チェイスが変身したチェイサーマッハを見て、ウォズは感心した声を出す。
「どうやら賭けは君の勝ちだ。大したものだね」
「俺は特に何もしていない。奴と詩島剛は本当の友だった、ただそれだけだ」
かつて剛がゲイツへと語った人間とロイミュードとの友情。今それが形となって現れる。
チェイサーマッハが腕を水平に伸ばす。すると、何処からともなく飛ばされてくる戦斧。刃と柄を合わせて自分の身長程あるそれを、目視することなく掴み取ってみせる。
信号機と斧を組み合わせ、丁寧に『ライダー専用』という表記まで付いた奇抜な武器──シンゴウアックスを肩に担ぎながら、チェイサーマッハはマッハドライバー炎上部にあるスイッチを叩く。
『マッハ!』
マフラーを模したパーツから炎の如く噴き出るエネルギー。チェイサーマッハがシンゴウアックスを両手で握った瞬間、姿が消える。
後に起こるのは、ロイミュードたちの間を縫う様に高速移動する銀と紫の影。影が通り過ぎた後に斬撃音が鳴り、ロイミュードの体が両断される。
音よりも早く駆け抜けていくその姿はまさにマッハ。
半数近いロイミュードたちを撃破し、急停止するとマッハドライバー炎スロットからシグナルマッハを取り出し、シンゴウアックスのスロットに挿し込む。
『ヒッサツ!』
続いて柄にあるスイッチを押す。
『マッテローヨ!』
信号機部分の赤いランプが点灯。チェイサーマッハは柄頭を地面に突き立て、指示通りに待つ。
とはいえ敵の方はそれを待っている筈も無くチェイサーマッハの方へワラワラと寄って来る。
チェイサーマッハはブレイクガンナーとゼンリンシューターを構えるが──
「お前らも少し待ってろ」
チェイサーマッハの頭上を通過していく青い影。それは剛烈から疾風へ形態を変えたゲイツリバイブであった。
ゲイツリバイブはつめモードのジカンジャックローのボタンを連続で押し、力を充填させるとロイミュードたちに向けて二爪を振るう。
『つめ連斬!』
ジカンジャックローから無数に放たれる爪型の光弾が、ロイミュードたちに雨の様に降り注ぐ。多量に浴びた者は爆散し、それから逃れようとする者は手足を貫かれて動きが鈍くなる。
残ったロイミュードたちは、チェイサーマッハたちと戦うのは不利と思ったのか逃げ出そうとする。
「待てと言われた筈だが?」
ウォズがロイミュードたちに向けて両手を翳す。すると、ロイミュードたちの足が地面から離れ、宙へと浮き上がる。ウォズは両掌を合わせる構えをとると、それに合わせてロイミュードたちが一箇所に固まる。
『イッテイーヨ!』
信号が赤から青へ変わるとチェイサーマッハはシンゴウアックスを引き抜き、片足を軸にしてその場で回転。
『フルスロットル!』
「ふんっ!」
ハンマー投げの様に遠心力を得たシンゴウアックスを投擲。投げ放たれたシンゴウアックスの刃がロイミュードたちを纏めて両断。内包されていたエネルギーが刃から解き放たれ、横断歩道の様な紋様が浮かび上がった。
固められたロイミュードたちは一斉に爆破。巨大な炎が上がると共に胸のプレートに刻まれていたナンバーが飛び出し、爆炎の中で全て砕け散っていく。
視界一杯にいたロイミュードたちは、チェイサーマッハら三人のライダーたちによって一掃される。
「礼を言う。お前たちのおかげで俺は、俺の使命を思い出せた」
「こちらも助けられた。お互い様だ」
「ゲイツ君の言う通りだ。だが、仲良く礼を言い合うのはまだ早いかもしれない」
全滅による弛緩した空気を瞬時に引き締め、油断せずに次に湧いてくるだろうロイミュードたちを警戒する。
しかし、さっきまでは開いた穴を埋める様に際限なく出て来たロイミュードたちが急に姿を見せなくなる。
「……出て来ないな。他へ向かったのか?」
「もしかしたら……」
「何か分かったのか?」
「あくまで想像だけどね」
ウォズは一言前置きし、自らの推論を語る。
「あのロイミュードたちは仮面ライダードライブが存在しないという歴史の影響で現れた。だが、今ここに仮面ライダードライブでは無いがそれに連なるライダーが復活した。それによって歴史が書き換えられたのかもしれない」
「成程。仮面ライダーの存在が連中の歯止めとなるのか……」
「そういうことになるね……ただ、それが永続的なのか一時的なのかは分からない。それに、ライドウォッチが壊れていくということは、仮面ライダーが存在しない歴史の方が正しい、ということになっていく。……その歴史に修正しようと何かしらの反動があるかもしれない」
「構わない。俺が耐えればいいだけのことだ」
ウォズの示唆に対し、チェイサーマッハは迷うことなく言い切る。
「人々を守る。それが仮面ライダーの使命。俺は、この使命をもう忘れたくはない」
人では無い機械生命体のロイミュードであるチェイサーマッハの言葉には、機械とは思えない確かな熱の様なものをゲイツリバイブたちは感じ取った。心、或いは魂とも呼ぶべきものが発する命の熱。
「──そうか。何か少しでも異変を感じたのならすぐに言え。出来る限りのことはする。お前に何かがあったら詩島剛に顔向け出来ん」
「分かった。善処しよう」
二人のやり取りを見ながら、ウォズはこれからのことを考えていた。
(この現象、これからも進行していくだろう。だが、もし、彼の様に失われた歴史に関わる者がライドウォッチで仮面ライダーの力を取り戻したら……?)
消滅した歴史が歪んだ形で顕現するこの現象を止められるかもしれない。
(まあ、今みたいにそう都合よくは行かないだろうけどね)
不確かで楽観的な考えだと割り切ろうとした時、地響きを思わせる現象が起こる。それは、スカイウォールが出現した時と同じ現象であった。
周囲を見渡す三人のライダー。すると、彼方の景色が歪み始め、何も無かった場所に巨大な風車を付けた塔が現れる。そして、更にその近くで異なる塔が出現。前述の塔とは違い、先端部分が茸の傘の様に広がっており、その傘の周囲に巨大なリングが付いている。
「風都タワーに、ユグドラシルタワーだと……!?」
知らぬ二人の代わりにウォズが塔の名を声に出す。
仮面ライダーWの歴史に存在する塔と仮面ライダー鎧武の歴史に存在する塔。二塔の出現は、この世界に新たな敵が出現することへの前兆。
そう思った直後に出現する敵たち。スーツ姿に拳銃を持ち、黒地に白いムカデ或いは白骨をイメージしたデザインが施されたマスクを被っている集団──マスカレードドーパントたちである。その中に混じり、マグマの様な見た目の怪人、恐竜の頭部の様な姿の怪人たちがいる。彼らはガイアメモリによって変身した怪人──ドーパントである。
次に現れた敵群にゲイツリバイブは見覚えがある。
「あれはヘルヘイムの森で……!?」
甲羅状の胴体から手足を生やし、胴体に頭部が埋め込まれた見た目をした生物。かつてゲイツリバイブがヘルヘイムの森で出会ったインベスと呼ばれた生物たちである。ほとんど同じ見た目の中には虎や鹿などの別の生物を模したより上位のインベスもいる。
「歴史という時空の歪みがまた新たな形で現れたね……」
「──出て来たからには倒すまでだ。悪いがまた手伝ってもらうぞ?」
「問題無い。人々の為になるのなら本望だ」
ゲイツリバイブたちはマスカレードドーパント、インベスの大群に向かっていく。
彼らの戦いにまだ終わりは見えない。
◇
「ふん!」
気合いの声と共にソードモードのライドブッカーが振り下ろされ、ガーディアンの一体を斬り裂いた。
ガーディアンは切断箇所から火花を散らしながら仰向けに倒れていき、地面に背を触れさせる前に爆発する。
噴き上がる爆炎が晴れ、その向こうに立つのはジオウ──ではなくディケイドがカメンライドしたディケイドジオウであり、斬った後のライドブッカーの刃を拭う様に指を滑らす。
そして、その近くではディエンドによって召喚された仮面ライダーゲイツがジカンザックスを振るいガーディアンたちを斬り倒していく。
離れた場所にいるガーディアンたちが、ライフルの銃口を自分に向けていることを察知すると、すかさずジカンザックスを斧から弓へ変形。
『You! Me!』
ジカンザックスから射られた光矢がライフルを構えていたガーディアンたちを射抜き、爆散させる。
ソウゴたちはそれを啞然とした気持ちで見てしまっていた。アナザーライダー以外で自分以外のジオウやゲイツを見ることになるとは思ってもいなかった。
しかし、ソウゴは周囲の悲鳴ですぐに気持ちを切り替え、グランドジオウライドウォッチを取り出す。幸い、ライドウォッチの破損が起きてもまだ使用出来る。
「変身!」
『グランドターイム! 祝え! 仮面ライダー! グ・ラ・ン・ド! ジオーウ!』
ソウゴがグランドジオウへ変身すると、飛流もまたアナザーゲイツマジェスティウォッチを構えてスイッチを押す。
『ゲイツマジェスティ……!』
飛流のアナザーゲイツマジェスティ化。市民の命など眼中には無いが、ソウゴに遅れをとることが許せない飛流の反抗心から来る変身であった。
ディケイドジオウにゲイツ、ディエンド。そこにグランドジオウとアナザーゲイツマジェスティが加わる。この時点でガーディアンやスマッシュたちに勝ち目は無くなった。
グランドジオウが近くにいたガーディアンに拳を打ち込む。黄金の輝きを放つ一撃はガーディアンを粉砕。その際に打ち出されたガーディアンの部品などが散弾の様に散らばり、他のガーディアンたちも巻き添えにする。
アナザーゲイツマジェスティが振り下ろす手刀は、ガーディアンの体を一撃で真っ二つにする。アナザーゲイツマジェスティが腕を振るう度にガーディアンはバラバラにされ、数を減らしていく。
ディケイドジオウはライドブッカーを振るってガーディアンの残骸を増やし、ディエンドは近接戦闘をゲイツに任せつつ、合間を見て銃撃によるサポートも行っていた。
多数対少数という戦いの筈なのに少数側が圧倒するという現実。この一方的な状況を見れば、ガーディアンやスマッシュに同情するだろう。
「フィニッシュといこうか」
ある程度数を減らすと、ディケイドジオウは一枚のカードを取り出す。カードには金字によるジオウの紋章が描かれている。
ディケイドジオウはそれをネオディケイドライバーに投げ入れた。
『ファイナルアタックライド・ジ、ジ、ジ、ジオウ!』
ディケイドジオウが跳躍すると、数体のガーディアンたちを囲む様にして現れる『キック』の文字群。『キック』の文字はガーディアンたちに衝突し、彼らを一箇所へと集めていく。
「はあっ!」
ディケイドジオウが右足を突き出すと露わになる足裏の『キック』の文字。複数あった文字群は一つに重なり合ってディケイドジオウに向かって飛ぶと、その右足裏の文字と同化。足裏の『キック』と顔面の『ライダー』の字がマゼンタに輝き、字が示す通りのライダーキックをガーディアンたちに放ち、纏めて爆砕した。
『ファイナルアタックライド・ディ、ディ、ディ、ディエンド!』
ネオディエンドライバーの銃口から発生するカード型のエネルギー。銃口を囲む様にして並び、銃口を延長させる。
ディエンドが引き金を引くと共に発射される緑、黒の光が入り混じるエネルギーの光線。カード型エネルギーで形成された銃口を通過していくと、ディエンドが召喚したゲイツがその光線の中へと飛び込み、自らをエネルギーに変換して光線の威力を高める。
結果、十数体いたガーディアンたちはその光線によって跡形もなく消し飛ばされる。
アナザーゲイツマジェスティが体に埋め込まれた頭骨の一つを割る。
『ギャレン……!』
召喚直後に響き渡るは鳥──ではなく孔雀の鳴き声。羽ばたきの音と共にアナザーゲイツマジェスティに降り立つ新たなアナザーライダー。
顔の上半分には縫い合わせた金の孔雀の横顔と金の海蛇の横顔。上向きになった嘴と舌が角の様になっている。腕や脚には装飾の様に海蛇の胴体が巻き付き、腹部中央には孔雀の頭骨がレリーフとして埋め込まれている。
手には銃剣が装着された拳銃を握っており、撃鉄部分には孔雀の羽が生えている。そして、アナザーライダーの背にもまた孔雀の羽が六枚生えており、羽には菱形の紋様が浮かんでいるが中央に眼球らしきものがあり、生きているのは左右に動いている。
腰の左側には『GARREN JACK FORM』の刻印。
アナザーギャレンジャックフォームは怪鳥音と共に再び飛翔。上空へ上がると銃口をガーディアンたちに向ける。すると、燃え上がるアナザーギャレンジャックフォームの羽。炎は羽を伝わって菱形の目に集まっていく。
アナザーギャレンジャックフォームが鳴き声を上げると菱形の目から火球が発射。六つの目から絶え間なく連射される火球。更には拳銃からも火球が撃ち出され、ガーディアンたちに逃げ場を与えない程の火球を豪雨の如く降り注がせた。
『ビルド! ビルド! ビルド! ビルド!』
グランドジオウは連続して四回ビルドのレリーフを押す。グランドジオウの周囲に現れた扉からビルドホークガトリングフォーム、ゴリラモンドフォーム、海賊レッシャーフォームが出現し、鎧のレリーフからは剣と大砲が一体化した大型武器──フルボトルバスターが飛び出して、グランドジオウの手に収まる。
グランドジオウは二つのライドウォッチのスイッチを押して、流れる動きでジクウドライバーを回転。
『フィニッシュタァァイム! グランドジオウ!』
ホークガトリングは飛び上がると共にホークガトリンガーの弾倉を回転。ゴリラモンドはゴリラの左腕で地面を砕き、隆起した地面をダイヤモンドの右腕で触れることでダイヤモンド化。海賊レッシャーは、カイゾクハッシャーの電車型の引いてエネルギーを充填させる。
『オールトゥエンティー! タイムブレーク!』
グランドジオウはフルボトルバスターを大砲形態に変え、砲口から多色が混じったエネルギー弾を発射。ホークガトリングはタカ型の光弾を上から撃ち落ろし、ゴリラモンドはダイヤモンドの塊を左拳で砕くことで破片を打ち出し、海賊レッシャーはカイゾクハッシャーから電車型のエネルギーの矢を射った。
光速のタカたちが啄み、金剛石の槍が貫き、飛び回るエネルギーの電車が射抜き、そこへグランドジオウが放った砲弾によって纏めて粉砕する。
スマッシュたちは為す術も無く全滅してしまった。
試しにビルドの力を使ってみたが、特に影響は無くグランドジオウは一先ず安心する。
戦いを終えるとグランドジオウは変身を解き、思っていた疑問を同じく変身を解いていた士にぶつける。
「ねえ、何でジオウに変身出来たの? 何処であのカードを手に入れたの?」
もっともな疑問を問われる士。
「買い物をしたら、オマケで付いてきた」
こちらは真面目に答えるつもりはないらしく、ソウゴにとっては面白くない冗談で返してくる。ソウゴは思わず顔を顰めてしまった。
あまり望みは無いが、ディエンドの方にも訊いてみる。
「ねえ、何でそっちもゲイツのカードを?」
「それは──おっと」
ディエンドが仰け反ると、彼の眼前を拳が通過する。放ったのはアナザーゲイツマジェスティ。
「いきなり酷いね。こんなことをされる謂われは無いと思うけど?」
「惚けるなっ! 俺のウォッチを返せ!」
アナザージオウⅡウォッチを奪われたことを未だに根に持っているアナザーゲイツマジェスティ。
「あれはもう僕のお宝だよ?」
「ふざけたことを……! 痛い目をみたいらしいな……!」
「生憎、僕は君に付き合っている暇は無いよ」
ディエンドは銀色のオーロラを出し、そこへ逃げ込もうとする。
「無駄だ!」
アナザーゲイツマジェスティが腕を振るうと、銀色のオーロラが罅割れ、そのまま砕け散る。
「なっ!」
「返せっ!」
逃げ場所を失ったディエンドの顔にアナザーゲイツマジェスティの拳が突き刺さり、ディエンドは殴り飛ばされる。
「ぐうっ!」
「飛流! 今は争っている場合じゃないでしょ!」
「アナザージオウⅡの力があればスウォルツとの戦いにも有利になるだろうがっ!」
「そ、それは……」
感情的に見えて割とまともに返されてしまったせいでツクヨミは後の言葉を詰まらせてしまう。
「やってくれるね……! だけど言った筈だ。君に付き合う程暇じゃ無いって……!」
『アタックライド・インビジブル』
ディエンドはカードの効果により透明になって姿を消してしまう。
「無駄だ! 姿を隠そうとも俺にはお前がどこに逃げたか分かるぞ!」
「飛流! 待って!」
ソウゴが呼び止めようとするが、アナザーゲイツマジェスティは聞く耳を持たずアナザーギャレンジャックフォームを伴って走り去ってしまう。アナザーゲイツマジェスティが言うことが本当なら逃走したディエンドを追っているのだろう。
「放っておけ」
「でも……」
「海東なら逃げきれる筈だ。それよりももっと優先することがあるんじゃないのか?」
ツクヨミはハッとした表情となり、一歩前へ出る。
「私をもう一度あの場所に連れて行って欲しいの」
「あの場所?」
ソウゴにはツクヨミが言う『あの場所』に心当たりが無い。
「──2058年。私とスウォルツが居た、こことは違う時間軸の世界。前に門矢士に連れていってもらったことがあるの」
「違う時間軸の2058年……」
「そこにこの世界がこうなってしまった理由がある筈……スウォルツの原点がそこにある筈なの」
「いいだろう」
ツクヨミの頼みに士は頷く。
「しかし、二つ覚悟はしておけ。一つ、知ってしまったことで更なる重荷を背負うかもしれない」
「知るべきことを知らなければ、何も解決することなんて出来ない。それがどんな痛みを伴うことでも」
不退の覚悟を見せるソウゴ。その言葉に頷くツクヨミも同様の覚悟を心の裡に宿していた。
「なら二つ目の覚悟だ」
士が指を二本立てると銀色のオーロラが現れる。
「バナナはおやつには入らない。ちゃんと三百円以内で計算しておけよ」
そう言い残して銀色のオーロラに入っていく士。
場を和ますつもりで言ったつもりなのか、士の笑えない冗談にソウゴとツクヨミは顔を見合わせるのであった。
◇
2058年のとある屋敷。ソウゴたちはそこで幼い頃の記憶を失う前のツクヨミことアルピナと会う。
この時間軸で何が起きようとしているのか尋ねようとした時、若き頃のスウォルツが現れた。
彼は言う。間もなくこの世界は滅びると、そして、この世界を救う為にこの世界以外の世界を滅ぼすと。
世界は見えないだけで他にも無数に存在する。だが、自分たちの世界だけが滅びることに強い理不尽を覚えた若きスウォルツは、他の世界を滅ぼす決意をした。そうすることで自分の世界だけは生き残ることが出来る。
そして、その手段として利用したのが仮面ライダーであった。
他の世界には一人一人仮面ライダーが存在しており、その仮面ライダーを一つの世界に纏めることによって他の世界も一つに重なり合う。
その目的の為にソウゴは利用され、一つに纏められたソウゴたちの世界は崩壊し始めていた。
スウォルツの目的と崩壊する世界が壊れていく理由が分かり掛けてきたとき、若きスウォルツはソウゴたちへ牙を剝く。
「うあああああっ!」
「きゃああああ!」
若きスウォルツが放った力によってソウゴたちは屋敷の外へと飛ばされた。
整えられた芝生の上を転がっていくソウゴたち。
「お前たちがここに来たということは、僕の計画も順調に進んでいるといことだ。だから、これ以上の邪魔をしないでくれ」
近付いて来る若きスウォルツ。しかし、一歩進む度に成長した後のスウォルツの姿と入れ替わる。若きスウォルツの力による幻覚であった。
「……そうやって邪魔だからツクヨミも追放したの?」
「何だって?」
立ち上がりながら呟くソウゴの言葉に若きスウォルツの動きが止まる。
「自分の妹なのに邪魔だから記憶を奪って追放したのか……!」
「……そうか。いずれ僕はアルピナと袂を分かつのか……だけど仕方のないことさ! それは僕が王となり世界を支配するのに必要なことだから!」
悪びれる様子も無く若きスウォルツは言い放つ。今のスウォルツの原型は既にこの時に完成していた。
「スウォルツ!」
ツクヨミがファイズフォンXの銃口を若きスウォルツへ向ける。
「撃てるのか? お前に? 俺が?」
若き姿から今の姿となって挑発するスウォルツ。ツクヨミのファイズフォンXが微かに揺れる。
「覚えているか、アルピナ。お前は小さい頃から孤独だった。だが、兄である俺がお前の孤独を癒していた」
揺れが徐々にだが強まっていく。
「そう言えば、十歳の誕生日にお前は──」
「止めて! ──聞きたくない……」
動揺を生む若きスウォルツの思い出話を、ツクヨミは大声で掻き消そうとする。
「私には……そんな思い出なんて残っていない……」
「そうだな。だが、俺には残っている」
「貴方が奪っておいて……!」
ファイズフォンXの揺れが収まり、若きスウォルツにしっかりと照準を定める。だが、いくら待っても引き金が引かれることは無かった。
「やはり、君は僕の可愛い妹だ」
姿を戻した若きスウォルツの手から放たれる光弾が、ツクヨミの手からファイズフォンXを弾き飛ばす。
もう一度放とうとした時、ソウゴがツクヨミの前に立つ。
「止めろ!」
「……君はアルピナの仲間なんだろ? 大人しくしておいてくれないかな?」
「出来る訳ないだろ!」
「なら僕を倒すのかい? そうなれば僕だけじゃない。この世界も、そしてアルピナも滅びることになるけど?」
「え……?」
その一言がソウゴに強い動揺を与える。
「だってそうだろ? 彼女はこの時間軸の人間だ。この世界が滅べば、この世界と繋がっている彼女も滅びる」
「ツクヨミが……」
「だけど、僕なら救える。アルピナもこの世界も! 強い力を持ち、いずれ王になる僕にしか出来ない! だから──」
若きスウォルツは大人の姿となり冷酷な表情をソウゴたちに向ける。
「──邪魔をするな」
若きスウォルツの手から紫炎に似たエネルギーが撃たれる。直撃する──そう思った瞬間、ソウゴたちの前に士が現れ、彼らを守る為に自らを盾にする。
命中そして衝撃が起こり、ソウゴたちは吹き飛ばされた。急いで体を起こすと、ソウゴたちの前で士が仰向けに倒れている。自分たちを庇って犠牲に、と思ったがそれにしては怪我が少ない。
士は何故か鼻の片穴から鼻血を流して不機嫌そうに顔を歪めていた。
ソウゴが士から目を離すと、視線の先には若きスウォルツの攻撃からこちらを守っているアナザーライダーの姿を見る。
青色の体は埋め込まれた光点がラメの様な輝きを発し、黄色の頭部の両端から彗星の尾の様な光が噴き出している。そのアナザーライダーが持つ杖、その選択にある鋸の様な風車が若きスウォルツの攻撃を吸収していた。
「スウォルツゥ、お前が何をしようが俺が徹底的に邪魔をしてやる」
吐き捨てる言葉と共にディエンドを追い掛けていた飛流がこの世界に現れた。士を守ったアナザーライダー──アナザーメテオストームも彼によって召喚されたもの。
「ちっ」
若きスウォルツはこのまま争うのは益が無いと判断してさっさと姿を消してしまう。
「逃げたか……!」
飛流は忌々しそうに言いながら、召喚したアナザーメテオストームを消す。
「まさか、十年前にやったことが自分の身に起こるとはな……」
士は鼻血を拭いながら何とも言えない表情を飛流に向けていた。
確かに士の命を救ったのは飛流であるが、アナザーメテオストームが士を後ろに押しやる際にわざと士の顔面に裏拳を打ち込み、殴り飛ばしたのだ。
士に対しても邪魔者という感情を持つ飛流らしい嫌がらせを兼ねた救出行為である。
「飛流。海東大樹は?」
聞いた瞬間、凄まじい目付きでソウゴを睨む飛流。どうやら逃げられたらしい。
「それで? ここで何をしていた?」
飛流は銀色のオーロラが開く気配を感じてこの世界にやって来ていた。ソウゴたちがこの世界にいる事情を知らない。
仕方なくソウゴは今まであったことを飛流に説明する。だが、ツクヨミ消滅のことは隠していた。それを知ったら飛流が何をするか分からない
「はっ。いなければ消滅で、いたらいたで一箇所に集めても消滅か。仮面ライダーの力は随分と面倒な力だな」
事情を聞き終えた飛流の第一声は仮面ライダーの力に対する嫌味であった。
それを聞きながらソウゴはスウォルツの発言を思い返す。
『だけど、僕なら救える。アルピナもこの世界も! 強い力を持ち、いずれ王になる僕にしか出来ない! だから──』
(もしかして、オーマジオウの力なら……)
世界とツクヨミを救うには人智を超えたオーマジオウの力しかない。
「いっそのこと、仮面ライダーの存在なんてこの世から消えてなくなれば世界は平和になるかもな」
飛流が嘲る様な言い捨てた言葉。ソウゴはその言葉がやけに耳の中に残った。
◇
これからも何事も無く歩んでいくと思われた日常。それが未知の怪物たちによって脅かされていく。
サラリーマンは大事な書類が入った鞄を投げ捨てて逃げ出し、年寄りは残りの寿命を削る様にして全力で走り、親子は母が子を抱えて怪物の魔の手から逃れようとする。
宝物の様に大事に抱えた我が子と共に必死になって逃げようとする母親であったが、体力の限界が来たのか躓いて転んでしまう。
それでも尚しっかりと子供を抱き締め、我が身を盾にしようとする母親。そこに灰色の体に二本の角を生やし、体に罅割れの様な模様がある怪人──グールたちが迫る。
「おりゃあ!」
グールの顔面に叩き付けられる大型リュックサック。すかさず他のグールたち目掛けて男が飛び蹴りを与え、ボウリングのピンの様に薙ぎ倒す。
黒い帽子にファーの付いたジャケットを羽織った男が倒れている親子を急いで立たせる。
「立てるか!? 早く逃げろ!」
「あ、あの──」
「ああ! 皆まで言うな! その子を連れて安全な場所に早く!」
礼を言う時間すら与えず、帽子の男は親子を急かして逃がす。親子は立ち上がるグールたちに震え、即座に逃げていった。
その後ろ姿に取り敢えず安堵し、振り返るといつの間にか別の怪物──インベスが目の前が迫っており、頭部を変形させて巨大な口と牙を露出させる。
「うおっ!?」
突然のインベスに驚く帽子の男。インベスは驚いている隙にその牙で帽子の男を喰らおうとするが、唐突に飛んできたトランプがインベスの額に突き刺さり、インベスを怯ませる。
「な、何だ!?」
「自分の身も守れない癖に人を助けるとは、随分とお人好しだな。それとも単なる愚か者なのか?」
黒字に赤の生地が縫われているロングコートを着た目付きの鋭い男が、呆れを混ぜた表情で帽子の男を見ている。
「所詮、この世は弱肉強食。弱い奴は強い奴に喰われるだけだというのに……」
「じゃあ、何で俺を助けたんだよ?」
「お前があの親子を助けた理由を知りたかったからだ」
「はっ。んな上等な理屈なんてありゃしねーよ。俺がそうしたかったからした! 今日をしっかり生き抜くのに、あの親子を見殺しにしたら後味悪過ぎるからなぁ!」
胸を張り、堂々と言い放つ帽子の男。今日という日を納得出来る様にしっかりと生きていく為にした行動であり、明日のことまでは考えていない。
「……少なくとも自分の選んだ道を突き進む強さはあるみたいだな」
その言葉に納得すると、コートの男は跳躍して額にトランプが刺さったインベスを蹴り飛ばす。
「お? 助けてくれるのか?」
「勘違いをするな。偶々、俺の敵がお前の敵だっただけだ」
あくまでコートの男はぶっきらぼうに返す。
男たちを囲む様に迫って来るグールたちとインベスたち。逃げ道は既に塞がれている。
「策はあるか?」
「無いっ! だけどピンチはチャンス! こういう時にこそチャンスは巡ってくるもんだ!」
「死中に活ということか、悪くない考えだ」
敵が自分たちに牙を剝いてくるが、男たちは恐れる様子は見せない。
「そうだ。短い付き合いになるかもしれねぇんだ。名前ぐらい名乗ろうぜ。俺は──」
「仁藤攻介! 駆紋戒斗!」
「──だ! って誰だ?」
「俺も知らん。お前の知り合いじゃないのか?」
グール、インベスの包囲の向こう側に立つ青色の仮面の戦士──ゲイツリバイブは、一瞬だけ迷う仕草を見せた後、二人に向かって何かを投げる。
「受け取れ!」
ゲイツリバイブが投げたのは二つのライドウォッチ。それが何なのか知らない筈の二人だが、何故か体が勝手に動き、投げられたライドウォッチへと手を伸ばす。
そして──
『ビースト!』
『レモンエナジーアームズ!』
・ダークライダーの帰還──葛城忍編
「よお。今まで何処へ行ってたんだよ、先生」
赤、青、金の三色の体に蛇と天体を模した装飾が施された仮面ライダー。その名はエボル、またの名をエボルト。宇宙からの侵略者であり、彼によって忍の世界は滅茶苦茶にされた。
馴れ馴れしく話し掛けてくるエボルに対し、忍は無言であった。
「なあ、先生。実を言うと結構ショックだったんだぜ? あんたにずっと裏切られていたと知った時はさぁ。何せ十年来のパートナーだ」
「──嘘だな」
「嘘なもんか。俺は感情を手に入れた。あんたの息子のおかげでな。そして、知ったのさ。裏切られる哀しさって奴をよぉ。ああ、胸が張り裂けそうだぜ」
わざとらしく涙を拭うジェスチャーを見せるが、忍は眉一つ動かさない。
「散々、人を裏切ってきたお前が吐いていい台詞ではないな」
「言ってくれるねぇ。まあ、いいさ」
エボルは茶番を止め、殺気を忍にぶつける。
「哀しいのは本当さ。だが、同時に怒っているんだよ。──人間如きが俺を欺いてきたってことになぁ!」
真正面から浴びせられる殺意。しかし、やはり忍は眉一つ動かさず、機械の様に淀みない仕草でフルボトルを出して、振るう。
「──うん? おい、ちょっと待て。何だ、そのボトルは?」
全てのフルボトルを把握していた筈のエボルですら知らないフルボトルが忍の手に握られている。
「お前はこのボトルを知らない。そして、このベストマッチも」
忍はそのままフルボトルをドライバーに挿し込む。
『F1! 恐竜!』
それはエボルも知らない組み合わせ。
『Are You Ready?』
「変身」
忍の体を二色の装甲──F1カーと恐竜を模したもの──が挟み込む。
『音速の帝王! F1ザウルス! イェア!』
という訳で新たな助っ人参上です。ゲイツ繋がりの人選となっています。そして、あと一人――
作中のアナザーギャレンジャックフォームとアナザーメテオストームはバリーさんのアイディアを参考にさせてもらいましたありがとうございます。
あと、来週の日曜は私用の為、投稿を休みます。
先にどちらが見たいですか?
-
IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
-
IFゲイツ、マジェスティ