仮面ライダーではなく怪人の力を宿したライドウォッチ。少なくともウォズはそんなウォッチの存在など知らなかった。しかし、考え方によっては然程おかしな話ではない。
あらゆる歴史に登場してきた仮面ライダーとその敵である怪人は力の根源を同じものとしている。力の面だけを見れば両者に大きな違いなど無い。
ライドウォッチもまた仮面ライダーの力と歴史を奪うものだが、同じ根源を持つ怪人から力を奪うことは難しくない。そもそもの話、歴史の主軸となっている仮面ライダーから歴史を奪ってしまえば自動的に怪人も無かったことになるのでする必要も無く、手間のかかる行為であった。
しかし、怪人の中には仮面ライダーと同等かそれ以上の力を持つ者が多々いる。それをみすみす無かったことにするのを惜しいと考え、ライドウォッチにその能力を取り込んだのである。
金属生命体ドラス。完全生物を目的として生み出されたネオ生命体の完成形であり、仮面ライダーZOの宿敵であった生命体である。
バッタに似た外形をしており、その体は名前の通り様々な金属を取り込んで作られたものであった。そしてドラスは、仮面ライダーZOを吸収して一体化していた瞬間がある。そういう意味では仮面ライダーと高い親和性を持つ。
その能力はゾンジスが発動したドラスライドウォッチにも引き継がれている。十を超えるカッシーンたちが粘土細工の様にこね回され、形を変えられてゾンジスの腕を覆う巨大な金属の手となっていた。
悪趣味なことに五指の指の腹はカッシーンの顔となっており、一文字型のバイザーが恨めしそうにウォズを見下ろしている。
そんな恨めしそうな眼もゾンジスが拳を握り締めると内側へと消えて行く。
機械の塊による拳を己の拳と変わらないぐらいに自然に操るゾンジス。重量など無いかの様であった。
振り上げられる拳。しかし、いくら巨大な手であっても今のウォズとの間合いを考えると完全に届いていない。だが、ゾンジスはそんなことは関係無く拳を突き出す。
その途端、手首から先が射出される。炎を噴きながら束ねられたワイヤーを伸ばして飛んで行く拳。
意表を衝かれたウォズに回避する余裕は無い。そもそも仮に身構えていたとしても発射された拳の速さに避けることが出来なかっただろう。
片手にライドウォッチダイザーを持っていたので仕方なくエナジープラネットを片手集中させ、反発する力を以ってゾンジスの拳を受け止め様と考える。
エナジープラネットに拳が触れた瞬間──
(無理だ……!)
防御することが不可能だと理解してしまった。
戦国時代でゾンジスにパワーのみで打ち破られたこともあったが、そのことを教訓にしてあの時以上の力を込めていたが、それでもダメであったのだ。
「ぐっ!」
防ぎ切れないのならばせめて力の流れを変えて逸らす。
ウォズはエナジープラネットの力の流れを器用に変え、ゾンジスの拳を自分から逸らすことを試みる。
「ウォズ! 甘いぞ!」
そんな考えなどゾンジスも見通しており、その場から一歩踏み込んで拳に力を伝える。
押し込められたことにより、エナジープラネットの防御を上回る力となったゾンジスの拳がエナジープラネットを発しているウォズの手を弾いて、ウォズの体全体に拳を叩き込んだ。
「がはっ!」
全身を打つゾンジスの拳。何かが罅割れる音を聞きながらウォズは殴り飛ばされた。
数十メートル程殴り飛ばされるウォズを見ながら、ゾンジスは伸ばしていた機械の拳を元の位置に戻す。
「浅いか。やるな……!」
機械の塊であっても体の一部同然と化している拳から、先程の殴打の感触はしっかりとゾンジスへ伝わっていた。
ウォズは拳が命中すると分かった途端、体を脱力させてダメージを最小限に抑えていた。ギンガファイナリーの力で重力操作もして可能な限り重力を弱めて受け流し易い様にもしていた。
そこまでしたのだが──
「はあっ……はあっ……ごほっ!」
咳き込むウォズ。彼が受けたダメージは甚大であった。衝撃は全身の骨に響き、内臓は位置がずれたかと思える程揺さぶられる。ダメージを抑えていてもこれである。直撃していたら命は無かったかもしれない。
そして、それよりも問題なのは──
「くっ……!」
ウォズは己の腹部を見下ろす。そこに巻かれてあるビヨンドライバーに罅が生じている。肉体的なダメージよりもドライバーの損壊の方が問題である。まだ機能しているが、戦いが激しくなればどうなるか分からない。
ウォズと同じくゾンジスも半壊状態のビヨンドライバーを見ていた。仮面の下の彼の表情は険しく、忌々しそうな目をしている。
ビヨンドライバーとミライドウォッチの基となったのは、形から察する通りクォーツァーが創り出したジクウドライバーとライドウォッチである。
分岐した未来のウォズこと白ウォズはその技術を盗み出し、クォーツァーがとある目的の為に創造した未来の世界に逃亡した際に、未来の技術を使って改造を施した代物である。
クォーツァーの技術を盗み出すことも許し難いが、創造した未来すらも利用したことには腹立たしさを通り越して殺意を覚える。もし、白ウォズが健在であったのならゾンジスが自らの手で捻り殺すつもりであった。
それが何の因果か本来のウォズの手に渡り、そのウォズもまたクォーツァーへ歯向かう立場となった。
今思えばウォズはクォーツァーの中でも出来の良く優秀であった。与えられた知識や技術を水の様に吸収して自分のものとし、彼に戦い方を指導したゾンジスもその成長っぷりに柄にも無く高揚した。
だからこそ、SOUGOは彼に今回の計画の重要な役目と共に『逢魔降臨暦』をウォズに与えたのだ。
しかし、結果としてウォズは敵となった。与えた知識と技術を武器にして挑んで来ている。
ゾンジスはその裏切りに対し失望感を覚えることは無かった。寧ろ、望んですらいる自分がいる。
組織を離れ、自分の手を離れ、最高にまで成長した嘗ての教え子と本気で戦う。
そこには唯一無二の作品を自ら手で破壊する様な昏い喜び。
強者と戦い勝つことで自分が更なる高みに昇れるというエゴに満ちた喜び。
そして、弟子が独り立ちしたことへの純粋な喜びがあった。
だからこそ、ゾンジスは徹底的にウォズを叩きのめし、その上で殺す。それこそがゾンジスからウォズへ向ける師としての想いであった。
ダメージを負いながらも立ち上がろうとするウォズ。それとは反対にゾンジスの方は身を屈めた。
立ち上がったウォズが見たものは、地面へもう片方の腕を深々と埋めたゾンジスの姿。
「潰れろ」
『J!』
『ZO!』
『シン!』
三つのライドウォッチの力が発動すると共にウォズの周囲に五本の石柱が地面を突き破って出現する。
逃げ場の無いウォズはエナジープラネットで防御しようとするが、石柱はくの字に折れ曲がり、鋭い先端で四方からウォズを突き刺す。
「があっ!」
装甲のおかげで貫通することは無かったが、装甲にしっかりと食い込んでいるので抜け出すことが出来ない。
体を固定された状態となるウォズ。すると浮遊感と共にウォズの体が地面から離れていく。
より正確に言えば持ち上げられていた。ウォズの足元の土が大地から離れ、固定している石柱も浮かんで行く。
それに連動してゾンジスの腕も地面から引き抜かれていく。すると、ゾンジスとウォズとの間の土が盛り上がっていく。
ゾンジスが完全に腕を引き抜いた時、ゾンジスの手首から先は巨大な土塊がくっついていた。
それはウォズへと繋がっており、そこでようやくウォズは足元の土が掌、周りの石柱が指の部分となっていることに気付く。
土と石と木の根で作り出された巨腕。ドラスライドウォッチで機械の塊の腕を作り上げた様に三つのライドウォッチにより機械の腕とは対極の自然と大地の腕を形成する。
「ぐ、くっ……!」
締め付けられた状態で何とか抜け出そうと試みるウォズは、自爆覚悟でエナジープラネットを土塊の手の中で発射。
至近距離で爆発を浴びるウォズ。だが、その甲斐もあって土塊の手からパラパラと土が落ちていく。
その途端、ウォズを締め付ける力が増した。
「がはっ!」
エナジープラネットで破壊した筈の土塊の手。その破壊部分を埋める様に植物の根が絡み合って補強している。
「ウォズ、無駄な抵抗だったな」
変化はそれだけに留まらない。土塊の手の表面から凄まじい勢いで植物が成長していき、雑草だけではなく木々も生えて来る。土色であった巨腕が瞬く間に緑へと染まっていく。
ZOとJのライドウォッチの力によって自然と深い繋がりを持ち、シンの能力によって強制的に成長させる。
機械と自然の二本の巨腕によってウォズを押え込むゾンジス。ライドウォッチを使いこなすゾンジスだからこそ出来る技であるが、ゾンジスはまだ本気すら出していない。
今のゾンジスはライドウォッチの能力を一つ一つ発動させて能力を組み合わせているだけに過ぎない。
ゾンジスの本当の力は、この四個のライドウォッチを同時に発動させることで発揮されるが、今のウォズ相手にはそれも必要無い。
「ウォズ、お前はこの程度か?」
その台詞には若干の失望が込められていた。
「私に、何の期待を抱いていたか、知らないが……思い通りにならないから、失望するのは自分勝手じゃないかな……?」
全身を圧迫されながらも減らず口を止めないウォズにゾンジスは微かに笑う。それは、ウォズがまだ何一つ諦めていない証拠でもあった。
不意にウォズが空を見上げる。
「……何をしている?」
諦めていないと思っていた矢先に天を仰ぐウォズにゾンジスは思わず聞いてしまった。自分の見込み違いであることを否定するのを願って。
「祈って、いるのさ……」
あまりにウォズにそぐわない真似にゾンジスは少し戸惑う。
「お前が、祈るだと……? 何に祈る? 神にか?」
もし、ここでウォズが神と答えるのなら両手で一気に握り潰すつもりであった。
「──宇宙」
その一言を不審に思い、ゾンジスも空を見上げる。
「むうっ!」
赤く燃え上がるものがこちらに向かって落下してきている。
見間違うことなくそれは隕石であった。
「ウォズ! 貴様っ!」
「祈りが届いたよ」
ギンガファイナリーの能力によって本物の隕石を引き寄せた。かなりの質量であり、直撃すればゾンジスも無事では済まない。当然ながらウォズも同じである。
自滅に等しい捨て身の攻撃であった。
「どうするんだい? ここで、私と一緒に、死ぬかい?」
握り潰され様としている瞬間でもウォズは挑発するのを止めない。
ゾンジスに残された選択は二つ。ウォズの言う通りに二人一緒に隕石によって死ぬか、或いは隕石を──
「おおおおおっ!」
『フィニッシュタァァイム!』
ゾンジスは咆哮を上げる。すると、ジクウドライバーにセットしてあるゾンジスライドウォッチが独りでにスイッチを押され、触れずにドライバーも回転する。
『ゾンジス! タイムブレーク!』
降って来る隕石目掛けて突き出されるゾンジスの機械の拳。撃ち出されたそれは空気摩擦によって生じる熱により赤色と化した。
天高くまで伸びていく拳はやがて隕石と衝突。巨大な質量同士のぶつかり合いによりゾンジスの機械の拳は砕けたが、隕石もまた粉々に破壊された。
しかし、細かくなっても燃え尽きることはなく破片となった隕石が爆撃の様に降って来る。大規模な破壊は免れたが小規模且つ連続した破壊となった。
「ちっ!」
隕石の破片が周囲に落下することで起こる衝撃と爆発に顔を背けるゾンジス。その時、ウォズを掴んでいた腕に隕石の破片が命中したのを感じた。
背けていた顔をウォズの方に向けようとしたが、そこに丁度隕石の破片が落ちたことで土砂が巻き上がる。
暫くの間、隕石の破片は降り続け、地面には小規模なクレーターが幾つも出来上がっていた。その中で佇んでいるゾンジス。彼も無傷では済まず、装甲の一部が削られていたり、羽織っている外套の一部が裂けていた。だが、装甲の傷はすぐに埋められていき無傷となる。
ゾンジスは改めてウォズが居た方を向く。ウォズを掴まえていた土塊の手は粉々になって元の土の塊に戻っていた。そして、ウォズの姿は無い。
まんまと出し抜かれたが、ゾンジスはウォズが逃げたとは思っていない。一時的に撤退したとは思っている。
ウォズが戦いに集中出来ていないのは分かっていた。原因は大事そうに抱えていたライドウォッチダイザーが理由であることも見抜いていた。
あれをソウゴに渡すことを最優先とし、何としてもここから脱しようと考えていたのであろう。
故にゾンジスはウォズがその役目を果たした時、再び自分の前に現れることを予感していた。今度は中断無しの命懸けの戦いをする為に。
「ウォズ、俺は待っているぞ!」
◇
青い影が常人では感知することの出来ない速度で移動している。やがて、人気の無い場所へ辿り着くと青い影は止まる。
青い影の正体はゲイツリバイブ疾風であり、その腕にはツクヨミが抱えられていた。
「ここまで来れば奴らの目も無い筈だ」
ゲイツリバイブはツクヨミを下ろす。
「いきなり抱えられたからびっくりした……」
前触れもなくいきなりここまで連れて来られたツクヨミは、やや疲れた様子。疾風の高速移動をそれなりの時間、体感していたので無理もないことであった。
しかし、運ばれながらもツクヨミは何が起きたのかを自分なりに考えていた。
「もしかして……ウォズが逃がしてくれたの?」
「……ああ」
ツクヨミの推測をゲイツリバイブは肯定する。肯定するゲイツリバイブの仮面の下の表情は複雑なもので、安堵と苦虫を嚙み潰したような表情が混じり合っていた。
ゲイツリバイブとウォズが戦っている最中、二人が接近した時にウォズはゲイツリバイブにしか聞こえない様に囁いた。
『切っ掛けは私が作る』と。
その言葉の通り、ウォズはタイヨウフォームとなりまず強烈な閃光を発して監視しているであろうクォーツァーたちの目晦ましを行った後、二人が逃亡した痕跡が残らない様に周囲を焼き尽くし、尚且つ二人の死を偽装した。
「やっぱり、ウォズは私たちのことを──ソウゴを裏切っていないんじゃない?」
「だろうな……俺達に黙って裏でコソコソやっているのが気に入らんが!」
裏切っていないことに安心しつつもこちらに黙って単独で行動しているのは、やはり腹立たしく感じるので、ゲイツリバイブはこの戦いが終わったら取り敢えずウォズを殴ることを決めた。その為にもウォズには最後まで生き残ってもらわないと困る。そして、自分もまた生き残らなければならない。
「ゲイツ、一先ず身を隠せる場所を探しましょう? ここで見つかったら折角ウォズが稼いでくれた時間も無駄になるわ」
「そうだな。──また高速で移動することになるが、大丈夫か?」
「ええ、大丈夫よ。私のことは気にしないで」
ゲイツリバイブはツクヨミを抱えると再び移動を開始。身を隠せる場所を探し始める。
暫く移動をすると大きな屋敷が見えてきた。目立つ建物だが、この際贅沢は言ってられない。
「ここに隠れるぞ」
ゲイツリバイブはツクヨミを下ろし、変身解除をする。ツクヨミはその屋敷を見て目を見開いた。
「ここって……!」
「どうかしたのか?」
「私が……スウォルツ──兄と小さい頃に住んでいた家……」
「何っ!?」
連れて来た場所が偶然にもツクヨミが幼少期過ごして場所だと知ってゲイツも驚きを隠せない。同時にツクヨミの反応を見てしくじったと感じた。
敵だったとはいえ今は亡きスウォルツと共に暮らしてきた家である。心中複雑なのは容易に想像がつく。この場所に居てはツクヨミが傷付くだけである。
「すまない……それなら別の場所を」
「いいの。大丈夫よ、私は」
気遣うゲイツを逆に気遣い、ツクヨミは気丈に微笑む。
「私には……昔の記憶が無いから……そんなことよりも今は時間が惜しいわ。この建物に入ったらすぐにソウゴを救出する方法を考えましょう!」
過去の記憶が無いから郷愁の想いを抱かない。気遣いが裏目に出てそんな寂しい台詞を言わせてしまったことを内心で後悔するゲイツ。
しかし、平気を振る舞うツクヨミをこれ以上気遣うことは、彼女の気持ちを踏み躙るに等しい。
悔恨の念を抱きながらゲイツとツクヨミは建物の扉を開けて中に入り──
「きぃえあああああ!」
──奇声と共にいきなり襲われた。
咄嗟に振り下ろされた物を掴むゲイツ。掴んだのは武器ではなくモップであった。
何故モップなのかという疑問を抱いたまま襲って来た人物を投げ飛ばすゲイツ。地面に仰向けに倒れた所に拳を振り下ろすが寸前で止まった。
「じゅ、順一郎さん!」
「ええっ!? 無事だったんですか!?」
世界を移動をした際に行方知れずとなっていた順一郎が投げられた衝撃で目を白黒させている。
「す、すみません!」
慌てて離れるゲイツ。順一郎は少しの間、放心状態であったが段々と目の焦点が合っていき、屋敷に侵入してきたのがゲイツとツクヨミであることに気付いた。
「ゲ、ゲイツ君! ツクヨミちゃん! 二人とも無事だったんだね! あいたたたっ!」
勢い良く立ち上がろうとするが、痛みで背中を擦る順一郎。ゲイツは申し訳なさそうに手を貸す。
「すみません。つい……」
「い、いや、謝らなくていいって。先にやったのは僕の方なんだから。てっきり奴らかと思ってさ」
順一郎の指す奴らというのはカッシーンたちのことであった。
「あいつら、僕たちを捕まえて何処かに連れて行こうとしたんだ。だから、急いで逃げて、皆でこの屋敷の中に隠れていたんだ」
「皆……?」
ゲイツたちが視線を動かすと扉の影やドアの隙間からこちらを覗いている無数の目があり、かなりの人数がいる。
「こんなにも……」
「あ、あの、ゲイツ君、ツクヨミちゃん」
順一郎の声は少し震えており、恐る恐るという感じであった。
「ソウゴ君はどうしたのかな? もしかして迷子? それにウォズ君もどうしたの?」
順一郎の問いは、返ってくる答えを知っていても尚それを否定して欲しいという儚い希望に満ちたものであった。
「ごめんなさい……順一郎さん。ソウゴは奴らに捕まっているの」
「そ、そんな……」
ガックリと項垂れる順一郎。見ている方が悲痛な気持ちになる。
「じゃあ、ウォズ君も……?」
「ウォズは──」
ツクヨミはそこで言葉を止めた。何と言っていいのか分からない。
「あ、あのさ、クォーツァーとかいう人達がウォズ君と似た様な格好していたけど、ウォズ君とは全然関係ないよね? 偶々だよね?」
順一郎は遠目にクォーツァーたちの姿を見ていた。その姿からウォズと関わりのある者達であると予想してしまったが、こんな事態を引き起こした連中とウォズが仲間だとは思いたくないという気持ちが伝わってくる。
「……奴もちゃんと俺が連れ戻す。ジオウと一緒にな」
「ゲイツ!」
ゲイツは宣言し、背を向けて屋敷の外に出ようとしていた。
「ゲイツ君! 危ないよ! 外じゃ奴らがウヨウヨしているから!」
ゲイツを引き止め様とする順一郎。ゲイツはそんな彼に安心させる様に微笑を見せる。
「──大丈夫。俺は仮面ライダーだ」
その一言で自分が為すべきことを表すゲイツ。
「ゲイツ君……」
真っ直ぐそう言われた順一郎は、もう彼が自分の言葉では止めることは出来ないと悟ってしまった。
「ゲイツ、私も──」
「ツクヨミ。お前はここで皆を守っていてくれ」
「そんな……! 私も戦える!」
置いて行かれることをツクヨミは嫌がる。
ゲイツは順一郎の方を見た。
「この人は……ソウゴの帰る場所だ。そして、俺達の帰る場所でもある。ツクヨミ、信頼出来るお前だからこそ守っていて欲しい」
ゲイツの真摯な願い。そう言われてしまうとツクヨミは断ることなど出来ない。
「……分かったわ。でも、きっと帰って来て。ソウゴとウォズと一緒に」
「──ああ」
ゲイツはツクヨミと約束し、屋敷の外に出ようとする。そんな彼の背に順一郎が声を掛ける。
「僕さぁ! 皆の為にすっごく美味しいカレーを作って待っているよ! 甘口、中辛、辛口全部用意してさぁ! 皆が帰ってきたら一緒に食べよう!」
順一郎の出来ることは少ない。だからこそ、自分が出来ることをする。彼らの為に、彼らの日常を用意して待つ。それが今の順一郎に出来ることであった。
「……それは楽しみだ」
ゲイツは微笑み、屋敷を後にした。
◇
屋敷を飛び出したゲイツ。目的はソウゴの救出とウォズとの接触であるが、正直当てがない無い状態であった。
クォーツァーのメンバーを見つけることが出来れば居場所を吐かせられるかもしれないが、ウォズの偽装によるゲイツたちの死がバレる可能性もある。このアドバンテージを易々と失う訳にはいかない。
何とか方法を考えようとした矢先──ゲイツは見てしまった。カッシーンたちに捕まって何処かへ連れて行かれる人々の姿を。
(何を考えている俺は……!)
ここで動けば間違いなくクォーツァーにバレてしまう。そうすれば、ゲイツやツクヨミだけではなく偽装をしたウォズも危険に晒される。
常識的に考えれば、可哀想な決断であるが彼らを見なかったことにする選択が正しい。
だというのにゲイツの手にはゲイツライドウォッチとジクウドライバーが握られていた。
『王様は民を見捨てない!』
(ジオウなら……見捨てるなどあり得ないか)
自分もソウゴの王様思考に大分染まっていることを苦笑しながら駆け出し──
「変身!」
『ライダーターイム!』
──ライドウォッチで仮面ライダーへと変身。
『仮面ライダーゲイツ!』
仮面ライダーゲイツとなるとすかざすジカンザックスを取り出す。
『ジカンザックス! Оh! No!』
流れる動きでジカンザックスのスロットにゲイツライドウォッチを填め込む。
『フィニッシュタァァイム! ゲイツ!』
ジカンザックスの刃に赤いエネルギーが宿り、接近と共にジカンザックスを一閃。
『ザックリカッティング!』
囲んでいるカッシーンたちを一体一振で破壊する。
時間にすればたった数秒のこと。助けられた人達も突然のことに呆然としていた。
「逃げろ!」
ゲイツの一言で我に返り、安全な場所を目指して全員逃げて行く。
カッシーンたちを瞬殺したので、クォーツァーにもまだ気付かれていないと思い、ゲイツもまたすぐに身を隠そうとする。
「見ぃつけた」
軽薄さを感じさせる声。急ぎ振り返った先にジョウゲンが気怠そうな態度で立っている。
「やっぱり生きてた」
ゲイツが生きていることに特に驚いた様子を見せないジョウゲン。彼にとってゲイツの生存は想定内のことらしい。
そうなるとウォズの動きもまた読まれていることになる。今頃誰かに襲撃を──
「ああ、ここには俺一人ね。カゲンはウォズの方に行ってるから」
──ゲイツの内心を読む様にジョウゲンが先に言う。
「でも、俺は信じてたよー。君が生きていることに。だって主人公候補だからねー」
「……何度も何度も聞かされたが、その主人公候補というのはどういう意味なんだ?」
「そのまんまの意味だけど?」
「詳細を聞かせろと言っているんだ!」
「うーん……どうしようかなぁ」
ジョウゲンはわざとらしく悩む仕草を見せる。ゲイツはそれにイラつきを覚えた。
「じゃあ、こうしよう。俺と本気で戦ってくれたら話してあげるよ」
ジョウゲンの腹部にはいつの間にかジクウドライバーが巻かれており、その手にザモナスライドウォッチが握られている。
「……後悔するなよ」
「ははっ。カッコイイこと言うなぁゲイツ君は」
『ザモナス!』
起動されるザモナスライドウォッチ。ジクウドライバーにセットされ、中央のロックも解除される。
「変──」
何故かそこでジョウゲンは中断する。
「いや、違うか。……本気で戦うならやっぱ
ジョウゲンから軽薄な笑みが消える。その下から現れるのは好戦的な獣を彷彿とさせる笑み。獲物を前にして目はぎらつき、口の両端は吊り上げられて犬歯が剝き出しになる。
それは解放の咆哮。
「おおおおおおおおおおおおおっ!」
ジョウゲンが叫ぶ。その細身に似つかわしくない野生染みた咆哮。捕食者を連想させるその叫びは、戦士であるゲイツを無意識に委縮させる程であった。
それは弱肉強食の理の中で喰らうモノの名。
ア マ ゾ ン ッ!
試しに特殊タグをやってみました。そのままだと少し寂しい感じがしたので。
ザモナスの元ネタ的に、この掛け声は絶対に入れようと思いました。
先にどちらが見たいですか?
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IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
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IFゲイツ、マジェスティ