赤い光に包まれたマッハの前後に現れる二つのタイヤ。分解し、再構築しながらマッハに新たな装甲を与える。
姿は前のマッハとほぼ変わらないが、各部に追加されたものがあった。胸部は白から赤の装甲に変わり、仮面ライダードライブの様に赤と白のラインが入ったタイヤをたすき掛けにして装備。
右肩に装備しているタイヤにはメーターが浮かび、安全を示す水色のメモリと危険域を報せるメモリが表示されている。
頭頂部には赤と黒の線が施され、下顎には赤いリアウイングを逆さまにした形のガードを装着していた。
仮面ライダーデッドヒートマッハ。シフトデッドヒートとマッハドライバー炎が生み出す膨大な熱を戦闘力に変えて戦う、マッハの強化形態である。
デッドヒートマッハは、内に居る剛の怒りを表すかの様に高熱を発し続け、彼の足元は燃え、黒く焦げていた。
(ゲイツに感謝しないとな……)
溢れんばかりの怒りの中にある冷静な心が、間一髪で間に合わせてくれたゲイツへ感謝の念を抱く。
武田軍との戦いが始まる直前、ゲイツは剛にソウゴたちの許へ行く様に言った。ゲイツと共に武田軍に潜むロイミュードと戦うつもりであった剛は最初は断ったが、ゲイツの方も引かなかった。
『お前がここに来た目的は何だ? 蛮野とかいう奴とケリを付ける為の筈だ。──ここは俺に任せて、お前は行け』
剛は結局その言葉に甘え、織田軍のことをゲイツに任せて今に至る。
デッドヒートマッハは視線を動かし、完全静止しているジオウⅡとウォズの姿を見た後、足から消え掛けている英志を見て、奥歯を噛み締める。
「安心しろ。こんな奴マッハで倒して、お前の体を治してやるからな」
アナザーダークドライブの時とは違い、不安にさせない様にわざと明るい口調で英志に声を掛ける。
英志はデッドヒートマッハの言葉に安堵を覚える、と同時に不安定になる体と壊されたドライバーのせいで一緒に戦えない自分を不甲斐なく思う。
「ほう? 私を倒すと言うのか? お前が?」
「記憶力が悪くなったか? あんたは一度俺──俺たちに負けているんだぜ?」
「──ふん。お前の方こそ理解力が劣ったか? あの時とは状況がまるで違う! 未来の力と超進化体の力の二つを手にした私がもうお前に負けることはありえん!」
果てしなく傲慢に振る舞うアナザーダークドライブをデッドヒートマッハは鼻で笑う。
「相変わらず他人から奪った力や技術をさも自分の力の様に言うんだな、蛮野! 死んでも変わらないな! 馬鹿は死んでも治らないってのは本当だなっ!」
「失敗作如きが私を馬鹿とほざくかっ! 剛っ!」
「あんたは史上最低の大馬鹿野郎だろうが! 蛮野ぉぉぉ!」
怒声と共にアナザーダークドライブはデッドヒートマッハに掌を向ける。そこから完全静止の重加速を放つつもりである。だが、ジオウⅡとウォズの状態を見ているデッドヒートマッハには、アナザーダークドライブが何をしようとしているのか読んでいた。
『バースト! デッドヒート!』
マッハドライバーのスイッチを叩くと共にデッドヒートマッハは加速。アナザーダークドライブが完全静止させたのは、残像の様に残るデッドヒートマッハが発した炎。デッドヒートマッハ自身は既にアナザーダークドライブの懐に飛び込んでいた。
「ふん!」
高熱を纏った拳がアナザーダークドライブに突き出されるが、アナザーダークドライブはそれを手で払い除ける。
連続して突き出される高速の拳。どれもが高熱を帯びていたが、アナザーダークドライブの両手はそれを正確に払い、もしくは叩き落とす。
「旧式の力で私に勝てると思っているのか!」
「そいつはどうかな!」
デッドヒートマッハの何十発目の拳をアナザーダークドライブが叩き落とそうとしたとき、叩かれる直前に拳が止められ、アナザーダークドライブは手が空振る。すかさず急停止からの急加速した拳がアナザーダークドライブの腹部を突く。
「がっ!」
動きを読まれ、その後の動きに反応し切れなかったことにアナザーダークドライブは殴られる以上の衝撃を受ける。
「あんたを倒して!」
動揺しているアナザーダークドライブの顔にデッドヒートマッハのハイキックが叩き込まれる。
「何年経ったと思ってんだ!」
よろめくアナザーダークドライブの胸部に、飛び込んできたデッドヒートマッハの膝が突き刺さる。
「ぐあっ!」
「デッドヒートは何度もアップデートされた! それに俺も!」
大きく後退させられたアナザーダークドライブは、体勢を整えようとするが接近してきているデッドヒートマッハを見て、即座に大振りの拳で反撃。しかし、苦し紛れの攻撃などデッドヒートマッハには通用しない。
横振りの拳の下を潜り、身を低くしたままアナザーダークドライブの腹に拳を捻じ込む。
「今日まで一日たりとも特訓を欠かしたことはねぇ!」
爆発する様に打ち込んだ拳が炎を噴く。アナザーダークドライブはデッドヒートマッハに殴り飛ばされ、膝を地面に着けた体勢で十数メートルも滑っていった。
「馬鹿な……! この私が剛如きに……!」
デッドヒートマッハに殴られた装甲の一部が溶けており、アナザーダークドライブは現実を否定する様に喚く。
デッドヒートマッハの力を見誤っていたこと。剛という存在そのものを見下していたこと。それによって足元を掬われ、翻弄されてしまっていた。
確かにデッドヒートマッハはアナザーダークドライブが知る時よりも性能が向上している。だが、どんなにマシンが高性能になってとしても運転するものの実力が無ければ向上した部分が無駄になるだけ。
剛の今日に至るまでのたゆまぬ努力によってデッドヒートマッハの性能を百パーセント生かすことが出来たのだ。
アナザーダークドライブがデッドヒートマッハに押されているのは、ひとえに剛の実力によるもの。
「いつまでもあんたが知っている俺ってことじゃ無い訳さ。あんたも外見じゃなく中身をアップデートするんだな」
「き、貴様ぁ……!」
デッドヒートマッハの皮肉にアナザーダークドライブの怒りは最高点に達し、胸部からデータを取り出してコピーブレイドガンナーを装備する。
「私の偉大な頭脳を何度も侮辱するとは……! 死すら生温い苦痛を教えてやる……!」
「あんたの頭脳なんてクリムとハーレー博士の足元にも及ばないんだよ!」
「剛ぉぉぉぉ!」
怒りのあまり叫ぶアナザーダークドライブ。デッドヒートマッハは、マッハドライバーのスイッチを連続で叩く。
『バースト! キュウニデッドヒート!』
赤熱化するデッドヒートマッハの体。体表に電気の様な光まで走る。
アナザーダークドライブがコピーブレイドガンナーの銃口をデッドヒートマッハに向けた時、デッドヒートマッハは既にアナザーダークドライブの顔面に拳を打ち込んでいた。
能力を全開にしたことで高熱と高速の力を発揮するデッドヒートマッハ。彼が移動した後には炎が轍の様に残る。
「はああああ!」
追撃で繰り出される高速の拳がアナザーダークドライブの全身に打ち込まれる。あまりに速過ぎるせいで防御も回避も間に合わない。
「こ、この、私、が!」
一方的にやられる状況を信じられないと言わんばかりに叫ぶアナザーダークドライブ。しかし、叩く拳の熱と衝撃が嫌でも現実であるとアナザーダークドライブに教える。
跳び上がりながら放たれる回し蹴りが命中、よろめくアナザーダークドライブ。
デッドヒートマッハは一瞬で離れ、そこから急加速し、アナザーダークドライブの横顔に膝を叩きこんで、吹っ飛ばす。
「終わりだ! 蛮野!」
マッハドライバーのスロットを上げ、上部スイッチを押した後にスロットを元に戻す。
『ヒッサツ! バースト! フルスロットル!』
マッハドライバーのマフラー部分から虹色に輝く光が噴き出し、それによってデッドヒートマッハの体が上空に押し上げたられる。
『デッドヒート!』
空中で前回転するデッドヒートマッハ。高熱を帯びた赤い光に虹色を纏わせながら回転数を上げていく。
縦に高速回転したままアナザーダークドライブへ落下していくデッドヒートマッハ。速度も威力も最高点に達した一撃がアナザーダークドライブに命中する──と思われた。
エキゾースト音を鳴り響かせながらアナザーネクストライドロンが両者の間に走り込んでくる。
「何っ!?」
デッドヒートマッハのキックはアナザーダークドライブに届かず、アナザーネクストライドロンが盾となってそれを代わりに受けた。
アナザーネクストライドロンはデッドヒートマッハのキックによって中央から真っ二つに裂け、爆発を起こす。
その爆風を受けてデッドヒートマッハは後方に吹っ飛ばされ、アナザーダークドライブも同じく爆発によってデッドヒートマッハから離れることが出来た。
「くそっ!」
あと一歩の所でアナザーダークドライブを仕留められなかったデッドヒートマッハは悔しそうに声を荒げる。
「──剛よ」
破壊されたアナザーネクストライドロン。それから立ち昇る炎の向こうにいるアナザーダークドライブが声を掛けてくる。
「お前が本当に変わったのかどうか試してやる」
「──何だと?」
すると、アナザーダークドライブの手に金色のエネルギーによる光球が作り出される。それを投擲すると思い、身構えるデッドヒートマッハであったが、アナザーダークドライブはデッドヒートマッハに投げつけるのではなく空目掛けて高く投げた。
アナザーダークドライブの行動を訝しむデッドヒートマッハであったが、次にとったアナザーダークドライブの行動に疑問は氷解し、同時に途方も無い悪寒を覚える。
アナザーダークドライブはコピーブレイドガンナーの銃口を光球に向けたのだ。
「蛮野ぉぉぉぉぉ!」
何をするのかを察し、デッドヒートマッハは思わず叫ぶ。
デッドヒートマッハは止めようとするが間に合わず、アナザーダークドライブは光球を光弾で撃ち抜く。
光球は破裂し、周囲に破片の様なエネルギーが飛び散る。デッドヒートマッハにとって避け切れるものだが、完全静止状態のジオウⅡとウォズ。そして、変身出来ない英志にとっては脅威そのもの。
アナザーダークドライブはデッドヒートマッハではなく英志たちを狙ったのだ。
デッドヒートマッハは、拳を叩き付ける様にマッハドライバーのスイッチを押す。出力が増し、高速で動くデッドヒートマッハがまず目指したのは一番近くにいたウォズ。
動けない彼の前に迫っていた光球を全て拳で払い、更にスイッチを叩く。
次に目指したのはウォズから近い位置にいるジオウⅡ。散らばる光球を全て一蹴し、ジオウⅡを守る。
そして、最後に向かうのは英志。だが、いくら高速で動こうとも時間は進んでいく。光球は英志の眼前にまで来ていた。
動き出すデッドヒートマッハだが今のままでは間に合わない。だからこそ、デッドヒートマッハは躊躇うことなくマッハドライバーのスイッチを叩き続ける。
スイッチを押すごとにデッドヒートマッハは加速していく。しかし、出力が増せば増す程負担も増していき、中の剛に強烈な負荷を与える。筆舌尽くし難い苦痛に苛まれながらもスイッチを押す手をデッドヒートマッハは止めなかった。
両足が消え掛けて動けない英志の前に近付いて来る光球。死の間際のせいかひどくゆっくりとそれが見えた。
このまま光球に撃ち抜かれると思った時、赤い影が英志の前に割り込み、英志を撃ち抜く筈であった光球をその身で受け止める。
「ぐ、うう……!」
音速の更に向こう側の速度に到達したことで間一髪我が身を盾にして英志を守ったデッドヒートマッハ。しかし、その代償は大きく、デッドヒートの能力を限界以上まで使用してしまったせいで剛の肉体は大きなダメージを受けていた。
「叔父さん!」
「だ、大丈夫、大丈夫」
明らかに無理をしている声。だが、デッドヒートマッハは英志の前で、アナザーダークドライブの前で膝を突こうとはしなかった。
「ふはははははは! どうやらお前は何も変わっていない様だな、剛! 詰まらない感情でみすみす勝機を逃すとは!」
激昂していたアナザーダークドライブは一転して、意気揚々となってデッドヒートマッハを嘲る。
「他人など放っておけば私を倒せたかもしれないというのに……お前はつくづく不出来な息子だ!」
「剛叔父さんが息子……?」
アナザーダークドライブの言葉に聞き逃せない言葉があり、英志はその言葉を繰り返してしまう。
「そうだとも! 私が作った物の中で最も出来の悪い存在だよ……いや、待て。さっきからお前は剛のことを叔父さんと呼んでいたな……?」
アナザーダークドライブの方も何かに気付く。
「そうか、そういうことか! 理解したぞ! 成程! お前は霧子の子か! はははははは! やはり私は幸運に恵まれている! 孫から未来の技術をプレゼントされるとはな!」
「貴方が、僕の祖父……?」
ロイミュードを狂わせた元凶であり、父の敵であった蛮野天十郎が自分の祖父という事実を知らされ、英志は愕然とする。
「お、叔父さん?」
「……」
その事実を否定して欲しくて縋る様に剛を呼ぶが、返事は沈黙であった。それこそがアナザーダークドライブの言葉が真実であることを告げている。
「そんな……ううっ!」
衝撃的な事実を知りショックを受ける英志の体が更に不安定になり始め、消滅が膝まで浸食する。まるで、英志の気持ちと連動しているかの様であった。
「はははは! そう考えると霧子を作った甲斐があったというものだ! 巡り巡って私の為になったのだからな!」
「──黙れよ」
「……ああ?」
デッドヒートマッハの静かな声にアナザーダークドライブは気分を削がれた声を出すが、デッドヒートマッハはアナザーダークドライブを無視して英志に話し掛ける。
「……ごめんな。知らないなら知らないままでいいと思ったんだ。俺ってやっぱり甥っ子に甘いのかもしれないな」
隠していたことを謝り、隠した自分の甘さを苦笑する。
「いきなり知ればそりゃあショックだよな。俺も自分の父親が最低な奴だと分かった時は似たような気持ちだったよ」
父親を信じ、その父親に裏切られた時のぐちゃぐちゃにかき乱された気持ちは、今でも深く刻み込まれている。
「俺にもお前にもあいつの血が流れているのは事実だ。──だけどなぁ! あんな奴のことなんかこれっぽちも気にする必要はねぇ!」
「え?」
吹っ切る様なデッドヒートマッハの言葉。やせ我慢ではなく本心からのものに聞こえる。
「蛮野天十郎の息子だが、それよりも俺は人間の敵を追跡、撲滅する仮面ライダーマッハの詩島剛だ! あんな奴の血が流れている程度でこの生き方は変わらねぇ!」
悪の血が流れている事実を受け入れ、それでも自らは仮面ライダーだと名乗る。
「さっきから最低だの、あんな奴だの、好き勝手言ってくれるなぁ、剛よ!」
「悪いね。口の悪さだけはきっとあんた譲りだよ、
嫌味を込めて父さんと敢えて呼ぶデッドヒートマッハに、アナザーダークドライブは先程までの余裕をかなぐり捨て、コピーブレイドガンナーで銃撃。デッドヒートマッハはそれを避けることなく受ける。避ければ英志に当たるのが分かっているからだ。
攻撃を受けながらもデッドヒートマッハは英志に語り続ける。
「お前は! 進兄さんと姉ちゃんの背中を見て! 育ったんだろ! 体にはあいつの血が流れて、いても! お前の、魂には! 正しく生きてきた人たちの、血が流れているんだ! だから、お前は! なったんだろ!」
英志はその言葉を聞いて自分の原点を思い出す。父である進ノ介が仮面ライダーだから自分も仮面ライダーを目指したのではない。
父の人々を助ける背に憧れた。母の愛で優しさと厳しさを知った。受け継いだものによって多くの人々と繋がりを持ち、彼らを守りたいと心の底から思った。
だからこそ、目の前に仮面ライダーという選択が現れたとき、人々を守りたい思いで仮面ライダーになることを選んだのだ。
「英志! お前は、一体、何だ!?」
傷付き、今にも倒れそうな体でデッドヒートマッハはあらん限りの力で叫ぶ。それは、戦士が真に覚醒する為の覚悟の問い。
「僕は!」
英志は両腕に力を込めて上半身を起こす。消える筈であった脚が英志の意志に呼応するかの様に徐々に輪郭が戻って来る。
「僕は!」
半透明な足には力が上手く入らず小動物の様に細かく震えるが、英志はそれでも立ち上がる。
「僕は、仮面ライダードライブ! 泊英志です!」
その瞬間、英志のシフトブレスからシフトネクストスペシャルが飛び出し、空中で大きく旋回しながら裏返しになり、明るい黄色のボディに赤いラインが入った姿になってシフトブレスに自ら入る。
シフトブレスに入ると同時に光が発し、その場が輝きで満たされる。
「う、動ける!」
「重加速を解除したのか」
完全静止状態にあったジオウⅡとウォズはその光を浴びて動ける様になる。
「そ、そんな馬鹿な!」
超進化体の力を破られたことで、攻撃の手を止めて驚くアナザーダークドライブ。そこに、もっと驚くことが起きる。
「あっ!」
ジオウⅡから飛び出すドライブライドウォッチ。実体が薄れ、消えて行く筈であったそれが英志の許へ飛んで行き、英志がそれを掴むと完全に実体化する。
「これは……」
「ウォッチが元に戻った……英志! スイッチ! スイッチを押して!」
英志はジオウⅡに言われるがままドライブライドウォッチのスイッチを押す。
『ドライブ!』
ドライブライドウォッチが消え、代わりに英志の腹部にドライバーが装着される。それは仮面ライダードライブのベルト──ドライブドライバーであった。
『聞こえたよ。君の心のギアが上がる音が』
「もしかして……ベルトさんですか!?」
ドライブドライバーの中央に顔らしきものが浮かび、英志に話し掛ける。
「クリム……! 何故だ! お前もそいつも消え掛けていた筈なのに……!」
『──また会ったな、蛮野。答えは簡単だ。君が齎す最悪の未来は私と彼によって打ち砕かれる、ということさ』
「そんなこと、認めん!」
アナザーダークドライブが英志たちを狙おうとするが、それをジオウⅡとウォズが止める。
「させるか!」
「止められた分、たっぷりと動かさせてもらうよ!」
「邪魔だぁぁ! 愚か者共めぇぇ!」
ジオウⅡたちによってアナザーダークドライブは英志たちに攻撃することが出来ない。
『ありがとう、剛。君には色々と苦労を掛けた』
「はは、気にするなって」
気丈に振る舞うが、限界は近く膝が笑っている。
「すみません。僕のギアを上げるのが遅かったから……」
「いいから、いいから。でも、ちょっと休ませてもらうよ」
そう言ってデッドヒートマッハはやっと片膝を突く。
『まさか、進ノ介の息子と共に戦う日が来るとは思ってもいなかった……色々と感慨深いが、今はそれに浸っている時ではないな。英志! 今こそ君の持つシフトカーの真の力を解放する時だ!』
英志はシフトブレスに収まるシフトネクストスペシャルのもう一つの姿を見る。初めて見る姿。しかし、今の英志は不安などあれこれ考えるのを止めている。何故ならば共に走る心強い相棒がいるのだ。
「ベルトさん……一っ走り付き合ってもらえますか!」
『OK! Start Your Engine!』
英志はドライブドライバーのキー型スイッチを回す。そして、左腕を前に突き出し、肘を曲げた右腕を左肘下に添える。
その場には英志一人の筈であった。しかし、この場にいる全員の目には英志の隣に並んで立つスーツ姿の青年の姿が見える。
英志は左腕と右腕で大きな円を描きながら右腕と左腕の上下を入れ替える。
『変身!』
左腕に沿って右手を動かし、シフトブレスにあるレバー形態となったシフトネクストスペシャルを素早く上下させる。
『ドライブ! タイプスペシャル!』
英志と幻影が重なり合い、過去と未来が一つとなったドライブが誕生する。
タイプネクストと同じ黒い装甲。だが、体を走るラインは水色から黄色へと変わる。水色のゴーグルは車のヘッドライトに似た黄色の複眼に変わり、頭部の左右にはガルウィングの様に隆起している。
ネクストライドロンが変身に反応し、データからタイヤを実体化。それを射出すると、ドライブの胴体に収まる。
タイヤ側面に刻まれた『Type Special』の文字が燦然と輝く。
「何だと……!? 何だその力は!」
アナザーダークドライブは、自分とって未知であるドライブ
ドライブTSが手を突き出す。黄色いエネルギーの障壁がその手から発生し、アナザーダークドライブの重加速を防いでしまう。
「なっ!」
簡単に防がれて動揺するアナザーダークドライブに向けて、手を前に押す。障壁が押し出され重加速を弾きながら進んで行き、アナザーダークドライブに衝突。
「ぐああっ!」
アナザーダークドライブを突き飛ばす。
『タイプスペシャルにはドライブが今まで得た戦闘のデータが全て入っている。走り方は君好みで行け』
「はい!」
ドライブTSが一歩踏み出そうとした直前、デッドヒートマッハに話し掛ける。
「剛叔父さん。僕が見て来た背中は父さんと母さんだけじゃありません」
伝えたかったことを伝えると、ドライブTSはデッドヒートマッハの前へ歩いて行く。その背を見て、デッドヒートマッハは仮面の下で照れを混ぜた顔で笑う。
「頼もしいねぇー」
ドライブTSが強く大地を踏み締めた瞬間、その体は光と化し、次に姿を現した時にはアナザーダークドライブの目の前に立っていた。
「決着を付けましょう。
「私を見下すかぁぁぁ!」
吼えながらアナザーダークドライブはコピーブレイドガンナーで斬りかかる。初撃を一歩下がることで紙一重で回避し、二撃目もまた僅か一ミリの幅で回避。アナザーダークドライブの動きを完全に把握しての完璧な回避行動。
「おのれぇぇ!」
アナザーダークドライブがコピーブレイドガンナーで突く。それを踊る様に回転しながら避けつつ、キー型スイッチを回してシフトネクストスペシャルをレバー操作する。
『スペ! スペ! スペシャル!』
ネクストライドロンから光の線が伸び、素早くそれを動かして物体を生成。完成するとドライブTSに向けて飛ばす。
その手に握るのはハンドル剣とドア銃。ハンドル剣でコピーブレイドガンナーを下から斬り上げ、胴体をドア銃で発砲。
光弾を受けたアナザーダークドライブが一歩下がる。すると、ハンドル剣が光となって再変換され、今度はゼンリンシューターに変わる。
「あ、俺の!」
ゼンリンシューターとドア銃による二丁拳銃が火を噴き、倍以上となった光弾がアナザーダークドライブに浴びせられる。
「く、あああ、おの──」
言葉はそれ以上続けられなかった。懐に既にいるドライブTSを見てしまったせいで。
ドア銃が変換され、新たな武器になる。ブレイドガンナーの剣部分だけを取り外した様な武器──これこそが原点であるブレイクガンナー。
『BREAK』
銃口を押し込むことで近接攻撃用へと攻撃を切り替わる。
アナザーダークドライブはドライブTSを離そうと手を伸ばすが、ドライブTSの姿は消え、同時に脇腹に強い衝撃を受ける。
「かはっ!」
衝撃は一度ならず、腹、顎、背中、胸、顔と立て続けに起こる。高速移動するドライブTSのゼンリンシューターとブレイクガンナーによる高速打撃。全身を削られ、殴打され続ける。
『TUNE・LUPIN BLADE!』
ブレイクガンナーが変化し、紫と銀色の見た目から金と赤、そして宝石に彩られた見た目に変わり、黄金と銀の短剣を伸ばす。それは、かつて仮面ライダードライブの好敵手であった仮面ライダールパンの武器──ルパンガンナー。
ゼンリンシューターをブレイドガンナーに換え、長剣と短剣による二刀流でアナザーダークドライブの全身を斬り付ける。
嵐の様な斬撃に、アナザーダークドライブは独楽の様に回されていく。
そして、ドライブTSは両手の武器を合わせ、一つの武器に変換した。長い柄の途中に押しボタン式信号機の様なボタン、先端には赤青の点滅器が付き、『ライダー専用』と描かれたプレートも付いた奇抜なデザインの斧。
その斧を見た途端、アナザーダークドライブは震え出す。
「チェイスの……」
「や、止めろ! それをわ、私に近付けるなっ!」
ドライブTSの斧──シンゴウアックスにアナザーダークドライブは心の底から恐怖するが、ドライブTSは容赦なくそれを振り上げ──
『ヒッサツ!』
「止めッ」
──アナザーダークドライブの肩に叩き込む。あまりに重い一撃にアナザーダークドライブは両膝を強制的突かされる。
『マッテローヨ!』
「は、はい! 待ちます!」
『返事はしなくていいから……』
ドライブTSがアナザーダークドライブを圧倒する光景を、手に汗握る思いで見ていたジオウⅡであったが、その手の中に黄金の輝きが宿る。
「これって……」
消滅したグランドジオウライドウォッチが、仮面ライダードライブの復活と共にジオウⅡの許に戻ってきた。
「英志ー!」
ジオウⅡはドライブTSを呼びながら復活したグランドジオウライドウォッチを見せる。
「俺も相乗り、いい?」
「──うん! 喜んで!」
ジオウⅡはジオウライドウォッチとグランドジオウライドウォッチを空けたジクウドライバーに挿す。
「変身!」
『グランドターイム! 祝え! 仮面ライダー! グ・ラ・ン・ド! ジオーウ!』
ジオウⅡからグランドジオウへ変身したタイミングに合わせてシンゴウアックスが鳴る。
『イッテイーヨ! フルスロットル!』
「じゃあ、行きます!」
『君は律儀だなぁー』
ドライブTSは刃先にアナザーダークドライブが埋まったままシンゴウアックスを振り回し、やがて遠心力で刃が外れアナザーダークドライブは空へ投げ上がる。
「ぬああああああああああ!」
アナザーダークドライブの下で並び立つドライブTSとグランドジオウ。グランドジオウはレリーフに触れる。
『ドライブ!』
『2014』の数字が浮かぶ扉が開き、そこから仮面ライダードライブが召喚される。
「父さん……」
かつての父の勇姿にドライブTSは胸に熱いものがこみあげて来るのを感じた。
「行こう! 英志!」
「ああ!」
『さあ、アクセルを踏み込め!』
グランドジオウはジクウドライバーとライドウォッチを。ドライブTSはドライブドライバーとシフトネクストスペシャルを操作。
『フィニッシュタァァイム! グランドジオウ!』
『ヒッサーツ!』
走り込んでくるネクストライドロンとトライドロン。二人の周囲を円を描いて走る。
『オールトゥエンティー! タイムブレーク!』
『フルスロットル! スペシャル!』
二台のトライドロンは車体を上げて空中へ道を移す。赤と水色の光が螺旋を描きながら上昇。本来なら飛行能力を持たないトライドロンもネクストライドロンかグランドジオウの影響なのか空を走る。そして、グランドジオウと、ドライブ、ドライブTSも跳躍する。
「なっ! うぐああああああ!」
螺旋状に走行するトライドロンたちを足場にし、グランドジオウ、ドライブとドライブTSは上下左右関係無しにキックを連続して繰り出し、アナザーダークドライブを空高く蹴り上げていく。
「馬鹿な! こんな馬鹿な! この私が! 人類で最も偉大な頭脳を持つ私が!」
遥か上空へ達した時、グランドジオウたちは大きく跳躍してアナザーダークドライブを追い越す。すると、二台のトライドロンはアナザーダークドライブを中心にして周囲を走り回る。
走った後にはエネルギーの足跡の様なものが残り、赤と水色の足跡が幾つも編む様に重なって大きな光球を作り出す。
光球の上空へ辿り着くグランドジオウとドライブTS。グランドジオウとドライブが重なり、一つとなると光球目掛けて落下。
二人揃って突き出された右足は雷光を思わせる赤と黄の光を放ち、光球によって囚われているアナザーダークドライブへ一直線に進んでいく。
「未来すらも手に入れた私がっ!」
『君は最初から何も手にしていなかったのさ、蛮野』
無様に喚くかつての友に別れの言葉を送ると、二色の稲妻がアナザーダークドライブを貫く。
「こんな──」
最後まで自らの敗北を認めることが出来ないままアナザーダークドライブは爆散し、跡形も無く消し飛ぶ。
光球が消え、地面に無事降り立った二人の仮面ライダーは変身を解く。デッドヒートマッハもそれを見て、安心した様に変身を解除した。
仮面ライダーの奮闘に二つのベルトから労いの言葉が送られる。
『Nice Drive!』
『オツカーレ』
◇
ほぼ同時刻。織田軍と武田軍との戦も佳境を迎えていた。やはり、武田軍には多くのロイミュードたちが紛れ込んでおり、戦の中で正体を現し、織田軍を襲う。
しかし、その進行を食い止めたのがゲイツであった。仮面ライダーへと変身し、大量のロイミュードたちを相手に獅子奮迅の戦いぶりを見せつける。
「怯むな! 進め!」
織田軍の旗を掲げてロイミュードたちを圧倒するゲイツに、武士や兵たちの士気は高まり、ゲイツに続いて行く。
「惚れ惚れする武将っぷり! これは屛風映えするでござるよ!」
ゲイツの勇ましい姿に感動し、牛三は懐にしまっていた紙と筆を取り出して戦うゲイツの姿を書き写していく。
「何だあれは!?」
兵の一人が空を見上げながら声を上げる。ゲイツも空を見ると、そこには二色の光球が浮かんでいた。
「あれは……!」
ゲイツと同じく屛風絵に描かれていたもの。同時にゲイツの目は光球目掛けてキックの体勢で下りて来るグランドジオウとドライブTSの姿も捉えていた。
「怯えるな!」
動揺する兵たちをゲイツが一喝する。
「あれこそ織田軍勝利の瑞兆! この戦、我らが勝つ!」
勇ましいゲイツの言葉に、兵たちの士気は更に高まる。
『オオオオオオオオオオオ!』
地を揺さぶる様な咆哮を兵たちは上げ、ロイミュードたちに果敢に挑んでいく。
(勝ったか、ジオウたちは……俺も負けてられん!)
仲間の勝利を確信し、ゲイツは誰よりも猛々しく戦場で戦う。
どちらが勝ったのかは、これ以上書き記す必要も無いだろう。
先にどちらが見たいですか?
-
IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
-
IFゲイツ、マジェスティ