アナザーウォッチの力がスウォルツを包み込むと、闇に似たエネルギーの中から複数のプレートが飛び出し、顔の位置へ戻っていくとスウォルツを包んでいたエネルギーは黒い幻影の形となって離れていく。
幻影が消え去った場所に立つのは悪魔を彷彿させるアナザーライダー。
黒味がかったマゼンタの体。肩、腕、胸部などに爪を思わせる立体的な黒い線。
腰回りには白い帯の様なものを何本も垂らし、腹部には牙をまざまざと見せつける怪物の口、その中心に赤い玉が埋め込まれており、それがこのアナザーライダーのドライバーである。
頭部には左右に伸びる大きな角。そこから枝分かれした小さな角、そして額からも一対の角が伸びており、その角に張り付ける様に緑色の仮面が付けられており、密着しているせいで人の顔が浮かび上がっていた。最初に飛び出したプレートは、角、顔面に突き刺さっており、歯を剝き出しにしている口を格子状に覆う。
胸の右側に白文字で『DECADE』『2019』と刻まれていた。
これがスウォルツが変身したアナザーライダー───アナザーディケイドだが、変化はこれだけでは収まらない。
『DECADE』の刻印近くで突然炎が噴き上がり、それが消えると赤く燃える字で『VE』の字が追加される。
頭部にある左右に伸びていた角は斜め上へ曲がり、枝分かれしていた角も同じ角度で変形していく。そして、頭部の角もまた斜め後ろに反る様にして変形。緑の顔が見る見るうちに憤怒の形相に変わっていく。
そして、額中央が大きく裂け、中から第三の目を思わせる紫の宝玉が盛り上がる。
「アナザーディケイド……!」
「ディケイド激情態のアナザーライダーとは……厄介な」
「あの姿が何なのか知っているの?」
「……ディケイド激情態とは全てのライダーを破壊する為の姿。仮面ライダーでありながら、仮面ライダーの天敵だ」
「仮面ライダーの天敵だと……!?」
ウォズの言葉が大袈裟ではないと示すような圧倒的な存在。全身が寒気立つ思いである。
「どうした? 変身しないのか? するなら早くしろ。待っていてやる」
圧倒されるソウゴたちを前に、アナザーディケイド
「余裕のつもりか!」
「違う。お前たちに分からせてやるだけだ。如何なるライダーも俺には勝てん、と。ましてやオーマジオウ擬きの力程度ではなぁ」
全てのライダーの力を継承したグランドジオウですらアナザーディケイドVEは眼中に無い態度で見下した発言をする。
「──ゲイツ! ウォズ! 行くよ!」
圧倒される様な威圧感と敵意を跳ね除け、ソウゴが大声で指示を出す。呑まれ掛けていたゲイツとウォズはその言葉で意識を強く持ち、ソウゴに続いてドライバーとウォッチを装着する。
『変身!』
『祝え! 仮面ライダー! グ・ラ・ン・ド! ジオーウ!』
『リバイ・リバイ・リバイ! リバイ・リバイ・リバイ! リバ・イ・ブ! 疾風! 疾風!』
『ギンギンギラギラギャラクシー! 宇宙の彼方のファンタジー! ウォズギンガファイナリー! ファイナリー!』
グランドジオウ、ゲイツリバイブ疾風、ウォズギンガファイナリーに変身した三人。通常の敵ならば三人が並ぶ光景に圧倒されてもおかしくはない。しかし、アナザーディケイドVEは腕を組んだまま、変身した三人を鼻で笑う。
「ツクヨミ、危ないから離れていて」
「ソウゴ、ゲイツ、ウォズ……兄に──スウォルツに負けないで」
血を分けた兄と仲間が戦う。心中複雑な気持ちであろうが、それでもツクヨミは仲間のことを思った言葉を残し、言われた通り三人から離れていく。
「さて、まずは小手調べといくか」
アナザーディケイドVEはグランドジオウたちに右人差し指を向ける。親指を立て銃に見立てて構える。
その指先から黒とマゼンタの光が混じり合った光弾が発射。グランドジオウの顔の横を通り過ぎ、背後に着弾して爆発を引き起こす。その爆風によって三人は前のめりになる。
「何て威力だ……!」
その破壊力にゲイツリバイブは戦慄するが、アナザーディケイドVEはそれを嘲笑する。
「こんなものではない」
アナザーディケイドVEの右手が残像の様に幾つにもブレ、その全てから光弾が発射される。ディケイドのアタックライド・ブラストと全く同じことをしてみせた。
『クウガ!』
右肩にあるクウガのレリーフから伸びた柄を引き抜くと同時にアナザーディケイドVEの光弾を斬り払う。先端部分は金の両刃、剣身半ばは紫の剣──クウガの持つタイタンソードを強化したライジングタイタンソードはアナザーディケイドVEの光弾にも負けることなくその切れ味を見せる。が、すぐ後ろにはもう既に次弾が来ていた。
ゲイツリバイブ疾風もジカンジャックローで、ウォズもピュアパワーで光弾をどうにかしようとするが、一発二発は防げてもそれ以上は対処出来ない。
「うあああああああ!
「ぐあああっ!」
「くっ!」
過剰な火力と過剰な連射。それらが掛け合わされて生み出されるものは圧倒的な破壊力。しのぎ切れなかった光弾によりグランドジオウたちは爆炎の中に閉じ込められる。
「うん?」
爆炎を突き破り、何かが高速で接近しているのをアナザーディケイドVEは捉える。青い残像を起こすゲイツリバイブ疾風の高速移動。
最高速度に達しながらつめモードのジカンジャックローのスイッチを押す。
『つめ連斬!』
光弾によるダメージが残るもゲイツリバイブはアナザーディケイドVEに攻撃を仕掛ける。
空中を左右上下に動き、攪乱しようとするゲイツリバイブ。アナザーディケイドVEは指先を向けるが照準が定まらない様子。
ゲイツリバイブがアナザーディケイドVEの視界から消える。そして、死角である真横に移動すると共に急加速してジカンジャックローでアナザーディケイドVEの胴を斬り付ける──
「何っ!?」
──前にアナザーディケイドVEが消えた。ジカンジャックローにも手応えが無い。
止まって周囲を見回すが、アナザーディケイドVEは何処にもいない。
(一体何処に──)
「後ろだ」
「馬鹿なっ!」
確認した筈の背後に現れるアナザーディケイドVE。至近距離に居たゲイツリバイブは気付かなかったが、少し離れた位置に居るグランドジオウたちは見ていた。
アナザーディケイドVEは何も無かった空間から浮かび上がる様にして出て来た。さっきまで透明であったかの様に。
「くっ!」
ゲイツリバイブはすぐにアナザーディケイドVEから距離を取ろうとする。
「遅いな」
「なっ!?」
高速で移動するゲイツリバイブと並行してアナザーディケイドVEもまた高速で移動。驚くゲイツリバイブの頭を鷲掴みにして地面に叩き付ける。
地面に押し付けたゲイツリバイブの顔面をブレーキ代わりにしてアナザーディケイドVEとゲイツリバイブは揃って止まった。
「どうした、ゲイツ? お前の力はその程度か?」
「ぐ、く、あああ……」
アナザーディケイドVEはゲイツリバイブを片手で持ち上げ挑発する。ゲイツリバイブは頭部に受けた衝撃のせいで意識が朦朧としており、反撃しようにも体が動かない。
「ゲイツ!」
「ゲイツ君!」
グランドジオウとウォズがゲイツリバイブを助ける為に走り出す。その動きを読んでいたアナザーディケイドVEはゲイツリバイブから手を離し、宙にいる間に横蹴りでゲイツリバイブの鳩尾を蹴る。
声すら出せず悶絶するゲイツリバイブを、グランドジオウ目掛けて蹴り飛ばした。
「うわあっ!」
飛んできたゲイツリバイブを身体で受け止めるグランドジオウだったが、勢いを殺せず二人揃って後方へ転がっていく。
「次はお前か? ウォズ」
「その通りだよ、スウォルツ」
必然的に一対一の形となるウォズとアナザーディケイドVE。
「宇宙の力か。だが、そんなものは破壊の力の前では無力!」
「前から傲慢な男だとは思っていたが、見ない間に随分傲慢さに磨きが掛かったじゃないか。君が破壊し尽せる程、宇宙は狭くない」
「お前はもう少し賢い男だと思っていたが、見ない間に愚かになった」
アナザーディケイドVEは右手を胸の前に持っていき、五指を揃えて手刀の形にする。
「実力を弁えずに俺と戦おうとしているのだからなぁ!」
払われる右手。手全体を包み込むマゼンタと黒のエネルギーが刃となる。
胴体を切り離そうとしてくるアナザーディケイドVEの手刀を、ウォズはピュアパワーによる掌打によって止める。
「くっ……!」
集中を切らせばピュアパワーが容易く斬り裂かれるのが掌から伝わって来る。
全力を込めて防ぐウォズとは違い、アナザーディケイドVEの方は余裕そのもの。必死に抗うウォズを嘲笑する。
「やはり愚かだな」
ピュアパワーから手刀を離し、今度は袈裟切りの様な斜め上から振り下ろす。
ウォズも再びピュアパワーで止めようとするが、アナザーディケイドVEの手刀は無数に分裂する。初撃の光弾の様に実体を持った幻影を生み出す。
分裂する斬撃による同時攻撃。ディケイドのアタックライド・スラッシュと同じ能力を発動させたのだ。
「なっ!」
急いで両手で防ごうとするウォズ。一撃目、二撃目を右で。三撃目、四撃目を左で防ぐが、その防御の隙間をすり抜けて五撃目の斬撃がウォズの体を斬り裂いた。
肩から胸に掛けて残る斬撃の痕。衝撃と苦痛がウォズの動きを一時的に鈍らせる。アナザーディケイドVEの前ではその僅かな隙も命取りに繋がる。
アナザーディケイドVEは踏み込み、そこから手刀による一閃。そして、ウォズの隣を通り過ぎて行く。
通過と同時にウォズの体に刻まれる斬撃痕。一振りで五度の斬撃を浴びせられていた。
「か、はっ……!」
苦悶するウォズ。アナザーディケイドVEは振り返ることなく背後にいるウォズを蹴り飛ばし、近くの岩壁へ叩き付ける。岩は崩れ、ウォズへと落下。岩と砂埃によってウォズは見えなくなってしまう。
「ウォズ!」
受け止めたゲイツリバイブに肩を貸しながらグランドジオウは叫ぶが、ウォズの声が返ってくることは無かった。
「ふっ。試すことまだあるというのに、試す相手が脆すぎるとは。力の差があるというのも困りものだな」
グランドジオウたちに皮肉を言って笑う。憤怒の形相を浮かべながらもアナザーディケイドVEの口から出るのは常に嘲りと傲慢に満ちた台詞であった。
「ゲイツ! 待ってて!」
「待て、ジオウ!」
グランドジオウはゲイツリバイブに一言詫びてから肩を貸すのを止めて前に出る。ゲイツリバイブはそれを止めようとするが、伸ばし手をグランドジオウへ届かせることは出来なかった。
「はああっ!」
両手で握り締めたライジングタイタンソードを、渾身の力で振り下ろす。だが、アナザーディケイドVEはその一撃を素手で、それも片手で難なく掴み取ってしまう。
「もっと面白いものをお前に見せてやろう。──ふん!」
「うわあっ!」
アナザーディケイドVEが力を加えると、ライジングタイタンソードが粉砕。掴んでいた剣先だけでなく柄まで瞬時に破壊されたことからアナザーディケイドVEの何らかの能力が発動したと思われる。
砕け散って光の粒となったライジングタイタンソードだが、アナザーディケイドVEが手を掲げると光の粒が集い始め、一枚のカードへ形を変えた。カードには先程アナザーディケイドVEが破壊したライジングタイタンソードが描かれている。
「この力、頂いたぞ!」
アナザーディケイドVEがカードを握り潰すと、カードが砕け、再びライジングタイタンソードへ戻る。
「そんな!?」
武器を奪われたことに驚くグランドジオウに、アナザーディケイドVEはライジングタイタンソードで容赦無く斬り付ける。
斬撃のダメージで怯んだ所に間髪入れず高速の斬撃を与えるアナザーディケイドVE。出鼻を挫かれてしまったグランドジオウは一方的に攻撃を受けてしまう。
「はあっ!」
アナザーディケイドVEはライジングタイタンソードを水平に構え、そこからグランドジオウの胸部に突きを繰り出す。
激しい衝突音。グランドジオウは突き飛ばされるが、胸部は貫かれることはなく傷も無い。
ライジングタイタンソードを突き出して構えるアナザーディケイドVEの足元に折れた剣先が突き刺さった。ライジングタイタンソードでもグランドジオウの装甲は貫くことは出来ず、逆に折られてしまう。
アナザーディケイドVEは折られたライジングタイタンソードを投げ捨てる。
「脆いな。使い手に似たか?」
グランドジオウへの皮肉も忘れない。
「くうっ……!」
グランドジオウは胸部を押えながら立ち上がり、レリーフを素早く叩く。
『ブレイド!』
『オーズ!』
アナザーディケイドVEの頭上に扉が召喚され、中から仮面ライダーブレイドと仮面ライダーオーズが専用剣のブレイラウザーとメダジャリバーを振り上げながら飛び出してくる。
「無駄だ」
アナザーディケイドVEは剣が振り下ろされる前に踏み込み、ブレイドとオーズの顔面を鷲掴みにすると、ライジングタイタンソードの時の様に彼らを光の粒へ変換してしまう。
そして、アナザーディケイドVEの手に握られる二枚のカード。ブレイドとオーズが浮かんでいた。
「どれ程のものか少しは期待していたが、どうやら買い被っていたらしい。お前たちなど俺が手を下すまでもない」
アナザーディケイドVEの背後に銀色のオーロラが発生。そのオーロラに映る四人の影。オーロラが消えると共に四人のライダーが現れた。
水色のカメラアイと黒の装甲を持つ全身機械の仮面ライダー。装着者の命糧にその性能を発揮する仮面ライダーG4
真っ白な体毛を生やした雪男を彷彿させる仮面ライダー。魔物の力を人の手によって再現した仮面ライダーレイ。
その見た目は白く染まった仮面ライダーゴースト。闇の力を得たことで高みへと上がった仮面ライダーダークゴースト。
歌舞伎の白頭に鎖帷子を思わせる白の外装の仮面ライダー。竜巻纏う忍の仮面ライダー風魔。
強力な攻撃。能力の封印。そして、仮面ライダーの召喚。アナザーディケイドVEの能力は計り知れない。
「行け」
アナザーディケイドVEが指示を出すと、四人の仮面ライダーは意思など無いかの様にそれに黙って従い、グランドジオウたちに襲い掛かる。
ダークゴーストとG4の拳がグランドジオウを殴打。息つく暇も無く連続して攻撃し続ける。
風魔はゲイツリバイブに接近と共に蹴りを打ち込み、動きが止まった所に容赦無く拘束の蹴りを与え続ける。
レイはまだ完全に動けないウォズを狙い、剛腕から繰り出す強打によって彼を苦しめる。
アナザーディケイドVEが召喚した仮面ライダーたちは、グランドジオウたちが万全ならば一方的に押される相手では無い。しかし、アナザーディケイドVEによって負傷している今の彼らは満足に動くことが出来ず、一方的な防戦を強いられてしまっていた。
激しい攻撃はグランドジオウたちの負傷を悪化させ、やがて防御にも隙を生まれてしまい、その隙を無慈悲に突いてくる。
グランドジオウはがら空きになった胴体にダークゴーストとG4の蹴りを同時に受け、ゲイツリバイブは側頭部に風魔の上段蹴り、ウォズはアナザーディケイドVEに受けた傷に拳を捻じ込まれる。
攻撃を受けた三人は狙い澄ましたように一箇所へ集められた。
そこに向けられるはG4が構える四基の小型巡航ミサイルを収納したミサイルランチャー───ギガント。
同時に四発のミサイルが発射。直撃すれば命の保障が無いそれに対し、ウォズは咄嗟にエナジープラネットを放つ。エナジープラネットの影響でミサイルの軌道は直撃から逸れたが、着弾地点はグランドジオウたちの周囲。四方向からの爆発が三人を呑み込む。
「皆っ!」
ミサイルの爆風に煽られながらもツクヨミは不安から叫ぶ。
爆炎が消え、白い煙が晴れた頃、着弾地点の中央には変身が解除され横たわる三人が居た。
「ここは、退こう! 我が魔王……!」
ウォズはストールを伸ばしてソウゴとゲイツを包み込む。そして、ツクヨミにも同じくそれを伸ばすが──ツクヨミに届く前に千切れ飛ぶ。アナザーディケイドVEの光弾が阻んだのだ。
「行って、ウォズ!」
ツクヨミの決断は誰よりも早かった。自分よりもソウゴとゲイツを優先することを選ぶ。
「……すまない、ツクヨミ君」
ウォズは苦渋に満ちた顔でツクヨミに謝ると自らをストールに包み、ソウゴたちを連れてこの場から離脱する。
ツクヨミは三人が無事に逃げられたのを見て微笑を浮かべ、すぐに表情を引き締め、アナザーディケイドVEにファイズフォンXの銃口を向ける。
「流石は我が妹。実に勇猛な判断だ。だが、愚かだ」
自己犠牲の判断を嘲笑するアナザーディケイドVE。直後にファイズフォンXの光弾が飛んで来るが、アナザーディケイドVEは手で容易く弾く。
「そんな玩具で俺を倒せると思っているのか?」
ツクヨミの足搔きを無駄と断じ、命を奪うべく四人のライダーたちをけしかける。
ジリジリと迫るライダーたち。ツクヨミはファイズフォンXで応戦するも効果は無く、逃げ場を塞がれていく。
ツクヨミは心の中でソウゴたちがアナザーディケイドVEを倒すことを願い、ここで散る覚悟を決めた時──突然銀色のオーロラが出現した。
最初それはアナザーディケイドVEが出したものだと思ったが、違う。アナザーディケイドVEもそのオーロラの出現に戸惑う様な反応を見せている。
「見つけたぞ……」
オーロラの向こうから聞こえるのは地獄の底から響く様な怨嗟に満ちた声。
「スウォルツゥゥゥゥ!」
スウォルツの名を叫びながら飛び出してきたのは、見たこともないアナザーライダー。
「何者だっ!」
アナザーディケイドVEはツクヨミにけしかけていたライダーたちを正体不明のアナザーライダーへ向かわせるが──
「邪魔だぁぁぁぁ!」
そのアナザーライダーは凄まじい速度で移動し、風魔の頭部を掴むと地面に叩き付ける。大地が割れると同時に風魔の頭部も粉砕され、消滅する。
「おおおおおおおおお!」
雄叫びを上げるアナザーライダー。その姿は獣同然。
ツクヨミはそこでアナザーライダーの詳細な姿を見ることで出来た。
全身は血の様な赤黒い下地。両肩には斧を思わせる鋭利な薄汚れた金の装甲。腕や脚などにも同じ色の装甲を付けている。
悍ましいのは体の各部にライドウォッチサイズの異形の頭骨を埋め込んでいるのだ。だが、それらの頭骨がアナザーライダーのものであるのはすぐに分かった。何故ならば、そのアナザーライダーが纏うマントは頭骨から剥いだと思われる顔を繋ぎ合わせて出来ている。気丈なツクヨミもこれには震える。
顔の上半分には黄金のドミノマスクを着用。下半分には唇の無い食い縛った歯を剥いている。そして、額には唯一の皮膚が剥がされていない小さなアナザーライダーの顔が埋め込まれている。それはツクヨミも知るアナザーゲイツのもの。
それを見て、ツクヨミもアナザーディケイドVEも目の前のアナザーライダーが誰なのかに気付いた。
「スウォルツゥゥ!」
相変わらず獣の様に叫び、手刀でG4の胴体を貫く。致命傷を負ったG4は爆散して消え去った。
「──お前の相手をしている暇は無い」
未知の力を警戒してか、アナザーディケイドVEは銀色のオーロラを出してその中に消えてしまった。
「逃げるなっ! スウォルツ!」
追い掛けようとするが、ダークゴーストとレイがしがみついて妨害してくる。
「鬱陶しい! どけぇぇぇ!」
ダークゴーストの脳天に肘を打ち込み、レイの顎を膝で突き上げて離す。
靡く皮のマント。その時、ツクヨミはアナザーライダーの背に刻印があるのを見た。『GEIZ』の刻印。しかし、その下に続きがある。『MA』までは読めたが残りはマントで隠されていた。
アナザーライダー──アナザーゲイツMAは体に埋め込まれた頭骨の一つを叩き割る。
『クロォォズ』
低い声と共に割れた頭骨から黒いエネルギーが伸び、絡み合ってアナザーライダーを作り出すが、それもまたツクヨミも見た事も無いアナザーライダー。
両肩には黒曜石で出来た竜の頭部。体は流体するマグマで常に炎を吹いている。顔はドラゴンそのものであり、口から涎の様にマグマを垂らしている。
強化されたアナザークローズことアナザークローズマグマは、レイに抱き着く。そして、全身のマグマでレイを焼く。レイは手足を動かしで藻掻くが、その行為もアナザークローズマグマの溶岩に取り込まれるだけであり、やがてレイの体は焼き尽くされる。
そして、最後に残されるダークゴースト。アナザーゲイツMAはダークゴーストの両肩を掴み、逃げられないようにする。
徐にダークゴーストに顔を近付けたかと思えば、突然食い縛っていた歯を開けて──
「うっ」
そこから先の光景からツクヨミは目を逸らしてしまった。彼女は何も見ていないし、何かを咀嚼する音も聞こえない。
音が聞こえなくなり、逸らしていた目をアナザーゲイツMAに向き直すとダークゴーストは居なくなっていた。アナザークローズマグマもである。アナザーゲイツMAの体に新たな頭骨が増え、マントに顔の皮が一枚追加されているが見て見ぬふりをする。
戦いが終わるとアナザーゲイツMAは腹部の黒いジクウドライバーからウォッチを抜き取り、人の姿へと戻る。
その人物は、ツクヨミの予想していた通り加古川飛流であった。
「何処にいったぁぁぁ! スウォルツゥゥゥゥ! 逃げるなぁぁ! 俺と戦えぇぇ!」
狂乱した様に叫ぶ飛流。その姿は復讐に取り憑かれた鬼そのもの。普段ならば息を潜めてやり過ごしていただろう。だが、今のツクヨミの選択は違った。
「加古川飛流……」
名を呼ばれ、復讐と狂気で血走った目をツクヨミに向ける。
「お前は……」
初めてツクヨミの存在を認識し、少しだけ目を丸くするがすぐに飛流はツクヨミに詰め寄り、胸倉を掴む。
「言え! 何処だ! スウォルツは何処にいった! 常盤ソウゴも何処にいる!」
復讐の対象が増えただけで常盤ソウゴへの執念を捨てていない飛流。その怒気と執念にツクヨミは呑まれそうになるが、毅然とした態度で飛流の目を見る。
「──貴方に話したいことがある」
「お前の話など知るか! 二人は何処だ!」
「貴方の過去に関わる話よ」
「……何だと?」
少しだけ興味を惹かれたのか飛流の語気が弱まる。
ツクヨミは話した。かつて過去に見たソウゴと飛流の過去の真実を。ソウゴと飛流が両親を亡くした事故はスウォルツが王を選別する為に起こしたことであり、飛流はソウゴによって命を救われたこと。そして、飛流が目撃した白い服の女が自分であることを。
「お前も俺の人生を滅茶苦茶にした一人だったという訳か……! やっと会えたなぁ!」
真実を聞かされた所で飛流の心が動くことはない。彼の中では、自分の命が怨敵に救われていた事実など認めることはなく、結局常盤ソウゴが発端となって事故は起こったことは変わらず、復讐の対象であるスウォルツに倒す理由が増えたに過ぎない。
否、一つだけ変わったことがある。復讐の対象が一人増えた。
ツクヨミの胸倉を掴む手に更に力が込められる。
「……それを俺に話したということは、覚悟は出来ているんだろうなぁ?」
「ええ。でも、その前に一つだけ頼みたいことがあるの」
「そんな頼み、俺が聞くと思っているのか?」
「スウォルツを……兄を倒す為に必要だと言ったら?」
「何……?」
「兄は、私の力を吸収してより強力な時間操作の能力を手に入れたわ。貴方にとっても厄介な筈よ」
飛流は反論しなかった。ツクヨミの言う通り、スウォルツの時間を操る能力は今の飛流でも手を焼く。
「……それがどうした?」
「私ならそれをどうにか出来るかもしれない。貴方が協力をしてくれたら」
「何だと……?」
ツクヨミは飛流の目に怒りや狂気だけでなく関心が浮かぶのを見た。故に臆することなく堂々と言う。
「貴方が望むなら私の命をあげるわ。その代わりにスウォルツを倒すことに力を貸して!」
VEは『violent emotion』の略となっております。
アナザーゲイツマジェスティは二次創作っぽくかなりグロテスクな感じにしました。
二つのアナザーライダーのアイディアありがとうございます。
先にどちらが見たいですか?
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IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
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IFゲイツ、マジェスティ