仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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遺影、遺影と言われていたコンプリートフォームが卒業アルバムにパワーアップしましたね。


アナザーディケイドVE その19

 グランドジオウの前後から襲い掛かる圧倒的力。キルバス、オーマジオウどちらかの一撃を貰っても致命傷に至る。

 枯れた大地を震わせる衝撃音。それは二つの攻撃が届いたことを意味する。だが、両者の間に挟まれているグランドジオウは無傷であった。

 何故ならばグランドジオウを守る為に間に入り込んだ二人のライダーがキルバスとオーマジオウの攻撃を身を挺して守っていたからである。

 キルバスの大爪を防ぐのは、ダイヤモンドの輝きをその身から放つ仮面ライダーウィザード・インフィニティースタイル。突き出された四本の大爪がウィザードの胸に突き立てられているが、ウィザードの装甲には罅一つ入っていない。

 オーマジオウがビルドの力を得て放った必殺の一撃を、同じ右足で受け止めているのは星で飾られた全身を金色に輝かせ、髪の様な長いヘアパーツを後頭部から垂らす仮面ライダーエグゼイド・ムテキゲーマー。スペックもさることながらその名の通りの無敵の力でオーマジオウの一撃を防いでみせた。

 どちらも間一髪のタイミングで召喚することが出来た。グランドジオウの力が成長していなければ今の攻撃によってグランドジオウは倒されていた。

 ウィザードの体内から煌めくドラゴンが飛び出すと斧と剣が一体化した武器──アックスカリバーとなる。ウィザードはそれを剣として構えるとグランドジオウを挟んでいるグラフ型の固定装置を斬り付ける。

 ウィザードの斬撃によりグランドジオウは自由を取り戻す。

 次に指に填めたリングをドライバーの前に翳す。

 

『インフィニティー!』

 

 発動する魔法。構えるのはウィザードだけではない。自由に動ける様になったグランドジオウもサイキョージカンギレードを取り出していた。

 金剛石の輝きと共に二人の姿が同時に消える。それに合わせてキルバスの体に無数の斬撃痕が刻まれる。

 消えたグランドジオウたちはキルバスの背後に移動していた。インフィニティースタイルで発動した魔法は、時間の流れに干渉するというもの。ウィザードの魔法はグランドジオウにも影響し二人で時間干渉によって得た速さによりキルバスに高速の斬撃を与えたのだ。

 視認出来ない速度で斬り刻まれたキルバス。自分の身に何が起こったのか自覚する前に爆散する。

 グランドジオウたちの戦いに並行してエグゼイドもまたオーマジオウに抗っていた。

 衝突する蹴りと蹴り。ムテキの力を得ているエグゼイドはそれでダメージを負うことは無いが、衝撃等を消せることは出来ずオーマジオウに押され始めていた。

 このまま行けば自分ごとグランドジオウらを攻撃されると理解するエグゼイド。しかし、自分の一撃ではオーマジオウには負ける。

 ならば単純なこと。一撃でダメなら何度も攻撃し続ければいい。

 オーマジオウの右足に何度も打ち込まれるエグゼイドのキック。黄金の粒子を散らしながら高速で繰り出し続けられる。

 何度蹴ったのか第三者には視認出来ない速度で動いた後、最初と同じ体勢へと戻った。

 

『HIT!』

 

 浮かび上がるエフェクト。文字通り攻撃が当たったことを意味する。

 

『HIT!』

 

 また浮かぶエフェクト。しかし、今度は違った。

 

『HIT!』『HIT!』『HIT!』『HIT!』『HIT!』『HIT!』『HIT!』『HIT!』

 

 重なる様に同じ文字が連続して表示される。ワンテンポ遅れての怒涛の表示。エグゼイドの速さに現実が処理落ちでもしたかの様であった。

 

「むう……」

 

 一撃は劣っていても数で補い、更にそれを束ねればいずれは届く。オーマジオウとエグゼイドは互いの蹴りによって弾き飛んだ。

 何事も無く地面に降り立つオーマジオウ。ライダーの力を込めて発動した必殺技が防がれても動揺は無い。

 

「──流石だな」

 

 オーマジオウの口から出て来たのは賞賛。その賞賛にはオーマジオウの一撃を相殺したエグゼイドだけでなく、キルバスを倒したウィザード、そして二人を瞬時に召喚したグランドジオウを含まれていた。

 着地したグランドジオウはウィザードとエグゼイドを還し、新たなライダーと武器を召喚する。

 

『オーズ!』

『フォーゼ!』

『鎧武!』

『ビルド!』

 

 恐竜の力を持つ仮面ライダーオーズ・プトティラコンボがメダガブリューを構えた体勢で現れる。

 その隣に立つのはフォーゼであるが、上半身を覆う新たな装甲を付けており両肩から二門のキャノン砲を備えていた。NSマグフォンというアストロスイッチで磁力の力を得た形態である仮面ライダーフォーゼ・マグネットステイツ。

 鎧武の力で呼び出したのは火縄大橙DJ銃。火縄銃という名が付いてはいるが、見た目は両手で持てる程の大きさがあり、銃身部分にディスク型のプレートが付けられてある。そして、その側面にはオレンジロックシードが填め込まれていた。

 ビルドの力で出て来たのは、これもまた大型のキャノン砲。フルボトルバスターと呼ばれるそれには、内部に四本のフルボトルが装填されている状態であり何時でも発射可能となっている。

 グランドジオウは持ち前の力で本来なら両手で扱う火縄大橙DJ銃とフルボトルバスターを片手で握る。

 フォーゼ・マグネットステイツがドライバーに挿され操縦桿となっているNSマグフォンを操作すると肩部のキャノン砲が外れ、フォーゼ・マグネットステイツの前で一つとなりU字磁石状となる。

 オーズ・プトティラコンボはメダガブリューの口の中にセルメダルを一枚放り込み、斧形態からバズーカ形態へ変える。

 二人のライダーの準備が終えたのは見計らい、グランドジオウは両手に持つ武器の引き金を引く。

 

「行けぇぇぇぇ!」

 

 火縄大橙DJ銃から発射される光の奔流。その中にはオレンジ、イチゴ、パイナップルなどの各種フルーツ型のエネルギーが混ぜられている。フルボトルバスターからは巨大な青い光弾が撃ち出された。

 

『ライダー超電磁ボンバー!』

 

 フォーゼ・マグネットステイツが叫んでいる訳では無いのに、何故かそう叫んでいる様に思えてしまう。U字型磁石状のキャノン砲から赤と青の光が発生し、それが混ぜ合わされて紫の光弾となって発射される。

 

『プ・ト・ティラーノヒッサーツ!』

 

 セルメダルの力を解放しメダガブリューから発射される渦巻く破壊光線。

 ライダーたちによる強力な砲撃の一斉発射。それら全てが一直線にオーマジオウへ飛んでいく。

 

「受けて立とう……!」

 

 オーマジオウはそれを真っ向から受けることを宣言し、自身のドライバーの左右を押し込んだ後、今度は片側だけを押す。

 

『フォーゼの刻!』

 

 オーマジオウの右脚に黄金の光が渦を描きながら集まっていく。黄金の光の中には白色に輝く星々の様な輝きも含まれていた。

 

『リミットブレイク!』

 

 黄金の光と星々の輝きは円錐状の形となり高速で回転。まさにそれはドリル。オーマジオウはドリルと化した右脚でグランドジオウの一斉発射に対し横蹴りを放った。

 黄金のドリルと光線の束が衝突すると、世界を塗り替える様な眩い光と聞いた事がない未知なる激突音が鳴り響く。

 光線の束はオーマジオウを撃ち抜こうとするが、黄金のドリルの回転がそれらを削り周囲に散らしていく。飛び散る光が触れた箇所は大爆発を起こし、グランドジオウたちの周りで連続して爆発が起こり続ける。

 

「貫けぇぇぇ!」

「ぬうぅぅぅ!」

 

 光線の束に押されてオーマジオウの体が離れる。このまま行ける、と思った瞬間その認識は甘いものであると思い知らされた。

 

「ふんっ!」

 

 オーマジオウは一瞬で後退して光線との距離をとったかと思えば、すぐに前身。それも普通に進むのではなく光線に対して背を向けながらの跳躍であった。

 光線の束に向けて繰り出されるのはオーマジオウによる飛び後ろ回し蹴り。黄金のドリルで貫くのではなく今度はドリルで斬り裂いた。

 空間がずれたと錯覚を起こす程の一撃により光線の束は上下真っ二つになる。片や地面へと深く潜り込み、片や空の彼方へ飛んで行ってしまった。

 グランドジオウの攻撃を一蹴したオーマジオウが降り立つ。フォーゼの力の影響がまだ右足に残っており、地面を踏み締めると右足を中心にして大地が螺旋状に捻じれた。

 あれだけの攻撃を受けてもオーマジオウは無傷──という訳でも無かった。額にある時計の針を模したヘッドパーツ、その長針先端から白煙が上がっている。それはグランドジオウの攻撃が僅かに掠めていった証であった。

 

「悪くはなかった、と言っておこう」

 

 オーマジオウは髪を撫で付ける様な動作で長針部分に指を滑らせる。グランドジオウが付けた傷はそれだけで消えてしまった。

 

「まだまだぁ!」

 

 オーマジオウが圧倒的だとしてもグランドジオウは心を折ることは無い。2019年ではまだゲイツたちが戦っている。王として、仲間として先に折れることなどあってはならない。

 

「若き日の私よ。以前と比べてお前は強くなった。その力をもっと見てみたいが……時間切れだ」

「え? ──まさか!?」

 

 オーマジオウの言葉が何を意味するのかに気付いたグランドジオウは己の体を見た。右肩にあるクウガのレリーフが錆び付く様に金色が失われていき、レリーフにも罅が生じる。

 元の時代の歴史の歪みが時間を超えてグランドジオウへと影響を及ぼしていた。纏っているグランドジオウだからこそ、クウガのレリーフから力を感じないのが分かる。

 

「ライダーの力が……!」

 

 クウガのレリーフの次はアギトのレリーフが朽ち始める。歩んで来た歴史に沿ってライダーの力が失われていく。

 グランドジオウの心中にあったのは、このままではオーマジオウに勝てない──というものでは無かった。

 元の時代で今も戦っている筈の士、海東、チェイス、仁藤、戒斗、侑斗たちがどうなってしまうのか、という仲間の身を案じることで一杯であった。

 

 

 ◇

 

 

「その姿は……!?」

 

 新たな武装を纏うビースト。仮面ライダードライブに酷似した姿になったチェイサーマッハ。電王の力を使いフォームチェンジをするゼロノス。そして、仮面ライダーではなく怪人の姿となってしまったバロン。

 四人のライダーたちの別の姿にゲイツリバイブは驚くしかない。

 アナザーディケイドVEも同じ様な心境であったが、すぐに驚きを消して四人の姿を嘲笑う。

 

「──ふん。何をしたかと思えば消え掛けのライドウォッチの力を得ただけか。まあ、死に掛けたお前たちには相応しい足掻きとも言えるな!」

「なら確かめてみるか? お前自身が」

「何?」

 

 ロードバロンの不敵な返しにビーストWS(ウィザードスタイル)と電王VF(ベガフォーム)が左右からアナザーディケイドVEへ仕掛ける。

 ビーストWSは竜爪ドラゴヘルクローを、電王VFはナギナタモードになったデンガッシャーを振るう。

 

「その程度で!」

 

 二人の攻撃をアナザーディケイドVEは両腕で防いでしまう。何のことも無い。姿形が変わっても劇的に性能が上がった訳では無いのだから。

 しかし、左右の腕で二人の攻撃を防いだことでアナザーディケイドVEの胴体はがら空きになる。そこに飛び込んできたプロトドライブが鳩尾目掛けて左拳を叩き込んだ。

 

「──ふっ」

 

 プロトドライブの拳は確かにアナザーディケイドVEの鳩尾に入っている。だが、アナザーディケイドVEの口から漏れ出たのは失笑。

 

「弱々しい一撃だ」

 

 二人とは違いチェイサーマッハからプロトドライブになったことで確かに性能は落ちた。アナザーディケイドVEが拍子抜けするのもおかしくはない。

 しかし、今のプロトドライブにとってそんな嘲笑など届かない。かつての姿、己の原点へ戻ったことで湧き上がる使命感。今のチェイスの中に築き上げられたものが、ドライブライドウォッチに込められた心と交わることで、プロトドライブの体内は数値では測れない熱で燃え上がっていた。

 もしも、ロイミュードにもそれがあるとしたら、今のプロトドライブは魂が燃えているのだ。

 

「それがどうした?」

「何だと?」

 

 プロトドライブは左拳を突いたままシフトブレスにあるシフトスピードプロトタイプのレバーを素早く三回倒す。

 

『スピ! スピ! スピード!』

 

 もう一度打ち込まれる拳。だが、その速度は最初の一撃よりも遥かに速い。

 

「──っ」

 

 初撃が全く効かなかったアナザーディケイドVEが小さく息を洩らす。

 プロトドライブの攻撃はここから始まる。

 

「おおおおおおおお!」

 

 人らしい荒々しい雄叫びと共に連続して繰り出される高速券。一撃一撃が機械の様な精密さを持ち、同じ箇所に寸分違わずに打つ。

 

「──くっ!」

 

 アナザーディケイドVEが絞り出す様な苦鳴を洩らす。耐えられる筈の攻撃であった。だというのに今のアナザーディケイドVEは間違いなく痛みを覚え、耐え切れずに声を洩らしてしまっている。

 それに強い屈辱を覚えるアナザーディケイドVE。

 

「はああああああ!」

 

 その屈辱感と怒りを波動に変えて周囲を吹き飛ばす。アナザーディケイドVEの全身から放つ波動によって三人のライダーは吹き飛ばされる。

 周りのライダーたちが居なくなって尚もアナザーディケイドVEはまだ波動を放ち続けている。まるで自らを守る障壁の様に。

 それは尽きることの無い怒りの表れ──と見えるが、彼には別の様に見えた。

 

「ふんっ!」

 

 ロードバロンがアナザーディケイドVEの波動を手に持つ両刃の長剣──『グロンバリャム』で斬り裂き、アナザーディケイドVEに接近すると共にグロンバリャムを振り下ろす。

 

「くっ!」

 

 アナザーディケイドVEは手刀によってそれを受ける。押し込もうとするロードバロン、それを押し返そうとするアナザーディケイドVE。両者の力は全くの互角。

 

「怖いか? 俺たちが?」

「──何だと?」

 

 聞き捨てならない台詞にアナザーディケイドVEが反応する。

 

「お前の怒りは俺たちへの恐れを打ち消す為のまやかしだ! 強さに芯が感じられない様に怒りにも芯など感じない!」

「き、さまぁぁぁぁ!」

 

 アナザーディケイドVEが激情のままに叫び、手刀でグロンバリャムを弾くと斬り返してロードバロンを貫く──が、ロードバロンは自らの体を気化させてそれを回避。

 

「何っ!?」

 

 赤い霧状の体になったロードバロンはアナザーディケイドVEの周囲を飛び回る。その状態でも攻撃が可能であり、ロードバロンが触れた箇所から火花が上がる。

 

「ぐうううっ!」

 

 アナザーディケイドVEが手刀を振るうが霧状になっているロードバロンの体を通過するだけで効果が無い。

 

「俺だけに気を取られていいのか?」

 

 霧の中から響くロードバロンの声。

 

「はあっ!」

「があっ!?」

 

 アナザーディケイドVEの脇腹へ突き立てられるジカンジャックローの爪。ロードバロンの霧によってゲイツリバイブの接近を見逃してしまっていた。

 ゲイツリバイブは突き立てたジカンジャックローを一気に振り抜く。

 

「がはっ!」

 

 堪らず前のめりになるアナザーディケイドVE。視線を下した彼は足元の地面が罅割れていくのに気付く。

 

「うおらっ!」

 

 地面からビーストWSが飛び出してくる。ドラゴヘルクローによって地中を掘り進んで来たのだ。

 飛び出したビーストWSは、前のめりになっているアナザーディケイドVEの顎をドラゴヘルクローで突き上げた。

 強烈なアッパーをもらい、今度は体を仰け反らせるアナザーディケイドVE。

 見上げた彼が見たものはデンガッシャーを旋回させながらこちらに向かって飛び降りてきている。

 

「むんっ!」

 

 着地と共にデンガッシャーの一撃がアナザーディケイドVEの肩へ叩き込まれる。想像以上に重い一撃によりアナザーディケイドVEの膝が折れ掛ける。

 

「この──」

 

 アナザーディケイドVEを囲む様にカード型のエネルギーが並ぶ。

 

「死に損ない共がっ!」

 

 並ぶカードに沿って一周するアナザーディケイドVEの蹴り。それにより周りのライダーたちを蹴散らす。

 

「はあ……! はあ……!」

 

 疲れていないのに呼吸が乱れ、荒くなる。

 倒しても倒しても不死身の様に何度も食い下がってくる仮面ライダーたち。絶対的な力を持っている筈なのに彼らを潰すことが出来ないことに強く苛立つ。

 

「はあ……! ──っ!」

 

 アナザーディケイドVEに掛かる影。アナザーディケイドVEはライダーたちを蹴散らせた。そう()()()()()()()()は。

 アナザーディケイドVEの眼前には拳を握り締めながら立つロードバロンの姿。

 

「お前の力と俺の(ちから)──どちらが強いか試してみるか?」

 

 拳が作られた途端周りの全てを取り込んだのかと錯覚を覚える。何も変わらない筈なのにその拳が大きく見えたからだ。

 突き出されるロードバロンの拳。アナザーディケイドVEは咄嗟に銀色のオーロラを前方へ展開。こうすればまずロードバロンの拳は届かない──そう思っていた。

 ロードバロンの拳が銀色のオーロラに触れた瞬間、銀色のオーロラがガラスの様に砕け散る。

 その光景を夢でも見ているかと思ってしまったアナザーディケイドVE。

 

「──っあ」

 

 腹部のドライバー部分にロードバロンの拳が打ち込まれた時、全身を駆け巡る痛みが現実であるとアナザーディケイドVEに突き付けた。

 

「がああああああああっ!?」

 

 ロードバロンの拳によりアナザーディケイドVEが吹き飛んで行く。

 

「そんな小細工が俺の拳に通用するか!」

 

 拳を突き出した体勢のままロードバロンは吐き捨てる。

 

「ぐっ! がはっ! ごほっ!」

 

 殴り飛ばされたアナザーディケイドVEは立ち上がろうとするが、何度も咳き込んでしまうせいで立ち上がれず四つん這いに姿勢になっている。ロードバロンが拳を打ち込んだドライバーには罅が入っており、ロードバロンの拳の威力を物語っている。

 

「ごほっ! ごほっ! おのれぇぇ……!」

 

 それでもプライドの高さで痛みを押し殺して立ち上がってみせるアナザーディケイドVE。

 忌々し気にライダーたちを睨み付けるアナザーディケイドVE。

 

「──うん?」

 

 そこであることに気が付いた。

 

「……くくく、そうか、そういうことか! ふはははははは!」

 

 一転して愉快そうに笑い出す。

 

「何がおかしい……!」

 

 ゲイツリバイブはその笑い声に不快感を表す。

 

「理由は……俺たちにあるようだ」

 

 プロトドライブの言葉にゲイツリバイブは彼の方を見た。そして、言葉を失う。プロトドライブの肩の一部が消え始めている。

 プロトドライブだけではない。ビーストWSは胴体の一部が、電王VFは右足が、ロードバロンは左腕が消え出していた。

 

「これは……!」

「どうやら時間切れのようだな!」

 

 アナザーディケイドVEが勝ち誇った様に言う。

 

「歴史の歪みがお前たちにも影響を与え始めた! 愚かな奴らだ! 大人しくしていればライダーの力と記憶を失うだけに済んだものを! 新たなライダーを取り込んだことでお前たちは歴史に強く結び付き過ぎた! この世界のそのものがお前たちの存在を否定し、無かったことにしようとしているのだ!」

 

 歴史改変の悪影響を強く受けてしまった結果、消滅しようとしている。

 

「──まっ、仕方ねぇか」

「……何だと?」

 

 避けることの出来ない現実を突き付けたアナザーディケイドVEに返ってきたのは、あっけらかんとしたビーストWSの声であった。

 

「どうせ消える身だ。最後は派手に行こうじゃねぇか!」

 

 消えることを恐れずに快活に言い放つ。

 

「おお。俺も最後まで頑張る!」

 

 電王VFは片足が消えているがデンガッシャーを支えにしながら当たり前の様に言う。

 

「仮面ライダーとして最後まで戦い抜く。それが今の俺の使命だ」

 

 プロトドライブはその意志を揺るがすことはしない。

 

「ふっ。生憎、ここにいる連中はお前の口先で動揺する様な奴は居ない。当てが外れたな」

 

 意気揚々と喋ったアナザーディケイドVEを鼻で笑ってみせるロードバロン。

 誰一人アナザーディケイドVEの言葉に恐れを見せない。アナザーディケイドVEは恥を掻かされた気分になると同時に、消滅することに怯え一つ無い仮面ライダーたちを心底理解出来なくなる。

 頭の中に先程のロードバロンの言葉が過る。

 

『お前の怒りは俺たちへの恐れを打ち消す為のまやかしだ!』

「う、おおおおおおおおおお!」

 

 アナザーディケイドVEは跳躍した。アナザーディケイドVEの前に重なっていく等身大のカード型のエネルギー。

 時間稼ぎをすればライダーたちは消える。しかし、アナザーディケイドVEはそれでは我慢出来ない。自らの手で彼らを葬らなければ、心の裡に宿るものを払拭出来ない。

 

「うおっしゃあ! 行くぜっ!」

『ヒッサーツ! フルスロットル! スピード!』

 

 それを迎え撃つ為に最初に動いたのはビーストWSとプロトドライブ。ビーストWSの前方に魔法陣が出現し、プロトドライブが赤と青の光に包まれる。

 

「全て消えろぉぉぉ!」

 

 アナザーディケイドVEがカードを通過しながらキックを繰り出す。ビーストWSは地を懸け、プロトドライブは天に舞う。

 魔法陣を潜り抜けたビーストWSはドラゴンの幻影をその身に宿し、ドラゴヘルクローを輝かせ、プロトドライブは赤と青の光を右足に集束させる。

 

「うおりゃあああああ!」

「はあっ!」

 

 激突する互いの必殺の一撃。だが、やはり一撃の重みはアナザーディケイドVEの方が強く、ビーストWSらは押され始める。

 

「まだまだぁぁぁぁ!」

 

 ビーストWSは両手のドラゴヘルクローを突き立てたまま回転し、全身をドリルの様にして貫こうとする。

 

「──クリム、先に謝っておく。俺はこれから無茶をする」

『気にする事は無い。お互い消える身だ。やれるだけのことをやってやり給え! さあ、フルスロットルだ!』

 

 プロトドライブは技が発動した状態からシフトブレスのレバーを何度も倒す。

 

『スピ! スピ! スピ! スピ! スピ! スピ! スピード!』

 

 体がバラバラになる覚悟で限界以上の力を引き出すプロトドライブ。膨大なエネルギーがプロトドライブに流し込まれ、それによる熱によりプロトドライブの全身が赤熱化し、真っ赤に染まる。奇しくもそれは彼の跡を継ぐ者と同じ色であった。

 

『デネブ! 今だ!』

「おお!」

 

 電王VFはライダーパスをベルトに翳す。

 

『FULL CHARGE』

 

 発せられるエネルギーが線となってデンガッシャーへ吸い込まれ、薙刀の刃が光を帯びる。

 このまま突撃すると思いきや、電王VFの体が前のめりに倒れる。右足だけでなく左足も消滅してしまい、電王VFは歩けなくなっていた。

 だが、電王VFはそこで諦めない。

 

「おおおおおお!」

 

 電王VFはデンガッシャーを地面に叩き付ける。電王VFの体がその反動によって浮き上がり、そのままアナザーディケイドVEに向かって飛んで行く。

 

「たああああっ!」

 

 アナザーディケイドVEの胴体に叩き込まれるデンガッシャー。

 

「ぐああっ!」

 

 電王VFの渾身の一撃を受け、アナザーディケイドVEが怯む。

 

「今だ!」

『うおおおおお!』

 

 ビーストWSとプロトドライブが最後の力を振り絞る。それに比例して消え行く体。それでも彼らは臆しない。

 押されていたが拮抗まで持ち込んだ瞬間、衝突する力が弾けた。

 全員が力の余波で吹き飛ばされる。宙を舞う電王VF、ビーストWS、プロトドライブの体が消え、彼らが地面に再び降り立つことは無かった。代わりに朽ちたライドウォッチが地面に落ちる。

 

「ぐ、ううう!」

 

 とどめを刺すべく放った一撃を跳ね返されたアナザーディケイドVEが呻く。そんな彼に掛かる影。アナザーディケイドVEは既視感を覚えた。

 顔を上げたアナザーディケイドVEが見たのは、拳を握ったロードバロン。

 しかし、あの時とは違いロードバロンの体は虫食いの様に消え掛けている。今にも消えそうな手で拳を見せつけてもアナザーディケイドVEは恐れない──筈であった。

 

「もう一度、味わってみるか?」

 

 ロードバロンは拳を振り翳す。だが、その途中で拳が消滅する。無い拳で殴っても意味など無い。だが、それでもロードバロンは拳を繰り出した。

 ロードバロンの行為など無意味──

 

「がはっ!?」

 

 ──そう思っていたが違う。アナザーディケイドVEの罅割れたドライバーに拳が打ち込まれている。

 それはロードバロンのものではない。消えているロードバロンの胴体を突き抜けて伸びている。

 

「よく見ておけ」

 

 ロードバロンの背後。そこに立つのは剛烈となったゲイツリバイブ。

 

「ゲイツゥゥゥゥ!」

「これが俺の(ちから)だ!」

『一撃! タイムバースト!』

 

 苦し紛れに繰り出されたアナザーディケイドVEの肘がゲイツリバイブの側頭部に命中するが、ゲイツリバイブは怯まずにジクウドライバーを回転。

 橙の輝きを放つ拳がアナザーディケイドVEを突き飛ばす。

 その輝きの中でロードバロンが消えていく。最後に──

 

「まあまあだな」

 

 ──という言葉を残して。

 

「ぐああああああっ!」

 

 何度も地面を転げ回った後、アナザーディケイドVEはフラフラとしながら立ち上がる。ドライバー部分の破損はより酷くなっていた。

 

「悪足搔きだ……! この世界は滅びる……! お前たちに出来ることは、何も無い……!」

 

 抗えない現実を突き付け様とするアナザーディケイドVEだが、それを聞かされてもゲイツリバイブは平然としていた。

 

「……お前の世界が消えるのを防いでやる。ただし、お前の世界を救うのは……お前じゃない」

 

 その言葉に一瞬戸惑った様子を見せたアナザーディケイドVEだが、意味を察した時体をワナワナと震わす。

 

「まさか……!」

 

 アナザーディケイドVEは銀色のオーロラを出現させ、脇目も振らずにその中へ消える。

 向かった先は恐らくはツクヨミの許。そう、全ての計画の要はツクヨミにある。

 ゲイツリバイブはすぐにツクヨミたちと合流しようとするが──

 

「うっ」

 

 ──急な眩暈に襲われ、ゲイツリバイブは足を止めてしまう。

 

「これは……!」

 

 アナザーディケイドVEがした最後の足掻き。それがゲイツリバイブにとって当たり所が悪かった。

 四肢から力が抜け、視界が狭まっていく。今だに怪人たちが跋扈する状況下で気を失うなど死を意味する。

 何とか気を保とうとするが、やがて限界を迎えてゲイツリバイブは気絶してしまった。

 変身が解除されたゲイツに足音が静かに忍び寄る。

 

 

 ◇

 

 

 小さな揺れを感じながらゲイツは目を覚ます。自分が置かれている状況を把握するのに少しの時間が掛かったが、自分が背負われていることを理解した。

 

「ここは……」

「おお。目、覚ましたか」

 

 気さくな声。ゲイツはその声の主を知っている。

 

「フータロス!」

「ああ、うるせぇ。耳元で騒ぐな」

 

 ゲイツはフータロスに背負われた状態で何処かに向かっていた。

 

「ったくよぉ。急いで戻ってみたらお前一人ポツンと寝ているんでビックリしたぜ」

「……あいつらは──」

「ああー言わなくていい。大体察せる。もう、大丈夫だろ? 降りろ。もう、俺は腰がいてぇんだよ」

 

 フータロスの背からゲイツは降り、そして知った。

 

「お前……!」

 

 フータロスの体もまた至る所が消え掛けている。

 

「あいつらも消えちまったんだろ? 俺はどういう訳か少しだけ長持ち出来ているみてぇだ。まあ、お前が先に起きてくれて助かったぜ。安全な場所もまだ見つかってねぇしな」

 

「俺は……どれくらい気絶していた?」

「そんな大した時間じゃねぇよ」

「お前は一体どれだけ戦った!?」

 

 ゲイツは気付いた。まだ残っているフータロスの体に無数の傷が出来ていることに。ゲイツをあの場所から救い出す為に何度も怪人たちを撃退してきた証拠である。

 

「……まあ、最後の最後で役に立てて良かった。もう、あんな所で寝てんじゃねぇぞ」

「何故そこまで……」

「これでも結構お前らに感謝してんだぜ……俺」

 

 フータロスは照れ臭そうに言った後、ゲイツにある物を差し出す。

 

「たぶん全部ある筈だ」

 

 フータロスがゲイツに渡したのは壊れたライドウォッチ。ゲイツは渡されたそれをしっかりと握り締める。

 手の中にある壊れたライドウォッチからはもう力を感じない。だが、それでも戻って来たことに安堵する。

 

「フータロ──」

 

 もうそこにフータロスの姿は無かった。

 

「……どいつもこいつも言うだけ言って消えて行く」

 

 ゲイツは堪える様に体を震わす。

 

「礼の一言ぐらい言わさせろっ!」

 

 消えてしまった戦友たちに向け、ゲイツは怒りと悲しみを混ぜた声を叫ぶのであった。

 

 




そろそろ本編48話目の話も終わります。
やった最終話に入れそうです。

先にどちらが見たいですか?

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