クジゴジ堂内の一角にあるテーブル。そこは異様な雰囲気に包まれていた。
テーブルには順一郎が腕によりを掛けた豪勢な和食が並んでいるが、ソウゴはあまり箸が進まず周囲を見回し、ゲイツとウォズは手も付けずに同席者に対し鋭い視線を向けている。
忍もまたゲイツとウォズの様に静かに並んでいる料理に目を向けているが、戦極と黎斗はそんな刺々しい雰囲気などお構い無しに料理を食べ進んでいく。
「いやいや。他人の手料理を食べるなんて久しぶりだ。利用される為にこちら側に呼ばれた時は気乗りはしなかったが、こういうもてなしなら来た甲斐も少しはあったね」
「ふむ。悪くない。食事は本来不要だが、神に捧げられた供物を蔑ろにする訳にもいかない。舌を楽しませることは心を楽しませ、その刺激は新たな想像を与えてくれる」
順一郎の料理の味を気に入ったらしく、喋りながらも箸が止まらない。
「まさか、アナザーバースだった檀黎斗が仮面ライダーだったとは……」
ソウゴから事情を少し聞いていたゲイツは、黎斗を見ながら呟く。今更ながら何故あの時アナザーバースがライドウォッチを落とした理由か判明した。
「我が魔王。何故よりにもよって彼らを私たちの身内に……」
「ごめん……放ってもおけないし、連れて戻ったら丁度おじさんが居て、咄嗟に言っちゃった……」
「まあ、言ってしまったものは仕方ない。だが、気を付けてくれ。仮面ライダーデュークの戦極凌馬と仮面ライダーゲンムの檀黎斗は信用するべきじゃない。あの二人は目的の為なら平気で他人を犠牲に出来る。仮面ライダービルドの葛城忍の方はまだ信用出来るが──二人に比べれば、の話だが」
自らエゴの為なら非人道的行為を躊躇無く行えるのが戦極凌馬と檀黎斗である。葛城忍はまだ良心があるが、それでも目的の為ならばその良心を押し殺して冷徹になれる。
「あはははは。どうやらそこの彼──おっと今は私の弟だったかな? ──私たちのことについて、どういう訳か詳しいみたいだ。まあ、私が悪い大人であることは認めるよ。せいぜい、利用されない様に気を付けることだ」
「犠牲? 品の無い言葉は止めてもらおう。全ては私の崇高なゲームを完成させる為の礎。何一つ間違ったことなどしていないが? 私の名を呼ぶときは檀黎斗神と呼びたまえっ!」
「……」
三者三様の反応を見せる。戦極は悪であることを認め、黎斗は悪びれた態度を見せず、忍は沈黙し相手の評価を素直に受け止める。
「ジオウ。敵の敵が味方とは限らない。信用するべきじゃないぞ、こいつらは」
ゲイツは、主に戦極と黎斗の態度に嫌悪感を示し忠告する。
「けど今は少しでも戦力が欲しい。スウォルツは今も着実に力を増している気がする」
強い後悔を持つ者をアナザーワールドに閉じ込めることでスウォルツはダークライダーを召喚することが出来る。黎斗たちは偶々スウォルツに反抗してくれたが、他のダークライダーがそうとは限らない。寧ろ、黎斗たちの反抗を見て、より傀儡にし易いダークライダーを選ぶ可能性がある。更にはグランドジオウの力を利用し、アナザーディケイドVEの力で意図的に暴走させた激情態ライダーも使役している。
ゲイツは、ソウゴの意見に一定の理解を示す。アナザーディケイドVEの力を体験している身としては、確かに少しでも戦力が欲しい。
一方でウォズは心の裡では渋い表情をしていた。あらゆるライダーの情報を持つウォズは当然三人の詳細についても知っている。三人共研究や目的の為には人体実験すら厭わないダークライダーに相応しい暗い部分を持つ。しかし、スウォルツという強敵が居る現状でこのことを教え、三人を敵に回すのは得策ではない。ソウゴやゲイツの代わりに自分が不穏な動きがないか目を光らせておく、と強く決意する。
そこに順一郎が追加の料理を運んで来る。
「あれ? もしかして和食、ダメでした?」
忍が料理に手を付けていないのを見て、順一郎が申し訳なさそうに尋ねる。
「──いえ、すみません。こういう手料理は久しぶりなのもので。つい目移りをしていました」
これ以上何も手を付けないのは失礼と思ったのか、忍は箸を手に取り、並べられた料理の中に目を通す。
すると、忍の目が一点に集中する。忍が見ているのは皿の上に並んだ卵焼き。
それを一つ取って小皿に移すと、箸で一口大に切って口の中へと運ぶ。数回咀嚼すると忍の動きが止まった。
「もしかして……不味かったですか?」
「──違います。とても美味しい卵焼きです。ただ、記憶にある妻の作った卵焼きとの差に少し驚いてしまって……そうですね、卵焼きはこういう味でした」
「変わった作り方でもするんですか?」
「妻が作る卵焼きはとても甘かったんですよ、砂糖菓子みたいに。息子が甘い卵焼きが好きでしたから……」
ここまで無表情であった忍の顔が僅かに綻んだ。過去を懐かしむ表情である。
「あれ? ゲイツ君って甘党だったの? そう言ってくれたらもっと早くお菓子作りに手を出したにー。あ、今度、またアップルパイ作るね」
「え、ああ、その……はい、楽しみにしています……」
設定では忍の息子がゲイツになっているせいで、順一郎は忍の言う息子をゲイツだと勘違いしてしまう順一郎。今更、その設定を覆すことも出来ないのでゲイツは話を合わせるしかなかった。
◇
全員が食事をし終えると、順一郎はいつものように頼まれた家電を修理する為に店の方に向かい、残されたのはソウゴたちだけになる。
今後のことについて話し合うつもりであったが、その前にソウゴにはゲイツとウォズに報せなければならないことがあった。
「何っ!? ツクヨミがっ!?」
「無事だったというのかい……?」
ツクヨミの無事を二人に報告すると同時に何があったのかも教えた。
「間違いないんだな? 偽者ではなく?」
「間違いないよ。時間を操る能力も見せてくれたから」
「しかし、あの状況でスウォルツから逃げられるとは……」
ツクヨミの無事は素直に嬉しく思うが、同時に半信半疑になる二人。つい最近外見を真似た偽者に騙されたせいで、やや過敏になっている。
「ツクヨミというのは、白い服を着た髪の長い女性のことか?」
三人の会話に忍が入ってきた。
「彼女なら君たちが言う、アナザーライダーと思わしき存在と一緒に行動をしていた」
「アナザーライダーと!?」
その情報にゲイツとウォズもだが、ソウゴも驚く。ソウゴはツクヨミによって時間停止を受けていたせいで、アナザーゲイツMAの存在を認識していなかった。戦いの飛び火を恐れたツクヨミが意図的にやったことだが。
「何故アナザーライダーとツクヨミが一緒に行動をっ!」
「それは分からない。だが、見る限りでは協力関係にあるのは間違いない。アナザーライダーが彼女を助けるのを見た」
「となると、あの時スウォルツからツクヨミ君を救い出したのはそのアナザーライダーだと考えられる」
「しかし、一体誰だ? アナザーライダーなのにスウォルツと敵対するなど」
アナザーライダーの殆どはタイムジャッカーから力を与えられる為、基本的にタイムジャッカーに従っている。真っ向からタイムジャッカーに反抗するアナザーライダーなど見た事が無い。
スウォルツに強い敵意を抱く人物。思考するソウゴの脳裏にある名前が過ったが、すぐにそれは無いと思ってしまった。何故ならその人物もまたソウゴたちに対して強い敵意を抱いており、協力するとは到底思えない。
「──ツクヨミ君のことも気になるが、今はスウォルツへの対策を考えよう。スウォルツがアナザーディケイドの力を得た能力──
「アナザーワールド……」
「──そう。スウォルツが創り出した世界」
別空間に存在する世界であり、行く方法も限られている。その道を開けられるのはスウォルツ本人か──
「ディケイドかディエンドなら行けるかもしれないが……彼らは当てにならない」
「確かにな」
士は神出鬼没の気紛れ、もう片方の海東に至っては味方前提で語ることが間違っている。振り回されてきたゲイツもウォズに同意する。
重い空気が生まれ、一歩目から躓こうとしている作戦会議。
「成程。人間に感染するコンピューターウィルスか! それを利用しデータを実体化させることで特殊な空間を生み出し、更にその内部を自由に変換するという訳か……他にどんな応用がっ!?」
「未知の侵略者! それが齎す禁断の果実! いいぞぉ! 別世界に触れることで私のイマジネーションが新たな概念を得た! やはり私の神の才能は底知れないなぁ! ヴェハハハハハハハ!」
戦極と黎斗はそんな状況など無視し、互いに気になった点を情報交換という形で聞き合い、別世界の知識や技術を取り入れあっていた。仲良くしている、というよりもお互い利用し合っているだけだが、傍から見ると気の合う者同士の会話にしか見えない。
「こっちも当てにならないがね……」
空気を読まずに自分のしたいことしかしない二人にウォズは呆れた眼差しを向け、ゲイツは怒りを孕んだ突き刺すような目、忍は咎める様な冷たい目で見るが、そんな視線を数多に受けて来た二人には全く効かない。
「あと門矢士が言っていたけど、アナザーワールドに囚われている人を救うには、その世界を破壊しなければ救えない、って」
話だけ聞くと途方も無い様に思われる。閉ざされた世界とはいえ、それを破壊するにはどれだけのエネルギーが必要となるのか想像もつかない。
「世界を破壊する程のエネルギーか……その点に関しては特に問題無いだろうね」
しかし、ウォズは事も無げに言い、黎斗の方を見る。
「幸か不幸か、こちらには最強クラスの力を持つライダーがいる。彼ならばアナザーワールドの破壊も可能な筈だ」
「ほう。分かっているじゃないか」
戦極との話を止め、満面の笑みをウォズに向け上機嫌そうな黎斗。ソウゴたちの話に興味が無いと思われていたが、しっかりと聞いていたらしい。
「だが、問題もある。どうやって彼をアナザーワールドへ送り込むかだ」
「……神様の力でどうにかならない?」
「神の才能に不可能は無い! が、それなりの時間が必要だ」
スウォルツの動きを考えるとあまり時間を掛けたくはない。
「ただし、誰かが先にそのアナザーワールドに行けば話は別だ。そうすれば私もアナザーワールドに行ける」
黎斗の答えは、この戦いに光明を見い出すものであったが、同時に新たな問題を発生させる。
「──因みにその方法だったら、どれくらい時間が掛かるの?」
「今からやれば明日の朝には出来る」
断言する黎斗。ソウゴたちの表情は険しくなる。
「誰かがアナザーワールドに……」
「だが、それはスウォルツに捕らえられることを意味する。下手をすればアナザーワールドに閉じ込められ、新たなダークライダーを生み出す贄にされるだけで終わるかもしれない」
あったかもしれない幸福を享受出来る世界。その誘惑に呑み込まれず、行動する強い意思が必要となる。
「──俺が行こう」
「ゲイツ!」
「ゲイツ君、早まってはダメだ」
それにゲイツが名乗りを上げ、ソウゴとウォズは考え直す様に止める。
「ジオウ。お前の力があれば後は託せる。ウォズ、お前のずる賢さはジオウの役に立つ。俺にもしものことがあってもお前たち二人がいれば何とかなる」
「そこにゲイツがいないと意味が無い!」
「ゲイツ君。君は自分が思っているよりも大きな存在なんだよ?」
ソウゴとウォズは説得するが、ゲイツの決意は固い。その強い意思を持つ目にソウゴたちはこれ以上の説得は無駄だと理解してしまった。
「──分った。ゲイツのことを信じる!」
ソウゴもまた決断し、ウォズもそれに反論することは無かった。
「決まったか。ならもう一つ必要な物がある」
「必要な物?」
「君たちの持つライドウォッチと言ったか? それを私に献上しろ」
「ライドウォッチをだと!?」
スウォルツと戦う上でライドウォッチは必要不可欠。そんな大事な物を易々と渡せる筈も無く、ゲイツが食って掛かる。
「待て! 言われて簡単に渡せる物じゃない!」
「ならばこの話は無しだ! 今から別の方法を考えるのだな!」
「このっ!」
「待って、ゲイツ」
ソウゴがゲイツを止める。
「分かった。持って行っていいよ」
「ジオウ!」
「今は檀黎斗神の力がどうしても必要なんだ。だから──」
ゲイツは舌打ちをし、渋々ながら納得すると、自らライドウォッチダイザーへ向かい、填めてあるライドウォッチの一つを外して黎斗へ投げる。
「元々お前の物だ。返しておく」
「おおっ。あるじゃないか。私に相応しいウォッチが!」
手の中にあるゲンムゾンビゲーマーライドウォッチを見て、黎斗は無邪気にも邪悪にも見える笑顔を浮かべる。
「──本当にいいのかい?」
「どういう意味だ?」
「アナザーワールドを破壊することは、君たちがこの世界に留まれなくなることを意味する。それでもいいのかい? という意味だ」
それを聞いて黎斗だけでなく戦極が笑う。
「全く以って問題無い! 寧ろ今は一刻も早く戻りたいぐらいだ! 戻って得た知識を基に研究をしたい!」
「私もクリエイティブな時間に集中したい! スウォルツなどというどうでもいい存在にその崇高な時間の邪魔などされてたまるか!」
「……私もまだ自分の世界でやり残したことがある」
というのが彼らの意見であった。考えてみれば、彼らはスウォルツによって強制的に連れて来られた身。そう思うのが当然なのかもしれない。
「さあ! 早速始めようかっ! 部屋を一室借りるぞ!」
「私も微力ながら手伝わせてもらうよ」
「──私も見させてもらおうか」
黎斗は手に入れたライドウォッチを持って二階へ上がっていく。それに戦極も忍もついていく。
騒がしい二人がいなくなって一階は一気に静かになる。
今は待つしかない。その時が来るまで。
そして、翌日。
「出来たぞぉぉぉぉはあぁぁぁぁぁ!」
黎斗の奇声で、一階で寝ていたソウゴたちが飛び起きる。
勢いよく階段を降りて来る黎斗。
「見ろぉぉ! これうぉぉぉ!」
半分寝ぼけているソウゴたちに見せつけたのは特に変わった様子も無いゲンムゾンビゲーマーライドウォッチ。
そのまま手渡され、どう反応していいのか困っているソウゴたちを余所に黎斗は興奮した様子で叫び続ける。
「未知の技術に触れてもこの完成度! まさに神の才能だぁぁぁぁぁ!」
徹夜明けせいか黎斗のテンションは異様に高い。
「いやぁー、流石だねー。色々と見させて貰ったよ」
戦極も二階から降りて来る。黎斗と違い目の下に隈が出来ているが、それに反して眼光がギラギラしており、こちらも静かに昂っている。
少し遅れて忍も降りて来ると、ソウゴは彼に近付いて小声で尋ねる。
「何かおかしなことがあったの?」
「おかしなことをしないか監視していたが、あのライドウォッチを弄りながら互いの技術や知識を一晩中交換し合っていただけだ。だが──」
それぞれの知識、技術を手札にし、それを見せ合うことで相手の持つ手札を自分のものにしようと貪欲な駆け引きを延々と続けていたという。忍曰く、『まるで共喰いの様であった』らしい。
兎に角、準備は完了した。ソウゴはゲンムゾンビゲーマーライドウォッチをゲイツに渡す。そしてもう一つ、ある物を渡す。
「ジオウ! これは……!」
「──頼んだよ、ゲイツ」
◇
ソウゴたちは危険を承知で敢えてバラバラに行動をする。スウォルツに狙われる可能性を少しでも高める為であった。賭けの部分はかなり強いが、固まって動けばスウォルツに警戒心を抱かせるかもしれないという判断からである。
ソウゴは周囲を見回しながら一人歩いていた。あわよくばツクヨミも見つけられないかという思いで。
通り過ぎていく人々は誰も彼もが家族や恋人と平和な日常を過ごしており、ソウゴも出来ることなら、彼らがそのまま平和な一日を過ごすことを願う。
「……ん?」
チラホラとあった人の気配が急に消える。前を見ても、後ろを見ても誰もいないことに気付く。
「まさか、お前一人で動いているとは。何か企んでいるのか?」
「スウォルツ……!」
ソウゴの前にスウォルツが相変わらず傲慢な笑みを浮かべて立っていた。
「……俺たちが何かを企んでいるなら、見破ってみたらどう?」
ソウゴは挑発しながらグランドジオウライドウォッチを構える。力を奪われるリスクがあるが、これでなければアナザーディケイドVEに歯が立たない。
「お前たち脆弱な企みなど、俺の力の前では無力だ」
嘲りながらアナザーディケイドVEウォッチを突き出す。
「お前の、じゃなくて門矢士のだろ?」
「奪ってしまえば俺の物同然だ」
「そういう考え、嫌いだな」
「お前の好き嫌いなど知るか」
睨み合う両者。互いに相容れない存在であると改めて認識する。
「変身!」
『祝え! 仮面ライダー! グ・ラ・ン・ド! ジオーウ!』
ソウゴはグランドジオウへ。
『ディケイド激情態ッ!』
スウォルツはアナザーディケイドVEへ変身。
グランドジオウはサイキョージカンギレードを構えて一気に距離を詰めると、上段からそれを振り下ろす。
「ふん!」
アナザーディケイドVEの右手刀から発せられる光刃がそれを受け止め、空いた方の手でグランドジオウの胴に掌打を繰り出すが、グランドジオウの腕がそれを防ぐ。
衝突で生み出されるマゼンタと黒と黄金の発光。それが互いを弾き飛ばす。
「くっ!」
「ふぅ……」
距離が開くと、アナザーディケイドVEは指先をグランドジオウに向け光弾を発射。無数の残像が生まれ、その全てから光弾が撃ち出される。
グランドジオウはサイキョージカンギレードを分解して、サイキョーギレードとジカンギレードの二刀流に構え直すと、迫る光弾をその二刀で斬り払う。
ばら撒かれる光弾を全て防いでいくグランドジオウであったが、突如として光弾が途切れる。
急なことに驚くグランドジオウ。そして、気付いた。さっきまで光弾を撃っていたアナザーディケイドVEの姿が無い。
「こっちだ」
声がしたのは背後。グランドジオウが二刀を振るいながら後ろを向く。だが、その二刀もアナザーディケイドVEの腕が受け止めてしまった。
「はあっ!」
アナザーディケイドVEの拳がグランドジオウの胸部に命中。
「ぐうっ!」
息が詰まる衝撃。だが、それだけでは済まない。アナザーディケイドVEはビルドのレリーフを掴むと、そこから何かを引っ張り出す。
「やめろっ!」
グランドジオウが左足で蹴りを繰り出す。アナザーディケイドVEを突き放すことが目的だったが、アナザーディケイドVEはビルドのレリーフを掴んでいた手で今度は鎧武のレリーフに触れ、そこからも何かを掴み出した。
「ふん!」
グランドジオウにアナザーディケイドVEの肘打ちが入り、突き飛ばされてしまう。
地面を転がっていくがすぐに立ち上がると、アナザーディケイドVEはこれ見よがしにレリーフから奪った力をカード化させる。
二枚のカードには鎧武とビルドが浮かんでいた。
「また貰ったぞ、お前の力を」
「返せっ!」
グランドジオウが走りだそうとするが、そのタイミングでアナザーディケイドVEは衝撃波を放つ。衝撃波がグランドジオウを呑み込もうとした時──
『つめ連斬!』
青い斬光が衝撃波を斬り裂き、グランドジオウを守る。
「ゲイツ!」
ゲイツリバイブ疾風が騒ぎを聞きつけて急いで駆け付けてくれた。
「ここは俺に任せろ!」
「ダメだ! 君に何かあったら──」
前に立つゲイツリバイブを引き留めようとするグランドジオウ。しかし、ゲイツリバイブはその制止を振り切って、アナザーディケイドVEに挑む。
「はあっ!」
ジカンジャックローの爪がアナザーディケイドVEを引き裂こうとするが、アナザーディケイドVEの体は空間に溶け込む様に消え、それを空振りさせた。
「ゲイツ。お前の存在もジオウから奪ってやろう」
少し離れた場所に現れたアナザーディケイドVEは銀色のオーロラを出し、ゲイツリバイブへ飛ばす。
ゲイツリバイブに銀色のオーロラが通過するとゲイツリバイブはオーロラの中に消えてしまった。
「──頼んだよ、ゲイツ」
ここまでは作戦通り。あとはゲイツを信じて任せるだけ。
「ふふふふ……んん?」
ゲイツリバイブをアナザーワールドへ飛ばしたアナザーディケイドVEは途中で違和感を覚える。すぐにでもダークライダーが召喚される筈なのだが、何故か出て来ない。
「──何か小細工でもしたか?」
「……さあね?」
「なら無理矢理でも吐かせてやる」
アナザーディケイドVEは二枚のカードに力を込めると、そこから二体の激情態ライダーを召喚する。
ビルドのから召喚されるのは、全身漆黒の刺々しい見た目をし、兎と戦車の形をした複眼を無機質に輝かせるのは、破壊衝動に呑まれ暴走してしまった仮面ライダービルドラビットタンクハザードフォーム。
鎧武のカードから召喚されるのは、こちらもまた漆黒のライダー。上半身を陣羽織の様な装甲で覆い、本来なら橙色の目を黄色に輝かす。邪悪なる意志によって心を闇に染められた仮面ライダー鎧武・闇ブラックジンバーアームズ。
アナザーディケイドVEは更にオーロラから復活したエターナルも召喚した。
「──全く、何度死に損なえばいいのやら」
増えてしまった敵の戦力。だが、こちらもグランドジオウ一人だけではない。
「……これも因果か」
「また私の知らないロックシードを使っているのか、葛葉紘汰。是非とも調べさせてくれないか?」
忍、戦極もまたこの場に駆け付けると、ドライバーを装着してエナジーロックシードとフルボトルを構える。
『変身!』
『ファイトパワー! ファイトパワー! ファイファイファイファイファファファファファイッ!」
『鋼のムーンサルト! ラビットタンク! イエーイ!』
仮面ライダーデューク、仮面ライダービルドへ変身した両者は、それぞれ縁のある相手との戦闘を開始する。
エターナルもエターナルエッジを握り締め、グランドジオウへ斬りかかろうとしたが──
「まさか、ゲームマスターである私を置いて始めようなどとは思っていないだろうな?」
何処からともなく黎斗もこの場に現れた。当然その手にはゴッドマキシマムマイティXガシャットが握られている。
「グレードビリオン……変身!」
『ゴッドマキシマァァム! エェックス!』
仮面ライダーゲンム・ゴッドマキシマムゲーマーレベルビリオンへ変身し、戦力は一気にグランドジオウたちへ傾く。
「厄介なことになってきたな……なら、オーラ!」
アナザーディケイドVEが呼ぶと、面倒くさそうな表情でオーラがアナザーディケイドVEの傍に現れる。
「──何よ」
「一つ頼み事がある」
「頼み事? あんたが私に?」
「ああ。──捨て駒になれ」
「はあ? うっ!」
「意見は求めん」
突然、アナザーディケイドVEがオーラの腹部に手を突き刺す。
「な、にを……!」
「オーラでもウールでもどちらでも良かった。こういう時の為の捨て駒はな」
「スウォ、ルツ……!」
「お前は俺の寝首を搔くつもりだったのだろうが、残念だったな。一度裏切った奴を俺は信用しない」
『ビルドォ……』
「なっ!?」
オーラの体内から聞こえてくるのは間違いなくアナザーウォッチの音声。
「うああああああああ!」
アナザーライダーの力がオーラの体を侵食していく。
「折角だ。お前の体で実験の続きをしよう」
すると、オーラの周囲に無数のアナザーウォッチが出現する。
『エグゼイドォ……』
起動したアナザーウォッチがオーラの体内に侵入。
『フォーゼェ……』
『ファイズゥ……』
「記録更新だな」
どんどんと入り込み、オーラを人から別のモノへと変えていく。
「止めろ!」
グランドジオウが見るに見兼ねて止めようとするが、上からの強い力が掛かってグランドジオウは地面に押さえつけられる。
あろうことかゲンムがグランドジオウを押さえつけているのだ。
「さあ、続けたまえ。どんなものが出来上がるか私も興味がある」
「檀黎斗神! 今はそんなこと!」
「黙れぇ! 私の好奇心は全てに於いて優先される!」
ゲンムは聞く耳を持たず、その間にもオーラはアナザーウォッチを取り込んでいく。
『ウィザードォ……』
『オーズゥ……』
『鎧武ゥ……』
『ゴォォスト……』
オーラから最早人語は発せられていない。黒いエネルギーが繭の様に包み、肥大化していく。
『ブレイドォ……』
『アギトォ……』
『響鬼ィ……』
『キバァ……』
黒い繭は見上げる程の大きさになっていき、中で何かが蠢いているのが分かる。
『カブトォ……』
『電王ォ……』
『ダブルゥ……』
『クウガァ……』
『龍騎ィ……』
『ドライブゥ……』
ジオウとディケイドを除くアナザーウォッチを取り込んでしまったオーラ。黒い繭から凄まじいプレッシャーを感じる。
「成程……実験は大失敗だな」
その直後、繭を突き破りそれは現れた。
頭から足の指先まで各アナザーライダーたちを捏ね合わせて作り上げた粘土細工の様な見た目。それも職人ではなく子供が作り出したような粗悪なもの。
左右の腕の長さは倍程違い、足も片方はキチンと五本指だが、もう片方は靴の様な形をして指が無い。
頭も左右大きさが違い、額からはアナザーライダーの腕と足でV字が作られており、指で押し込んだ様な二つの窪みが恐らく目らしい。
体の各部にはライダーの名前の刻印と年号が刻まれているが、それを見ても誰もこれが仮面ライダーとは思わないだろう。
「何だこれ……」
あまり生理的嫌悪を覚えさせる醜悪な見た目に吐き気すら覚える。
『ア……ア……アア……』
力のみが収束し暴走した、最早アナザーライダーとも言えないただの怪物が、女性らしい高い声で呻く。
「ふむ……モンスターのデザインとしては悪くないが、そのままだとレーティングが上がるな。アイディアの一つとして記憶に留めておこう」
醜悪なモンスターを前にして、黎斗は人でなしの台詞を平然と言い放った。
◇
(ここは……)
ぼんやりとした意識の中でゲイツはそれを見ていた。
自転車に乗るソウゴの前にタイムマジーンから降り立つゲイツ。
『え? 誰?』
『俺は明光院ゲイツ。お前が最低最悪の魔王になるのか見定めにきた』
ゲイツは違和感を覚える。最初の邂逅で姿を見せた記憶が無い。
すると、場面が飛ぶ。
ソウゴが檀黎斗王の許で働くのを知ったときの場面であった。
『あいつの許で働くのか……だが、お前のことだ。きっと何か考えがある筈だ』
また違和感を覚えた。この時、ソウゴとゲイツは戦い、負けた筈である。
すると、またも場面が変わる。
今度はジオウⅡの力を恐れ、ソウゴから離れようとした時の場面である。
『──確かにあいつの力は恐ろしいかもしれない。しかし、これまでのことを見て思った。あいつは優しい奴だ』
ツクヨミを説得するゲイツ。
(ああ……そういうことか……)
ゲイツ一人納得する。今流れている光景は、ゲイツの中で後悔として残っていることであった。アナザーワールドに入れられたことでその光景を消す様に本来とは真逆の選択をしている。
(自分でも知らず知らずのうちに後悔していたらしい……いや、違うか)
微睡んでいた意識が覚醒し始める。勝手に動いていた体が次第にゲイツの意志に反応する様になっていく。
「俺が過去を後悔する様になったのは、きっと俺がお前の仲間になれたからだ」
動ける様になった体で目の前に立つソウゴの肩を叩く。
「だが、俺はやり直したいとは思わん! お前とぶつかり合ったことで今の俺たちがある! 俺は過去を振り返らない! 俺はこの時代で生きたい! お前と新しい未来を創っていきたいんだ!」
過去を積み重ね、今のゲイツが抱く、未来への夢。その瞬間、ゲイツはアナザーワールドから完全に解き放たれる。
今、この瞬間を幸福と思っている者がアナザーワールドのIFの幸福などに囚われる筈などなかった。
自由となったゲイツは、黎斗から受け取ったゲンムゾンビゲーマーライドウォッチのスイッチを押す。
すると絵柄が変化し、何故か喜色満面の黎斗の顔が浮かび上がる。
『檀黎斗神っ!』
「はあ?」
するとアナザーワールド内に土管らしきものが生える。
「ひゅおっ!」
「うおっ!?」
その中から勢い良く黎斗が飛び出してきて、ゲイツは驚く。
「待ちくたびれぞ」
着地した黎斗は腕を組んで上から言う。
「どうやってきた!」
「来た訳では無い。最初からそのウォッチの中に居たんだ」
「ウォッチの中に!?」
「そう! 私のデータの一部をそこに移しておいた! 元々私のウォッチであったこともあって上手くいった!」
自分の技術に酔い痴れる黎斗。
「──まあいい。おい、檀黎斗神──」
「違う! 今の私は檀黎斗神では無い!」
「……なら何だ?」
「今の私は……檀黎斗神ツゥゥピィィィ!」
自らを2Pと宣言する黎斗。
「ゲームに於いて2Pの同キャラなど珍しくもない」
良く見ると黎斗よりも黎斗2Pの方がジャケットなどの服装の色が薄い。
「もうどっちでもいい……兎に角、このアナザーワールドを破壊するぞ!」
「いいだろう。神の力を見ろ!」
黎斗2PはゴッドマキシマムマイティXガシャットを出現させ、ゲイツもジクウドライバーをセットし、ゲイツライドウォッチともう一つあるウォッチを構える。
それはゲイツが成功すると信じ、ソウゴが渡した物。
『ジオウトリニティ!』
『ゴッドマキシマムマイティ! エーックス!』
折角なので主役ライダーのアナザーライダーも名前だけ出してみました。
オーラが変身した怪物は特に名前を決めていませんが、アナザーモンスターとかそんな普通の名前になりそう。
先にどちらが見たいですか?
-
IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
-
IFゲイツ、マジェスティ