仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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今回も大分独自設定が強い話となっています。


アナザーディケイドVE その14

 忍装束を連想させる黒衣に、黒い仮面を被った集団が悲鳴を上げて逃げる人々を追い回す。手には刀が握られ、逃げ惑う人々はその凶器と目的も分からず襲ってくる怪人たちに恐怖する。

 星屑忍者ダスタード。仮面ライダーフォーゼの歴史に存在する者たちであり、主にホロコープスと呼ばれる怪人たちの戦闘員として使われていた。

 しかし、今の彼らには率いるホロコープスは存在せず、与えられた命令も無い為無差別に人を襲うという蛮行を繰り返している。

 ダスタードの一体が逃げ遅れた子供連れの家族に対し、凶刃を振り上げる。最早、為す術も無い家族は絶叫を上げるしかない。

 だが、刃が振り下ろされるよりも早く赤色の光弾がダスタードの顔面を撃ち抜く。

 

「早くこっちへ!」

 

 ファイズフォンXを構えたままツクヨミがまだ比較的安全な場所へと誘導する。

 家族らは恐怖で足をもつれさせながらもツクヨミに言われるがまま示された方向へ逃げて行く。

 その後を追い掛け様とするダスタードたちをツクヨミの光弾が阻む。しかし、ファイズフォンXで撃ってもダスタードたちは次から次へと現れる。更にはマスカレイドドーパントたちも合流し、一斉に拳銃を抜くとダスタード諸共ツクヨミを銃撃する。

 ツクヨミが手を翳す。そこから放たれる波動が時間の流れを操り弾丸を空中で停止させ、それだけでなくダスタード、マスカレイドドーパントの時間をも止めてみせた。

 ツクヨミが弾丸の射線から離れる。そして、時間停止を解除するとマスカレイドドーパントたちの弾丸がダスタードたちを貫く。

 ダスタードたちが消滅している間にファイズフォンXでマスカレイドドーパントたちを銃撃する。光弾は的確に急所を撃ち抜き、マスカレイドドーパントたちはダスタードたちの後を追う。

 

「スウォルツからそこまで力を取り戻していたとは……」

 

 ツクヨミと共に行動しているウォズが少し驚いた表情をする。

 

「それだけの力があれば、私の護衛も不要なのでは? ツクヨミ君はレジスタンスの時から逞しかったからね」

「何か言った!?」

 

 必死になって敵を追い払っているツクヨミからすれば涼しい顔をして眺めているウォズの態度が苛立ちの一つも覚える。

 

「しかし、こうなるとスウォルツが力を奪い返しにツクヨミ君を狙う可能性もあるということか。彼は意外と慎重だ」

「はっ。そんな聞こえの良い言葉であいつを飾るなよ。見掛けによりも小心者というのがお似合いだ」

 

 ウォズの言葉を拾い、飛流がここにはいないスウォルツを罵倒する。飛流もまたツクヨミの護衛として置かれたが、そんな素振りは一切見せず、やる気が無いと言わんばかりに半壊しているベンチに座っている。密命であるが、飛流の監視もまたウォズに任された仕事である。

 

「無駄話をしていないで手伝って!」

 

 ツクヨミが怒鳴るとウォズは肩を竦ませながらギンガミライドウォッチを取り出す。

 

「変身」

『ファイナリータイム! ギンガファイナリー! ファイナリー!』

 

 ウォズギンガファイナリーに変身したウォズは、一番近くにいたマスカレイドドーパントの腹部に掌打を打ち込む。マスカレイドドーパントの足は地を離れ、後方にいたマスカレイドドーパントたちを巻き込みながら吹っ飛ばされ、纏めて転倒する。

 立ち上がろうとするも我先にと動くせいで体が絡み合い、上手く立てないマスカレイドドーパントたち。

 その側には既にウォズが立っている。

 

「はあっ!」

 

 振り下ろされる掌打。宇宙のエネルギーを纏った衝撃は、一番上のマスカレイドドーパントだけでなくその下に重なっているマスカレイドドーパントたちを纏めて粉砕する。

 ウォズは横目で飛流を見る。彼はまだ半壊したベンチに座っており戦う気を見せていない。

 

「いつまでも置物になっていないで、君も戦ったらどうだい?」

 

 ウォズが声を掛けると、飛流は無言でアナザーゲイツマジェスティウォッチを出し、スイッチを押す。

 

『ゲイツマジェスティ……』

 

 アナザーウォッチが起動するが、飛流はそれを用いて変身しようとはしない。すると、アナザーゲイツマジェスティウォッチが暗い輝きを放ち、その光の中から何かが飛び出してくる。

 鳴り響く駆動音と金属の擦れ合う音。黒を帯びたメタリックブルーの装甲。関節の各部から垂れ下がる血管を思わせる多色のコード。同色の頭部には三本の銀色のアンテナを額に備え、赤い複眼に似たアイシールドと銀色のフェイスマスク。

 ただし、赤いアイシールドは両方とも罅割れ、その奥に白い眼球が機械音と伴って動き、フェイスマスクも抉れる様に半壊しており、金属の歯牙が覗かせていた。

 左肩に『G3-X』と刃物で削った様に彫られ、反対の肩にも同じ様にして『2001』の数字が彫られている。

 アナザーG3-Xは機械の様な一度動作ごとに区切るぎこちない動きで視界にマスカレイドドーパントたちとダスタードたちを捉える。

 すると、背部や体の各部に付けられた装甲が剥がれ落ち、宙に浮かぶと再構築され、出来上がった物に右手を突っ込む。

 六本の銃身を一つに束ねたガトリング砲と化した各部のパーツとアナザーG3-Xの右手は一体と化し、そのガトリング砲から弾丸をばら撒く。

 吐き出された弾丸はマスカレイドドーパント、ダスタード区別無く容赦無く穿つ。弾字自体の威力も高いせいで数発受けただけで体が木端微塵と化す。

 軽く腕を振るう動作で十数体の怪人たちが掃討されていく中、数を生かして弾丸の暴力を掻い潜ってアナザーG3-Xのガトリング砲にしがみつくマスカレイドドーパントもいたが、アナザーG3-Xはあっさりとガトリング砲を右手から切り離し、左腕の装甲を剥ぎ取ると、それを短剣へと変化させてマスカレイドドーパントの眉間に突き刺す。

 刺すと同時に短剣は高速で振動し始め、紙の様にマスカレイドドーパントを縦に斬り裂いてしまう。

 マスカレイドドーパントを容易く屠ると、落としたガトリング砲に触れる。ガトリング砲が形を変え、口径の大きい重火器となり、アナザーG3-Xはそれを右手に填め込むと重火器の口を敵に向け、中から炸裂弾を発射。爆炎と爆破で敵を消し飛ばす。

 アナザーG3-Xの火力に蹂躙されるマスカレイドドーパント、ダスタードらはこのままでは不利だと悟ったのかアナザーG3-Xから距離を取り始める。そのまま逃げようとしている魂胆が見える動きであった。

 しかし、アナザーG3-Xは追う動きを見せない。それが不要であると理解しているからである。

 忘れてはならない。アナザーゲイツマジェスティウォッチから飛び出た光は二つであることを。

 突如として竜巻が生じ、その中にマスカレイドドーパント、ダスタードが呑み込まれる。

 渦巻く暴風に翻弄される怪人たち。そこに加えられるのは不可視の暴力。

 ツクヨミとウォズも思わず両手で耳を覆い自己防衛してしまう甲高い音。超音波であるそれが竜巻へと浴びせられていた。

 離れた場所にいるツクヨミたちですら害を与える超音波である。直に浴びせられた怪人たちは一溜りも無く、肉体を限界以上振動され粉々と化す。

 怪人たちが塵と化すと同時に竜巻が消える。すると、上空から青い影が地面に降り立つ。

 全身を覆う西洋騎士に似た青い鎧。右手には両刃の剣、左腕には矢を番えたボウガンと盾を一体にさせた武器を装備。縦格子になっている兜の奥に見える白眼と獣にしかみえない連なる牙。

 背部から羽が生えており左翼は蝙蝠の羽、右翼もまた蝙蝠の羽の様だが縁を金色の金属で覆い、皮膜に直接金色の羽根を幾重に突き刺している。蝙蝠の羽を飾り付け無理矢理鳥の翼に見立てた歪な見た目をし、鳥紛いの羽には『KNIGHT SURVIVE』、蝙蝠の羽には『2002』と描かれてある。

 人になり損ねた蝙蝠。或いは蝙蝠を混ぜ込まれた人。半人半獣の中途半端な姿は嫌悪感を覚えさせる。

 アナザーナイトサバイブは口部から超音波を発する。それを聞かされた怪人たちの動きが止まると、羽を羽ばたかせて突進。両刃剣ですれ違い様に斬り裂いていき、怪人たちの群を抜け出ると反転してその背にボウガンから放った矢を射ち込む。

 アナザーG3-Xとアナザーナイトサバイブの力によって怪人たちは倒されていき、その数を減らしていく。襲ってくる怪人たちの数が減れば必然的に助かる人々の数も増え、ツクヨミはそんな人たちを安全な場所へ誘導する余裕が生まれる。

 たとえ二体のアナザーライダーが打ち洩らしてもウォズがそれをカバーし、ギンガファイナリーの力で逃げる人々に指一本も触れさせない。

 

(大したものだね)

 

 片手間で怪人たちを倒しながら内心で飛流の力を評価する。

 アナザーライダーの力を使用する度に確実に強くなっているのが分かる。

 

(アナザーライダーへの素質ならスウォルツと同等以上かもしれない)

 

 時を操る力と破壊者の力を兼ね合わせたスウォルツに勝るとも劣らない飛流の力。いずれは敵対するかもしれないが、この場に於いては頼もしいと言うしかない。彼のお陰で救われている命が大勢いる。だが、当の本人はそんなことに一切の喜びを見出さず全く関心を示していない。

 

(あれで精神面が負の方向に振り切れていなければ……)

 

 性格の方はお世辞にも褒められえる点は無い。改善しようにも飛流の力の根本が復讐や恨みという負の感情そのもの。

 

(まともになれば、恐らくは今ほどの力を発揮することが出来なくなるのだろうね……ままならないものだ)

 

 最早叶うことのない『もしも』を想像し、ウォズは静かに嘆息した。

 

 

 ◇

 

 

「早く逃げろ!」

 

 ゲイツは襲い掛かっている怪人を突き飛ばしながら腰を抜かしている男に声を掛ける。

 

「あ、あああ……」

 

 だが、男は完全に恐怖を呑み込まれており、ゲイツの声が耳に届いていない。

 

「早く──」

 

 ゲイツがもう一度言う前に戒斗は男の襟を掴んで無理矢理立たせたか思えば、その頬に拳を叩き込む。

 

「あぐあっ! え、ええ……?」

 

 殴られた痛みで正気に返った男は、まだ拳を握り締めている戒斗に困惑する。

 

「もう一度殴られたくなければ、その足でちゃんと立って走れ」

「は、はい!」

 

 戒斗が襟から手を離すと男は一目散に逃げて行く。

 何か言いたげなゲイツの目を見て、戒斗は喋り出す。

 

「手っ取り早く済ませただけだ。恐怖に打ち勝つのに必要なのは、強い精神力か恐怖以上の痛みだ。それよりも──」

 

 戒斗はゲイツにしか届かないぐらいに声量を絞る。

 

「──釣れたぞ」

 

 言い終えると同時に二人の視線は揃って横を向く。

 

「お前たちだけか。無謀だな」

 

 見下した笑みを見せつけるスウォルツがそこに立っていた。

 

「二人だけではない」

「うん?」

 

 怪人を蹴り飛ばして現れるチェイス。

 

「やっと現れたなぁ!」

 

 チェイスの隣には仁藤もいる。

 

「おい、フータロス。逃げている人たちのことは任せた。あいつは俺とデネブが相手をする」

「いいのかよ、手伝わなくて。見るからにやばそうだぞ?」

「大丈夫! 侑斗は俺が守る!」

 

 フータロスに逃げ惑う人々のことを頼んで分かれた侑斗たちもスウォルツの前に現れた。

 

「ふん。この俺を待ち伏せていたか。だが、数を揃えれば俺に勝てると思っているのか?」

 

 多対一という状況でもスウォルツの不遜な態度は崩れない。自らの勝利を微塵も疑っていなかった。

 

「感じるぞ……ライドウォッチで仮面ライダーの力を取り戻した連中だな。しかし、それは一時的なものだ。この世界の崩壊が進めばやがて──」

「御託はいい。──決着を付けるぞ」

「黙れ。お前の無駄話に突き合うつもりは無い」

 

 ゲイツと戒斗はスウォルツの言葉を遮り、ゲイツはジクウドライバーとゲイツライドウォッチを、戒斗はゲネシスドライバーとレモンエナジーロックシードを装着、装填する。

 チェイスはマッハドライバー炎を付け、シグナルマッハを取り出し、仁藤は指輪を填め、ベルトのバックル前に翳すことで『ドライバーオン!』の声の後にバックルがビーストドライバーへと変化。

 侑斗はゼロノスベルトを装着した後、カードホルダーからゼロノスカードを取り出そうとして指先が止まる。ホルダーの中のゼロノスカードが蒸発する様に消え始めている。

 ゼロノスカードには時間改変の影響を受けない特異点に似た性質を持ち主に与えるが、この世界の強制力はその修正力を上回っており、ゼロノスをこの世界から消滅させようとしている。

 

「侑斗……」

 

 デネブもそれに気付き、侑斗の身を案じる様な声を掛けるが、侑斗は止めた指先を動かし、消え始めているゼロノスカードを掴む。

 

「最初から何度も変身する気なんて無いんだ。目的を果たせればそれでいい」

 

 敢えて侑斗は明るく言い、ゼロノスカードをベルトに挿し込む。

 

「──分かった!」

 

 デネブも侑斗の覚悟に迷いを捨てる。

 

『変身!』

 

 自然と揃う掛け声。

 

『リ・バ・イ・ブ! 剛烈! 剛烈!』

『ライダー! マッハ!』

『L・I・O・N! ライオーン!』

『レモンエナジーアームズ! ファイトパワー! ファイトパワー! ファイファイファイファイファファファファファイッ!』

『ALTAIR FORM』

 

 仮面ライダーゲイツリバイブ剛烈、仮面ライダーチェイサーマッハ、仮面ライダービースト、仮面ライダーバロンレモンエナジーアームズ、仮面ライダーゼロノスアルタイルフォームがスウォルツを囲む。

 しかし、スウォルツの余裕は崩れない。

 

「所詮は消え行く歴史。俺には勝てん……!」

『ディケイド激情態ッ!』

 

 アナザーディケイドVEウォッチのスイッチを押して取り込むスウォルツ。変身と同時に周囲の怪人たちを吹き飛ばす程の衝撃が生まれるが、ライダーたちはそれを突き破って走り出す。

 

「はああ!」

 

 のこモードのジカンジャックローでアナザーディケイドVEの体を削り取ろうとするゲイツリバイブ。体表を滑る丸鋸の刃から火花が散るが、ゲイツリバイブはそれから手応えを感じない。

 実際、ジカンジャックローが通った跡には白煙が上がっているが、それは摩擦によるものであり、削られたのは逆にジカンジャックローの丸鋸であった。

 突き出したジカンジャックローがアナザーディケイドVEの胸部に炸裂。しかし、アナザーディケイドVEは一歩も後退しない。

 突き出されて伸びた腕をアナザーディケイドVEが掴もうとする。

 

「せいっ!」

 

 バロンのソニックアローが、アナザーディケイドVEの手を下から斬り上げる。

 チェイサーマッハが守りの薄いアナザーディケイドVEの脇腹にシンゴウアックスを打ち込み、回り込んだビーストもダイスサーベルを反対の脇腹を斬り付ける。

 全力の一撃だが、アナザーディケイドVEが軽く呻く程度。

 

「はあっ!」

 

 跳躍したゼロノスがアナザーディケイドVEの背中を大剣状態のゼロガッシャーで斬ろうとする。

 しかし、アナザーディケイドVEは背後に手を伸ばし、ゼロガッシャーの刃を手刀で防いでみせた。

 

「その程度か? ふんっ!」

 

 アナザーディケイドVEの体から黒とマゼンタを混ぜ合わせたエネルギーが衝撃波となって放出される。至近距離でそれを浴びたライダーたちは全員吹き飛ばされる。

 

「ついでだ」

 

 アナザーディケイドVEは手を指鉄砲の形にして腕を伸ばし、その場で一回転。アナザーディケイドVEの周囲に手の形の残像が残る。

 

「吹き飛べ」

 

 残像から撃ち出される光弾が、吹き飛ばされたライダーたちに向けて飛んで行く。

 爆発が起こり、ライダーたちはそれに覆い被される。

 

「他愛もない」

 

 自らの勝利に酔うアナザーディケイドVE。否、最初からアナザーディケイドVEは自らの力の完璧さに酔っていた。

 最強の力を持つ者に許された傲慢なる強さによる酩酊。羽虫を叩き落とす様にライダーたちを圧倒する力に高揚する。

 

『VEGA FORM』

 

 しかし、その酔いを醒ます無機質な音声。

 爆煙に銀閃が走ると煙が吹き飛ばされ、姿を変えたゼロノスがゼロガッシャーを斬り払い終えた格好で立っている。

 イマジンのデネブと一体となったベガフォームは、ゼロガッシャーを振り回して地面に突き立てるとアナザーディケイドVEを指差す。

 

「最初に言っておく!」

 

 四方八方へ響き渡る声量に、アナザーディケイドVEの意識は自然とゼロノスに集中する。

 

「俺は囮だ!」

「──何を言っている?」

 

 あまりに堂々とした宣言に、言葉の意味を理解するよりも先に問い返してしまった。

 それがアナザーディケイドVEの隙となる。

 

『ゴーッ! カカッ、カッカカッ、カメレオー!』

『TUNE・CHASER COBRA』

 

 煙を突き破ってアナザーディケイドVEの両腕に巻き付く銀色の蛇と黄金の舌。それらを追って煙の中からビーストとチェイサーマッハが飛び出る。

 折り畳まれた大型クローから伸びる銀の鞭──テイルウィッパーとビーストの右肩に羽織られたカメレオンの頭部が付いた緑のマント──カメレオマントがアナザーディケイドVEを拘束する。

 

「それで俺の動きを防いだつもりか!」

 

 アナザーディケイドVEの全身から放たれる波動。時間操作によって周囲の時間を停止させる──が。

 

「これは……」

 

 アナザーディケイドVEは違和感を感じ取る。指先を振るえば意のままに止められた時間の流れ。当たり前の様に掴んでいた感覚が、上手く掴み取れない。いや、掴み取れているのだが、その動きが非常に緩やかなのである。

 

「時間が……重い? まさか!」

 

 アナザーディケイドVEは察した。時間操作が非常に扱い辛くなるこの現象を。

 

「重加速か……!」

 

 チェイサーマッハが生じさせた重加速によって場に満ちた重加速粒子が空間に干渉してアナザーディケイドVEの時間操作能力に狂いを生じさせる。

 本来ならばロイミュードやドライブの歴史に属する仮面ライダー以外はこの時間でまともに動くことは出来ないが、それも既に対策済みである。ゲイツリバイブたちにはチェイサーマッハが所有しているシグナルバイクを渡してある。故に彼らは重加速の中でも通常通りに動ける。

 不意打ちの重加速に対応し切れていない今、一気に攻める。

 

『ジカンジャック! 剛烈!』

『レモンエナジー!』

『FULL CHARGE』

 

 刃から橙色の光が零れ出るジカンジャックロー。レモンエナジーロックシード内のエネルギーが注ぎ込まれ、矢部分が黄色く輝くソニックアロー。ボウガンモードとなったゼロガッシャー柄にあるスロットへゼロノスカードを挿し込まれ、幾筋の線状のエネルギーが矢の先端へ集束される。

 

『スーパーのこ切斬!』

 

 ジカンジャックローから放たれる鋸状の光輪。それに続いて射られるレモン色の光矢とV字型の光矢。

 三つの技が身動きの取れないアナザーディケイドVEへ直撃、意趣返しの如く今度はアナザーディケイドVEを爆発の中へ送り込んだ。

 

 

 ◇

 

 

 ソウゴはタイムマジーンに乗って2068年の未来にたどり着いていた。降り立つ場所は、最初に2068年に来た時に見た、『常盤ソウゴ初変身の像』の前。

 ジクウドライバーを装着してポーズをとる常盤ソウゴを中心とした円形に並ぶ仮面ライダーたち。

 それを見上げ、ソウゴは改めて五十年後の未来に来たことを実感する。

 見上げているソウゴの耳に風に乗って聞こえてくる発砲音と人々の悲鳴。

 ソウゴはすぐさまその場から走り出していた。

 音を辿って着いた場所は戦場──という表現は少し間違っているかもしれない。数多の兵士が逃走し、それを守る為に戦う数少ない兵士。兵士が逃げている相手も、数少ない兵士たちが一心不乱で銃を撃ち続けている相手もたった一人しかいない。

 2068年の未来に絶対的存在として君臨するオーマジオウ。彼たった一人により兵士たちは蹂躙される。

 ここは戦場では無い。オーマジオウが直々に手を下す処刑場である。

 しかし、そんな一方的な惨状においても勇ましく戦う者たちもいた。

 

「皆! 踏み止まって!」

「本体が撤退するまで死守するんだ!」

 

 最も危険な殿を務める二人の男女。2068年から2018年に来る前のツクヨミとゲイツであった。

 オーマジオウが手を突き出す。不可視の力で大地は爆発し、何十人もの兵士が空高く打ち上げられる。

 ツクヨミも爆発に巻き込まれ、転倒してしまう。そんな彼女を起こす者がいた。

 

「大丈夫?」

「貴方は……?」

 

 この場に不似合いな格好をしているソウゴにツクヨミは困惑した表情をする。ツクヨミの他人を見る様な目に少し寂しさを覚えるソウゴ。

 

「──ッ! ここは危険よ! すぐに逃げて!」

 

 すぐに表情を真剣なものにし、自分のことよりもソウゴの身の安全を優先するツクヨミ。自分が知っているツクヨミと何一つ変わらないことにソウゴの表情は少しだけ緩む。

 ツクヨミの声を聞き、ゲイツもソウゴの存在に気付くと怒鳴った。

 

「一般人が何故ここにいる! 早くここから離れろ!」

 

 出会う前のツクヨミもゲイツも今とは変わらないことを実感しながら、ソウゴはさり気ない動作でツクヨミのポケットの中にブランクウォッチと、海東から渡されたアレを入れながら彼らの前に出る。

 

「君たちこそ逃げろ。──ここは俺が食い止める」

『ジオウ!』

 

 ソウゴはジクウドライバーを装着。そして、ジオウライドウォッチを起動させ、変身する。

 

「変身!」

『ライダーターイム! 仮面ライダージオウ!』

 

 ジオウとなりオーマジオウの前に躍り出る。

 

「若き日の私か……」

 

 オーマジオウは片手を振るう。すると、周囲の空間が歪み始め、それが治まるとジオウとオーマジオウは広々とした何もない場所へ移動していた。

 

「お前がこの時代に再び来るなど私の記憶には無い」

「歴史が変わって当然だ。あんたにとって過去でも、俺にとって未来なんだから」

 

 同じ常盤ソウゴであっても異なる道を歩もうとしている。自分の足跡を辿らないジオウに、オーマジオウは微かに笑った。

 

「──面白い。ならばお前が進むべき未来を切り拓く力を私に見せてみろ!」

 

 ジオウはグランドジオウライドウォッチを出す。いつ消えてもおかしくない脆い力かもしれないが、オーマジオウに最も近い力はこれしかない。

 

『グランドターイム!』

 

 グランドジオウライドウォッチを挿されたジクウドライバーが回転すると、ジオウの周囲に仮面ライダーたちが召喚され、金のレリーフとなる。

 

『祝え! 仮面ライダー! グ・ラ・ン・ド! ジオーウ!』

 

 グランドジオウへ姿を変えると、オーマジオウは見せつける様にドライブライドウォッチを突き出す。

 

「少しはましになったか試させてもらおう」

『ドライブ!』

 

 ドライブライドウォッチの力により、仮面ライダードライブが召喚される。

 仮面ライダードライブはその場で加速し、グランドジオウへ急接近。グランドジオウはその動きを目で追えていたが、不動のまま。

 間合いへ入ると同時にドライブの拳がグランドジオウの顔目掛けて放たれる──が、その拳はグランドジオウの顔数センチ手前で止まった。

 すると、ドライブの体は粒子の様に崩れて消えてしまう。あたかもグランドジオウを傷付けることを拒むかの様に。

 

「その身に平成ライダーたちの歴史を刻んだか、若き日の私よ」

「背負えるだけ全部ね」

 

 オーマジオウにグランドジオウで挑んだ時、ドライブの力によって完膚なきまでに叩きのめされた。しかし、今のグランドジオウは触れることなくドライブを封じた。その時点であの時よりも強くなっているのが分かる。

 

「風前の灯火の様な力だよくやるものだと褒めておこう」

 

 オーマジオウはグランドジオウの今の状態を見抜いていた。歴史の歪みにより今にも消えそうな平成ライダーたちの力を繋ぎ合わせて辛うじて維持している。しかし、だからこそオーマジオウは手を抜かない。

 

「ようやくあんたに手が届く……!」

 

 グランドジオウが一歩踏み出した時には、オーマジオウの眼前に拳を繰り出していた。オーマジオウの掌打がそれを迎え撃つ。

 拳打と掌打がぶつかり合い、黄金の光が周囲に飛び散る。遠くの山に散った光が触れると山の先端が吹き飛んでしまう。

 

「自惚れるな、若き日の私よ! お前は私の領域に一歩踏み込んだに過ぎない!」

 

 オーマジオウが踏み込むと掌打から光の波動が生まれ、グランドジオウは吹き飛ばされる。

 

「くっ!」

 

 両足で地面を踏み付け、勢いを殺すグランドジオウ。

 オーマジオウはグランドジオウの拳を受けた掌を見ている。

 

「平成ライダーたちの歴史を背負うことでお前の一撃には前には無い重みが生まれた。そのことに関してだけは見事だと言っておこう。だが、それだけだ」

 

 オーマジオウは掌を握り締める。

 

「お前は私の過去。私はお前の未来。お前の身はこれからの歴史を刻む碑だとしたら、私の身は全ての者を弔う墓標!」

「墓標……?」

「そうだ! この身が背負うのは果てた者たちの歴史! その者たちの死に報いる為に私は王であり続ける!」

 

 オーマジオウの体から金色の光が力となって溢れ出る。今までにない覇気がオーマジオウから伝わってくる。

 

「私は全てを受け入れた! そして得た! 若き日の私よ! お前にもそれを見せてやろう!」

「何を──」

 

 オーマジオウの周囲にグランドジオウの様な三つの扉が出現する。その内の一つが開き、中から何かが飛び出してくる。

 赤と青の残像を残しながら飛び込んで来るそれにグランドジオウは腕を出して防御。足底に履帯を仕込んで蹴りが阻まれるが、それよりもグランドジオウは現れたそれに驚愕する。

 赤と青の色が互い違いの様に交わる体。両眼を覆う兎と戦車の形のバイザー。腹部と一体と化したドライバーには赤と青の液体が入ったボルトが挿されてある。胸に刻まれたのは『BUILD』の文字。

 それはまごうことなきアナザーライダー。

 

「アナザービルド!?」

「歴史を歪め、本来の仮面ライダーからその座を奪おうとした偽りのライダーたち。しかし、私はその存在を許そう!」

 

 驚いているグランドジオウの顔面に発条が仕込まれたアナザービルドの蹴りが叩き込まれる。

 思わず怯むグランドジオウ。揺れ動く視線の中で見たのは、既に開いていたもう一つの扉。

 グランドジオウの前に見た事も無いライダーがいた。

 漆黒の体には金色の線が幾つも入り、黒色のバイザーは金で縁取られ、額には銀字でVに似たマークが付けられている。

 そのライダーは、百足の様な幾つも刃を生やした大剣でグランドジオウを斬り付ける。

 

「根源は同じながらも仮面ライダーの名を冠することの無かったライダーよ! その存在もまた私は許そう!」

 

 漆黒の疑似ライダーことオルタナティブ・ゼロが大剣を斬り返すと同時に飛び込んできたアナザービルドの膝がグランドジオウの胸部に命中する。

 

「ぐううっ!」

 

 平成ライダーの力を全て扱うことが出来るだけでなく、仮面ライダーではなくともそれに近い力を持つ存在ですら扱うことが出来るオーマジオウのグランドジオウは脅威を覚える。

 そして、三つ目の扉が開く。

 

「己の愉悦の為に全てを破壊しようとする仮面ライダーの名を名乗ることすら烏滸がましい異なる宇宙の狂気よ! だが、私は許し受け入れよう! その存在を!」

 

 開いた途端、赤い残像がグランドジオウの周囲を駆け回る。

 

「うっ!」

 

 赤い影が通過していく度にグランドジオウの体に白い糸が絡み付いていき体の自由を奪っていく。まるで蜘蛛の巣にかかった獲物の様に。

 グランドジオウの両手両足の自由を完全に奪った時、赤い影は動きを止める。

 黒いボディスーツを覆う蜘蛛を模した赤一色の装甲。変身者の隠し切れない狂気と闘争心が形になったような姿をしている。

 

『Ready Go!』

『キルバススパイダーフィニッシュ!』

 

 仮面ライダーキルバスの背部から蜘蛛の脚を模した巨大な鉤爪が四本出現し、身動きが取れないグランドジオウを圧壊させる為に四方から襲い掛かった。

 

 

 




Vー1システム「我々は――」
タイ焼き名人アルティメット・フォーム「――許されるのでしょうか?」
オーマジオウ「……許す!」

またオーマジオウの設定を盛った形になりました。書いている内にあれもこれも出したい欲求が高まっていくせいですね。 

先にどちらが見たいですか?

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