暗闇の中でスポットライトの様に一条の光に照らされる二人。片や青年、片や玉座に座る老年の男。
『覇道ではなく王道を進むか、若き日の私よ』
『歴史を創造して創り直す。それが今の俺に出来る精一杯だ』
『二度と王にはなれんぞ?』
『成れるよ──何か行ける気がする』
「──君」
『時計の針はさ──』
「ウゴ君」
『未来にしか進まないけど──』
「ソウゴ君!」
名を呼ばれてソウゴはベッドの上で目を覚ます。何か大事な夢を見ていた気がしたがすっかり忘れてしまった。
「ソウゴ君。急がないと学校遅刻しちゃうよ」
順一郎に言われてベッドから降り、一階へと下りていくソウゴ。机の上には朝食が並べられている。
「もー。しっかりしないと。夏休みが終わって今日から新しい年号が始まるんだよ? ほら、シャキッとする」
活を入れられるが寝ぼけ眼のまま朝食を食べながら垂れ流しにされているテレビのニュースを聞き流す。
『本日、冒険家の五代──さんが──山の登頂に成功を──』
『国会議員の火野──紛争根絶為に──』
ニュースが終わるとCMが流される。どこぞの博物館の紹介をしていた。
『皆で知ろう! 人類進化の歴史! 人類基盤史博物館!』
特に関心することなくソウゴは黙々と朝食を食べていた。
朝食を食べ終え、制服に着替えると自転車を押して学校へと向かう。
その道中では様々な会話が聞こえて来る。
「あのレストラン行った?」
「行った行った! っていうかあれなんて呼ぶの? アギオメガ?」
「この間クリーニング屋行ったらすっげぇ愛想の悪い店員が居てさー」
「知ってるそこ。でも腕は良いんだよなー。すっげぇ真っ白になるぜ?」
「あのさ……一週間ぐらい私の猫が行方不明なんだ……」
「猫探しならいい所知ってるよ。探偵事務所なんだけど、所長は物凄く渋くてカッコイイんだよねー。助手の人もカッコイイけどね」
「天ノ川学園で練習試合やったんだけど、そこに変わった先生がいてさー」
「リーゼントの先生でしょ? 顔は良いんだけどねー」
「なあ、今度デートするんだけど和菓子とドーナツ、どっちが良いと思う?」
「何だその二択?」
「たちばなっていう有名な店も良いんだけど、この間ドーナツ屋の前で客が食ってたプレーンシュガーが滅茶苦茶美味そうだったから」
どれもこれも他愛のない会話。ソウゴは足を止めることなく自転車を押していく。
すると、隣を通っていく柔道部部員。顔見知りが何人かいた。
「常磐、お前進路指導で王様になるって言ったんだってな?」
揶揄ったくるがソウゴは別段気にしない。子供の頃からずっと言っている夢である。
他の部員は笑って去って行くだけだが、一人立ち止まる者がいた。
ソウゴの友人でもある明光院景都である。
「目を覚ましてやる!」
「え? 何?」
いきなり襟を掴まれると景都によって巴投げをされた。
「いった!」
受け身も取れないので背中を強打し悶絶するソウゴ。
「一本!」
宣言する景都の肩を背後から誰かが叩く。
「うん?」
次の瞬間に景都は襟を掴まれて投げられ、ソウゴの隣に背中から叩き付けられた。
「明光院君は乱暴なんだから……」
景都の所業に呆れて彼を投げ飛ばしたのは二人の共通の友人である月読有日菜である。
「俺は……こいつの為を、思って……」
背中の痛みに悶えながら説明する。
「言い訳しない!」
彼を一括する有日菜。
そんな三人のやり取りを遠目から眺めている二人の男女がいた。
「また朝っぱらからじゃれ合ってる……」
「でも憧れるなー。王様先輩」
そんな発言に呆れる少女。少年が言うに臆せずに王様に成ると宣言することが憧れの理由であり、ソウゴなら実現出来るという可能性を感じていた。
「あっそう。そんなことより滅茶苦茶悪い報せが有るわ……私たち遅刻しちゃいそう」
少女の言葉にソウゴたちも急いで時間を確認する。確かにこのままでは遅刻してしまう時間であった。
全員急いで学校を目指す。
校門前では大柄の男性教諭が遅刻する者がいないか目を光らせていた。
「お前たち急げ。間も無く閉めるぞ。遅刻はどんな理由でも遅刻だ。抗議の意見は求めん」
威圧感溢れる男性教諭の横をソウゴたちは通り抜けていく。間一髪の所で間に合った。
「はあ……良かった。ところでさ」
景都と有日菜はソウゴの方を向く。
「今日から新しい年号らしいけど、新しい年号って何だったけ?」
『はあ?』
ソウゴの発言に二人は揃って呆れた表情となる。
「全く……それぐらいニュースで知っとおけ! 常識だぞ!」
「まあ、常磐君らしいと言えばらしいんだけどね」
「いいか、覚えておけよ。今日から新しい年号は──『平成』だ」
「平成かぁ……ううん?」
何故かソウゴは首を傾げる。
「何か懐かしい様な、そんな気がする」
「そんな訳無いだろうが」
ソウゴにまたしても呆れながら三人は仲良く教室へと向かっていった。
そんな彼らの様子を校舎の屋上から見下ろす一人の男──ウォズ。
「普通の高校生、常磐ソウゴ。彼には大魔王にして時の王者オーマジオウとなる未来が待っている……かどうかは、まだわからない。ここから先は、この本とは違う歴史が記される必要があるようです」
閉じた『逢魔降臨暦』に鍵が掛かる。新たなページが刻まれるその日を待って。
全てが改変された世界で唯一改変前の記憶を持つウォズ。彼らとの関係は断たれ、孤独とも呼べる境遇になっても尚ウォズに悲壮感は無かった。
彼は信じているのだ。いつかまた仲間として会える日が来ると。
「その日が来るまで私は見守るとしよう。……そういう約束だったからね」
EXTRA STORY1 旅の始まり
「……何処だここは?」
気付けば見知らぬ町の見知らぬ建物の前に立っていた。
「俺は……」
何をするか思い出そうとしたが、自分の名前以外思い出すことが出来ない。
「あの……」
建物から出て来た女性に声を掛けられる。
「写真の現像ですか?」
「現像? 何故だ?」
「だってうちは写真館ですし……貴方、カメラを持っているじゃないですか」
指摘されて青年は建物が『光寫眞館』だということと自分が首からカメラを提げていることに気付いた。
「これは……俺のか?」
「貴方のじゃないんですか?」
「知らん。名前以外覚えていない」
「え!? 記憶喪失なんですか!?」
いきなり記憶喪失と名乗る青年に驚く女性。
「門矢士。この名前に聞き覚えはあるか?」
「門矢士……すみません。分からないです。あ、私は光夏美といいます」
「光夏美……なら夏みかんだな」
「夏みかんって、いきなり変な渾名を付けないで下さい!」
写真館の前でぎゃあぎゃあと騒ぎ始める二人。それを遠くから眺めている者たちがいた。
「これでいいのかい? 力も記憶も奪っちゃってさ」
一人は海東。
「これでいい。あいつも俺だ。力ならその内取り戻すさ」
もう一人もまた門矢士であった。
「あいつはもう一度初めから旅をする必要がある。──今度は仲間と一緒にな」
かつて激情態であったもう一人の自分を見つめる士。
「ふーん。まあ、それも面白いかもね。僕もその内ちょっかいでも掛けてみようかな」
海東は笑い、写真館の中へ入っていく二人を見る。
「君も恋しくなっちゃったんじゃないかな? 夏メロンのことが」
「夏みかんだ。……別に」
「ちゃんと謝ってまた一緒に旅をしようとお願いすればいいのに」
「──ふん」
鼻を鳴らして明後日の方を見る士。意固地になっている彼を見て海東はまた笑う。
「向こうの士は今度はきちんと食べられる様になるかな? ナマコ」
「どうでもいい。そもそもお前は食べられるのか? ナマコを?」
「……食べれるさ」
「何だその間は?」
悪友同士のやりとりをしながら二人は銀色のオーロラの中へ消えていく。
「──今度は良い旅を」
もう一人の自分の旅の無事を願いながら。
EXTRA STORY2 Quartzer
「やられたな……」
玉座にて頬杖を突いている男が不機嫌そうに呟く。
「まさかあんな手を使って来るなんてね……お陰で計画が全部やり直しだ」
「新しい時代は俺たちが創る──筈だったというのに」
側近のジョウゲン、カゲンも男と似た様な心境であった。コツコツと積み上げきた計画がソウゴの創造によって台無しにされ、計画を実行する理由が無くなってしまった。
「……まあいい。切り替えていくぞ。平成の世も続けばいずれは前の平成と同じ様になる。その時に動けばいい」
男は不機嫌な表情を消し、玉座の下を見下ろす。
「それに俺たちにとって全く利が無かった訳じゃない。そうだろう? 加古川飛流」
玉座の下では飛流が男を睨み上げていた。
「俺を利用するつもりか?」
「常磐ソウゴの力は俺たちが思っている以上にイレギュラーだった。だが、それと対になるお前もまたイレギュラー。その力を俺たちの為に使え」
男の言葉に飛流は不愉快そうに顔を歪めるが、すぐにそれを好戦的な笑みで覆う。
「──いいだろう。せいぜい利用してみろ。俺もお前たちを利用してやる……!」
「その反抗的な態度、良いな。利用したければ利用してみろ。出来れば、な」
男も似た笑みを見せ、お互いを牽制する。
「──だがまずは歓迎の言葉を送ろう。ようこそQuartzerへ!」
これにてテレビ版エンドとなります。この世界では全部リセットされて仮面ライダージオウが平成一号になる――という予定になっております
次回は話が途中で分岐した後Over Quartzer編へと入っていきます。
先にどちらが見たいですか?
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IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
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IFゲイツ、マジェスティ