グレイブがグレイブラウザーを水平に構えて駆け寄る。ディエンドはネオディエンドライバーから光弾を撃つことで少しでもその速度を緩めようとするが──
「はははは。当たらないぞ、大樹」
グレイブは武器で弾くことも防ぐこともせず、ただ左右に移動するだけで光弾を避けてしまう。簡単に避けられ、それも笑いながらという余裕を見せるグレイブにディエンドは内心舌打ちをする。
しかし、それでもディエンドの目論見通りに接近してくる速度を落とすことが出来た。ディエンドは銃撃を続けながら流れる動作でネオディエンドライバーにカードを装填。
『アタックライド・ブラスト』
引き金を一度引くと、銃口から複数の弾丸が発射される。一発一発が異なる弾道を描いているが、どの光弾もグレイブから狙いを外していない。
「またそれか」
一度防いだ芸をもう一度見せられたグレイブは失望した様に溜息を吐き、グレイブラウザーのホルダーから番犬と『MIGHTY』の文字が描かれたカードを抜き取り、グレイブラウザーに読み込ませる──直前に僅かに動きを止める。
(本当に同じ事をしているだけなのか?)
一度は見せた能力をもう一度見せるという事に微かな疑問を抱くグレイブ。彼はディエンドを低く見ていない。寧ろ高く評価している。だからこそ、こんな詰まらない手を使ってくるディエンドの行動を疑う。
しかし、グレイブはその考えとは裏腹に前と同じくグレイブラウザーにカードを通す。
『MIGHTY』
剣身に宿る重力場。グレイブがグレイブラウザーを払うと重力場の影響により剣の軌道に沿ってブラストの光弾が逸れていく。
ここまでは以前と同じ。そして、ここからは違った。
(やはり)
ブラストの光弾が全て逸らしたと思いきや、その後ろから次の光弾が迫ってきていた。ディエンドは前回の失敗を生かし、最初に撃ち出した光弾のすぐ後ろに次の光弾を隠し、全く同じ軌道で動かすことでグレイブに悟られない様にしたのだ。
「良い判断だ! 大樹!」
グレイブは笑いながら何を思ったのかグレイブラウザーをディエンド目掛けて投擲する。
グレイブラウザーで光弾を弾くまで予想していたディエンドは、グレイブの予想外の動きに驚きながらも事前に装填していたカードを使用する。
『アタックライド・バリア』
グレイブラウザーがディエンドに届く前に銃口から発生したバリアがグレイブラウザーを止めた。しかし、グレイブの行動に少し動揺してしまったせいか能力を発動するのが遅れ、バリアの内側にグレイブラウザーの刃先が突き抜けている状態であった。
「ははははは!」
一方で守る手段を失ったグレイブにブラストの光弾が浴びせられる。だが、グレイブは苦鳴どころか哄笑し、光弾を受けながら走り出す。
そして、バリアに突き立てるあるグレイブラウザーを掴むと同時にカードをスラッシュ。
『MIGHTY』
重力の力を得た刃を振り下ろし、ディエンドが張ったバリアを破壊。完全な状態なら数度受け切っていたであろうが、グレイブラウザーを途中で取り込んでしまっていた為に不完全で脆くなっていたのが原因であった。
「守る物はもう無いぞ! 大樹!」
グレイブはディエンドもバリアの様に斬り裂かこうとグレイブラウザーを振り上げる。
「させないよ!」
ディエンドが一歩踏み込むと残像が生じる程の速度が発生し、グレイブの懐に飛び込みながら振り下ろそうとしていた腕を掴んだ。
これでグレイブラウザーが振るわれることは無いと思った矢先、逆にディエンドの腕がグレイブに掴まれる。掴まれている腕にはネオディエンドライバーが握られていた。
「ふぐっ!」
グレイブの膝がディエンドの鳩尾を抉る。
「すぐには離さないでくれよ、大樹。詰まらないからな」
ディエンドの腹に風穴でも開ける様な勢いで再び突き刺さるグレイブの膝。衝撃がディエンドの装甲を突き抜けて生身まで届く。息が詰まる鈍痛がディエンドを襲う。
「我慢弱いぞ」
二度の膝蹴りで俯いて動かなくなるディエンドを叱りながら、三度目の膝を叩き込もうとした瞬間、グレイブの頭が仰け反った。
すぐ傍に突き出されるディエンドの頭部。ディエンドの頭突きがグレイブの顔面を打ち抜いたのだ。ディエンドの性格を知る者ならば彼の行動に驚いたことであろう。そういった泥臭く野蛮な戦い方から程遠い性格の人物であるからだ。現に頭突きを受けたグレイブも予期せぬ一撃であった。
「我慢弱いのはどっちかな? 兄さん!」
顔面への攻撃でディエンドの腕を掴む力が僅かに緩む。その緩んだ間に腕を強引に動かし、更に手首を可動域限界まで動かして銃口をグレイブの顔面に向ける。
仰け反っていたグレイブの顔が元の位置に戻ったタイミングに合わせて、ネオディエンドライバーから光弾が発射された。
「あっ」
グレイブは間の抜けた声を上げながら顔面に光弾を命中させられる。ディエンドを掴んでいた手は完全に離れ、ディエンドの方も手を離す。
顔面を撃たれたグレイブはその場から数歩後退し、そのまま仰向けに倒れる──かと思いきや膝から上を地面と平行にした無茶な体勢で止まり、そこから体を起こしてみせた。
「今のは効いた。やるじゃないか」
グレイブの仮面が先程の一撃により一部が破損していた。割れた箇所の断面から千切れたケーブルの先端がはみ出ている。その奥から覗かせる純一の目は、笑みで細められていた。
この状況下でも笑い掛けてくる兄に戦慄を覚えると共に、次に見たものにディエンドは強いショックを受ける。
銃撃の衝撃で額に傷が出来たのか、一筋の血が額から眉に流れ、眉を伝って目の縁を流れて行く。それだけなら大したことではない。ただし、流れる血の色が赤ではなく緑であるのなら話は別だ。
「その血は……やっぱり兄さんはアンデッドに……!」
ディエンドの知識の中で緑の血を流すのはアンデッドという不死の生物しかいない。仮面ライダー剣と深く関わる存在だが、ディエンドの生まれた世界もまた剣の世界に似通った部分が多々あった。それ故にアンデッドという存在が生まれたとしてもおかしくはない。
兄が怪物になっているのは分かっていた。しかし、改めてその事実を見ると思った以上に来るものがある。
(まさか、この僕がここまで動揺するとはね……。士が今の僕を見たら笑うか目を丸くするのかのどっちだろうね)
自分の性格を良く知るディエンドは、想像以上に動揺する自分を自嘲する。だが、動揺しながらも自分の中の冷静な部分が囁く。
アンデッドだと普通に倒すことは出来ない、と。不死身の生物を倒す方法は限られており、今のディエンドでも倒せるかどうか微妙なところ。一番早い方法は倒すのではなくある程度消耗させて封印すること。
「言っただろう、大樹。私は人を超えた存在になったのだと」
グレイブは傷など関係無くディエンドにグレイブラウザーを振り下ろす。それをネオディエンドライバーの銃身で受け止めるディエンド。グレイブは流れる動作で展開されているカードホルダーに収まっているカードを抜こうとして──
「させないよ!」
胴体にディエンドのタックルを受けた。そのまま地面に押し倒され、肉弾戦に持ち込まれるグレイブ。互いに有利なポジションを取ろうとして揉みくちゃになるが、最終的にディエンドがグレイブの上をとった。
グレイブの上に乗ったディエンドがグレイブの顔面に拳を振り下ろし、ネオディエンドライバーの銃底を叩き込む。
「はははは。やんちゃだな、大樹は!」
それを顔で受けながらグレイブは防御もせずに殴られ続けている状態からディエンドの脇腹に拳を打ち込む。
会話だけ聞けばじゃれて来る弟をあやす様だが、実態は生きる死ぬかの真剣勝負。ディエンドの方は喋る余裕なの無いことが、グレイブの狂気をより際立たせる。
マウントポジションから何度も繰り出されるディエンドの攻撃。グレイブはそれを笑いながら受け止め尚且つ反撃してくる。
不死身の肉体を持っているとしても痛みは感じる。なのに何度も何度もダメージを与えても笑い声一つ掻き消すことも出来ない。
「うぐっ!」
突き出されたグレイブラウザーの柄頭がディエンドの鳩尾にめり込んだ。下からの攻撃で意識が割かれていた為に完璧に入ってしまう。
グレイブは上体を限界まで起こすと同時にその勢いを乗せた拳をディエンドの胸部に打ち込む。ディエンドはグレイブの上から殴り飛ばされてしまった。
地面を転がりながらもディエンドはネオディエンドライバーにカードを挿し込む。熟練したディエンドの腕なら目を瞑っていようとも如何なる態勢であっても挿入することが出来る。
『カメンライド・ゲキジョウバン!』
出来ることなら使用したくなかったが、今はそんなことも言っていられない。封印されるのを覚悟で召喚数を一人に設定して呼び出す。後は何が出るかの運次第。
銃口から飛び出した光はグレイブの脇を通り過ぎ、背後にて実体化する。
最初に感じたのは熱気。強い熱が背中を炙るのを感じる。次に感じたのは強い光。地面に映るグレイブの影がその光で濃く、長くなる。
グレイブは後ろを振り返る。それを見た印象は太陽であった。露出しているグレイブの片目が熱と光が開けていられなくなる。それ故に片目は閉ざされ、仮面越しに見るもう片方の目が現れた太陽の正体を文字通りに焼き付ける。
昆虫を思わせる巨大な目と触角。首から噴き出した炎がマフラーの様に靡く。腕や脚、胴体など体の各部が繋がっておらず、何処か操り人形の様な印象を受ける巨大な異形。
仮面ライダーコアと呼ばれる炎の巨人がグレイブへ拳を振り上げていた。
「大きいなー」
炎の巨人に対し吞気な感想を洩らした瞬間、仮面ライダーコアの拳が真上から振り下ろされた。
グレイブの体は拳に押し潰され、コアの拳ごと地面に深々と埋まる。
普通ならそれでお終いだが、6000度の体温を持つコアの拳を中心に地面を超高熱で熱していき大地が融解して液状化する。
「当たりだったね……」
運良くコアを引き当てたディエンドはゆっくりと呼吸を整える。息を吸い込む度に体のあちこちに激痛が走るが今はそれを気にするよりも少しでも体力を回復させたい。
ディエンドはコアの攻撃をやり過ぎなどとは微塵も思っていない。コアを当たりだと言ったのは、コアがグレイブを倒せるという意味で言った訳では無かった。コアならば息を整えるぐらいの時間稼ぎは出来るという意味である。
グレイブはまだ本気を出していない。本当の戦いはここから。
最初の変化は線であった。地面に打ち付けられていたコアの腕に白い線が浮かび上がっていた。やがて線が拳から肩まで伸びるとその線から漏れ出す白い光。
次の時にはコアの腕が真っ二つに裂けていた。
片腕を裂かれて思わず拳を引いてしまうコア。すると、拳の跡から何かが飛び出してコアの体に突き刺さる。
刺さったのは一枚のカード。業火に等しいコアの体に刺さってもそのカードが燃えることはなく、それどころかカードが炎を取り込み始めていた。
取り込むのは炎だけではなくコアの体もまたカードへ吸い込まれていく。コアは無事な方の手を地面に突き立てて抗うが吸収する力の方が強く、間もなくしてコアの巨体は小さなカードの中へ収まってしまった。
「熱いなぁ。プールで一泳ぎしたい気分だ」
融解した大地から這い出てくるのはグレイブではなく白い異形。海東純一が人を捨てた姿であるアルビノジョーカーが体を炎上させながら現れる。
アルビノジョーカーの右手には大小異なる刃が両端に付いた白い鎌が握られており、コアの腕を裂いたのがこの鎌である。刃先の部分だけ赤く染められており、人を斬った直後の様な悪趣味な配色が施されている。
アルビノジョーカーは地面に落ちているコアを封じたバニティのカードを拾い上げた。
「また一枚お前からのプレゼントだな」
「馬鹿にしないでくれ……!」
「馬鹿になどしていないさ。私は本当に喜んでいるだけだ」
「その方が質が悪い!」
ディエンドが光弾を撃つ。アルビノジョーカーは鎌──ではなく左腕から突き出ている爪でそれを軽く払い除けてしまう。
「もう遊びの時間は終わりだ、大樹。全力で来い。でないと私が困るんだ。弱いお前を殺しても何の意味も無い」
「──全く。随分と性格が悪くなったね! 兄さん!」
ディエンドは吐き捨てながらネオディエンドライバーに二枚のカードを挿入し、すかさず引き金を引く。
『カメンライド・カイザ』
『カメンライド・メテオ』
Χの文字を模した仮面に全身に黄色のラインを巡らせる仮面ライダーカイザ。流れる隕石の様に左右非対称の水色の仮面に黒い体に星々の様に輝く装飾の仮面ライダーメテオ。
召喚するリスクはよく理解しているが、少しでも隙を生み出す為に敢えてライダーたちをアルビノジョーカーの前に出す。
「そうそう。そういうのでいいんだ、大樹」
出し惜しみをしないディエンドをアルビノジョーカーは褒めるが、ディエンドの耳には見下されている様にしか聞こえなかった。
「出し惜しみをするな。私も出し惜しみをしない」
アルビノジョーカーの手の中にいつの間にかカードが握られている。それは、前の戦いで封じた威吹鬼のカード。
アルビノジョーカーは胴体に付けてあるベルト、真っ白なハート型バックル中央に通す。
アルビノジョーカーの体に何か変化が起こることは無く、無音であった。しかし、ディエンドはその行為に嫌な予感を覚える。
「ふふっ」
アルビノジョーカーは左腕の爪を突き出す。その先端から赤い礫が飛び出しメテオへ命中。礫が体に埋め込まれ、メテオは苦しそうに命中箇所を押さえる。
すると、アルビノジョーカーはその場で鎌を振り回し始めた。高速で動かすことで生じる風切り音がディエンドの耳まで届く。
途端にメテオがもがき始める。見ると先程命中した礫で赤い輝きと共に風切り音に反応して共振し出し、メテオの体内に超振動を起こす。
その振動はメテオの限界を超え、彼を元の光へ還してしまった。
「しまった。やり過ぎた」
封印するつもりだったらしく消えてしまったメテオに少しだけ惜しむ様な声を出す。
「やはり初めて使うとなると加減が分からないな」
肩を竦めておどけて見せるアルビノジョーカー。人間の名残が見える仕草と言えるが、ディエンドからすれば怪物の悪ふざけにしか映らない。
「今度は加減を──」
別のカードを取り出そうとするアルビノジョーカー。
「甘いよ!」
ディエンドはネオディエンドライバーを、カイザはX型の複合武器──カイザブレイガンから同時に光弾を発射。
「おっと」
アルビノジョーカーに着弾。そのまま的確に急所を撃っていく。
「痛いなぁ」
アルビノジョーカーは悪戯されているかの様な軽い口調で言うが、命中した箇所からは緑の血液が流れ出ており負傷している。そんな流血と痛みの中でもアルビノジョーカーは怯むことなくわざとかと思える程ゆっくりとした動作でカードを選び、それをバックルに通す。
アルビノジョーカーの鎌に宿る蒼炎。それを振り回すと蒼い炎が軌道に残り、長い尾を作っていく。
「はあっ!」
鎌を振り抜くと蒼い炎は龍と化し、大きく口を開いてカイザを呑み込んでしまい、カイザは蒼炎のドラゴンの体内で光に還ってしまった。
蒼い炎とドラゴン。アルビノジョーカーが使用したのは仮面ライダークローズの能力である。
だが、この様な状況になるのはディエンドの想定内。アルビノジョーカーの意識が僅かでも他所に向けられる瞬間を狙って走り出す。
高速の動きにより間合いを詰めながらディエンドはネオディエンドライバーにカードを装填していた。挿し込んだカードをネオディエンドライバーの銃身を伸ばすことで読み取らせると同時にアルビノジョーカーの胴体に銃口を押し当てる。
「おや?」
「こんな乱暴な使い方は初めてだよ」
『ファイナルアタックライド・ディ、ディ、ディ、ディエンド!』
本来ならばカード型のエネルギーが砲身を形成するが、零距離で発動したせいでそのエネルギーすらも取り込んだ青緑と黒の光線──ディメンションシュートがネオディエンドライバーから発射される。
「おおおおっ!」
最大火力を近距離から放つというディエンドの捨て身の攻撃。零距離ディメンションシュートによりアルビノジョーカーは光線に押されて滑る様に後ろに下がっていく。
このまま戦闘不能まで追い込むと考えるディエンドであったが、アルビノジョーカーの力はその考えを甘いと一蹴するものであった。
「ふんっ!」
アルビノジョーカーの体から放たれる白い波動。それがドーム状に広がっていきディメンションシュートを押し返していく。
「くうっ!」
ネオディエンドライバーの引き金を絞り続けるディエンドだが、それを悪足搔きと嘲笑うかの様に押し返されたディメンションシュートは目の前にまで迫り、逆流するエネルギーが限界を迎えディエンドの前で暴発を起こす。
「ううっ!」
エネルギーの爆風を間近で受けたディエンドはその場から吹っ飛ばされ、数メートル飛ばされた後に立ち上がったディエンドは、アルビノジョーカーがこちらに向けて鎌を振り被る姿であった。
「はあっ!」
投げ放たれた鎌は回転し赤と白の色が混じり合う。立ち上がったばかりのディエンドにそれを避ける暇は無く、胴体に直撃する。
「ぐあああああああ!」
高速回転する鎌が生み出す斬撃は容赦なくディエンドの装甲を斬り裂き、内部へ大きなダメージを与える。
一定のダメージを与えるとヨーヨーの様にアルビノジョーカーの手へ戻っていく鎌。残されたディエンドはダメージから膝を突く。肩、胸部、腹部に深い傷跡が刻まれていた。
「くっ……」
呻きながらもディエンドは戦意が萎えていないことを示すように怪我をおして立ち上がってみせる。それを待ち構えているアルビノジョーカーだが、こちらも無傷という訳では無くディメンションシュートを零距離から受けたせいで上半身の至る箇所から緑の血を流していた。
「もう切り札は尽きたか? ならそろそろお終いにしよう」
アルビノジョーカーが新たなカードをバックルに通す。すると、傷口から炎が噴き出し、アルビノジョーカーの体が赤炎に包まれる。コアの力を取り込んだ姿を見て、あの時は当たりと思った引きが外れであったとディエンドは今更思う。
絶体絶命。誰が見てもそうとしか言えない。ディエンドは燃え盛るアルビノジョーカーを見つめる。
「うん……?」
仮面を付けているディエンドの表情など分かる筈も無いが、アルビノジョーカーにはディエンドが不敵な笑みを浮かべた様に見えた。
「……切り札ならあるさ、とっておきのがね」
これが最後の攻防。倒し切れなければディエンドは負けることを覚悟する。
「──そうか。ならその切り札を見せて貰おうか」
「兄さんならもう知っている筈だ」
「それは……!?」
ディエンドが取り出したカード、それは兄から弟へ贈られた血痕の付いたディエンドのライダーカード。
『カメンライド・ディエンド』
もう一枚のディエンドのカードを装填されたネオディエンドライバーから召喚されるもう一人のディエンド。
ディエンドはもう一人のディエンドの背後に回り、ネオディエンドライバーに新たなカードを挿入する。
『ファイナルフォームライド』
「痛みは一瞬だ」
『ディ、ディ、ディ、ディエンド!』
ネオディエンドライバーから光が撃ち出され、もう一人のディエンドを撃ち抜くと貫いた光がディエンドの紋章と化す。
もう一人のディエンドの体が浮き上がりると、空中で体を横向きにし、両足の踵を付けた状態で真っ直ぐ足が伸ばされ、足底から二門の砲口が現れる。両腕は内側に曲げられるとそれを覆う装甲が現れる。
人体の構造を無視した変形を行った後、もう一人のディエンドは巨大なディエンドライバーとなった。
ファイナルフォームライドによって得た切り札であるジャンボディエンドライバーを肩に担ぐディエンド。ネオディエンドライバーに酷似しているが一つだけ異なる点がある。ジャンボディエンドライバーには引き金及びグリップが無い。
すると、ディエンドがジャンボディエンドライバーの銃身下部にネオディエンドライバーを接続させる。己以外には自分の引き金を任せるつもりは無い、と言わんばかりに。
「随分と物騒なものを出したな」
「兄さんからのプレゼントだよ」
「──慣れないことはするものじゃないな」
言葉に若干後悔を感じさせる。不死身の肉体と圧倒的な力を持つアルビノジョーカーがジャンボディエンドライバーの危険性を感じ取っていた。
「逃げないでくれよ、兄さん。今度は僕から兄さんへのプレゼントだ」
「生意気なことを言うじゃないか、大樹……」
ディエンドからの挑発にアルビノジョーカーの殺気が増す。
「来い、大樹。
一人称が私から俺へと変わる。余裕が無くなった、というよりも取り繕うことを止めたのだ。全身から放たれる白い波動が地面を砕き、共に発せられる高熱がそれを溶かす。
兄が本気で殺しに掛かるつもりなのが伝わってくる。そのせいで思い出の中の兄と重なるのは皮肉だと思いながら、ネオディエンドライバーに最後のカードを装填した。
『ファイナルアタックライド・ディ、ディ、ディ、ディエンド!』
今まで何万回と引き金を引いてきたが、今日ほど重いと感じた日は無い。一気に引かれることはなく絞る様にネオディエンドライバーの引き金が引かれた。
二門の砲口から撃ち出されたのは二色が混ざり合ったディメンションシュートとは異なる多色の光が束となった光線。
白い波動に光線が触れた瞬間、呆気無く白い波動は突き破られる。この時点でディメンションシュートよりも遥かに強力なことが分かるが、それでもコアの力を纏った不死身の肉体を破るには至らないと考え、アルビノジョーカーはその身で光線を受けようとする──その刹那、束ねられた光線が解けた。
「なっ!」
光線の一つ一つがライダーの姿となり、アルビノジョーカーへ攻撃を仕掛ける。
G3はデストロイヤーの回転刃で斬り付け、ナイトはウイングランサーの突き抜け、カイザはカイザブレイガンで斬り裂き、ギャレンはギャレンラウザーで銃撃、威吹鬼は風を纏った手刀を繰り出し、ガタックは空中回し蹴りを叩き込み、ゼロノスはゼロガッシャーでAの文字を刻み、イクサはイクサカリバーで灼熱の一撃を与え、アクセルはバイク形態となって突撃し、バースはドリルアームで突き破り、メテオは高速の拳打を浴びせ、ビーストは右足に宿る魔力の獅子で嚙み砕き、バロンはバナスピアーで貫き、マッハはゼンリンシューターの前輪で削り、スペクターは命を込めた蹴りで撃ち抜き、ブレイブはガシャコンソードで氷炎一体の攻撃、クローズは蒼炎を燃やす拳で殴り、ゲイツのジカンザックスが叩き割る。
「ぐ、あ、あ……」
この間、刹那よりも尚速い。認識出来ない速度で攻撃を与え続けられたアルビノジョーカー。纏っていたコアの炎は消し飛び、おびただしい血を流すアルビノジョーカーだけが残される。
だが、それでもアルビノジョーカーは生きていた。彼の不死の肉体はディエンドの最期の攻撃にも耐え切ったのだ。
「俺の、勝ち──」
そこまで言い掛けてアルビノジョーカーは言葉を失う。ディエンドの指先に挟まれた一枚のカード。
金の鎖で囲われた絵柄が浮かぶそれはラウズカードと呼ばれるものであり、その中でもコモンブランクと分類されるもの。
不死身のアンデッドを倒すことは出来ない。しかし、封印することは出来る。それを可能とするのがディエンドの持つカード。
「いつの間に……!」
アルビノジョーカーの脳内で今までの戦闘が巻き戻しされる。そして、ある場面で止まる。グレイブの姿の時にグレイブラウザーからカードを抜き取る間際にディエンドが飛び掛かってきた場面。カードの使用を妨害するのが目的だと思っていた。だが、本当の狙いはグレイブラウザーからラウズカードを盗むことだったのだ。
それをこの瞬間まで気付けずに居た。この世界の海東大樹を自分の世界の海東大樹と重ねて見ていたが、それが間違いだったらしい。
「……全く。随分と手癖が悪くなったな、大樹」
自らの敗北を認め、アルビノジョーカーはバックルを残したまま純一の姿に戻る。その顔に浮かんでいるのは苦笑であった。
「さよなら。もう一人の兄さん」
ディエンドが投げ放ったラウズカードが純一に触れると、純一は光となってカードの中に吸い込まれた。
目的を果たしたカードが引っ張られる様にディエンドの手へ戻る。金の鎖だけであった絵に赤いハートの様な紋章が描かれている。
アルビノジョーカーは封印された。これによりモノリスは停止し、発生していたジョーカーたちも消滅する。
しかし、疲労し切ったディエンドにそれを確認する程の余力は残されていない。
ディエンドは変身を解除し、海東の姿に戻る。
「こんなに疲れたのは初めてだ……」
いつも余裕に満ちた態度をとっている海東もそれを保てないぐらいに心身共に疲労していた。
「ああ……士の手伝いにも行かないと……今なら恩を着せられるかもしれない……」
海東はその場で崩れ落ちる。
「でも……今は少し……休憩させてもらうよ……」
海東はアルビノジョーカーのカードを握り締め、静かに瞼を閉じた。
ようやく二つ目の戦いが終了しました。
今年中にはジオウ本編の話を完結させたいですね。
先にどちらが見たいですか?
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IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
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IFゲイツ、マジェスティ