その異変の詳細について把握出来た者は、極一握りであった。
ゲイツに頼まれて避難している者達の護衛をしているツクヨミ。すると、突如として強い横揺れの地震が建物を襲う。
「きゃああああああ!」
「うわああああああ!」
「いやぁぁぁぁ!」
ただでさえ見知らぬ場所にいきなり転送され、カッシーンたちに追い掛け回されるという経験のせいで肉体的、精神的にも限界に近い状態であり、そこに追い討ちの地震が起こったことでパニック状態となる。
「落ち着いて! みんな! 落ち着いて! すぐに机とかの下に隠れて! 上から何か落ちてくるかもしれないから!」
自分も同じ状況に置かれているにも関わらず、順一郎は混乱している者達へ必死に声を掛ける。
右往左往する者も居れば、順一郎の声が届いて言われた通りに机の下など落下物を免れる場所に身を隠す者など反応は半々であった。
「ツクヨミちゃん! ツクヨミちゃんも早く!」
地震の中で棒立ちになっているツクヨミに避難することを促すが、ツクヨミの目は周囲の物へ向けられている。
「順一郎さん。これ……地震じゃないわ」
「へぇ!? いや、こんなにも揺れて……」
ツクヨミが見ている物を順一郎が釣られて見る。そして、そこで言葉を失った。
彼女が見ているのは食器棚であったが、こんなにも揺れている筈なのに中の食器が音を鳴らしていない、つまり全く動いていないのだ。
冷静になって来るとツクヨミの言う通りおかしな点が見えて来る。
身を隠しているこの建物は、それなりの年月放置されており、所々に埃など積もっているが、地震によって埃どころか塵一つ落ちて来ない。
「あ、あれ? 何で?」
順一郎は不可思議な現象に戸惑い、キョロキョロと周囲を見回す。
やはりというべきか、激しく揺れているものの置物や家具などは全く動いていない。揺れているのに揺れていない。
「ツクヨミちゃん、これって……」
いち早く気が付いたツクヨミならば何か分かるのではないかと思い、順一郎は何が起きているのか訊こうとしたが、そこで言葉を吞み込んでしまう。
ツクヨミが今まで見たことがない程に顔色を失い、蒼褪めていたからだ。
地震ではなく時間の干渉による空間の揺れ。時間を操る能力に長けたツクヨミは、それを感じ取っていた。そして同時に空間に干渉している時間が誰のものかも望まずに分かってしまう。
「ゲイツ……」
◇
「ゲイツ……?」
時同じくしてツクヨミが呟いた言葉と全く同じ言葉を呟いている人物がいた。
不自然な空間の振動。それをソウゴが肌で感じた時、何故か仲間の──ゲイツの顔を思い浮かべた。
「どうかしたのか?」
奇妙な地震の後に呆然としているソウゴを心配して剛が声を掛ける。
「剛、俺……」
「クォーツァーって奴らを倒しに行くんだろ? あいつのことは俺が面倒見ておくから、安心して行け」
言うべきことを剛に先に言われてしまい、その後の言葉を喋ることが出来ずにソウゴは金魚の様に口をパクパクと開閉してしまう。
その様子が可笑しかったのか剛は吹き出し、ソウゴから顔を背けて声を押し殺して笑う。
話が早いのは助かるが、ソウゴからすれば真面目な話をしようとしていたので出鼻を挫かれた挙句に笑われたことに少しだけムッとして表情になる。
横目でそれを見た剛は口元を隠しながら背けていた顔を戻す。
「悪いな。別に揶揄うつもりはないんだが……ふふっ。お前の顔があんまりにも面白かったからつい」
「真面目に話すつもりだったのにー……」
口を尖らせ責める様な目付きをするソウゴに、剛は暫く間、こみ上げてくる笑いの衝動と戦った後、波が通り過ぎたのを感じて表情を引き締める。
「はぁ……よし! もう大丈夫だ。んで、さっきも言った様に行くんだろ? お前?」
「……うん!」
ウォズのおかげでジオウとして戦える力を取り戻せた。後はクォーツァーと、SOUGOと戦って計画を阻止するのみ。
「ならさっさと行って、そんでマッハで勝ってこい! 皆を救えるのはお前だけなんだ!」
バシンとソウゴの背中を叩き、活を入れる。
ジンジンとした背中の痛みはやがて熱を帯び、それがソウゴの選択を後押しする。
「──俺、行って来る!」
建物の扉へと向かい、一気に開く。建物の外へ出ようとする間際、ソウゴは振り返って剛に一つだけ伝言を頼む。
「剛。光太郎が目を覚ましたら、俺が『助けてくれて、ありがとう』って言ってたって伝えておいてくれる?」
「……ああ、分かったよ」
頷く剛にソウゴは最早心残りは無いと言わんばかりの晴れやかな笑みを見せた後、建物の外へ出て、全ての人々を助ける為の戦いへ赴く。
「……なあ?」
剛は眠り続けている光太郎へ声を掛ける。
「あいつ、もう戻って来ないかもしれないぞ?」
剛に伝言を頼んだのは、自分から伝えることが出来ない可能性を考えているからだ。それ程の覚悟が必要な厳しい戦いだというのが分かる。
「俺はお前のこと全然知らないけど、聞いた話じゃ強い仮面ライダーらしいな?」
返って来る言葉は無く、一方的に喋る剛。剛もそれを承知の上で独り喋り続ける。
「お礼は伝言じゃなくて直接言われるのが一番だろ? だから──」
願う様にその言葉を呟く。
「早く目を覚まして、あいつの助けになってやれよ」
当然ながら返事は無い。剛は溜息を吐いた後、気持ちを切り替えて外の監視をする。ソウゴに言い切った手前、カッシーンの襲撃が無いか警戒を怠らず、細心の注意を払う必要がある。
外の様子を窺っているせいで剛は気付かなかった。眠っている光太郎の指先が微かに動いたことを。
◇
クォーツァーのメンバーは今までに無い程の緊張感に包まれている。
その原因となっているのが彼らの王であるSOUGOであった。
険しい表情のまま無言を貫きながらも周囲に怒気と殺気をばら撒いている。いっその事怒鳴ってくれれば激しく怒っている理由も察せられるが、一言発することはせずそれがクォーツァーたちにとって重圧となっていた。
見た事も無い程に不機嫌な理由は分からないが、そうなった切っ掛けは分かる。
クォーツァーの目的を達成させる為の計画を発動しようとしていた間際、突如として空間の揺れが観測された。それは膨大な時間が空間に影響を与えたことで起こったものだとクォーツァーたちは瞬時に理解する。しかし、何の時間が空間に影響を及ぼしたのかは全く分からなかった。
あれだけの規模の揺れを発生させるとなるとかなりの力と時間を秘めた存在になる。
古墳最上部の玉座にて手摺に頬杖をつき、眉間に深く皺を寄せて目を閉じているSOUGOにクォーツァーのメンバーの一人が近付く。
「報告したいことが……」
SOUGOは片目だけ開き、そのメンバーを見る。見られた瞬間、体を跳ねる様に震わせた後硬直する。
味わった事が無い緊張感。経験したことの無い心臓の鼓動の速さ。彼は自分の寿命が縮まっていくのを体感していた。
「……何だ?」
報告を促すSOUGO。そのクォーツァーは上手く回らない舌を全力で動かす。
「先程の空間振動の影響でダイマジーンたちのプログラムにエラーが発生しました。機能は維持することが出来ますが、計画を発動させるのにはエラーを修正する必要があり、計画実行にはもうしばらくの時間が必要かと……」
「なら、さっさとやれ」
「は、はい!」
SOUGOに言われ、そそくさと持ち場へ戻るクォーツァー。実行しようとしていた計画が延期されたことは、SOUGOにとって大した問題では無い。
彼が真に不機嫌な理由は──
「……情けない。新しい時代を創る前に敗けるな」
内に籠った怒りと共に吐き捨てる。
「……せいぜいあの世で見ていろ。俺が創る新しい時代を」
最後にそう付け加え、またその目を閉じた。
◇
「ジョウゲン、逝ったか」
広々とした平野に佇むカゲンは、ジョウゲンの死を感じ取っていた。だが、鋼鉄の如き精神から呟く言葉には一切の感情を他者に悟らせない。先に死んだことを悲しんでいるのか、嘆いているのか、怒っているのか全く分からない。
「……だが、一人では逝っていない。俺には分かる」
虚空を見詰めていたカゲンの視線がゆっくりと下げられ、正面に向けられる。その先には──
「ウォズ。お前にも分かる筈だ」
──視線の先でこちらに向かって来ていたウォズは、険しい表情をしている。
カゲンが離れた場所で散ったジョウゲンのことを感じた様に、ウォズもまたジョウゲンと相打ちとなったゲイツを感じていた。
「……あまり気安く話し掛けてもらえないでくれるかな? 今の私はかつてない程に機嫌が悪いんだ」
数メートル手前で止まり眼光だけで貫けそうぐらい険吞な眼差しをカゲンに向け、喋る言葉に敵意を塗りたくる。
だが、ウォズのその態度もカゲンの前では一笑される。ウォズの憤怒などカゲンにとっては子犬の威嚇程度にしか映らない。
普段から怒りを露わにしている者の怒りは見慣れる。逆に普段から感情を抑えている者の怒りは珍しさで驚くことはあるかもしれないが、ウォズの場合は怒りを剝き出しにすることに慣れていなので、カゲンからすれば下手くそな怒り方であった。
しかし、下手くそながらも仲間のことで怒りを抑え切れないウォズに関心を抱く。
「長生きはするものだ。お前のそんな顔を見られるとは」
「師匠面は止めろと前にも言った筈だが?」
子の成長を喜ぶ様な台詞にウォズは不快感を示す。まるで自分よりも下の扱いをされている気分になる。
「──今度は逃げないな? ウォズ」
「ッ!」
カゲンから発せられる殺気にウォズは息を呑んだ。今、ここで、確実に殺しに来る。カゲンの殺気にはそんなメッセージが込められていた。
その殺気でウォズの中の怒りが覚めていく。殺気による委縮ではなく、戦う者としての経験が怒りで鈍らせた頭では即、死に繋がると理解して無理矢理コントロールをした結果であった。
ウォズから険吞な雰囲気は消え、いつも通りの態度に戻る。
仲間の無念を背負って戦うことは悪くはない。だが、背負い過ぎれば負ける。ここから先は体も心も一瞬たりとも隙を見せてはならないのだ。
「ウォズ。死んだら俺を恨め」
『ジクウドライバー!』
「それはこっちの台詞だよ」
『ビヨンドライバー!』
二人は同時に歩き出し、間にあった距離を縮めていく。その最中にライドウォッチを取り出す。
「安心しろ。恨みも憎しみも残らない程に、俺は全力を尽くす!」
『ゾンジス!』
「奇遇だね。──私もそのつもりだ」
『ギンガ!』
起動されるライドウォッチ。勝っても負けてもお互いに無事では済まないことを悟っていた。最後の最後まで力をだしつくさせねばならない相手なのだ。
「君との縁、ここで断ち切らせてもらう!」
『アクション! 投影!』
目の前に聳え立つ高く、恐ろしい壁。しかし、ウォズは今日この壁を乗り越えなければならない。
「その生意気な性格を矯正出来なかったのが、俺の唯一の心残りだ」
『ライダーターイム!』
「おや? こうなったのは君のせいだと思っていたよ」
『ファイナリータイム!』
互いに皮肉を飛ばしながらカゲンは緑、深緑の光を纏いながら進み。ウォズは銀河と惑星を模った光を纏いながら前進する。
『仮面ライダーゾンジスー!』
『ギンギンギラギラギャラクシー! 宇宙の彼方のファンタジー! ウォズギンガファイナリー! ファイナリー!』
飛び出す『ライダー』と『ギンガ』の文字が互いの顔横を通り過ぎていき、反転しながら戻り、仮面へと納まった時、変身完了と共に足が止まる。二人の距離は一メートルにも満たない。
無言で睨み合う両者。が、その静寂を破壊する様にゾンジスは拳を、ウォズは掌打を相手の顔に打ち込む。
開始の合図など無かった。だというのに見事なまでに攻撃のタイミングが重なる二人。ある意味で息が合っている。
ゾンジスの剛腕、ウォズのエナジープラネットを纏わせた掌打によって二人は反発する様に吹き飛ぶ。
一瞬で十数メートルも移動してしまう二人。ゾンジスは飛ばされた先でしっかりと着地。そして、羽織っていた黒い外套を脱ぎ捨てる。全身が露わになり、昆虫の外骨格を彷彿させる生物的な装甲が陽の光を浴びて生き生きとした光沢を放つ。
殴り飛ばされたウォズも両足から着地するが、身構えた途端に片膝が折れた。すぐに体勢を整えようとするが、ウォズの意志に反して膝が笑い、上手く動かない。
「流石に、効く……!」
一発受けただけでこの有様。ギンガファイナリーの装甲でなければ立てなかった可能性すらある。分かっていたが相変わらず非常識な怪力であった。
ウォズが体勢を崩す程のダメージが残っているというのに、ゾンジスの方は外套を捨てて動き易くなった途端、走り出している。
まだ動けないウォズは走り寄って来るゾンジス目掛けて両掌を突き出し、そこからエナジープラネットを無数に放つ。
『シン!』
シンライドウォッチに起動でゾンジスの指先から鋭い爪が、腕部からも数本の突起が生える。
エナジープラネットに対し、爪を振るうゾンジス。剛力と鋭爪が合わさった一撃は易々とエナジープラネットを裂き、内包していた宇宙の力が外に零れて爆発と化す。
爆発に怯むことなく突き破って進み、次に来たエナジープラネットも腕の棘で斬り裂き、再び爆発を起こす。
前方にエナジープラネットが集中しているがゾンジスは直進することを止めず、エナジープラネットを次々と破壊しながら最短距離を突き進む。
爆発の中を突き抜けていくゾンジスの体は、熱と爆発によって傷付いていくが、傷が出来たそばから治っていく。
シンライドウォッチの真価は爪や棘などを生やす程度のことではない。その効果は細胞増殖による急速再生。爪や棘はその副次効果である。これによりゾンジスは、ザモナスのライドウォッチ程では無いが高い再生能力を持つ。
エナジープラネットの弾幕を掻き分けながらウォズの前に飛びだすと、顔目掛けて五指を開いた手を横に振るう。
当たれば顔面が六分割される攻撃に対し、体勢を直したウォズは己の掌をそれに叩き付ける。ハイタッチの様に手と手が重なり、手を叩く音の代わりに大気が震える程の爆発音が響き渡る。
互いに至近距離でエナジープラネットの爆発を受けるが、ゾンジスは全く効いていない様にすぐに距離を詰め、今度は拳を繰り出す。
「ふんっ!」
相手を捻じ伏せる為の剛腕による拳。当たれば後の戦闘に大きな影響を及ぼす。
「はっ!」
ウォズは踏み込んでその腕に両掌を押し当て、エナジープラネットを発射。爆発の衝撃で真っ直ぐ突き進む筈であったゾンジスの拳は大きく逸れると同時にゾンジスの体勢も崩れる。
そこへすかさず脇腹へ打ち込まれるウォズの掌打。エナジープラネットの爆発によりゾンジスの体は、くの字に曲がって真横へ飛ぶ。
完璧に入った一撃だったが、ゾンジスは数メートル程飛んだ後に片足で地面を踏み付け、急ブレーキを掛け停止。
ゾンジスの装甲にはエナジープラネットによって出来た凹みと焦げ跡があったが、凹みはすぐに元に戻り、焦げ跡も剥がれ落ちて無傷の状態になる。
生半可な攻撃では自分の方が消耗するだけだと理解したウォズは次なる攻め方を考えようとするが、ゾンジスはそんな悠長な時間を与えてくれない。
「生温いな、ウォズ!」
ウォズの攻め方をその一言で評する。
「もっと全力を見せてみろ! ──でなければ、俺が潰す!」
『J!』
『ZO!』
『シン!』
力が解放される三つのライドウォッチ。すると、大地から光が噴き出す。大地だけではない周囲に生える植物からも同様の光が空に向かって飛び出し、一箇所に集まっていく。
それぞれは小さな光であったが、全てが合わさると眩い巨大な光と化す。
その下に立つゾンジスに、光がシャワーの様に降り注ぐ。光のシャワーを浴びたゾンジスの体が光の中へ溶け込む。
すると、降り注ぐ光が形を変え、ゾンジスの体を作り直していく。
変化するゾンジスの体を啞然とした様子で見ていたウォズだが、その視線の角度がどんどんと上に傾いていく。
光が収まった時、四十メートルの身長を持つゾンジスがそこに立っていた。
仮面ライダーJの力を秘めたJライドウォッチは使用者を巨大化させる。巨大化には膨大なエネルギーを必要とし、その為これまでの戦闘では消耗を抑える為に、体の一部を巨大化する程度にしていた。
しかし、この戦いに於いてはその制限は無い。そして、ライドウォッチの相乗効果で大地や自然からエネルギーを取り込むことが出来る。エネルギーが途中で切れる心配も無い。
「それは……反則じゃないかな? 仮面ライダーとして」
巨大化したゾンジスを見て思わず素直な感想が出てしまう。
そんな言葉にゾンジスが耳を傾ける筈も無く、ウォズよりも大きな拳を真上から振り下ろす。
流石に受け止めることは出来ないと思ったウォズは、素早く後ろに下がる。
巨拳が大地に叩き付けられると深々と埋まり、大地が一瞬震える。思わずウォズが前のめりになりそうな程の揺れであった。
その瞬間、身を屈めたゾンジスが大地を抉りながら下段蹴りを行う。巨体に見合わない鋭く、素早く。
ウォズ視点からすれば壁が迫ってきている様な光景であり、後退しても範囲から逃れられないと判断し、止むを得ず跳躍して蹴りを避けた。
跳び上がったウォズを待ち構えていたのはゾンジスの巨大な掌。虫でも叩く様にウォズの全身を殴打。
「がはっ!」
そのまま地面目掛けて叩き落す。
地面に叩き付けられたウォズは、地面を何度もバウンドしていく。掌の衝撃、地面に叩き付けられた衝撃で意識が飛びそうになる。
しかし、そんな中でもウォズは必死に意識を保ちつつ、ギンガミライドウォッチを操作する。
『ワクセイ!』
ギンガミライドウォッチのモードを切り替えると形態に素早く反映。
『投影! ファイナリータイム!』
地面を跳ねていたウォズの体が浮き上がる。
『水金地火木土天海! 宇宙にゃこんなにあるんかい! ワクワク! ワクセイ! ギンガワクセイ!』
無重力状態となって勢いを殺したウォズは、ビヨンドライバーのレバーを動かす。
『ファイナリー! ビヨンド・ザ・タイム!』
ゾンジスの頭上に星雲が誕生。
『水金地火木土天海エクスプロージョン!』
そこから各惑星を模したエナジープラネットがゾンジスへと落ちてきた。
ゾンジスの巨体はそれを避けることが出来ず、エナジープラネットの爆撃をその身に浴びせられていく。
しかし、ゾンジスはそれにダメージを負った様子は無く、爆撃を受けながらジクウドライバーを操作する余裕すら見せていた。
『フィニッシュタァァイム! ゾンジス!』
人差し指と親指を伸ばした手の構え。伸ばした指に赤い光が灯り、Jの形を浮かび上がらせる。
『タイムブレーク!』
伸ばしていた人差し指、親指を曲げて握り拳へと変えると、赤い輝きが今度は拳に宿る。
「ふぅぅん! はあっ!」
赤色の拳を頭上に突き上げた。ワクセイフォームが創り出した星雲は、ゾンジスの拳によって貫かれ、霧散する。これによりエナジープラネットの爆撃も止む。
力のみで破られてしまったウォズの技。ウォズ本人もこれには衝撃を──
「待ってたよ! その隙を!」
『ギンガ!』
──受けず、寧ろ待ち望んでいたと叫ぶとワクセイフォームからギンガファイナリーへ形態を戻す。
『ファイナリー! ビヨンド・ザ・タイム!』
再び発動しようとしているウォズの技。頭上を攻撃したばかりのゾンジス。巨体のせいもあって咄嗟に避けることが出来ない。
『超ギンガエクスプロージョン!』
跳躍と共に宇宙のエネルギーで空中をキックの体勢のまま疾走。彗星の様な光の尾を残しながらゾンジスへ迫る。
自らの防御力に自信を持っているゾンジスは、その一撃を受け止めて反撃しようと考えるが、その時背後に違和感を覚えた。
嫌なものを感じて後方を確認すると、背後には空間を歪めて造り出された巨大な穴が生み出されており、穴の向こうには暗黒の空間が広がっている。
その穴が何処に繋がっているのか分からぬまま、ゾンジスの鳩尾にウォズのキックが命中。
「はああああっ!」
七百トン以上もあるゾンジスの巨体が後退させられ、穴の中へと押し込まれていく。
「ウォズ……!」
ウォズを叩き落とそうとしたゾンジスだったが、間に合わずウォズ共々穴の向こう側へ入ってしまい。二人が入ると穴は閉じてしまった。
(ここは……!)
穴の向こう側の光景にゾンジスは驚く。自由に動けない無重力空間。等速で飛翔していく大小様々な個体物質。
そして、遠くに輝く青々とした星。
「そう。ようこそ宇宙へ」
ギンガファイナリーの力を最も引き出せる空間、宇宙。それだけではない。宇宙に連れてきたのはもう一つの意図がある。
ゾンジスはその意図を察していた。
(成程……)
ライダーの力で活動は出来るが、無酸素状態なので声を発することも出来ないゾンジス。一方でウォズの方は宇宙に適した能力を持っているので普通に喋ることが出来ていた。
「はっ!」
ウォズが両手を広げる。すると、空中を漂っていた個体物質が動きを止め、ウォズの周囲に集まっていく。
「はああっ!」
ウォズが両手を突き出すと、集められていた個体物質が弾丸となり撃ち出された。
(ぬうううっ!)
ゾンジスの体に命中し、砕ける。耐えられる衝撃だが、攻撃を受けたことでゾンジスはその場から動き出し、青い星──地球から離れていく。
小さな星々がゾンジスに衝突する度に宇宙の果てへと追いやられていくゾンジス。
(この程度……むっ!)
巨大な影がゾンジスを覆う。ウォズによりゾンジスと同じくらいの小惑星が目の前に現れ、ゾンジスへ衝突した。
(ぬおおおおおっ!)
宇宙空間なので踏ん張ることも出来ず、小惑星に押されていくゾンジスの巨体。
やがて、何処かの惑星の重力に引っ張られ、その惑星の地表に小惑星ごと落下した。
小惑星は砕け散ったが、それに圧し潰されていたゾンジスへ無事であり、宇宙空間には無かった足場を感じる。
だが、重力が軽く体が浮き上がりそうな気分であった。
(ここは……)
目の前一杯に広がる灰色の不毛の大地。そこには大小異なるクレーター。そして、地球よりも軽い重力。
思い当たる惑星は一つしかない。
(月か……!)
「ご名答。その通りだよ」
ゾンジスの内心を見抜いた言葉を送りながら、ウォズもまた月面に着陸する。
「君の力も私の力もあの星で使うには狭すぎる。──ここで決着をつけよう」
下手をすれば周囲を巻き込みかねない力を持つ両者。真の意味で全力を出す為にウォズは月までゾンジスをわざわざ運んだのだ。
「尤も、君は全力を出せないかもしれませんけどね。……ここには君に力を与える大地も植物も無い」
ゾンジスの力の源は地球である。宇宙に連れて来られた以上その供給は断たれた。ゾンジスの巨体もいずれはエネルギー不足に陥る。
ウォズはそう考えていた。
ゾンジスは肩を震わせる。音の無い空間で彼は笑っていた。まるでウォズの考えを浅慮だと言わんばかりに。
「何が──」
「ウォズ、浅はかだな」
「なっ!?」
何故か聞こえて来たゾンジスの声。宇宙で声が届く筈が無いというのに。もし、考えられるとしたら、ゾンジスもまた宇宙に適する為の力を持っていることである。
「宇宙だろうと月だろうと関係無い。よく見ろ、ウォズ! これが俺の、『創星』の力だっ!」
ゾンジスの全身から緑の光が放たれ、空に、大地にそれが波紋として広がっていく。
「何を──」
ウォズは言葉を止め、そこで信じられないものを見た。
不毛の大地の月面においてあり得る筈の無い、一本の草が生える光景。
「ぬおおおおおおおおっ!」
ゾンジスが咆哮を上げる。途端に草や花々が一斉に芽吹き始める。小さな植物だけでは無い。木々も生え出し、中には樹齢数百年はありそうな大木も生まれる。
現代の技術では不可能なテラフォーミング。ゾンジスはそれを月で行っていた。
彼の言う『創星』の力は、文字通り地球を創造する力。惑星を改造し、地球化してしまうのだ。
そして、これにより断たれていた筈の自然の力が再びゾンジスへ供給される。
だが、これで終わらない。
「お前の言った通りだ、ウォズ。俺の真の力は、あそこでは狭すぎる!」
『ドラス!』
起動するドラスライドウォッチ。ゾンジスの周りにタイムゲートが開き、中から数体のダイマジーンが出現する。
ゾンジスとほぼ同等の大きさを持つダイマジーンがゾンジスと並び立つ光景は悪夢にしか見えなかった。
援軍かと思ったウォズだったが、ウォズはゾンジスが初めてドラスライドウォッチを使用した時の光景を思い出す。
悪夢はここで終わらない。
『シン!』
『ZO!』
『J!』
完全解放される三つのライドウォッチ。それにより月面で生み出された植物らが、生物の様にゾンジスへ集まっていく。
『ドラス!』
ドラスライドウォッチの機械操作によりダイマジーンの体はバラバラに分解され、一つ一つが巨大なパーツがゾンジスの体へ張り付いていく。
そして、これから発動するのは禁断の五個目のライドウォッチ。この五個目はそもそも根本が違う。発動すればどんな効果を発揮するのか分からず、使用を禁じられていた。
なら、禁じられている力をわざわざ持たせたのか。放置するには、その力があまりに強大で惜しまれるものであったからだ。
ゾンジスは使用を禁じられていこのライドウォッチを使用することを心の中で詫びながら、それを発動する。
『フォッグ・マザー!』
宇宙からの侵略者であるフォッグの支配者。星から星に渡り生命体を喰い尽くす彷徨える捕食者。最早、ライダーと対となる存在でなければ力の根源を同じとする存在でもない怪人の力。
だが、相反するそれらが一つと合わさった時、前人未到の存在が誕生する。
多種多様な植物と金属が矛盾することなく一つに合わさり、有機物、無機物二つの特性を合わせた新生物と化す。
多くの植物と金属を取り込んだことで更に大きくなり、四十メートルから七十メートルになる。
「……出る作品を間違えていないかい?」
見上げるしかないその姿に、ウォズはそう言うことしか出来なかった。
『クォーツァーの敵は、俺が潰す!』
月面に於いて咆哮を上げ、誕生するのはライダーでありライダーでは無い存在。
ラ イ ダ ー 母 艦 ゾ ン ジ ス 降 臨
色々とやりたい放題の回となりました。
次も色んなことが起きます。
先にどちらが見たいですか?
-
IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
-
IFゲイツ、マジェスティ