仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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アナザーディケイドVE その8

 二度に渡り、ソウゴを肉体的にも精神的にも追い詰めた宿敵加古川飛流からのまさかの共闘の提案。いきなり言われたソウゴは流石に即答することは出来なかった。

 

「さっさとしろ!」

 

 飛流はソウゴの心情など構うことなく急かす。

 

「虫の良いことを……!」

 

 ソウゴが答える前にゲイツがアナザーゲイツマジェスティに嚙み付く様に怒る。今にも飛び掛かりそうな雰囲気であったが、横から伸ばされたソウゴの手がそれを制止させる。そして、その伸ばされた手にはグランドジオウライドウォッチが握られていた。

 

「──いいよ。一緒に戦おう」

「ジオウ!」

 

 共闘を受け入れるソウゴに、ゲイツは咎める様な声を出す。

 

「よく考えろ! あいつが大人しく共闘などするのか!? どさくさに紛れてお前を狙うかもしれないんだぞ!」

「うん。もしかしたら、それもあるかもしれない」

「なら!」

「でも、飛流の言う通り俺たちと飛流が戦ってもスウォルツを喜ばせるだけだ。今、倒すべきなのはスウォルツだ」

 

 アナザーゲイツマジェスティと共闘するリスクを承知の上で、ソウゴは戦う相手を見誤ることはしない。

 

「それにさ、万が一のことがあったら助けてくれるでしょ? ゲイツとウォズが」

 

 さも当然の様に言ってのけるソウゴに、ゲイツは面食らった顔をした後、溜息を吐く。ウォズもソウゴの言葉に苦笑していた。

 

「しょうがない奴だ」

「我が魔王に期待をされているのなら、応えない訳にはいかないね」

 

 ゲイツはゲイツリバイブウォッチを出し、ウォズもギンガミライドウォッチを取り出す。

 三人は並び立ち、各自ドライバーを装着すると揃えて声を上げる。

 

『変身!』

 

 二種の異なる文字盤がソウゴとゲイツの背後に、各惑星を模ったエネルギーがウォズの周囲に並ぶ。そこから飛び出した『ライダー』と『らいだー』、そして『ギンガ』の文字がアナザーキメラに衝突し、巨体を転倒させる。

 

『グランドターイム!』

『ライダーターイム!』

『投影! ファイナリータイム!』

 

 出現する平成ライダーたちの像。表面が剥がれ落ち、実体となるとそれらは黄金の扉の中に閉じ込められ、縮小してレリーフと化す。

 飛び交うレリーフと『ライダー』と『らいだー』の文字。その間を縫う様にして惑星が銀河を描く様に渦巻く。

 

『祝え! 仮面ライダー! グ・ラ・ン・ド! ジオーウ!』

『リ・バ・イ・ブ! 剛烈! 剛烈!』

『ギンギンギラギラギャラクシー! 宇宙の彼方のファンタジー! ウォズギンガファイナリー! ファイナリー!』

 

 三人はグランドジオウ、ゲイツリバイブ剛烈、ウォズギンガファイナリーへと変身。

 

「──相変わらず騒がしい連中だ」

 

 その光景に冷めた意見を投げつけるアナザーゲイツマジェスティ。独りであることをより実感させられる光景への妬みにも聞こえる。

 

「さて、どこまでやれるかな?」

 

 スウォルツが呟いた言葉は、グランドジオウたちではなくアナザーキメラに向けられたもの。彼にとっては、アナザーキメラが勝とうが負けようがどちらでも良かった。相手の手札を一枚でも多く見ることが目的であり、変身者であるオーラの排除も兼ねてある。

 一人でも道連れに出来たら儲けもの程度の考えで、スウォルツはアナザーキメラに指示を出す。

 

「ジオウたちを倒せ。──死ぬ気でな」

『アアア……アアアア……』

 

 最早、人格が完全に崩壊しているアナザーキメラは、ただスウォルツの声に従う木偶と化していた。自分をこの様な姿に変えたスウォルツに反抗する意志すら無い。

 スウォルツに言われた通り、アナザーキメラは歪な手で地面に触れる。地面を伝わっていく光。光は瞬時に広がっていき、グランドジオウたちは警戒するが、光に触れてもグランドジオウたちに影響は現れない。

 

『アアア……』

 

 アナザーキメラが鳴き声を上げると、地面から黒いライダースーツの様な格好をし、七面鳥の丸焼きに似た形のオレンジ色の頭部を持つ異形たちが誕生し出す。

 アナザーエグゼイドの能力によって生み出されたバグスターウィルスたちである。

 バグスターウィルスの一体に徐に手を伸ばすアナザーキメラ。大きな掌がバグスターウィルスの頭を覆う。突然の凶行にバグスターウィルスは生み親など関係無く抵抗し、両手で押し返そうとするがバグスターウィルス一体程度の力などたかが知れていた。

 バグスターウィルスの視界を覆う闇。バグスターウィルスは気付かなかった。アナザーキメラの掌に同化しているあるアナザーライダーの顔を。

 昆虫を思わせる赤い複眼、その奥には人の目に似た白眼がある。先端が二又に分かれた一対の金色の角。暗い闇の中でそれが歯牙を剝き、バグスターウィルスへ喰らい付く。

 バグスターウィルスの抵抗は一層激しさを増すが、すぐにだらりと両手を垂らす。アナザーキメラの手が離れ、バグスターウィルスは解放されるがある変化が起きていた。

 

「頭が……」

 

 首から上、オレンジ色の頭部が昆虫を思わせる生物的な形に置き換えた様に変化していた。グランドジオウたちの視点からでは気付くことが出来なかったが、アナザーキメラの掌にあるアナザーライダーと同じ顔になっている。

 変身したバグスターウィルスは、突如仲間のバグスターウィルスの首元へ噛み付く。

 

「えっ!」

「同士討ちだと……?」

「あれは、まさか……」

 

 捕食目的では無いらしく一嚙みで牙が離れる。嚙まれたバグスターウィルスは首元を押さえて悶えていたが、数秒も経たずに嚙んだバグスターウィルスと同じ形状の頭部に変化し、そのバグスターウィルスが他のバグスターウィルスに噛み付く。

 嚙まれたバグスターウィルスは同じく変化。それが繰り返されて倍々に増殖していく。

 

「アギトの力か……大分歪められているようだがね。ああやって力を底上げしているみたいだ」

 

 自らの力を与え、増殖するアナザーアギトの力。

 気付けば数十を超えるアナザーアギトと化したバグスターウィルス──バグスターウィルスが牙をグランドジオウたちに向けて蠢いている。

 兵を生み出し、更なる力を与える。アナザーライダー同士の能力が見事に噛み合っているが、アナザーキメラが意図してやったことでは無い。

 良くも悪くも今のアナザーキメラの頭の中は空っぽに等しい。故に何をするべきかは宿しているアナザーライダーたちが機械的に判断していた。アナザーキメラはその判断に従い、能力を駆使するのみ。

 それに反発も抵抗も覚えない。だからこそ自我の崩壊が逆に強みと化していた。

 

「はっ」

 

 その光景を鼻で笑うアナザーゲイツマジェスティ。一の力が二になろうと、二の力が十集まろうと関係無い。自分の邪魔をする者は全て叩き潰すのみ。

 アナザーゲイツマジェスティは、左腿にある頭骨を叩き割る。

 

『スペクタァァ』

 

 召喚されたのは、銀色の体に襤褸切れ同然の紫のパーカーを羽織るアナザーライダー。

 深い皺が刻まれた顔は計り知れない激昂によって歪まれられており、皺もそれによって出来たもの。額から伸びる捻じれ、枝分かれした二本の角も相まってまさに悪鬼の表情。

 黒塗りの両眼の奥に激情に染まる白眼が透けて見え、群れるバグスターウィルスΩを睨み付けている。

 その背に一対の翼──ではなく五指を限界まで開いた半透明の巨大な手が生えており、指先にあたる部分は通常サイズの手に置き換えられており、見る者に生理的嫌悪感を覚えさせる。

 

「アナザースペクター!? でも、姿が違う……」

「どうやら強化されたアナザーライダーを召喚するのが彼の能力のようだ。恐らく、あれはディープスペクターのアナザーライダー」

「アナザーディープスペクター……」

 

 風に靡くパーカーにはそれが答えだと言わんばかり『DEEP SPECTER』の文字が描かれている。

 

「フゥゥゥ……!」

 

 尽きぬことの無い憤怒を込めた吐息がアナザーディープスペクターの歯牙の隙間から洩れる。アナザーゲイツマジェスティに目の前に並び立つ敵を倒すことを命じられるのを今か、今かと待ち望んでいた。

 アナザーゲイツマジェスティはバグスターウィルスΩたちを見る──のではなくグランドジオウたちの反応を見ていた。アナザーディープスペクターの召喚に驚いている様を見て、満足し終えると命令を下す。

 

「よし。喰っていいぞ」

 

 アナザーゲイツマジェスティが言い終える前にアナザーディープスペクターは地を蹴っていた。

 背中の翼の様な手は飾りではなく、羽ばたきはしないがアナザーディープスペクターの体を浮かせ、飛翔させる。

 アナザーディープスペクターは躊躇うことなくバグスターウィルスΩの群の中に突撃。衝突の際に何体かのバグスターウィルスΩが吹っ飛ばされる。

 バグスターウィルスΩたちの中心に降り立つアナザーディープスペクター。怒りに歪む顔が今は暗い喜びで歪められている様に見えた。

 アナザーディープスペクターが吼える。すると、巨大な両手の指先か生える手が一斉に伸び、周囲のバグスターウィルスΩの胸部を貫く。

 半透明のそれには透過能力があるらしく突き刺さった箇所に貫通の傷は出来ていない。バグスターウィルスΩはそれを引き抜こうとするが、バグスターウィルスΩの手はすり抜けるだけであった。

 バグスターウィルスΩたちに挿し込まれていた手が引き抜かれる。その手中に青白い炎の様な物を握り締めて。それが抜かれた途端、バグスターウィルスΩたちの体は崩壊してしまった。

 引き抜いたのは魂。通常の人間ならば意識不明の状態になるだけだが、バグスターウィルスΩたちにとって自らを形成する核と言うべきものであり、それが無くなれば存在を維持出来なくなってしまう。

 アナザーディープスペクターの胸部に裂け目ができ、それが開くと巨大な赤い目が現れる。引き抜いた魂はその目の中に吸収されてしまった。

 一瞬にして十体のバグスターウィルスΩたちが葬られた。だが、それに臆する彼らでは無い。そもそもそんな感情を持ち合わせていない。

 目の前のアナザーディープスペクターも自分たちと同じにしようと牙を剝く。

 数体のバグスターウィルスΩたちが一斉にアナザーディープスペクターに飛び掛かり──あるバグスターウィルスΩは横から飛んできた拳によって顔面を打ち抜かれ、あるバグスターウィルスΩは唸る回転鋸によって粉砕され、あるバグスターウィルスΩは不可視の光球によって撃ち落とされ、あるバグスターウィルスΩは蹴りによって無慈悲に顔面を砕かれた。

 降り立つグランドジオウ、ゲイツリバイブ、ウォズギンガファイナリー、そして、アナザーゲイツマジェスティ。本来ならば共闘することなど有り得ない関係が、共通の敵を持ったことで肩を並べる。

 グランドジオウは連続してレリーフを叩く。

 

『フォーゼ!』

『ウィザード!』

『ビルド!』

 

 フォーゼのレリーフから飛び出す二つの光がグランドジオウの両脚に付くとミサイルランチャーとガトリング砲となる。アストロスイッチの効果で物質化した二つの武器に加え、ウィザードのレリーフからは手を模ったパーツが側面に付いた銀色の銃──ウィザーソードガン、ビルドのレリーフからはホークガトリンガーが召喚され、グランドジオウの両手に握られる。

 そこから繰り出されのは圧倒な火力による弾幕。両脚からミサイルと銃弾がばら撒かれ、ウィザーソードガンは変幻自在の軌道の弾丸、ホークガトリンガーからも自由自在に飛翔するタカ型の光弾が無数に撃ち出される。

 ガトリング砲から吐かれた弾はバグスターウィルスΩたちを蜂の巣にし、ミサイルによって爆撃されたバグスターウィルスΩたちはバラバラになる。ミサイルの爆撃に耐えた者たちも爆風で吹き飛ばされ、そこへ銀色の弾とタカ型の光弾によって貫かれる。

 ゲイツリバイブがジカンジャックローを突き出せばバグスターウィルスΩは殴り飛ばされ一撃で消滅。ジカンジャックローでなくとも剛烈の四肢が放つ一撃一撃は必殺であり、ゲイツリバイブが手足を動かす度にバグスターウィルスΩたちが消えていく。

 ウォズが手を翳せばバグスターウィルスΩたちはそれだけで動けなくなる。ギンガファイナリーが少しだけ重力を操作すれば、バグスターウィルスΩたちは瞬く間に木偶と化す。後はもう片方の手に溜めた力で特殊な力場を生み出し、それを光球型に抑え込むこと創り出されるエナジープラネットによって一掃する。

 アナザーゲイツマジェスティはアナザーディープスペクターの背に触れる。するとアナザーディープスペクターの体が変形し始める。

 手足や胴体が絡み合い細まっていき、数秒も経たずに弓に変化。弓部分は背に生えていた巨大な手になっており、照準器の様にアナザーディープスペクターの顔が付けられている。

 召喚したアナザーライダーを弓か矢、斧などにする武器化能力をグランドジオウたちの前で披露するアナザーゲイツマジェスティ。その悪趣味なデザインにグランドジオウたちは仮面の下で顔を顰めていた。

 アナザーディープスペクターは手の先から張られる蒼炎の様な弦を引く。すると、アナザーディープスペクターの目が忙しなく動き、敵に狙いを定める。

 弦を離すと撃ち出されるのは矢──ではなく半透明の無数の手。それらがバグスターウィルスΩたちの胸に突き立てられる。そして、アナザーゲイツマジェスティが弦を再び引くと魂を握り締めた手が抜かれていく。

 アナザーディープスペクターと同じ攻撃方歩だが、アナザーゲイツマジェスティはここから少し違う。引き抜かれた魂は弓に集まると矢の形に再形成される。

 青白い燃える矢をアナザーゲイツマジェスティが射る。矢が飛ぶ先にはアナザーキメラ。

 矢はアナザーキメラの肩に突き刺さり、矢に込められたバグスターウィルスΩたちの命が炎上する。

 

『アアアアッ!』

 

 理性も知性も感じない呻き声しか発しなかったアナザーキメラが、身に移る蒼炎に悍ましいものを感じたのか、恐怖を訴える様な絶叫を上げる。叫んでいるのはアナザーキメラだけではない。それを形成する全てのアナザーライダーたちが一斉に叫び、耳の奥に残りそうな気色の悪い不協和音を奏でていた。

 アナザーキメラは急いで刺さっていた矢を引き抜く。白痴の様なアナザーキメラも生死の際に立つと生物らしい反応を見せる様子。

 

『アアアア……!』

 

 アナザーキメラが咆哮を上げる。すると、炎が出現し周囲を走っていく。瞬く間にグランドジオウたち、アナザーキメラらを囲む巨大な円が生み出されると、グランドジオウたちの足元に燃える様な輝きを持った巴紋が浮かび上がった。

 

「不味いっ!」

 

 ウォズはそれが何を意味するのか瞬時に理解し、ギンガファイナリーの力を使いグランドジオウたちを真上に浮かび上がらせる。

 次の瞬間、アナザーキメラは拳を地面に叩き付けた。叩かれた地面が爆音の様な太鼓の音を奏で、発せられる衝撃でバグスターウィルスΩたちが足元を爆破された様に吹き飛ぶ。

 アナザー響鬼の能力。本来ならば邪気を清める筈の音は、ただ滅するだけの音へ歪まれている。

 宙に突き上げられたバグスターウィルスΩたちは、太鼓の衝撃によって次々と四散していく。味方諸共葬るアナザーキメラの攻撃だが、そもそもバグスターウィルスΩたちはアナザーキメラの攻撃手段であり、アナザーキメラ自身味方とも認識していない。減ったとしても幾らでも補充が出来る存在である。

 同じく宙に浮かぶグランドジオウたち。アナザーキメラを視認していたが、突然アナザーキメラの巨体が消える。直後に衝撃がグランドジオウたちを襲った。

 

「うわあっ!」

 

 浮かび上がっていた体が地面へと叩き付けられる。体を起こしたグランドジオウたちが見たのは、周りを高速で移動するアナザーキメラの微かな残像。

 ゲンムの時に補助として使っていたアナザーカブトのクロックアップ能力を本来の形で使用している。

 通常ならば手も足も出ない能力だが、グランドジオウたちにはそれに対抗する術を持っていた。

 

『カブト!』

『スピードターイム!』

『ワクセイ!』

 

 グランドジオウはレリーフから仮面ライダーカブトを召喚し、ゲイツリバイブとウォズは形態を切り換える。

 

『リバイ・リバイ・リバイ! リバイ・リバイ・リバイ! リバ・イ・ブ! 疾風! 疾風!』

『水金地火木土天海! 宇宙にゃこんなにあるんかい! ワクワク! ワクセイ! ギンガワクセイ!』

 

 剛烈から疾風へ。ウォズギンガファイナリーからウォズギンガワクセイフォームへ姿を変えると、ウォズはすかさずドライバーを操作。

 

『ファイナリー! ビヨンド・ザ・タイム!』

 

 空高く生み出させるエネルギーの星雲。渦巻く星雲の中に星々が輝きを強めていく。

 

『水金地火木土天海エクスプロージョン!』

 

 星雲から降るのは数々のエナジープラネット。上空からの爆撃は、巨体を持つアナザーキメラには有効であり高速移動状態のアナザーキメラに面白いぐらいに命中し、アナザーキメラの動きを止める。

 そこに飛び込むのはゲイツリバイブ疾風。つめモードとなったジカンジャックローを握り締め、青い残像と共にアナザーキメラを斬り裂く。

 

「クロックアップ」

『CLOCK UP』

 

 グランドジオウが召喚したカブトがクロックアップを発動。すると、カブトは横に一歩移動しグランドジオウの体に入り込む。グランドジオウと重なる半透明のカブトの姿。

 カブトと一体化したグランドジオウの姿が消える。すると、アナザーキメラの顎が跳ね上がった。

 クロックアップの能力を得たグランドジオウの高速攻撃。そこにゲイツリバイブも加わり、目視出来ない連続攻撃がアナザーキメラに叩き付けられる。

 だが、攻撃はそれだけではなかった。

 

『ガタック……』

 

 アナザーゲイツマジェスティが右腿の頭骨を割る。呼び出されたのは、巨大な鋏状の頭部を持ち、腹部からも鎌状の複腕を生やした黒味を帯びた青いアナザーライダー。厚みのある外骨格が備わっているが、胸の中央部分だけ臓器の様な生々しい赤い器官が露出しており、心臓の様に脈打っている。

 呼び出したアナザーハイパーガタックの背にアナザーゲイツマジェスティは容赦無く左手を突き刺す。アナザーハイパーガタックは痙攣する様に一瞬だけ体を震わすと、その体を変形させる。

 左腕全体覆う巨大な青黒い手甲。先端には複腕と角が変形した四本の爪が生えている。アナザーハイパーガタックを爪状の武器にした瞬間、アナザーゲイツマジェスティの視界に入るもの全てが静止した。

 高速で移動している筈のグランドジオウもゲイツリバイブも蝸牛よりも遅い鈍足へと成り下がる。

 アナザーゲイツマジェスティは余裕を持った歩みでアナザーキメラへと接近。悪趣味なオブジェクトの様な腹部にアナザーハイパーガタックの爪を突き出す。

 複腕と角が大きく開かれながらアナザーキメラの腹部を刺し、その状態から閉じていく。最早、爪というよりも鋏の様になっている。

 すると、複腕と角から電流の様なエネルギーが発生し、アナザーキメラの体内へと流し込まれる。

 内部から崩壊していくアナザーキメラの体。しかし、本人はそれにすら気付かない。

 そして、止まっていた時間が動き出す。

 

『アアアアアアアアアッ!』

 

 突如として絶叫を上げるアナザーキメラ。体の内側から煙の様なものが上がり始める。グランドジオウとゲイツリバイブは一瞬戸惑うも今まで居なかったアナザーゲイツマジェスティがいつの間にか居たことに気付き、彼が何かをしたと判断。しかし、好機と思いこのまま一気に倒そうとする。

 

『フィニッシュタァァイム! グランドジオウ!』

『フィニッシュタァァイム! リバイブ!』

 

 グランドジオウは跳躍し、その右足から青白く輝きエネルギーを発する。そして、アナザーキメラの周りに『きっく』の文字が幾つも出現した。

 

『オールトゥエンティー! タイムブレーク!』

『百烈! タイムバースト!』

 

 一直線に向かうグランドジオウのキック。それに合わせて複数の分身と共にキックを放つゲイツリバイブ。

 誰もがこの一撃で決まると直感した。そう、誰も、がである。

 故に決断は下された。

 

「ここまでだな」

 

 アナザーキメラの体が内側から膨張。その変化にグランドジオウたちが対処するよりも早くアナザーキメラは大爆発を起こす。

 体内に埋め込まれたアナザーウォッチを全て自壊させ、それによって放出されるエネルギーが凄まじい爆発を生じさせたのだ。

 

「うああああああああ!」

 

 爆発に巻き込まれ、グランドジオウらは吹き飛ばされる。彼らにとってそれは予期せぬ不意打ちであった。

 大きな爆発で地面に巨大なクレーターが生まれ、それによって一メートル先も見えない砂煙が起こる。

 間近で爆発を受けたグランドジオウ。幸い。頑丈な装甲のお陰で致命傷に至っていないが、それでも爆発の衝撃ですぐに動けずにいた。

 

「使い捨てとしては、オーラもまあまあ役に立ったな」

「スウォルツ……!」

 

 砂煙の向こうから嘲笑を浮かべるスウォルツが現れる。

 

「──壮観だな」

「何だって……?」

 

 グランドジオウの姿をまじまじと眺めた後、スウォルツが思わぬ感想を言う。

 

「数多のライダーたちの力はお前の許に集まった。やはり、お前には生まれながらの王。お前は王となり破滅から世界を救う使命がある」

 

 その言葉にグランドジオウは仮面の下で目を見開いた。それは、かつて幼いソウゴが謎の男から聞かされたもの。王を目指す切っ掛けになった言葉であった。

 

「まさか……」

「お前は王に相応しい成長を遂げた。俺の御陰でなぁ。後はその力を俺が手にするだけだ。この俺が王になる為になぁ」

 

 突き付けられた真実。今に至るまでのことが全てスウォルツを王に押し上げる為のもの。

 

 

「……その為にウールやオーラを? 仲間じゃなかったの?」

「仲間……? そんなものは最初から存在しない。あれは所詮、俺が王になるための手駒だ」

「お前さ……王に向いてないよ」

「ほう? そうか?」

 

 怒りを押し殺したグランドジオウの言葉。しかし、スウォルツには微塵も動揺しない。

 

「俺には世界を支配する力があるっ!」

 

 グランドジオウの言葉を否定する様にアナザーディケイドVEライドウォッチを見せる。

 

「世界を良くするのが王だ……その為の力だっ!」

「ふふふ、はははははは!」

 

 スウォルツはその言葉に嘲りを含んで笑い声を上げる。

 

「実は俺には一人だけ、目指すべき王の姿がある」

「目指すべき王の姿……?」

「オーマジオウ。あれこそが俺の成るべき王の姿だ」

「なっ!」

 

 その名にグランドジオウは絶句する。

 

「世界を支配し、邪魔は全て排除し、自らが定めた覇道を突き進む。まさに、王の中の王だとは思わないか?」

「違う! あれは──」

「ああ、あれがお前の至るべき未来の可能性だとしたら、お前の中にも俺と同じ考えがあるという訳か」

「違う! 違う! 俺はそんなことを望んでいない!」

「そう否定するな。ここは王を目指す者同士──」

 

 スウォルツは悪意に染まった笑みを見せながら、グランドジオウに手を差し伸べる。

 

「──友にでもなろうじゃないか」

「スウォルツっ!」

 

 グランドジオウは怒りの衝動のまま立ちあがるが、直前にスウォルツが放つ波動によって時間を停められてしまう。

 

「今のお前では俺は倒せん。俺を倒したければ──」

 

 スウォルツはグランドジオウに顔を寄せ、その耳元で囁く。

 

「オーマジオウとなれ」

 

 

 ◇

 

 

「いやー、まさか檀さんたちが急に仕事で帰るなんてねー。まあ、何か仕事の出来そうな人たちだったし、しょうがないね」

 

 クジゴジ堂で順一郎は黎斗たちが居なくなったことを残念そうにしながらテキパキとお茶を準備していた。

 

「でも、代わりにソウゴ君のお友達が来てくれたし、切り替えてちゃんと歓迎しないとね!」

 

 紅茶が入ったティーカップをテーブルの上に置く。

 テーブルに座るのは五人。絆創膏などを貼ったソウゴ、ゲイツ、ウォズ。気不味そうに俯いているツクヨミ。

 そして、同じく絆創膏を顔に貼りつけ露骨に不機嫌な表情をしている加古川飛流であった。

 

 

 

 

 

 

 ・ダークライダーの帰還──檀黎斗編

 

 黄金に輝くライダー───仮面ライダーエグゼイドムテキゲーマーは走っていた。

 薄紫色に染まる空。太陽が無いのに夕焼け程度の明るさを保つこの空間。明らかに通常のものとは異なる。

 走り続けたエグゼイドは、ようやく目的の人物を見つける。

 

「ゲンム!」

「よくここまで辿り着いた、宝生永夢! そして、歓迎しよう! ようこそ! 私のゲンムワールドへ!」

 

 ゲンムワールド。それは、黎斗が異なる世界で手に入れたデータを元にして創られた黎斗が支配する異空間。

 

「門番たちを倒すとは、流石は天才ゲーマーM!」

 

 戦国時代の様な鎧を纏い、下半身が植物と同化していた武神幻夢。

 巨大な翼で飛翔し、空中戦を仕掛けてきたアークゲンム。

 どのゲンムも強敵であったが、エグゼイドの力で何とか撃退することが出来た。

 

「今度は何が目的なんだ! 攫った人たちを解放しろ!」

 

 多くの人々は黎斗によってこのゲンムワールドに閉じ込められている。

 

「彼らは今ゲームをしている」

「ゲームだと……?」

「このゲンムワールド内で幸福という名のゲームをしているのだ! ルールは至って簡単だ! 自分が最も望む幸福を仮初めと認め、放棄する! それだけでゲームクリアだ!」

「何て残酷な……!」

「残酷ぅ? 寧ろこれは私からの慈悲だ。私は選別している。現実を生きられる人間と生きられない人間を! 現実で生きられる人間は還し、そして生きられない人間にはゲームという幸福を与える! 分り易い区別じゃないかな?」

「それは、お前が決めることじゃない!」

「いいや、私が決める! 何故なら私は神だからだ!」

 

 話は平行線。話し合いでは最早解決出来ない。

 

「──なら、全ての人々の運命は、俺が変える!」

「やってみるがいい。私の新たなゲームに勝てればなぁ!」

 

 黎斗はゲーマドライバーを装着。そして、通常のガシャットよりも厚みがあり、円形のダイヤルが付いたガシャットを取り出す。ダイヤルには三分割された異なるゲンムの顔が描かれている。

 黎斗は新たなガシャットのスイッチを押す。

 

『ゲンムトリニティ!』

「グレード210(トゥーハンドレッドテン)……変身!」

 

 人よりも数歩先を行く頭脳を持つ故に常人が歩み速度を軽々と追い越し、倫理を超えてしまう男──檀黎斗。彼が行き着く果ては、誰にも分からない。

 




ごちゃごちゃした戦いが終わりましたが、次回からまたごちゃごちゃした戦いが始まります。

先にどちらが見たいですか?

  • IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
  • IFゲイツ、マジェスティ
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