くと、ゲイツの腕の動きに合わせて空中で軌道を変え、折り返して二体続けて斬り裂き、最後の一体はゲイツが腕を振り下ろす動作に連動し、脳天から真っ二つにされた。
マンゴパニッシャーにエネルギーが十分蓄積されると、バロンは固まっているインベスたち目掛けて、マンゴパニッシャーを振り抜く。蓄積された力はマンゴー型のエネルギーとなって発射され、インベスたちに直撃。角切りされたマンゴーの様なエネルギーと共に散った。
大勢居たインベスたちは、二人のライダーによって一掃される。
だが、まだ二人の戦いは終わっていない。ライドウォッチを賭けた戦いが残っている。
仮面越しに睨み合う両者。
しかし、バロンの体にノイズが走り、姿がぶれ始める。そのぶれは大きくなっていき、最高にまで達すると、バロンが装着していたドライバーがロックシードごと消えてしまい、変身が強制的に解除され、バロンから戒斗へと戻る。
アナザーライダーを倒したことで正されていた時間が、アナザーライダー復活と共に元に戻ったのだ。
戒斗は、変身した姿のゲイツを訝しむ様に見る。
「何かあったのか? 何故その姿になっている?」
歪められた時間のせいで、戒斗から先程までライダーとして戦った記憶は消えていた。
ゲイツも、今の戒斗からライドウォッチを奪う訳にもいかず、舌打ちをしながら変身を解除するのであった。
◇
アナザーバロンとの戦いに参戦してきたのは、もう一人のジオウであった。
突然現れたジオウに周囲は戸惑うも、ソウゴ自身はあっさりとそれを流してしまい二人は共闘する。
息の合ったコンビネーションでアナザーバロンと戦うも、倒す前になって急にもう一人のジオウが倒すことを止めてしまう。
結果、アナザーバロンに逃げられてしまった。
変身を解くジオウともう一人のジオウ。もう一人のジオウもまたソウゴであった。
彼は、時間を超えてやってきた三日後の未来から来たソウゴであったのだ。
三日後のソウゴが過去に来た理由。それは、ゲイツをヘルヘイムの森から戻ってくる為の手助けであった。
未来のソウゴは、アナザーバロンを倒すことでゲイツを助けようとしたが、謎の空間で会った青年の言葉で考えを変え、ゲイツを信じ、彼が自力で戻れる為の手助けをする選択を選んだ。その為に過去に来たのである。
まずアナザーバロンを倒す為に、仮面ライダー鎧武のライドウォッチがある場所を未来のソウゴから教えられ、その場所に向かう。
指示された場所にはフルーツパーラーの店があり、ソウゴとツクヨミはそこで一人の青年と会った。
ソウゴたちは、そこでその青年がライドウォッチを付けていることに気付き、彼がライドウォッチを渡してくれる存在だと気付く。
しかし、そこに強襲してくるアナザーバロン。その戦いの最中に青年から二つのライドウォッチを手渡される。
早速新たなライドウォッチの力を試そうするが、タイムジャッカーのスウォルツが現れ、鎧武ライドウォッチを奪ってヘルヘイムへ捨ててしまう。
ソウゴとゲイツとの関係で歴史が変わることを問題視したウォズが、タイムジャッカーに情報を洩らしたことでの妨害である。
しかし、これもソウゴたちの計画のうちであった。鎧武ライドウォッチがヘルヘイムに捨てられると同時に、手に入れたもう一つのライドウォッチ──コダマスイカライドウォッチを小型ロボコダマスイカアームズに変形させヘルヘイムへと送っていた。
コダマスイカアームズを通じてヘルヘイムのゲイツと連絡を取るソウゴ。
「それ、持って帰ってきてくれるかな?」
コダマスイカアームズはゲイツに鎧武ライドウォッチを手渡していた。
「何で俺が!」
「俺が魔王になるのを阻止するんだろ? だから持って帰ってきて。……頼んだよ」
◇
廃工場内でアナザーバロンとジオウが戦う。
今のジオウにアナザーバロンを完全に倒す術は無く、一方的に追い詰められる。
そのとき、空間を裂いてバイクに乗ったゲイツが現れた。
「ゲイツ!」
バイクから落車しながら着地したゲイツは、すかさず鎧武ライドウォッチをジオウに投げ渡す。
「約束は守ったぞ!」
「ありとうゲイツ! 後は俺達に──」
「生憎、こいつへの借りを黙ったまま他人に返させるつもりはない」
「え?」
『タイムマジーン!』
ゲイツがタイムマジーンを呼び出す。
「俺は2013年に跳ぶ」
「でも──」
「今の俺にはこれがある」
ゲイツの手には二つの新たなライドウォッチが握られていた。
「──分かった。気を付けてね」
「──ふん」
タイムマジーンに乗り、ゲイツは2013年に跳ぶ。
2013年では既にアナザーバロンともう一人のジオウが戦いを始めている。
タイムマジーンから降り立ったゲイツを見て、ジオウは驚く。
「ゲイツ!」
「もう一人のジオウ……まさか未来から来たのか?」
「うん。三日後ぐらいから」
あっさりと言うジオウに、ゲイツは頭痛でも堪えるかの様に額に指を当てる。下手をしたら自分が消滅するかもしれないことをやったジオウは、やはりゲイツにとっては把握しきれない相手であった。
「ゲイツは何でここに?」
「こいつに借りを返しにきただけだ」
「分かった。一緒に戦おう!」
ジオウは鎧武ライドウォッチを取り出し、ゲイツも新たなライドウォッチ──バロンライドウォッチを出す。
ゲイツはバロンライドウォッチを構えながら、これを手に入れたときのことを思い返す。
ヘルヘイム内に出来た空間の罅。それを壊すことが唯一帰還する方法であった。
通常の跳躍では届かず、壊す手段はバイクライドウォッチを使うこと。
だが、失敗すれば下に広がる先の見えない奈落へ落ちていくこととなる。
生か死の運命。二つの選択。
ゲイツは選んだのは──
「運命か……そんなものは俺が変えてやる!」
──生き抜き、ジオウが魔王となる運命を変えること。
「迷いは晴れた、という訳か。おい」
戒斗がゲイツに向け、二つのライドウォッチを投げ渡す。
「それが何なのかは俺には分からない。だが、今のお前に渡すべきだと思っただけだ。行け! お前の力で運命など変えてしまえ!」
その言葉を受け、ゲイツは己の運命の岐路に向かい、そして勝った。
今、手の中にあるバロンライドウォッチは勝った証とも言ってよい。
『鎧武!』
『バロン!』
共にライドウォッチをオンにし、ジクウドライバーへセット。
同時にドライバーが回転する。
『アーマーターイム!』
二人の頭上に転送される巨大なロックシード。鎧武の顔とバロンの顔がマークされたそれが、二人の頭に被さる。
『ソイヤッ! 鎧武!』
『カモン! バロン!』
被さったロックシードは展開され、ライダーアーマーへと変形した。
ジオウは、胸の中心に鎧武の顔を模した装甲。両肩にはオレンジの形のロックシード。背中から先端にカットされたオレンジ型の刃を持つサブアームが一対ある。
ゲイツも胸の中心にバロンの顔があり、肩は左右長さの違うバナナの両端を彷彿させる装甲を纏い、その背に黄色のマントを羽織っている。
最後に『ガイム』、『ばろん』の文字が填まり、鎧武アーマー、バロンアーマーを纏う二人。
そこにウォズが現れ、いつもの継承の儀の言葉をジオウに送る。
「祝え! 全ライダーの力を受け継ぎ、時空を超え過去と未来に知ろしめす時の王者。その名も仮面ライダージオウ鎧武アーマー! また一つ、ライダーの力を継承した瞬間である」
「ゲイツにはしないの?」
「これは我が魔王の為のものなので」
「ついでにゲイツもやっちゃってよ。もしかしたら俺も使うかもしれないし」
「……我が魔王が望むなら」
一瞬だけ嫌そうな顔をしたが、素直にジオウに従い、ゲイツに継承の言葉を送る。
「祝え! 全ライダーの力を受け継ぎ、時空を超え過去と未来に知ろしめす時の王者、に愚かにも逆らう反逆者。その名も仮面ライダーゲイツバロンアーマー! また一つ、我が魔王の為に力を継承した瞬間である」
仮面の下でゲイツは顔を顰めるが、今はウォズに突っかかる時ではない。
ジオウはくし型切りのオレンジを模した二本の刀──大橙丸Zを取り出し、ゲイツも剝いたバナナを模した二本の短槍──バナスピアーGを出現させる。
「さあ! さあ! 花道でオンパレードだぁぁ!」
「何だその台詞は……」
歌舞伎の様に大見得を切るジオウに呆れた様に見る。
アナザーバロンは、そんなことなどお構い無しに、突撃槍を振り上げながら二人に駆けてきた。
振り下ろされる突撃槍をバナスピアーGで交差し受け止める。アナザーバロンの動きが止まった間に、ジオウが大橙丸Zの刃でアナザーバロンの脇腹を斬り付けた。
飛び散る火花。アナザーバロンの力が抜けた瞬間、短槍の突きがアナザーバロンの胸部を当たる。
一発だけでなく連続して繰り出される突き。そこにジオウの斬撃も混じり、アナザーバロンは大きく後退させられる。
「はあ!」
ジオウが頭上に刀を掲げると、落書きの様な歪な形のオレンジが幾つも現れ、アナザーバロン目掛けて次々と落ち、爆発を起こす。
そこにゲイツが距離を詰め、アナザーバロンの胸、腹をバナスピアーGで突く。すると突いた箇所にバナナ型のエネルギーが残る。アナザーバロンは抜こうとするが、触れることが出来ず、バナナ型のエネルギーの輝きが増した瞬間爆発する。
アナザーバロンは地面を転がっていく。
『フィニッシュタァァイム!』
『鎧武!』
ジオウが必殺の為の体勢に入る。ドライバーから発せられた力が、ジオウの両腕を通じて大橙丸Zへ流れ込む。
「細切れにしてやるぜぇぇ!」
『スカッシュ! タイムブレーク!』
物騒な台詞と共にジオウは走り出し、アナザーバロンとすれ違うタイミングで大橙丸Zを振るう。
体を輪切りにされた後、爆発するアナザーバロン。しかし、その爆炎の中から姿を変えたアナザーバロンLEAが現れる。
「もう一体のアナザーライダーだと……?」
アナザーバロンLEAのことを始めて知ったゲイツは少し驚く。
アナザーバロンLEAは巨大な弓を構え、ジオウ目掛けて光矢を放つ。
「うおっと!」
刀で弾くジオウ。二発、三発と来るがそれも弾き飛ばす。
すると、アナザーバロンLEAの前にジッパーが現れ、そこに空間の裂け目を創ると、その裂け目に向けて光矢を放つ。
ジオウの背後に同じ裂け目が現れ、撃ち込んだ光矢がそこから現れてジオウを撃つ。
「うあっ!」
背後からの攻撃に前のめりになって倒れるジオウ。
ゲイツが駆け寄ろうとするが、ゲイツの前に裂け目が現れ、そこから光矢が飛び出て来る。
咄嗟に回避するゲイツ。だが、周囲に次々と裂け目ができ、そこから光矢が飛んでくる。
回避や短槍を使って守り続けるゲイツであったが、遂に壁際まで追い込まれた。
しかし、ゲイツの姿に焦燥は無く、静か動作でゲイツライドウォッチとバロンライドウォッチのボタンを押す。
『フィニッシュタァァイム!』
『バロン!』
短槍を構え、必殺の体勢。アナザーバロンLEAはそれを鼻で笑い、再び自分の前に裂け目を生み出し、そこに光矢を撃ち込む。
それを見た瞬間、ゲイツは錐揉みする様に跳び上がる。背後の壁に現れた裂け目から出てきた光矢を避けた後に、そこに向かってバナスピアーGを投げ放つ。
裂け目はもう一つの裂け目に通じ、アナザーバロンLEAの前方にある裂け目からバナスピアーGが飛び出し、右肩に突き刺さる。
「背後からの不意打ち。確かに弱い奴や卑怯者の考えそうな手だな」
『バナナ! タイムバースト!』
解放される力。バナスピアーGから流し込まれたエネルギーは、バナナ型となってアナザーバロンLEAの体内から突き出る。
「ぐあああああ!」
思わず叫ぶアナザーバロンLEA。
相手が動けなくなったこの隙にゲイツはジカンザックスを出し、そこに戒斗から貰ったもう一つのライドウォッチを填める。
表示される顔はバロンライドウォッチと同じ。違う点と言えば、バロンライドウォッチは赤の外装だが、このライドウォッチは黄の外装であった。
「合わせろ! ジオウ!」
「うん!」
『フィニッシュタァァイム!』
『レモンエナジーアームズ!』
『鎧武!』
再び充填される力。
弓モードにしたジカンザックスがアナザーバロンLEAを狙う。
「はあっ!」
ジオウの大橙丸Zから放たれたオレンジのエネルギーがアナザーバロンLEAに当たり、オレンジ型のエネルギー内に閉じ込める。
『ギワギワシュート!』
『スカッシュ! タイムブレーク!』
ジカンザックスから放たれた光矢は、それを誘導する様に現れる輪切りレモン型のエネルギー。それを通過していく度に光矢の輝きが増していく。そして、ジオウももう一本の大橙丸Zからオレンジ色の斬撃を放つ。
二つの力がアナザーバロンLEAに直撃。爆発と共に輪切りにされたレモンとオレンジ状のエネルギーが飛び散った。
爆発が消え、残されたのは割れた二つのアナザーウォッチと変身者のアスラ。
全てが終わったのを見ると、ゲイツはタイムマジーンを呼び出す。
「ありがとね、ゲイツ」
礼を言って来るジオウ。本人ならば多分言えないだろうが、未来から来たので当人であった当人では無い。
「ジオウ。……お前が魔王になる運命は、俺が変える」
ゲイツの覚悟の決意。それを聞いて、ジオウは仮面の下で笑いながら──
「頼んだよ、ゲイツ」
◇
チームバロンを追い出されて五年。ついに今日という日がやって来た。
多くの観客と豪華なステージ。テレビ中継もされる。
あの男を倒すに相応しい、大きな舞台である。
「……来たか」
チームバロンのリーダー、戒斗が姿を見せたときその前に立ち塞がる。
「五年振りだな」
「お前か、アスラ」
アスラはチームバロンを追い出されてから必死に技術を磨き続け、更に他のダンスメンバーも集めて新たなチームを作った。
駆紋戒斗という男を完膚無きまでに叩きのめすのは、真っ向から挑み、圧倒的力を見せつけるしか無い。
故にこの五年間ひたすら力を蓄えてきた。
今日で全てに決着が付く。
「戒斗……! お前を倒し、俺が頂点に立つ!」
「いいだろう。来い。頂点を掴めるのは真の強者だけだ」
己の誇りを懸け、二人の男は火花を散らす。
アナザーバロン
身長:208.0cm
体重:114.0kg
特色/能力:亜空間への干渉/槍術
アナザーバロン・レモンエナジーアームズ
身長:208.0cm
体重:111.0kg
特色/能力:亜空間への干渉/弓術
先にどちらが見たいですか?
-
IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
-
IFゲイツ、マジェスティ