仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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日曜日が無理だったので月曜日に投稿しました。


アナザーディケイドVE その11

 時間はほんの少し遡る。

 ゲイツリバイブたちは溢れ出る怪人たちを倒しながら、逃げ惑う人々を救っていた。何か当てがあって戦っている訳ではない。兎に角、目に映る人々を助ける為にがむしゃらに戦い続けていた。

 そんな中でゲイツリバイブたちは必死になって逃げる親子の姿を見つける。まだ逃げ残っている人が居るかもしれないと思い、親子が逃げて来た方角に目を向けた。

 

「あれは……!」

 

 ゲイツリバイブは視線の先にあるものに驚く。

 四方を囲むインベスとグール。その中心に背中合わせで立つ二人の男。絶望的な状況だというのに、二人の表情に諦めの色が見当たらない。

 ゲイツリバイブは彼らを知っている。力と貰い、道を示した彼らもまた仮面ライダー。

 彼らの名は──

 

「仁藤攻介! 駆紋戒斗!」

 

 名を呼ばれた二人は驚いてゲイツリバイブの方を見る。そして、ゲイツリバイブたちの姿に訝しんだ表情となった。

 彼らから渡されたライドウォッチがゲイツリバイブの手元にある時点で二人は仮面ライダーの力と記憶を失っている。しかし、それを呼び覚ます為の物は今のゲイツリバイブは持っている。

 それを投げ渡そうとした時、ゲイツリバイブは刹那の間、考えてしまった。これを渡せば二人は否応なくこの戦いに参戦することとなる。仮面ライダーではなく今は一般人である二人を終わりの見えないこの戦いに巻き込むことは正しいことなのかと。

 刹那の葛藤は、ゲイツリバイブに万倍の苦悩を与える。だが、ゲイツリバイブはその苦悩を振り払う。

 もしも、恨むなら憎むならそれを自らが背負うだけのこと。今ここでこの二人を死なせる訳にはいかない。

 

「受け取れ!」

 

 投げ放つ二つのライドウォッチ。戒斗と仁藤はそれに驚くも、恐れることなくライドウォッチに手を伸ばし、それを掴み取る。

 躊躇することなく押されるライドウォッチ。

 

『ビースト!』

『レモンエナジーアームズ!』

 

 ライドウォッチが光と化し、二人の腹部にドライバーとなって装着され、残った光は仁藤には指輪、戒斗には錠前に変換される。

 仁藤の腹部に装着されるのは銀色の扉を模したドライバー──ビーストドライバー。そして、指に嵌るのは鬣を持った緑目の仮面が付いたリング。

 一方の戒斗が装着しているのは、以前ダークライダーとして召喚された戦極凌馬が使っていたゲネシスドライバー。戒斗が握り締めている錠前もまた彼が使っていた物と同じレモンエナジーロックシード。

 仁藤と戒斗はライドウォッチの力を解放すると共に失われていた記憶も蘇る。

 

「おお! これこれ!」

「──ふん。俺の許へ戻ってきたか」

 

 慣れ親しんだ感触を喜ぶもすぐに表情を引き締め、戦う男の顔付きとなる。

 

「変ー身っ!」

 

 仁藤は両手で大きく円を描きながら、身を低くし威嚇する獣の様なポーズを取った後、リングをビーストドライバーの側面にある凹みに填め、捻る。

 

『セット! オープン!』

 

 銀色の扉が左右に開くと、その中から金のライオンのレリーフが現れた。

 

『L! I! O! N! ライオーン!』

 

 金字の魔法陣がライオンのレリーフから出現し、その魔法陣を潜ると仁藤の姿は獅子をモチーフにした魔法使い──仮面ライダービーストへ変身。

 戒斗はレモンエナジーロックシードを開錠。

 

「変身」

『レモンエナジー!』

 

 開いたフック部分に指を掛けて回しながらゲネシスドライバー中央に填め込み、今度は閉錠。

 

『ロックオン!』

 

 戒斗の頭上にクラックが出現し、チャック部分が動いて空間に穴を開けると、繋がった向こう側から巨大なレモンが召喚される。

 戒斗は頭上を見上げることもなくゲネシスドライバーのレバーを押し込む。

 

『ソーダ!』

 

 填め込んでいたレモンエナジーロックシードの錠前部分が上下に開き、内部に溜め込まれているレモンイエローの液状エネルギーがゲネシスドライバー下部に付けられた容器内に満たされていく。

 

『レモンエナジーアームズ!』

 

 頭部に巨大レモンが落下し、戒斗が被る形となる。レモンが展開し、内部から液状エネルギーが飛沫となって飛び出し、戒斗の体に掛かるとそれらが装甲として実体化した。

 赤を主としたボディスーツ。胴体には銀の鎖帷子の様な防具を付け、手足に纏う銀の手甲、脚甲を装着している。

 

『ファイトパワー! ファイトパワー! ファイファイファイファイファファファファファイッ!』

 

 胸部、肩に展開したレモンが鎧として重ねられる。展開したレモンから現れる頭部は、額に銀のサークレット、側面には半分に切ったレモンを付けた様な形の追加装甲を付けている。横線の格子状の仮面となっており、格子の隙間からレモンイエローの目を覗かせていた。

 各部は戦極凌馬の変身する仮面ライダーデュークに似ていたが、戒斗の内なる闘志を表す様な鮮烈な赤が違った印象を与え、右胸に刻まれたバロンの紋章がデュークとは異なることを後押しする。

 

「すっげー変身の仕方するな、レモン!」

「バロンだっ!」

 

 仮面ライダーバロンレモンエナジーアームズは、ビーストが軽く言った台詞を強い言葉で訂正する。

 

「まあまあ、レモンでもバロンでもこの際どっちでもいいだろ?」

「おい──」

「皆まで言うな。それよりも、来るぞ」

 

 二人の変身に警戒していたインベスとグールがじりじりと近付いてきている。

 ビーストがビーストドライバーの前で軽く拳を握ると、ビーストドライバーに小さな魔法陣が現れ、そこから柄が飛び出る。ビーストはそれを握って引き抜き、専用武器であるダイスサーベルを構える。

 

「ランチタイムだ!」

 

 彼の中でお決まりとなっている台詞を言った後、ビーストはグールの群れに突撃していく。

 

「いいわけあるか……!」

 

 ビーストのマイペースさに自分のペースを崩されたことを腹立たしく思いながら、バロンはソニックアローを虚空から出現させ、装備する。

 

「おりゃあ!」

 

 開戦を告げるのはビーストの気迫の込められた声とそれと共に奏でられる斬撃音。

 上段から振り下ろされたダイスサーベルの一撃は、グールの体から派手な火花を飛び散らせる。

 

「もういっちょ!」

 

 手首を返して今度はダイスサーベルを斬り払い、槍を突こうとしていたグールに真一文字の斬撃痕を刻み込む。

 ビーストがその名の通り獅子奮迅の戦いっぷりと見せる中、バロンの方もそれに負けない戦いを繰り広げる。

 

「はあっ!」

 

 ソニックアローを逆手に持ち換えて弓部分に備わった刃を振るうと、二体のインベスが胴体から体液を撒き散らしながら後方へ斬り飛ばされる。

 ソニックアローの刃でインベスたちを次々と斬り倒していくバロン。その刃を恐れて距離を置くインベスたちも現れるが、離れればバロンはソニックアローを握り直し、トリガーを引き絞って離す。

 ソニックアローから射られた光矢が離れたインベスたちの急所を貫いた。

 何匹目かのインベスへ狙いを定め、光矢を放つ。それを跳び上がって回避したインベス。何故か跳び上がったまま降りて来ない。

 バロンが視線を上げると、背中から四枚の羽を出してインベスが滞空している。地上に居てはバロンの餌食となると同じ様に飛んでいるインベスが何体も居る。

 

「それで逃げたつもりか」

 

 無駄な足搔きと嗤い、バロンがソニックアローを上空に向けると──

 

『ゴー! ファッ、ファッ、ファッ、ファルコ!』

 

 聞いたこともない音声が耳に入ると、上空へ何かが飛翔しバロンが狙っていたインベスを斬り裂く。

 

「ここは俺に任せとけ!」

 

 飛んでいるのはビースト。右肩に隼の頭が付いた橙色のマントを装着している。どうやらそのマントの力で空を飛んでいる様子。

 

「そっちは任せた!」

「そっちは?」

 

 バロンが視線を水平に戻すといきなり眼前にグールの槍が迫る。バロンは慌てることなくソニックアローでその槍を弾く。

 弾いた勢いを利用してグールに斬り掛かろうとする。横払いで振るわれるソニックアロー。その刃がグールに届く瞬間、グールは急停止しソニックアローが躱される。

 グールの思いもよらない身のこなしに少し驚くバロンであったが、その驚きも無用なことだとすぐに悟る。

 バロンの前に立つグール。その頭に置かれている手。それがグールを仰け反らせ、結果としてバロンの攻撃が外れたのだ。

 その手の持ち主はグールを後ろに引っ張ると同時に立ち位置を換え、グールの鳩尾に唸りを上げる丸鋸を叩き付け、一撃で粉砕する。

 

「……お前か」

「──久しぶりだな」

 

 ゲイツリバイブ剛烈とバロン。嘗て、アナザーバロンによって飛ばされたヘルヘイムの森で会い、矛を交えた間柄。あの時とは姿が変わっているので気付くのに少し間が出来た。

 

「運命を覆す力は手に入れたか?」

「力は手に入れた。この力が運命を覆す程の力かどうかは──」

 

 グールがゲイツリバイブに槍を振り下ろしてくるが、ゲイツリバイブはジカンジャックローでその槍を破壊し、そのままグールも殴り飛ばして消滅させる。

 

「──試している最中だ」

「面白い。なら、俺が見極めてやる」

 

 バロンはゲネシスドライバーからレモンエナジーロックシードを外し、ソニックアローに填める。

 

『ロックオン!』

 

 ゲイツリバイブも同じタイミングでジカンジャックローのボタンを押す。

 

『レモンエナジー!』

『のこ切斬!』

 

 レモンエナジーロックシードのエネルギーがソニックアローの刃に伝わり、レモンイエローの輝きを放つ。ジカンジャックローの丸鋸は回転速度を上げ、丸鋸から火花の様な橙色のエネルギーが飛び散る。

 

「せいっ!」

「はあっ!」

 

 バロンとゲイツリバイブは背中を合わせて一回転しながら己が武器を振るう。輪切りのレモンと橙の鋸刃の様な二重の軌跡がグールたちを通過。グールたちの体に黄と橙の二本線が浮き上がると周囲のグールたちは爆散して一掃される。

 

『TUNE・CHASER BAT』

 

 チェイサーマッハはブレイクガンナーにバイラルコアを装填。チェイサーマッハの背中に銀翼が生えたかと思えば、銀翼が変形して蝙蝠を模した弓型武器──ウィングスナイパーとして右腕に装備される。そして、マッハドライバー炎からシグナルマッハを抜き、緑のシグナルバイクを入れた。

 

『シグナルバイク! シグナルコウカン!』

 

 チェイサーマッハの右肩に装着しているタイヤ側面に左に曲がる矢印が浮かぶ。

 

『マガール!』

 

 そのままチェイサーマッハは熟練した一秒も無駄のない動きでブレイクガンナーの銃口を押す。

 

『EXECUTION FULL BREAK BAT』

 

 ウィングスナイパーに矢の形に押し留められた紫のエネルギーが番えられる。その状態でチェイサーマッハはマッハドライバー炎のボタンを連続して押した。

 

『キュウニマガール!』

 

 番えられた紫の光矢が上空を飛び回るインベスに向けて発射される。高速で移動する光矢がインベスの胴体を貫く。その直後、光矢が軌道を変えて急カーブし、別のインベスの頭部を貫いた。

 光矢は止まることを知らずインベスを貫く度に軌道を急転換させ、空中を縫う様に動き周りインベスたちに風穴を開けていく。

 

「やるなぁ!」

 

 飛翔するビーストはその光景に感心し、負けじとダイスサーベルに付いているダイヤル部分を手で回す。すると、柄中央部分に埋め込まれたダイスが回り始める。

 

「来い来い!」

 

 ビーストが右手の指輪を挿し込む。ダイスが止まり、出した目は五。

 

『ファイブ! ファルコ!』

「来たぁぁぁ!」

 

 高い目が出たビーストは喜びながらダイスサーベルを振るう。

 

『セイバーストライク!』

 

 ビーストの前に出現した魔法陣から魔力によって創り出された五羽の隼が召喚され、甲高い鳴き声を上げながらインベスたちに襲い掛かる。

 魔力の隼たちがインベスたちに体当たりをし、インベスたちの体に深い傷を残していく。隼が数度体当たりをすると限界を迎え、インベスは爆散した。

 グール、インベスたちの姿が仮面ライダーたちの周囲から消える。チェイサーマッハの時と同様に数が増える気配は無い。ウォズの仮説通り、属する歴史の仮面ライダーが復活することで怪人たちの出現を食い止められる。

 ほっとしたのも束の間──

 

「ウッヘウッヘ」

 

 気味の悪い声らしきものが聞こえる。ライダーたちは周囲を見回すが声の主らしき者は見当たらない。

 

「ウッヘウッヘ」

「ウッヘウッヘ」

「ウッヘウッヘ」

「ウッヘウッヘ」

「ウッヘウッヘ」

 

 声が段々と増えてくる。だというのに一向に姿が見えない。

 

「何処だ……何処に居る!」

「まさか……」

 

 ウォズが何かに気付き、ある物に視線を向ける。彼が見ていた物は特に変哲も無い店のガラス。

 

「ウッヘウッヘ」

「ウッヘウッヘ」

「ウッヘウッヘ」

 

 そのガラスを通り抜けて異形たちが出現してきた。

 

「やはりミラーモンスター……!」

 

 鏡面世界──ミラーワールドに生息する怪物たち。それらが現れるということは、仮面ライダー龍騎の歴史が消滅したことを意味する。

 白色の体に半透明のヘルメットの様な頭部をしたミラーモンスター──シアゴーストたちは群れを成して不気味な声を揃えてゲイツリバイブたちに近付いて来る。

 彼らは敵意を以ってゲイツリバイブたちを狙っているのではない。自身の食欲に従いゲイツリバイブたちを襲おうとしている。彼らの攻撃とは即ち捕食を意味する。

 

「次から次へと来やがってぇー。それに何か気色悪いし」

 

 降り立ったビーストが、シアゴーストたちの姿を気味悪がる。

 

「ふん。如何にも群れなければ戦えないという奴らだ。恐れるに足りん!」

 

 シアゴーストたちの登場にもバロンは普段通りであり、挨拶代わりにソニックアローの一射でシアゴーストの一体を射抜いた。

 頭を貫かれたシアゴーストが爆発して木端微塵になるが、他のシアゴーストたちはその残骸を踏み締めて前へと進んで行く。群れて行動していても仲間意識は希薄の様子。

 

「ウォズ、取り敢えず奴らを全滅させるぞ」

「──いや、ことは簡単に行きそうにないみたいだ」

「何だと? ──うん?」

 

 ウォズの視線が上に向けられているので釣られてゲイツリバイブも視線を上げる。ウォズが見ていたのはビルに張り巡らされた一面のガラス。

 そこから無数の青い異形たちが飛び出してくる。

 出て来たのは二タイプの異形。

 赤い丸状の目を複数持ち、頭部から尾の様なものが伸びており、そこから生えた四枚の薄羽を高速で羽ばたかせて飛んでいる。

 この青い異形たちの名はレイドラグーン。シアゴーストが脱皮することで進化したミラーモンスター。

 レイドラグーンはまだ人型を保っているが、もう一方は完全に怪物という見た目をしている。

 機械的な青い体に赤い輪を填め、三本の爪を備えた細い腕。目と思わしき箇所に赤い輪の様なものが掛かっており、それが複眼の役目を果たしている。胴体は長い尾と区切りの無い見た目となっており、脚部分は完全に無くなっていた。背部から生える一対の羽は金属を編み込んだ様な見た目をしており、飛翔に適した形とはとても言えないがその考えを覆す様にその金属の羽で高速で飛び回っている。

 レイドラグーンが更に進化した姿──ハイドラグーン。ハイドラグーン一体の強さもかなりのものになっているが、真に恐るべきはその数。

 ゲイツリバイブたちが見上げる空を深い青で染め上げる程の数のレイドラグーンとハイドラグーンが飛んでいる。放っておけばシアゴーストたちはレイドラグーンに進化。そのレイドラグーンもいずれハイドラグーンに進化するという悪夢の様な光景。

 しかし、五人のライダーたちは既に戦いへ移れる心構えになっていた。様々な苦難を乗り越えてきた彼らがこの程度の光景で屈することはない。そして、五人の中で既に行動に移っている者たちがいた。

 

『ロックオン!』

『灼熱バーニング! 激熱ファイティング!  ヘイヨー! タイヨウ! ギンガタイヨウ!』

 

 バロンはバナナが付いた錠前──バナナロックシードをソニックアローに填め、ウォズはギンガファイナリーからタイヨウフォームにフォームチェンジする。

 

『バナナチャージ!』

 

 バロンがソニックアローの刃先を地面に突き立てる。刃を伝わり、地面に黄色のエネルギーが流し込まれると、シアゴーストたちの足元からバナナの形となって飛び出し、シアゴーストたちを一斉に貫く。

 

『ファイナリー! ビヨンド・ザ・タイム!』

 

 ドライバーの操作を終えたウォズの全身からプロミネンスの様に炎が突起していく。

 

『バーニングサンエクスプロージョン!』

 

 燃え盛る炎を右手に集中させ、煌々と熱と光を放つ小型の太陽を作り出すとそれを上空目掛けて投げ放つ。

 レイドラグーン、ハイドラグーンたちが飛び交う中心部に小型の太陽が到達点すると内包していた熱を一気に解放。閃光の発散と共に周囲に超高熱も拡散され、レイドラグーンとハイドラグーンはその熱によって瞬時に芯まで焼き尽くされ、炭化した状態で次々に空から落ちてきた。

 

「おお! すげぇじゃねぇか、バナナ!」

「だからバロンだっ!」

 

 大量にいたシアゴースト、レイドラグーン、ハイドラグーンを一気に葬ってみせたバロンとウォズをビーストは素直に称えるが、その二人の反応は芳しくない。

 

「やはり、無意味か……」

「へ?」

 

 落胆するウォズの声に、ビーストは意味が分からず呆けた声を出してしまう。

 

「ウッヘウッヘ」

「ウッヘウッヘ」

「ウッヘウッヘ」

「ウッヘウッヘ」

 

 増えて、重なり合っていく不気味な声。倒して筈のシアゴーストたちが元通りに──否、元以上の数にまでなっていた。上空を飛び回るレイドラグーン、ハイドラグーンも同じく倒されたことなど無かったかの様に増殖している。

 

「おいおいおい……」

 

 今もなお鏡やガラスなどの反射物から現れ続けるミラーモンスターに、ビーストは信じ難いと言わんばかりの声を洩らす。

 圧倒的な数の差でライダーたちを磨り潰す為にミラーモンスターたちが動こうとした時──場に響き渡る猛牛の鳴き声。

 すると、空間を突き破り巨大なドリルを先端に付けた列車が現れ、進路上のミラーモンスターたちをその巨大なドリルで貫き、粉砕していく。

 その列車は二車両編成となっており、後部の車両は上部が展開し、回転翼となって纏わりつこうとするレイドラグーン、ハイドラグーンを切り刻んでいく。

 

「何だありゃあ!?」

「列車とは飛ぶものだったのか?」

 

 ビーストは驚き、チェイサーマッハは自分の中にある知識との差異に首を傾げている。

 

「時の列車、ゼロライナー……」

「まさか、あいつが……」

 

 ウォズとゲイツリバイブは突然の乱入者に知った様な口振り。

 

「時の列車だと? ……本当に列車なのか、あれは?」

 

 空中を走り、ドリルと回転翼でミラーモンスターたちを撃破していく光景を見て、バロンは疑う様に聞いてしまう。

 空中のミラーモンスターたちをあらかた片付けると、ゼロライナーは地上に向けて降下。シアゴーストたちを轢き飛ばしながらゲイツリバイブたちの前で停車する。

 ゼロライナーの扉が開き、険しい表情の青年が叫ぶ。

 

「おい! 早く乗れ!」

「やはりお前か、桜井侑斗!」

「無駄口言ってないで早く乗れ!」

 

 侑斗は怒鳴って搭乗を急かす。その間にもゼロライナーによって倒されたミラーモンスターたちが補充されていく。

 言われるがまま全員がゼロライナーに乗ると、ゼロライナーはミラーモンスターたちを蹴散らしながら発車する。

 ゼロライナー内、変身を解いたゲイツとウォズは侑斗と向き合っていたが、他のメンバーは物珍しそうにゼロライナーの内部を見回している。

 

「皆! 無事だったか!」

 

 ゼロライナー奥から慌てて出て来た黒衣の巨体──デネブに仁藤、戒斗、チェイスは目を丸くする。

 

「うおっ、何だコイツ!?」

「人、では無い」

「……敵意は無いな。見かけだけか」

 

 三者三葉の反応をし、軽く驚くだけで済ます。

 

「おいおい。早くしろよぉ。こっちもやべぇぞ!」

「もう一体居た!?」

 

悪魔を思わせる見た目だが、それに反して砕けた口調の怪人──フータロスも顔を出す。

 

「おい。常盤ソウゴは何処だ?」

「知らん。奴とは別行動をとっていた」

「連絡をしようとはしているのだけどね……」

「こんな時に……」

 

 ソウゴの不在と居場所不明に苛立った様子を見せる侑斗。

 

「──闇雲に探しても、いたずらに消耗するだけだ。ここは一旦クジゴジ堂に戻るしか無いみたいだ」

「……それしかないな」

 

 チェイスたちのことや侑斗のことなど一度会って話す必要がある。ソウゴたちが先に戻っていること、戻ることを期待しゼロライナーでクジゴジ堂を目指す。

 

 

 ◇

 

 

 知るべきことを知り、2058年から2019年に帰還したソウゴたち。そこで広がっている壮絶な光景に啞然とした。

 空を自由に飛び回る異形、怪物たちの群れ。統一性の無いそれらは互いを敵と認識しているのか争い、食らい合っている。

 地上では数え切れない程の怪人たちが建物を破壊し、人々を追い回し、それに飽いた者は自分とは異なる怪人を襲っていた。怪人が別の怪物に捕食されるという様子が当たり前の様に行われている。

 人々の悲鳴と異形、怪物たちの叫びが混じり合う地獄絵図。スウォルツによる一纏めにされた世界が無秩序によって崩壊しようとしていた。

 

「何これ……まるで世界の終わりだ……」

「ひどい……」

 

 ソウゴとツクヨミは目の前の悲惨な光景にそれしか言えない。飛流は無言であったが、眉間に深く皺を寄せている。崩壊していく世界に何かしら思うことがあるようであった。

 

「……大体分かった」

 

 世界の終りの様な光景を前にして士は呟く。

 

「この世界を……破壊する!」

 

 士の宣言にソウゴたちは士の顔を凝視してしまった。言い放った士の表情に並々ならぬ決意を感じる。何かしらの意図があってそう宣言したのだけは分かる。

 

「──一旦退くぞ。この数ではどうしようもない」

 

 士が銀色のオーロラを発生させ、ソウゴたちを潜らせようとする。

 その時、ソウゴたちは見た。士の背後に同じく銀色のオーロラが発生していることに。それは明らかに士の能力によって出されたものではない。

 

「門矢士! 後ろ!」

 

 ソウゴの言葉に士は背後のオーロラに気付く。自分を狙っていることを察した士は、前に一歩踏み込みソウゴたち士が出したオーロラの中へ押し飛ばし、すぐに別の場所に転送。直後、士は謎のオーロラによってこの場から消え去った。

 

 

 ◇

 

 

「ここは……」

 

 謎のオーロラによって連れて来られた場所はどこかの廃工場前。

 

「来たか。門矢士」

 

 士を待ち構えていたのはスウォルツであった。

 

「あれはお前の仕業か?」

「2058年に行っていたみたいだな。俺の真の目的も知ったか?」

「聞いているのはこっちだぞ?」

「お前の意見など求めん」

「話にならないな」

 

 スウォルツの傲慢さを士は鼻で笑う。

 

「『世界の破壊者』などという大層な異名を持っているので常盤ソウゴを追い詰める良い刺激になると思っていたが……正直、失望した。名ばかりで中身は随分と甘い男だ」

「勝手に言っていろ。お前の期待など知ったことか」

「俺の邪魔をしなければ見逃してやったが、いい加減目障りになってきた。()()()()にはそろそろ消えてもらおう」

 

 スウォルツの背後に銀色のオーロラが出現する。

 

「はっ。またダークライダーか。芸が無いな」

「くくく、ダークライダーか……」

 

 スウォルツは士の言葉を笑う。

 

「実はあの一件は俺も少し反省した。まさか、あれだけ堂々と反逆してくるとは思ってもみなかった」

「お前の人望が良く分かるな」

「俺は理解した。下手に手綱を握ろうとしたのが間違いだったのだ。どうせ、崩壊する世界だ。()()()()の為にとびきり爆弾を用意した」

「爆弾?」

 

 スウォルツの発言に士は訝しむ表情となる。

 

「アナザーワールドには、ダークライダーを生み出す土壌以外にももう一つの意味がある。もしもの世界を俺が認識することで、この世界とその世界を結び付けることが出来る」

 

 仮面ライダーシノビという未来の仮面ライダーを認識したスウォルツが分岐した未来に跳べた様に、スウォルツが知りさえすれば、有り得たかもしれない世界に移動出来る。そして、逆にその世界から連れて来ることも──

 

「苦労したぞ? 見つけるのも、連れて来るのも」

 

 銀色のオーロラが歪み、誰かが中から出て来る。その人物を見て士は絶句した。

 

「……俺自身を破壊する日が来るとはな」

 

 銀色のオーロラから出て来たのもまた士であった。新たに出て来た士は、髪を一房中央から垂らした髪型をしており、荒んだ目付きをして幾分若い。

 

「お前……」

「まあいい。俺は破壊者だ。……全てを破壊する。ただそれだけだ」

 

 もう一人の士は白いディケイドライバーを装着。ディケイドの絵柄が浮かんだカードを取り出す。

 

「……変身」

『カメンライド・ディケイド』

 

 灰色の虚像がもう一人の士と重なり、飛び出したプレートが顔面に収まると灰色の体にマゼンタの色が差される。

 緑の複眼は歪んだ鋭さを持ち、額に埋め込まれた輝石が紫色に輝く。

 ディケイド激情態。全ての仮面ライダーを破壊する為に生まれた存在。そして、このもう一人の門矢士は、スウォルツがアナザーワールドを通じて、もしもの世界から連れて来た、破壊者の使命に呑み込まれた成れの果てというIFの姿。

 

「……悪趣味なことをしてくれる」

 

 士はスウォルツの趣向に不快感を露わにしながらネオディケイドライバーを装着し、カードを構える。

「変身!」

『カメンライド・ディケイド』

 

 ディケイドとディケイド。破壊者たちの戦いが始まる。

 

 

 ◇

 

 

 人気の無い道を歩きながら海東はやや不機嫌そうに両頬を撫でていた。飛流から逃げることが出来たが、その際に一発顔面を殴られてしまっていた。そのせいで顎に違和感を覚える。インビジブルで姿を消していたにも関わらずに、である。

 ふと海東は背後から誰かが近付いて来ているのに気付く。迷いなく真っ直ぐに足音が向かって来ている。

 海東はネオディエンドライバーを出すと共に振り返り、背後に立つ人物に銃口を向け──その銃口を震わす。

 

「どうした? 撃たないのか? 大樹?」

 

 高官が纏う様な場違いな制服を着用し、張り付けた様な笑みを浮かべる青年。その笑みは普段飄々としている海東を哀れなまでに動揺させる。

 

「に、兄さん……!?」

 

 海東大樹の実兄である海東純一は、その声を聞き笑みを深めるが、目だけは全く笑っていない。

 

「この世界のお前もコソ泥なのか? ふふ、何処へ行ってもお前は変わらないな」

 

 親し気に話し掛ける純一に対し、海東は額から汗を流す。

 

「な、何で兄さんがこの世界に……!?」

「決まっている」

 

 笑みを浮かべたまま純一は赤いバックルにAの文字とケルベロスが描かれたカードを挿し込み、それを腹部に装着。

 

「お前を()()殺しにきたんだ、大樹。──変身」

『OPEN UP』

 

 バックルが開き、Aの文字が露出するとバックルから等身大の金色に輝く板が出現し、海東を弾き飛ばす。

 

「くっ!」

 

 吹っ飛ばされ、海東が地面を転がっていく中、純一は悠々と光の板を通過し、変身する。

 Aの意匠が施された上半身の金の装甲。楓の葉の様に三方向に角が伸びた仮面を付け、中央に菱形の紅石が埋め込まれている。そして頭部側面にも胴鎧と同じAの意匠があった。

 仮面ライダーグレイブ。海東純一が変身した姿を指す名である。

 

「変身しろ、大樹。抗わないお前を倒しても意味が無い。万全なお前を倒すことで私はもっと強くなれる」

 

 両手を後ろに組みながら悠然と言うグレイブ。

 海東はうつ伏せの状態で絞り出す様に言う。

 

「……今の兄さんに人間の心はもう無いのかい?」

「とっくに捨てたよ、そんなつまらないものは」

 

 その言葉を聞き、海東は体を跳ね起こすと、ネオディエンドライバーにカードを装填。

 

「変身っ!」

『カメンライド・ディエンド』

 

 ディエンドへと変身した海東に、グレイブは満足そうに頷く。

 彼もまたスウォルツによってもしもの世界からこの世界に来た有り得たかもしれない可能性の存在。人の心を完全に捨て去ってしまった海東純一。そして、この世界を破壊する為のもう一つ爆弾。

 

 




最後の助っ人も出せれたので、どんどん話を進めていきたいですね。
ディケイド、ディエンドのIFの相手との戦いも並行して進めていきます。

先にどちらが見たいですか?

  • IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
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