仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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お読みになっているのは仮面ライダージオウの二次創作になります。


アナザーディケイドVE その12

「ふんっ!」

「はあっ!」

 

 衝突するディケイドとディケイド。刃を交えるライドブッカーとライドブッカー。殆ど見た目の区別がつかない者同士の対決。

 

「では、せいぜい足掻け」

 

 二人の衝突を見届けたスウォルツは、銀色のオーロラによってこの場を後にする。

 鍔迫り合いによる膠着を一瞬であり、すぐさまバックステップによって両者とも数歩分下がると、まるで鏡映しの様に同じタイミングで袈裟斬りを繰り出す。

 再び衝突する刃。散った火花が消える前に横薙ぎの斬撃が放たれ、火花に火花が重なる。

 同じディケイド。同じ門矢士。そのせいで攻め方もタイミングも互いに気色悪く思える程同じであった。

 

「俺ともあろうものが、スウォルツの手下に成り下がったのか!」

「勘違いをするな。俺は全てを破壊する。奴も例外ではない……!」

「ッ! 大体分かった……!」

 

 剣と同じく言葉を交わすが、その短い会話で凡そ理解する。例え、相手が自分であったとしても話し合いで解決することは不可能だと。

 数合繰り返される全く同じ動きによる剣戟。しかし、動きは同じでも差異が生まれつつあった。

 ディケイドの斬撃がディケイド激情態の斬撃を押しつつある。長い旅を続けたことでディケイドライバーをネオディケイドライバーに昇華させたように、同じディケイドであったとしてもスペックによる差が出ていた。

 力によってディケイドはディケイド激情態を押し退け、距離が開いた瞬間にライドブッカーをガンモードにして発砲。しかし、ディケイド激情態もそれを読んでおり同じくガンモードにしたライドブッカーによる銃撃を行う。

 互いの中心を狙うマゼンタの光弾。一直線に進む光弾同士が接触することで軌道が変えられ、お互いの肩を掠めながら通過していく。

 ディケイド激情態は白煙が上がる肩をゴミでも取るかの様に軽く払う。

 

「──大体分かった」

 

 ディケイド激情態が先程のディケイドと同じ台詞を言う。だが、同じ台詞なのにディケイド激情態の声は一切の情も感じさせない絶対零度を思わせる冷徹さしかなかった。

 相対するディケイドの本能が最大限の警報を鳴らす。

 ディケイド激情態に何もさせない為にすかさずアタックライド・ブラストのカードを取り出すディケイドであったが、敵の動きは一手上を行く。

 

『アタックライド・バインド』

 

 ディケイドの周囲に魔法陣が現れ、そこから伸びた鎖がディケイドの両手両脚に絡み付き、拘束する。

 仮面ライダーウィザードの魔法。ディケイドもウィザードにカメンライドすれば同じ事が出来るが、ディケイド激情態の最も特徴的すべき点はカメンライド無しで他の仮面ライダーの能力を使える点にある。

 それ以上に驚くべきことは──

 

「速い……!」

 

 ──ディケイド激情態がカードをいつ入れたのをディケイドは見逃してしまった。それ程までにディケイド激情態のカードの選択から装填までの動きは速く無駄が無い。今のディケイド以上に動きが熟練されていた。

 拘束されたディケイドに見せつける様にカードをディケイドライバーに投げ入れるディケイド激情態。

 

『アタックライド・ビッグ』

 

 今度はディケイド激情態の前に赤い魔法陣が出現。ディケイド激情態がその魔法陣にライドブッカーごと右手を突っ込むと、反対側から数倍巨大化して出て来る。

 銃ではなく最早戦艦に積まれた大砲に等しい大きさになるライドブッカーの銃口、もとい砲口が身動き出来ないディケイドを狙う。

 だが、ディケイド激情態はそれだけで済ませない。仮面ライダーを倒す為、破壊する為には何処までも冷徹にして苛烈になる。

 

『アタックライド・ブラスト』

 

 再び投げ入れたカードは射撃能力の強化。ライドブッカー周囲に光の残像が発生し、それらから一斉に光弾が発射しようとする。

 

「おおおおお!」

 

 直撃すれば不味いと思ったディケイドは、手首を可動域限界まで曲げ、銃口を真下に向ける。その無理な状態からライドブッカーによる銃撃。

 撃ち出された光弾は足元の魔法陣に命中し、それを破壊。ディケイドの腕に巻き付いていた魔法の鎖が一本消滅する。

 自由になった腕を動かし、周囲の魔法陣を銃撃。魔法の鎖を全て消滅させる。

 その直後、一発一発がディケイドの背丈よりも大きく、視界一杯になるほどの光弾が連射された。

 咄嗟に横へ跳ぶディケイド。間一髪のタイミングで光弾が着弾。宙にいたディケイドは着弾の爆風で吹き飛ばされる。

 二つのアタックライドを組み合わせた攻撃は、まるで艦砲射撃の様であり、着弾と同時に周辺を吹っ飛ばしてしまう。

 

「くっ!」

 

 爆風の煽りを受けて地面を転がっていくディケイド。立ち上がった彼が見たのは廃工場が消し飛び、クレーターが無数に出来た大地であった。

 

「ぐぅ……! 我ながらとんでもないな……!」

 

 ディケイド激情態の力を、自画自賛抜きで戦慄するディケイド。

 そもそも激情態の時点で使える力は士が巡って来たクウガからキバまでの九つの世界に由来する力の筈であるが、今の激情態は当たり前の様にディケイドの後に続く仮面ライダーの力を使用している。

 だが、理由は分からなくもない。かつて士自身が真の破壊者となることで全ての仮面ライダーたちは破壊され、後に復活した。士自身もそのことのケジメを付けたことで自分の後に続く仮面ライダーたちが生まれ、士も復活することが出来た。

 Wから始まる仮面ライダーが誕生した時点でネオディケイドライバーの様に激情態の能力も拡張する結果に繋がったのだと推測する。

 もしかしたら、あのディケイド激情態は取るべきケジメを付けることなく、ただ意味も理由も無く破壊者という与えられた役目を愚直且つ盲目的に続けてきた成れの果て。

 ディケイド激情態は魔法陣から腕を引き抜き、無機質ながらも殺気に満ちた目をディケイドに向ける。既にその手には新たなカードが握られていた。

 ディケイドがまだ動けることを確認すると、そのカードをドライバーに挿し込む。

 

『アタックライド・エナジーアイテム』

 

 ディケイド、ディケイド激情態の周辺に出現するマンホール蓋程の大きさがあるメダル。それぞれ異なる絵柄が書かれてある。

 仮面ライダーエグゼイドが変身した際に出現するゲームエリアという特殊なフィールドに現れる専用アイテムであり、自分や相手に様々な効果を与える。

 先程の魔法もそうだが、これを持っているということは、ディケイド激情態は既に──平行世界の──ウィザードとエグゼイドを倒し、封印していることを意味する。

 

「本当にただの破壊者か……! 救いようが無いな……!」

 

 そう吐き捨てるディケイドにディケイド激情態は冷笑を返す。

 

「そんな生温い戦いしか出来なくなったお前の方こそ救いようが無い」

 

 ディケイド激情態が近くにあるエナジーアイテムに触れる。

 

『高速化!』

 

 エナジーアイテムがディケイド激情態に吸い込まれるとその名の通りディケイド激情態は、目で追えない速度で動き一瞬にしてディケイドの視界外から消えてしまう。

 

「なら!」

 

 高速の動きに対抗する為にディケイドはカブトのカードを出し、それをドライバーへ挿し込もうとする。しかし、挿し込む直前にディケイド激情態の手がディケイドの腕を掴み、それを妨害する。

 

「お前にはこっちがお似合いだ」

 

 ディケイドの顔面に叩き付けられたエナジーアイテム。ディケイドの体に取り込まれてしまう。それの効果は──

 

『混乱!』

 

 視界が目まぐるしく回り、思考も同じくかき乱される。

 

「くっ! うぅぅ!」

 

 体が言うことを聞かず、手に持っているカブトのカードを挿し込むことすら困難となる。

 

「はあっ!」

 

 混乱しているディケイドに浴びせられる容赦無き斬撃。しかも、ディケイド激情態の高速化は継続しており、無防備なディケイドを四方八方からほぼ同時に見える程の速度で攻撃する。

 

『マッスル化!』

 

 斬撃の嵐を耐え切ったディケイドを待つものは、一回りも膨れ上がった腕で振り上げて拳を握るディケイド激情態。

 ガードする暇も与えずに剛腕から放たれる拳がディケイドの顔面に叩き込められた。

 

「ぐああっ!」

 

 縦回転しながら殴り飛ばされたディケイドは、地面に接触するとそこから一メートル以上の高さまで跳ね上がり、そこから段々と高さを低くしながらバウンドしていく。

 ディケイドが止まったのは、ディケイド激情態から数十メートルも離れた位置であった。

 

「くっ……!」

 

 強烈な一撃のせいで先程まで混乱していた頭が正常に戻る。ただ、殴られた衝撃のせいで頭の中で鐘を鳴らされている様な状態となっており、状況が変わったとは言い難い。

 苦痛を耐えながら立ち上がろうとするディケイド。そんな彼の眼前には、既にディケイド激情態が立っている。

 

「大体分かった、と言っただろう? お前では俺に勝てない」

「だから……どうした……! そう言われて大人しく、負けを認める性格じゃないと、分かっているだろう……!」

 

 足掻こうとするディケイドに、ディケイド激情態は詰まらなそうに溜息を吐く。

 

「何を熱くなっているのやら……。俺もお前も『世界の破壊者』だ。ただそこに存在するだけで世界を歪める。だが、考えて見れば可笑しいもんだ。俺たちが存在するだけで世界が破壊されるだなんてな。脆いにも程がある。なら、いっそのことそんな脆弱な世界は壊れてしまえばいい」

 

 ディケイド激情態はあらゆる異形たちが飛び回る空を見上げる。

 この世界もまたディケイド激情態が見て来た世界の様に崩壊しようとしていた。感慨など微塵も湧かない。最早、崩壊していく世界など見飽きた。

 

「こんな脆い世界を守る義理を、ましてや根無し草の俺たちになんて無いだろう?」

「勝手決めるな……! お前に無くとも俺にはある……!」

 

 否定されたディケイド激情態は、それを鼻で笑う。

 

「どうやら幾ら話しても無駄の様だな──うん?」

 

 ディケイドに止めを刺す決意をしたディケイド激情態であったが、足元を揺らす地響きに気付く。

 音が近付いて来ると共に多種多様な獣の咆哮が混じって来る。ディケイド激情態はその声を聞いて足元の正体を把握する。

 

「魔化魍共か……」

 

 仮面ライダー響鬼の歴史が変化したことで大地の穢れが生物化した存在──魔化魍が群れをなして迫って来ていた。

 妖怪で知られるカッパ、バケネコ、テング、ドロタボウ。等身大であるそれらとは異なり、人の何倍もの大きさもある大型魔化魍も混じっている。

 それが集まり、行進する様子はまさに百鬼夜行。

 だが、魔化魍の大群を前にしてもディケイド激情態は恐れることなどしない。破壊する者が破壊される者たちを恐れる理由など何処にあるというのだろうか。

 

「──丁度いいな」

 

 群れる魔化魍の中である魔化魍にディケイド激情態の視線が向けられる。

 ざんばら髪で顔を覆い隠し、全身を体毛で覆われた猿に似た魔化魍──ヤマビコ。巨大魔化魍の中で特に注文される様な特徴がある訳では無い。一体、ヤマビコの何がディケイド激情態の目を引いたのか。

 ディケイド激情態はカードを取り出し、その絵柄をわざとディケイドに見せつける。

 

「それは……!?」

 

 描かれたものにディケイドは驚愕する。そして、同時にそのカードを持つ意味も理解してしまった。

 ディケイド激情態はディケイドの反応に満足した様子でカードをドライバーに挿し込む。

 

『ファイナルフォームライド──』

 

 同時にディケイド激情態はディケイドの側面に移動。ディケイドが体を向ける前にがら空きの横腹に中段蹴りを打ち込み、魔化魍の群れ目掛けて蹴り飛ばす。

 

『ディ、ディ、ディ、ディケイド!』

 

 宙を飛ぶディケイドの体がファイナルフォームライドの効果によって強制的に変形させられる。それによりディケイドの体は自身が身に付けているディケイドライバーそのものとなった。

 変形させられたディケイド──ジャンボディケイドライバーが飛んで行く先にあるのは、先程ディケイド激情態が見ていた魔化魍ヤマビコ。

 ジャンボディケイドライバーがヤマビコの腹部に衝突すると、自動的に装着され、ヤマビコを強制的に変身。約6メートル程の大きさを持つディケイドとなる。

 

『これは……!』

 

 ヤマビコを媒体として変身させられたディケイドは己の身体を見る。しかし、思った様に体が動かないことに気が付いた。

 以前も同じ様にファイナルフォームライドで変形し、他者を媒体として巨大化したことがあったが、その時媒体としたのは同じ仮面ライダーだった。だが、仮面ライダーと相反する怪人というべき存在。肉体が意志に反抗し、その結果今のディケイドから自由を奪う。

 

「まさに木偶の坊だな」

 

 身動きがとれなくなったディケイドをディケイド激情態が嘲る。だが、ディケイドはその嘲りよりも怒ることがあった。

 

『お前、海東まで……!』

 

 ディケイドのファイナルフォームライドのカード。それを持つ者は海東しかいない。それをディケイド激情態が持っているということは──

 

「俺が破壊するものに例外は……無い」

『ファイナルアタックライド・ディ、ディ、ディ、ディケイド!』

 

 ディケイドへ導く様に連なるカード状のエネルギー。ディケイド激情態がその中に飛び込むと、通過する度にエネルギーがディケイド激情態に吸収され、ディケイド激情態を加速させていく。

 閃光の如く目を灼く光を右足に集中させ、棒立ちになっているディケイドの胸部に破壊の一撃を叩き込む。

 

「ぐあああああああ!」

 

 爆発、それによる衝撃波。周囲の魔化魍たちもその余波で木端微塵に吹き飛んでしまう。

 必殺の一撃を打ち込んだディケイド激情態は、鼻を鳴らす。

 

「思ったよりも頑丈だな」

 

 爆心地の中央では変身が解けた士がうつ伏せになって倒れていた。額や口の端から流血しながらも顔を上げてディケイド激情態を睨みつける。

 

「大体分かったか? これがお前と俺との差だ」

 

 カメンライド無しで使用出来るアタックライド。今の士よりも対ライダーに慣れた動き。スペック差など無視出来る程の手数の多さ。それらがディケイド激情態の圧倒的強さの理由。

 

「このまま破壊して──ちっ」

 

 舌打ちと共にディケイド激情態が一歩下がる。それによって開いた空間に液体が通過していく。それを吐き出したのは魔化魍のカッパ。

 避けたディケイド激情態を狙ってバケネコ、テングも飛び掛かってくるがディケイド激情態は踏み込み、攻撃される前にソードモードのライドブッカーで二体の腹部を斬り付けた。

 打ち洩らした魔化魍たちがディケイド激情態を敵と認識して一斉に襲い掛かって来ているのだ。

 

「鬱陶しい」

 

 ディケイド激情態が吐き捨てると魔化魍たちの背後に銀色のオーロラが出現。そこから白、黒、マゼンタのトリコロールカラーの無人のバイク──マシンディケイダーが疾走してくる。

 

『アタックライド・ジェットスライガー』

 

 ディケイド激情態がカードを入れるとマシンディケイダーが光に包まれて変身。巨大に前輪と後輪、後部にジェットノズルを無数に付けた大型アタックビークル──ジェットスライガーとなる。

 音速を超える速度で急加速したジェットスライガーは前に立ち塞がる魔化魍たちを纏めて轢き飛ばしながらディケイド激情態の許へ走る。

 ディケイド激情態がジャンプすると、突っ込んできたジェットスライガーが急旋回して周囲の魔化魍たちを薙ぎ倒す。

 タイミングを合わせてジャンプしていたディケイド激情態がジェットスライガーの座席に着地。立ったまま新たなカードをドライバーに装填する。

 

『アタックライド・シュートベント』

 

 金色のサプレッサーに銀色の砲身。持ち手から弾倉までがメタリックグリーン。使い手の自身の身長よりも大きな大砲──ギガランチャーを構えるディケイド激情態。

 同時にジェットスライガーのカウル部分が左右に展開し、そこに積まれた小型ミサイルが顔を出す。

 

「纏めて消えろ」

 

 ギガランチャーから撃たれる巨大弾丸を合図にジェットスライガーからも小型ミサイルが発射される。

 粉砕、爆砕、大炎上。火力の暴力に為す術も無く魔化魍たちは消し飛ばされた。

 圧倒的火力による暴力を終え、先程まで響き渡っていた爆音も彼方へ消えて行く。

 ディケイド激情態は思い出したかの様に士が居た場所を見るが、既に士はそこから消えていた。

 横槍が入ったせいで取り逃してしまったが、ディケイド激情態は別に悔しがる態度を見せない。

 逃げたとしても、どうせその内また顔を合わせることが分かっていたからだ。

 ならばそれまでの間、ディケイド激情態が何をするかなど決まっている。

 

「この世界を……破壊する」

 

 

 ◇

 

 

 後ろに手を組んだ体勢で悠々とディエンドへ歩み寄っていくグレイブ。ディエンドは、仮面の下で強く歯を食い縛りながらネオディエンドライバーの引き金を引いた。

 発射された光弾は、一直線にグレイブへ飛んでいく。

 しかし、直撃するかと思われたそれは、いつの間にかグレイブが振り抜いた剣によって霧散された。

 

「何だこれは? 私と遊びたいのか? 大樹?」

 

 気持ち悪さを感じる程場違いなグレイブの穏やかな声。それに反してグレイブが握る黄金刃の剣──グレイブラウザーは冷たく輝く。

 

「くっ!」

 

 兄の挑発に乗る様に今度は引き金を一度ではなく何度も引く。

 グレイブの腕が霞み、黄金の線が空間に引かれる度に撃ち出された光弾は斬り払われる。

 

 

「どうした? その程度なのか?」

 

 挑発、というよりは子供を急かす様な親愛すら感じさせる優し気な声。しかし、それとは裏腹に剣を振り回し、一歩一歩着実にディエンドとの距離を詰めていく。

 

「ならこれならどうだい!」

『アタックライド・ブラスト』

 

 銃口を上に向け引き金を引くと、銃口から無数の光弾が発射され、不規則な軌道を描いてグレイブを狙う。

 

「甘いな、大樹」

 

 グレイブはグレイブラウザーの柄部分を展開。扇状に開かれるのはカードホルダーであり、その内の一枚を抜いて刃側面にある溝に通す。

 

『MIGHTY』

 

 口から重力波を吐き出すケルベロスの頭が描かれたカードが、青い光のケルベロスの絵柄となってグレイブの前に出現。グレイブはその絵にグレイブラウザーを突き立て、剣身に纏わせると、グレイブラウザーの刃が金色の光を放つ。

 グレイブはその場でグレイブラウザーを振るう。金色の刃が通過した跡にカードの効果による重力の歪みが発生。

 ディエンドの光弾がその歪みに触れた瞬間、複雑な軌道が更にかき乱され、結果グレイブを避ける様に全て外れてしまった。

 

「何っ!?」

 

 一振りで防がれたことに驚くディエンド。

 グレイブが再び一歩を踏み締めた時、グレイブはディエンドの眼前にまで移動していた。まるで、空間が縮んだかと思わせる様な高速移動。

 

「まだまだだな、大樹」

 

 グレイブの拳がディエンドの腹部にめり込む。

 

「うっ!」

 

 くの字に折れるディエンドの身体。グレイブはグレイブラウザーの柄でディエンドの横顔を殴りつけ、兄弟の情無き追撃をする。

 

「ぐっ!」

 

 殴り倒されたディエンドを、グレイブは見下ろす。

 

「もっと本気を出さないと死ぬぞ、大樹? こんな中途半端な戦いでは私は強くはなれない」

 

 気遣う様でいて、何処までも自分しかないグレイブの言葉にディエンドは寒気立つ思いであった。

 

「前のお前は、もっと抵抗したぞ?」

 

 そう言ってグレイブはディエンドへカードを一枚投げ渡す。膝を突くディエンドの前に落ちたのはディエンドのライダーカード。元の持ち主の最期を暗示する様に描かれたディエンドの顔に赤黒い点々が付着していた。

 

「大樹、それはお前にやろう。私からのプレゼントだ」

 

 ディエンドはディエンドのカードに触れる。

 

「礼ならいらない。新しいカードがもうすぐ手に入る」

「……兄さんは本当に人の心を捨ててしまったんだね」

 

 ディエンドの声に自然と熱が込められる。自分が知っている兄は何処にも存在せず、目の前にいるのは兄の形をした別人であると心が認めた。

 

「僕を殺せるぐらいに……!」

「人の心を捨てたんじゃない。より高みに昇ったんだ」

 

 至近距離から繰り出すディエンドの発砲。だが、グレイブはそれを難なく斬り払う。

 

「あの二人も手に掛けたのか!?」

「あの二人……? ああ、春香と慎のことか」

 

 かつての戦友の名を僅かな間を置いてから思い出すグレイブ。

 

「安心してくれ。二人はここにいる」

「何だって?」

 

 グレイブはバックルを一度閉じ、もう一度開く。

 

『OPEN UP』

 

 緑の光壁がバックルから出現し、ディエンドを弾き飛ばす。

 

「うわあっ!」

 

 グレイブは現れた光壁を通過。その姿を変える。

 

「その姿は……!?」

 

 グレイブとは違い緑を主体とし、胸と両肩には緑のAの意匠。グレイブとは違い顔面中央に金の仮面を付けておらず、中央に赤い単眼の様な菱形があるのみ。

 仮面ライダーランスはその名の通り、Aを模した槍──ランスラウザーを構えるとディエンドを斬り付ける。

 

「くっ!」

 

 胸部から火花を散らしながらもディエンドは銃口をランスに向けるが、穂先がそれを払い、石突に当たる部分がディエンドの腹部を突く。

 息が詰まる衝撃。動きが止まったディエンドに、ランスは腰右部にあるカードホルダーを展開し、そこからカードを抜き取って石突上部にある溝に通す。

 

『MIGHTY』

 

 カードが生み出したエネルギーを絡み付かせ、緑に輝く穂先でディエンドに斬りかかるランス。

 

『アタックライド・バリア』

 

 銃口から発せられる障壁がランスの攻撃を防ぐ。ランスラウザーを振り回し、障壁を破壊しようとするが、思いの外堅く中々突破出来ない。

 

「ならこれだ」

 

 ランスはまたバックルを閉じ、開く。

 

『OPEN UP』

 

 出現する光壁は、今度は赤色。それを潜り抜けたランスは姿形同じだが、緑が赤へと変わり、武器も槍からボウガンに変更される。

 赤い仮面ライダーこと仮面ライダーラルクは、長大なボウガン──ラルクラウザーに取り出したカードを通す。

 

『MIGHTY』

 

 ボウガンの弩に光が取り込まれ、ラルクが引き金を引くと赤色の光矢が射られる。それが障壁に衝突すると、弾かれるのではなく突き刺さる。

 ランス時の攻撃により強度が下がった所に一点集中の光矢を射られ、障壁を突き破ったのだ。ラルクはその刺さった光矢目掛けてもう一度光矢を射る。

 先に刺さっていた光矢を裂いて障壁を突き抜ける二射目の光矢が、ディエンドの肩を掠めていく。

 すかさずラルクはグレイブに再変身し、脆くなった障壁をグレイブラウザーの一撃で完全に破壊。ディエンドの首を掴み、片手で持ち上げる。

 その気になれば締め落とすことも可能だが、グレイブは敢えて爪先で立てる程度の高さまで上げ、ディエンドを嬲る様に苦しめる。

 

「どうした、大樹? それが本気か? それとも手加減をしてくれているのか? 優しいな。だが、無意味だ」

 

 締める力は更に強まり、ディエンドは喘ぐ。

 

「あの、二人まで……!」

「春香と慎は私の力の糧になってくれた。心から感謝しているよ。そして、お前にもだ、大樹」

「僕、に……?」

「これは、お前を倒したことで得た力だ」

 

 グレイブの全身から白い光が放たれる。至近距離でそれを浴びたディエンドは一時的に視界がおかしくなる。

 数秒間目の中を白い闇が覆い、それが消え去った時、ディエンドはありとあらゆる苦しみを忘れてしまう程の衝撃を受ける。

 鋭い刃を全身に張り巡らさせた白い体。それとは対照的に腹部や手足は鮮やかな赤。そのせいで白骨の身体に剥き出しに筋組織の様に見えてしまう。

 頭部から節のある一対の長い触角を後ろに向けて垂れ下げ、顔の三分の二を赤いバイザーで覆っている。

 鋭い牙が連なる口を動かし、その怪物はディエンドに喋り掛ける。

 

「見てくれ、大樹。この姿を。私は手に入れたんだ。14(フォーティーン)すら超える力を」

 

 14。それはかつて海東たちの住んでいた世界を支配していた存在。それを倒す程の力を手に入れた、高揚して話す純一であったが、ディエンドはただ兄が怪物に成り果ててしまったことに驚き、そして哀しむ。

 

「本当に……取り返しのつかない、ところまで、行ってしまったんだね……兄さん」

「私を憐れんでいるのか? そうだとしたら、お前の勘違いだ」

 

 純一は手を離した瞬間ディエンドの身体を召喚した大鎌によって斬り裂く。胴体から腹に掛けて斬り付けられたディエンドは吹っ飛んで行く。

 

「私は満足している。この姿に。私は人を超えた存在となったんだ」

 

 怪物の姿から発せられる穏やかな声。そのギャップは見る者に怖気を走らせる。

 

「兄、さん……!」

 

 ディエンドは痛みを押し殺して立ち上がり、カードを三枚、ネオディエンドライバーに挿入。

 

『カメンライド・威吹鬼』

『カメンライド・イクサ』

『カメンライド・クローズ』

 

 引き金を引くと、三体の仮面ライダーが召喚される。

 青い隈取りに三本角。金管楽器に似た武器で戦う鬼──仮面ライダー威吹鬼。

 聖職者を思わせる白い装甲に太陽の紋章を輝かせる仮面ライダーイクサ。

 ドラゴンの力を振るい、蒼炎を巻き起こす仮面ライダークローズ。

 形成不利だった状況から一気に四対一へ持ち込む。

 だが、純一はそれを見て失笑した。

 

「考えが浅いな、大樹」

 

 純一は絵柄の無い真っ白なカードを三枚出すと、召喚されたライダーたちにそれを投げ放つ。カードがライダーたちの胸に突き刺さるとライダーたちの形が崩れ、抵抗する間もなくカードの中へ吸収され、ライダーたちを取り込んだカードはブーメランの様に純一の手の中へ戻っていく。

 絵柄の無かったカードに吸収された三人のライダーたちが横向きの姿で描かれ、その体に茨の様な植物が巻き付いていた。

 

「兄思いだな。お前はこうやって私に力をくれる」

 

 純一の皮肉にディエンドは言葉を返すことは無かったが、ネオディエンドライバーのグリップを強く握り締める姿が心境を表していた。

 

「このまま──おや?」

 

 急に曇り始めたとかと思えば、空に捻じれた黒い石板が出現する。

 

「あれは……!」

 

 ディエンドはそれが何なのか知っていた。しかし、何故それが出現するのか分からない。もう二度現れる筈の無いものだと思っていた。

 

「──成程。あの男がこの世界に私を呼んだのは、この為か」

 

 一方で純一の方は納得していた。石板と純一の間に不可視の繋がりが生まれ、それによって全てを把握する。

 石板の名はモノリス。かつてあらゆる種がこの地球上で最も進化したいという願望が統合した存在──統制者の代行者。

 太古に地球の覇権を賭けた戦い『バトルファイト』が行われていた。勝てば地球上で最も進化することが出来る。一方で別のルールも設けられていた。

 あらゆる生物の始祖ではない存在『ジョーカー』。それが勝者となれば地球のあらゆる生物は絶滅させられる。

 だが、この世界はジオウたちによるジョーカーの力は失われ、二度とバトルファイトは行われない筈であった。

 しかし、何事も例外が存在する。もしも、この世界以外からジョーカーと似た存在が現れたのなら? 

 そんな反則的な行為がスウォルツによって行われてしまった。

 純一の変身した異形こそ、そのジョーカーと同じ力を持つ白と赤の色素の抜けたアルビノジョーカーと呼べる存在。

 それにより統制者の誤認が発生し、モノリスが全ての生命を絶滅させる為に動き出す。

 モノリス表面が泡立ち、その泡がアルビノジョーカーと姿が似た怪人になり、モノリスから次々と生み落とされていく。

 

「はははは。凄い光景だ」

 

 純一ことアルビノジョーカーはそれを笑い、ディエンドの方を向く。

 

「大樹、今回は見逃してあげよう。行きなさい」

「ど、どういうつもりだ?」

 

 兄の突然の言葉にディエンドは戸惑いを隠せない。

 

「私の登場は、思ったよりもお前に動揺を与えてしまったみたいだ。これはフェアじゃない。ちゃんと覚悟してからまた私に挑んだ方が良い」

「見透かした様なことを言わないでくれ……!」

「お前の気持ちなど手に取る様に分かるぞ? 私はお前の兄なのだからな」

 

 ディエンドは仮面の下で唇を噛み締める。言っていることが図星であったからだ。

 

「私とゲームをしよう、大樹」

「ゲームだって……?」

「実に簡単なゲームだ。制限時間までにお前が私を倒せばいい。たったそれだけだ。制限時間は──」

 

 アルビノジョーカーは、モノリスから発生した自分の分身たちを眺める。

 

「──この世界が滅ぶまで」

 

 ディエンドは無言でカードをネオディエンドライバーに入れる。

 

『アタックライド・インビジブル』

 

 ディエンドは透明になり、何処かへ行ってしまった。ここから去るということは、兄とのゲームを受けることを意味する。

 

「次は全力で来い、大樹。そのお前を殺すことで私は更なる高みへ至れる」

 

 アルビノジョーカーは静かに笑うと、暇潰しを兼ねてありとあらゆる生物に襲う様に分身たちへ指示を飛ばした。

 

 




海東大樹は二度死ぬ。書いてて平行世界の海東が二人も死んでいる展開になっていますが、嫌ってはいませんよ?
サブタイトルを変えようかと思う程ディケイド成分しかありませんが、次はちゃんとジオウたちの話になります。

先にどちらが見たいですか?

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