黒と灰色の鎧の中央に妖しい眼光を見せる巨大な目。頭部には悪魔を連想させる一対の角。蔦植物の様なものが絡まって出来上がった大きな両翼と、本体の手よりも数倍大きな腕。翼には皮膜の代わりに炎を閉じ込め、巨腕にも血肉の代わりに炎が循環する。網目状になっている翼に炎が閉じ込められることでステンドグラスの様なデザインとなっていた。
仮面ライダーキバとよく似た姿をしているが、この存在はキバと完全に敵対していた。
完全なる力を発揮し、悪魔の如く空を飛ぶこのライダーの名は仮面ライダーレジェンドアーク。
レジェンドアークは黄色の複眼でゲイツトリニティとゲンム2Pを認識すると、翼から火球を無数に放つ。
ゲイツトリニティは火球の隙間を縫うようにして回避。一方、ゲンム2Pは伸びる手を鞭の様にしならせて迫っていた火球を全て払い、お返しと言わんばかりもう一方の手をレジェンドアークへ射出する様に伸ばす。
しかし、レジェンドアークはそれを簡単に回避し、そのままゲンム2Pの手が届かない位置まで飛んでいってしまう。
「ぅおのれぇ! むうっ!」
一際大きな地響きが起きたかと思えば、天と地を繋げていると錯覚するほどの巨木がそびえ立っていた。地面から生え始めていた樹木がいつの間にか見上げる程の大きさにまで成長している。
すると、巨木から蔦が伸びる。その先端には大きな赤い花の蕾があった。
蓮に似た蕾が開くと、中から下半身が完全に花と同化した仮面ライダーが現れる。
仮面ライダー鎧武と酷似しているが鎧の色が血の様に赤く、鎧武と異なり口部が黒く塗られていることで歪んだ笑みを浮かべている様に見えるなど細部が異なる。
蓮華座武神鎧武。それが樹木と一体化したこのライダーの名である。何故、鎧武とよく似た姿をしているのか、正体が何者なのかは本人以外知る由も無い。ただ、武神鎧武が座する蓮華座は神が座り、宇宙を創造すると言われたもの。その名に相応しい力を秘めていることを意味する。
「我が名は武神鎧武! 天下を掴む者也!」
武神鎧武は武将の如く名乗りを上げる。すると、ゲイツトリニティとゲンム2Pの足元が盛り上がり始める。
「我が覇道を邪魔する者は、容赦はせん!」
次の瞬間、大地が裂けて巨大な植物の根が出現し、ゲイツトリニティたちを上空に打ち上げる。
植物の蔓が触手となって宙にいるゲイツトリニティたちへ一斉に伸びる。
「はあっ!」
触手がゲイツトリニティを貫こうとするが、ゲイツトリニティは空中で体勢を水平にする。胴を貫く筈であった触手は、ゲイツトリニティの下を通過。ゲイツトリニティはそれを足場にして触手の上を走り出す。
走るゲイツトリニティに枝分かれした無数の触手が襲い掛かってくるが、ゲイツトリニティは取り出したジカンザックスとのこモードのジカンジャックローで迎え撃つ。
振り抜いたジカンザックスは何十本もの触手を一度に両断。連なって壁の様に立ち塞がる触手をジカンジャックローで突けば、回転する丸鋸によって触手は削られるどころか、ジカンジャックローの超振動が伝わることで触手の群がバラバラに粉砕される。
「ふんっ!」
ゲンム2Pの方もこちらを貫こうとする触手を拳で真っ向から砕き、両手を伸ばして大木と変わらない程の太さの枝を掴むと、縮ませることで枝の上に移動。着地と同時にゲンム2Pの周囲を触手が囲むが、ゴッドマキシマムゲーマーの両目から放つ光線で纏めて薙ぎ払う。
「ふははははははは! 恐れるに足りんなぁ!」
哄笑するゲンム2Pであったが、その足元に火球が命中。火球は枝の中に入り込むと内包していた炎が噴き出し、枝が内側から膨張して破裂。木の破片と炎と爆風を受けたゲンム2Pを飛ばす。
「ぬうっ! おのれぇぇぇ!」
翼から火球を放ったレジェンドアークを睨み付けながらゲンム2Pは手を伸ばし、枝を掴もうとするがその手もアークが胸部から発射した光球によって弾かれてしまった。
「こっちだ!」
ゲイツトリニティがゲンム2Pに手を差し出す。ゲンム2Pはその手に向けて己の手を伸ばし、倍近い掌でゲイツトリニティの手を覆う様に握る。
「おおおおおおおっ!」
ゲイツトリニティは走りながら腕を振り上げる。ゲンム2Pは見た目通りかなりの重量があったが、三位一体となっているゲイツトリニティならば腕の力だけでゲンム2Pを持ち上げることが出来る。
振り子の様な軌道で下から上に向けて振り上げられるゲンム2P。最高点に達するゲンム2Pは手を離す。
空中で放り投げ出されたゲンム2Pの飛ぶ先にはレジェンドアーク。
「お返しだぁ! 受け取れっ!」
両手を組み、後ろに仰け反る程振り被った後、今度は全力で両手を振り下ろす。
伸びる腕部も合わさってハンマーと化したゲンム2Pの両手。レジェンドアークは背部の翼と複腕を前方で交差させ、防御の姿勢に移る。
叩き込まれるゲンム2Pの鉄槌。レジェンドアークは耐えようとするが、ゲンム2Pの想像以上の一撃の重さに耐え切れなくなり、地面に向かって叩き落されてしまった。
レジェンドアークの巨体が地面にめり込む。叩き付けられた直後は動けなかったレジェンドアークだが、数秒も経つと地面から這い出ようと体を動かし始める。それを見るに致命傷には程遠い。
ゲンム2Pは着地した枝の上からそれを見下ろし、忌々し気に舌打ちをする。
「しぶとい奴め……!」
そう吐き捨てるゲンム2Pの許にゲイツトリニティが叫びながら走り寄って来る。
「止まるな! 動け!」
ゲイツトリニティの言葉の直後、ゲンム2Pが立っている枝に新芽が生まれ、それが早回しの様に一気に成長して開花にまで至る。
武神鎧武の下半身に似た赤い蓮華。無数の蓮華が一気に花開いたことで、場は甘い香りによって満たされる。
一瞬でも嗅いでしまうと脳が陶酔してしまう永遠に堪能していたい花の香り。ゲンム2Pはその香りに動きを止め、ゲイツトリニティも僅かに漂ってくる香りで無意識のうちに足が止まっていた。
「はっ!?」
「ぐっ!?」
だが、次の瞬間ゲイツトリニティは自分で自分の顔を両手で叩く。ゲンム2Pも纏っているゴッドマキシマムゲーマーの拳がゲンム2Pの顔面を殴っていた。
「俺は何を……」
『ゲイツ! しっかり!』
『これは毒か……』
強制的に陶酔させる毒の花の香り。ゲイツ自身術中に嵌り掛けたが、幸い主体となっているゲイツにだけ影響を与えるらしく、ゲイツトリニティ内のジオウとウォズが動き、痛みで正気に返す。
ゲンム2Pの方もゴッドマキシマムゲーマーに仕込んであるプログラムがゲンム2Pの異常を察知し、適切な対応をしていた。
二人が正気になるや否や、咲き誇っていた花が一斉に散り出す。周囲に満たされる無数の花弁。幻想的な光景だが、見ている二人が感じたのは悪寒であった。
本能が危険を察知し、すぐさま花弁から離れようとした瞬間、舞っている花弁が同時に爆発した。
枝の上で生じる大きな爆発。広がっていく爆炎を突き破ってゲイツトリニティとゲンム2Pが現れ、そのまま地面を砕きながら勢い良く着地した。
「危ない所だったな……」
直前に不審に思って動いたのが正解であった。上手く爆風に乗ることによって今も連鎖的に爆発する花弁から逃れることが出来た。
『これからどうする?』
『倒すには少々骨が折れる相手だ』
武神鎧武は今も成長し続けており、太陽を覆い隠す程葉を広げ、アナザーワールド内を我が物顔で降臨している。レジェンドアークも既に復帰しており、武神鎧武の周辺を飛び回っていた。
アナザーワールドを破壊すれば二体のダークライダーを倒せるだろうが、その隙を与えてくれる相手には到底思えない。
「──君たち、ゲームは得意か?」
突然ゲンム2Pからそんな質問をされ、ゲイツトリニティは返す言葉が思い付かず黙ってしまう。
「──急にどうした?」
質問の意図が分からず、質問で返すと──
「質問に答えろっ! ゲームは得意かと聞いているっ!」
──ゲンム2Pは怒鳴り返してくる。本体と同じで他人に対する遠慮も配慮も無い。
『ゲームは……簡単なやつなら』
『嗜む程度だ』
「何を真面目に答えているんだ……というかゲームをやるのか、ウォズ」
ジオウとウォズの二人はゲームを人並みにやると返答。ジオウはともかく、ウォズもやっているのはゲイツにとって意外であった。
「成程。それで君は?」
「ゲームなどやったことなど無い」
荒廃した未来ではそんな娯楽など無く、ゲイツが動いているゲームを見たのはこの時代に来てからである。尤も、自らの使命を第一優先としているゲイツは、ゲームに現を抜かすことなど無かった。
「何処の原始人だ、君は……」
「何だと!?」
仮面越しでも分かる呆れ果てた視線と感想。未来人であるゲイツに対し、ゲンム2Pは意図せず原始人という痛烈な皮肉を放つ。当然ながらゲイツは激昂し、ゲイツトリニティの体を動かしてゲンム2Pに掴み掛かろうとするが、ジオウとウォズがそれを止めた。
『怒るのは分かるけど、落ち着いてゲイツ!』
『ゲイツ君。彼はこういう性格だと理解し、諦めよう』
何とか宥めようとするジオウたち。内部の二人に止められると流石にゲイツトリニティも自由に動けず、顔だけが今にも噛みつかんばかりの勢いで前に出るだけに留まった。
「三人の内二人がゲーム経験者ならば大丈夫だろう。君たちにはあの飛んでいる奴を任せる」
「……話が繋がっていないぞ。ゲームと奴を倒すことがどう関係する?」
『別にいいけど、あいつ飛んでるよ?』
『今の私たちに飛行能力は無いが?』
「そういう時こそ私のゲームだぁ! 空へ羽ばたけ!」
ゲンム2Pは両手を翼に見立て、羽ばたかせるジェスチャーを見せた後に天を衝く様に両手を伸ばす。
「『エアリアルクロス』起動っ!」
その言葉を合図にゲイツトリニティの両足が地面から離れる。
「何っ!?」
それだけではない。周囲の建造物や木々などもまた宙へ浮き上がり始める。スウォルツによって生み出されたアナザーワールドがゲンム2Pの能力によって浸食、改造されていく。
だが、武神鎧武の大地に根付く巨体は流石に持ち上げられない様子。武神鎧武も次々と上昇していく周囲に驚いた様に見回しているが。
空が近い位置で作り上げられるステージ。浮き上がった建物などが障害物となり、更に色が異なる巨大なリングが様々な位置で出現する。
空中で漂うゲイツトリニティは、その光景を啞然とした様子で眺めてしまう。
「『エアリアルクロス』は三次元的で動く空中対戦ゲーム! 自らの能力と各リングを利用し、存分に空を飛び、戦い給えっ!」
遥か下にいる筈なのに耳元で喋られている様なやかましいゲンム2Pの声。いきなりゲームをやらされた挙句、操作方法など碌に知らないゲイツトリニティは大声で返す。
ゲンム2Pも武神鎧武の根に襲われているが、それらを薙ぎ倒しつつゲームの説明する。
「急に飛べと言われて飛べるかっ!」
「深く考える必要など無い! 歩行するイメージで操作出来る様に調整してある!」
ゲンム2Pの言う様に前に歩くイメージをする。空中で留まっていたゲイツトリニティの体がそのイメージ通りに前身する。速度もイメージと変わらないものである。
「こういうことか……」
足元に何も無いことに不安感を覚えるが、どう動けばいいのか分かり始めてきた。
『ゲイツ! 来たっ!』
そんな矢先にジオウが焦った声を出す。ゲイツトリニティが目線を落とすと下からレジェンドアークが凄まじい速度で上昇してくるのが見える。
「ちっ!」
ゲイツトリニティはジカンザックスを構えて迎え撃とうとするが、慣れない空中戦の為、斧を振るう前にレジェンドアークはゲイツトリニティの傍を通過。通り間際に複腕でゲイツトリニティを引っ掻く。
ジカンザックスの側面で辛うじてそれを受け止めるが、地上にいる感覚が抜けていないせいで踏ん張りが効かず、レジェンドアークの攻撃で吹っ飛んでしまう。
「何をしている! すぐにその青いリングを通過しろ!」
「青いリングだと?」
ゲンム2Pの怒声にうんざりしながらもゲイツトリニティは飛んで行く先に青いリングがあることに気付く。直径二メートルぐらいのリングの中央に上手く入れる様に位置を調整し、ゲイツトリニティが青いリングを通過した瞬間──
『スピードアップ!』
何処からともなく聞こえて来る男の声。それと同時にリングは光と化し、ゲイツトリニティの体はその青い光を帯びる。
「今だ! 飛べ!」
「いちいち叫ぶな!」
文句を言いながらもゲイツトリニティは一歩を踏み出す感覚で前に飛ぼうとする。
「うっ!」
その瞬間、視界に映っていたものが全て後方に流れて行き、気付けば遠くにいた筈のレジェンドアークが目の前に居る。
突然懐に入られたレジェンドアークはそれに驚く。
「胸の目を狙え! そこが弱点だ!」
ゲイツトリニティは言われるがままレジェンドアークの胸の目を狙って斧形態のジカンザックスを振るおうとするが、攻撃をする前にレジェンドアークは両翼を動かし、ゲイツトリニティに突風を浴びせて怯ませながら離れていく。
『You! Me!』
斧から弓に変え、引き金を引き、狙いを定めてから引き金を離す。
ジカンザックスから射られる光の矢。それはゲイツトリニティも驚く程の速度で空を裂き、レジェンドアークの胸部の目に命中する。
胸の目を射られたレジェンドアークは絶叫を上げた。
「これは……」
『私たちが通り抜けた青いリングの影響だね。恐らくあれはゲームなどよくあるパワーアップアイテムだ。あの声通り私たちの動きと攻撃の速度を一時的に上昇させる効果があるのだろう』
『本当にゲームみたい』
ウォズはすぐに青いリングの性質を理解し、二人に説明をする。
「それにしても、よくあの目が弱点だと分かったな」
ゲイツトリニティの前で射られた目を押さえて苦悶するレジェンドアークを見ながら、僅かな感心を滲ませて言う。
「ああ。私がそう設定したからな」
「……何だと?」
言っている意味が一瞬理解出来ず、聞き返してしまう。
「言葉通りの意味だ。私がそう設定したからあの目が弱点となった」
もう一度言われ、ゲイツトリニティはその意味を理解し──
「無茶苦茶だ……」
──としか言えなかった。
『でも、これであいつを……あれ?』
『どういうことだ……?』
ジオウとウォズが困惑。ゲイツトリニティもまた二人と同様に戸惑っていた。
弱点である胸の目を射抜かれた筈のレジェンドアークが、刺さっていた光矢を目から引き抜き、怒りのままそれを握り潰す。弱点を衝いたのにレジェンドアークはまだ健在であった。
「おい! どういうことだ! 弱点を射抜いたのにまだ奴は生きているぞ!」
「愚かな……たった一回弱点に当てただけでボスが倒せる筈が無いだろう? そんなことも知らないのか? はあ……」
呆れて溜息を吐くゲンム2Pに、ゲイツトリニティは怒りで血が煮え立つ様な錯覚を覚える。そんなゲイツトリニティの怒りが吐き出される前に、ゲンム2Pが説明をし出した。仕方ない、と言わんばかりの態度で。
「『エアリアルクロス』でのプレイヤーは君だ。そして、あの蝙蝠擬きはボスキャラに設定した。ボスキャラは特定の部位に三回攻撃を当てれば倒すことが出来る」
弱点を設定するという時点でまさにゲーム的な能力であったが、ゲンム2Pの説明を聞けば、上手く使えばどんな屈強な相手でも同じ箇所を三回攻撃すれば勝てることを意味する。しかし、逆に言えば──
「それ以外の攻撃は全て無効だ!」
三回弱点を攻撃しない限り相手は不死身に近い生命力を手にしたことを意味する。これがゲイツトリニティにとって有利となるか不利となるかまだ分からない。
「何て面倒なことを……」
ゲイツトリニティからすればウンザリする情報である。
『でも、後二回弱点を攻撃すれば勝てるってことでしょ?』
ジオウは前向きな姿勢を見せるが、ウォズにはある懸念が生じていた。
『一つ聞きたいのだが、あのダークライダーに弱点を設定した様に、私たちにも何か設定を加えていないだろうね?』
ゲンム2Pが何か余計なことをしていないか訊いてしまう。
「そんなことか。生憎、君たちに弱点など存在しない」
『それなら──』
「ちゃんと二回も猶予を与えた。それで十分だろう?」
『──安心……え?』
『二回……?』
ゲンム2Pの口から出た不穏な言葉。
「……その二回というのは何だ?」
「君たちのライフだが? 二回までなら攻撃に耐えられる」
「……三回攻撃を受けたら?」
「
当然の様に言い放つ。あろうことかこの男、ゲイツトリニティにたった三回被弾すれば死ぬという設定を何の断りも無く加えたのだ。
『GAME OVERって……あれ? そう言えば一回攻撃を防いだけど……』
『まさか……あれも被弾に入らないだろうね? 直撃ではなくちゃんとガードをした』
「『エアリアルクロス』に防御などという概念は無い。残り一回だな」
ゲイツトリニティに啞然とさせられた。
スウォルツが檀黎斗をアナザーワールドから呼び出したことは紛れも無くハズレと呼べるだろう。だが、そのハズレは必ずしも誰かにとってのアタリになる訳では無い。
ハズレはやはりハズレなのである。
「この疫病神がっ!」
足元にいる大ハズレに向けて精一杯の罵倒をすると、急襲してきたレジェンドアークの攻撃を必死になって避け出す。馬鹿馬鹿しい話だがあと二回、攻撃が掠っただけでもゲイツトリニティは死を迎える。
「ふぅははははははは! いいぞぉ! 私のゲームに適応出来てきたじゃないかぁ!」
必死なゲイツトリニティの気持ちなど無視して哄笑するゲンム2P。
「ならば私も新たなゲームを──」
そんな彼を覆う大きな影。
「ん?」
直後に巨大な枝がゲンム2Pを押し潰す。根による数の攻撃が効かないと判断した武神鎧武が枝による質の攻撃に切り替えたのだ。
「我が力! とくと見よ!」
武神鎧武は何度も枝を打ち付け、ゲンム2Pと地面を均していく。一撃の度に大地は揺れ、砕かれていく。
五度目の枝が振るわれた時、クレーターとなった地面から何かが生え、それを受け止めた。
「何っ!?」
真っ黒に染まった黒く太い指。紛れもなくゲンム2Pのものであったが、武神鎧武の枝を掴める程に巨大化していた。
手だけではない。窪んでいた筈の大地が今度は隆起し始めるとそれを突き破って武神鎧武と変わらない巨体となったゲンム2Pが出現する。
「ふぅぅぅははははははははは! 全てを見下ろすこの視点! まさに神の視点だぁ!」
巨大化したゲンム2Pが意気揚々と叫ぶ。
「その姿は!?」
「驚いたかね! 私の新たなゲームを!」
「ゲーム、だと?」
「『ギガンティック・バトル』! 地球そのものをバトルフィールドにして戦う超巨大格闘ゲームだぁ!」
ゲンム2Pが拳を突き出す。武神鎧武は枝を何本も束ねて壁にするが、それを全て突き破り、巨大樹の幹に叩き込んだ。威力は凄まじく、幹に亀裂が生じて雷鳴の様な音を出し、巨大樹が仰け反った影響で地面に深く根付いていた根の一部が地面を割って現れてしまう。
「ぬううっ!」
「天下ぁ? その程度を目指す者が天上人たる私に勝てるかぁ!」
傲慢な神は己が力を躊躇いなく使い、天と地をかき乱す。
◇
ドラゴンフルーツエナジーロックシードを開錠したデュークの頭上にジッパーの様なもので縁取られたクラックと呼ばれる異空間への扉が開く。
開かれたクラックから現れたのは燃える炎の様なドラゴンフルーツをモチーフとした鎧。それが出現すると同時にデュークが纏っていたレモンエナジーアームズが体から離れ、消え去る。
デュークはドラゴンフルーツエナジーロックシードをゲネシスドライバーに填め、施錠。
『ロックオン!』
そして、ゲネシスドライバーのレバーを押し込む。ドラゴンフルーツエナジーロックシードは左右に開き、白い果肉と黒い種子が露わになる。
『ソーダァ!』
頭上に浮かんでいた鎧が落下。デュークはそれを頭から被る。
『ドラゴンエナジーアームズ!』
鎧が展開され、デュークに装着されると同時に内包していた液体状のエネルギーがデュークの体に取り込まれる。
胸部に纏う赤い竜の顔。白色の右眼、左眼にあたる位置にデュークの紋章があり、隻眼となっている様に見えるが、デュークの右肩に付けられた重ねられた装甲に右眼と同じ白色の眼が埋め込まれている。まるで、くり抜いた左眼をそこに埋め込んでいるかの様であった。
背部にはシダ植物の様なギザギザのマント。見方を変えると竜の翼に見える。
頭部は赤い複眼へ変色し、側頭部には赤と黄のグラデーションの角が付けられている。王冠を思わせる額には、六角形のパーツが追加されていた。
騎士を思わせる格好から異形感を強めた姿となった仮面ライダーデュークドラゴンエナジーアームズは、ソニックアローを構えて鎧武・闇へ言う。
「あまり時間を掛けたくない。早々に終わらせよう」
鎧武・闇は咆哮を上げ仕掛けようとした瞬間、既に眼前にデュークが立っている。
不意を衝かれて思わず動きを止めた鎧武・闇の肩に優しさすら感じさせる軽い動きでソニックアローを押し当て、そこから引き裂く様にソニックアローを振り下ろす。
鎧武・闇の厚みのある装甲に斬撃の痕が刻まれると、デュークはその痕目掛けて横蹴りを繰り出す。
鎧武・闇の足が地面から離れ、体をくの字に曲げながら蹴り飛ばされる。
鎧武・闇は空中を疾走させられながら、それを見た。デュークが飛ばされている自分と並走している光景を。
赤い光を纏いながら走るデューク。彼が通り過ぎた後に残る光は纏っている鎧と相俟って竜の尾の様であった。
レモンエナジーアームズには無かった高速移動能力。これによりデュークは鎧武・闇の数歩先を行く。
並走していたデュークは鎧武・闇を追い抜き、先回りをすると飛んでくる鎧武・闇を待ち構えながらゲネシスドライバーのレバーを押し込む。
『ドラゴンフルーツエナジースカッシュ!』
エナジーロックシードのエネルギーがソニックアローの刃へ供給され、刃が赤い輝きがを帯びる。
鎧武・闇が飛んできたタイミングに合わせ、ソニックアローを振るうと強化された斬撃が赤い光と共に放たれ、鎧武・闇の背中を斬り付ける。
「ぐああああっ!」
デュークの斬撃は鎧武・闇の装甲を切り裂くと同時にエナジーロックシードのエネルギーを鎧武・闇の内部へと流し込む。それにより、鎧武・闇から生えていた黒い植物がエネルギーの出力に耐え切れなくなって燃え出し、全て灰と化してしまった。
強打を連続で受けた鎧武・闇は手から武器を落としながら地面を跳ねていく。しかし、途中で腕を叩き付け、無理矢理止まるとそこから立ち上がろうとする。その姿には恐怖すら覚える執念があった。
だがしかし、その執念に呑まれる様なデュークではない。
ゲネシスドライバーからエナジーロックシードを外し、ソニックアローに填める。
『ロックオン!』
ソニックアローのトリガーを引き絞ると矢部分に赤い光と共に黒雲の様なエネルギーが渦巻く。
「さようなら。中々有用な時間だったよ」
『ドラゴンフルーツエナジー!』
トリガーを離すと射られるのは赤い光を内包した黒い竜。顎を開き、鎧武・闇を噛み砕こうとする竜の口から赤い光が吐き出され、最初の斬撃で傷付けた箇所に命中する。
射られた鎧武・闇の動きが止まると、時間差で黒い竜が鎧武・闇に噛み付く。
黒い竜は鎧武・闇を咥えたまま天へ向かって昇っていき、ある程度の高度まで行くと鎧武・闇を嚙み砕く。
「おおおおおおっ!」
鎧武・闇は最後まで闘争心を揺るがさず、絶叫ではなく咆哮を上げたまま爆砕して消えた。
「ふう……」
鎧武・闇を倒すとデュークはすぐに変身を解除。余裕をもった勝利かと思いきや、戦極が吐いたのは安堵の息であった。
「制限時間内か。まあ、問題無しかな」
ドラゴンフルーツエナジーロックシードは、エナジーロックシードのプロトタイプである。強力な力を得ることが出来るが力は不安定であり、副作用があった。それは、変身者をオーバーロードと呼ばれる怪物へと変貌させるという大き過ぎるデメリット。
しかし、戦極はそのデメリットを研究によって可能な限り減らした。数分間だけなら副作用も無しに安定した性能を発揮できる。これを可能にしたのは、戦極が行った多くの人体実験である。
多くの血と命を吸って赤く輝くドラゴンフルーツエナジーロックシードを手の中で弄びながら、戦極はこの後どう動くべきかを思案する。
◇
ビルドはハザードトリガーを挿したビルドドライバーのハンドルを回す。
『ガタガタゴットン! ズッタンズタン! ガタガタゴットン! ズッタンズタン! Are You Ready?』
ビルドの前後に出現する鋳型を連想させる装置。それによってビルドは挟まれ、装甲を再形成される。
『アンコントロールスイッチ! ブラックハザード! ヤベーイ!』
構築は一瞬。鋳型が離れると共に消え、ハザードフォームと殆ど同じ姿が中から現れる。ハザードフォームとの違いは複眼の色と形のみ。
ニンニンコミックフォームのハザードとラビットタンクハザードフォームが睨み合うかの様に対峙する。
暴走する機械と化しているハザードフォームは、姿を変えたビルドに臆することなく──そもそもそういった感情は消失している──ビルドへ突撃する。
短い跳躍を連続して繰り返す高速の動き。相手の視界を翻弄しながらビルドへ接近し、棒立ちになっているビルドに拳を放つ。
ハザードフォームの拳がビルドの顔面を砕くが──
『分身の術!』
──それはビルドの4コマ忍法刀が生み出した分身に過ぎず、本体は一歩分だけ横に移動しており、飛び込んできたハザードフォームの胴体を逆手に持った4コマ忍法刀で斬り付ける。
胴体への一撃にハザードフォームは空中でバランスを崩し、宙返りをしながら地面に着地するが、そこから何のダメージも無い様に即座に立ち上がる。暴走している彼に痛覚などの感覚は無い。
ハザードフォームは立ち上がるとすぐにビルドへ突っ込んでいき、大振りのフックを繰り出すが、ビルドは半歩後ろに下がりそれを紙一重で避けてしまう。
連続して出される拳。ビルドはその突きの速度に合わせて下がることでどれもこれも数ミリの間合いを残し、触れさせない。
左右の拳を振り終えた直後、空気の壁を突き破るハザードフォームの前蹴りが飛ぶ。しかし、その前蹴りが貫いたのは虚空。居るべき筈のビルドの姿は無い。
『火遁の術!』
その音声にハザードフォームは背後に裏拳を放ちながら振り返るが、その裏拳も空を切る。拳の下にしゃがみ込んでいたビルドは立ち上がりながら4コマ忍法刀を目にも止まらぬ速さで振るう。
『火炎斬り!』
ハザードフォームの黒いボディに刻まれる赤熱の傷跡。それでもなおハザードフォームは攻撃を仕掛けようとするが、ビルドの動きはそれよりも速かった。
『風遁の術! 竜巻斬り!』
斬り上げられた4コマ忍法刀から竜巻が発生し、ハザードフォームを呑み込んで空へ伸びていく。竜巻に閉じ込められ、ハザードフォームは身動きが取れない。
同じハザードトリガーの力を使っているのに両者の力は明らかに違っており、葛城忍のハザードフォームが圧倒している。
だが、それもおかしな話ではない。忍が使用するビルドドライバーは、忍に合わせて作られた物。そして、彼が現在使用しているハザードトリガーもまた忍に徹底的に合わせて調整させられている。それにより暴走のリスクは極限まで減らすことができ、スペックも可能な限り向上させることが出来た。
その精緻な調整は知識ある者ならば美しさを覚えると同時に施した者の狂気を垣間見るであろう。
忍のハザードフォームは、現段階でオーバーフローモード時以上の性能を発揮することが可能なのである。
『ガタガタゴットン! ズッタンズタン! ガタガタゴットン! ズッタンズタン! Ready Go!』
竜巻に捕らわれているハザードフォームがドライバーのハンドルを回す。回す毎に強化剤が紫煙の様に全身から漏れ出し、やがて竜巻を内側から吹き飛ばしてしまう。
それを見たビルドは、ドライバーのボトルを交換。
『ゴリラ! ダイヤモンド! ブラックハザード! ヤベーイ!』
『MAXハザードオン!』
ニンニンコミックハザードフォームからゴリラモンドハザードフォームへ換装すると、ここで初めてオーバーフローモードへ移行する。
『オーバーフロー!』
体内に流し込まれる強化剤の量が一気に増加する。ビルドの脳内に起こる破壊衝動。だが、それを持ち前の精神力によって捻じ伏せる。未来の為、人類の為に己を殺して巨悪と十年も共に行動してきた彼は、この程度のことで自分を見失わない。
『ハザードフィニッシュ!』
上空からハザードフォームが右足に黒いエネルギーを纏わせて降下してくる。ビルドは焦ることなく冷静にドライバーのハンドルを回す。
『ガタガタゴットン! ズッタンズタン! ガタガタゴットン! ズッタンズタン! Ready Go!』
ビルドの右拳に全身を巡っていた強化剤が集中すると、右手を媒体とし黒い靄が巨大な拳を作り出す。
『ハザードフィニッシュ!』
衝突する右拳と右足。黒い靄が衝撃で拡散されていく。だが、拮抗をほんの一瞬であった。
ビルドの拳がハザードフォームの右足を砕き、そのまま本体も突き砕く。
ハザードフォームは暴走機械らしく断末魔の叫びすらなく四散して消えた。
ハザードフォームに勝ったがビルドの胸中に喜びが湧くことは無い。本物ではないが息子を手に掛けて喜べる筈も無い。だが、それを表に出すことはなく胸の中に押し留める。忍本人にはそれを容易く出来る冷徹でありながら悲しい強さがあった。
ビルドはハザードトリガーを外し、通常形態に戻る。どれだけ調整してもハザードフォームはあまり長時間変身するべき形態では無い。
ビルドの目が戦極と合う。戦極は薄っすら笑い、視線を移す。そこにはまだ戦っている者たちが居た。
◇
エターナルはどう戦うべきか迷っていた。流石の彼も十億近い命を削り切る術を持っていない。
「さあ、どうしたぁ! 私のライフを削り取って見ろぉぉ!」
得意げに笑うゲンム。
『アア……アアアア……』
その大きな笑い声に反応し、グランドジオウを見失っていたアナザーキメラがフラフラと体を揺らしながら近付いてくる。
「何だ? 私は君にもう用は無いのだが?」
鬱陶しそうな態度を見せるゲンム。すると、アナザーキメラの一部が輝き出す。
「うん?」
訝しむゲンム。輝いているのはアナザーキメラの体の一部と化しているアナザーライダー。黒いパーカーの様なものを被り、死霊か亡霊の様な顔をしている。輝いているのはその胸部にある縫い付けられた大きな目玉。
すると、ゲンムから青白い火の玉の様な物が抜き出て、その目玉に吸い込まれる。
「──何!?」
その瞬間、ゲンムのライフが一つ減ったと表示された。
アナザーゴーストの持つ魂を吸い取る能力。
これは不味いと思い、即座に行動に移るゲンムであったが、拳を振り上げた時、ゲンムの体から凄まじい勢いで魂が飛び出し、高速で吸い込まれていく。
アナザーカブトのクロックアップ能力を併用し、ゲンムの魂ことライフを一気に吸い上げにきたのだ。
「させるかぁ!」
ライフを吸い上げられながらゲンムが腕を伸ばし、アナザーキメラの顔面を打ち抜く。
アナザーキメラが殴り飛ばされたことでライフ吸収は止まったが、あの一瞬の間にライフの表示が一万も減っていた。
「おのれぇ……! よくも私のライフを……!」
まだ数に余裕はあるが、ゲンムは自分の物を他人に奪われて許容出来る様な性格はしていない。
「おやおや。意外と何とかなりそうだなぁ」
エターナルはゲンムの様子を笑う。十億という数値を聞かされた時は、どうしたものかと思ったがアナザーキメラの存在に勝機が見えてきた。
「黙れぇ! 神である私がこんな相手になど──」
激昂していたゲンムはそこで言葉を止めて振り返る。人の気配を感じた為であった。
そこには二人の男女が立っている。
「何なのあれ……?」
アナザーキメラに驚く女──ツクヨミ。
「あんなの何だっていい。目的はスウォルツだ」
アナザーキメラなど眼中に無く、スウォルツだけを睨む男──飛流。
「またお前たちか……」
スウォルツは少々うんざりした態度を見せる。
「今更ながら常盤ソウゴに同情する。お前の様なしつこい奴に狙われ続けていたのだからな」
自分がけしかけておいてこの言い様である。
「安心しろ。お前が死ねば全て終わるっ!」
飛流は懐からアナザーウォッチを出し、起動。
『ゲイツマジェスティ……!』
「ゲイツ、マジェスティだと……?」
初めて聞く飛流が変身するアナザーライダーの名。そして、それがスウォルツでも知らない名であった。ツクヨミもまたその名を初めて聞く。彼が変身する姿を見るのはこれが初めてである。
アナザーゲイツマジェスティウォッチを起動すると、ウォッチの両縁から髑髏の形をした黒いエネルギーが数十飛んで行く。
飛流がアナザーゲイツマジェスティウォッチを腹部に持っていく黒いジクウドライバーが出現し、そこに填め込まれる。
飛んで行った髑髏らが飛流の全身へ次々と飛び込んでいき、飛流の体を包み込む。
纏っていた黒いエネルギーを全て吹き飛ばすと、アナザーゲイツMAことアナザーゲイツマジェスティが現れる。
ゲイツマジェスティ。本来の時間ならばこの世界に存在せず、本物が居ないなら影であるアナザーゲイツマジェスティも存在しない。
しかし、スウォルツがアナザーワールドを次々と創り出していく中で、気付かない内にゲイツがゲイツマジェスティへと至るアナザーワールドまで創り出していた。
生まれた可能性は主軸となる世界に逆流し、それに影響を受けたのが飛流の持っていた壊れたアナザーゲイツリバイブウォッチ。新たな可能性が生まれた瞬間、飛流の膨大なまでの恨みのエネルギーを吸収していたアナザーゲイツリバイブウォッチは進化し、飛流にアナザーゲイツマジェスティの力を与えた。
これにより本物が居ないのに影は存在するという逆転現象が起きてしまう。
結局のところ、スウォルツは彼自身が生み出したものによって命を狙われているのだ。本人は知らないが。
「スウォルツゥゥゥゥッ!」
「やれ」
アナザーキメラがスウォルツに従い、歪な拳を振り上げる。アナザーゲイツマジェスティは恐れる事も無くアナザーキメラへ飛び掛かり、放たれる拳に己の拳を叩き付けた。
取り敢えずゲンムが相変わらず好き勝手する話となっております。もっと他のキャラクターを活躍させるべきなんでしょうが、話の流れでついつい。
先にどちらが見たいですか?
-
IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
-
IFゲイツ、マジェスティ