ゲイツリバイブ、ゼロノス、バロンの最大火力を三つ同時に受けたアナザーディケイドVE。膨れ上がったエネルギーによる爆発の中に姿を覆い隠される。
普通ならば倒していてもおかしくない。だが、この場にいる五人はそんな楽観的な考えを持つことが出来なかった。
多くの戦いを経験している彼らだからこそ倒した時の手応えというものを理解している。
今の彼ら全員がその手応えを感じていなかった。
不意にアナザーディケイドVEを拘束しているチェイサーマッハのテイルウィッパーとビーストのカメレオマントから感触が消えた。
今の今まで巻き付いていたのに、急にアナザーディケイドVEを縛り付ける感触が無くなる。逃げたのかと思った矢先、突然テイルウィッパーの鞭とカメレオマントの舌が崩壊し始めた。
「何だぁ!?」
「何っ!?」
アナザーディケイドVEに触れていた箇所から侵食する様に崩れ続け、本体まで侵そうとしていたので、チェイサーマッハとビーストを届く前に武装を解除する。
「おい!」
ビーストが異変を三人に報せようとした時、その体から火花が飛び散る。
「ぐあああっ!」
斬られた。衝撃と共に吹き飛ばされながら、ビーストはそう実感する。
「離れ──」
最後まで言い切れずにビーストの建物の壁に突っ込んでいく。
「仁──」
チェイサーマッハがビーストに駆け寄ろうとするが、その動きが止まる。背後から脇腹を貫くマゼンタの光刃によって。
刺し貫いた光刃がチェイサーマッハを嬲る様にゆっくりと抜かれていく──が、その光刃をチェイサーマッハは何の迷いも無く両手で掴む。
「逃すかっ……!」
光刃を自らの体に固定させ、抜けない様にする。ロイミュードがどれだけ人間に近い感覚を持っているのか分からないが、チェイサーマッハの絞り出す様な声を聴けば無痛はあり得ないことが分かる。
「今だ……! 攻撃しろ……!」
チェイサーマッハは自らの犠牲を省みることなく叫ぶ。姿の見えないアナザーディケイドVEは今、確実にチェイサーマッハの背後に立っている。攻撃するには今しかない。
だが、情に厚いゲイツリバイブと心優しいゼロノスはチェイサーマッハに攻撃しろと言われても躊躇してしまう。短い時間ながらも共に戦った仲間ごと攻撃することを即座に決断出来なかった。
しかし、他の二人とは違い、この男には一瞬の迷いも無かった。
『レモンエナジー!』
限界まで弦が張られたソニックアローを構えるバロン。
「待て!」
ゲイツリバイブの制止も聞かずにソニックアローから光矢を射る。
真っ直ぐと飛んで行く光矢がチェイサーマッハごとアナザーディケイドVEを貫く──かと思いきや、チェイサーマッハに接触すると同時に矢はレモンの形に広がって内部に二人を閉じ込めてしまう。
「そういうことか!」
相手の逃げる場所を制限してしまえば、さっきより確実にアナザーディケイドVEを狙うことが出来る。
ゲイツリバイブとバロンはドライバーに手を伸ばす──が、アナザーディケイドVEもまた大人しく拘束される相手では無かった。
チェイサーマッハの背後に銀色のオーロラが出現する。すると、チェイサーマッハに突き刺していた光刃が消え、同時にオーロラも消える。透明な為、アナザーディケイドVEの動きの詳細は分からないが、一斉攻撃される前に急いでオーロラの中へ逃げ込んだ模様。
光刃を抜かれたチェイサーマッハが膝を突く。すぐにでも駆け寄りたいが、アナザーディケイドVEの存在がそれを許してはくれない。行けば確実に隙を見せることになる。チェイサーマッハもそれが分かっており、こちらへ来ない様に片手を突き出し制止を促す。
ゲイツリバイブたちは息を潜めてアナザーディケイドVEが出て来るのを待つ。
こちらを焦られるつもりなのかアナザーディケイドVEは中々姿を現さない。
バロンはソニックアローを逆手に握ったまま、ゲイツリバイブの方を見る。何か意図が込められた視線であり、ゲイツリバイブはその視線に気付くと無言のまま見つめ返す。
ゼロノスは先に見つける可能性を少しでも上げる為に前方を二人に任せ、背後の警戒をしようとする。だが、その前にゲイツリバイブがさり気なくゼロノスのマントを引っ張る。
ゼロノスを止める行為に何か意味があると察し、ゼロノスは背後を見るのを止めた。
アナザーディケイドVEが姿を消して三十秒が経とうとしていた。
それは刹那の行動。バロンはソニックアローの向きを背後に向け、弦を張ると正面を向いたままの背面射撃。
銀色のオーロラから出現した直後のアナザーディケイドVEは、奇襲する筈が逆に奇襲を受けたことで驚いたまま光矢を弾いてしまう。
そのタイミングでゲイツリバイブはジカンジャックローをアナザーディケイドVEの腹部に打ち込み、ゼロノスが大剣状態のゼロガッシャーを肩に叩き込む。
「むうっ……!」
まるで読んでいたかの様なゲイツリバイブたちの動きに、アナザーディケイドVEは唸らざるを得なかった。
何故読めたのか。その疑問がアナザーディケイドVEの内部に湧くが、同時にゲイツリバイブたちの攻撃を与える隙も生む。
ゼロノスは両肩のキャノン砲から光弾を連続して発射し、アナザーディケイドVEの顔面に命中させる。
視界を奪われたアナザーディケイドVE。その間にゲイツリバイブはジカンジャックローのボタンを連続して押し込む。
『のこ切斬!』
周囲の空気が熱を帯びる程の回転を起こすジカンジャックロー。それを押し当てられていたアナザーディケイドVEは弾ける様にして吹き飛ばされる。
「ぬううう……!」
アスファルトを削りながら力尽くで停止するアナザーディケイドVE。足元には轍の様に焦げた跡が残り、煙も立ち昇っている。
「──よく気付いたな」
余裕を持った態度で奇襲に奇襲で返した三人に賞賛の言葉を送る──表面上は。
「不意打ちは弱い奴や卑怯者の考える手、だったな?」
「ふっ」
ゲイツリバイブがバロンに訊くと一笑する。その一瞬の笑いにはアナザーディケイドVEへの嘲笑が確かに混じっていた。
「俺が、弱者か卑怯者とでも言うつもりか……? 最強の力を持つこの俺を?」
アナザーディケイドVEの声に明らかな怒りが混じる。最強の力を手にした彼にとって聞き捨てならない台詞であった。
「強くなる為の手段が実の妹頼りだったり他人頼りだったりする時点で最強など片腹痛いな! それがお前自身の本当の強さと言えるのか? お前はただの卑怯者だ!」
バロンの容赦の無い糾弾にアナザーディケイドVEは細かに体を震わせ始める。
「黙れ……」
「図星を突かれて言う台詞がそれか。王になる男の台詞は立派だな」
「黙れと言った筈だ!」
バロンの皮肉にアナザーディケイドVEから余裕が消え去り、名に相応しい激情が露わとなる。
しかし、それはゲイツリバイブたちにとって狙い通りであった。彼らの目的はアナザーディケイドVEを倒すことではない。アナザーディケイドVEをこの場に引き付けておくこと、時間稼ぎである。
感情が昂り、ゲイツリバイブたちを倒すことにしか思考が回らなくなるのは逆に有り難い。少なくとも、ゲイツリバイブたちが全滅するまでは引き留めておくことが出来る。
「おおおおおおおお!」
アナザーディケイドVEが激情のまま咆哮を上げると姿を消した。透明化かと思いきや、次の瞬間にバロンが吹き飛ばされる。
「ぐうっ!」
透明化ではなく高速移動によって目では追えない速度で移動しているのを把握するゲイツリバイブ。その瞬間に今度はゼロノスが地面に叩き伏せられ、アスファルトが大きく割れる。
ゼロノスが叩き伏せられると同時にゲイツリバイブは全身に力を込めて強張らせる。アナザーディケイドVEが次の標的とタイミングはゼロノスが身を以って教えてくれた。
ゲイツリバイブの予想通り、胸部に強い衝撃を受け、足が地面から離れる。体に力を込めていたことで剛烈の防御力は更に増しており、痛みを与えられても即座に次の行動に移ることが出来た。
『スピードターイム!』
ゲイツリバイブは宙に浮いた状態のままゲイツリバイブライドウォッチを百八十度回転させ形態を変える。
『リバイ・リバイ・リバイ! リバイ・リバイ・リバイ! リバ・イ・ブ! 疾風! 疾風!』
頑丈で分厚い胸部装甲が展開して両翼となり、橙から青へ色が変わる。右手に持っていたジカンジャックローを左手に持ち換え、モードも切り替える。
『スピードクロー!』
のこモードからつめモードへと変わるとゲイツリバイブ疾風は高速の世界へ突入。高速世界内では、侵入してきたゲイツリバイブを穿つ様に睨むアナザーディケイドVEが待ち構えていた。
「ゲイツ……!」
「どんなに強大な力を振るおうと、お前の無様さは消えんぞ!」
「お前もほざくかぁぁぁ!」
刹那の時間の中でマゼンタの光刃と青い光爪が激突。感情のままに振り回されるアナザーディケイドVEの刃を、ゲイツリバイブはジカンジャックローを巧みに使い的確な動きで逸らしていく。
首を狙う横薙ぎを下から爪を当てることで軌道を変え、刃の下へ潜り込みながらジカンジャックローをアナザーディケイドVEのベルトに突き立てる。しかし、三人のライダーたちの必殺技を受けても通常通りに動けるアナザーディケイドVEの頑丈さは生半可なものではなく、ジカンジャックローを爪先はベルトに一ミリも食い込ませることが出来ない。
「ふん!」
突き上げられるアナザーディケイドVEの膝。ゲイツリバイブは咄嗟に上体を仰け反らせる。膝が顎先ギリギリを通り過ぎていく。軽く触れても顎が千切れ飛びそうな威力が込められているのを肌で感じた。
仰け反ったゲイツリバイブはそのまま後方宙返りをしてアナザーディケイドVEと距離をとる──つもりであったが、それを見越していたアナザーディケイドVEはゲイツリバイブの跳躍と共に一気に距離を詰めており、ゲイツリバイブの着地に合わせて横蹴りを放つ。
「くっ!」
ゲイツリバイブは蹴りと自分との間に辛うじてジカンジャックローを挟むことができ、アナザーディケイドVEの蹴りをそれで受け止めようとする。
アナザーディケイドVEの足裏がジカンジャックローの爪に触れると二本ある内の一本が折られ、ゲイツリバイブの脇腹に蹴りが打ち込まれる。
「ぐあっ!」
息が詰まる。押し込まれる衝撃で全身を巡る血液が出口を求めて噴き出すかと思った。だが、ゲイツリバイブはそれを耐えながら体を捻ってアナザーディケイドVEの蹴りを脇腹からずらし、踏み込み残った爪でアナザーディケイドVEの顔面を引っ掻く。
目の真下を滑っていくジカンジャックローの片爪。実際には無傷だが、いくら桁外れの硬さの外装を持っていようと重要器官である目への攻撃を本能的に嫌がり、ゲイツリバイブから数歩後退して立ち止まってしまう。
アナザーディケイドVEの動きに途切れが生じる。それによって動く者がいた。
「くっ……おおおおお!」
腹部を貫かれていたチェイサーマッハが傷口から火花を噴き出させながら立ち上がる。
「トリプル、チューン……!」
連続してブレイクガンナーへ装填されるチェイサーバイラルコア。
『TUNE・CHASER SPIDER TUNE・CHASER COBRA TUNE・CHASER BAT』
ワンテンポ遅れて装填されたバイラルコアの名を読み上げていくブレイクガンナー。その間にチェイサーマッハの右腕には大型クロー『ファングスパイディー』が形成され、そこから液体金属鞭『テイルウィッパー』が伸び、チェイサーマッハの背部に展開された両翼『ウィングスナイパー』が二つの武器に合わさり、複合武器『デッドリベレーション』となる。
デッドリベレーション全体が紫のエネルギーを帯びて輝き出す。三つの武装が合わさって生み出される力は、相手を原子レベルまで分解してしまう。
「はあああ!」
デッドリベレーションから発射される一条の光線。アナザーディケイドVEは危険を察知したのかその場から更に一歩後退してしまった。
アナザーディケイドVEの真横から伸びてきた光線がアナザーディケイドVEの腕に掠る。
「ぐおおおっ!」
アナザーディケイドVEの腕から白煙と共に一筋の裂傷が生じた。高い防御力を持つアナザーディケイドVEに初めて傷らしい傷を与えた瞬間である。
「死に損ないのガラクタ風情が……!」
アナザーディケイドVEが再び高速移動を開始し、視界から消える。しかし、チェイサーマッハは冷静な動きでマッハドライバー炎のスイッチを連続で叩く。
『ズーットマッハ!』
自分以外が停滞しているに等しい空間。アナザーディケイドVEが指先から光弾を撃つ。同じ領域に入ったチェイサーマッハはデッドリベレーションを盾にして防ぐが、一発一発の威力はかなりのものであり、デッドリベレーションに着弾する度に金属が悲鳴の様な軋みを上げ、亀裂が生まれる。
このままアナザーディケイドVEが押し切るかと思いきや、その攻撃は中断された。
「たあああ!」
チェイサーマッハを助ける為にゲイツリバイブがアナザーディケイドVEの横腹に蹴りを打ち込み攻撃を中断させたのだ。
「鬱陶しい!」
攻撃を受けながらもアナザーディケイドVEが掌打をゲイツリバイブは鳩尾に叩き込む。剛烈とは違い装甲が薄くなっている疾風には強烈な一撃であり、衝撃が背中まで突き抜け意識が飛びそうになる。
「何っ!?」
しかし、ゲイツリバイブは途切れそうになる意識を保ち、アナザーディケイドVEの腕を掴んだ。
「今だっ!」
『イッテイーヨ! フルスロットル!』
飛び込んで来るチェイサーマッハ。片手にはシンゴウアックスが握られており、既にエネルギーのチャージが済んでいる。
「うおおおおお!」
シンゴウアックスの刃がアナザーディケイドVEの肩口へと突き立てられた。そして、シンゴウアックスの刃を一気に下へ振り下ろす──ことが出来なかった。硬すぎるアナザーディケイドVEの身体が刃を止めてしまう。
「無駄だ!」
アナザーディケイドVEが刺さっているシンゴウアックスを掴む。禍々しい光が伝っていきシンゴウアックスが砂の様に崩れてしまう。
「ッまだだ! トリプルチューン!」
デッドリベレーションの爪をアナザーディケイドVEに直接突き立てる。逃げられない様に鞭が首にも巻き付いた。
紫色に輝くデッドリベレーション。蜘蛛の口を模した爪の間からアナザーディケイドVEを分解する為の光線が撃ちこまれる。
──すぐに違和感を覚えた。密着状態から光線を照射しているのにアナザーディケイドVEを貫通する気配が無い。
「馬鹿な!?」
チェイサーマッハは気付いてしまった。デッドリベレーションを密着させてあるアナザーディケイドVEの体表に銀色のオーロラが張り付けられているのを。
デッドリベレーションが放った光線はオーロラによって別の彼方へ送られていたのだ。
「残念だったなぁ!」
アナザーディケイドVEがデッドリベレーションに触れる。マゼンタと黒が混ぜ合わせた輝きが侵食し、全てを覆うとブレイクガンナーごとデッドリベレーションを破壊してしまう。
「ぐうっ!」
全ての武器を破壊されたチェイサーマッハ。だが、それでも食い下がろうとするが──
「ふんっ!」
──アナザーディケイドVEのベルトから黒色の波動が周囲に放たれ、ゲイツリバイブ、チェイサーマッハは吹き飛ばされてしまう。
地面に何度も体を打ち付けながら転がっていくゲイツリバイブとチェイサーマッハ。
高速世界から強制的に排除された二人を見てゼロノスは偶々近くまで来ていたゲイツリバイブを介抱する。
「大丈夫か!? 酷い傷だ……」
ゲイツリバイブの装甲は無数の罅が入った状態であり、アナザーディケイドVEの攻撃を間近で受けた結果である。
「俺よりも、チェイスを……!」
同じ位置で攻撃を受けたチェイサーマッハの方を心配する。そもそもあの攻撃を受ける前にアナザーディケイドVEによって深手を負わされている。機械生命体であるロイミュードであっても無視出来るダメージでは無い。
しかし、ゲイツリバイブの心配に反してチェイサーマッハは立ち上がろうとしていた。だが、損傷は隠せるものではなく傷口から火花が鮮血代わりに零れ出る。
「止めろ……! 立つな……!」
これ以上戦えば無事では済まない。ゲイツリバイブはチェイサーマッハを止めようとする。
「お前は……仮面ライダーだが、同時に人間だ……。人間を守ることは、俺にとっての本能であり使命だ……!」
それに呼応するかの様に建物の壁を突き破ってビーストが姿を現す。
「カッコいいこと言うじゃねぇか……!」
そして、バロンもまた傷付いた体を押してゲイツリバイブたちの守る様に前に出る。
「俺もこの程度で屈するつもりは無い……!」
バロンはゲネシスドライバーのレバーを二回押し込み、ビーストは指輪をドライバーの側面に嵌め込み、チェイサーマッハはマッハドライバー炎のスロットを上げ、再び押し込む。
『レモンエナジースパーキング!』
『キックストライク! ゴー!』
『ヒッサツ! フルスロットル! マッハ!』
三人は同時に跳躍。バロンの前方にアナザーディケイドVEへ連なる輪切りレモン型のエネルギーが並び、ビーストは出現した金色の魔法陣の中へ前方宙返りをしながら飛び込み、チェイサーマッハはマッハドライバー炎から噴き出す虹色のエネルギーを風の様に纏う。
『はあああああっ!』
バロンは連なるレモン型のエネルギーを通り抜けながらその右足にレモンイエローの光を集束させ、ビーストが魔法陣を通り抜けると右足に魔力によって獅子の頭が形成され、チェイサーマッハの背後に仮面ライダーマッハと仮面ライダーチェイサーの幻影が現れ、それがチェイサーマッハと一つになり、右足の虹色の輝きが極限に達する。
三方向からアナザーディケイドVEに迫る必殺のキック。だが、アナザーディケイドVEはそれを見て憤怒する。
「舐めるなぁぁぁ!」
昂るアナザーディケイドVEの激情が彼の力を高めていく。最強の能力を手に入れたという驕りと余裕が今までの彼の能力に制限を掛けていたが、ゲイツリバイブたちの戦闘によりその驕りと余裕は剥ぎ取られ、その下にある激情が剥き出しになっていた。
しかし、これこそがアナザーディケイドVEの正しい能力の使い方である。感情が昂る程、怒れば怒る程に力が湧き続けるのだ。
アナザーディケイドVEの身体が光ると二体の残像が飛び出し、それが実体となる。三体となったアナザーディケイドVEらはベルト前で両手を交差する動きをする。それは、ディケイドがドライバーを操作する時の動きと酷似していた。
アナザーディケイドVEたちからバロンたちへと伸びるカード型のエネルギーが出現。マゼンタ、黒の輝きを放つそれに向かってアナザーディケイドVEらが飛び込んだ。
通過する度にカード型のエネルギーがアナザーディケイドVEに吸収されていき、吸収されたエネルギーは、アナザーディケイドVEの突き出された右足へ溜め込まれていく。
空中で激突する三人のライダーたちのキックとアナザーディケイドVEたちのキック。
衝突し合うエネルギーが爆発を巻き起こす。
「くっ!」
爆風を浴び、思わず顔を背けてしまうゲイツリバイブたち。空中で起こる爆発を突き破って何かが落下してくる。
「がはっ!」
「ぐうっ!」
変身が解除されて戒斗とチェイス。傍らには砕けたドライバーの破片が散らばっている。
それに続く様にして降り立つのはアナザーディケイドVE。分身は解除され、全身から煙が立ち昇っているが戦闘に支障をきたす様な傷は見えない。
キック同士の競り合いはアナザーディケイドVEの勝ちで終わったのだ。
着地したアナザーディケイドVEはすぐに戒斗とチェイスの方を見ると、その掌を彼らに向ける。
「止めろぉぉぉ!」
その腕にビーストがしがみつき、二人を守ろうとする。変身も解除されず、ドライバーも無事なビースト。アナザーディケイドVEの怒りが戒斗とチェイスの二人に向けられていたせいでアナザーディケイドVEのキックの威力もビーストと相殺する程度まで抑えられていたせいである。
「すまない! 俺も行く!」
一人で戦おうとするビーストを放ってはおけずゼロノスがゲイツリバイブを置いてアナザーディケイドVEの許へ走り出す。
ビーストを鬱陶しそうに振り払うとするアナザーディケイドVEだが、ビーストは思った以上に粘り、中々離すことが出来ない。
そこに走り込んで来るゼロノスの姿。アナザーディケイドVEの内では今も激情が渦巻いているが、それに反して行動は非常に適切なものであった。
ゼロノスの前方に銀色のオーロラを出現させ、突っ込んでくるゼロノスをオーロラの中に入れてしまう。すかさず自分の背後に出口となるオーロラを発生。オーロラから出た直後のゼロノスは急にアナザーディケイドVEたちを見失い、混乱した様子で左右を見回している。
この間にアナザーディケイドVEはビーストの背に肘を打ち下ろし、前のめりになった所を膝で腹を突き上げる。
「があっ!」
うめき声と共に崩れ落ちるビースト。そのうめき声を聞いてゼロノスは背後にアナザーディケイドVEが居ることに気付く。
だが、気付いた所で遅かった。アナザーディケイドVEは振り向き様に右足を振り上げる。その軌道を告げる様にして並ぶカードの群。ゼロノスの攻撃が来ることが分かり咄嗟にゼロガッシャーを振るうが──
「遅い!」
アナザーディケイドVEの後ろ回し蹴りが胴体に直撃。ゼロノスは錐揉みしながら宙を飛び、地面へと落下。変身が解除され侑斗とデネブが横たわる。
とどめを刺すべく動き出すアナザーディケイドVE。
「待て! スウォルツ! ぐうっ!」
ゲイツリバイブはそれを止めようとするがダメージが大きく、体が思う様に動かない。
「大人しくしていろ。次は──ぬう……」
アナザーディケイドVEが足を止める。止めざるを得なかった。足元にしがみついて止めるビーストのせいで。
「邪魔をするなぁ!」
アナザーディケイドVEがビーストの顔を蹴り飛ばし、無理矢理引き剥がす。
「く、そ……!」
仰向けになって呻くビースト。顔面を蹴られたせいですぐに立ち上がれない。そんなビーストを見下ろすアナザーディケイドVE。
「そんなに死にたければお前から始末してやる」
「……へっ」
アナザーディケイドVEの恫喝をビーストは鼻で笑う。
「──何が可笑しい?」
「ピンチは、チャンス……ここから、どう大逆転して、やろうかと思っただけだよ」
「減らず口を……! お前に待っているのは絶望だけだ!」
「よせぇぇぇ!」
ビーストの頭部を砕く為に振り下ろされるアナザーディケイドVEの踵。ゲイツリバイブが叫ぶが、アナザーディケイドVEが止まる筈も無い。
「──何っ!」
踏み下ろしたアナザーディケイドVEの踵がビーストに触れる前に止まる。ビーストを守る様に張られた赤い魔法陣が盾となって防いでいた。
その魔法陣の中心には罅割れたウィザードライドウォッチ。
「……やっぱり、お前は来るよな、晴人」
魔法陣から炎が噴き出し、アナザーディケイドVEを押し退ける。
「ぐううっ!」
「あれは、ライドウォッチか!?」
ビーストが間一髪助かったこと、そして、それがライドウォッチによるものだと分かりゲイツリバイブは驚く。
ビーストはウィザードライドウォッチを掴みながら立ち上がる。
「そんな壊れかけのライドウォッチで何が出来る!」
「分かってねぇなー。これは壊れかけのライドウォッチなんかじゃねぇ」
ビーストはウィザードライドウォッチのスイッチを押す。
「これは、最後の希望だ」
『ウィザード!』
ウィザードライドウォッチが光と化し、その光はビーストの両手を覆う。光は巨大な竜の爪──ドラゴヘルクローとなり、ビーストの腰回りに黄色のローブが追加される。
ウィザードの力を得たビーストの姿。仮面ライダービースト・ウィザードスタイル。
戦友との絆がライドウォッチを引き寄せ、最後の力を与えてくれた。だが、それはビーストだけではない。
他のライダーたちもまたそれぞれの縁、絆がある。
◇
倒れ伏せながら侑斗はホルダーの中身を確認する。案の定というべきかホルダー内にゼロノスカードは無かった。侑斗の思っていた以上にこの世界の歴史崩壊の影響は大きい。ゼロノスカードが無い今、侑斗は変身することが出来ない。
「くそっ……!」
「侑斗……」
悔しそうに地面を叩く侑斗。彼を近くで見て来たデネブにはその気持ちが痛いほど分かった。
「ここまでなのか……!」
その時、侑斗の目の前に光る発行体が現れる。その光に目を眩ませる侑斗たちであったが、光はすぐに消えた。
「これは……!」
光が消えた後に電王ライドウォッチが置かれてあった。それが何を意味するのか、侑斗たちはすぐに理解する。
「野上……借りるぞ!」
『電王!』
電王ライドウォッチを押すとライドウォッチは消え、侑斗の腹部に中央にターミナルを模したマークが施されたベルト──デンオウベルトと黒いパス──ライダーパスが出現する。
「来い、デネブ!」
「おう!」
「変身!」
侑斗はライダーパスを、デンオウベルト中央を通過させる。
『VEGA FORM』
デネブの体が実体からエネルギー体へと変化し、変身する侑斗の身体を覆う。
銀色の装甲に内側は黒、外側は銀のマントを背部の装甲から垂らす。
頭部にあるレールを通ってドリルが移動し、顔面中央に到達すると開いて星形になり、ゼロノスの時とは違い黒いゴーグルが目の部分を覆う。
ベルトの左右に付けられた四分割されたパーツ──デンガッシャーを組み立てると、先端部分に緑の刃が付き、デンガッシャーナギナタモードとなる。
時を守る為の力が交差し生まれたのは仮面ライダー電王ベガフォーム。
◇
体の損傷が酷く、これ以上戦えば間違いなくチェイスの体は文字通り壊れてしまう。幸いというべきか、変身する為に必要なマッハドライバー炎、ブレイクガンナーはアナザーディケイドVEによって破壊されてしまった。チェイスに戦う術は残されていない。
だが、それでもチェイスの心が、本能がまだ戦うことを望んでいた。最後の最後まで仮面ライダーとしての使命を全うすることを切望しているのだ。
(俺は……まだ……!)
ふと、いつの間にか手の中に何か硬い感触があることに気付く。腕を動かし、手の中を見ると──
「進ノ介……クリム……!」
──その手の中に輝く罅の入ったドライブライドウォッチ。こんな姿になってまでチェイスの許へ来てくれた。
機械の体に熱いものが込み上げて来る。痛みも苦しみも吹き飛ぶ様な力が湧いてくる気分であった。
チェイスは両脚に力を込め、立ち上がる。半死半生とは思えない活力に満ちた立ち姿であった。
チェイスは徐にドライブライドウォッチを起動させる。
『ドライブ!』
チェイスの左手首にシフトブレスが巻かれ、腹部にドライブドライバーが装着された。
『まさか、もう一度君が私を付ける日が来るとはね、チェイス』
ドライブドライバーに中央に浮かぶ顔が感慨深げに言う。
「クリム……俺はもうすぐ──」
『言わなくてもいい。一っ走りとは言わない。最後まで君の走りに付き合おう!』
「……感謝する!」
チェイスに向かって黒いシフトカーが空中を疾走して向かってくる。チェイスはそれを受け止め、レバーモードへ変形させシフトブレスに装填。
「行くぞ!」
『OK! Start Your Engine!』
ドライブドライバーのキー型のスイッチを回し、チェイスは顔の前に左手を持って来る。右手の指先がレバーに触れる。その時感じたのは紛れも無く郷愁であった。
「──変身!」
『ドライブ! タイプスピード!』
チェイスの体を覆うエネルギー。その中でチェイスは姿を変える。
見た目は仮面ライダードライブ。しかし、全身を黒で染め上げており、胴体にたすき掛けしているタイヤも内部パーツが剝き出しとなった未完成の物。
この姿こそが仮面ライダードライブの原点。混乱する世界の為に戦った戦士──仮面ライダープロトドライブ。
◇
うつ伏せになっている戒斗。全身に傷を負っているが、彼の心はまだ折れてはおらず闘志の炎が燃え盛っている。だが、アナザーディケイドVEによってゲネシスドライバーを破壊されてしまった彼には、その闘志を力に換える方法が無かった。
憤死してしまいそうな屈辱を覚える戒斗。しかし、それでも彼は立ち上がろうとする。いつまで這いつくばっているなど敗者に等しいと知っているからだ。
そんな彼を見下ろす様に空中に浮かぶ鎧武ライドウォッチ。誰かが触れることなく独りでに起動する。
『鎧武!』
戒斗は気配を感じ、視線を横へ向ける。そこには白髪で白い衣服を着た戒斗と同じ歳ぐらいの青年が立っていた。その身からは神秘的な気配を放っており、一目で普通の人間では無いことが分かる。
「葛葉……!」
葛葉紘汰。鎧武の変身者であり戒斗と何度も争いながらも認め合った存在。そして、人を超えてしまった者。
彼は何も言わずに手を翳す。すると、クラックが出現し、そこから植物の蔦が伸びてきた。蔦には赤と青黒い果皮に覆われた実が生っている。
「ヘルヘイムの……!」
その実を見ると、戒斗は躊躇わずにその実をもぎ取る。葛葉はそれを悲しみと後悔の目で見ていた。
本当ならば自分の力を直接戒斗に渡したい。しかし、戒斗のプライドがそれを許さず拒むことが分かっていた。だからこそ、間接的にしか力を貸すことが出来ない。
それが、戒斗を修羅の道に誘うものでも。
「──お前は間違っていない。そして、俺もこの選択に後悔など無い!」
戒斗は真っ直ぐ葛葉を見つめながら言い切る。
「あんな連中が居る限り、俺は何度でも同じ選択をする!」
ヘルヘイムの果実を握り締めると、果皮が裂け中から白い果肉が露出する。
葛葉は戒斗の言葉に苦笑する。駆紋戒斗という男は何処までも駆紋戒斗であると再認識して。
やがて、限界が来たのか葛葉の姿が薄れ始める。消えるその瞬間まで戦友を思って見つめていた。
戒斗は葛葉が消えるとヘルヘイムの果実を睨む様に見て、一気に喰らう。
「ぐっ……! おおおおおおおお!」
戒斗の胸が緑の光を放つと、光っている箇所からヘルヘイムの植物が伸び始め、戒斗の全身に巻き付く。
「うおおおおおおお!」
獣同然の咆哮を上げ続ける戒斗。やがて、ヘルヘイムの植物が黒い靄となって消えると戒斗の姿は異形の者と化していた。
ステンドグラスの様に彩られる赤い体。だが、赤一色ではなく胸部や両肩には黄色で意匠が施されている。その色の配色はバロンとよく似ていた。
瞳の無い水色の両眼。頭部から伸びる一対の角。その姿は悪魔を彷彿させる。
この姿は道を誤った末に行き着いたものではない。駆紋戒斗が最後まで己の強さを貫き通した果てに待っていたもの。運命にさせ屈しない為の強さロード・バロン。
四人のライダーたちは友の力を借り、最後まで抗う。
四ケ所同時に戦闘をしているので話が進むのは遅くて申し訳ございません。でも、次からは戦闘も終わっていくので。
最後の展開は仮面ライダーらしく戦友の力を借りる展開にしてみました。一人怪人になっちゃいましたけど。
先にどちらが見たいですか?
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IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
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IFゲイツ、マジェスティ