アナザーディケイドVEが消滅したのを見てジオウは変身を解除する。半壊しているジクウドライバーを外すと共に戦ってくれたライダーアーマーたちは消えていった。
「……ありがとう」
一緒に戦ってくれたライダーアーマーたちに礼を言う。
「勝ったな──ジオウ」
ゲイツが立ち尽くしているソウゴの傍に寄る。消える寸前まで治癒に専念してくれたポッピーアーマーのおかげでここまで動ける様になっていた。
「──うん」
「流石は我が魔王。まさか、あんな事が起こるとは私にも想像も付かなかったよ」
ウォズもまたソウゴの近くに来ていた。
そして──
「ソウゴ……」
「ツクヨミ……」
ソウゴはツクヨミの顔を見て複雑そうな表情をする。
「ツクヨミ、俺は──」
ツクヨミは最後まで言わせず、首を横に振る。
「良いのよ、これで。兄は王になんてなるべきじゃなかったの……だから、これで良かったの」
兄と妹という血の繋がりはあったが情は希薄であった。所詮はスウォルツにとって自分は野望の為の糧にしか過ぎないことは分かっている。
そもそもツクヨミにはスウォルツとの兄妹であった時の記憶が無い。それはスウォルツ自身によって葬られてしまった。
だというのにツクヨミは何故か思い出してしまう。過去の自分の世界に行った時のことを。幼い頃のツクヨミの手を握る若き日のスウォルツの姿を。
憎しみも打算も無い純粋な兄と妹の関係であった時の光景を。
ツクヨミの目から一筋の涙が流れる。
「──これで良かったの」
スウォルツは悪ではあったが、彼の為に涙を一つ流す者が居てもいいのであろう。ましてやそれが実の妹であるツクヨミならば。
だが、諸悪の根源であるスウォルツを倒してもまだ問題は残っている。消滅しようとしているツクヨミの世界。ライダーの歴史が歪められて荒れ果てようとしている世界。
この二つの世界を救わなければならない。
ツクヨミの世界に仮面ライダーが存在すれば、この世界にいる仮面ライダーとの間に道ができ、人々をツクヨミの世界に避難させることが出来る、というのが最初の計画であった。
しかし、その為には人柱として仮面ライダーが一人この世界に残らなければならない。ソウゴはその人柱になるつもりであったが、ツクヨミはそれを嫌がり兄殺しの業を背負ってスウォルツを代わりにするつもりであった。だが、スウォルツはもう存在しない。ツクヨミの計画は叶うことは無くなった。
先延ばしにしていた現実とようやく向き合う時を迎える。
「俺が──」
ソウゴが言い掛けた時、声が止まった。中断せざるを得ない状況が目の前で起こっていたからである。
「──!」
声無きツクヨミの叫び。何故、声が届かないのか。それはツクヨミが銀色のオーロラの向こう側に居るからである。
「馬鹿な!?」
「これは!?」
ゲイツとウォズも突然現れた銀色のオーロラに驚愕する。その間にツクヨミは銀色のオーロラと共に消え、何処かへ転移させられてしまった。
「ツクヨミ!」
「スウォルツが生きていたのか!?」
「そんなことはあり得ない! スウォルツは倒された! そして、彼のアナザーウォッチも確実に破壊された!」
銀色のオーロラは門矢士本人かディケイドに連なる力を有している者が使用出来る。だが、門矢士は封印されておりディエンドの海東は負傷して動けない状態。そして、アナザーディケイドVEを持つスウォルツは先程倒した。ならば、一体誰が──そこまで考えた時、ソウゴはもう一人居ることを思い出す。
「何だあれは……!?」
ゲイツが何かに気付き、空を見上げている。ソウゴとウォズも見上げると天に向けて無数の光の柱が伸びていた。
「あれって……あっ!」
光の柱を良く見るとその柱の中を人が通っているのが見える。
「まさか、あれって!」
「──君の考えている通りだよ、我が魔王。あれはこちらの世界と向こうの世界を繋げる道。つまり、ツクヨミ君が送られたのは彼女が元居た世界だ」
道が繋がったことで人々が強制的に向こうの世界へ送られていく。
「ソ、ソウゴくーん!」
悲鳴の様な声。見ると順一郎が光の柱によって向こう側へ送られている最中であった。
「叔父さんっ!」
順一郎はあっという間に天へ昇っていってしまった。
「なっ!?」
「くっ!?」
順一郎だけではないゲイツもウォズも光の柱の中に捕らわれる。ソウゴが手を伸ばすが、光の柱はそれを弾いてしまった。
「ジオウ!」
「我が魔王!」
抵抗する暇も与えられず二人は向こうの世界へ送られてしまう。
呆然と空を見上げるソウゴ。その時、こちらへ近付いて来る足音が聞こえた。振り向かなくてもその足音の主が誰なのか分かる。
「これは君の仕業なんでしょ……飛流?」
名を呟くと共に振り返るとソウゴが言う通り飛流が立っており、全てを分かっている様なソウゴの顔を見て、つまらなそうな表情をしていた。
「一人ぼっちになった割には随分と余裕そうだな?」
「そう見える? これでも結構、寂しいんだけどね」
挑発する物言いに対し、ソウゴは苦笑しながら答えた。
「──ありがとう」
「はあ?」
礼を言うソウゴに飛流は顔を顰めながら聞き返す。
「ゲイツたちが居たら、きっと俺がしようとしていたことを絶対止めた。でも、飛流が向こうの世界に送ってくれたおかげでゲイツたちと喧嘩せずに済んだ。最期が喧嘩してお終いって嫌だしね」
やはりソウゴはこの世界の人々の為に人柱になる決意を捨てて無かった。これしか方法が無いのならばそうするまで。全ての人々の幸福と世の中を良くしたいと今でも願っているが、それには人と世界が必要なのである。
どちらも無くなってはソウゴが王様になる意味が無い。
ソウゴの自己犠牲に満ちた最期の言葉を飛流は鼻で笑う。
「お前は何か勘違いをしているな?」
「え?」
その瞬間、ソウゴもまた光の柱の中にいた。
「これって!? 飛流! どうして!」
「世界を救うのはお前じゃない──」
飛流は嘲笑を混ぜた笑みを浮かべながら己を指差す。
「──世界を救うのはこの俺だ」
ソウゴが光の柱によって天へ運ばれていく。
「飛流! 飛流っ!」
ソウゴは大地を見下ろし何度も飛流の名を叫ぶ。飛流は天を見上げてそれをジッと見ていた。
「……これで借りは無しだ」
ツクヨミから言われた幼い頃の飛流は同じく幼い頃のソウゴに助けられたという真実。飛流自身は覚えていないし認めてもいない。しかし、第三者にそれを延々と言われ続けるのも気に喰わない。
だからこそ、ソウゴの命を救うことでその借りをチャラにした。ただ、誰かにそう思われると癪なのでついでに世界ごと救ってやった。
「ははははは! 見ろ! 俺はお前だけじゃなく世界も救ってやったぞ! こんなことがお前に出来るのか!? 出来ないよな!? 最後の最後で勝ったのは俺だ!」
小さくなっていくソウゴに届くことのない勝利の宣言。高らかに笑った後、今までの彼とは結び付かない程穏やかな声で一言零す。
「……じゃあな」
今の飛流の胸中は彼にしか分からない。誰にも教えるつもりもない。
「……何だ、まだ結構いるな?」
飛流の背後にワラワラと怪人、怪物たちが集まり出していた。時間の歪みで発生したそれらはライドウォッチの復活で全て消滅すると思いきや、修正までに時間が掛かるのか数は減ったがまだ顕在であった。
「いいだろう。纏めて遊んでやる」
アナザーゲイツマジェスティウォッチを構える飛流から先程の穏やかさは消え去り、元の加古川飛流へと戻っていた。
だが、それで彼は構わない。情に絆されるなど自分らしくないのは分かっている。アナザーライダーの力を統べる裏の王の姿こそが加古川飛流の正しき姿なのだ。
『ゲイツマジェスティ……』
怪人、怪物の無数の群に異形の王が襲い掛かる。
◇
「ここは……」
光の柱で送られた先、独りそこへ連れて来られたウォズは動揺する。そこが見知らぬ場所だからではない。知っている場所だからこそ動揺しているのだ。
「ウォズ。良くやった」
その声を聞こえた瞬間、ウォズは跪いていた。体に染み付いてしまった反射的な行動であった。
ウォズが恐る恐る見上げると高みに置かれた玉座があり、そこに男が座っている。
その左右には戦国時代でウォズとゲイツが戦ったジョウゲンとカゲンが立っている。現代的な服装ではなくウォズと同じ服装をしており、それだけで何かしらの繋がりがあることを示していた。
「俺たちの計画は完璧、いやそれ以上の結果を出してくれた。お前もそうだが、スウォルツの奴も良くやったな。──泳がせていて正解だった」
今までの出来事全てが掌の上のことだと言い切る。傲慢な発言であったが、それを咎める者はいない。当事者であるウォズさえも。
「さあ、計画の仕上げを始めよう。俺達、クォーツァーによる──」
男は玉座から立ち上がる。
「新しい平成の幕開けだ」
これで劇場版の話に繋がりました。
話を書く為に色々とアナザーサブライダーも出しましたねー、もう出ないと思いますが。
どのアナザーサブライダーが良かったのかも教えてくれたら幸いです。
先にどちらが見たいですか?
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IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
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IFゲイツ、マジェスティ