仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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劇場版ならやっぱり劇場版限定のアレが欲しい。


Over Quartzer その8

「それにしても──」

 

 腕を組んだ剛は横目で見ながら呟く。

 

「お前の仲間、大丈夫なのか?」

 

 剛が心配しているのはベッドの上で寝かされている光太郎のことである。ここに連れて来てから未だに起きる気配が無い。

 

「大丈夫……だと思う」

「はっきりしないなぁ」

「俺も光太郎と会ってまだほんの少ししか経ってないから、今何が起こっているのか詳しいことは分からないんだ……」

「そうだったのか。悪いな、責めるつもりは無いんだ」

「うん、分かってる。……心配なのは俺も同じだから」

 

 ソウゴも眠っている光太郎を見た。顔色は悪くないし、呼吸も整っている。ただ眠っている様にしか見えないが、光太郎はどんなに声を掛けても目を覚ますことは無かった。

 剛には話していないが、光太郎が普通の体ではないことをソウゴは知っている。カッシーンたちとの戦いで光太郎の体に何らかの異常が生じたのだとしたらお手上げ状態であった。

 

(万が一の時は、これで……)

 

 ソウゴはポケットの中に仕舞ってあるアナザージオウウォッチを握る。ジオウの力を何処まで再現出来るかソウゴには分からないが、もしジオウⅡの能力を再現することが出来るのなら時間逆行をして光太郎を健康な状態まで戻すことも可能かもしれない。

 しかし、その代償としてアナザージオウの悪影響がソウゴ自身を蝕む可能性もあった。

 だが、そのリスクを承知でソウゴは選択の一つに入れる。

 

「外の連中は……居ないみたいだな」

 

 剛は窓から外を眺めてカッシーンたちが居ないかどうかを探る。

 

「腹減ってるか? 何なら今のうち食料でも探してこようか?」

「ありがとう。でも、大丈夫」

 

 剛の気遣いをやんわりと断る。本当は空腹だが悟られない様にする。断ったのは、ここで剛が外に出てしまったらカッシーンたちに見つかって捕まってしまう可能性を感じたからであった。

 心遣いは有り難いが、そのせいで危険な目に遭って欲しくはない。

 

「そっか」

 

 剛はそれ以上は言わず、引き続き外の様子は窺っていた。

 その時、いきなり建物の扉が勢いよく開き、ソウゴと剛は驚く。何せ剛が警戒していたのにそれを搔い潜って侵入してきたのだ。

 二人は侵入者に対して身構えるが、ソウゴは入って来た人物の目にして二度目の驚きを覚える。

 

「ウォズ!?」

 

 ソウゴたちを裏切っていた筈のウォズがボロボロの状態で扉にもたれ掛かっている。衣服は所々が破れ、いつも巻いているストールは端が裂けており、ウォズ自身も額や口の端から血を流して怪我をしている。

 

「……やあ。こんな所に……居たとはね。お陰で、探し回す羽目になったよ……」

 

 いつも通り飄々とした態度を努めようとしているが、かなり消耗しているのか呼吸が荒く、顔色も悪く、平静さを表面上ですら保てていない。

 

「どうしたの!? ボロボロじゃん!?」

 

 地下牢での件があったというのに、ソウゴはウォズを心配して近付いていく。そんな彼を拒絶する様にソウゴへと突き付けられるは、全てのライドウォッチが填められたライドウォッチダイザーであった。

 

「これを」

「これは……! 何でウォズは俺にこれを?」

「理由なんていい。君が黙ってこれを受け取ってくれれば、私は早々に消えるさ」

 

 ウォズは一刻も早くここから去りたい様子であった。しかし、それも無理のないことかもしれない。

 理由はどうあれウォズはソウゴを侮辱する発言をした。それが本音でなくとも吐いた言葉を取り消すことは出来ない。そして、目的を叶える為とはいえソウゴたちが傷付き、倒れて行くのを黙って見ていたのだ。

 ウォズからすれば立派な裏切り行為である。だというのに再会したソウゴは、そんなこと無かったかの様にいつも通りにウォズへ接してきた。

 そんな資格は自分には無いと思っているウォズにとっては、その優しさは苦しさを覚える。拒絶する振る舞いをされた方がウォズにとって罰となり、裏切り者に相応しい対応と言えた。

 ライドウォッチダイザーを受け取ろうとしないソウゴにウォズは業を煮やし、ライドウォッチダイザーを地面に置いて去ろうとする。

 その直前、ウォズの肩が掴まれ逆に建物の中に引っ張り込まれた。

 

「そんな怪我した奴を、黙って見送る筈が無いだろ」

「詩島剛……まさか、君が彼と一緒に居るとは……!」

 

 剛の存在を今知ったウォズは目を丸くしていた。ソウゴと剛が共に居ることはウォズにも想像出来なかった。寧ろ、多くの人々が存在する中で剛と出会える確率など限りなくゼロに近い。そのゼロに近い可能性を引き当てたソウゴの天運にウォズは戦慄する。

 

「話はソウゴから聞かせてもらったぜ……お前、彼奴を利用して俺からライダーの力を奪った連中の仲間なんだってな?」

「──言い訳はしないさ。殴りたければ殴ればいい。君にはその権利がある」

「そうかよ」

 

 剛は徐に拳を作り、ウォズ目掛けてそれを繰り出す──が、途中で止めてしまった。

 

「殴ってやってもいいが、生憎俺は怪我人を殴る様な趣味は持ってない。俺に殴られたければ、せめて怪我の治療をさせろ」

 

 剛の台詞にウォズは呆気にとられる。

 

「いや、それは……」

「俺にはお前を殴る権利があるんだろ? だったら殴り易くさせるのも権利者の特権じゃないのか?」

 

 剛の言っていることは詭弁だが、権利云々に関してはウォズの方から言い出したことのなので、普段は弁の立つウォズもどう言えばいいのか分からなくなって閉口してしまっていた。

 

「反論は無いな? ほら、怪我の手当をするぞ」

 

 剛は強引に話を進め、ウォズが治療せざるを得ない状況へ追い込む。

 すぐにここから離れるつもりであったウォズは、流されるまま治療を受けることになってしまった。

 剛がウォズを建物奥に連れて際、剛とソウゴは目が合う。剛は、してやったりと言わんばかりにウィンクをし、ソウゴはそれを見て声を押し殺して笑った。

 幸い建物の中には救急箱が置いてあり、包帯や消毒液などが入っている。それを用いて軽くではあるがウォズの傷の治療を行った。

 頬に絆創膏を貼り、額に包帯を巻かれたウォズ。彼は視線を横へ移動させる。そこには眠っている光太郎がいた。

 

「……君は彼に助けられた、ということで良いのかな?」

「うん。そうだよ。光太郎のおかげであの地下牢から脱出出来た」

 

 会話をする両者だが、ウォズの方はソウゴから目線を外したままである。

 

「それと、これのおかげ」

 

 ソウゴはアナザージオウウォッチを見せる。剛はウォッチに描かれているアナザージオウの顔を見て顔を顰める。

 

「お前、悪趣味なもん持ってんなー」

 

 顔面の皮を剥がれた様なデザインのアナザージオウに対する率直な感想にソウゴは苦笑する。ソウゴ自身も剛と似たような印象であった。

 話が少し逸れたので戻す。

 

「これもあったから、あの地下牢から光太郎と一緒に脱け出せたんだ。もし、あの時俺に何の力も無かったら光太郎の足手纏いになってた……これ、入れてくれたのウォズなんでしょ?」

 

 ウォズは逸らしていた顔をソウゴに向け、その手に持つアナザージオウウォッチに視線を下げた後にまた顔を背けてしまった。合わせる顔が無い、と言わんばかりに。

 

「……正直それは諸刃の剣だった。確かにアナザージオウの持つ力は強力だ。だが、強力な反面持ち主を選ぶ。同じジオウでも対極に位置する君がアナザージオウの力を使うのは相当な反動があった筈だ」

 

 ソウゴの問いにウォズは否定をしなかった。そして、同時にアナザージオウウォッチをソウゴに渡したことは彼にとって賭けであったことを明かす。

 ソウゴならば乗り越えられる、と信じていた一方でアナザージオウの力に呑み込まれて暴走する可能性も考慮していた。以前、ジオウの力はアナザージオウに弱いと言ったのはウォズ自身なのだから。

 

「それが助けになったのだとしたら、それは紛れもなく君自身の実力によるものだ。私がやったことは手助けじゃない。ただのギャンブルだ」

 

 謙遜を通り越して自虐になっている。ソウゴたちに対する負い目がウォズをネガティブにしていた。

 

「それでも俺はウォズにありがとうって言うよ。ウォズはそう思っているかもしれないけど、俺はこう思っている。ウォズが言う通りアナザージオウで上手く脱出出来たのが俺の実力だったとしても、やっぱり切っ掛けはウォズがしてくれたことなんだ」

「君は……」

 

 迷いなく言い切るソウゴに、ウォズは背けていた目を真っ直ぐ向ける。ここまで素直に感謝の言葉を伝えられ、卑屈になって目を逸らし続けることなど本当の無礼。

 罪悪感が重く圧し掛かろうとも、本気の言葉に本気で向き合うことこそこの場に於いて真の礼儀である。

 

「……君は、本当にお人好しだね」

 

 色々な感情が込めたその台詞を言うウォズの表情は苦笑であった。

 

「ウォズ、教えてよ。クォーツァーは俺に平成ライダーの力を収斂させた後、何をするつもりなの?」

 

 ウォズとの蟠りが氷解したのを感じ、ソウゴは本題に入る。ここまで大規模なことをしたクォーツァーの目的である。

 

「彼らは……平成という時代を最初からやり直すつもりなんだ」

「平成を?」

「最初からやり直す?」

 

 時代をやり直すというスケールの大きな計画にいまいちピンと来ないソウゴと剛。

 

「言葉の通りの意味さ。平成という歴史の枠内で誕生した建物や人などを全て抹消し、自分たちの思い描いた理想の平成を創り出すのさ。当然、今の平成ライダー達も消して新たな平成ライダー達も創るつもりだよ」

 

 クォーツァーの目的を聞かされたソウゴと剛は啞然とする。

 

「んな馬鹿な……」

 

 剛の口から素直な感想が滑り出る。その話が本当なら平成生まれの剛やソウゴも消える事となる。

 

「何でそんなことをするの!?」

 

 ソウゴからすれば理解し難い行為であった。一体どれだけの人が無かったことにされるのか想像も付かない。

 

「……生憎、計画だけを聞かされているだけで理由そのものは私も知らないんだ。全ては常磐SOUGOの意志のままに動かされている」

 

 ウォズも計画の要的な存在であるが、理由は何故かSOUGOから聞かされていない。或いはウォズが失敗することを想定しており、必要最低限の情報しか与えなかったのかもしれない。

 腹立たしさを感じるが、皮肉なことにその対応は正解であったことをウォズ自ら証明してしまっていた。

 

「──じゃあ、どうやったらクォーツァーの計画を阻止出来るの? 常磐SOUGOを倒せばいいの?」

「阻止する方法は一つ。今、上空に待機しているダイマジーンを全て破壊することだ。あれこそが時代をリセットする装置だ」

 

 ウォズの説明でほんの少しだが希望が見えて来る。するとウォズが『ただし』と言葉を継いできた。

 

「そうなればクォーツァーも全力で阻止しに来るだろうね。君は絶対に常磐SOUGO──バールクスと戦ってはいけない。戦えば、確実に負ける」

 

 ソウゴへの信頼がある今のウォズですら何の疑いも無くソウゴの敗北を断言する。

 

「……グランドジオウの力でも?」

 

 確かにバールクスは強かった。だが、ソウゴがバールクスと戦った時はジオウの力のみであった。ジオウⅡ、グランドジオウならばと思ったがウォズは首を横に振る。

 

「バールクスは平成ライダーの天敵だ。彼には全ての平成ライダーの力が通用しない」

「平成ライダーの力が通用しないって……」

「だからこそ戦闘を避けるべきなんだ。優先すべきは計画の阻止。──そうしなければ今の平成は……終わる」

 

 ウォズはそう言ってソウゴにある物を差し出した。

 

「今の君にはこれが必要だろう?」

「あっ!」

 

 ウォズの手にあったのは真新しいジクウドライバー。ソウゴはそれを受け取る。

 バールクスに敗れてライドウォッチごとジクウドライバーを奪われてからそれ程時間は経過していないのにその重みに懐かしさを感じる。

 

「──何か最初の頃を思い出すね」

「私も同感だ。大事に使って欲しい。今の私にはもうこれを手に入れる手段は無い」

「……分かった。大事に使うよ」

「それと、言い難いことだが……」

 

 ウォズは表情を曇らせる。

 

「……もうジオウライドウォッチは存在しない。私の目の前で破壊されてしまった」

「え? じゃあ俺はもうジオウには……?」

「すまない……」

 

 てっきりジオウライドウォッチも在ると思っていたソウゴはその事実に驚く。ジクウドライバーがあればジオウⅡには変身出来るが、その代わりにグランドジオウへの変身が不可能になってしまう。

 力は手に入れたが大事なものが欠けていることにソウゴは頭を悩ませる。どうすればいいのか考えていた時、自分の手の中にある物を思い出す。

 

「……そうか。もしかしたら、これなら……!」

 

 何かを決心したソウゴに剛とウォズは戸惑った眼差しで見ていると、ソウゴは徐にアナザージオウウォッチのスイッチを押す。

 

『ジオウ……』

「何か……行ける気がする!」

 

 いきなりアナザージオウウォッチを起動させて何をするつもりなのかとウォズを見ている矢先、ソウゴは自分の体にアナザージオウウォッチを押し当てた。

 

「くっ! ううううっ!」

 

 突然この場でアナザージオウに変身しようとするソウゴに絶句するウォズ。剛も事態に付いて行けずに呆然としている。

 だが、ウォズはおかしな点に気付いた。アナザーライダーへの変身はアナザーウォッチを体内に取り込むことで成す。なのに、アナザージオウウォッチはいつまでも取り込まれることなく、逆に何かを注ぎ込まれている様に見えた。

 いつまでも変身しないソウゴにアナザージオウウォッチが業を煮やしたのか黒いエネルギーを触手の様に伸ばし、ソウゴを取り込もうとする。

 

「ソウゴ!」

 

 それを危険と判断し、剛がソウゴを助けようとするがウォズが剛の腕を掴んで止める。剛はウォズに咎める目で見るがウォズは──

 

「黙って見ているんだ」

 

 ──と言い、真剣な表情でその光景を見守っていた。

 黒いエネルギーがソウゴを覆い隠そうとしたその時、黒いエネルギーは内側から弾ける様にソウゴの体から離れていく。その現象は次々と起り、やがて黒いエネルギーはアナザージオウウォッチの中へ戻ってしまった。

 

「う、ぐっ! うああああああ!」

 

 アナザージオウウォッチが黒い光を発する。すると、アナザージオウウォッチが白い輝きを放ち、黒が白へ塗り替えられた。

 

『ジオウ!』

 

 アナザージオウウォッチの外装が剥がれ落ち、その下から失われた筈のジオウライドウォッチが出て来る。

 

「はあ……はあ……出来たっ!」

 

 アナザーライダーと仮面ライダーは表裏一体の存在。歴史を歪曲する為に存在する歪な仮面ライダー。

 ならば、その歪さを正すことが出来たのなら? 

 ソウゴは自分自身の中にあるジオウの歴史をアナザージオウウォッチに逆流させ、アナザーライダーを仮面ライダーに昇華してみせた。

 全く根拠が無かった訳では無い。前にアナザーG4がアギトライドウォッチを埋め込まれた仮面ライダーの姿となった。今回やったことはそれの応用に近い。

 

「……全く。君にはいつも驚かされる」

 

 ウォズはソウゴの突飛な行動に呆れと感嘆を半々に混ぜた感想を零す。しかし、その表情は自然と笑っていた。

 ジオウライドウォッチの復活に呼応して、ライドウォッチダイザーに嵌められていたライドウォッチが宙へ飛び出す、それぞれが輝きを放ち、一箇所へ集まるとグランドジオウライドウォッチと化し、ソウゴの手の中に落ちる。

 

「一つになった……」

 

 次々と起る現象にやや置いてけぼりになる剛。記憶が無いせいで一般人と変わらない視点となっていると考えれば無理も無い。

 

「……良いもの見せてもらったよ」

 

 ウォズはそう言って立ち上がり、建物から出ようとする。

 

「一緒に行かないの? ゲイツたちも探してクォーツァーたちを──」

「ダメだ。君は計画の阻止に向かってくれ。間に合わなくなる」

 

 共闘を拒むウォズ。今までソウゴを騙していたから一緒に戦う資格など無い──という訳では無くウォズの目に強い使命感が宿っているのを感じた。

 

「ゲイツ君たちは恐らく常磐SOUGOの片腕の一人と戦っている。彼は強い。戦えば君も確実に消耗する。そうなれば不利になるのはこちらだ」

「でも──」

「私が行く。そして、ゲイツ君たちと合流したら君の許へ向かおう。約束する」

「……分かった」

 

 ウォズの真剣な表情を見て、説得は無理と思いソウゴは渋々了承する。

 

「……ありがとう」

 

 礼を言い残してウォズは建物から去って行く。そんな彼の背にソウゴの言葉が掛けられた。

 

「また後で!」

 

 ウォズは足を止め、ソウゴの方を一瞬振り返る。

 

「……ああ」

 

 約束の言葉を短く伝え、建物の外に出た。

 ウォズは独り暫く歩いた後、自嘲する。

 

「最後の最後でまた嘘を吐いてしまったな……」

 

 ウォズがこれから向かう先はゲイツの許ではない。再戦する為にカゲンの許へ向かっていた。

 ジョウゲン、カゲン共に恐ろしい力を持っている。誰かが身を呈して足止めをしなければソウゴはSOUGOへ辿り着けないかもしれない。

 ゲイツもまたジョウゲンの恐ろしさに気付いて必死になって戦っている筈。ウォズもまた決死の覚悟でカゲンに挑む。

 ウォズは生きてソウゴに会うことは無いと直感していた。

 届くことの無い別れの言葉がウォズの口から思わず零れ落ちる。

 

「さよなら……我が魔王」

 

 

 ◇

 

 

 ザモナスの牙が音を立ててゲイツの装甲を嚙み砕いていく。

 

「ぐあああああああっ!」

 

 痛みよりも身の毛がよだつ。生きたまま喰われるなど人の最期として最悪の部類に入る。

 ゲイツもただ黙って喰われる訳も無く、力の入らない肩を必死に上げてザモナスの顔面を殴打する。

 一瞬離れるザモナスの顔。しかし、すぐに体勢を戻して今度は首筋ではなく喉元に喰らい付いてきた。

 メキメキと音を立てて剝がされていく外装。

 

「こ、のっ!」

 

 渾身の肘をザモナスのこめかみに打ち付ける。その一撃は良い具合に入り、ザモナスの嚙む力が僅かに弱まる。

 

「っああ!」

 

 両足で地面を蹴り、膝を折り曲げてザモナスとの間に入れると全力で膝を伸ばし、ドロップキックの要領でザモナスを蹴り飛ばす。

 牙が喉元から離れたが、蓄積したダメージが限界を迎えてゲイツは変身解除した状態で地面を転がって行く。

 喉を押さえて咳き込みながら立ち上がるゲイツ。ザモナスは大したダメージを負った様子は無い様子でゲイツの方をジッと見ていた。

 すると、ザモナスの体液から生み出された怪人たちが彼を守る様にわらわらと集まって来る。

 ザモナスは徐に腕上げ、振り下ろす──怪人の脳天に。

 

「なっ!?」

 

 頭を真っ二つに割られて絶命する様に二の句が継げなくなるゲイツ。

 ザモナスはその場で跳躍し、空中で回し蹴りを放って別の怪人の頭を吹き飛ばす。

 

「ぐるあぁぁぁぁぁぁ!」

 

 着地したザモナスは獣同然の叫びを上げながら腕を振るうと、ヒレ状のカッターに切断された怪人の上半身が下半身からずり落ちる。

 自分が生み出した怪人を一方的に虐殺するザモナス。その光景に理解が及ばず呆然とするしかないゲイツ。

 怪人は最後の一体となり、逃げようとするがその背にザモナスの手刀が突き刺さる。引き抜くとその手には黒い肉と器官に覆われて赤く輝く心臓の様なものが握られていた。

 引き抜かれた怪人は黒い液体となって地面の染みと化してしまう。

 ザモナスがその心臓を見つめ、何をするのかとゲイツが警戒していると、ザモナスはゲイツの前でそれを咀嚼し出した。

 

「うっ!」

 

 歴戦の戦士であるゲイツですら吐き気を覚える。ザモナスは開かれた口部で何度も何度も噛み付き、牙で嚙み潰し、呑み込む。

 時間にすればほんの十数秒の食事時間。それが終えるとザモナスは満足そうな声を出す。

 

「はぁー、落ち着いた」

 

 獣性が潜まり、理性のある声であった。

 

「取り込むのはいいけど、取り込まれるのはダメだよねぇ。いやぁ、戦いに夢中になり過ぎてかなりギリギリの所までいっちゃったよ。はははは」

 

 変貌ぶりの温度差に付いて行けなくなりそうになる。先程の行為がライドウォッチの影響という口振りだが、それを抜きにしてもザモナスの性質は異常に思えた。

 

「ふぅー、ちょっと食事休憩。ゲイツ君も楽にしたら?」

 

 吞気に言ってくるザモナスに『ふざけるな!』と返した所だが、負傷している上にゲイツリバイブライドウォッチも破損してしまったゲイツにとっては、少しでもこの状況を打開する為の策を考える時間が欲しいので黙っておく。

 

「そう言えば、話してなかったよね? ゲイツ君たちが主役候補っていう意味について」

 

 戦う前に言っていたザモナスの言葉。今、話す気になったらしいのでゲイツは耳を傾ける。

 

「あれはね、そのまま意味だよ。俺達クォーツァーはこの時代をリセットする。んでリセットした後の新しい平成ライダーとしてゲイツ君達を選んだって訳」

「時代をリセットするだと……?」

 

 クォーツァーの目的とその計画に組み込まれようとしているのを知り、啞然となる。

 

「君以外にも主役はいるんだよー。仮面ライダーシノビの神蔵蓮太郎に仮面ライダークイズの堂安主水、仮面ライダーキカイの真紀名レント。あと仮面ライダーギンガ……まあ、あれはイレギュラーだからいいか」

 

 ザモナスが挙げた名はゲイツも知っていた。堂安主水など一緒に共闘したこともある。

 

「わざわざ彼らが仮面ライダーとして戦える時間作ってテストしてたんだよ。俺達の望み通りの仮面ライダーになるかどうかを。知ってた? 彼らが使っているドライバーの素体って君たちが使っているジクウドライバーなんだよ?」

 

 知らされた事実はゲイツの予想も付かないものであった。ゲイツリバイブの力の源になっている彼らがクォーツァーによって意図して生み出された仮面ライダーなど信じたくは無かった。

 

「良い感じに育ってたけど、数が足りなくってね。何せ二十人は欲しいから。そしたら、ジクウドライバーを使って戦っているゲイツ君とツクヨミちゃんが丁度良く居たから──」

「もういい! 黙れ!」

 

 ゲイツは怒りを露わにして怒鳴る。

 

「俺は認めん……! 仮面ライダーとして戦っている彼奴らがお前たちの操り人形だったなど! 断じて認めない!」

 

 未来で戦う彼らの使命も力もクォーツァーの目的の為に用意されたものだったなど彼らの生き様に対する冒涜。それを認めるなど出来る筈が無い。

 

「本当のことなのになぁー」

「黙れと言った筈だ!」

「俺を黙らせたきゃ力尽くしかないよ。出来る?」

 

 煽ってくるザモナス。『出来る!』と即答したいゲイツであったが、ゲイツリバイブライドウォッチが壊れている今、それも難しい。

 ゲイツリバイブの力だけでもどうにか利用出来ないかと思った時、ある天啓が浮かぶ。

 

(行けるのか?)

 

 出来るかどうか分からず自問するゲイツ。だが、答えは一つしかない。

 

「何か行ける気がする、だったな──ソウゴ」

 

 戦友の口癖を思い出し、それを言う自分に笑いながらゲイツはジクウドライバーにセットされているゲイツライドウォッチと半壊したゲイツリバイブライドウォッチを抜く。

 ザモナスはそれを訝しげに見ており、何をするか注目していた。

 

『ゲイツ!』

『ゲイツリバイブ!』

 

 そして、ゲイツは二つのウォッチを起動させ、それを重ね合わせる。

 二つのウォッチは光り輝き、ゲイツリバイブライドウォッチから飛び出した橙と青の光がゲイツライドウォッチへ吸い込まれていく。

 ライドウォッチが仮面ライダーの力と歴史を吸収するのを利用してゲイツライドウォッチにゲイツリバイブの力を取り込ませ様としていたのだ。

 

「うおおおおおっ!」

 

 力の奔流でライドウォッチを落としそうになるのを必死になって耐えるゲイツ。やがて、ゲイツリバイブライドウォッチは光の粒子となって消滅し、ゲイツライドウォッチに吸収される。

 そして、全てを吸収したゲイツライドウォッチはゲイツの手の中で──

 

『剛烈!』

『疾風!』

 

 二つのライドウォッチとして生まれ変わる。見た目は仮面ライダーゲイツの顔が浮かび上がるライドウォッチだが、外装は橙と青に変わっていた。

 

「うっそ……」

 

 新たなライドウォッチを誕生させたことに驚くザモナス。ゲイツはそんな彼の前で二つのライドウォッチをジクウドライバーにセットする。

 

「行くぞ……これが最後だ!」

 

 ゲイツはジクウドライバーの上下を両手で挟み込む。

 

「変身!」

『ライダーターイム!』

 

 ジクウドライバーの回転と共にゲイツの背後に橙と青の光を発する二つの時計盤を模したエネルギーが発生。

 

『パワードターイム!』

『スピードターイム!』

 

 輪唱の様に重なる音声の後、エネルギー体のゲイツリバイブ剛烈と疾風がゲイツの左右に召喚される。

 

『リ・バ・イ・ブ! 剛烈!』

『リバイ・リバイ・リバイ! リバイ・リバイ・リバイ! リバ・イ・ブ! 疾風!』

 

 召喚された二体のゲイツリバイブは中心に立つゲイツと重なり、一つとなる。

 

『剛烈疾風!』

 

 最後の音声もまた一つとなり、新たな姿となったゲイツの名を叫んだ後、『らいだー』の文字が仮面に填め込まれた。

 仮面は仮面ライダーゲイツのまま、装甲は剛烈、背部から疾風を模した光翼が展開。剛烈と疾風が合わさった姿となっている。

 ただし、今までのゲイツとは違い、複眼も装甲もボディスーツ、翼も全て赤一色となっている。そして、装甲の隙間からは赤い粒子が砂の様に噴き出していた。

 

「へえ、凄いね! 凄いけど……」

 

 ザモナスはゲイツの新しい姿、仮面ライダーゲイツ剛烈疾風を見て率直な感想を言う。

 

「死ぬよ、君?」

 

 ザモナスはゲイツの欠点を既に見抜いていた。

 この姿は強化した姿では無い。ゲイツリバイブに本来備わっているリミットを完全に外した形態である。ゲイツリバイブは能力を分割し、更にゲイツリバイブライドウォッチ内部にある砂──リペアードクリスタルによって片方の変身の際の負荷を軽減させていた。

 しかし、今のゲイツにはそれが無い。自らの時間を圧縮、引き伸ばすことで得られるパワーとスピードを同時に使用しており、彼の中の時間は滅茶苦茶になっていた。

 装甲の隙間から零れ落ちる赤い粒子こそ彼の中で消耗され続ける時間(いのち)である。

 だが、そんなことはゲイツも覚悟している。だからこそゲイツは力強く答えた。

 

「……生きるさ!」

 

 その一言にザモナスも返す言葉は一つしかない。

 

「ゲイツ君……最高っ!」

 




やっぱり主人公以外でも劇場版限定フォームが欲しいと思ったので出しました。最近漢字四文字のライダーも出ましたしね。
でも剛烈疾風よりも疾風剛烈の方が語呂がいいかも……因みにスペックは両フォームの良いとこ取りです。

先にどちらが見たいですか?

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