仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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タイトルに反して最近アナザーディエンドVE出ていませんね。
もう少ししたら出番はあるかも。


アナザーディケイドVE その7

 神経をこれ程までに研ぎ澄ましたのは、いつ以来だろうか。もしかしたら初めてのことかもしれない。装甲越しに微かに触れる細かな破片ですら感じ取れるぐらいの集中をゲイツトリニティはしていた。

 空気を伝播してくる微かな熱の変化。それを感知した瞬間にゲイツトリニティは空中でスライドし、浮遊している建物の影に移動する。

 無数の火球が建物に着弾し、コンクリートの壁を破壊し、ガラス窓を熱で溶かす。

 レジェンドアークが翼から放つ火球を回避したゲイツトリニティは、影から身を出して弓モードのジカンザックスを構えるが、狙うべきレジェンドアークの姿は無い。

 

『──ゲイツ! 離れて!』

 

 内に居るジオウが叫ぶ。その言葉の意味を即座に理解し、ゲイツトリニティは建物から離れる。

 レジェンドアークが建物を突き破って登場し、先程までゲイツトリニティがいた場所に巨大な複腕を振り下ろす。あと数秒離れるのが遅ければ当たっていた。

 今のゲイツトリニティは直撃どころか相手の攻撃が掠る程度ですら致命傷に繋がるかもしれない状態となっている。

 それもこれも足元にいる自称神ことゲンム2Pの仕業である。

 

「う゛ぇはははははははは! もっと来い! もっと私のインスピレーションを刺激しろぉぉぉ!」

 

 当の本人は何故か巨大化し、ハイテンションで巨大樹──蓮華座武神鎧武と怪獣映画の様な戦いをしている。

 武神鎧武の全ての枝から種が散弾の様に飛び出しゲンム2Pのを撃つ。視界一杯に広がった種子によって全身を撃たれるゲンム2P。種子が命中する度に大きな爆発が生じるが、ゲンム2Pはダメージを受けながらも怯むことなく前進。

 

「伐採してやろう!」

 

 ゲンム2Pが右手を掲げると、紫の光がワイヤーフレームを形成。光はそのまま実体と化す。

 創造したのは外観は紫色をしたゲームパッド。しかし、実態は仮面ライダーへの変身とチェーンソー、ビームガンへの可変武器という二つの側面を持つアイテム──ガシャコンバグヴァイザー。

 

『ギュ・イーン!』

 

 手の甲へ装着すると、端部分に付いていた回転刃が音声と共に伸び、けたたましい音と共に刃を回転させる。

 通常でも騒音を発するが、ゲンム2Pに合わせて規格外まで巨大になっているので音ですら一種の武器と化している。

 大気を震わすどころか大きく揺さぶる大音量は、武神鎧武の木々の葉をその音だけで散らさせ、足元建物など音波によって崩壊し始めている。

 

「はははははは! くらえっ!」

 

 破壊神の如き一撃は、武神鎧武本体を守ろうとする枝を紙でも裂くかの様に一瞬の抵抗すら与えずに切り倒す。

 自然破壊の様な光景が繰り広げられているが、ゲイツトリニティはいつまでもそれを気にしている余裕は無い。

 人すら殺せそうな大騒音の中で、レジェンドアークは大騒音を一切気にすることなく向かってくる。弱点以外の攻撃は無効という特性を与えられてことで、ゲンム2Pが発する音もシャットダウンされレジェンドアークの聴覚には何も入っては来ない。

 寧ろ騒音で苦しめられているのはゲイツトリニティの方で、レジェンドアークの動く音すら拾えない。

 

『ゲイツ君!』

 

 内なるウォズの視点がレジェンドアークの動きを捉え、ゲイツトリニティへ伝える。レジェンドアークの動きに気が付いたゲイツトリニティだが、レジェンドアークは構うことなく翼から火球を、胸の目から光弾を一斉に発射。

 当たれば死に繋がる無数の弾幕。ゲイツトリニティは全神経を集中させ、抜けられる隙間を探して即座にそこへ移動して被弾のリスクを減らし、反射神経を尖らせて掠ることも許されない攻撃を避けていく。

 だが、避けられるとレジェンドアークは攻撃の量を増やし、ゲイツトリニティを追い詰める。レジェンドアークもまた自分とゲイツトリニティがあと二回被弾すれば命を落とすことを知っている。ゲンム2Pがあれだけ大きな声で喋っていたので嫌でも耳に入ってきた。

 数を撃てばいずれ当たる。そう言わんばかりにゲイツトリニティを追従しながら火球と光弾を連射する。

 苦しいのはゲイツトリニティ。ゲンム2Pに勝手に付けられた設定のせいで武器で斬り払ったり、防御することも出来ない。

 

「くっ!」

 

 避けることしか出来ない現状を歯嚙みしながら火球、光弾を避け、少しでも避け易い場所を探して飛翔するゲイツトリニティ。

 青いリングの効果による速度上昇によってレジェンドアークを引き離すだけの速度を出せるのがせめてもの救いであった。

 

『ゲイツ君、あれを』

 

 ウォズが指し示した方角には金色のリングが設置されていた。リングはこのゲームに於けるパワーアップアイテム。取っておいて損は無い。

 ゲイツトリニティは金色のリングを潜る。リングは金色の光となってゲイツトリニティに覆い、そのまま消えてしまった。

 

「どうなっているんだ?」

 

 効果を実感出来ないゲイツトリニティは、戸惑う。すると、レジェンドアークがその隙を狙って光弾を発射した。

 力を充填して放ったらしく通常時よりも二回り巨大な光弾となっている。

 ゲイツトリニティはすぐに避けようとするが、直撃を避けられるものの掠めるのは避けられないことを直感で理解する。

 光弾がゲイツトリニティを掠める──かに思えた時、金色の粒子がゲイツトリニティの体から放たれ、周囲に散らばる粒子が光弾を弾く。

 

「これは!?」

『成程。さっきのリングの効果はバリアか』

 

 ゲイツトリニティは驚き、ウォズは金色のリングの効果を即座に理解する。

 

『ゲイツ君。今の我々は先程までリングの効果で奴の攻撃を受け付けない。だが、リングの効果は時間制か回数制か分からない。攻めるならばまだ効果がある今だ!』

 

 ウォズの助言を聞き、ゲイツトリニティが行動を移すのに殆ど間は無かった。レジェンドアークへの弱点までの最短距離、即ち直線を一気に駆ける。

 レジェンドアークもすぐにゲイツトリニティを迎撃しようとし、両翼から火球を繰り出すが、先程の光弾と同様にゲイツトリニティの体から発生する金色の粒子によって全弾阻まれてしまう。

 

『ゲイツ、急いで! 光が弱まってる!』

 

 ジオウの言う通り火球を受ける度に周囲に散りばめられた粒子は消滅していき、金色の輝きが失せていく。金色のリングの効果によるバリアは回数制であるらしい。

 

「ならばその前に討つ!」

 

 ゲイツトリニティが最速を以ってレジェンドアークの懐に飛び込みと、斧となったジカンザックスで弱点の胸部にある目に斬り掛かる。

 ジカンザックスの刃がレジェンドアークの目を斬り付ける。と同時にレジェンドアークの複腕がゲイツトリニティの体に叩き付けられた。

 

「ぐうっ!」

 

 バリアの効果が丁度切れてしまった為に攻撃を受けてしまう。これで残された猶予は後一回。

 

「がああ……」

 

 しかしそれはレジェンドアークも同じ事。弱点を攻撃されたことでレジェンドアークも後一回の攻撃で撃破される。

 相打ちにより距離が置かれるゲイツトリニティ、レジェンドアーク。自然とその視線が横へ移動した。

 二人の視線の先には二つのリング。銀と青のリングが設置されていた。青のリングの効果は既に知っている。だが、銀のリングの効果は未知。出来れば青いリングの効果を得て更なる速度上昇を狙いたいが、運が悪いことに青のリングはレジェンドアークの直線状にある。無理に取ろうとすれば間に合わないどころか、反撃をもらう可能性があった。

 反対に銀のリングはゲイツトリニティの直線状にある。真っ直ぐ飛べばまず確実に入手出来る。

 

「一か八か……ジオウ! ウォズ! 覚悟はいいな!」

 

 リスクは承知で未知のリングの入手を選択。

 

『うん! 行こう!』

『我々は文字通り運命共同体。今更恐れはしないよ』

 

 ゲイツトリニティとレジェンドアークがリングを目指し、天を駆け出したのは同じタイミングであった。

 直線距離を最速で飛翔。スタートを同じであったが、事前にリングの効果で速度を上げているゲイツトリニティの方が一歩、二歩先を行く。

 ゲイツトリニティが銀のリングを手にするのが早い。

 

『ッ! ゲイツ! 来るよ!』

 

 ジオウからの警告。ゲイツトリニティが視線を背後に視線を向ければ後ろから迫る光弾。間に合わないと悟ったレジェンドアークが放った妨害である。

 

「くそっ!」

 

 ゲイツトリニティは空中で横回転をしながら軌道を変える。飛行機のバレルロールを思わせる動きで光弾を回避した。

 だが、これによって最短距離から外れてしまったゲイツトリニティは、軌道修正の為に動きが遅れてしまう。

 レジェンドアークはその間に遅れを取り戻し、更には巻き返してしまう。

 弱点以外は無敵のレジェンドアーク。一方で全身が弱点そのものであるゲイツトリニティ。ましてやゲイツトリニティに残された猶予は無い。攻撃されればどうしても必要以上に動いて回避してしまう。

 まんまとレジェンドアークの思惑に動かされてしまったゲイツトリニティ。

 屈辱を覚えるゲイツトリニティを嘲笑うかの様にレジェンドアークは青いリングを通過。これにより、レジェンドアークは速度上昇の効果を得る。

 

「──ん?」

 

 ──筈なのだが、『スピードアップ!』というアナウンスがされない。よく見れば通過すれば消える筈の青いリングがそのまま残っている。

 レジェンドアークは思っていた展開と違い、困惑した様子で青いリングに複腕を伸ばす。複腕が青いリングに触れるとそのまますり抜けてしまった。

 

『──そういうことか!』

「何か気付いたのか?」

『説明は後だ! 今はあの銀のリングを!』

 

 ウォズに促され、ゲイツトリニティは説明を聞くよりも先に銀のリングを通過。レジェンドアークは違い、銀のリングは光の粒と化し、その粒が形を変えていく。

 

『オプション!』

 

 粒は半透明のジオウとウォズの姿となった。

 

『成程。銀のリングはサポートユニットを作り出す効果か』

『おお、変な感じ』

 

 ウォズは納得し、ジオウは半透明になっている自分の体に少し戸惑っている様子。

 

「──もしかして、あのリングの効果は俺たちだけしか受けられないのか?」

 

 リングの異なる反応を見て、ゲイツトリニティは気付く。

 

『恐らくその通りだろうね。ゲンム2Pが言っていたがあのライダーはボスキャラ。弱点以外無敵の代償としてパワーアップアイテムを使用出来ないんだ。まあ、ゲームではよくある設定さ』

「あの男、変にバランスをとっているな……」

『まあ、意外とそういうとこに拘っているのかも』

 

 人としてアンバランスな人間だが、自称神と名乗るくらいなのだからある意味で神視点ではバランスを保とうとしているのかもしれない。

 

「──まあ、いい。折角の力だ。このまま奴を倒すぞ!」

『了解』

『これなら行けそうな気がする!』

 

 サポートユニットと化したジオウとウォズが先行し、レジェンドアークに向かって飛んで行く。

 二人に気付いたレジェンドアークはすかさず翼から火球を撃ち出した。しかし、火球はジオウとウォズの半透明の体を通り抜けてしまい、ジオウたちは無傷。

 ジオウは銃モードにしたジカンギレードを出し、ウォズは槍となっているジカンデスピアを構える。

 ジカンギレードから発射されるマゼンタの光弾と、ジカンデスピアの繰り出される穂先型の緑の光弾。

 二つの光弾はレジェンドアークに命中。レジェンドアークは、ダメージは受けてないものの衝撃だけは伝わっており、怯んだ動きを見せる。

 

『こっちの攻撃は当たって、向こうの攻撃は無効か』

『何か反則っぽいなぁ』

 

 ジオウは今の自分たちの状態をそう評しながらも銃撃の手を緩めない。

 遠距離攻撃で牽制しながら接近するジオウたち。接近戦の間合いに入るとジオウはジカンギレードを剣へと変える。

 

『ジカンギレード! ケン!』

 

 ジオウとウォズが交差しながらレジェンドアークを斬る。複腕でそれを防御しようとするレジェンドアークであったが、斬り上げる形の斬撃により左右の複腕が万歳するかのように跳ね上げられた。

 この瞬間、レジェンドアークの弱点を妨げるものが無くなる。

 

『フィニッシュタァァイム!』

『ゲイツ!』

 

 ドライバーを操作しながらゲイツトリニティは飛翔。本来とは異なるライドウォッチの音声。メインとなっている体が違う為の影響と思われる。

 

『ジオウ!』

『ウォズ!』

 

 三度トリニティライドウォッチのスイッチを押すし、ジクウドライバーを回転。

 

『トリニティ!』

 

 ゲイツトリニティは空中で前転し、右足を前に突き出し蹴りの体勢へ移行。ゲイツトリニティを導く為にレジェンドアークの胸部まで『きっく』という文字が並び、ゲイツトリニティは連なる文字を右足裏に取り込みながら更に加速。

 

『タイムバースト! ブレーク! エクスプロージョン!』

 

 レジェンドアークはすぐに元ある両手で目を守ろうとするが、レジェンドアークを取り囲む様にして現れる複数のマゼンタの『キック』と緑の『キック』の文字によって動きを拘束されてしまう。

 一直線に進むゲイツトリニティに、サポートユニットと化していたジオウとウォズの姿が重なる。

 三色の輝きを放ちながら繰り出されるゲイツトリニティのキックがレジェンドアークの弱点に三度目の攻撃を与えた。

 

『ガアアアアアア!』

 

 絶叫を上げ、亀裂が生じるレジェンドアークの肉体。

 

『ゴートゥーヘル……ゴートゥーヘル……』

 

 ベルトに吊り下げられた蝙蝠型のメカが自らの行き先を暗示すると、レジェンドアークは爆発し、跡形も無く消えてしまった。

 

「終わったか……」

 

 慣れない空中戦に、限られた被弾しか許されない戦闘。普段の戦い以上に緊張感を強いられ、戦闘後は肉体よりも精神の方が疲れてしまっていた。

 

「うぇはははははははは!」

 

 だからこそ、そんな状態で聞かされるゲンム2Pの哄笑は頭に響く。戦闘中は極度に集中していた為にあまり入って来なかったが。

 

「伐採! 伐採! ぶぅあああああっさいっ!」

 

 大地を震わしながらバグヴァイザーを滅茶苦茶に振り回し、武神鎧武の枝木を伐り飛ばしていくゲンム2P。

 

「この感触ぅ! 世界中の木という木を全て伐採していくゲームかっ! 悪くない!」

 

 伐採に酔い痴れるという妙な扉を開きながらゲンム2Pはひたすら攻撃をし続ける。武神鎧武が種子を飛ばして攻撃しようと、花弁を撒き散らしてそれを一斉に爆破させようと、ゲンム2Pは止まることは無かった。

 すると、突然ゲンム2Pは攻撃の手を止める。

 

「ふぅ……十分に堪能させて貰った。さて、次はこのアイディアを形にしなければ!」

 

 武神鎧武から得るものを得て勝手に満足してしまうゲンム2P。当然ながら武神鎧武からすれば侮辱に等しい行為。

 

「我を侮るかっ! 忌々しい奴めっ!」

 

 武神鎧武は激昂し、より激しい攻撃をしようとするが──

 

「堪能させて貰ったと言った筈だ」

『チュ・ドーン!』

 

 バグヴァイザーを逆向きにし、ビームガンモードにすると二門の銃口から光弾が発射。武神鎧武の幹に命中し、大きく抉る。

 

「ぬおおおおおっ!」

 

 巨木を支える幹が一気に細まり、武神鎧武はバランスを保とうとして攻撃の手が止まってしまう。

 ゲンム2Pはゲーマドライバーのグリップを閉じる。

 

『ガッチョーン! カミワザ!』

「とおっ!」

 

 ゲンム2Pの巨体が跳び上がる。

 

「うおっ!?」

 

 下から急に迫って来たゲンム2Pからゲイツトリニティは巻き込まれない為にすぐに離れる。

 ゲンム2Pの巨体が雲の向こうに消えていくと『ガッチャーン!』という音声が天の声の様に響き渡る。

 

『ゴッドマキシマーム! クリティカールブレッシング!』

 

 轟く音声と共に雲を突き破りながら禍々しい七色の輝きを右足に宿したゲンム2Pが降下。

 大地に根付いてしまっている武神鎧武はそれを回避する手段が無く、根や枝を壁にして防ごうとするが、ゲンム2Pの一撃を受けるにはあまりに脆く、全て粉砕されてしまった。

 

「こんなことが──」

 

 壁を突破したゲンム2Pの右足が、武神鎧武本体に叩き込まれる。

 

「これぞぉむぅあさにぃぃ!」

『神の一撃ィィィ!』

 

 数値で表すことの出来ない一撃は、武神鎧武だけでなくアナザーワールド全体に蜘蛛の巣の様な罅割れを生じさせる。

 

「アナザーライダーが……!」

 

 色々と回り道をすることとなったが、当初の目的通りアナザーワールドがゲンム2Pの力によって破壊されていく。

 しかし──

 

「ぶぅあはははははははははは!」

 

 崩壊していくアナザーワールドの中で何故かバグヴァイザーを突き上げるゲンム2Pの姿は雄々しさよりも不気味さしか感じなかった。

 

 

 ◇

 

 

 互いの拳を打ち付け合い、体格差があるにもかかわらずアナザーキメラを殴り飛ばしてみせたアナザーゲイツマジェスティ。そのまま攻撃すると思いきや、足を止める。

 

「うん……?」

 

 いきなり現れる銀色のオーロラ。それが罅割れて中からソウゴたちが姿を現した。それだけでなく、少し離れた場所にも銀色のオーロラが現れて砕け、そこから人々が混乱した様子で出て来る。全員行方不明になっていた者たちであり、ソウゴの同級生である西村、小和田の姿もあった。

 

「ツクヨミっ!?」

「何っ!?」

 

 アナザーワールドから帰還した直後、ツクヨミの姿を見つけソウゴたちは驚く。

 

「ソウゴ、ゲイツ、ウォズ……」

 

 ツクヨミは三人の姿に少しだけ泣きそうな表情をする。

 ツクヨミに色々と聞きたい。だが、それよりもソウゴには優先すべきことがある。

 

「ツクヨミ! 小和田たちを!」

 

 アナザーワールドに囚われていた人たちの安全。ソウゴはそれを最優先にし、ツクヨミに託す。

 

「──うん! 皆、逃げて!」

 

 ソウゴのその決断に、ツクヨミは安堵を覚えながら人々に逃げる様に促す。彼らは自分の置かれている状況に戸惑っているが、アナザーゲイツマジェスティやアナザーキメラを見て、それを後回しにして逃げることを選択した。

 

「……ごめん」

 

 ゲイツもツクヨミに色々と聞きたいことや言いたいことがあるだろうが、すぐにこの場から引き離してしまったことを謝る。

 

「──いや、お前のやったことは間違っていない。……今はツクヨミの無事を確認出来ただけで十分だ……それに」

 

 ゲイツの目がアナザーゲイツマジェスティを鋭く睨む。

 

「聞きたいことがあるなら奴に訊けばいい」

 

 エターナルはアナザーワールドから解放された人々を見て、ドライバーからエターナルメモリを引き抜き、大道克己へ戻る。

 

「ここまでだな」

 

 アナザーワールドは誰かを閉じ込めることで可能性の世界からダークライダーを引きずり出す。閉じ込めた人々が居なくなるということは──

 

「まあ、また死ぬまでの退屈しのぎにはなったな」

 

 大道克己の体が薄れ始めていく。居るべき場所へ還ろうとしていた。

 

「待てぇ! 私のライフを削っておいて勝ち逃げをするつもりかぁ!」

 

 ゲンムはそれを許さず、怒鳴りつけるが克己はそれを笑って受け止める。

 

「続きはいつかのあの世でしようぜ。死に損ない同士な」

 

 そう言い残し、克己はこの世界から消えてしまう。

 ゲンムは納得し切れていない様子でドライバーからガシャットを乱暴に抜く。

 

「おのれぇ……」

 

 そんなゲンムこと黎斗の体もこの世界から消え始めていた。

 

「──まあ、いい。貴重なデータも手に入った。それで良しとしよう」

「おい!」

 

 消え始める黎斗にゲイツは呼び掛ける。

 

「何かな?」

「消える前にこのウォッチを元に戻せ!」

 

 檀黎斗ライドウォッチを掲げるゲイツ。悪趣味なデザインのライドウォッチを一刻も早く元に戻したかった。

 

「神の恵みだ、受け取り給え」

 

 怒鳴るゲイツの横を通り過ぎて行くゲンム2Pもとい黎斗2P。本体の近くにいくと、黎斗はいきなり大口を開ける。すると、黎斗2Pの身体はデータ状に分解され、黎斗の口に吸い込まれていった。

 

「では諸君、さらばだ」

 

 やりたいことだけやり尽し、黎斗は消失。自分の世界へ戻っていく。ゲイツの手の中に檀黎斗ライドウォッチを残して。

 

「さてさて。我々も帰るととしようか」

 

 戦極は既に変身を解除していた忍に声を掛ける。

 

「いやぁー。この世界では色々と貴重なものが手に入ったよ。来た甲斐があったというものだ」

 

 戦極は忍に見せつける様にある物を取り出す。それは、いつの間にか入手していたブランクライドウォッチと成分の入っていない空のフルボトル──エンプティボトルであった。

 

「この二つの技術。有難く研究させて貰おう」

 

 勝ち誇った様に笑う戦極。だが、忍が彼を見る目は怒りなど無く冷め切ったものであった。

 

「君からは──」

「うん? 何かな?」

「──君からは檀黎斗()や私の息子程の才能は感じない」

「……何だって?」

 

 高揚していた気分に冷水を浴びせるかの様な忍の言葉。自分の才能に絶対的な自信を持つ戦極にとって許せることの出来ない言葉。それだけでは無い。暗に戦極では使い熟すことも出来ないと告げている。

 

「私に、才能が無いだと……」

 

 笑みが消え、戦極は表情を引き攣らせる。

 

「事実を言ったまでだ」

 

 忍は最後まで冷たく言い放ち、消えてしまう。残された戦極は怒りで体を震わせ、忍が消えた後を睨み付けながら、無言のまま静かに消えてしまった。

 これにより、スウォルツがこの世界に呼び出したダークライダーたちは全員消え去る。

 流石のスウォルツもこれには苦虫を嚙み潰した様な表情となる。

 

「はっ。良い顔をするじゃないか、スウォルツ?」

 

 その表情を嘲るアナザーゲイツマジェスティ。聞き覚えある声に、ソウゴたちはアナザーゲイツマジェスティの正体をすぐに思い当たる。

 

「まさか……加古川飛流!?」

「生きていたのか……!」

「彼がツクヨミ君と共に行動を……?」

 

 三者三葉の反応を見せると、アナザーゲイツマジェスティの耳にその声が届き、ソウゴたちの方を見る。正確にはソウゴしか見ていないが。

 

「常磐ソウゴ……!」

「飛流……無事だったんだね」

 

 憎悪で名を呼ぶアナザーゲイツマジェスティ。逆にソウゴは声にはほんの少しだけ安堵の響きがあった。それを敏感に察知したアナザーゲイツマジェスティはギリギリと歯を嚙み締める。

 いっその事、この場でスウォルツ共々始末してしまおうという考えがアナザーゲイツマジェスティの中で鎌首をもたげる──が、そこにスウォルツのある一言が飛んできた。

 

「どうした? かつての宿敵が目の前にいるぞ? 戦わないのか?」

 

 アナザーゲイツマジェスティの中でスウォルツとソウゴの天秤は均衡を保っていた。しかし、スウォルツの、その囃し立てる余計な一言がアナザーゲイツマジェスティの中の天秤を完全に傾かせる。

 

「スウォルツ、馬鹿かお前は?」

「……何だと?」

「俺が! お前の言葉に! 聞く耳を持つと! 本気で思っているのかぁぁぁぁ!」

 

 散々利用してきたスウォルツの言葉に耳を貸す筈も無い。それどころか、また利用しようとする始末。最早、完全に許しておけない。

 ただ倒すだけでは我慢ならない。最も屈辱的な敗北をスウォルツに与えることを、今この瞬間アナザーゲイツマジェスティは誓う。

 その為ならば──

 

「常磐ソウゴォォ! お前も一緒に戦え!」

「えっ!?」

 

 ──怨敵であろうと利用するまで。

 

 

 

 

 

 

 

 ・ダークライダーの帰還──戦極凌馬編

 

「尻尾を巻いて逃げた負け犬が、よくおめおめと俺の前に姿を出せたな!」

 

 赤と黄の外装。頭部から生える一対の黒角。水色の目が軽蔑と怒りを混ぜた目で戦極凌馬を睨み付ける。

 

「言っただろう? 私のドライバーを無しに人間を超えた君を許さない、と」

 

 目の前に立つ異形──ロード・バロンは嘗て駆紋戒斗という人間であったが、戦極の言う通り己のやり方で人から怪物へ成った。

 

「くだらん! お前の机上の空論など聞き飽きた!」

「馬鹿に馬鹿にされるとここまで腹が立つものなんだねー。一つ経験になったよ」

 

 戦極凌馬は表面上は笑みを浮かべながら、血管が浮き上がる程強く握ったゲネシスドライバーを装着。

 それを見たオーバーロードバロンは訝しむ。ゲネシスドライバーに見たことも無い二つのスロットが追加されていた。

 

『ドラゴンフルーツエナジー! ロックオン!』

 

 中央に填め込むのはドラゴンフルーツエナジーロックシード。戦極は更に金色のボトルと薄緑の時計らしきものを構える。

 黄金のボトルを振り、新たに設けられたスロットに挿し込む。

 

『黄金の果実っ!』

 

 取り込まれている成分は、ある種族を滅ぼす元凶となった禁断の力。

 そして、今度は時計の方を動かし、別のスロットに挿し込む

 

「君の力を貰うよ、貴虎」

『斬月・真!』

 

 かつての親友であり神になれると思っていた男の力を我が身と一体にさせる。

 

「私の才能が! 誰かに劣る筈など無い! 私が創り上げていくものこそ! この世界の真理なんだぁぁ!」

 

 戦極から迸る膨大な力。異なる世界の技術と力が戦極の中で一つとなっていく。

 

「ほざけ! お前の真理などこの拳で砕く!」

 

 我と我。プライドとプライドを衝突させる。

 

「変、身……!」

 

 戦極凌馬が何に成るのか、どう至るのか、そして、二人の決着は? 

 だが、これは可能性の話。それを知る者は誰も存在しない。

 




これにて各ダークライダーたちは退場となります。
最後のちょっとしたオマケ程度です。

先にどちらが見たいですか?

  • IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
  • IFゲイツ、マジェスティ
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