己の寿命を全て戦闘力へ変換させる仮面ライダーゲイツ剛烈疾風を前にして、ザモナスは仮面の下で笑みが抑えきれずにいた。
最初は新たな時代の主役一候補というささやかな存在に過ぎなかった。しかし、実際に戦ってみてゲイツに未来を切り拓く可能性を含んだ力を感じた。
折れずに何度でも立ち上がり、試練を乗り越え様とする姿には感動すら覚える。
今なら白ウォズが救世主としてゲイツの存在に拘ったのが分かる気がした。
そのゲイツが、今その命を全て懸けて自分に挑もうとしている。こんなにも名誉なことは無い。
貴重な主役候補であったが、ザモナスは既にゲイツを殺すことを心に決めていた。命懸けで来るのならば、こちらもまた命を賭して戦うのが礼儀。死力を尽くして戦えばどちらか一方が死ぬのは当たり前のことなのだ。
真紅に輝くゲイツ。それは命を燃やしている輝きであり、見惚れそうになる。
長い間、歴史の管理をしていると命というものがあやふやなものに感じて来る。何せ、クォーツァーがその気になれば何十億という命が歴史ごと消え去るのだ。そんなことを繰り返していれば他人どころか自分の命すら軽く感じてしまう。
ザモナスはこれから始まるであろう激しい戦いに鼓動が高まっていく。この緊張、この高鳴り、この恐れ。まさしく自分の命が伝えて来るもの。
ゲイツがファイティングポーズをとる。握り締められた両拳の周りに光が生じると、それがジカンジャックローに変わる。
のこモードの丸鋸からは火花の様に橙の光が飛び散り、つめモードの爪が青白く冷たい輝きを放つ。本来ならば一つしか存在しない筈のジカンジャックローを、ゲイツは左右の手に装備していた。
ゲイツリバイブの力を二分割して同時使用していることが影響しているのかもしれない。
武器が一つ増えたことなどザモナスにとって些細な事。今のゲイツが強敵であるという事実の前では。
「さあ、来な──」
その言葉は最後まで発することは出来なかった。眼前に突き出された、のこモードのジカンジャックローによって。
ザモナスの顔面に打ち付けられる丸鋸。顔の装甲を削りながら殴り抜ける。
殴られた、とザモナスが認識したのは、地面に叩き付けられて後方に跳ね上がり視界の上下が入れ替わった時であった。
(速──)
速いと思うよりも先に跳ね上がっているザモナスの背に衝撃が走る。先回りをしていたゲイツによる追撃が思考を中断させてしまう。
二撃目の丸鋸がザモナスの背中を強打し、後方に跳ね飛んだ時以上の速度で殴り返す。
「がはっ!」
背骨が折れるのでないかと思える重さ。速度は疾風。攻撃力は剛烈という二つの特徴を併せ持つ剛烈疾風。
赤い粒子の残像が見えた時には次の攻撃がザモナスに迫っていた。
跳ねるザモナスの真横に移動していたゲイツはタイミングを合わせてザモナスの腹部を蹴り上げ、真上に急転換させられる。
臓腑を突き抜けていく衝撃。それに引っ張り上げられるかの様に上へ飛んで行くザモナスの体。
それを迎えるのは、やはりゲイツであった。左手に持つ、つめモードのジカンジャックローでザモナスを斬り付け、地面に叩き落す。
「く、く、ふふふ……!」
深々と斬り裂かれたザモナスの背中から血の代わりの黒い液体が溢れ出る。
剛烈疾風となったゲイツの攻撃は名の示す通りに重く、速い。もしかしたら、ゲイツリバイブの時よりも攻撃力と速度が上昇している可能性があった。
ゲイツリバイブの力を同時使用しているだけで能力が爆発的に上昇するなど道理に合わないと思うかもしれない。
しかし、ザモナスはそれを不思議とは思わなかった。
倒れ伏していたザモナスがゆっくりと立ち上がる。隙だらけの動きの筈なのに何故かゲイツは攻撃を仕掛けて来ない。
立ち上がったザモナスがゲイツを見た時、そこに答えがあった。
一方的に攻撃していた筈のゲイツが膝を突いて苦悶していた。
「ふっ……くっ……!」
「それだけ、命懸けなら、強いのは当たり前だよねぇ、ゲイツ君?」
ダメージが抜けず咳き込みながらも愉し気に話し掛けるザモナス。ゲイツはそれに応える余裕すら無い。
ゲイツは驚いていた。命を賭して使用したこの力が自分の想像以上の力を発揮していたことに。
ゲイツは驚愕していた。それによって生まれる反動の大きさに。
ゲイツリバイブになった後、最初に経験した反動が生温く感じてしまう程の苦しみ。鍛え抜かれた精神力を持つゲイツですら戦いの最中に動けなくなってしまう。
己の時間の圧縮と引き伸ばしを同時に行使するという行為。強く固められたものを無理矢理引き伸ばしながら、また圧縮しそれを伸ばすという延々と続く矛盾に満ちたもの。
それによって生まれる僅かな均衡が今のゲイツを辛うじて生き長らえさせているが、そのバランスは地獄の責め苦の上で成り立っているものであった。
反動で動けなくなっているゲイツの体から今も零れ落ちていく赤い時間の粒子。命を削りながら軽くなっていく体。そこで命の重みを実感するのは皮肉としか言い様が無い。
「ふぅ……! ふぅ……! ふぅ……!」
時間という命を零しながらゲイツは立ち上がる。
どれだけの反動が来るのか分からなかったから最初の攻撃の後、動けなくなった。それを知った今ならば耐えることが出来る、と学習するが、もしそれが本当なら常人にゲイツの忍耐力を得ることは一生出来ないだろう。
「辛いよねぇ? 苦しいよねぇ? 今すぐにでも投げ出したくなるよねぇ? でも──」
憐憫とも嘲りともとれる言葉を掛けながら立ち上がって構えるゲイツを見るザモナス。向ける視線は少なくとも弱者を見るものではなかった。
「君はそれでも止めないんだろ? ゲイツ君。とことん最後まで戦うつもりだ」
ザモナスにはゲイツの体から零れ出る赤い粒子が鮮血の様に見えて来る。一度でもそう見えてしまうと自然と空腹感を覚えてしまう。
ザモナス自身も段々と人とそうではない者との境界が曖昧になってきたのを自覚していた。これ以上戦えば人を止めることになるかもしれない。
「──まっ、だからどうしたって話なんだけどね」
ザモナスにとって、そんな程度の話がこの戦いを止める理由にはならない。
「ゲイツ君が本気でやってんだ。──こっちも本気の本気で行かせてもらうよぉー」
口調はいつも通りの軽いもの。しかし、そこから行うのは狂気の所業。
『アマゾンアルファ!』
『アマゾンオメガ!』
『アマゾンネオ!』
『アマゾンネオアルファ!』
両腕のライドウォッチホルダーに有る四個のライドウォッチが起動状態となる。
「おおおおおおおおおおっ!」
顎が裂けて見えるぐらいに口部が開き、そこから大気を震わす咆哮がザモナスから発せられた。見た目に目立った変化は無い。しかし、ゲイツはより一層危険な気配をザモナスから感じ取る。
本気の本気とザモナスは言っているが、これまでの戦いの中で一度たりとも手を抜く様な真似をしていない、常に本気であった。その言葉が真に意味することは、ここから先の力にはゲイツと同じく大きなリスクがあるということである。
時間を掛ければ動けなくなる自分の方が不利だと思い、悲鳴を上げる肉体を無視してゲイツは再び高速の世界へ飛び込んだ。
ザモナスの目には周囲に散る赤い粒子しか見えない。だが、赤い粒子を追っても意味は無い。赤い粒子が見えた時にはゲイツは既に別の場所へ移動している。赤い粒子はただの残滓にしか過ぎない。
「はははっ!」
戦闘への高揚が無限に溢れ出てくる気分であった。その衝動に任せ、ザモナスが全身に力を込めた時、その体から無数の触手が四方八方へと伸びる。
アマゾンネオライドウォッチを使用した時と同じ糸状の触手であるが、他のライドウォッチと併用していることで一本一本の細部が異なっている。先端が針状になっているもの、無数の細かい刃が連なっているもの、鉤爪型になっているものなど種類は多数である。
どれもこれも殺傷能力が高まっており、不可視速度で動き回るゲイツの進路を潰す様に触手は暴れ回る。
百を超えるであろう触手の群が、姿無きゲイツを追い掛ける。
(ちっ!)
高速で飛翔し続けているゲイツは、その光景に舌打ちをした。触手一本一本の振り回される速度はかなりのものであり、それが先端になればなるほど速度を増していく。先の部分に至っては恐らくは音速を超えている。その証拠に断続的に空気が叩かれる音が鳴り響いていた。
兎に角適当にゲイツの動きを探り、闇雲に攻撃しているが数が多過ぎるせいで迂闊に近付けない。
ゲイツは偶々近くにきた触手の一本を避ける。その触手にもヒレ状の突起が無数に並んでおり、よく見ると突起が動いている。さながらチェーンソーの刃であった。
触れた箇所によっては無傷では済まないそれから距離を取ろうとするゲイツであったが──
(うっ……!)
喉をせり上がってくる熱い感触に一瞬動きが鈍った。恐らく喉を這い上がろうとしているのは血。戦いの最中にそれを吐き出す訳にもいかず気力で喉の奥に押し込める。
しかし、それによって気が逸れてしまったことにより別の触手が来ているにも関わらず反応が遅れてしまう。
ゲイツが気付いた時には眼前まで迫っており、回避する暇が無かった。
(くっ!)
ゲイツはやむを得ず触手にジカンジャックローの爪を振るう。幸い触手そのものはジカンジャックローで切断出来る程度の硬さであった。
触手の一本が切断された瞬間、ザモナスの首がぐるりと動いてゲイツの居る方へ向けられる。気のせいかもしれないがゲイツはザモナスと眼が合った気がした。
バラバラの方向を攻撃していた触手らがゲイツの居る方へ殺到する。ゲイツが触手を攻撃してしまったせいで場所の位置が限定されてしまった。
逃げようにも上下左右から触手が迫ってきている。逃れるにはさっきの様に触手を破壊するしか無いが、そうすればまた位置を特定されてしまう。
(どうする……むっ!)
暴れ狂う触手らの中に見えた僅かな隙間。その向こう側にはザモナスが見える。通り抜けるにはゲイツがギリギリ通れる程の大きさしかない。抜ければザモナスを攻撃出来るが下手をすれば触手に捕まる危険もあった。
攻めるか様子を見るかの二択。しかし、選んでいる時間の余裕は無い。隙間は徐々にだが狭まっていっている。
覚悟を決め、ゲイツは急加速する。
速さに全力を注ぎ込んで触手の中へと突入。触れるか触れないかのギリギリの間を通り抜け、狭まっている隙間を見事に通過。通り抜け間際に触手を全て斬り飛ばす。
その奥に立っているザモナスの胸を丸鋸で深々と削り取り、そのまま離脱。
「そこかぁっ!」
──する筈だったゲイツの右腕はザモナスに掴まれ、急停止。高速の世界から定速の世界へ引き摺り戻された。
「やっと掴まえたぁ!」
ザモナスの手刀が間を置かずに突き出される。生え揃った鋭い爪がゲイツの顔面に風穴を開けようとするが、ゲイツも同じくジカンジャックローの爪でそれを弾く。
ゲイツはまんまと誘い込まれたことに気付いた。触手の群を出したのは、ゲイツの移動するルートを限定させる為。隙間を作ったのは攻める方向を分かり易くする為。後は攻撃されたタイミングでゲイツを捕捉するだけである。以前、マッハとの戦いで見せたものである。
あの時マッハよりもゲイツの動きは速く、攻撃も強烈だった筈だが、ザモナスの方もより感覚が鋭敏になり、胸を抉られても怯みもしない。その胸の傷もいつの間にか治っている。ザモナスの全てが分かり易く強化されていた。
互いに足を止め、近距離で戦いが始まる。
ザモナスは肘を曲げ、腕から生えるヒレ状のカッターで袈裟切りを繰り出す。ゲイツは爪でそれを受け止め、ザモナスの胴体に蹴りを打ち込んだ。
剛烈の脚力に疾風の速度を加えた音すら追い付けない蹴りがザモナスの脇腹に深々と入り込み、足越しに骨の折れる音を伝えてくる。
だが、折ったと同時にゲイツの足が押し返されていく。折れた瞬間から骨が再生し出していた。
骨を折る感触も決して気持ちの良いものではないが、治っていく感触も不気味としか言いようがない。それも極めて短時間でそれが起こっており、未知の生物に触れている様な感覚であった。
骨折の激痛と再生の痛痒が同時に生じている筈なのにザモナスは気にする様子も無く、今度は指先を軽く曲げて鉤状にし、爪を振り下ろす。
蹴りという不安定な体勢であった為、咄嗟に回避することが出来なかったゲイツはせめて受ける箇所を絞らせようと上体を反らす。
振り下ろされたザモナスの爪がゲイツの胸部装甲を滑って行く。薄い傷が装甲にでき、削られた箇所が赤い粒子となって散り、空中で溶けて消える。
ダメージはほぼゼロ。しかし、ザモナスの異常にまで上がった再生力はゲイツには脅威にしかならない。持久戦となれば先に潰れるのはゲイツである。
生半可なダメージを与えても意味が無い。狙うならば致命的な一撃を。
ゲイツは上体を戻す反動を利用し、最速、最短距離で真っ直ぐジカンジャックローの爪を伸ばす。
大振りの攻撃を仕掛けた後のザモナスにそれを躱す余裕など無く、ゲイツの爪は容易くザモナスの胸に刺さり、その奥にある心臓を貫いた。
心臓が裂ける不快な感触が爪越しでも伝わって来る。他者を殺めることをゲイツとて好き好んですることはしない。しかし、いざという時ならばそれをする覚悟はゲイツの中に宿っていた。
心臓を貫かれたザモナスは体を一瞬震わす──それだけであった。
「……痛いなぁ! ゲイツ君! あははははっ!」
「何っ!?」
心臓を貫かれてもザモナスは平気で話し掛けてきた。ここまで来るとザモナスは不死身なのではないかと思ってしまう。
ザモナスは、心臓に爪を突き立てられたまま腕を掲げる。腕のカッターでゲイツの首を搔っ切るつもりである。
その狙いが分かったゲイツは驚きを心の奥底に押し込み、刺していたジカンジャックローを一気に引き抜く。
黒い液体で濡れた爪が抜けると同時にザモナスの刃がゲイツへ振り下ろされる。
「はあっ!」
突き上げられるジカンジャックロー。爪がザモナスの腕へ滑り込んだ瞬間、振り下ろされる筈であった肘から下の腕が宙に舞う。
攻撃の速度はやはりゲイツの方に分があった。先に動かれたとしても後からそれに対応することが出来る。
黒い液体をまき散らしながらクルクルと飛んでいくザモナスの腕。一方、ザモナスの方は斬り飛ばされた腕に見向きもしない。
斬られたこと自体認識出来ていないのか──答えは否である。
掲げられたまま腕の断面から黒い液体を飛ばしながら数本の触手が伸びる。伸びた触手は空中にある腕の断面へ突き刺さり、そのまま引き寄せた。
断面と断面が合わさり、切断痕が消える。時間にすれば一秒あるかどうかも分からない。切断されたザモナスの腕は瞬時に元の形へ戻ったかと思えば、ザモナスは繋げられたばかりの腕を再現するかの様に振り下ろす。
馬鹿な、という言葉をゲイツが発する前にヒレがゲイツの装甲を斬り付けた。斬撃は装甲へ防げたが、衝撃までは完全に緩和することが出来ず、ボロボロになっているゲイツの体に重く響く。
「──くっ!」
全身が上げる痛みの絶叫をその一言で済ませられたのは、ゲイツの卓越した精神力による賜物であった。
ダメージを受けながらもゲイツは掴んでいるザモナスの腕目掛けてジカンジャックローを振るう。
爪先がザモナスの手首辺りを斬り裂くと掴んでいる力が若干弱まり、その間にゲイツは掴まれていた腕を引き抜き、すぐにザモナスから離れる。
半ばまで斬られていたザモナスの手首だったが、ゲイツが離れている間に元に戻ってしまった。
「お前……不死身か?」
思わず声に出してしまうと、ザモナスの方は失笑する。
「不死身じゃないさ。ちゃんと痛覚もあるし。それでも俺を殺れないのは──」
失笑が嘲笑に変わる。
「ゲイツ君の弱さのせいじゃないのかなぁ?」
露骨な挑発にゲイツは鼻を鳴らす。そんな言葉程度ではゲイツは揺るがない。
四個のライドウォッチを同時使用しているザモナスは脅威である。何せ、心臓を貫かれても腕を切断されても即座に再生してしまうのだ。
ゲイツに残された手段は、出し惜しみなく最強の一撃をザモナスに与えるしかない。その際に生じるであろう反動を考えると何度も使用出来ない。
(やるからには確実に決める!)
ゲイツの決断と行動は直結していた。ザモナスを倒すという意志に反応し、ジクウドライバーに納まっていた剛烈ライドウォッチと疾風ライドウォッチが飛び出し、構えている二つのジカンジャックローのスロットに填まり込む。
『ジカンジャック! 剛烈!』
『ジカンジャック! 疾風!』
丸鋸が凄まじい音共に回転し出し、剛烈ライドウォッチから供給されるエネルギーによって火花の如く橙のエネルギーを跳び散らす。
もう一方の爪もまた疾風ライドウォッチのエネルギーにより一対の爪が青白く発光する。
全力で挑もうとしてくるゲイツに、ザモナスは親愛感すら感じさせる様に両腕を広げた。
「さあ、来なよ! ゲイツ君! 俺を殺してみなよっ!」
待ち望んでいるかの様にザモナスが叫んだ時、ゲイツの姿がこの世界から消える。
ザモナスは全神経を集中させる。僅かな空気の動きですら探知出来る程に。だからこそ分かる。ゲイツがどれだけ異常な速度で移動し続けているのかが。
ザモナスの強化された感覚ですら感知したのはゲイツが移動した後。その僅かな痕跡のみ。瞬間移動をしていると説明された方がまだ説得力がある別次元の速度である。
気付けばザモナスの周囲は赤い粒子だらけになっていた。零れ出るこの時間が、どれだけゲイツが命懸けで戦っているのかを表している。
最早、ゲイツの攻撃を避けることは叶わないと悟ったザモナスは、無抵抗にしか見えない棒立ち状態となる。
(ゲイツ君もあんなになっているんだし……俺も腹を括らないとね!)
密かな決断を胸中で下し、来るであろうゲイツの攻撃をただ待つ。
その時は突如としてやって来る。
赤い粒子がザモナスの顔すぐ横を通り過ぎて行く。それはゲイツが通っていった証。攻撃をしないのかと思われた瞬間、ザモナスの身の丈を超える光輪が突然目の前に現れた。
『スーパーのこ切斬!』
一歩遅れて聞こえる技の名。ゲイツが速過ぎるせいで技も声も追い抜かしてしまったのだ。
「があっ!?」
ザモナスは光輪を両手で挟み込み止めようとするが、周りが鋸状になっている光輪を完全に止めることが出来ず、刃がザモナスの体に届いてそこを斬り裂く。
傷は再生するがその直後に回転する刃が治った箇所をもう一度削り取ってしまうので傷が完治しない。
そして、何よりも問題なのは光輪に全力を向けているせいで今のザモナスが無防備と化していることであった。
視界の端にまた赤い粒子が見える。
『スーパー』
その音声が聞こえた時にはザモナスの背部に無数の裂傷と共に爪型の光弾が突き刺さっており、針鼠の様になっていた。
『つめ連斬!』
それを合図にして突き刺さっていた爪型光弾の凝縮されたエネルギーが解放され、その結果ザモナスの背部で連鎖爆発が起こる。
苦鳴を上げる間もなく今度は止めていた光輪も連動して爆発。内蔵されていたエネルギーの量が爪型攻撃よりも多かったことから大爆発となりザモナスを呑み込んだ。
必殺技を連続発動させたゲイツが高速世界から戻って来る。否、戻って来ざるを得なかった。
「うっ……! ぐぅ……! がはっ!」
地面に四肢を突き、耐え切れず吐き出す様な声を上げるゲイツ。口部から吹き出される赤い粒子。ゲイツは自らの時間を吐き出している。
剛烈疾風による滅茶苦茶な時間操作によりゲイツの体内の時間が狂い始めており、数少ない時間を吐き出すまでにおかしくなっていた。
「くっ……!」
だが、ここで倒れる訳にもいかず震える体を動かして立ち上がる。掠れていく視線を動かしながらゲイツが見たのは、爆炎の中で燃えながら仰向けになって倒れている黒焦げとなったザモナスであった。
生気を感じず絶命しているのが分かる。命懸けの戦いだったとはいえ、ゲイツは後味の悪さを覚える。こればかりはゲイツの性根故に簡単に割り切ることは出来なかった。
とは言え壮絶な戦いもこれで決着──
『アマゾンシグマ!』
──なのを許さない。
死体となっていた筈のザモナスの両足が上げられたかと思えば、大地に叩き付けられる。
その状態から膝、大腿部、上半身の順に持ち上げられていき、両手を使うことなく立ち上がってみせる。
体から剝がれ落ちいく焦げた部分。その下からは真新しい体が出て来る。
「お前……!?」
死亡したかと思いきや、そこから自力で蘇生してみせるザモナス。
ザモナスの五個目のライドウォッチ。アマゾンシグマライドウォッチ。これは最初からザモナスの体内に仕込まれていた。
アマゾンシグマライドウォッチは単品での使用時の能力は痛覚を全て遮断し、死人の如き肉体となって一切の痛みを気にすることなく戦い続けるもの。
しかし、これを他のライドウォッチと同時使用することでその効果は大きく変わる。
アマゾンシグマライドウォッチは持ち主が死亡した際に、もう一つの能力として持ち主の肉体を蘇生させる効果がある。だが、それは一時期なものでありそこからダメージを受けるか時間経過すれば元の死体へと戻る。
だが、ザモナスが持つ他のライドウォッチは相乗効果によって脅威的な再生能力を生み出す。それにより死した肉体すらも生命の息吹を吹き込むことが可能なのだ。
ザモナスが持つ能力は『創生』。その意味は新たな生命を創り出すだけに留まらない。自分自身にすら新たな生命を与えることが出来る。
「こんな楽しい戦い、
死すらも超越する生命力を持つザモナス。突き付けられた現実は、ゲイツの心を折るのに十分なものであった。
だが、ゲイツは血反吐の様に己の時間を吐き出しても、手足から力が失われて何をしなくとも震えていても戦いの構えを取る。
ゲイツは確信した。ここでザモナスと戦うことこそが自分の使命であることを。この存在を野放しにすれば、その狂気はやがてソウゴ、ツクヨミ、ウォズへと届く。
「不死身だろうと……! お前は! 今ここで! 俺が倒す……!」
命を賭し、魂を賭してゲイツは誓いの叫びを放った。
どうも長くなってしまいましたので決着は次回で。
劇場版の話が終わる前にセイバーが最終回になりそう。
先にどちらが見たいですか?
-
IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
-
IFゲイツ、マジェスティ