朦朧する意識の中、ソウゴの脳内ではある光景が流れていた。
廃墟となった街。幼い頃の自分。そして、自分へ話し掛けてくる顔に黒い靄がかかった男。
『お前には王となり、世界を破滅から救う使命がある』
黒い靄の男が語り掛ける言葉。その出来事もまたソウゴが王様を目指す切っ掛けの一つであった。
(……一つ? なら、もっと最初に──)
思い返しながら自ら抱いた感想に疑問を抱き、もっと深く思い出そうとするが、その前に男の黒い靄が消える。
黒い靄の男はスウォルツであった。時の王者となる素質を持つ子供を探す為にソウゴや飛流を巨大兵器──ダイマジーンが暴れる世界へと連れて行き、そこでソウゴがオーマジオウになることを見定めたのだ。
すると場面が逆行していく。次の場面はスウォルツによって他の子供たちと一緒に拉致された直後の場面。
ダイマジーンに襲われ、命の危機に瀕する。他の子供たちは逃げ出し、ソウゴもまた逃げようとするが、その直前に意識を失った状態の子供──飛流を見つける。
ダイマジーンが破壊した建物の瓦礫が飛流へと降り注いだ時──
『危ない!』
ソウゴの声と共にその意志が『アブナイ』という形で具現化し、瓦礫を全て弾き飛ばしてしまう。
ソウゴの身に起こる異能力。それを見たスウォルツは確認する為にダイマジーンをソウゴへ嗾ける。
巨大な機械の手がソウゴへと伸ばされる。
【力の使い方を教えてやろうか?】
頭の中で囁かれる声。それが誰のものかも分からなかったが、ソウゴは教えて欲しい、と強く念じた。
ソウゴを通じて放たれる力。それに触れたダイマジーンの体は急速に劣化し出す。銀色に輝いていた体は赤茶色の錆によって覆い尽くされ、それだけでは止まらずに砂の様に風化してしまう。
凄まじい速度で時間の進められたダイマジーンは跡形も無く消え去ってしまった。
幼い頃のソウゴが王として見初められた日。それを第三者の様に傍観していた今のソウゴは思い出す。
あの時聞こえた声は間違い無くあの男のものであった。
断片的にしか思い出せなかった両親を失った後の記憶が今になって鮮明に思い出すことが出来た。否、思い出すというよりも記憶をこじ開けられた様な気分である。事実、頭の奥に痛みを感じている。
同じ名を持つ常磐SOUGOと接触したことが原因と言える。
(替え玉……真の大魔王……なら、俺は……)
曖昧になっていた意識が段々と覚醒していく。それに伴い鈍って体の感覚も元に戻り出し、全身に痛みを感じる。打ち付けた箇所は熱を持ちその熱と痛みによってソウゴの意識の覚醒が加速していく。
口の中に鉄の味がする。SOUGOに蹴られたことで口内を切ったのが原因である。舌で切れた所に触れる。鋭く強烈な信号となってソウゴの意識を一気に引き上げた。
「うう、くっ……思い、出した……!」
過去の記憶を思い出したものの、すぐに思い出したくもなかったという感想を抱いてしまう。
常磐ソウゴの人生はスウォルツによって大きく狂わされ、その狂わされた原因が常磐SOUGOの企みによるもの。今に至る人生が誰かの掌の上であったなど悪夢でしかない。
『SOUGO! SOUGO! SOUGO! SOUGO!』
目覚めたソウゴの耳に飛び込んでくるのはけたたましい歓声。誰もが途切れることなく繰り返すSOUGOの名。
呼ぶ声はSOUGOであってソウゴに非ず。これだけの大観衆が居るというのにソウゴは孤独の中にいた。
『SOUGO! SOUGO! SOUGO! SOUGO!』
分かり切ったことだが、この歓声に人々の意志は感じられない。ただ讃えるだけの声は機械的であり、まるで群衆がスピーカーに成り下がっている様に思えた。
自由と意思を奪い、人々を隷属させるなどソウゴが見過ごせる筈も無く、痛む体を使命感で突き動かして立ち上がろうとする。
「う、おおおおおおっ!」
体に走る痛みが休め、寝ていろ、このまま楽になれと屈するよう誘惑してくるが、それを振り払う為にソウゴは叫び、両足でしっかりと立つ。
「はあ……はあ……! ゲイツ! ツクヨミ!」
古墳を見上げながら安否の分からない二人の名を口に出すと、ジクウドライバーを装着。だがそれは、スウォルツとの戦いによって半壊したジクウドライバーであり、片側のスロットにしかライドウォッチを装填出来ない。
『ジオウ!』
それでも構おうことなくジオウライドウォッチをスロットに挿し込み、ジクウドライバーを回転させながら助走をつける。
「変身!」
『ライダーターイム!』
走り出すと共に全身が悲鳴を上げるが、それを無視して疾走しながらソウゴは変身する。
『仮面ライダージオウ!』
ジオウへ変身完了と同時に跳躍し、高台付近まで一気に跳び上がる。
「うん?」
観衆に向けて自らの勝利を誇示して拳を突き上げていたバールクスが現れたジオウに目を向ける。だが、ジオウの目はバールクスには向けられていない。彼の目は倒れ伏しているゲイツとツクヨミしか入っていなかった。
「ゲイツ……! ツクヨミ……!」
動かない二人の名を叫ぶジオウ。当然のことながら声が返ってくることは無かった。
二人の様子を見て、ジオウはやっとバールクスを見る。その目からは抑え切れない怒りが溢れていた。
バールクスが無言で手を掲げると待機していたクォーツァーのメンバーがゲイツ、ツクヨミの傍に瞬間移動をし、二人を抱き上げると再び瞬間移動をして何処かへ消えてしまう。
「二人を何処にやった! 返せ!」
攫われたことに激昂するジオウ。一方でバールクスの方は冷めた目でジオウを見ている。正確にはジオウではなく半壊したジクウドライバーを見ていた。
「何だそれは? それで俺と戦うつもりか?」
息巻くジオウを無視して半壊しているジクウドライバーを指してバールクスは言う。
「だったらどうした!」
「──流石に笑う気すら失せるな」
バールクスの声に徐々に怒りの色が混じってくる。平成ライダーの力が使えないジオウなど歯牙にもかけない相手。だが、それが生意気にも歯向かおうとしているのだ。バールクスにとっては不愉快極まりない。
「大人しく寝ていた方が君の為だったよ、かつての我が魔王よ」
そんな中でウォズがジオウへ話し掛けた。
「ゲイツ君やツクヨミ君なら万が一だが勝つ可能性はあった。だが、今の君には万に一つの勝機も無い。仮に他のライドウォッチを使えたとしてもだ」
「そんなのやってみなくちゃ──」
「やってみなくても分かるのさ。何故なら我が魔王バールクスの力は──」
「ウォズ、話が長い」
いつの間にか傍に立っていたカゲンがウォズの肩を掴んでそれ以上喋ることを許さない。
「……ウォズ、暫く見ない間にお喋りになったな」
「……私の口数は以前と変わらないと思うが?」
「君は口が立つし饒舌だけど、余計な事を喋らない奴だったと思うんだけど?」
ジョウゲンがウォズを探る様に言う。こちらも音も気配も無くウォズの背後に立っていた。
ジオウはウォズたちの間に流れる不穏な空気に戸惑っているが、バールクスの方はクォーツァー同士の小さな揉め事には意も介さない。
そんなことよりも無礼なジオウをどう裁くかを考えていた。
「そういえば……行ける気がする、というのがお前の口癖だったな。この状況でも言えるのか? その台詞を」
「聞きたいなら言ってやるさ……!」
「はっ! ──お前の無謀は俺には侮辱にしか映らんぞ」
バールクスが殺気立つ。ジオウを本気で潰そうと思っているのが嫌でも伝わってくる。
「お前如き、俺が手を下すまでもない」
バールクスはライドウォッチホルダーからライドウォッチを一つ外す。
「身の程を教えてやる」
『ロボライダー!』
起動するのはロボライダーライドウォッチ。バールクスの力の根源の一つである仮面ライダーBLACKRXが変身する形態の一つであるロボライダーの力が込められている。
ロボライダーはRXよりも力と装甲が増した形態であり、強力な光線銃ボルティックシューターを扱う。
そして、もう一つ能力が存在する。
ジオウの耳に二つの音が飛び込んで来る。一つは風を切る音。もう一つは火が噴く音。そのどちらもジオウにとって耳慣れた音であった。
まさかと思い、ジオウは空を見上げる。
「そんな……!?」
ジオウの頭上で滞空するのは二台の機影。ジオウ、ゲイツ専用のタイムマジーンであった。
当然、ジオウが呼んだのではない。二台のタイムマジーンを呼び出したのは間違いなくバールクスによるもの。
これこそがロボライダーライドウォッチの能力。機械にリンクし、操る。
『タイムマジーン!』
タイムマジーンがビークルモードからロボモードに変形し、守護する様にバールクスの前方に並んで立つ。
ウォズの裏切り、仲間の敗北、そして愛機との敵対という心労が重なる展開に眩暈が起きそうになる。
「さっきまでの威勢はどうした?」
「くっ……!」
バールクスの挑発にジオウは仮面の下で唇を噛み締める。心はまだ折れてはいない。しかし、空元気になれる程現実を直視していない訳では無かった。
「ダメ押しだ」
バールクスはライドウォッチホルダーからもう一つライドウォッチを外し、ロボライダーライドウォッチと一緒にタイムマジーンへ投げ放つ。
その内の一つがゲイツのタイムマジーンの機体に吸い込まれる。
『ロボライダー!』
ライドウォッチ型の頭部がロボライダーライドウォッチに置き換わり、ロボライダータイムマジーンは右手を突き出す。
光が集まり実体化すると光線銃ボルティックシューターが握られていた。本来ならば自動式拳銃ぐらいのサイズなのだが、タイムマジーンの大きさに合わせて実体化している為、ジオウの視点からすると大砲を突き付けられている様に見える。
ロボライダータイムマジーンはボルティックシューターから光弾を発射。それはジオウの足元に着弾。爆風と衝撃でジオウは吹き飛ばされる。
「うわあああっ!」
飛ばされるジオウ。直撃していないが着弾の際に生じた熱波により体から白煙が上がっている。
「くっ……」
吹き飛ばされた何度も地面を転げ回った後の止まるジオウ。ダメージによって力の入らない体を無理矢理起こそうとするが──ピチャ。
「えっ?」
支え、起こそうする手や脚に伝わる濡れた感触。いつの間にか足元には水溜りが広がっていた。
雨など降っていないし、古墳上に出来る水溜りとしては不自然過ぎる。まさか、と思った時には手遅れ。
『バイオライダー!』
水溜りが噴き出し、それに呑み込まれるジオウ。噴き出し水は形を変え、タイムマジーンの姿となったが金属の体では無く液体の体になっており、体内でジオウを捕らえる。
タイムマジーンの頭部は濃い青の顔、銀のマスク、赤い目をしたバイオライダーライドウォッチに換えられており、ジオウは藻搔きながらロボライダータイムマジーンの隣にいた自分のタイムマジーンが居ないのを知る。
今、こうやってジオウを苦しめているのはまさしく自分の愛機であった。
「はははっ。お決まりの台詞を早く言ってみろ。『行ける気がする』ってな」
声を出すことすらままならないジオウを嘲るバールクス。バールクスは指揮者の様に指を振るうとロボライダータイムマジーンが発砲。バイオライダータイムマジーンの体を突き破った光弾がジオウの腕を掠める。
(うっ!)
熱した金属を押し当てられた様な痛みがジオウを襲う。一方で光弾に撃ち抜かれたバイオライダータイムマジーンの体は何事もなかったかのように元へ戻る。
バールクスが指を振る度に銃撃を繰り返すロボライダータイムマジーン。だが、どの光弾もジオウの手足を掠めるだけであった。
嬲られていることは分かっているが、ジオウは抵抗することが出来ない。バイオライダータイムマジーンの体内は液体とは思えない程の粘度があり、身動きすらとれなかった。
「──さて、そろそろ仕上げとするか」
バールクスは銃に見立てた手でジオウの右腕を指す。
「取り敢えず、腕一本貰っておくか」
無慈悲な宣告。ロボライダータイムマジーンの銃口がジオウの右腕に照準を定めると──突如として黒いストールがジオウへ伸び、ジオウのジクウドライバーに絡まるとそれを取り外してしまう。
変身解除され、ソウゴはバイオライダータイムマジーンの中で気泡出して苦しみ出す。このままでは溺死は免れない。
「──おい、ウォズ」
バールクスが振り返る。ウォズの手には半壊したジクウドライバー。
「失礼を。だが、我が魔王よ。この程度の相手にはこれぐらいの結末がお似合いかと」
悪びれもせずに言い切るウォズをバールクスはじっと見つめる。周りのクォーツァーの面々も同じ様にウォズを睨んでいた。
すると、バールクスはつまらなさそうに手を振る。溺死寸前のソウゴがバイオライダータイムマジーンの体内から排出され、咳き込む。
バールクス自身は今のところはソウゴを殺すつもりは無かった。しかし、嬲る過程で死んだとしたらそれはそれで別に構わなかった。だが、誰かが先にそれを行おうとしているのなら話は別である。
他者の生き死にすら我が物とする王としての傲慢な考えが結果としてソウゴを生き長らえさせた。
「……まあいい。十分思い知っただろうしな」
バールクスは変身を解き、SOUGOへと戻ると右手を翳す。それを見たクォーツァーたちはウォズを後回しにし一糸乱れぬ動きで同じ動作をする。
建物を破壊しながら地中から現れる巨大兵器ダイマジーン。周囲の建造物を倒壊させながら何体も出て来る。
「我が僕よ!」
SOUGOの声を合図に出現したダイマジーンは次々と空へ飛び上がって行く。
その光景を上機嫌そうに見ながらSOUGOは指を鳴らす。
群衆に変化が起こる。
「え? うわああああ! 逃げろ! 逃げろ!」
「きゃあああああああ!」
「何だあれは!?」
ダイマジーンの姿に恐怖する者たち。
『SOUGO! SOUGO! SOUGO! SOUGO!』
変わらずSOUGOを讃える者たち。
「おい! 何しているんだ! 早く逃げろよ!」
「SOUGO! SOUGO SOUGO!」
「お母さん! お母さん! どうしちゃったの!?」
「SOUGO! SOUGO! SOUGO!」
「正気に、正気に戻ってくれ!」
「SOUGO! SOUGO! SOUGO!」
一心不乱にSOUGOの名を叫び続ける家族や恋人を何とか元に戻そうとするもの。
古墳下ではありとあらゆる感情が混ざり合い混沌と化す。
人々の支配も恐怖も我が意のままと言わんばかりにSOUGOはそれを見下ろす。
泣き叫ぶ声に何もすることが出来ず、悔しそうに歯を食い縛るが蓄積したダメージが限界を超えソウゴの意識は暗転していった。
◇
ソウゴが目覚めると薄暗い地下牢の中にいた。鉄格子の向こう側ではウォズは目を覚ましたソウゴを見下ろしている。
「起きたかい?」
「ウォズ……君もクォーツァーなんだね」
ウォズはそれに答えることなく話を進める。
「そもそも平成ライダーが悪いんだ。設定も世界観もバラバラ過ぎだ、という声が多くてね」
「……それって誰の声?」
「何処かの誰かの声さ。言った様に一つや二つでは済まない多さなんでね、無視できない」
世界を客観視した或いは外側から見ている様な言い方であった。
「そこで私達は、『令和』という新時代を迎えるにあたって、平成ライダーたちの力を一人の、記念のライダーにスッキリ纏めることにした」
令和という意味が分からない言葉が出て来たが、それとは別にして段々とクォーツァーの計画が分かって来る。
「人の良さそうな君を選んで良かったよ。皆、素直にライダーの力を渡してくれた」
平成ライダーたちの信じる心が自らを滅ぼす為のものであったなどソウゴは信じない。
「おかげで平成ライダーの力と歴史をジオウ一人に収斂させることが出来た」
現実を突き付ける様にウォズは話を続ける。
「皆、俺を信じてウォッチを渡してくれたのに……!」
抑え切れない怒りが湧いて来る。自分が騙されたことへの怒りでは無く、平成ライダーたちの心を踏み躙ったことへの怒りであった。
「ふざけるな!」
鉄格子越しにウォズへ手を伸ばすソウゴ。逃げようとすれば逃げられたのにウォズは抵抗もせず服を掴まれ、引き寄せられる。
「それじゃあ俺が……俺が皆の思いを裏切ったのと同じじゃないか!?」
「この計画書の通りに私が導いただけだ」
ウォズが見せるのは『逢魔降臨暦』。自分のやってきたことが全て替え玉としてのSOUGOの為であったことを思い知らされたソウゴは多大なショックを受け、ウォズを掴んでいた手からも力が抜けてしまう。
「同情はするよ。君は随分とこれに振り回されたからね。──私も振り回されたが」
『逢魔降臨暦』はクォーツァーによって随時計画の変更の為に書き換えられることがあった。予定には無いゲイツの計画への組み込みや、中にはウォズにすら報せる事も無く勝手に計画を変更することもあった。スーパータイムジャッカーの件の時などウォズは終始アドリブで動くこととなり、神経を削ぐ様な気分であった。
絶望に打ちひしがれて崩れ落ちるソウゴにウォズは目を伏せて言う。
「まあ、傷付くだろうね。ごく普通の高校生常磐ソウゴに『生まれながらにしての王』という重い運命を背負わせる様なことをしてきたからね。しかも、それが偽りの運命だというのだから……」
一人の青年の人生を弄ぶ行為。本来ならば許されることではないが、クォーツァーという歴史の管理者ならばそれも許される。そもそもそれを咎める者など存在しない。
全ての説明を終えたウォズはソウゴの牢から離れていく。すると、ウォズの足が止まる
「──私は嫌いじゃなかったよ」
ウォズは振り返り、ソウゴを見る。
「君を我が魔王と呼ぶことは……今更こんなことを言われても何の慰めにもならないだろうけどね」
「ウォズ……」
ウォズに裏切られたというのは分かっている。しかし、その言葉はウォズの紛れもない本心の様にも聞こえた。
「ああ、そうそう。隣の彼とも仲良くしてくれたまえ」
そう言い残してウォズは今度こそ去って行ってしまった。
「くっ……! うわああああっ!」
ソウゴは衝動に駆られて鉄格子に額を叩き付ける。痛みが返ってくるが無力感に包まれるよりは遥かにましであった。
「うあああああああっ!」
用意された道を自分の王道だと思い、ずっと歩いてきていた。それが自分だけでなく平成ライダーたちの破滅に繋がる道だと知らず、疑いもせず。
それを今になって知り、何も出来ない自分の無力さに怒りしか湧かない。
壁を何度も殴りつける。拳から血が出るが止めることが出来ない。自分でもどうしようもない。
意味も無くただ暴れることしか今のソウゴには出来ない。
「止めるんだ」
鋭い声がソウゴの耳に入り、壁に傷付いた拳を打ち込む寸前であったソウゴを止める。
「自分を傷付ける真似はよすんだ。それよりも体力を温存させておいた方が良い」
「誰……?」
声は隣から聞こえて来る。ソウゴは去り際のウォズの言葉を思い出す。隣にも自分と同じく捕らえられている者が存在するのだ。
「君と同じだ。俺も奴らに力を奪われ、ここへ捕らえられた」
青年の声。はっきりした喋り方であり、暗い地下に相応しくなり爽やかなものであった。
「力を奪われ……? 君も平成ライダーなの?」
「君や奴らが言う平成ライダーというのが良く何か分からない……。クォーツァーは俺を二つの時代の境界にいる者と言って扱いに困っていた様にも見えた」
「二つの時代の境界?」
何を指しているのか分からずにソウゴは首を傾げる。
「それよりもさっき言った様にまずは体力を温存しておいてくれ。いつか来るチャンスの為に!」
「チャンスって……でも、その間にゲイツやツクヨミが……! それにクォーツァーも……!」
「君の仲間の名かい? 焦る気持ちは良く分かる。そして、奴らへ怒りを向ける気持ちも……!」
青年の声に怒りの熱が含まれる。
「力を奪われた以外に何かあったの……?」
「奴らは俺の親友の墓を荒らし、剰えその遺体を……!」
クォーツァーに親友の死を辱められたことへの怒り。
「酷い……」
「君も随分と酷い目に遭っているみたいだね。さっきしていた話を全部理解出来た訳じゃないが」
壁越しに顔の見えない相手との会話。荒れていたソウゴの心は少しだけ落ち着きを取り戻していく。
「あの、名前聞いていい? 俺は常磐ソウゴっていうんだ」
冷静になり取り敢えず互いを知る為に自己紹介から始める。
壁の向こうにいる青年の名は──
「南光太郎だ」
映画本編のあの人に代わってこの人の登場となります。
先にどちらが見たいですか?
-
IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
-
IFゲイツ、マジェスティ