仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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後半は完全に個人的な趣味展開です。


Over Quartzer その3

「うっ……」

 

 鈍い痛みを感じながらゲイツはゆっくりと目を開ける。視界に入る光に目が刺激され、何度も瞬かせながら段々とぼんやりと見えているものがはっきりと見えてきた。

 目の前には純白のテーブルクロスが掛けられた長机。その上には一流のシェフによって作られたとしか思えない肉料理、魚料理、パン、デザート、スープ、茹で卵が並べられており、いつでも食せる様にフォークとナイフも置かれている。

 夢の続きを見ているのかと思ったが、湯気と共に香る料理のニオイが現実であると告げ、ゲイツは自らが置かれている状況に驚く。

 いつの間に椅子の上に座らせており、拘束もされていない。そして、向かい側には意識の無いツクヨミがゲイツと同じく椅子に座らされていた。

 

「ツクヨミ!」

 

 ゲイツが声を掛けるとツクヨミの瞼が僅かに動く。もう一度名前を呼ぶと呻きながらツクヨミの目が開く。

 

「ここは……えっ!?」

 

 意識が戻ったツクヨミは、今の状況と目の前に並べられた豪勢な料理に驚いて一気に目を覚ました後、ゲイツの存在に気付く。

 

「ゲイツ! 無事だったのね!」

「ああ……今のところは、な」

 

 ゲイツとツクヨミは周りを見渡す。何処かの建物であり、内装は簡素なものであった。そのまま視線を巡らせていたが突如として止まり、二人は言葉を失った。

 二人が凝視する先にはテーブルに座るSOUGO、ジョウゲン、カゲンが食事をしており、その周りを他のクォーツァーのメンバーが囲っていた。

 SOUGOはゲイツたちと同じ料理を食し、ジョウゲンはハンバーグをナイフで切り分けながら咀嚼、カゲンはSOUGOの倍以上の量の料理を黙々と食べていた。

 クォーツァーと同じテーブルに居るという状況にゲイツとツクヨミは反射的に椅子から立ち上がろうとする。

 

「動くな」

 

 料理に目を向けているSOUGOの声が飛ぶ。その一言には力があり、事実ゲイツたちは言われた通りに椅子から離れることが出来なかった。

 

「折角、用意させた料理だ。手を付けずに席を外すなんてマナーが悪いと思わないか?」

 

 SOUGOは二人を揶揄いながら料理を消費していく。

 

「お前たちが出したものなど食えるか!」

 

 それを突っぱねるゲイツ。彼からすればクォーツァーは敵。敵が出したものに喰い付くなど愚の骨頂に過ぎない。

 

「ソウゴは!? 彼を何処にやったの!?」

 

 ツクヨミも料理に手を付けることはせず、ソウゴの居場所を詰問する。

 

「処刑した」

 

 淡々と返された一言にゲイツとツクヨミは揃って絶句し、この世の終わりを迎えた様な表情となる。

 その二人の表情を見て、SOUGOは堪らず失笑する。

 

「はははははは! 替え玉も随分と慕われているみたいじゃないか! ははははははは!」

 

 SOUGOは声を上げて笑い、ジョウゲンは声を出すことはしなかったものの肩を揺らしながら笑い、カゲンは静かに口角を上げてニヤリと笑う。

 

「安心しろ。冗談だ。奴もそれなりに役には立ったからな。幽閉で済ませてやった」

 

 SOUGOの悪趣味な冗談にゲイツたちは憤慨する。冗談で済ませられる様な内容ではない。

 

「ふざけるな!」

 

 ゲイツは怒鳴り、テーブルに手を叩き付けながら勢い良く立ち上がる。ジクウドライバーもライドウォッチも奪われ、戦う力が皆無な状況であるがソウゴのことを小馬鹿にしているSOUGOを前に黙っている訳にはいかない。

 

「お前たちを見て色々と疑問に思ったことがある! あのカッシーンなんだ!? あれはオーマジオウの手下の筈だ!」

 

 問い質すがSOUGOたちは答えない。

 

「もし、もし……俺達が知っている歴史が創作物、真実と異なるものだったとしたら……その筋書きに合わせて普通の高校生常磐ソウゴと大魔王となる常磐SOUGOがそれぞれ選ばれたとしたら……!」

 

 己の推測を並べ立てていくゲイツ。SOUGOは一旦食事をする手を止め、ゲイツの方を見る。そして、ニヤリと笑ってみせた。

 その顔を見た瞬間、ゲイツは衝動のままSOUGOに向かって駆け出す。

 ゲイツが立ち上がってSOUGOへ詰め寄ろうとしているので取り巻きのクォーツァーたちがゲイツを止める為に動こうとする。だが、SOUGOが無言で手を上げてそれを制止させる。

 ゲイツを誰に止めさせるか既に決めてあるからだ。

 荒々しく地面を踏み締めながらSOUGOへ近寄っていくゲイツ。その前に立ち塞がるのはジョウゲンであった。

 

「はいはい。ゲイツ君。落ち着いてねー」

 

 軽い口調でゲイツを宥めようとするジョウゲン。ゲイツからすれば舐めている様にしか映らない。

 

「お前は確か……ジョウゲンだったな?」

「あ、俺の名前覚えていてくれたんだぁ。ありがとねー」

 

 聞いているツクヨミが思わず気が抜けそうになるぐらい軽い口調。本当に歴史の管理者の一員、それも見る限りメンバーの中でも上位に位置する者かと疑いたくなる。だが、向かい合うゲイツは表情を険しくする。

 ジョウゲンとは戦国時代で戦い、強さをそれなりに知っている為油断などしない。尤も、ジョウゲンは本気ではなく力の一端を見せていただけに過ぎなかった。

 

「どけっ!」

「ゲイツ君、怖いなぁ。君たちの為に食事も用意したんだよ? せめて一口ぐらい食べても良いと思うんだけど?」

「お前たちが出した物など食えるか!」

 

 飄々として本心が見えないジョウゲンと感情を剥き出しにしているゲイツ。対照的な両者は近距離で視線を衝突させる。

 

「ここは大人しく座っているのが良いって、本当に。俺はゲイツ君のこと気に入っているからさぁ、出来れば君には無駄死にして欲しくないだ」

「俺がそんなことで止まると思っているのか?」

「──止まらないだろうねぇ。だからこそ気に入っているんだけど」

 

 ジョウゲンは口調も態度も軽く、ゲイツに対して妙に好意的な態度を示していた。一見すると隙だらけ。しかし、相対しているゲイツはその額から汗を一筋垂らす。

 

(この男……!)

 

 ゲイツがあくまで言い合いだけに留めているのは我慢しているからではない。下手に手を出せば殺られるのが想像出来たからだ。

 軽薄な言動とは裏腹にジョウゲンに一切の隙が無い。半笑いの表情の下には血と戦いに飢えた獰猛な獣を飼っており、迂闊な真似をすれば即座に喉笛を搔っ切ってくる。そんな光景を幻視した。

 ジョウゲンの一挙手一投足を見逃さない為に瞬きもせずに睨み続けるゲイツ。その真剣さには見ているツクヨミも息が詰まる程の緊張感に包まれる。

 

「ふふっ」

 

 ゲイツの真剣な態度に反してジョウゲンは余裕を含ませた笑い声を洩らす。その違いがやはり対極に位置する二人に見える。

 

「まあまあ、ここは落ち着いて。じゃないと、うちの王様がまた君たちのこと叩きのめさないといけないから。──ほら、俺達の王様って結構恐いからさ」

 

 クォーツァーの頂点に立つSOUGOに対して軽い口調で話すジョウゲン。失礼に当たる言動に思えるが、当の本人は声を立てずに笑っていた。少なくともそれぐらいの接し方でも許される関係であるらしい。

 

「……何故、俺達にそこまで気を掛ける? お前たちとってジオウの仲間である俺達も敵の筈だ?」

「そんなことは些細なこと。それに目を瞑るぐらいに君たちの能力が優秀で魅力的ってことさ」

 

 あくまでクォーツァーの仲間として誘おうとしてくるジョウゲン。SOUGO、カゲンが咎めない辺り全て彼に任せていた。

 

「俺達の仲間になれば管理される立場から管理する立場にもなれるよ。それだけじゃない。次の時代の主役にもなれるんだよ?」

「次の時代の主役?」

 

 ジョウゲンの言っていることは意味不明であり、ゲイツは訝しむ表情になる。

 

「それってどういうこと?」

 

 ツクヨミがその言葉の意味を尋ねる。

 

「俺達の仲間になったら教えてあげる」

 

 しかし、簡単に教える筈も無く条件を付けてきた。当然ながらゲイツたちがその条件を呑むことは無い。

 

「断る!」

 

 ゲイツはジョウゲンの勧誘をキッパリと拒絶した。

 

「もう少しちゃんと考えた方がいいよ? ああ、それなら何か欲しいものでもある? 何でも買ってあげるよ?」

 

 今度は物の釣ろうとしてくるジョウゲンにゲイツの額に青筋が浮き出る。ならば鼻を明かすつもりで、今欲しいものを言ってやることを決めた。

 

「お前たちの命、と言ったらどうする?」

 

 ゲイツからすれば挑発のつもりであった。少しでも感情を昂らせて油断を誘うのが目的のつもりで発した言葉。

 

「うーん……そっちかぁ」

 

 ジョウゲンは薄笑いを止め、少し悩んでいる表情で頭を掻くと、徐にテーブルに置かれてあるナイフを手に取る。

 相手が武器を持ったことにゲイツは身構える。ツクヨミも思わず懐に手を伸ばすが、やはりというべきかそこにある筈のファイズフォンXは無かった。当然、ジクウドライバーとライドウォッチも没収されている。

 すると、何を思ったのかジョウゲンは手の中でナイフを半回転させ柄の方をゲイツに差し出す。

 

「流石に俺達の王様とカゲンは無理だけど──」

 

 反対側の手でクォーツァーのメンバーを指差す。

 

「彼奴らと俺の命ならいいよ。何人欲しい?」

「なっ!?」

 

 平然と言い放ったジョウゲンにゲイツは言葉を失った。自分と仲間の命を平然と絶とうとする行為に正気を疑う。

 最初はゲイツを臆させる為のブラフかと思ったが、ジョウゲンの目を見てそれは違うことを即座に見抜く。

 

(こいつ……本気か……!)

 

 戦慄せざるを得ない。ジョウゲンは本当にゲイツに命を奪われるつもりなのが分かる。

 

(他の奴らもどうなっている……!)

 

 SOUGO、カゲンはジョウゲンの発言に見向きもせずに食事を続けている。そして、クォーツァーのメンバーらはこれから命を奪われるかもしれないというのに誰一人顔色を変えていなかった。

 不味いとゲイツは感じる。目の前のジョウゲンに呑まれ始めているのが分かった。差し出されナイフに手を伸ばせることが出来ず、ゲイツは立ち尽くしてしまう。

 このままでは戦う前から精神的に負けてしまう。そう思った時──

 

「ゲイツッ!」

 

 ツクヨミの大声が鼓膜を震わせ、吞まれ掛けていたゲイツに喝を入れる。

 

「伏せて!」

 

 何をするのか確認する前にゲイツは身を屈める。直後にゲイツの頭上をツクヨミが投げ飛ばした椅子が通過していった。

 

「わーお」

 

 ジョウゲンはツクヨミの豪快で大胆な行動に軽く驚きながら目の前に迫って来ていた椅子を下から蹴り上げる。それなりに重量のある椅子がボールの様に真上に飛んで行き、天井すれすれにまで打ち上げられた。

 その間にゲイツはツクヨミの傍へ戻ると二人は揃って壁際まで移動。そこには両開きの扉があった。

 クォーツァーのメンバーが動こうとするが、何故かSOUGOがそれを制止させる。

 ダメもとでドアノブを回す。鍵は掛けてなく開けた本人らが驚く程簡単に扉は開き、二人はすぐに扉の向こうへ消えて行く。

 

「あーあ。行っちゃったかー」

 

 蹴り上げられた椅子が脚から落ち、倒れる事なくジョウゲンの後ろに立つとジョウゲンはその椅子に座る。

 

「二度もチャンスはやった。それを断ったというのならこの話はここまでだ」

 

 食事を終えたSOUGO。カゲンもいつの間にか終えていた。

 

「勿体無いけど、仕方ないね。でも、それなら逃げる前に殺れば良かったんじゃないの?」

「その役目は奴にやらせる」

「……ああ、そういうこと」

 

 暫くして誰かが扉を開けて中に入って来る。ソウゴとの話に真実を伝えた後のウォズであり、室内の状況に困惑した表情を浮かべている。

 

「我が魔王……ゲイツ君とツクヨミ君は何処に?」

「逃げた」

 

 SOUGOの一言にウォズは二の句が継げなくなってしまう。

 

「逃げた? そんな馬鹿な……これだけの数が居て逃亡を許すなど──」

「事実だ。ウォズ、追って始末をしてこい」

「私が……?」

 

 SOUGOたちの不手際だというのに後始末をウォズに押し付けるという理不尽。だが、ウォズはそれを断れる立場ではない。

 

「分かり、ました……それが我が魔王の御望みなら」

 

 深々と頭を下げるウォズ。俯いた顔がどんな表情をしているのかSOUGOたちが見ることの出来ないが、SOUGOはどんな表情であろうと関係無くウォズの態度をニヤニヤと笑って見ている。

 

「では」

「待て」

 

 ウォズがゲイツたちを追おうとすると、SOUGOがそれを止める。

 

「まだ何か?」

 

 心成しかウォズの声は冷たい。

 

「その前に俺に渡す物があるだろう?」

「渡す物、ですか?」

「惚けるな。替え玉のジクウドライバーとライドウォッチだ」

「……貴方にとっては不要な物だと思ったので、私の方で処分するつもりでしたが……」

 

 ウォズはSOUGOの許へ寄るとテーブルの上に半壊しているジクウドライバーとジオウライドウォッチを置く。

 SOUGOはジオウライドウォッチを手に取った。

 

「替え玉には最早これも必要ないな」

 

 SOUGOがジオウライドウォッチを握る手に力は込めると、ジオウライドウォッチに罅が入り、青白い火花が散った後に粉々に砕ける。

 SOUGOは破片と化したジオウライドウォッチを投げ捨て、床へばら撒いた。ウォズは見開いた目で散らばったジオウライドウォッチの残骸を見る。

 

「どうした? もう用は済んだ。行け」

「……はい」

 

 さっさと行くように促すと、ウォズは言われるがまま部屋を出ていく。

 

「彼に任せていいの?」

「構わない。成功すればそれで良いし、失敗したらウォズも始末すれば良いだけのことだ」

 

 クォーツァーの中では既にウォズへの疑念が生まれていた。ウォズは替え玉である常磐ソウゴやその仲間たちに情が移っているのではないか、というものである。

 表向きはこちらに対しての忠誠を示しているが、それが本心から来るものなのか疑わしく思っている。

 それを測る為にウォズ自らの手でゲイツたちの命を奪わせようとしていた。

 

「ダメだったらどうする?」

 

 ジョウゲンはテーブルに置かれたゆで卵を手に取る。

 

「その時はお前が殺ればいいさ」

「そんな言われたら……失敗する方に期待しちゃうよ? 俺」

 

 ゆで卵を口に放り、殻が付いていることなど構わずにバリバリと音を立てて咀嚼し、丸ごと呑み込む。

 

「ウォズは、俺が殺る」

 

 今まで沈黙していたカゲンが、もしもの場合自らウォズを手に掛けることを宣言する。

 

「いいの? ウォズに色々と教えてきたのカゲンでしょ?」

「弟子だからこそ、師が殺す」

 

 一切の迷いなく言い切るカゲンにジョウゲンは愉しそうに笑う。

 

「いいねぇ、その考え。俺は好きだよ」

 

 SOUGOが椅子から立ち上がる。クォーツァーのメンバーがより身を引き締め、マイペースであったジョウゲン、カゲンも一瞬で戦士の顔付きとなる。

 

「所詮は余興だ。新しい時代が誕生するまでの。せいぜい俺達を楽しませてくれ」

 

 

 

 ◇

 

 

「そうか……君にはそんな事情があったのか、ソウゴ」

「話を聞いてくれてありがとう。でも、光太郎も色々とあったんだね」

 

 地下牢にて互いの事情を簡潔ながら説明するソウゴと光太郎。互いに年齢も近く、二人共人当たりが良いので早く打ち解けることが出来た。

 

「それにしても王様か……」

「もしかして、光太郎って王様にあまり良いイメージが無い?」

「すまない。気を悪くしないでくれ。でも、俺が会って来た王と名乗る者たちは、少なくとも君が目指す王とは正反対の存在だったから……」

 

 南光太郎は改造人間である。生まれながら人類を裏で操る暗黒結社ゴルゴム首魁である創世王の後継者──世紀王ブラックサンとして選ばれ、改造人間にされた。

 改造人間こと仮面ライダーとして生まれ変わった彼はゴルゴムを壊滅させるが、その過程で同じ世紀王である親友と死闘を繰り広げ、倒すこととなった。

 ゴルゴム撃破後、彼を待っていたのは異次元世界である怪魔界に存在するクライシス帝国との戦いであった。

 その戦いでも多くの者たちを失いながらもクライシス帝国の支配者クライシス皇帝を倒したのであった。

 創世王、クライシス皇帝という強敵を倒した後に彼を待ち受けていたのはスーパータイムジャッカーのティード。

 ティードによって兄弟に等しい親友であり世紀王であったシャドームーンの墓が暴かれ、シャドームーンの能力は強奪。それに激怒した光太郎が戦いに挑んだが、ライドウォッチによって変身を解除させられてしまい、その隙に捕まりクォーツァーに引き渡されたのが、光太郎が地下牢に居る経緯である。かなりの期間、光太郎は地下牢に閉じ込められていたことになる。

 

「安心してよ……俺はもう王様には成れない……俺は偶々選ばれた普通の高校生だし……」

 

 自分の根源や運命が偽りのものであったと知らされたソウゴは普段の彼からは想像が出来ない程に落ち込んでいた。

 

「……君はここで全てを投げ出すのか?」

「だって俺はただの替え玉で、仮面ライダーになったのもそれが目的だったみたいだし……」

「俺も似た様なものだ。俺と親友──信彦の人生は最初から創世王にさせる為のものだった。仮面ライダーとしての力を得たのもその結果に過ぎない──だが!」

 

 用意され、敷かれたレール上を走るだけだった人生に悲観するも光太郎は力強く言い切る。

 

「俺が仮面ライダーで在り続けたことは紛れなく自分の意思だった筈だ! 痛みも苦しみもあったがそれを超えて仮面ライダーとして人々を守ってきたのは俺の意志であったと胸を張って言える!」

 

 人々の自由、夢、心、幸福を守る為に仮面ライダーとして戦い続けたことは噓偽りではない。その過程が今も南光太郎を仮面ライダーとして在り続けさせる。

 

「君もそうだろ!?」

 

 ぶつけられる熱い言葉と思い。弱気になっていたソウゴの心に再び火を灯すのに十分過ぎる熱量があった。

 

「──うん! それだけは間違い無い……!」

「だからこそ、俺も君も最後まで仮面ライダーで在り続けよう!」

 

 先程まで折れそうになっていた心が真っ直ぐになっていくのを感じた。絶望的な状況の中で心強い味方が居たという偶然に幸運を感じる。

 

「そうと成ればここを脱出するぞ!」

「え!? 脱出って──」

 

 隣の牢から凄まじい光が漏れ出したかと思えば、破壊音と共に鉄格子が吹き飛んでいく。

 

「な、何が……!?」

「さあ、君もここから出るぞ!」

 

 ソウゴの牢の前に現れたのは黒いボディ、左胸には横に倒したSに似た紋章。銀の機械に赤い石が埋め込まれたベルト、真っ赤な複眼。頭部、首回り、手首足首に黄と赤のストライプが入っている。

 

「仮面ライダー……光太郎だよね?」

「仮面ライダーBLACK。この姿の時はそう呼んでくれ」

 

 そう言ってBLACKは手刀を構える。

 

「さあ、鉄格子から離れているんだ!」

 

 言われた通りにソウゴが鉄格子から離れる。

 

「ライダーチョップ!」

 

 手刀による一振りが鉄格子を切断する。

 

「うお……凄っ!」

 

 BLACKの技のキレに思わず感心しながらソウゴも地下牢の外に出る。

 その途端BLACKは膝を突く。その体は光に包まれ、人間の姿へと戻ってしまう。

 白いジャケットにズボン。指貫グローブを付けた強い意思が顔に現れた青年──南光太郎である。

 

「はあ……はあ……無事かい?」

「ありがとう。でも、何で変身が出来たの?」

「はあ、はあ……俺の力の源は俺の体内に宿る石キングストーンだ。確かに俺はライドウォッチの能力で力と歴史を奪われた。だが、キングストーンに秘められた膨大な力とその歴史を全て奪い切ることは出来なかったんだ」

 

 それにより変身能力を完全に失うことはなくクォーツァーに知られることなく隠すことが出来た。たが、奪われたエネルギーは相当なものであり、暫くの間変身の為のエネルギーを満たす必要があった。

 そして、それも溜まり変身可能となった段階でソウゴが地下牢にやってきたのだ。

 

「じゃあ、もう変身出来ないの? 俺を助ける為に……」

「気にしないでくれ……それに君を置いて俺一人で脱出するなんて冗談じゃないぜ……!」

 

 あくまで自分の意志であることを言い、疲労の色がありながらも爽やかな笑みを見せる。

 

「頼みがある……俺を太陽の光が届く所へ、連れて行ってくれ……そうすればキングストーンの力も戻る筈だ……!」

「分かった」

 

 ソウゴは疲労している光太郎に肩を貸し、二人での脱出を試みる。

 幸い、見張りなどは置かれて居らず地下牢から脱出したのを悟られぬまま、地上へ上がる階段を昇っていく。

 薄暗い階段を昇った先には扉があった。その先に出口があると信じた二人は扉を開ける。

 

「こ、これは……!」

「しまった……!」

 

 扉の先が大きな空間が広がっていた。しかし、そこに並び立つのはカッシーンたち。見張りを置かなかったのは、脱出するのにここに待機しているカッシーンたちを撃破しなければならないからだ。

 

『脱獄者発見』

 

 全てのカッシーンたちが声と動作を揃える。まさに機械の動き。

 カッシーンたちの向こう側に扉があるが、それ以外外に通じるものは無い。光太郎の変身に必要な太陽の光はここに届かない。

 

「くっ……!」

 

 絶体絶命の状況にソウゴは唇を噛み締める。折角、光太郎が時間を掛けて出来た脱出なのにここで終わってしまうことに悔しさを感じる。

 その一方で光太郎は何かを決意した表情となり、ソウゴから離れる。

 

「奴らは俺が惹き付ける。その隙に君は脱出するんだ」

「惹き付けるって……今の光太郎は仮面ライダーに変身出来ないだろ!」

「──大丈夫だ。俺にはまだ戦う手段がある」

 

 そう言って一歩前に踏み出る光太郎。その全身からエメラルドグリーンの光が放たれる。その光に思わず目を背けるソウゴ。光が収まって光太郎を見た時、ソウゴは絶句した。

 黄緑色の外骨格。手足から生える棘状の突起。頭部はトノサマバッタそのものであり胴体には複腕が折り畳まれている。

 バッタ男。ゴルゴムが光太郎を世紀王にする為の過程で行った生体改造による異形の姿。

 光太郎はこの姿で戦ったことは無い。しかし、ソウゴを救う為に敢えて怪人としての姿を晒す。

 

「光、太郎……?」

 

 ソウゴの声に反応し、赤い複眼を一瞬だけソウゴに向ける。しかし、すぐに向き直るとカッシーンたちへ突撃していった。

 

「とおっ!」

 

 バッタの脚力を生かした蹴りがカッシーンの一体に炸裂し、後方数体纏めて吹き飛ばす。

 カッシーンたちが三又槍を振るう中を飛び跳ねながら駆け抜けていく。

 ソウゴは異形の姿となった光太郎を恐れる気持ちなど微塵も無かった。それよりも必死になって戦っているのに何も出来ない自分の不甲斐なさは悔しかった。

 

「俺にも戦う力があれば……!」

 

 悔しさを零しながらズボンを握り締めた時、ソウゴはあることに気付く。ズボンのポケットの中に何かがある。

 その何かを確かめる為にソウゴはポケットの中に手を入れ、取り出した。

 

「何でこれが……!?」

 

 取り出した物にソウゴは驚く。どうしてそれがここにあるのか見当も付かない。だが、この状況を打破するのにこれ以上適した物は無かった。

 ソウゴもまた決意し、カッシーンたちに向かって走り出す。

 

「光太郎!」

 

 光太郎が止める間もなくカッシーンへと駆け寄って行くソウゴ。カッシーンもそれに気付いて三又槍を振るおうとするが──

 

『ジオウ……』

 

 円環状のエネルギーがソウゴを覆い、突き出された三又槍を弾く。エネルギーが消え去ると同時に中から出現した異形がカッシーンの胴体を時計の針に似た二本の剣で斬り裂いた。

 

「ソウゴ、君のその姿は……」

 

 光太郎は知らないがその異形の名はアナザージオウ。かつてソウゴを苦しめた加古川飛流が持っていた力の一つ。ライダーアーマーとして使用したことはあるが、ソウゴ自身がアナザーライダーになったのはこれが初めてである。

 

「俺も戦うよ……!」

 

 並び立つ二人の異形。その姿は常人ならば恐怖や拒絶の叫びを上げるかもしれない。しかし、異形の中に宿る心は紛れもなく正義の心であった。

 




リメイクするBLACK SUNには是非とも怪人態が出て欲しいですね。

先にどちらが見たいですか?

  • IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
  • IFゲイツ、マジェスティ
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