仮面ライダーギンガとは何者なのか?
その疑問を正確に答えられる者は存在しないだろう。
分かっていることがあるとすれば、仮面ライダーギンガは純粋な力が仮面ライダーの姿となった存在というぐらいである。
歴史の管理者であるクォーツァーですら仮面ライダーギンガの出現はイレギュラーであった。
では、何故仮面ライダーギンガが誕生したのか。そのことについて明確な答えは無いが、クォーツァーは誕生の経緯を推測ではあるが導き出していた。
仮面ライダーギンガという存在は、クォーツァーが幾つもの歴史の中で誕生させた新たな時代の主人公となるライダーたち。それを生み出した時に発生した歪みが形になったものではないのか、というのがクォーツァーの推測である。
クォーツァーの中で新たな時代の仮面ライダーとして成功と認められているのは、シノビ、クイズ、キカイなど求めている数に対して成功は少ない。そして、成功の陰には数え切れないほどの失敗がある。
仮面ライダーになっても初戦で敗北した者。戦い半ばで散った者。心が折れて戦うことを止めてしまった者。それとは逆に怪人としての道を歩み出した者。そもそも仮面ライダーになれなかった者など数知れず。
そういった成功も失敗も含めた仮面ライダーという新たな歴史を創造したことによる余波が波紋の様に広がっていき、それが複数発生することで、やがて一つに結び付き力の塊となり、仮面ライダーという記号を宿していることから仮面ライダーの姿となり、クォーツァーの感知していない仮面ライダーとなった。
その証拠という訳では無いが、仮面ライダーギンガのドライバーもまたジクウドライバーを素体としたものとなっている。ギンガドライバーなど創り出した記録など無いので、ギンガ自体が生み出したドライバーだが。
ただし、こうなってくると色々な問題点も出て来る。知らず知らずのうちに溜まった力が仮面ライダーという形になったが、どういう運命のいたずらか、この力には意思の様なものが宿っていた。
どういう経緯でそれが宿ったのかクォーツァーですら分からない。仮面ライダーの姿になったから人格が生まれたのか、元々人格の様なものがあったから仮面ライダーの姿になったのか、全く分からない
今のところ分かっているのは、その意思らしきものは自らに二つの設定を与えた。
一つ目は仮面ライダーギンガという名。二つ目は宇宙の法というギンガにしか分からないルール。
これによりあらゆる宇宙を流離う謎の仮面ライダーギンガが誕生したのだ。
仮面ライダーギンガというライダーの最も厄介な点は、辿るべき物語が無いことと倒すべき敵が存在しないことである。
故にギンガは自由に、好き勝手に動く。定まった物語が無いので他の仮面ライダーと接触すれば、その時点での物語の展開など無視して介入し、ギンガの物語として取り込まれる。その際にギンガの周囲に誰かが居ればその時点でギンガが倒すべき敵と成ってしまい、問答無用で戦いを挑まれる。
ギンガは宇宙を駆けるだけでなく別次元へ移動する力も有していたので、クォーツァーはギンガが他のライダーたちの物語に介入し、その物語を滅茶苦茶にすることを危惧していた。
一時はジョウゲン、カゲンが出てギンガを封じる話も出ていたが、それよりも先にソウゴたちがギンガと戦うこととなり、彼をライドウォッチに封じることが出来たのだ。
余談だが、もしソウゴたちが負けていた場合、仮面ライダージオウの物語はギンガに乗っ取られていただろう。そして、いずれはオーマジオウとも──
異分子であり、不確定要素であり、予想不能の存在である仮面ライダーギンガ。そんな存在が今、クォーツァーであるゾンジスと激突している。
因縁が巡り、辿るべき運命に到達した瞬間でもあった。
◇
互いの顔に拳を打ち込んだ際に発生した衝撃が月面を一気に駆け抜け、テラフォーミングで生えていた植物らの葉を全て吹き飛ばす。
難攻不落の筈のライダー母艦ゾンジスがギンガの一撃によって一歩後退を強いられた。それはギンガの一撃の破壊力を物語っている。しかし、ギンガの方もゾンジスの拳によってゾンジスと同じく一歩後退させられる。
初撃の交差は結界として引き分け。だが、すぐに二度目の攻撃が開始される。
ゾンジスは相手に背を向けるぐらいに上体を捻り、後退した歩幅以上の大股で一歩踏み込むと、捻った上半身を戻しながら体を前に倒す勢いで全力の拳を放つ。
ギンガは陽光から得た力を掌に纏わせ、ゾンジスの攻撃のタイミングに合わせて掌打を繰り出す。
半透明の球体状のエネルギーに覆われた掌がゾンジスの拳に触れ、宇宙の力を以って拳を静止させる。
『がはっ!』
──筈であったが、ゾンジスの拳は止まることなくギンガの顔面に命中していた。ウォズも身を以って知っていることだが、宇宙の力程度ではゾンジスの剛腕を止めることなど出来ない。
顔面を真正面から打ち抜かれたギンガはよろめく様に後ろへ数歩下がる。すかさずゾンジスは追撃の二発目をギンガに放つ。
ギンガはそれを首を横に傾けて躱し、突き出されている腕をなぞる様にしてゾンジスの懐に入り込むと、腹部に掌を軽く添える。
『ぐっ!』
今度はゾンジスが呻く番であった。密着状態の掌から予備動作無しに衝撃が発せられ、ゾンジスは迫った分後退させられる。
後退直後、ゾンジスの口部を覆っていたマスクが上向きに開く。
『ふん!』
そこから鋸状の光輪が同時に三枚発射される。
『デェイヤッ!』
ギンガは妙に気迫が込められた声と共に掌打を突き出す。
掌に込められた宇宙の力が空間を歪曲させ、それにより光輪は全てあらぬ方向へ飛んで行く。
お返しと言わんばかりにギンガは右腕を縦に伸ばし、左拳を肘部分に押し当て、その状態で光り輝く右腕から──何かを発動させる前に接近してきたゾンジスに頭部を殴られて中断させられる。
ゾンジスの拳がギンガの頬にめり込んでいる。拳で殴り抜けることはせず、手首を捻ってより深く捻り込むと腕周辺に砲撃用の突起が生え、全ての咆哮がギンガに向けられると至近距離からの一斉発射がギンガの顔面に炸裂した。
大規模な爆発の後、ギンガがよろめきながら一斉発射の硝煙を突き破って出て来る。
ギンガの足元へ落ちていく大小異なる石の欠片らしきもの。それは彼の顔を構築していたものであり、ギンガの顔面は半壊していた。
顔の断面には骨や肉、内容物などは無く、淡く輝き石の断面そのもの。改めてギンガが人では無く、力の塊が擬人化した存在であると思い知らされる。
『……やるな』
顔が半分になっても普通に喋るギンガ。痛覚があるかどうかは分からないが、ギンガにとってはその程度の傷なのであろう。
『この宇宙の下に定められた法は、全てのものはいずれ朽ち、滅びるというもの。それは絶対であり、不変である』
『……何を言っている? お前?』
ギンガの言っていることは一々宇宙過ぎてゾンジスには理解し難い。
『……私も例外ではない。だが、今はまだその刻ではない!』
宇宙の彼方から伸びてきた光がギンガを包み込む。光の中でギンガの半壊した顔が復元されていく。それだけに止まらず、ギンガの紫の体に施されている星々が輝き、同じく各部にあしらわれた惑星のレリーフも光を放つ。
ゾンジスが『創星』の力によって周囲を自分にとって都合の良い環境へと変え、そこから力を得るのと同じ様に、ギンガもまた宇宙から力を得られる。
地球での戦闘の際は狭い惑星で戦うせいで制限が掛かり、太陽光からしか力を供給することが出来なかった。
だが、今は違う。限りなく宇宙に近い場所で戦っているので宇宙という広大な空間と心身を一体化させることができ、ギンガは無限に近いエネルギーを得ることが出来る。
『そういうことか……』
ギンガの能力を即座に見抜いたゾンジスは、そのことについて特に脅威とは思わなかった。宇宙から常時エネルギーを供給されていると分かったが、それはギンガという器があってこそのこと。その器を粉々に破壊してしまえば、何の問題も無い。
今度は半壊など生易しいものではなく、完全粉砕するつもりで再度ギンガの顔面に拳を振るう。
それを待っていたと言わんばかりに、ギンガは両手を上下に合わせた形にして前に出す。それは丁度ゾンジスの拳を咥え込む形となった。
『ダイナマイトサンシャイン!』
ゾンジスの拳から肩付近に掛けて凸凹に膨張したかと思えば、ゾンジスの右腕が内側から爆ぜる。
ギンガは宇宙の力を直接ゾンジスへ流し、頑丈なゾンジスの体を内側から破壊してのけた。
右肩の断面から煙が生じ、ゾンジスの巨体が傾くがすぐさま両眼から光線を発射し、ギンガの胸を光線で貫く。
『ライダー』という文字型の風穴を開けられたギンガ。そこに追撃の前蹴りが入り数歩後ろへ下がる。
お互い体の一部が欠損する損傷を負い、一時的にだが動きが止まる。
ゾンジスの右肩の断面から植物の木々や根らしきものが血管の様に生え出し、右腕の外装を作り上げる。そのままだと空洞だが、すぐにその空洞を埋める為に張り巡らされた木々、根から液体状の金属が出され、筋肉或いは細胞の様に内部を満たしていく。
胸に大きな風穴を開けられたギンガは、両腕を天に翳す。光が降り注ぎ、その光を浴びたギンガは瞬く間に穴を埋めてしまった。
時間にすれば数秒間の出来事。それだけの間で両者は無傷の状態となる。
桁外れの力同士の衝突は災害そのものだが、ただの災害ならばいずれは終わる。しかし、共に高い再生能力を有しているせいで終わりが見えない。
このままでは決着が付く前に月そのものが崩壊する可能性も見えてきた。
そして、それよりも先に消し飛ばされる可能性が在る者が居る。
「……酷い戦いだ」
この戦いを招いたウォズ本人である。その体は月面の砂で汚れていた。
ゾンジスとギンガが何かする度に揺れに襲われて立っていられなくなり、どちらかが攻撃をすれば衝撃の余波で月面が破壊され、捲り上がり、吹き飛び、それに巻き込まれて石ころの様に月面を転がされていく。
傍観者に成り下がってしまったウォズだが、巻き添えだけで命を落としそうになる。
それに加えて今のウォズは消え掛けているギンガファイナリーの力で辛うじて余波のダメージを抑えている状態である。
ギンガファイナリーの姿もだいぶ薄れてきており、このままでは強制的に変身解除されてしまう。そうなれば宇宙空間に生身で放りだされることになる。
そうなる前に仮面ライダーウォズへと変身すれば問題無いのだが、そうなると今度こそ両者の戦いによりウォズが消滅してしまう。どんなに都合良く考えてもゾンジスとギンガの戦いが終わる前にウォズの命の方が先に終わってしまう、という答えしか出てこなかった。
だが、それよりも懸念すべきことは──バチリ、という爆ぜる音がウォズの体内に響き渡る。視線を下ろせばビヨンドライバーからまた青白い火花が散っている。
これが今ウォズが最も心配していることである。ゾンジスとの戦闘、ギンガの解放によってビヨンドライバーが限界まで来ていた。幾らミライドウォッチが残っていても肝心のビヨンドライバーが壊れていたら元も子もない。
ウォズの中には一応の代替案はあるが、この状況下では使用出来ない。ちゃんとした必要条件を満たさない限り、無意味に終わってしまう。
「私の命が尽きるのが先か……それとも機会が巡って来るのが先か……」
故にウォズはこの激戦地から離れることが出来ず、二人の戦いから目を離せられない。いつか来るかもしれない天運を見逃さない為に。
ウォズが見ている前でゾンジスは徐に両胸を開く。胸の中には既に変形し終えたソルジャー・ゾンジスたちが蠢いており、集合恐怖症の者が見れば発狂しかねない光景であった。
ソルジャー・ゾンジスたちが一斉にギンガへ飛び掛かっていく。
ギンガはソルジャー・ゾンジスの群れにエナジープラネットを放つが、ソルジャー・ゾンジスたちはすぐに射線状から離れ、エナジープラネットによって倒されたのは逃げ遅れら数体程度。
四方にばらけたソルジャー・ゾンジスたち。エナジープラネットで撃ち落とそうにも的が小さ過ぎて狙いが定まらない。
『むっ!』
ソルジャー・ゾンジスの一体がギンガの体に張り付き、攻撃を仕掛ける。蟻の一噛ぐらいにしか感じなかったが、鬱陶しいことには違いなく反射的に払い落とそうとする。
すると、別の箇所に不快感に似た感覚が生じる。他のソルジャー・ゾンジスが張り付いた箇所であった。
ギンガの体を埋め尽くすソルジャー・ゾンジスの群れ。頭の先から爪先まで密集すると全員で攻撃を開始する。
一体一体二メートルぐらいの大きさのソルジャー・ゾンジス。しかし、七十メートルもなるギンガと比べれば本当に虫ぐらいにしか見えない。だが、行われる数の暴力は本物であった。
それぞれが一点を集中して攻撃するのでギンガの体が削られていき、密集の隙間からギンガの体と思わしき火花が散っていく。
『ぬううっ!』
鬱陶しそうにソルジャー・ゾンジスたちを払うギンガだが、すぐにその穴を埋める新たなソルジャー・ゾンジスたちが張り付いて行く。
『虫が……宇宙の広大さの前に散れ!』
ギンガの胸にある太陽のレリーフが輝くと、ギンガの全身から太陽に等しい高熱が発せられ、張り付いていたソルジャー・ゾンジスたちを全て焼き払う。
燃え盛る残骸が次々とギンガの体から剥がれ落ちていく中で──
『フィニッシュタァァイム!』
宇宙空間でも響き渡るジクウドライバーの音声。
ソルジャー・ゾンジスに気を取られていたギンガに、赤色の光を宿した拳を振り上げるゾンジスが急接近していた。
『ゾンジス! タイムブレーク!』
突き出される正拳突き。ギンガはガードしようとするが間に合わず、ゾンジスの拳がギンガの胴体を貫く。
『ぐっ……!』
腹を通って背中から突き出るゾンジスの拳。しかし、ゾンジスの攻撃はこれで終わった訳では無い。貫いている腕部表面が一斉に隆起し、砲口を形成。さっきの時とは違い、今度は内部からギンガを破壊しようとする。
ゾンジスの攻撃を敏感に感じ取ったギンガ。急いで腕を抜こうとすると思いきや、両掌に星雲を思わせるエネルギーを溜め始めた。
逃れることが出来ないと理解したギンガは、防御を捨て相打ち狙いの捨て身の攻撃を敢行する。
『ギガンティックギンガ!』
ゾンジスの胴体にエナジープラネットを直接叩き込むと同時にゾンジスの腕の砲口が一斉発射。
ギンガの胴体部分は内部からの砲撃により上半身と下半身に分かれて吹き飛び、ゾンジスも胸部から腹部に掛けて大きく抉られ、背骨一本で上半身と下半身を繋げている状態となって両膝を突く。
ギンガに宇宙からの光が送られ、ゾンジスは月面に生えている植物たちからエネルギーを吸収し、損傷箇所を修復し始める。しかし、傷が深いせいで修復するのに時間が掛かり、二人はその間動けずにいた。
そして、この瞬間を待っていた者がいる。
「来たか……! 待っていたよ、この時を!」
機会を待っていたウォズが動き出す。
暫くの間、修復に時間を費やしていたゾンジスだったが、突然小さく呻く。
『む……』
何か異変を感じ取った様子だが、ゾンジスはそれ以上何かをすることは無かった。
◇
「これはまた……」
思っていたものとは違う光景にウォズは驚きに満ちた声を洩らす。
内部は緑と赤の光に照らされ、所々に張り巡らされた木の根や金属製のケーブル。通路と思わしきものがある広々とした空間。
「まさか、これほどのスペースがあるとは……」
ウォズが驚くのも無理は無い。現在彼はゾンジスの体内へ侵入しているのだ。
ギンガに開けられた大穴から上手く潜り込むことが出来たウォズ。人の体内の様な構造になっていると思いきや、大勢の人が活動出来る様な状態となっている。
そして、驚くべきことにゾンジス内部には生身で活動出来る程の酸素で満たされていた。植物の力を取り込んだ影響が色濃く出ている。
ゾンジスを戦艦と例えたが、その名に恥じない内部であり、その気になれば体内に多くの兵隊を内蔵して運ぶことも可能であろう。
ギンガに外部を任せ、ゾンジスを内部から破壊するつもりであったウォズは思っていた以上に難航しそうなことに仮面の下で顔を顰めた。
手当たり次第に攻撃しても意味が無い。破壊するならば急所となる部分を確実に破壊する必要がある。
それをどう見つけるべきかと考えていた時、周囲に張り巡らされていた植物の蔦や金属のワイヤーが動き出す。
勘付かれて排除する為に動き出したのかと思いウォズは身構えが、蔦やワイヤーはウォズの周囲を囲み、ある方向へしか進めない様に道を塞いだ。
「……私を招いているという訳か」
罠の可能性もあったが、今のウォズにそんなことで躊躇している余裕は無い。罠であろうと正面から破るつもりで標された方向に全力で走る。
ウォズが行き着く先には蔦やワイヤーによって進路を作り出していく。段々と上へ上へと移動していくウォズ。
全速力で移動していくウォズ。懸念していた罠は無く、ウォズも不気味に感じる程すんなりと先へ進めて行く。
昇り詰めていたウォズは、やがてそこへ辿り着く。
楕円状に広がった空間。恐らくは頭部に位置する場所。そこで待ち受けているのは──
「……来たか。ウォズ、遅いな」
「何となく……こうなるだろうとは思っていたよ……」
──腕組みをして立つゾンジスであった。
「変な気分だね……外にも中にも君が居ると思うと」
「どちらも俺であることは間違いない」
「中の君を倒せば、外の君も動かなくなるのかな?」
「ああ、そうだ」
隠すことなく自らがウォズの探していた核であることを正直に答える。
「その言い方……私では出来ないと言いたいのかい?」
「逆に訊く。出来ると本気で思っているのか?」
大きなダメージを負った体。ウォズ最強の力であるギンガミライドウォッチは壊れたまま。そして、ビヨンドライバーは今にも機能停止しそうな状態。客観的に見てもウォズが勝てる可能性が万に一つも見つからない。
「……ふっ」
ゾンジスの指摘にウォズが一笑すると徐にビヨンドライバーに手を伸ばし、外して地面へ放り棄てる。それがダメ押しとなり、ビヨンドライバーから火花が生じ、真っ二つになって壊れてしまった。
「……自分から未来を捨てたか」
「──いや、それは違う」
仮面ライダーから生身へと戻ったウォズ。彼はいつも大事そうに持っていた『逢魔降臨暦』を開き、中央部分を両手で掴む。
「これは決意だ。私が今を全力で生き! 未来を切り拓く為の!」
両手に力を込め、『逢魔降臨暦』を裂く。留められていた紙片が散り、空間内に散らばっていく。
「ちっ」
眼前を覆い隠そうとしてきた紙片を手で払い除けるゾンジス。その時、信じ難い音声を聞いた。
『ジクウドライバー!』
「何っ!?」
紙片の嵐が巻き起こる中で腰にジクウドライバーを装着したウォズがそこにいた。
「未来の切り拓き方は、既に我が魔王が標してくれている!」
『ウォォズ』
ウォズが起動したのか、加古川飛流から密かに回収していたアナザーウォズウォッチ。それを自らの体に押し当てる。
「う、ぐぅぅぅ! おおおおおおおっ!」
取り込むのではなく逆にウォズの力が注がれることでアナザーライダーとして歪められていた力が正され、正しき姿へ新生する。不可能では無い。ソウゴもまたアナザージオウの力をジオウの力に正すことが出来たのだから。
『ウォズ!』
アナザーウォズウォッチからウォズライドウォッチへと変化し、すぐにそれをジクウドライバーへセット。
ロックを外して傾いたジクウドライバーを両手で上下に挟み込み、回転させると共に両手を左右に広げる。
「変身!」
『ライダーターイム!』
緑色のエネルギーが時計盤状に出現し、ウォズの姿を仮面ライダーへと変えると共に『ライダー』の文字を射出する。
『仮面ライダーウォズ!』
仮面に文字を填め込むことで未来ではなく現在に誕生した新生仮面ライダーウォズが降臨する。
ならば最初にやるべき事はただ一つ。
「祝え! 過去と未来を読み解き、正しき歴史を紡ぐ者! その名も仮面ライダーウォズ! これは切り拓かれた歴史の1ページである!」
自らの誕生を祝福するウォズに、ゾンジスは呆れを含んだ眼差しを向ける。
「その癖、どうにかならないのか……」
ウォズの祝福についていけない様子のゾンジス。しかし、すぐに気を取り直す。
「驚かされたが……それがどうした?」
ジクウドライバーからのアナザーウォッチのライドウォッチ化。確かに驚くべきことだが、ウォズの傷が癒える訳では無く、更に通常状態の仮面ライダーウォズになっただけのこと。戦力としての脅威は覚えない。
「そう焦ることは無い……驚くのはこれからさ」
「何だと……? むっ」
ウォズの手にシノビミライドウォッチ、クイズミライドウォッチ、キカイミライドウォッチが握られる。すると、ウォズはそのミライドウォッチを起動。
『シノビ!』
『クイズ!』
『キカイ!』
起動状態となるミライドウォッチ。ウォズはそれを上へ放り投げる。
『投影!』
左右に開かれたミライドウォッチが内部から光が投影され、それらが仮面ライダーの姿となる。
『誰じゃ? 俺じゃ! 忍者!? シノービ! 見参!』
紫の忍び装束で身を包み、仮面に手裏剣を模したパーツを付けた仮面ライダーシノビ。
『ファッション! パッション! クエスチョン! クイズ!』
額にクエスチョンマーク。胸には赤の○と青の✕で飾られた仮面ライダークイズ。
『デカイ! ハカイ! ゴーカイ! 仮面ライダーキカイ!』
交差したスパナ型のパーツを仮面に付け、装甲の各部にシリンダーを付けたメタリックな金色の戦士仮面ライダーキカイ。
ミライドウォッチの力によって三人のミライダーがここに召喚される。
「……オーマジオウの真似事か……いつの間にそんなことが出来る様になった?」
「臣下は王を倣うさ……というのは冗談でこんな事が出来るのは私も今知った」
「何だと……?」
ウォズの答えにゾンジスは啞然とさせられる。だが、ウォズの方も根拠が無くやった訳では無い。
「まあ、もしも私が彼の立場だったら……」
『ウォズ!』
ウォズミライドウォッチを起動し、放り投げる。
『投影!』
「保険としてこんな機能を入れるだろうと思っただけさ」
『スゴイ! ジダイ! ミライ! 仮面ライダーウォズ! ウォズ!』
ウォズ自身によってミライダーのウォズもまた召喚される。
並び立つミライダーたち。皮肉にもクォーツァーが生み出した仮面ライダーたちがクォーツァーへ牙を剝こうしていた。
ウォズはゾンジスへゆっくりと手を伸ばす。構えるゾンジスであったが、突如ウォズは伸ばした手を真上に上げる。
「祝え!」
「は……?」
「過去と未来を管理し、新たな時代を創造しようとする魔王の右腕! その名も仮面ライダーゾンジス! 剛腕無双のライダーの名が歴史に刻まれる瞬間である!」
突然、祝福の言葉を送られたゾンジスは困惑する。
「……急に祝って何のつもりだ?」
「これは祝福では無い」
「何?」
「これは私から君への──」
不退転の意思と覚悟をゾンジスへぶつける。
「──手向けの言葉さ」
ちょっとしたネタを入れつつ真面目な感じで。
次回でゾンジス戦決着の予定です。
先にどちらが見たいですか?
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IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
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IFゲイツ、マジェスティ