ウォズの力によって辛くもアナザーディケイドVEから逃げることが出来たソウゴたち。しかし、今の彼らに逃げ延びたことへの喜びや安堵は無い。あるのは悲痛なまでの沈黙。
逃げた先にある川堤でかれこれ数十分程誰も口を開こうとはせず、三人はそれぞれ異なった方を向いていた。
「……あの時」
沈黙に耐え切れなくなったのかウォズが口を開く。
「ツクヨミ君を置いて逃げることを選択したのは私の判断だ」
ツクヨミは自分を置いて逃げる様にウォズへと言った。だが、ウォズはそれを選んだのを自らの罪と言う。
「……止めろ」
ゲイツは低い声でそれ以上喋らせないよう威圧するが、ウォズは止まらない。
「ツクヨミ君を見殺しにしたことを罰する権利が君たちにある」
「止めろと言っている……」
「君たちの気が済むまで──」
「止めろっ!」
ゲイツはウォズの胸元を掴み上げ、至近距離で睨み付ける。
「殴りたければ好きなだけ殴るといい。私は抵抗しないよ」
「そういうことじゃない!」
無抵抗なウォズにゲイツは怒声を浴びせる。
「ゲイツ」
見かねてソウゴがゲイツの肩に手を乗せる。言外に落ち着く様に促していた。それが伝わったのか、ゲイツ掴んでいた手を離し、バツが悪そうにウォズから目を逸らす。
「ウォズ。誰も君を攻めたりなんかしないよ。いや、攻める権利なんて俺たちには無い」
「我が魔王……」
「ツクヨミをスウォルツの許に置き去りにしたのは俺たちのせいでもあるんだ」
口調は静かだが、悔しさが滲み出ていた。不甲斐ない自分への憤りも込められている。そもそもアナザーディケイドVEに圧倒されなければこんな事態にはならなかった。
「……ウォズ。ツクヨミは無事だと思う?」
ウォズに訊くのは酷なことであったが、この場に於いてはウォズが最も頭が回る。ゲイツは冷静ではなく、一見落ち着いて見えるソウゴも内心は冷静では居られず、少しでも箍が外れればツクヨミを助ける為に宛も無く走り回ってしまいそうになる。
「──スウォルツが私たちに屈服を迫る為の脅迫に使うとしたら、ツクヨミ君は人質として生かされるだろう」
ウォズが可能性の一つを上げる。だが、これはソウゴたちにとって都合の良い展開に過ぎない。ウォズも分かっており、『しかし』と言って話を続ける。
「今のスウォルツの力を以ってすれば脅す必要も無く私たちを蹂躙出来るだろう。それに、スウォルツはツクヨミ君から力を奪った。逆に言えばツクヨミ君もスウォルツから力を奪える可能性が考えられる。もしそうなら、スウォルツは彼女を危険と判断して排除するだろうね……」
悲観的──ではなく最も現実的と思われる推測。
「スウォルツがツクヨミ君を生かしておく可能性は……限りなく低い」
その言葉を聞いた瞬間、ゲイツは川堤の柵に拳を叩き付けていた。鈍い金属音が響き渡り彼方へ消えていく。
音の余韻が消え去っても誰一人言葉を発することが出来なかった。
◇
それから暫く経った後、三人は別々に行動をしていた。いつスウォルツが襲い掛かってくるか分からない状況下。三人で固まって行動することが正しいが、ツクヨミの件で冷静さを欠かしている三人が一つの場所に集まっていたら、その内揉めるかもしれないと危惧。その結果が頭を冷やすことを目的とした別行動であった。
ソウゴは宛も無く黙々と歩き続けていた。いつの間にか高校時代の通学路まで来ている。無意識に向かった先は三年間で身に染みついた道であった。
「おー! 常盤!」
後ろから名を呼ばれ、足を止めて振り返る。
「久しぶりだなぁ!」
「小和田っ!」
高校時代の学友であった小和田がカジュアルな服装で笑顔を向けていたが、振り返ったソウゴを見て目を丸くする。
「お前!? その傷どうしたんだよ!?」
ソウゴは言われて自分の今の格好に気付いた。服は薄汚れ、顔や手には擦り傷や乾いた血が張り付いている。道理で道で会った人たちが二度見する訳である。
「あー、いや、これは、ちょっとね……大丈夫大丈夫」
上手い言い訳が思い付かず、曖昧な言葉で濁す。
「そういえば、卒業以来じゃない? 今、何してんの?」
深く聞かれると厄介なので、ソウゴの方から話題を振る。
「聞いて驚けよ。ゲームの国際大会に出場したんだけど、今日勝てば日本代表になれる!」
思っていた以上にスケールの大きい話を返された。
「すげぇ……凄いじゃん!」
率直にそれしか言えなかった。授業をサボってゲームに熱中している姿を見た事があったが、ここまでの腕前とは思っていなかった。
ソウゴの言葉に小和田は誇らしげな表情となる。が、一方で知人の活躍を我が事の様に喜んでいたソウゴの表情は曇り始めていた。
「それにしても今日か……応援しに行きたいけど気分じゃなくて……」
いつもなら迷わず応援しに付いて行くが、ツクヨミのことが気になってそれどころじゃない。
「らしくねぇなー! いいから来いよ!」
ソウゴの腕を掴んで半ば強引に引っ張っていく小和田。消極的なソウゴの姿を心配し、小和田なりに元気付けようとしての行動であった。
ソウゴも小和田の気遣いを理解し、厚意を無下にすることも出来ず、されるがまま小和田に引っ張られてゲーム大会の会場に連れられていった。
数時間後、肩を落として会場を後にする小和田の後ろをソウゴは見ていた。
小和田は最後の最後で対戦相手に敗北し、日本代表の座を手に入れることが出来なかった。
大好きなゲームに負けて夢であった日本代表になれなかったこと。ソウゴにカッコイイ姿を見せようとして逆に無様を晒してしまったこと。その二つのせいで痛ましい後ろ姿をソウゴに見せている。
「小和田……」
自分のことでも精一杯のソウゴが、何とか気遣う台詞を言おうとしたが、小和田はそれに耐え切れなくなったのか逃げる様に走り出す。
ソウゴは急いで呼び止めようとしたが、小和田は少し走った後に進路先に立っていた人物にぶつかって尻餅をついてしまう。
小和田がぶつかった人物を見て、ソウゴは啞然とした。
「俺がお前の世界を作ろう」
スウォルツが薄っすら笑うと、手を小和田に向ける。すると小和田の体は水銀の様なものに包み込まれ、何処かに消えてしまった。
「スウォルツッ!」
目の前で小和田を消されたソウゴは、怒りの表情のままスウォルツの前に立つ。
「小和田に何をした! ツクヨミは無事なのか!」
「一度に二つも質問をするのはマナー違反じゃないか? ジオウ」
「答えろ!」
茶化すスウォルツを無視し、詰問するソウゴ。
「さて……? この男は分かるが、ツクヨミはどうなっているのやら……?」
「ふざけるな!」
実際のところ、ツクヨミがあの後どうなってのかスウォルツは知らない。嘘は言っていないが、スウォルツの態度のせいでソウゴは小馬鹿にされていると思ってしまった。尤も、スウォルツも分かっていてわざと煽っていたが。
「さて、この男に因んで俺もお前にゲームを用意してやろう」
「ゲーム……?」
「お前に相応しいゲームだ」
銀色のオーロラが現れ、そこから一人の男性が現れた。
黒革のジャケットに同色のレザーパンツ。茶に染まった髪には青いメッシュが入っている。肩膝を突いた体勢から立ち上がった男は自分の体を不思議そうに見た後、一笑する。
「──またか。ようやく死ねたと思ったんだがな」
我が身に起こったことに対し、他人事の様に笑う男。
「誰?」
「死神に名を聞くか? 地獄に逝ったらこの名を告げろ」
ソウゴと向き合う男。その腹部に巻かれているのは間違いなく変身の為のドライバー。仮面ライダーWのドライバーと似ていたが、Wのドライバーには二つスロットがあるのに対し、男の付けているドライバーにはスロットが一つしかない。
「大道克己。またの名を仮面ライダーエターナル!」
『エターナル!』
取り出したのはガイアメモリ。それを起動させ、音声を響き渡らせる。
「変身」
スロットにガイアメモリを挿し込み、横へ倒す。
『エターナル!』
ガイアメモリから放たれたエネルギーが物質化。無数に出現したそれが逆回しされた映像の様に大道克己の体に張り付き、形を変えていく。
真っ白な外装。両手から肘に掛けて青い炎で彩られる。額には、トライデントを思わせる三又に分かれた角。その下には∞の形をした黄色の複眼。
完了と同時に青い炎が吹き荒れると、首元に巻いてある黒のローブが揺れる。
仮面ライダーエターナル。ソウゴにとって未知の仮面ライダーが彼の前に立ち塞がった。
「さあ、地獄を楽しみな!」
右親指を下に向け、サムズダウンのハンドサインを見せるエターナル。
ソウゴはジクウドライバーを装備。ジオウライドウォッチも出し、後はグランドジオウライドウォッチを出すだけだが──
「ふっ」
ソウゴの視界の端に映るスウォルツ。これ見よがしにアナザーディケイドVEウォッチを手の中で弄んでいた。
少し前に召喚した武器や仮面ライダーを奪われたことを思い出す。グランドジオウの力をスウォルツの前では出せない。
「──ッ変身!」
『仮面ライダージオウ!』
仕方なくジオウへ変身したソウゴ。
「はあっ!」
変身直後のジオウに、エターナルが拳を突き出す。それを同じく拳で迎え撃つジオウ。拳と拳が衝突し、マゼンタの光と青い炎が噴き上がる。
そのままエターナルは殴り抜け、ジオウを後ろに下がらせるとすかさず拳を繰り出す。
青い炎を纏ったエターナルの拳を両手で逸らし、ジオウの膝がエターナルの腹部を突き上げる。しかし、エターナルはこれを掌で受け止めた。
そこからエターナルは体ごとぶつかりジオウを怯ませる。この時、僅かに視線がエターナルから外れてしまう。視線を戻したジオウが見たのは眼前に広がる黒一色。
エターナルが纏うローブが顔面に巻き付き、ジオウから視界を奪う。
「はっ!」
ジオウの鳩尾に刺さるエターナルの拳。そこから肘が脇腹を打ち、正拳が装甲越しに内臓を揺らす。連続して打ち込まれるエターナルの徒手空拳。そして、最後に強烈な掌打が胸部を打つ。
「ぐはぁ!」
呼吸が出来なくなり、体内のものを全て吐き出してしまいそうになる。と、突然黒く染め上げられていた視界が光を取り戻す。巻き付けられていたローブはエターナルの許に戻り、その代わりにジオウの眼前にはナイフが突きつけられていた。
銀の刀身に黒一色の柄とガイアメモリ用のスロット。無駄のない作りであり、その無機質さが相手を殺す為の武器であることを強調している。
目の前にナイフ──エターナルエッジを突き付けられ、ジオウの動きが一瞬硬直する。その瞬間にエターナルはジオウの懐に潜り込むと同時にナイフで胸部を斜めに斬り付け、手首を返し、腹を真一文字に斬る。
「くっ!」
痛みに耐えながら拳を放つジオウであったが、苦し紛れの反撃などエターナルには当たらない。
ジオウの手首を掴んで前に強く引く。
「うあっ!」
前のめりになるジオウ。その横を回る様にして移動するエターナル。ジオウの背後に移動すると、その背をエターナルエッジで斬り付けた。
ジオウがエターナルによって切り刻まれていく様子を、スウォルツは微笑と共に眺めている。
「俺の力を使うと、そんな芸当も出来るのか?」
観戦に浸っているスウォルツに掛けられる冷めた声。
「門矢士か……」
スウォルツは声の方は見ずに、現れた人物の名だけ言う。
「ジオウを助けにでも来たのか?」
「さあな?」
「お前の力は俺が奪った。──手出しは出来んぞ?」
視線をジオウたちから外し、士に向ける。そして、アナザーディケイドVEウォッチを見せて挑発する。だが、士はスウォルツの挑発には乗らず、不敵な笑みを浮かべていた。
「そうか? 生憎、俺の力ってのは──」
士がスウォルツに手を翳す。
「俺の存在そのものなんだけどな」
指を振るうとエターナルが出て来た銀色のオーロラが再び現れる。その光景にスウォルツはアナザーディケイドVEウォッチを弄ぶ手を止める。
士が指揮者の如く指を動かすと銀色のオーロラは移動し出し、士をオーロラの中に居れる。更にそこから移動してジオウとエターナルを通過。ジオウだけがオーロラの中に消えていった。
エターナルは戸惑う様に周囲を見回し、スウォルツは小さく舌打ちをする。スウォルツはアナザーディケイドVEの力を得て銀色のオーロラを自由に出せるようになった。ならば当然それがディケイドの力によるものだと思っていたが、士自身が操る能力であったのは誤算であった。
「──まあいい」
ジオウをもう少し痛めつけるつもりであったが、予定を変更する。スウォルツはとある目的のためにジオウを追い詰める必要があったが、追い詰める方法は何も本人を直接狙うだけではない。
スウォルツは懐から二枚のカードを取り出す。それはグランドジオウから奪ったブレイドとオーズが描かれたカード。
「ふぅん!」
スウォルツがそのカードを握り締めると、マゼンタと黒を混ぜ合わせた光がカードの中に注ぎ込まれていく。
そして、それを空目掛けて放る。
「行け。奴らを徹底的に追い詰めろ」
カードは紫と金の光となって何処かへ飛んで行く。
「ふっ。死に損なったか」
横槍で戦闘を中断されたエターナルは、自嘲しながらドライバーからガイアメモリを抜こうとする。
「──待て」
それをスウォルツが止める。
「どうした?」
スウォルツが何かを凝視しているのに気付き、エターナルはその視線を追う。すると、白い服と長い髪を翻して角を曲がる女の姿が見えた。
「アルピナか……俺を誘っているな?」
考えも無く姿を見せる筈も無く、明らかに罠を仕掛けている。だが、スウォルツは敢えてその誘いに乗って、自ら罠に乗り込んでいく。どんな罠が仕掛けていようと突破出来る自信があるからだ。
「いいだろう。鬼ごっこで遊ぼうじゃないか、妹よ」
◇
「……」
「……」
ゲイツとウォズはとあるオフィス街のベンチで通り過ぎていく人々を並んで見ていた。
一緒に行動していた訳では無い。適当に彷徨っていた筈が、運命のいたずらか偶然出会ってしまったのだ。
二人ともその偶然に呆れてしまい、だからといってそれを笑い合う程の気力も無かったので無言のまま、ただ時間を潰していた。
「お前は──」
長く続く沈黙を破ったのは、ゲイツの方からであった。
「レジスタンスとして俺やツクヨミを率いていたときから、的確で非情な決断が出来る奴だったな」
「……今、その話をするのかい?」
「だが、その決断が出来なければ多くの仲間の命が失われていた。不快に思わなかったと言えば嘘になるが、部隊を率いるのはお前しかいないと思った」
「ゲイツ君……」
「その時から鈍ってはいないようだ。お前の決断で俺とジオウは助かったからな……」
ゲイツの言葉を受け、ウォズは小さく笑いながら俯く。
「どうやら、私が思っている以上に情けない姿を晒していたみたいだ。君にこうやって励まされるのだから」
「……別に励ましてなどいない。事実を言ったまでだ」
「そういうことにしておくよ」
過去を振り返り、ゲイツとウォズの折り合いが悪くなったレジスタンス時代のことを出してウォズに活を入れるゲイツ。
ふと、思い返しある疑問が湧いて来る。
「……そうだ。お前は冷静沈着で慎重な奴だった」
「もう褒め言葉は良いよ」
「だからこそ不思議に思えて仕方がない。何故、わざわざレジスタンスを裏切ってオーマジオウに付いたんだ?」
肩を並べて戦う様になり、怒りと憎しみが薄まった今だからこそ冷静に考えることが出来る。ウォズぐらい聡明ならばオーマジオウと戦う前に勝てないことが分かっていた筈である。なのにレジスタンスに入り、数々の作戦を熟してきた。
オーマジオウの懐に入る為にしても回りくどい。元々、オーマジオウのスパイであったとしても、オーマジオウ自身そんな小細工など必要無い程に強い。
考えれば考える程ウォズの行動が不自然に思えてくる。
「お前は……もしかして、レジスタンスの為でも、オーマジオウの為でもない別の目的があったんじゃないのか?」
ウォズは目を見開いてゲイツを見る。ゲイツは核心に触れた気がした。
「流石はゲイツ君、っと言っておこう」
「……そうか」
「追求をしないのかい? 私は君たちに隠し事をしていると白状したようなものなんだよ?」
「お前が胡散臭い奴なのはとっくの前に知っている。今更、秘密の一つや二つ増えた所で驚きもせん」
「酷い言い様だ」
「──だが、いつかは俺たちに話す時が来るんだろう?」
ウォズは手に持っていた『逢魔降臨暦』の表紙をなぞる。
「ああ、いつかね」
そう遠く無い未来に、という言葉を心の中で付け加える。
その時、二人は何かを感じ、ベンチから急いで立ち上がる。直後、空から紫と金の二色の光が落ちてきた。
突然のことに周囲の人々は驚き、パニックになって逃げ惑う。
光が消えるとそこに居たのは二人の仮面ライダー。
紫に体に恐竜の力を宿す仮面ライダーオーズプトティラコンボ。金色の重厚感ある装甲に大剣を握る仮面ライダーブレイドキングフォーム。
「何だこいつらは……? ジオウが呼び出したのか?」
「──いや」
ウォズが否定する。すると──
「はははははは! ふははははははははは!」
「うおおおおおおおおおおおお!」
キングフォームは狂ったように笑い、プトティラコンボは獣同然の咆哮を上げる。
「まともじゃないぞ、こいつら!」
「最悪だね。暴走している……」
キングフォームの赤眼とプトティラコンボの緑眼がゲイツとウォズを捕捉する。狂気と殺気が容赦無く叩き付けられる。
「狙いは間違いなく俺たちだ! 行くぞ!」
「これもスウォルツの差し金かな?」
ゲイツはゲイツライドウォッチとゲイツリバイブライドウォッチを、ウォズはギンガミライドウォッチを構える。
『変身!』
『リ・バ・イ・ブ! 剛烈! 剛烈!』
『ギンギンギラギラギャラクシー! 宇宙の彼方のファンタジー! ウォズギンガファイナリー! ファイナリー!』
ゲイツリバイブ剛烈、ウォズギンガファイナリーになるとキングフォームとプトティラコンボは獣の様な動きで二人に襲い掛かる。
キングフォームは黄金の大剣──キングラウザーを片手で持ち上げて振り回す。技など無い力任せの斬撃。ゲイツリバイブはのこモードのジカンジャックローでその刃を受け止めるが──
「があっ!」
「ぐうっ!」
一撃で大きく後退させられる。重厚な見た目に相応しい重い一撃。
「ぐるああああ!」
「くっ!」
飛び掛かってきたプトティラコンボの脳天目掛けて振り下ろしてきた拳を、ピュアパワーによる掌打で起動を逸らす。外されたプトティラコンボの拳が地面にめり込む。だが、プトティラコンボが手を引き抜くとその手にはティラノサウルスの頭部を模した斧──メダガブリューが握られており、引き抜くと同時にウォズに斬りかかる。
「何なんだこいつらは!」
「この二体の仮面ライダーは、我が魔王から奪ったライダーだ! 恐らくアナザーディケイドの力によって意図的に暴走させられている!」
仮面ライダーは強くなる。しかし、強くなるということは場合によっては重いリスクを生む。激しい感情や強大な力に呑まれ、制御と自我を失い、目に映るもの全てを倒す為、破壊する為に暴れ回ることもある。
力の暴走というライダーの負の側面──激情態ライダー。
「ぅえあ! うぇい!」
上下左右に滅茶苦茶にキングラウザーを振り回し続けるキングフォーム。疲れなど知らないかの様に常に全力であった。
「がああああ!」
中腰の体勢で爪を突き立てるが如くメダガブリューを振るうプトティラコンボ。更には腰部から太い尾を伸ばしての攻撃まで混ぜてくる。
キングフォームの上段からの斬り下ろしがゲイツリバイブの肩に命中。
『スキャニングチャージ!』
プトティラコンボの両肩から二本の爪が勢いよく伸びる。ウォズは反射的に爪を掴む。プトティラコンボの頭部から大きな翼が広げられ、それが羽ばたくと冷気が発生し、地面を凍らせながらウォズも凍結させる。
圧倒的力を思うが儘に振るい続ける姿は脅威。ゲイツリバイブもウォズも苦戦を強いられる──
『スピードターイム!』
『タイヨウ! ファイナリータイム!』
──以前までなら。
『リバイ・リバイ・リバイ! リバイ・リバイ・リバイ! リバ・イ・ブ! 疾風! 疾風!』
『灼熱バーニング! 激熱ファイティング! ヘイヨー! タイヨウ! ギンガタイヨウ!』
ゲイツリバイブの左右に開く胸部装甲がキングフォームの大剣を跳ね除け、ウォズの太陽を彷彿とさせる高熱が氷を溶かし尽す。
疾風と化したゲイツリバイブが踏み込むと即座に高速に達し、キングフォームの背に裂傷を刻み、プトティラコンボが再び発した冷気をウォズの灼熱が相殺する。
暴走するキングフォームとプトティラコンボ。ある程度の相手ならば問題なく蹂躙するだろうが、どんなに強かろうと所詮は力だけ。心の欠けた中身の無い暴力に屈する程ゲイツリバイブとウォズが辿って来た道は脆弱ではない。
「がああああ!」
プトティラコンボはメダガブリューを斧からバズーカに変形させ、圧縮したエネルギーを発射しようとする。
「やはり恐竜ならこれかな?」
その言葉の後にプトティラコンボの頭上が赤く染まる。プトティラコンボが思わず上を見上げると、頭上は炎が雲の様に広がっていた。そして、その炎の雲を突き破り隕石に見立てた火球がプトティラコンボへ降る。
「ぐがあああああ!」
恐竜絶滅の原因の一つと考えられている隕石。それを模した攻撃はプトティラコンボの全身を焼き、穿つ。
メダガブリューを振り回して火球から逃れようとするプトティラコンボ。その胸部に軽い感触が当たる。
気付けば目の前に立っているウォズ。タイヨウフォームの力故に、自らが生み出した火球群の中でも平気な様子。
『ファイナリー! ビヨンド・ザ・タイム!』
プトティラコンボに押し当てた掌が燃え上がり──
『バーニングサンエクスプロージョン!』
──掌から放たれる火焔がプトティラコンボの胸を貫く。
一方でキングフォームはゲイツリバイブの動きに翻弄されていた。闇雲にキングラウザーを振るい、ゲイツリバイブに当てようとするが、無駄の多い大振りが当たる筈も無い。
キングフォームは多数の能力をその身に宿している。それを使えば、ゲイツリバイブと互角以上に戦えただろうが、強過ぎる闘争本能はキングフォームから思考を奪ってしまい、その選択肢を与えない。
度重なる連撃で遂にキングフォームの動きが止まる。
『ジカンジャック!』
つめモードのジカンジャックローにライドウォッチを填め込む。填めたライドウォッチは──
『カイザ!』
ゲイツリバイブが加速してキングフォームの周囲を飛び回る。飛んだ後には地面に黄色く輝く線が残る。その線は瞬く間にキングフォームを囲う。
『スーパーつめ連斬!』
地面に残る線が一斉にキングフォームの体へ這い上がり、光の線が捻じれて螺旋状になりキングフォームを縛り上げる。
線と線が重なり合い網目状になった所にジカンジャックローを突き出したゲイツリバイブが黄色の光を纏って突撃。
キングフォームを突き抜けていくとΧの紋章がキングフォームの体に浮かび上がる。
致命傷を受けたキングフォームとプトティラコンボはほぼ同時に爆散。光の粒となって何処かへ消えてしまった。
「倒せたか……」
「本物に比べれば大分質が下がっていたからね」
一対一だからこそ勝てたが、これにアナザーディケイドVEやそれが呼び出したライダーが混じれば苦戦を強いられていただろう。
「こんな奴らが何体もいたら最悪だな」
「我が魔王と合流しよう。もしかしたら、襲われている可能性も考えられる。──それにしても」
ウォズはゲイツリバイブが持っているカイザライドウォッチに視線を落とす。
「それを使うとは分かっているね、ゲイツ君」
「はあ? 急に何を言っている?」
「まあ、分かる人には分かる話さ」
ウォズの意味不明な台詞に、ゲイツはただ困惑した。
◇
オーロラを通った先は、ソウゴがさっきまでいたゲーム大会の会場であった。そこでは小和田がゲームをしている。
『やったー! 勝った! 常盤見てたか!? これで世界大戦に行ける!』
何故かそこで優勝している小和田。本来ならば負けていた筈である。すると、小和田はゲーム筐体に座り──
『やったー! 勝った! 常盤見てたか!? これで世界大戦に行ける!』
立ち上がって同じ台詞で喜ぶ。それを何度も何度も繰り返す。
「何ここ……」
「スウォルツが創った世界らしいな……」
隣にいる士がそう呟く
「何で? 小和田は負けたのに……」
「そういことか……大体分かった」
「どういうこと?」
「ここはありえなかった世界。失われた可能性の世界と言っていい」
士が言うに、小和田には勝っていたかもしれない『もしも』の可能性があった。スウォルツはそれを利用し、この世界を創り出した。
「さしずめアナザーワールドと言った所か」
「アナザーワールド……でも、一体何の為に?」
「お前が戦っていた大道克己という男は、嘗て仮面ライダーWによって倒された。だが、大道克己にも生き延びたという『もしも』の可能性がある。スウォルツは、その『もしも』を引き出す為にあいつを生贄にしてこの世界に閉じ込めている。ダークライダーを蘇らせる為に……かもな」
あくまで推測な為、士は断言はしなかった。
「よし。からくりは分かった。帰るぞ」
「え……? 小和田はどうするの!?」
あっさりと退こうとする士に、ソウゴは待ったを掛ける。
「ここはあいつの世界。この世界を破壊しない限りあいつは救えない。──仮に破壊したとしてもあいつが無事かどうかは保障出来ないぞ?」
士の言うことは一理あった。このアナザーワールドで何かをすれば小和田自身にも影響があるかもしれない。
「それよりもスウォルツだ。ここがゴールの筈が無い。もっと先に何かを企んでいる筈だ。そして、スウォルツは一つ思い違いをしている」
「思い違い?」
「ダークライダーはそう簡単に手綱を握らせる奴らじゃないってことだ」
◇
逃げるツクヨミを追い、海近くの広場まで来ていたスウォルツとエターナル。
やがて、ツクヨミは逃げるのを止めて、スウォルツに向き直った。
「鬼ごっこはもうおしまいか? アルピナ?」
「……貴方にその名で呼ばれたくないわ」
「冷たいな。たった二人の兄妹ではないか」
大仰な仕草で悲しむ振りをするスウォルツ。
「ええ、そう。たった二人の兄妹。でも、それも今日で終わり。ここで終止符を打つ!」
コツコツと足音を響かせ、ツクヨミに歩み寄るのはアナザーゲイツMA。
「スウォルツゥゥ……!」
「貴様は……加古川飛流だな? 驚きだ。生きていたことも新たな力を手に入れたことも、そして、何より貴様がアルピナと手を組んだこともなぁ!」
「全て聞いたぞ、スウォルツ! 俺の人生を滅茶苦茶にした報いを受けさせてやる!」
「知ったことか。道化が王の夢を見られたことを感謝しろ」
「ふざけるなぁぁぁぁ!」
アナザーゲイツMAは憎悪の叫びを上げてスウォルツに向かっていく。しかし、スウォルツの前に立つエターナルがそれを阻む。
「おいおい。死神を無視して通れると思っているのか?」
「誰だ、お前は! 邪魔だ! どけ!」
「いいなぁ! その面! まるで化物だ! 化物と死神のパーティータイムと行こう!」
払われるエターナルエッジ。アナザーゲイツMAはそれを腕で防ぐ。硬い外装はエターナルエッジの刃を通さない。
「はあっ!」
「ふん!」
アナザーゲイツMAの拳とエターナルの掌打が衝突。赤、黒、金のエネルギーと青い炎が絡み合う。
力が反発し合い、互いに吹き飛ぶが、エターナルは吹き飛びながらもエターナルエッジを振るい、刃から青いエネルギーの斬撃を飛ばす。
「効くかぁ!」
アナザーゲイツMAがアナザーライダーたちの顔で作られたマントを振るうと、斬撃は全て掻き消されてしまう。
空中での攻防が終わり、両者着地する。
「やるな。お前だったら、俺を死なせられるかもなぁ」
「望み通りにしてやるっ!」
アナザーゲイツMAは体に張り付く頭骨の一つを叩き割る。
『クロォォズ』
召喚されるアナザークローズマグマ。流れ落ちるマグマが足元を焦がす。
「ふん。二対一か。死神が怖いのか?」
「勘違いをするなよ?」
「何?」
アナザーゲイツMAは徐に右腕をエターナルへ真っ直ぐ伸ばす。右手首の上下から赤、黒、金の色が混ぜ合わされた光が伸び、それが弓の形を成す。
だが、その弓には番える為の肝心な矢が無い。
「一対一だ」
アナザーゲイツMAの左手がアナザークローズマグマに触れる。
「ご、が、ぐ、ががががが」
アナザークローズマグマの体が強制的に変形。両手両足を上下に伸ばしたかと思えば、体が捻じれ出し、細く収縮していく。
苦痛を伴うらしいその現象が収まると、アナザーゲイツMAの左手の中に一本の矢が握られている。黒曜石、流動するマグマ、その矢にはアナザークローズマグマの面影が強く出ている。
アナザーゲイツMAはそれを弓に番え、光の弦を限界まで引く。
エターナルの直感が矢を危険と判断し、ローブで防御を固めようとするが──
「遅い」
──アナザーゲイツMAが弦を離すと、音速を超える速度で矢は飛び、エターナルのローブの隙間を通り抜けて体へと命中。
刹那の間の後──
「ぐああああああ!」
──エターナルの体を内側からマグマで出来た八頭の竜が食い破って出て来る。
全身に穴を開けられたエターナル。その体が竜たちの熱によって発火し、燃え始める。
「中々やるな……またな」
スウォルツが手を動かすと、オーロラが現れ、エターナルはオーロラによって消えてしまう。倒したという感触をアナザーゲイツMAは覚えなかったが、取り敢えずは邪魔者を消すことが出来た。
「次はお前だ……!」
「そう焦るな。お前たちの遊び相手はまだいる」
『ディケイド激情態ッ!』
アナザーディケイドVEに変身したスウォルツは再びオーロラを召喚。オーロラが通過するとそこには三人の人物が立っていた。
もしもの可能性を失った者をアナザーワールドに閉じ込め、蘇らせたダークライダーたち。
黒のスーツ姿の整った容姿の青年。白いメッシュが入った髪を一房前髪から垂らし、後ろ髪を一つに纏め、カーキ色のジャケットにハーフパンツの長髪の青年。最後の一人は、前の二人よりも倍近く歳が離れており、白髪交じりの頭髪をし、スーツの上に白衣を羽織った中年の男性。
「行け」
アナザーディケイドVEが指示を出す。アナザーゲイツMAとツクヨミが身構える。しかし、どういう訳か三人は動かない。
「聞こえないのか? 行け!」
もう一度指示を飛ばす。返って来たのは──
『断る』
──まさかの拒否。
「何……?」
アナザーディケイドVEにとってダークライダーたちが反抗するのが予想外だったらしく、声が僅かに動揺していた。
彼は運が良かった。今まで呼んだダークライダーたちは、自我というものが殆ど薄れていた。大道克己ですら半ば自暴自棄の様なものであったのだ。つまりアナザーディケイドVEにとって当たりと言えた。
だが、今回呼んだダークライダーたちは大外れ。方向性は違うが、強い個我がアナザーディケイドVEに反抗する。
「貴様如きが神を操れると思うなぁぁぁぁ!」
「ハハハ、すまないねぇ。私の才能はもっと価値のあるものなんだ。君程度には扱うことなど出来ないよ」
「目的の為とはいえ何度も道を外れたことをしてきたが、私はもう道を外れるつもりはない。息子に顔向け出来なくなる」
「俺に逆らうつもりか……?」
答えは三人が巻き付けるドライバー、そして宣戦の言葉。
黒いスーツの青年はガシャットと呼ばれるアイテムを祈る様に両手で挟む。
『ゴッドマキシマムマイティ! エーックス!』
「グレードビリオン……変身!」
長髪の青年はレモンの刻印がある錠前を構える。
「変身」
『レモンエナジー!』
白衣の中年男性の両手には青と赤のボトル。それを上下に振り、二つのスロットがあるドライバーに挿し込む。
『ラビット! タンク!』
ドライバーに付けられたハンドルを回すと、ドライバーからチューブが伸び、ボトルから抽出された成分が流れていく。
『Are You Ready?』
「変身!」
傲慢だが力ある者が呼び出した力が、その驕りを正す為に傲慢なる者へ反逆の牙を剝く。
今回は名前を出しませんでしたが、まあ、答えを出しているようなもんですよね。
因みにこの三人を選んだ理由は……私の趣味だ。いいだろう?
先にどちらが見たいですか?
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IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
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IFゲイツ、マジェスティ