仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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アナザーディケイドVE その26

 ツクヨミはファムアーマーの右肩装甲の一部を外す。白鳥の両翼が閉じたデザインをしており、飾りの様な印象を受ける。実は装甲裏に柄が設けられており、ツクヨミが柄を握ると刃が飛び出し、装甲からレイピアへと変わる。

 続いて左肩に装着してある外套が付けられた装甲も外す。その装甲裏にも同じく握り部分があり、ツクヨミがそれを握ると外套が硬質化し中型の盾となりツクヨミの武装が完了する。

 ゲイツリバイブはアナザーディケイドVEに注意を払いながらも横目でツクヨミの様子を見ていた。

 ゲイツがツクヨミのライダーの姿を見るのはこれが初である。戦士としての経験からしてツクヨミが変身したライダーはかなりの力を持っているのが感覚で分かった。それこそ自分に迫るぐらいの性能を持っている筈。また、もう使用不可能となっている筈のライドウォッチによるアーマー装着にも驚かされた。一体どういう原理で可能としたのか気になるところだが、今優先すべき所はそこでは無い。

 

「……ツクヨミ」

「──どうかしたの?」

「いや……頼りにさせてもらう」

「ええ。──私もよ」

 

 ゲイツリバイブはその短いやりとりで気付いてしまった。ツクヨミの体調が万全では無いことに。ツクヨミは隠しているが、共に戦って来たゲイツリバイブだからこそ差異が分かってしまう。

 

(ツクヨミ、お前はもしかして怪我を……?)

 

 ウォズが担いでいる意識の無い飛流。明らかに怪我を負っている。ツクヨミは飛流と行動を共にしていたのでツクヨミもまた負傷している確率が高まる。

 そして、アナザーディケイドVEの反応。ツクヨミが仮面ライダーへ変身しているがそれに対しての反応が薄い。もしかしたら、その姿を一度見ている可能性がある。

 目に映るあらゆる情報がゲイツリバイブの推測の正しさを補強していく。それは決して喜ばしいことではない。

 ツクヨミもまたゲイツリバイブにとって守るべき存在。傷で苦しむ姿など見たくない。しかし、同時に肩を並べるに足りる戦士であることも知っている。そして、傷よりも戦えない自分の無力さに苦しむのが分かっていた。

 自分がアナザーディケイドVEと独りで渡り合える力があればと悔やんでしまう。だが、どんなに悔やんでもこの瞬間に力を得ることは無い。

 

「──行くぞっ!」

 

 血を吐く様にその言葉を叫ぶ。

 

「ええ!」

 

 雄々しく返すツクヨミ。情けないと分かっているが、その声は頼もしかった。

 先行するのはゲイツリバイブ。剛烈の頑丈さを生かして例え攻撃はされたとしてもそのまま押し通るつもりだとアナザーディケイドVEを予想する。

 一直線の道を一切ずれることなく向かって来るゲイツリバイブに、アナザーディケイドVEは手刀を構えてその分厚い装甲ごと貫くつもりであった。

 その時、ゲイツリバイブの後方に立つツクヨミが盾を前に翳す。すると、盾から大量の白い羽根が飛び出した。

 ゲイツリバイブを追い抜いて白い羽根がアナザーディケイドVEへ降り注がれる。ツクヨミがこの場に現れた時の様に視界が覆い尽くされる程の大量の羽根がアナザーディケイドVEの周囲を舞っていた。

 

「二度も通用すると思うなっ!」

 

 アナザーディケイドVEが全身から波動を放つと舞っていた羽根が全て焼失し、消し飛ばされてしまう。

 羽根を取り除けば、残るはゲイツリバイブだけ。白い羽根に紛れながらジカンジャックローで攻撃する魂胆なのだろうが、その羽根を消してしまえばただ真っ直ぐ無策に突っ込んでくる間抜けな姿を晒すだけ。

 大振りに構えてジカンジャックローが届く前に、アナザーディケイドVEが手刀を突き出す指先から光刃が伸びて比較的装甲の薄い鳩尾部分に刺さる。

 声を発する間も無く刺さった光刃が背部まで貫く。誰が見ても致命傷に至る一撃。

 

「これで残るは──」

 

 瞬間、ゲイツリバイブの体が崩れて白い羽根に変わる。

 

「何だとっ!?」

 

 羽根を使った変わり身に虚を衝かれるアナザーディケイドVE。ならば、本物は何処に行ってしまったのか。

 アナザーディケイドVEの耳に入って来る風切り音。音のする方角は背後。

 

『つめ連斬!』

 

 アナザーディケイドVEが背後に首を向けるタイミングで疾風へ姿を変えたゲイツリバイブの爪がアナザーディケイドVEの背中を擦れ違い様に斬り付ける。

 

「ぐおっ!」

 

 背中に刻まれる二本線。通り過ぎていったゲイツリバイブを追おうと首を正面に戻したアナザーディケイドVEが見たのは、ゲイツリバイブと交代する様に前へと飛び込んできたツクヨミであった。

 

「はあっ!」

 

 ツクヨミは、レイピアでアナザーディケイドVEの脇腹を斬り付けながら背後へ移動。アナザーディケイドVEは本能的にそれを目で追いそうになるが、そうすれば今度は正面からゲイツリバイブが仕掛けて来ると感じ、ギリギリの所で踏み止まる。

 攻撃することで意識を逸らし仲間の為の隙を生み出す連携。しかし、それが分かれば引っ掛かることなど無い。

 同じ戦い方が通用する程アナザーディケイドVEは甘い敵ではない。

 

「むっ!?」

 

 周囲に舞い散る大量の白い羽根。

 また、同じ戦い方が通用すると思っている程ゲイツリバイブとツクヨミの考えは甘くはない。

 白い羽根が集まって人の形を作る。アナザーディケイドVEの周囲に十を超える数現れる。

 外見だけ整えた白い羽根の人形たち。見た目だけですぐに偽者であると見抜けてしまう。

 しかし、先程まで居た筈のツクヨミとゲイツリバイブの姿が無くなるとなれば話は違って来る。

 変わり身の時とは逆にツクヨミたちが白い羽根を纏って紛れ込んでいるとしたら? 

 その可能性が頭を過った瞬間に周りの人形たちが全て疑わしく思えてしまう。

 その内の一体が風に舞う様な軽やかな跳躍をし、手を伸ばしながらアナザーディケイドVEに接近してくる。

 疑心暗鬼になっているアナザーディケイドVEが動くのにはその動きで十分であった。

 アナザーディケイドVEは指先を向け、そこから光弾を発射。

 胴体を撃ち抜かれて体を折る。上半身と下半身に千切れたかと思えば体が崩れて白い羽根へと戻る。

 倒したのは偽者。すると、アナザーディケイドVEの視覚の端に人形の動きを捉える。すぐさま視線を向けるアナザーディケイドVE。

 棒状に固めた羽根を掲げる人形。棒状の羽根は剣を模しているらしい。それを緩慢な動きで振り下ろそうとしている。

 万が一の可能性すら許さないアナザーディケイドVEは、振り向き様に人形の首を刈る様な後ろ回し蹴りを放つ。

 羽根の人形に踵が触れた瞬間、羽根の空虚な感触ではなく硬い硬質な感触が足に伝わってきた。

 本物か、と思った時羽根が散り、中からツクヨミが持っていた盾が現れる。盾を囮にした偽者と判断し、すぐに意識を別の人形へと向けるアナザーディケイドVE。

 視線を外したと同時に違和感を覚えた。

 

(何だ……?)

 

 視線を外した途端、体が粟立つ感覚に襲われる。何かに狙われている様な視線。外していた視線を再び盾に戻す。

 アナザーディケイドVEの後ろ回し蹴りで罅が入っていた盾が砕ける。すると、その後ろからツクヨミが現れた。

 盾を仕込んだ羽根の人形に重なる様に二、三歩後ろで己も羽根の人形に扮して紛れ込んでいたツクヨミ。外れるを引いたと思い油断した所を狙って突っ込む。

 

「はああああ!」

 

 ツクヨミのレイピアがアナザーディケイドVEの肩へ突き刺さる。

 

「ぐあっ!」

 

 鋭い痛みに声を上げながらも接近しているツクヨミの胴体に掌打を打ち返す。

 

「ううっ!」

 

 掌打の一撃で突っ込んで来た以上の速度で後ろへ吹っ飛ばされるツクヨミ。しかし、ただではやられず、刺し込んだレイピアを剣身半ばでわざとおり、アナザーディケイドVEの体内にレイピアの剣先を残すという形でやり返した。

 アナザーディケイドVEは追撃しようとしたが、その拍子に折れたレイピアが体の内側で擦れてしまい、その痛みによって硬直してしまう。

 ツクヨミはこの瞬間に賭ける。

 

『フィニッシュタァァイム! ファム!』

 

 飛ばされながらもツクヨミはジクウドライバーを操作。ファムライドウォッチの力を解き放つ。

 周囲に舞っていた羽根が吸い込まれる様にアナザーディケイドVEの背後へ集まっていき、集まった羽根が巨大な白鳥を模る。

 

『ミスティー! タイムジャック!』

 

 巨大な白鳥が翼を羽ばたかせる。そこから生み出される突風は、動きを止めていたアナザーディケイドVEの体を浮かせる程の勢いであった。

 

「これは!?」

 

 白鳥の羽ばたきによって飛ばされるアナザーディケイドVE。飛んで行く先にはツクヨミが待ち構えているのが見える。

 距離にすればたった数メートル。だが、この間にもツクヨミが攻撃の手を緩める事は無かった。

 

『フィニッシュタァァイム! リバイブ!』

 

 飛ばされるアナザーディケイドVEの前に立ち塞がる様に出現する大量の『きっく』の文字。

 

『百烈! タイムバースト!』

 

 ゲイツリバイブは突風の中を高速で飛び回り、『きっく』の数だけアナザーディケイドVEに蹴りを繰り出す。

 

「うおおおおおおおっ!」

 

 全身に余すところなく乱れ打たれるゲイツリバイブの蹴り。逃れようにもアナザーディケイドVEの背中を押す猛風がそれを許さない。

 

「こんなものでぇぇ!」

 

 アナザーディケイドVEは手足を振るって風の中で藻掻く。しかし、その抵抗も現れた『きっく』の文字が打ち付けられることで強制的に中断させられてしまう。

 吹き荒ぶ風とゲイツリバイブの絶え間なく繰り返される蹴りに挟まれながらアナザーディケイドVEの体は風の流れのまま飛ばされ続ける。

 だが、突如としてアナザーディケイドVEに繰り返されていた蹴撃が止まる。

 何故ならばアナザーディケイドVEは既に到着点に達しようとしていたからだ。

 到着点に待ち構えるツクヨミはレイピアを両手で握る。ツクヨミの力を受けて折れた剣身から白の光刃が伸びる。

 

『リ・バ・イ・ブ! 剛烈! 剛烈!』

『フィニッシュタァァイム! リバイブ!』

 

 その隣に立つのはゲイツリバイブ剛烈。疾風の高速能力を生かして刹那で形態変化をし、あまつさえ必殺の準備に入っていた。

 

『一撃! タイムバースト!』

 

 飛び込んで来るアナザーディケイドVEを、ツクヨミの斬撃、ゲイツリバイブの蹴りが迎え撃った。

 

「がはっ!」

 

 刻み込まれる斬撃と蹴りの痕。アナザーディケイドVEは地面と平行に飛ばされた後、頭から地面に着地してその状態から数度跳ねていった。

 

「はあ……はあ……」

 

 アナザーディケイドVEに会心の一撃を与えたツクヨミであったが、それを喜ぶ余裕は無かった。前の戦いで負った傷がツクヨミの体を蝕み、限界を迎えさせようとする。

 

「ツクヨミ、無理はするな」

 

 ゲイツリバイブはツクヨミの体調不良を見て思っていた以上に傷が深いのを知り、これ以上の戦いを止めさせようとする。

 

「まだよ……まだ気を抜けない」

 

 ツクヨミは大の字になって倒れているアナザーディケイドVEを油断することなく睨み付けていた。

 

「やった……!」

 

 二人の奮戦にソウゴは歓声を上げる。声を上げた瞬間にふらついてしまうが、二人の戦いに比べれば些細なことである。

 

「二人共良く戦ってくれている。戦ってくれているが……」

 

 ウォズは素直に喜べない。アナザーディケイドVEを押している筈なのに未だに勝利のビジョンが見えない。倒れ伏しているアナザーディケイドVEを見ているだけで輝かしい勝利への希望が塗り潰される黒く深い絶望が見えて仕方がない。

 

「──ゴ君っ」

「……今何か言った?」

「いや、私は何も……?」

 

 誰かの声が聞こえ、ソウゴはウォズに問うがウォズは首を横に振る。

 

「──ウゴ君っ!」

「また聞こえた……」

「ああ、私にも聞こえたよ……」

 

 先程よりもハッキリと聞こえる声。しかし、その声の主はここには居ない、というか居てはいけない人物の声に似ていた。

 

「ソウゴ君っ!」

「お、叔父さん!?」

 

 間違いなく順一郎の声であると確信し、声の方を見れば大きめのケースを抱えてこちらに順一郎が走って来ていた。

 

「はあ……はあ……ふぅ、ふぅ……や、やっと見つけた……!」

 

 年齢と運動不足のせいで息を切らし途切れ途切れで喋る順一郎。

 

「馬鹿っ! 叔父さん! こんな時に外に出るなんて!」

 

 思わず怒鳴ってしまう。怪人、怪物が跋扈するこの状況下で力を持たない順一郎が外出するなど自殺行為に等しい。

 

「何て無茶を……」

 

 ウォズも順一郎の行為に唖然とさせられていた。同時に普段は常識人に思える順一郎もまた常磐ソウゴと血を連ねる者であると納得してしまう。

 

「ご、ごめん……ど、どうしてもソウゴ君に届けたい物があって……でも、運が良かったよ……ここまで来るのに怪物に一体も会わなかったし……」

 

 こんな状況で怪人、怪物に遭遇しなかったなど奇跡に等しい。偶然で片付けるにはあまりにも出来過ぎているので何かしらの見えざる力を感じさせるが、今はそれについて深く考えている時ではない。

 

「俺に届けたい物?」

 

 順一郎は息を整えた後、ケースを開く。

 

「これ」

「これって……!」

 

 開けられたケースの中には新品同様まで修復されたライドウォッチが並んでいた。

 

「君たちの大事な時計なんでしょ? 叔父さん、時計屋だから。直せない時計なんて無いからさ」

「叔父さん……」

 

 それ以上何も言えなかった。原理など知らない筈のライドウォッチをここまで完璧に修理してしまう順一郎の腕に感動してしまう。傍にいたウォズもソウゴと同じ気持ちであり言葉を失っていた。

 ソウゴは並んでいるライドウォッチの内、ビルドライドウォッチを手に取り、外装を半回転させてビルドの顔を浮かべさせるとスイッチを押す。

 しかし、鳴る筈の音が鳴らない。もう一度押してみる。やはり鳴らなかった。

 

「え? あれ? ちゃんと直したのに……」

 

 ソウゴの動作を見て不安を覚える順一郎。きちんと直したのに何処か修理し切れていなかったのかと思い始めた。

 

「──大丈夫だよ、叔父さん」

 

 ソウゴはビルドライドウォッチを強く握り締める。すると、ソウゴの手の中でビルドライドウォッチが輝きを放った。

 ソウゴの中に託されていたライダーたちの歴史が空になってしまったライドウォッチの中へ分け与えられていく。

 

『ビルド!』

 

 それによりビルドライドウォッチが息を吹き返す。順一郎とソウゴによってライドウォッチが真の復活を遂げる。

 

「おお! ちゃんと動いた! 良かったー!」

 

 安堵する順一郎。しかし、すぐに安堵出来ない事態が起こり始める。

 

「くっくっくっ……」

 

 倒れていたアナザーディケイドVEが笑い出す。

 

「今更それがどうした……! 俺の描いたシナリオに何一つ変更など無い!」

 

 アナザーディケイドVEが叫ぶ。すると、肩に埋め込まれていた折れた剣先が傷口から押し出されていく。そして、逆再生の様に倒れた体勢から体を起こすアナザーディケイドVE。ツクヨミとゲイツリバイブに受けた傷が高速で再生していく。

 

「叔父さん! 飛流を連れて安全な所へ!」

「飛流君? おわっ! 怪我しているの!?」

 

 飛流の存在に気付き、驚きながらもソウゴの指示通りに飛流を担いで離れていく順一郎。

 

「ジオウ! 今のうちにライドウォッチを!」

「ここは私とゲイツが時間を稼ぐわ!」

 

 ソウゴが全てのライドウォッチの力を取り戻すまでの間アナザーディケイドVEと戦い続けることを選ぶ二人。

 その二人に応える為にソウゴは次々とライドウォッチに触れて失われた力を取り戻させる。

 

(ツクヨミにこれ以上の戦いは無理だ。なら俺が……!)

 

 ツクヨミの限界が近いことを察していたゲイツリバイブは、負担を減らす為に先行してアナザーディケイドVEと戦おうとする。

 急いで前にでるゲイツリバイブ。ツクヨミも後を追おうとするが、一歩踏み出した瞬間に膝が折れてその場で立ち止まってしまう。

 戦いの場に生まれる一瞬の隙。本来ならば致命的とは程遠いものであったが、相手がアナザーディケイドVEならば話は別。この破壊者はこの隙を逃さない。

 アナザーディケイドVEはゲイツリバイブを迎え撃つ為に手刀から禍々しい輝きを放つ光刃を発生させる。

 そして、何を思ったのかゲイツリバイブが間合いに入る前にそれを突き出した。

 一見すれば意味不明な行為。しかし、突き出された光刃の先に銀色のオーロラが出現したのならば事態は変わってくる。

 光刃の先がオーロラの中へ消える。そして、消えた光刃の先は──

 

「うっ」

 

 ──ツクヨミの背後に出現し、腹部を貫いていた。

 一瞬の出来事に誰もが時を止められたかの様に動けなくなる。

 刺されていた光刃が抜かれ、ツクヨミは変身を解除しながらゆっくりと倒れていく。

 

『ツクヨミィィィ!』

 

 ソウゴとゲイツリバイブが倒れ行くツクヨミの姿を見て叫んでいた。

 戦友の崩れ落ちる姿を見て動揺しない訳が無い。だが、アナザーディケイドVEという悪鬼にとってそれは付け入る隙でしかない。

 

「はははははははっ!」

 

 アナザーディケイドVEは嘲る様に笑うとその体を変形させ、ドライバーへと変えると空中に浮かび上がる。

 

「あれは……!」

 

 目を見開らきながら見上げるウォズの前でドライバーから光の線が伸び、それが巨大なアナザーディケイドVEを形作る。

 アナザーディケイドVEに気付いたソウゴは叫ぶ。

 

「ゲイツ! そこから離れて!」

 

 警告するが僅かに遅いく巨大な手がゲイツリバイブを掴み取る。

 

「何っ!?」

 

 掴まれたゲイツリバイブがアナザーディケイドVEの眼前に持って来られ──

 

「終わりだ!」

「ぐあああああああああ!」

 

 アナザーディケイドVEの手の中で握り締められる。剛烈の装甲が罅割れ、一部が破壊されて剥がれ落ちる。

 

「止めろ! 止めろぉぉぉ!」

 

 ソウゴが叫ぶがアナザーディケイドVEは力を緩めることは無かった。

 ゲイツリバイブは苦悶の叫びを上げ続けるが、ある瞬間を境に叫ばなくなる。同時にゲイツリバイブの体が糸が切れた様に力が抜けた。

 

「あ、ああ……」

 

 それが何を意味するのか嫌でも理解してしまう。

 ソウゴは届くことのないゲイツリバイブに手を伸ばす。アナザーディケイドVEはその様子を一笑しながら握っていた手を広げた。

 手の隙間から落ちていくゲイツリバイブ。このまま地面へと落下──する前にアナザーディケイドVEは右脚を振り上げていた。

 生死の判断すら付かないゲイツリバイブへ直撃するアナザーディケイドVEの蹴り。衝突の瞬間に黒とマゼンタの光が閃光の如く発せられた。

 

「うわあっ!」

 

 地面が割れ、衝撃波がソウゴを煽る。土煙が消え去った後、砕けた地面の中央に傷だらけのゲイツが血を流しながら横たわっていた。

 

「ゲイツ……ゲイツ!」

 

 ソウゴは駆け寄りゲイツを抱き起す。

 

「ゲイツ、しっかりしろ……!」

「ジオウ……」

 

 薄っすら開けられるゲイツの目。焦点が合っておらず目も虚ろであった。ゲイツは震える手を伸ばす。しかし、掴む相手を探して左右にゆらゆらと揺れる。既に目も見えていない状態であった。

 

「ゲイツ!」

 

 ソウゴはその手をしっかりと握り締め、自分がここにいることを伝える。

 

「ジオウ……」

 

 その声は細く、掠れていた。

 

「お前は……お前が選んだ道を……進め……たとえ……それが……奴の計画通りだと……しても……」

 

 ゲイツの一言一言が声ではなく命を吐き出している様に思えてくる。

 

「でも……!」

「大丈夫、だ……どんな道を選ぼうが……お前が……最高最善の魔王に成れることを……俺は信じて……いる……」

 

 力を恐れるソウゴ。ゲイツは今のソウゴなら決して道を違う事が無いとその背を押す。

 

「幸せだったぞ……この時代に来て……」

 

 初めは未来を変える為にソウゴを抹殺するのが目的だった。だが、そこで知った常磐ソウゴの人柄に興味を持ち、考えの違いから何度も衝突し、いつの間にか胸を張って仲間と呼び合える仲となった。

 最初の自分と今の自分を比べ、ゲイツは微笑を浮かべる。

 変わったのは未来では無く自分。しかし、後悔は何一つ無い。

 

「俺は……ここまでだ……ウォズ……仲間として……頼む……こいつを見守ってやってくれ……」

「ゲイツ君……!」

 

 ゲイツの最期の頼みにウォズは唇を震わせながら『逢魔降臨暦』を強く握り締めた。

 

「ソウゴ……俺は……お前と……友になれて……」

 

 最期に呼ぶのはジオウではなく無くソウゴという名。ソウゴが握っているゲイツの手から力が無くなる。完全に脱力し、より重く感じるゲイツの手。だが、その重さの中に命は含まれていない。

 

「ゲイツ! 死ぬな!」

 

 ソウゴは涙を流しながら叫ぶが、ゲイツがその声に応えることは無かった。

 ソウゴは呆然とした様子でツクヨミの方を見る。倒れ伏しているツクヨミ。命が消えた瞬間を目撃してしまったソウゴだからこそ分かる。ツクヨミもまた命を失っていることに。

 日々を共に送っていた仲間。その仲間が二人も死んだ。ソウゴは抜け殻の様にその場から動くことが出来なかった。

 

「どうした? ただ呆けているだけか?」

 

 頭上から聞こえるアナザーディケイドVEの声。分かっている。その声が自分の憎悪を煽ろうとしていることが。分かっている。自分をオーマジオウにしようとしているのが。

 分かっている。全て分かっている。

 

「このまま仲間と共に散るか?」

 

 ソウゴに選択肢など無いと思い報せる為に少々痛めつけようと考えたアナザーディケイドVEは拳を見せつける様に振り翳す。

 ソウゴはそれを見向きもしない。その様子にアナザーディケイドVEは失望を込めて鼻を鳴らす。

 

「ふん。思いの外脆いな、貴様は」

 

 仲間の死を軽く見るアナザーディケイドVE。仲間だった者を平気で切り捨てられる彼にとってその程度のことなのだろう。

 ソウゴの頭上に振ってくるアナザーディケイドVEの巨大な拳。大きな影がソウゴに掛かる。

 アナザーディケイドVEは一つ思い違いをしていた。この状況でもソウゴは答えも出せないまま茫然自失となっていると思っている。

 事実は違う──ソウゴは既に答えを出していた。

 

「ぬうぅ!?」

 

 アナザーディケイドVEの拳がソウゴへ触れる前に止まる。何かがアナザーディケイドVEの拳を阻んでいた。

 

「あれは……!」

 

 アナザーディケイドVEの角度からは見えなかったが、ウォズからは見えていた。ソウゴの傍に突然現れたライドウォッチがアナザーディケイドVEの拳を防いでいた。

 クウガからビルドに至るまでの十九のライドウォッチが盾となってソウゴを守る。しかし、それだけでは終わらない。ソウゴを中心として次々とライドウォッチが出現していく。

 今まで手に入れたサブライダーたちのライドウォッチ。それだけではない。入手した覚えの無いライドウォッチも現れている。この場にあるライドウォッチにより導かれて引き寄せられる並行する世界からのライドウォッチ。

 並行世界のライドウォッチを集められるということは当然のことながらあのウォッチもこの場に呼び寄せられる。

 

「アナザーウォッチまで……!」

 

 今まで倒してきたアナザーライダーのウォッチすらもソウゴに味方する様に出現した。

 全てのウォッチがソウゴの為に現れ、ソウゴを守る。

 

「ぐうう……!」

 

 どんなに押し込もうともアナザーディケイドVEの拳は先に進まない。たかがライドウォッチ。目を凝らさなければ見えない様なちっぽけな物。しかし、巨大な拳はたかがちっぽけなものによって完全に阻まれている。

 

「ぐっ!」

 

 拳が跳ね上がる。防がれているだけでなく弾かれてしまった。

 アナザーディケイドVEの巨体が唖然する中、乱れ舞うライドウォッチの中心でソウゴは友の亡骸を静かに横たわらせ、そして敵を睨む。

 ソウゴの腹部で黄金の光が稲妻の様に何度も輝くと、光が形となった新たなドライバーと化す。

 その形はジクウドライバーに似ていた。しかし、全体を黄金に染められ、本来ならばライドウォッチを収める箇所に赤い宝玉が入った装飾によって埋められていた。

 そのドライバーはジクウドライバーに非ず。そのドライバーを装着することを許されるのはこの世で唯一人──オーマジオウのみ。

 王へと誘うドライバー──オーマジオウドライバーを装着したソウゴは天地を震わす程の叫びを上げる。

 

「うあああああああああああっ!」

 

 天が轟き、雷光が輝いたかと思えば幾つも歯車が空に現れ、互いに繋がり合い巨大な時計盤を生み出す。

 同じく大地は震え、地響きと共に地面が割れるとソウゴの足元に空と同じく無数の歯車が噛み合った時計盤が生み出される。

 重なり合っていた時計盤の長針短針が動く。長針は未来に進み、短針は過去に戻る。一刻動くだけで空にあった雲が全て消し飛び、大地に亀裂が生まれる。

 二刻進む。時計盤に浮かび上がる『ライダー』の文字。自らを示す文字が現れた瞬間、天を我儘で飛び交っていた怪物たちはあるものは太陽に焼き尽くされたかの様に灰と化し、あるものは時の流れが急激に進んで風化する。

 大地では亀裂からマグマの様なエネルギーが噴き出し、それに触れた怪人たちを問答無用で消滅させてしまう。

 圧倒的な力は前兆ですら他者を蹂躙する。しかし、それほどの力でありながら消滅していくのは怪人、怪物のみであり人々は無事であった。

 天と地に刻まれる王の名。そして、その狭間に立つのは人であるソウゴ。

 今こそ誕生の言葉を謳う。

 

「変身ッ!」

 

 天、地にある量ることすら馬鹿馬鹿しく思える程のエネルギーがソウゴという人の器一つとなる。

 

『祝福の刻!』

 

 左右の装飾を押し込められたオーマジオウドライバーが叫ぶ。

 

『最高! 最善! 最大! 最強王!』

 

 読み上げ、並べられていく傲慢なまでに過剰な言葉。だが、生まれ出る者にはそれを許される程の力があった。

 黄金の円環が何重にもなり、ソウゴの体を黄金の炎で包み込む。

 目の前で変身するソウゴ。ソウゴがオーマジオウの成ることを心待ちにしていた筈、なのにアナザーディケイドVEの意志に反して体はソウゴを排除する為に動こうとする。

 それは恐怖が本能に訴える防衛反応。しかし、アナザーディケイドVEは指一本動かすことが出来ずにいた。

 変身する過程で僅かに漏れ出ている力が嵐の様に吹き荒れ、それに当てられているアナザーディケイドVEは倒れまいと足掻くのに必死だった。

 黄金と黒に彩られた王者の鎧。仮面を縁取る黄金の装甲には金剛石が嵌め込まれ、金に勝るとも劣らない輝きを放ち、その背には長針短針をマントの如く背負っている。

 肩に掛けられる時計ベルト型の勲章。右胸にはライドウォッチの為のスロットが六つ設けられており、そこには今までソウゴたちが手に入れてきたライドウォッチが嵌め込まれている。すると、瞬く様にライドウォッチが別のライドウォッチへ入れ替わる。変わったと思えばまた変わるを繰り返し、常にライドウォッチが変動していた。

 

『オーマジオウ!』

 

 オーマジオウの仮面に『ライダー』の四文字が収めることで変身が終わると同時に溢れ出た王の気がアナザーディケイドVEを吹き飛ばす。

 

「うおおおっ!」

 

 アナザーディケイドVEの巨体が変身直後の余波に煽られて転倒する。

 気付けば空を見上げているアナザーディケイドVE。自らの置かれている状況に信じ難い思いであった。

 

(馬鹿な……!)

 

 度重なる連戦。戦いの中で増幅させてきた怒りの感情。それらによってアナザーディケイドVEの力は限界まで引き出されている。アナザーライダーの力をここまで引き出させるのは後にも先にも自分以外存在しないと自負出来る。

 だというのに、全てを破壊しうる力を手に入れたと思っていたのに対峙するオーマジオウを前にすると全てが無に帰してしまう。

 

「違う……! 後一歩! 俺は後一歩で王座に君臨することが出来るのだっ!」

 

 自らを鼓舞する言葉に聞こえる。同時に現実を直視することを避ける為の台詞にも聞こえた。

 

「オーマジオウの力を手に入れれば俺は王へと至る!」

 

 アナザーディケイドVEの巨体が跳ね起きる。その勢いだけで小さな建物が崩れてしまう程であった。

 アナザーディケイドVEは大地に仁王立ちするオーマジオウに右掌を向ける。そこから放たれるマゼンタ、黒の二色が入り混じった光線。オーマジオウの隙を作り、その力を吸収する為の牽制である。

 オーマジオウの体が光線に呑み込まれた──

 

『クローズの刻!』

 

 ──光線の奔流の音すら掻き消す叫び。その直後に光線を斬り裂いて出現する蒼炎のドラゴン。

 

『ドラゴニックフィニッシュ!』

 

 光線が蒼炎のドラゴンが吐き出す蒼炎によって押し戻され、アナザーディケイドVEの右掌が蒼炎によって焼かれる。

 

「ぐあっ!」

 

 攻撃を押し返された挙句片手を焼かれてしまうアナザーディケイドVE。すぐさまオーマジオウに怒りの眼差しを向けるが視線の先にオーマジオウは居ない。

 

『メテオの刻!』

 

 オーマジオウはアナザーディケイドVEの腹部前に移動しており突き出した拳を寸止めしていた。その間隔僅かワンインチ。

 

『リミットブレイク!』

 

 僅かな隙間で加速するオーマジオウの拳。打ち込まれた瞬間水色の閃光が生じ、アナザーディケイドVEの両足が地面から離れた。

 アナザーディケイドVEは声を発することも出来ずに再び地面に倒れ伏す。

 それを見下ろしながらゆっくりと地面に降り立ったオーマジオウ。その姿を見てウォズは息を呑む。

 

「──ウォズ」

「……何かな我が魔王」

 

 ウォズは言葉が一瞬出てこなかった。極度の緊張で口の中が渇き、舌が上手く動かなかったからだ。現在のオーマジオウも未来のオーマジオウと比べても遜色無い威圧感を放っている。本人同士なので当たり前のことだが。

 

「……祝え」

「我が魔王……」

 

 誕生を祝福する言葉を願うにはオーマジオウの声は重い苦しみに満ちていた。出来ることならば辿り着きたくなかった己の極致。しかし、成ったからにはその責任を果たすという覚悟が伝わって来る。

 ならば家臣としてウォズもまた己の役目を果たす。最初で最後となるオーマジオウ誕生の祝福の儀式。

 

「祝え! 時空を超え、過去と未来をしろしめす究極の時の王者! その名もオーマジオウ! 歴史の最終章へたどりついた瞬間である!」

 

 声高々に謳い上げる祝福の言葉。全身全霊を込めてウォズは叫んだ。

 

「ソ、ソウゴ君……?」

 

 順一郎の声が聞こえ、オーマジオウは僅かに顔を向ける。だが、順一郎の目を見ることは出来なかった。どんな目を向けられているのかが知りたくなくて見えなかった。

 幼い頃から言っていた王になった。しかし、オーマジオウの姿は望んでいた王の姿であったと胸を張って言えない。

 だが、それでも一つだけ確実に言えることがある──

 

「う、うわあっ!」

 

 順一郎が悲鳴を上げる。オーマジオウの力に引き寄せられたのか大勢の怪人たちが集まり、空では青を覆い尽くす程の怪物らが飛び回っている。

 ──これ以上誰も傷付けさせない。

 

『ブレイブの刻!』

『ビーストの刻!』

 

 オーマジオウは右手の手刀に炎と冷気という相反する力を放ち、五指を限界まで開いた左手の前に金色の魔法陣を出現させる。

 

『クリティカルフィニッシュ!』

『ストライクビースト!』

 

 天に向けて右手を振るうと炎と氷の刃は無数に放たれ、命中した怪物らは凍結、炎上しながら地面へ落ちていく。

 魔法陣から出現した巨大な獅子の頭部は怪人たちをその牙で捉え、次々と嚙み砕いていく。

 それでも数で押し切ろうとしてくる怪人、怪物たちの集団。しかし、オーマジオウという全てを超えた力の前に数など無力。

 

『アクセルの刻!』

『マキシマムドライブ!』

 

 オーマジオウは手刀を繰り出す。その手からは燃え盛る巨大なAの文字が放たれ、怪人たちを貫いていく。

 続けざまに両手を振るう。両手には緑と黄の光を放っていた。

 

『ゼロノスの刻!』

『フルチャージ!』

 

 振るわれた両手の軌跡に沿って発射されるAとVの字の光矢。光矢によって怪物たちは撃ち抜かれて爆散する。

 

『バロンの刻!』

 

 振り抜いた手刀をそのまま地面に突き立てるオーマジオウ。

 

『バナナスカッシュ!』

 

 流し込まれた力がバナナ型のエネルギーとなって地面から生え、地面に立っている怪人たちを貫く。

 視界一杯に居た筈の怪人、怪物らが瞬く間に姿を消す。今のオーマジオウにとってそれらを一掃するのは容易いことであった。

 

「ぐ、くく……! おのれ……!」

 

 オーマジオウが雑魚たちに構っている間にアナザーディケイドVEは立ち上がる。

 

『バースの刻!』

 

 アナザーディケイドVEの前に球状の巨大なカプセルが出現。

 

『セルバースト!』

 

 カポーン、という音を鳴らしながらカプセルが開き、アナザーディケイドVEの顔面目掛けて巨大ドリルが撃ち出される。

 

「う、おおおおおおおっ!?」

 

 凶悪且つ容赦無い回転音を響き渡らせながら迫ってくるドリルをアナザーディケイドVEは声を上げながら思わず両手で掴み取る。

 回転する刃がアナザーディケイドVEの両手を無慈悲に削り取っていくが、アナザーディケイドVEは両手から光を発して逆にドリルを破壊する。

 

「はあ……! はあ……!」

 

 危うく顔面を貫かれる所であったアナザーディケイドVEは息を乱していた。だが、どんなにアナザーディケイドVEが慄こうともオーマジオウは攻撃の手を緩めない。

 

『轟鬼の刻!』

『斬鬼の刻!』

 

 耳のすぐ傍にで聞こえる声。アナザーディケイドVEが急いで見れば肩にオーマジオウが乗っていた。その手に半分が銀と緑、もう半分が黒と赤のツインネックギターを構えて。

 刃となっているボディをアナザーディケイドVEの肩へ突き立てる。痛みなど感じない些細な刺傷だが、オーマジオウがこれをするとなると次に何かが起こると分かるので背筋に悪寒が走る。

 急いで叩き落とそうとするが遅かった。

 

『音撃斬!』

 

 掻き鳴らされるギターの弦。音と共に流し込まれる膨大な量の雷。今のアナザーディケイドVEの体内では雷嵐が生じているに等しい。

 叫ぶことも出来ず、体内に雷を流されている影響で全身が痙攣しながら硬直し倒れることも許されない。

 

『マッハの刻!』

 

 木偶の坊と化したアナザーディケイドVEへの更なる追撃。オーマジオウはアナザーディケイドVEの肩から跳躍する。

 

『フルスロットル!』

 

 オーマジオウの体が高速で回転し出し、まるでタイヤの様な姿となるとアナザーディケイドVEの体を伝って急降下。アナザーディケイドVEの体にタイヤ痕が残るどころか走った跡は削り取られていた。

 

「──がはっ!」

 

 硬直から解放されたアナザーディケイドVEは膝を突く。オーマジオウが強いことは知っていた。しかし、それはアナザーディケイドVEの常識の範囲内でのこと。実物は非常識なまでに強い。

 すると、アナザーディケイドVEの背後に銀色のオーロラが現れる。

 

(ここは退いて一旦立て直すのだ! 逃げるのでは無い! まだ準備が足りないのだ! これを経験として次に備えれば……!)

 

 心中で自らの行為を正当化しながらアナザーディケイドVEはオーロラの中へ消えていく。

 

「逃げられると思っているのか……?」

 

 その浅はかな考えに怒りを滲ませながらドライバーに触れる。

 

『ガタックの刻!』

 

 オーマジオウは両腕を左右に大きく広げる。

 

『ライダーカッティング!』

 

 広げた両腕を交差する様に振るうと、空中に一対の大きな青い曲剣が現れる。交差して鋏状になったそれは電光を放ちながらオーロラに刃先を突き立てる。

 オーロラが裂かれると共に刃を閉じていく曲剣。

 

「ぐおおおおおおっ!」

 

 曲剣に胴体を挟まれたアナザーディケイドVEがオーロラから引き摺り出され、投げ捨てられる。

 空間移動すらもオーマジオウの前では児戯同然であった。

 投げ捨てられたアナザーディケイドVEの体が地面を転がっていく。

 

「スウォルツ……」

 

 オーマジオウの低い声。

 

「王となると一度は口に出したんだ……最後まで逃げずに抗ってみろ……!」

 

 王を目指す者に後退は許されない。あるのは前進のみ。それしか許されない。

 

「く、ぐうう……!」

 

 アナザーディケイドVEが歯を食い縛って立ち上がる。あらゆる選択肢を潰されたアナザーディケイドVEにとって残された道はオーマジオウが言う様にオーマジオウを倒すという前進しかない。

 オーマジオウはドライバーの左右を押し込む。

 

『終焉の刻!』

 

 それが告げる様に次の一撃が互いにとっての最後の一撃となる。

 

「うおおおおおおおおおお!」

 

 アナザーディケイドVEもまた覚悟を決め、ドライバー前で手を交差する。

 両者の力が解放される。オーマジオウは黄金の力を炎の様に全身から放ち、アナザーディケイドVEは黒とマゼンタの光を霞の様に纏う。

 オーマジオウが跳ぶ。背に付けられた針が翼の如く左右に展開する。

 アナザーディケイドVEも跳ぶ。地面を蹴り付けた勢いで大地震の様に大地が揺れた。

 

『逢魔時王必殺撃!』

 

 敵へ導く黄金の『キック』の文字が並ぶ。

 アナザーディケイドVEの前方にも発する光と同じカード型のエネルギーが連なる。

 

「うわあああああああああ!」

「おおおおおおおおおおおっ!」

 

 命を燃や尽くす様に叫ぶ両者。キックの文字を収める度に輝くオーマジオウの右足。カードを通過する度にどす黒い光を纏っていくアナザーディケイドVEの右足。

 全てを通過し終えた時、必殺と必殺が空中で衝突。

 覆い尽くす様な暗闇の中で輝く黄金の光。

 その時発せられた光はどう表現すべきだろうか。唯一の目撃者であるウォズと順一郎は、その光に宇宙誕生の光があるとすればこんな光なのだろうと共通の感想を思い浮かべた。

 両者の力は拮抗──することなど無かった。

 黄金が暗闇を裂く。そして巨大な爆発が起こる

 

 

 ◇

 

 

 何一つ色の無い虚無の様な空間でソウゴとスウォルツは対峙していた。

 勝者と敗者。向かい合う両者であるが勝者であるソウゴには勝利を喜ぶ表情は無い。

 

「……結局、俺はお前には、オーマジオウの力には勝てなかったということか」

「最初から間違っていたんだよ……オーマジオウの力を利用することが間違っていた。王様は誰かの力を利用してなるもんじゃない。誰かと出会って、仲間になって、協力して成っていくものだって俺は思っている」

 

 スウォルツは黙ってソウゴの話を聞いていた。

 

「あんたには凄い力があった。王様になれそうな程の。──でも、あんたは独りだった。独りぼっちじゃ王様には成れない。だから──」

「もういい」

 

 スウォルツはソウゴの言葉を止める。

 

「俺はお前に負けた。それが全てだ。俺の王への道はここで閉ざされた。ならば、勝った者らしく王への道へ進んでいろ」

 

 もう話すことないとスウォルツは背を向ける。

 

「スウォルツ。俺は──」

「お前の意見は求めん」

 

 最期まで傲慢に言い放ち、スウォルツはその姿を消していった。

 

 

 ◇

 

 

 アナザーディケイドVEは倒された。残るはオーマジオウのみ。そして、オーマジオウこそが唯一残されたライダーとなった。

 

「我が魔王……まずはおめでとうと言っておこう。君は最強の王者となった」

 

 ウォズは『逢魔降臨暦』を閉じる。もう不要と言わんばかりに。

 

「そして、聞こう。王となった君が何をするのかを? この世界に君臨するのかい? それとも──」

「ソウゴ君!」

 

 オーマジオウへ駆け寄る順一郎。

 

「ソウゴ君は……ソウゴ君だよね?」

 

 オーマジオウの覇気を間近で浴び、声を震わせながらもソウゴの心配をする。

 

「……大丈夫だよ、叔父さん」

 

 オーマジオウの姿のまま、いつも通りの声で返す。

 

「ウォズ。俺はこの世界に君臨することは無い」

「──じゃあ、何をするんだい?」

「俺はこの世界を破壊し……創造する。それが俺のオーマジオウとしての最初で最後の仕事だ」

 

 オーマジオウの言葉に順一郎は目を見開き、ウォズは真っ直ぐオーマジオウを見つめる。

 

「それが君の選択なら」

 

 ウォズは微笑を浮かべ、恭しく頭を下げる。

 

「楽しかったよ。君たちとの日々は──色々と振り回されたけどね」

「そう言うウォズだって最初は俺たちのこと振り回してたじゃん」

「そうだったかな?」

 

 互いに軽口を言い合う。ここで別れることは分かっていた。しかし、また出会うことを信じてさよならは言わない。

 

「破壊と創造って、一体何するの?」

「こうするんだ」

 

 オーマジオウは全身から黄金の輝きを放つ。その輝きは瞬く間に世界を包み込んでいく。

 

「では最後に……祝え! そして刮目せよ! 時空を超え、過去と未来をしろしめす究極の時の王者! その名もオーマジオウ! 最強王者が新世界を創造する瞬間を!」

 

 そして、世界は──

 




アナザーディケイド激情態
身長:192.0cm
体重:83.0kg
特色/能力:アナザーワールドの創出/ライダー能力の破壊・奪取

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