左右から来る途轍もない圧。巨大な大爪がグランドジオウへ触れる直前、グランドジオウは力尽くで絡み付いている蜘蛛の糸を引き千切ると、大爪の前に腕を盾として掲げる。
赤い爪先が両腕ごとグランドジオウを貫こうとするが、グランドジオウの黄金の鎧はキルバスの大爪を見事に受け止める。
グランドジオウの力を以てして両肩が脱臼しそうになる程の力を歯を食い縛りながら耐えるグランドジオウ。しかし、キルバスの大爪はただ獲物を貫く為にあるのでは無い、
次の瞬間にはグランドジオウを呑み込む大爆発が爪先から発生する。
巨大な爪を収納しながら立ち昇る黒煙を満足そうに眺めているキルバスであったが、すぐに異変に気付く。
風に吹かれていく煙の中に見えるグランドジオウ。破壊するつもりで放ったキルバスの一撃を耐え、キルバスの技でも汚れも傷も無い黄金の姿を見せる。
アナザービルドは、見た目はともかくとしてキルバスの一撃を受けたグランドジオウも無事では済んでいないと考え、追撃を行う為に左足で踏み切る。
内蔵された発条の弾性によって高く早く跳躍しながらグランドジオウ目掛けて右足裏の履帯で強襲する。
『ビルド!』
ビルドのレリーフから撃ち出されるドリルクラッシャー。ドリルの刃がアナザービルドのベルトごとアナザービルドの腹を貫く。
『Ready Go!』
『ボルテックブレイク!』
ドリルクラッシャーに既に装填されていたフルボトルの力が充填され、アナザービルドを突き刺した状態でドリル部分からロケットの形をしたエネルギーが撃ち出される。
ロケットフルボトルの力によって発生したロケット型のエネルギーを胴体に埋め込まれたままアナザービルドは空高く打ち上げられ、頂点に達すると空中で爆散する。
「──ほう」
オーマジオウを歓心した声を微かに漏らす。アナザービルドを一瞬で下したことにでは無い。オーマジオウは確かに見た。グランドジオウがレリーフに触れることなく仮面ライダーの力を引き出したのを。
アナザービルドが倒されたのを見て、オルタナティブ・ゼロはカードデッキも兼ねた腹部のベルトからカードを一枚抜き出す。
オルタナティブ・ゼロの右腕は左腕とは違い銀色の装甲で覆われており、装甲の内側にはカードを通す為の溝があった。オルタナティブ・ゼロはその溝にカードを通す。
『ACCELE VENT』
女性の声でカードの名を読み上げられると、アクセルベントのカードは青い炎となって消滅。
オルタナティブ・ゼロが大剣──スラッシュダガーを握り直すとオルタナティブ・ゼロが急加速。アクセルベントのカードによって高速移動する効果を宿している為である。
一気に接近してグランドジオウへ斬りかかる。
『龍騎!』
その斬撃を阻むのは、龍の胴体を模した盾──ドラグシールド。グランドジオウのレリーフから召喚されたドラグシールドが両者の間に入り、オルタナティブ・ゼロのスラッシュダガーを受け止めていた。
ドラグシールドは宙に浮いた状態であり、グランドジオウが持つことなく防いでいる。
アクセルベントによる初撃を防御されてしまったオルタナティブ・ゼロだが、まだ継続しているカードの効果を使い、即座にグランドジオウの背後に回る。
がら空きになっている背中にスラッシュダガーを振り下ろすが、これもまた二枚目のドラグシールドによって防がれてしまった。
しかも今度のドラグシールドは防ぐだけではなく、スラッシュダガーを受けた状態から押し出す。それによりオルタナティブ・ゼロは両手を高々と掲げる体勢となってしまう。
グランドジオウは振り返り、オルタナティブ・ゼロに出来た大きな隙を衝く。
右手には先程召喚したドリルクラッシャー。左手には龍騎のレリーフから取り出した青龍刀──ドラグセイバーを握り締め、オルタナティブ・ゼロの胴体に二刀流による交差する斬撃痕を刻む。
致命傷を受けたオルタナティブ・ゼロの体は光の粒子となって消失。その光は翳されたオーマジオウの掌へ吸収された。倒しても消滅することはなく還元するだけなのは分かっていた。オーマジオウがその気になれば何度でも復活出来る。
「やはり、か……」
グランドジオウはまたレリーフに触れずに龍騎の武具を召喚してみせた。平成ライダーたちの記憶をその身に宿したことでグランドジオウの能力が強まり、意志一つで召喚することが可能となっている。
「更にもう一歩、私の領域に踏み込んだということか……!」
オーマジオウから滲み出る感情はまさに喜びであった。グランドジオウが強くなることを心の底から祝福している。
「ならば──」
グランドジオウが強さを見せた様に、オーマジオウもまたグランドジオウに対して強さを見せるのが礼儀。
ここから先は少し容赦無く行く。
オルタナティブ・ゼロが倒されたのを見て、キルバスが体を震わせる。怒りや恐怖ではなく強敵との邂逅による歓喜によって。
オーマジオウが呼び出したライダーに自我は無い。しかし、元の変身者の人格に沿った行動を取る。キルバスの変身者は底知れない戦闘狂もしくは破壊に快楽を見出す人物であることが見て分かる。
キルバスは変身者の性格をなぞって走り出す。その手にグランドジオウと同じドリルクラッシャーを召喚しながら。
キルバスは叩き付ける様にドリルクラッシャーを振るう。グランドジオウのドリルクラッシャーがそれを防ぐ。
回転刃と回転刃の衝突は凄まじい火花と騒音を生み出す。
『カイゾクハッシャー!』
その騒音に紛れる様に発せられる音声と共にキルバスはもう片方の手にカイゾクハッシャーを握る。
腹部に付けたビルドドライバーとドリルクラッシャーから想像は付いたが、キルバスはビルドの装備を自由に創造が出来る能力を持っている。
錨と弓と電車を複合させたカイゾクハッシャーが、青い軌跡を生み出しながら斬撃を繰り出す。
グランドジオウはその攻撃もドラグセイバーで止める。キルバスはそのまま押し込もうとするがグランドジオウは微動だにしない。キルバスの能力は高いが、グランドジオウの能力はキルバスを上回る。
グランドジオウならばキルバスを倒せる──一対一での話だが。
「視野が狭いな」
「なっ!?」
いつの間にかオーマジオウがグランドジオウの隣に立っていた。グランドジオウのがら空きになっている脇腹に掌を押し当て体勢で。
次の瞬間、グランドジオウは下半身が消し飛ばされと錯覚してしまう程の掌打を受け、一直線に飛んで行く。
「そして考えも甘い。私がただ見ているだけだと都合よく思い込んでいるのだからな」
グランドジオウの視野の狭さを指摘しながらも、その声に蔑みは無い。だが足りない所を身を以って教える容赦の無い厳しさはあった。
地面と平行に飛んでいたグランドジオウは、喉元までせり上がってくる吐き気を押し戻しながらもその思考はどうやってオーマジオウと戦うかに集中していた。
『Ready Go!』
しかし、相手もまたグランドジオウが考えていることを知っている。故にその時間を与えない。
「うぐっ!」
飛んでいるグランドジオウの体に白い糸が巻き付き、空中で急停止させる。その反動で内臓と揺さぶられ、骨が外れそうになる。
白い糸はキルバスの両手から伸びており、キルバスはグランドジオウを捉えた糸を回し始める。
糸の動きに合わせて振り回されるグランドジオウ。キルバスの糸をどうにか引き千切ろうとするが、強靭な糸はグランドジオウの力でも一瞬では千切れない。
キルバスは振り回す速度が最高点に達すると、グランドジオウを頭上へ放り投げ、それを追って自らも跳躍する。
『キルバススパイダーフィニッシュ!』
投げ上げたグランドジオウよりも早く、高く跳び上がったキルバス。後から来たグランドジオウを待ち受けるのは、キルバスによるオーバーヘッドキック。
防御出来ないと悟ったグランドジオウは全身に力を巡らせ、硬直させる。少しでもダメージを抑える為の行動であった。
空中で宙返りしながら振り下ろされたキルバスの右足が、グランドジオウの肩に叩き込まれる。
通常ならば必殺に等しい一撃だが、グランドジオウの装甲はその一撃を受けても罅一つ入ることを許さない。
キルバスは右足の甲を肩に乗せたまま、グランドジオウを地面に目掛けて蹴り落とす。放り投げられた時以上の速度で落とされるグランドジオウ。しかし、グランドジオウの装甲ならば例え音速を超える速度で地面に叩き付けられても無事で済む自信があった。
そう、地面に叩き付けられてぐらいで済むのなら。
『ビルドの刻!』
音声と共に発生した点線グラフの形をした固定装置が、落ちるグランドジオウを左右から挟み込み、空中で身動きが取れない様に固定してしまう。
「これは!?」
グランドジオウが首を下に動かすと、点線グラフの先にはオーマジオウ。オーマジオウがグラフの上に乗ると、グラフがオーマジオウを加速させながら移動させる。
それだけではない。グラフの反対側にはキルバスも降りており、キルバスもまたグラフの上を加速して滑走しながらビルドドライバーのハンドルを回す。
『ボルテックフィニッシュ!』
『キルバススパイダーフィニッシュ!』
ビルドの力を込めたオーマジオウの右足は、赤と青の光を纏わせ二色のひかりを無限軌道の様に高速で動かし、キルバスは背部から四本の巨大鉤爪を生やす。
前後から挟み込み強烈無比なる力がグランドジオウへ叩き付けられようとする。
◇
魑魅魍魎に等しい怪人たちによって滅び行く世界を闊歩するのは破壊そのものであるもう一人の士。その目に映るものは何も無い。既に壊れ始めているこの世界にもう一人の士の興味を惹くものなど皆無であった。怪人たちですらもう一人の士の危険性を察知したのか誰一人近寄ろうともしない。
もう一人の士はただ彷徨う。敢えて目的を挙げるとすれば、この詰まらない世界に連れてきたスウォルツを完膚なきまでに破壊し尽くすこと。
そして、もう一つは──不意にもう一人の士は右へ曲がる。曲がるつもりなど無かったが、何故か自然と足がそちらに向かった。
何かが自分を操っている。それを察するもう一人の士。その気になれば纏わりつく不可視の力を破壊することも可能であったが、敢えて流されてみる。
誰が招き寄せているのかなど、心当たりは一人しかいない。
導かれるまま歩き続け、その先に待っていたのは──
「来たか」
「……やはりお前か」
もう一人の士にとってこの世界に於ける二つ目の目的である自分と異なる道を進んだ士が待ち構えていた。
無言で睨み合う両者。会話などという無駄なことはしない。最早、二人にとってやるべき事は決まりきっている。
同時に装着されるディケイドライバーとネオディケイドライバー。そして、掴み出される二枚のディケイドのライダーカード。
『変身!』
言うべき言葉は一つ。
『カメンライド・ディケイド』
応じる言葉も一つ。
ディケイドとディケイド激情態はソードモードのライドブッカーを手に走り出し、刃と刃を交える。
初撃を打ち勝ったのはやはりネオディケイドライバーでパワーアップをしたディケイド。ディケイド激情態を大きく仰け反らせながら後退させる。
『ファイナルアタックライド・ディ、ディ、ディ、ディケイド!』
最初から全開のディケイド。ライドブッカーの刃からマゼンタの剣身を延長させ、体勢を崩しているディケイド激情態目掛けて振るう。
広範囲を一気に両断出来るディケイドの斬撃。すると、ディケイド激情態は体勢を立て直すのではなく、逆にそこから更に仰け反った。
仰向けになっているディケイド激情態の顔面スレスレを通過していくマゼンタの刃。それが通り過ぎると同時にディケイド激情態はライドブッカーをガンモードにし、倒れながらディケイドを銃撃。
ディケイドは光弾をライドブッカーで撃ち落としていく。だが、そのせいでディケイド激情態との距離が詰められない。
ディケイド激情態は仰向けに倒れたまま発砲を続け、その間にカードをドライバーに挿し込む。
『アタックライド・エクスプロージョン』
迫る光弾を撃ち落とそうとするディケイド。ライドブッカーの刃が光弾に触れた瞬間、光弾はマゼンタに輝く魔法陣と化し、魔法陣から爆発が起こる。
「くっ!」
至近距離の爆発によって目が眩み、耳鳴りが生じる。それでもディケイドはライドブッカーを構えるが──
体に軽い衝撃が走る。ディケイドが目線を下に下げると、体に先程の魔法陣が浮き上がっていた。
光弾に乗せて打ち込んだ爆破の魔法。ディケイドはそれの威力を零距離で味わうこととなる。
「がはっ!」
魔法陣から発生した爆発によってディケイドは吹き飛ばされる。体に張り付けられた魔法陣から逃れる術など無かった。
地面を転がっていくディケイド。体外だけでなく体内も激しく痛めながらもそれを他者に感じさせない程素早く立ち上がる──
『アタックライド・スラッシュ』
──でなければディケイド激情態にあっという間に倒されてしまう。
ディケイドは自分に向けて振り下ろされる無数の斬撃を紙一重で躱し、同名のカードをドライバーに入れる。
『アタックライド・スラッシュ』
分裂する斬撃が衝突し合い、一振りで数度の剣戟が発生する。
複数発生する斬撃は攻撃であり、防御でもある。相手を攻めつつも、守るということを可能にした。
真正面から戦えばやはりディケイドの方が有利。互角に見える剣の打ち合いも徐々にディケイドの方が押していく。尤も、そうなることはディケイド激情態も知ってのこと。
遂にディケイドの剣がディケイド激情態の剣に押し勝ち、ディケイド激情態の体勢を横に流す。
そして、ディケイドの刃がディケイド激情態の体に食い込む──
『アタックライド・リキッド』
──と同時にディケイド激情態の体が液状化。刃を抵抗も無くすり抜けてしまった。
ディケイド激情態は液状となった体を動かし、ディケイドの背後に回る。そして、頭頂部目掛けてライドブッカーを振り下ろす。
ディケイドはすり抜けた刃を斬り返し、頭上に向けて振り上げてライドブッカーと頭部の隙間に刃を滑り込ませる。
予想を上回るディケイドの動きに、ディケイド激情態は僅かな動揺を見せた。
「お前の考えを俺が読めないと思ったのか?」
ディケイドもまた旅をして様々なライダーたちと出会って来た。ディケイド激情態がそれらを倒して力を得た様に、ディケイドもまた旅の出会いによって力を得たのだ。
ディケイドは背後に蹴りを放つ。ディケイド激情態はそれを腹部に受け、大きく後退させられた。
このタイミングでディケイドは一気に仕掛ける。
ディケイドが取り出すのはケータッチ。それを見たディケイド激情態は怪訝な雰囲気を出す。
『クウガ、アギト、龍騎、ファイズ、
ケータッチに浮かぶ各ライダーの紋章をなぞると、最後にディケイドの紋章を押す。
『ファイナルカメンライド・ディケイド!』
マゼンタから銀の装甲へと変わり、胸部に連なって並ぶクウガからキバまでのライダーカード。
かつて加古川飛流の力で改変された世界で見せたディケイドの強化形態コンプリートフォーム。だが、今回はディケイドが最初に旅をしたライダーたちの姿によるもの。ある意味ではディケイドにとって原点の力。
ディケイド
仮面ライダーディケイドCFの姿に、ディケイド激情態は思わず呟く。
「……何だその姿は?」
この言葉に今度はディケイドCFの方が怪訝に思う。様々な世界を旅しているのならばいずれは手に入る力だと思っていたからだ。そうなると、ディケイド激情態はかなり異なる道を歩んで来たのが想像出来る。
ディケイドCFは疑問を抱くまま、クウガの紋章に触れる。
『クウガ!』
『カメンライド・ライジングアルティメット』
胸部に並ぶカードが稲妻の様な角を生やしたクウガの姿となり、ディケイドCFの隣にカードに描かれたクウガが現れる。
黒を地にした装甲だが、手足と胸部は煌めく金の装甲に置き換わっている。赤眼の上には四本の角。カードに描かれた通り、雷をそのまま埋め込んだかの様な見た目をしていた。
クウガの最終形態であるアルティメットフォームとは異なる姿。ディケイドCFの旅の戦友であったもう一人のクウガが変身したイレギュラーの形態──ライジングアルティメットフォーム。
本来ならばアルティメットフォームが召喚されるが、ライジングアルティメットフォームが誕生した後にどちらも召喚出来る様になっていた。
「また知らない奴を……」
ディケイド激情態は苛立った様子で吐き捨てる。ディケイドCFは段々とこのディケイド激情態がどんな道筋を歩んで来たのかが見えてきた。見えてきたが、手加減するつもりは全く無い。
『ファイナルアタックライド・ク、ク、ク、クウガ!』
カードを入れる動作する全く同じ動きをするディケイドCFとライジングアルティメットクウガが、同時に跳躍。
空中で前方宙返りをしながら両足を突き出す。ライジングアルティメットクウガは両足から眩い雷光の輝きを、ディケイドCFはマゼンタの雷光を発する。
同時に放たれる二つの必殺技。だが、ディケイド激情態はそれから逃げようとはせず、真っ向から打ち落とそうとする。
ディケイド激情態がライドブッカーを開くとそこから複数のカードが飛び出し、ドライバーの中へ飛び込む。
『アタックライド・サンダー』
『アタックライド・ファイアー』
『アタックライド・ブリザード』
『アタックライド・トルネード』
仮面ライダー剣の四属性の力がライドブッカーの刃に宿る。しかし、それだけでは足りない。故に更にそれに力を重ねる。
『アタックライド・サンダー』
『アタックライド・エクスプロージョン』
『アタックライド・ブリザード』
『アタックライド・グラビティ』
仮面ライダーウィザードの力も足されたことで、ライドブッカーは虹色の輝きを放つ。
『ファイナルアタックライド・ディ、ディ、ディ、ディケイド!』
八つの力にディケイド激情態の力を加えた斬撃が、ディケイドCFたちを滅ぼす為に振るわれる。
『おおおおおおおおっ!』
激突する力と力。一瞬の沈黙の後、それは巨大な爆発を生み出した。
遠くの彼方まで響き渡る爆発音。巻き上がる塵と土煙。暫くそれが残っていたが、やがて消え去ると、地面は大きく抉れて巨大なクレーターが露わになる。
そのクレーター内部ではディケイドCFとディケイド激情態が睨み合っていた。
両者共に大きなダメージを負っていたが、それをおくびにも出さない。されどディケイドCFの損傷した装甲やディケイド激情態の剣身の折れたライドブッカーを見れば容易に想像が出来る。それでも弱った姿を見せないのは彼らのプライド故の行動であった。
ディケイド激情態は舌打ちをして半壊したライドブッカーをベルト横に戻す。もう武器として使えない。
ディケイド激情態はカードを出し、代わりとなる武器を召喚した。だが、それはディケイドCFに思いもよらない動揺を与える。
『アタックライド・キバーラサーベル』
柄部分に白い蝙蝠の片羽をあしらえた片刃剣。特筆すべき能力は無いが、ライドブッカーと使い勝手が似ているという点のみで選ばれたただの武器──少なくともディケイド激情態の視点では。
「お前、それは夏みかんの……!?」
ディケイドCFはその剣を見た途端、凄まじい剣幕を見せた。ディケイド激情態にとってその反応は意外なもの。
「これがどうかしたのか?」
何の思い入れもない様にキバーラサーベルを軽く振り回すディケイド激情態。
「お前は……夏みかんすらも倒したのか……」
夏みかんとは彼がとある人物を呼ぶときのあだ名。彼にとって最大の理解者と呼べる光夏海に付けたものである。
彼女もまた仮面ライダーに変身することができ、今のディケイド激情態が持つ武器はまさしく彼女が持っていた武器である。
「夏みかん……? 誰だそいつは?」
その一言でディケイドCFは完全に理解した。このディケイド激情態がどんな旅を歩んで来たのかを。
「お前は……夏みかんやユウスケに出会わず、独りで旅を続けた俺なんだな……」
ただ孤独に旅を続けた結果、破壊者という名に圧し潰された存在。それが目の前に立っているディケイド激情態。
「それがどうした? 俺は全てを破壊する。ただそれだけの存在だ」
「違う。俺たちが破壊するのは人々の自由を奪うものだ。そして、破壊し終えた後に何かが生み出されることを、芽吹くことを信じている。俺もかつては破壊者となり全てを破壊した。でも、それは後に託せる者が居たからだ。後を託せる者がいないお前の破壊など無意味に過ぎない!」
破壊の後に生まれる創造が伴わない破壊など無意味とディケイドCFは断じる。その台詞を聞いて、ディケイド激情態は鼻で笑う。
「ふん。ただの戯言だ」
「お前には、そんな風にしか聞こえないだろうな」
完全に道を違えた末に誕生したディケイド激情態。それを止められるのは、同じ破壊者を持つディケイドCFしかいない。
「お前を──破壊する!」
「やってみろ……!」
互いの存在を掛けた破壊の戦いは過熱していく。
そして、もう一方でも──
◇
「やあ、兄さん。待っていたよ」
「おや? 大樹じゃないか」
腰を下ろしていた海東が立ち上がる。彼の手には白ウォズから盗んだノート型のデバイスを持っていた。
『門矢士と海東大樹、もう一人の士と海東純一に出会う』
可能性のある未来に導くデバイスに書かれた内容通り、海東は兄と出会った。
「何か導かれる様にして動かされていたのは分かったが、やはりお前の仕業か。兄を思い通りに動かそうなんて悪い弟だ」
相変わらず張り付けた笑顔のまま一切の負の感情を見せない純一。
「……少し見ない間に随分と賑やかになったじゃないか、兄さん」
純一の背後に群がるジョーカーたちを指して言う。
「はははは。いつの間にか家族が増えてしまったよ。さあ、皆挨拶をしなさい。お前たちにとって弟の様な存在だ」
「止めてくれないか? 不愉快だ」
純一の本気にしか聞こえない言葉に、海東は拒絶の言葉を吐き捨てる。
「そうか? 家族が増えるのはいいことじゃないか」
「──それは本気で言っているのかい? 兄さん」
海東の問いに答えず、純一はただ笑うだけ。
すると、純一が片手を上げる。海東は警戒するが、それに反してジョーカーたちは海東を無視してバラバラに行動し始めた。
「さあ、好きなだけ暴れて来い」
瞬く間に散っていくジョーカーたち。海東は兄の指示に不審を抱く。
「全員で来ないのか?」
「──ふっ」
思わず、といった感じで純一は噴き出した。彼にとって海東の質問は的外れ過ぎたのだ。
「分かっていないなぁ、大樹。お前は、私のこの手で倒さなければ意味がないんだ。誰にも邪魔はさせない。実の兄である私だけがお前の命を奪うことを許される」
張り付けられた笑みが歪む。純一の本来の笑みが仮面の下から突き破るかの様に。
「お前も遠慮はいらない。何故なら、私を殺す権利もまたお前が持っているのだから。さあ、兄弟仲良く殺し合おう! きっと愉しいぞ?」
海東は目の前にいる純一には、彼の知っている兄純一の持っていたものが欠片も残っていないことを改めて知った。
海東純一の皮を被った怪物。それに過ぎない。
ならば、人の心を捨てきれなかった兄の名誉の為に海東が成すべきことは一つ。
「変身!」
ネオディエンドライバーから撃ち出される複数のプレート。発生した三つの光が海東へ重なり合い、装甲を形成。
『カメンライド・ディエンド』
ディエンドへ変身すると間髪入れずに発砲。
『OPEN UP』
しかし、純一がバックルを開いたことで現れた光の壁が全弾防いでしまう。
「変身」
純一が光の壁を通過してランスへと変身し、ランスラウザーを振り回す。ネオディエンドライバーから発射された光弾は、ランスラウザーによって次々と打ち落とされていく。
ただの銃撃では効果が薄いと思ったディエンドは、ネオディエンドライバーにカードを装填しようとするが──
『OPEN UP』
バックルを開閉することで再び光の壁が召喚され、ディエンドに衝突することでカード装填を妨害する。
「くっ!」
体勢を立て直そうとするディエンドの肩が強い力で掴まれる。
眼前にはランスからラルクへと再変身した兄がディエンドの胴体にラルクラウザーを押し当てていた。
密着した状態では逃れることは出来ない。ならばディエンドの取るべき手段は──同じくラルクの体にネオディエンドライバーの銃口を押し当て、零距離から発砲。それを待っていたかの様にラルクも零距離から光矢をディエンドに射ち込む。
「くうっ!」
「ははははははは!」
耐えるディエンド。笑うラルク。零距離射撃による我慢比べ。引き金を引く度に互いの体から火花が飛び散っていく。
引き金を引く回数が二十を超えた時、耐え切れなくなったのか互いに吹き飛ぶ。
「うわあっ!」
「あははははっ!」
仰向けになって地面に倒れる両者。ディエンドは撃たれた箇所を押さえながら立ち上がり、ラルクは何事も無かった様に平然と立ち上がる。
「今のは良かったぞ、大樹。前よりも容赦が無かった。私への躊躇いが消えたな」
ディエンドが本気で自分を倒そうとしてくることを喜ぶ。
「兄さん……貴方は僕が必ず倒す!」
啖呵を切るディエンド。しかし、ラルクはそれを聞いて失笑する。
「……何が可笑しいんだい?」
「ああ、すまない。その台詞を聞くのは実は二度目なんだ。一度目のお前はそう言い切って倒された。まさか、もう一度聞く時が来るとは思わなくて、ね」
ラルクはバックルを開閉し、光の壁を三度出現させる。
『OPEN UP』
ラルクは光の壁を通過し、グレイブへ姿を変えた。
「ならこの姿がお前を相応しいのかもしれないな。もう一人のお前の命を奪ったこの姿が」
グレイブはグレイブラウザーを抜く。禍々しく、そして妖しく輝くグレイブラウザーの黄金の刃にディエンドの姿が歪んで映った。
そう言えばジオウの新作で発表されましたね。予想されていましたが、ディケイドが出るみたいで。
となると、色々と期待しちゃいますね。
先にどちらが見たいですか?
-
IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
-
IFゲイツ、マジェスティ