仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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Over Quartzer その14

 肩を並べて立つ二人の仮面ライダーウォズ。中身は違えと異なる自分が並び立つなどウォズ自身も想像もつかなかった光景である。

 見た目はほぼ同じだが、ジクウドライバーとライドウォッチによって変身したウォズには僅かな差異が生じている。

 ミライダーのウォズことМウォズの両肩部にある正方形の装甲がウォズには付いていない。それによりフォルムに丸みを感じ易くなる見た目となった。

 分岐した未来ではあるが、最新の技術を再現しようとした結果の不具合と思われる。しかし、当人に不満は無い。寧ろ、ジオウとゲイツの姿に近くなったことに悪くない気分であった。

 

「手向けの言葉か……ふっ。なら、俺がそれを遺言に変えてやる!」

 

 五対一という数的に不利な戦況でゾンジスは逆に覇気を漲らせる。逆境で精神が萎える様なタイプではなく、寧ろそれを乗り越える為に燃え上がるのがゾンジスである。

 当然ながらウォズもその性格を熟知している。ウォズが行ったことは一見有利になる様に見えて、大きなデメリットも含んでいた。

 

「行くぞ……!」

 

 ゾンジスが前に出ようとした時、影がゾンジスの眼前に躍り出る。

 

「むっ!」

 

 咄嗟に片腕を上げるとそこに叩き付けられる回し蹴り。現れたのは仮面ライダーシノビ。忍の名に相応しい疾風迅雷の強襲でゾンジスの出鼻を挫く。

 

「甘いっ!」

 

 腕を払い、シノビの蹴りを押し返すが、シノビはその反動を利用して空中に飛び上がり、口の前で手を筒の形にする。

 

『ストロング忍法ッ!』

 

 手筒を通して放射される紫炎が下方に立つゾンジスを包み込もうとする。

 

「温いっ!」

 

 一括と共に腕を振るう。ゾンジスの剛腕の一振りによって紫炎は四散。

 ゾンジスは空中にいるシノビを狙いすまし、拳を突き出す。互いの距離は離れていたが、桁外れの力で拳が空を切るだけで拳圧が発生し、不可視の拳となって滞空しているシノビに命中。

 シノビの鳩尾が拳型の凹みが生じたかと思えば、ボワンという音と共にシノビの姿が木の人形へ変わる。

 忍を体現する変わり身の術である。

 

「何っ!」

 

 紫炎を吐いた一瞬、ゾンジスの視界は炎に覆われてシノビから目を離した状態となった。その僅かな間に人形と入れ替わったことに驚く。

 入れ替わったシノビをすぐに探すゾンジス。

 

『忍法ッキリステ!』

 

 ゾンジスの背後へと移動していたシノビは、腰部より取り出した忍者刀──シノビブレードによりゾンジスの背中を斬り付ける。

 が、シノビブレードはゾンジスの体を傷付けるどころか刃も通さない。ゾンジスにダメージを与えるには、シノビは力不足であった。

 ゾンジスが背後に向けて裏拳を放つ。当たればその部位が砕け散る威力を秘めたそれを、シノビは持ち前の俊敏さでギリギリ躱しみせる。

 

『メガトン忍法ッ!』

 

 離れ際、シノビがシノビブレードを振り上げると紫の竜巻が起こり、その中心にゾンジスを閉じ込める。

 並の相手ならばそれだけで四散する破壊力を持つ忍法だが、ゾンジスは竜巻に巻き込まれてもピンピンしている。

 ゾンジスは纏わり付く様に渦巻いている竜巻を剛腕で吹き飛ばそうとし、拳を握り締めるが、紫の竜巻の向こう側にこちらを見ているライダーの存在に気付く。

 ゾンジスを見ているのは仮面ライダークイズであり、ゾンジスと目が合うとクイズは突然ゾンジスを指差す。

 

「問題!」

 

 いきなり始まるクイズ。

 仮面ライダークイズは二択の問題を出題し、相手が不正解だった場合その相手に電撃を落とすという特殊能力を有している。この能力はクォーツァーであるゾンジスも把握しており、問題を出題されたからには取り敢えず回答しようと思ったのだが──

 

「──、──、──、──?」

「何だ? 何を言っている?」

 

 シノビが起こした竜巻の強風によってクイズが何を言っているのか聞き取れず、○か✕で答える以前に問題の内容が分からない。

 次の瞬間、ゾンジスの体を電撃が貫く。○か✕ですら答えない無回答故のペナルティ。

 

「──ぐっ」

 

 ──ゾンジスが一瞬硬直してしまう程の電撃。体から黒煙が昇るが、それだけの電撃を浴びても声一つだけで済んだのは流石と言える。

 竜巻の向こう側でクイズがまた何か言った後、自分の胸に描かれてある○と✕を両の親指で指す。また、問題を出題しているらしいが、相変わらずシノビの竜巻のせいで聞き取れなかった。

 答えなければ強制的に電撃を与えられる。理不尽かもしれないが、これがクイズの能力である。それを見越してシノビが竜巻を発生させたと考えると、即席の割には上手く、そして悪質な連携である。

 

「鬱陶しい……!」

 

 だが、ゾンジスも黙ってそれを受け続ける程素直では無い。敷かれたルールの上を歩くのはゾンジスの、クォーツァーに相応しくない。

 ルールを敷く側こそが相応しい。

 

「おおおおっ!」

 

 ゾンジスは爪先で蹴り出し、肩から竜巻にぶつかっていく。通常ならば竜巻の壁に阻まれるが、ゾンジスの力は通常という言葉の枠から外れている。

 ゾンジスのショルダータックルは竜巻を突き破り、問題を出していたクイズに衝突すると、そのまま壁面へ押し込む。

 

「答えは✕だっ!」

 

 問題内容は分からないが、五十パーセントに掛けて答えを怒鳴る。クイズの胸にある○マークが輝き、不正解であると告げる。

 

「間違いか。──なら、一緒に喰らえっ!」

 

 ペナルティの電撃が発生しゾンジスを感電させる。だが、密着状態にあるクイズにも浴びせた電撃が流れ込み、体を硬直させる。

 ゾンジスはクイズから素早く離れる。元々の頑丈さ故にゾンジスはすぐに動くことが可能であったが、ゾンジスからのショルダータックルに加え自身の電撃を受けてしまったクイズは、壁に背を張り付けたまま動けない。

 動けないクイズに二度目のショルダータックルを見舞おうとした時、横から突き出された鋼の拳がゾンジスの頬にめり込み、それを阻む。

 横槍を入れたのは仮面ライダーキカイ。ミライダーの中で確認出来る限り最も未来で戦う名前の通り機械の青年が変身する仮面ライダー。

 重装甲のキカイが繰り出す拳は、見た目のままに重く。不意打ちとはいえゾンジスの体が一瞬傾く。

 キカイは、今度は下から斜めに上げる突きでゾンジスの反対側の頬を殴る。ゾンジスの体が逆に傾く。

 追撃の手を緩めず、キカイはスパナとマイナスドライバーが中央で交差するキカイドライバーの両端を触れる。

 

『アルティメタルフィニッシュ!』

 

 キカイの右腕に極低温が発生。それに伴い周囲の水分が急激に冷やされたことで結晶化し、周囲を舞う。

 キカイの敵である機械生命体ヒューマノイズならば一撃で機能停止を引き起こす破壊の一撃がゾンジスの顔目掛けて放たれる。

 突き出される正拳突き。だが、ゾンジスはその拳が届く前にあっさりとキカイの右腕を掴んで止めてしまう。

 

「調子に乗るな」

 

 ゾンジスのもう片方の手がキカイの顔面を鷲掴みにすると、そのまま片手でキカイの体を持ち上げてしまう。

 重量1.8トンもあるキカイを片手で上げてしまうゾンジスの恐るべき怪力。

 キカイは手足を動かして藻掻くが、ゾンジスの手は緩まず、逆に締め付けが強くなっていきキカイの顔面に罅生じ始める。

 キカイも何とかゾンジスの手を引き剥がそうとするが、ゾンジスの力はキカイを上回っており、剥がすことが出来ない。

 このままキカイの顔面が握り潰されるかと思った時、背後から飛び掛かってきたシノビが空中で体勢を捻って変え、ゾンジスの肩にオーバーヘッドキックが打ち込まれる。

 シノビの力自体はゾンジスに比べると貧弱だが、打ち下ろしの蹴りの衝撃でキカイの腕を掴んでいたゾンジスの手から僅かに力が抜ける。

 その僅かな隙にキカイは腕を引き抜き、ドライバーの両端を触る。

 

『キカイデハカイダー!』

 

 電流の光に似たエネルギーがキカイの右足にチャージされ、ゾンジスのがら空きになっている脇腹にキカイの右回し蹴りが叩き込まれる。

 比較的装甲が薄い箇所に、二つの意味でミライダーの中で最も重い蹴りが入ることでゾンジスの動きが僅かの間止まる。

 

『ジカンデスピア! ヤリスギ!』

 

 重なる二つの音声。まるで鏡合わせの様に全てが揃った動きでウォズとMウォズの刺突がゾンジスの胸に命中。

 装甲を刺し貫くことは出来なかったが、少しだけ怯ませることができ、その間にキカイはゾンジスの手から逃れる。

 

「ウォズッ!」

 

 ゾンジスの対象が二人のウォズに移る。それを見越してウォズたちはもう一度ジカンデスピアで突きを放つ。

 喉元を狙う二つの穂先。しかし、それが届くことは無かった。喉の前で交差するゾンジスの両腕が穂先を受け止めてしまう──ウォズの狙い通りに。

 

『カマシスギ!』

「むっ!」

 

 Wウォズがジカンデスピアの入力装置に素早く触れ、ヤリモードからカマモードへ切り換えると鎌部分をゾンジスの腕に引っ掛け、全力で引く。

 意表を衝かれた行動にゾンジスは咄嗟に反応出来ず、ウォズの思い通りに片腕を開いてしまう。

 

「はああっ!」

 

 ウォズ渾身の突きが防御の開いた箇所、胸を強打。ゾンジスは数歩後退せざるを得なかった。

 

「……やるな」

 

 ウォズたちのコンビネーションを素直に褒める。即席の連携として考えるなら上等過ぎると言っても良い。

 召喚されたミライダーは能力と歴史を再現したコピー体の様なものだが、ある意味でそれが理由で功を奏している。

 明確な人格が無いのでウォズの指示に躊躇無く従うことができ、ミライダーの力をその身に宿した経験があるウォズだからこそ彼らの能力を把握し、上手く嚙み合わせられる。

 

「だが──」

 

 ゾンジスはウォズに突かれた箇所を埃でも払う仕草で軽く撫でる。僅かな凹みと傷が出来ているが、ゾンジスの命には全く届かない。

 

「この程度では俺は倒せん!」

 

 非情な現実を突き付ける。一方でウォズにはそれが違って見えた。

 

「……治らないね」

「……何?」

「傷」

 

 ウォズが注目していたのはゾンジスに刻まれた小さな傷。今までの戦いのことを考えればとっくに傷など消えている筈だが、今も胸に残っている。

 

「どうやら、今の君は他のライドウォッチの能力が使えないみたいだ」

 

 その傷でウォズは察する。各ライドウォッチの能力が使用不能状態であり、ゾンジスライドウォッチ単体の力しか発揮出来ないことを。

 

「──確かにそうだ」

 

 ゾンジスはウォズの指摘を否定せず、寧ろ認める。

 彼の全てのライドウォッチの力は、ライダー母艦ゾンジスの維持に使用されており、ウォズとの戦いの中で見せた能力は使用出来なくなっている。

 部分的な巨大化。身体能力の強化。再生能力。機械操作など一切封じられた状態であり、結果としてウォズの潜入が正しかったこととなる。

 しかし──

 

「だが、それがどうした? お前たちなど俺の力のみで十分!」

 

 そのことで動揺する様なゾンジスでは無い。逆にこの危機的状況下の中で己を昂らせ、戦意と威圧感を増させる。

 

「悔しいが、それが過信では無いのは認めるよ……」

 

 能力を封じ、数で圧倒している中でもウォズは未だにゾンジスに勝つビジョンが見えない。ここまでやってやっと互角、もしくは少し押されているので仕方ないと言える。

 

「だけど、君に負けるつもりは無い!」

「こちらの台詞だっ!」

 

 互いが吼えると同時に室内が揺れ始める。外側の巨大ゾンジスの修復が終わり、行動を再開したことを意味する。

 直後に大きな揺れが襲って来る。外部からの衝撃。即ち、ギンガもまた修復が終わり行動し始めている。

 ゾンジスとギンガの戦いが再び始まる。

 歩き始めたのか足裏が離れてしまう程の上下の揺れが内部に起こる。

 

「くっ!」

 

 思わずバランスを崩してしまうウォズたち。その隙をゾンジスは見逃さない。

 

「鍛え方が足りん!」

 

 揺れなど関係無く一気に距離を詰めたゾンジスがウォズの顔面を殴打。

 

「がはっ!」

 

 続けて隣に立っているМウォズの肩を掴んで引き寄せると鳩尾に膝を突き刺す。

 Мウォズは声を上げることはしなかったが、鳩尾を押さえながらヨロヨロと後退していく。

 続けて次に近いクイズに仕掛けようとしたが、シノビとキカイがゾンジスの前に立ってそれを妨害する。忍者という特殊な鍛え方をしていること、機械の体という特殊な体で激しい揺れにすぐに対応していた。

 シノビブレードが横薙ぎに払われるとゾンジスは素手でそれを弾く。間を埋める為に放たれたキカイの拳も掌で難無く止めてしまう。

 

『フィニッシュ忍法ッ!』

 

 紫の風が吹き抜けたかと思えば、シノビの蹴りがゾンジスの首筋に叩き込まれる。ゾンジスがそれを知覚するよりも速く次なるシノビの蹴りが側頭部に命中。そこから胴体に爪先を打ち込み、喉にも蹴りが入る。

 目にも止まらぬ、という言葉を体現させたシノビの連続キックがゾンジスへ浴びせられる。

 一撃がそれほどの威力が無くともそれを補う手数によってゾンジスの動きを止める。

 

「ぬうぅ……!」

 

 腕を上げてシノビの蹴りをガードしようとするも、構えが不十分な状態でシノビの蹴りがゾンジスの肘を蹴り上げる。

 腕関節部を蹴られ、ゾンジスの腕の動きが鈍った瞬間にキカイが動く。

 

『キカイデハカイダー!』

 

 エネルギーを充填された右回し蹴り。そのままゾンジスの首筋へ吸い込まれていくと思いきや、ゾンジスはシノビに蹴られた腕を無理矢理動かし、肘打ちをキカイの足に叩き込む。

 

「ふんっ!」

 

 結果、破砕音と共にキカイの足に罅が入り、鮮血代わりの火花が飛び散る。

 迎撃されてしまったキカイはバランスを崩し、片膝を突いてしまった。

 シノビが意識を自分に向けさせる為にゾンジスに更なる攻撃を加えようとするが──

 

「見切ったぁっ!」

 

 ──顔面に迫っていた蹴りを掴み取り、持ち上げてシノビの背を床に叩き付ける。どんなに速くともいずれはタイミングを掴むことが出来る。ましてや、ゾンジス程の戦闘力の持ち主ならば掛ける時間も短い。

 シノビとキカイをすぐには動けない状態に追い込んだゾンジス。助けようにもウォズたちは揺れのせいで上手く動けない。

 このままゾンジスの拳が二人を砕くかと思いきや、急に揺れが治まる。そして視界が傾いたかと思えば、突然の浮遊感に襲われた。

 

「なっ!」

「むぅ!」

 

 足だけでなく全身が浮き上がり、無重力状態を味わわされる。無重力状態の中で壁へと引き寄せられていく全員。

 そのすぐ後に無重力状態が解除され、全員壁に叩き付けられた。

 

「ぐっ!」

「くっ!」

 

 外部の様子は全く分からないウォズたちだが、ゾンジスの方は外で何が起こったのか把握していた。

 内部でウォズたちとの戦いに集中するあまり、外部のゾンジスの操縦が疎かになってしまい、ギンガに隙を晒してしまったことで攻撃を受けて転倒させられてしまった。

 現在、巨大ゾンジスは仰向けの体勢になっており、そのせいで壁面が下になっている。

 ゾンジスが巨大ゾンジスを立ち上がらせる為に意識を集中させる。

 

「ぐうっ!」

 

 その集中を妨げるはクイズの拳。殴りつけると同時に○と✕が重なった光を発する。

 顔面を殴打されれば嫌でもそちらに意識が向いてしまう。そこにすかさずウォズとМウォズが飛び込み、ジカンデスピアの穂先でゾンジスの体を斬り付ける。

 今まで鏡合わせの様な動きであったがウォズは縦に、Мウォズは横にジカンデスピアを振るっており、ゾンジスの体に十字の傷を刻み込む。

 刻まれた十字をターゲットにしダメ押しのキカイの拳とシノビの足が叩き込まれる。連続同時攻撃に堪らず転倒してしまうゾンジス。その最中に両拳を突き出し、キカイとシノビを攻撃、二人が殴り飛ばされるのを見ながら巨大ゾンジスと同じく仰向けの体勢となっていた。

 

「やるな……!」

 

 ダメージは確実に与えているが、ゾンジスの口振りから倒すには至らない。ゾンジスを倒すには、もっと強いダメージを与える必要がある。

 仰向けに倒れていたゾンジスが立ち上がる。すると、室内がまた動き出し、斜めになっていく壁面から全員がずり落ち始める。

 ゾンジスと巨大ゾンジスの体勢が丁度同じであった為、無意識の行動が外部の巨大ゾンジスとリンクして立ち上がり出していた。

 

「またか……!」

 

 目まぐるしく向きを変える室内にウォズが愚痴を零す。それがいけなかった。

 ゾンジスは斜めになり出した壁を蹴る。そして、一気にウォズの許へ接近すると減速無しの強烈な頭突きをウォズの顔面へ打ち込む。

 

「がはっ!」

 

 ウォズが仰け反ると共に仮面部分から幾つもの破片が飛び散っていく。垂直になっていく壁から滑り落ち、水平となった床を転がって行くウォズ。

 ゾンジスはすぐにウォズを追おうとしたが、Мウォズが顔面目掛けてジカンデスピアを突き出してきたので急停止させられてしまった。

 

「邪魔だ!」

 

 ジカンデスピアを掴んで引き寄せ、近付いてきた所にウォズと同じく額を顔面に打ち込み、Мウォズはサッカーボールの様に飛んでいく。

 

「くっ……」

 

 ふらつきながらも立ち上がるウォズ。仮面の一部がゾンジスの頭突きによって破損しており、生身の右目が露出している状態となっている。

 ズキズキと頭が痛むのを耐えながら、ゾンジスがこちらに来ているのを右目で捉える。ただ、頭突きの影響で視界が二重になってブレており、膝も笑っている状態で回復するのに時間が掛かる状態であった。

 ゾンジスはウォズの右目の焦点が合っていないことに気付いたが、それで手を抜く程甘くは無い。詰める速度を上げ、寧ろかつての弟子ならばこの程度の試練は乗り越えてみろ、と言外に告げる。

 キカイとシノビはゾンジスの反撃のせいでまだ動けない。今、動けるのはこの仮面ライダーしかいない。

 クイズは自身のドライバーからクエスチョンマーク型の変身ツールを抜く。クイズの手の中でクエスチョンマークがエクスクラメーションマークに変形し、再びドライバーへ挿す。

 

『ファイナルクイズフラッシュ!』

 

 クイズとゾンジスの間に○と✕が描かれた巨大なパネルが出現。

 問題を出題されていなくても分かる。クイズが○と✕どちらから飛び出して攻撃してくるのか。

 

「答えは──」

 

 ゾンジスは力強く拳を握る。

 

「○だぁぁぁ!」

 

 回答の直後に○を突き破って飛び出してきたクイズが、飛び回し蹴りでゾンジスを狙うが、予想を当てていたゾンジスは向かって来るクイズの右足に突き上げた拳を打ち込み、殴り抜ける。

 防がれると同時に反撃も受けてしまったクイズは、縦回転しながら飛んでいってしまう。

 

「ふん」

 

 たわいも無い攻撃にゾンジスは鼻を鳴らす。クイズの必殺技も不発に終わり、○✕パネルも消滅する──と思いきや、バキリという音を立てながら✕のパネルから鉤状の物体が突き出てきた。

 それが何なのかゾンジスが一瞬考えてしまった時、その物体の方から答えを教えてくれる。

 

『フィニッシュタイム!』

 

 鉤状の物体が発光すると✕のパネルが砕け散る。パネルの向こう側に立つのはウォズ。そして、突き出していたのはツエモードのジカンデスピア。

 

『不可思議マジック!』

 

 先端から大量のクエスチョンマークが飛び出し、ゾンジスへ重なって彼を拘束する。足元から頭までクエスチョンマークが積み上がった時、全てのクエスチョンマークが爆発した。

 ウォズは崩れ落ちそうになる体をジカンデスピアで支えながら目線を爆発から逸らす真似はしない。ウォズはゾンジスがこれで倒れる相手だと微塵も考えていなかった。

 

「ふぅ……」

 

 爆発が治まると至る箇所が焼け焦げているゾンジスが仁王立ちしている。装甲の幾つかに亀裂が生じていたが、ウォズの思っていた通りまだ倒れる気配は無い。

 ウォズの傍には復活したミライダーたちが並び、ゾンジスを牽制する。一見すると心強い光景だが、ウォズにはそれが見せかけのものだと分かっていた。

 

(不味いな……彼らもそろそろ限界か……)

 

 ミライダーはミライドウォッチで投影したものに過ぎない。一定以上のダメージを受ければ実体化が維持出来ずに消滅してしまう。あくまでコピーの為、本人とは違って絶体絶命の危機になっても不屈の闘志を見せる、諦めない、などということが出来ない。

 

(そして、私も……)

 

 ウォズの体も限界を迎えようとしていた。度重なるダメージを受けた肉体を、それすら凌駕する魔王の忠臣としての使命感で無理矢理動かしてきたがそれも終わりが近付いていた。

 

(だが、ここで──ッ!?)

 

 ウォズの意志に反して膝から勝手に力が抜ける。このまま無様に転倒する、と思いきや横から伸びた手がウォズの腕を掴み、それを止めた。

 ウォズは手の主を見る。ウォズの腕を掴んだのはМウォズであった。

 下から見上げるウォズを上から見下ろすМウォズ。そんな筈は無いと分かっているつもりだが、こちらを見下ろしているМウォズの視線に嘲りが含んでいる気がしてならない。

 

『この程度で倒れるのかい? やれやれ……同じ私に恥を掻かせないでくれるかな?』

 

 頭の中で消滅した白ウォズの台詞が聞こえた気がした。幻聴に違いないと思うが、あまりにリアルなせいもあって仮面の下でウォズの頬が引き攣る。

 Мウォズに引っ張り上げられる前にウォズは自分の力で立ち、Мウォズの手を払い除ける。情けなど不要と言わんばかりに。

 Мウォズはウォズのその態度に顎を軽く上げる。ウォズには鼻で笑っている様にしか見えない仕草であった。

 室内に大きな揺れが何度も生じる。だが、さっきの様に室内が傾く様子は無い。外部の巨大ゾンジスがギンガに連続攻撃を仕掛けていると思われた。

 攻撃の加速。外の戦闘もまた終わりを迎えようとしている。

 次の攻防が最後のものとなるだろう。ウォズは直感していた。そして、その直感はゾンジスも得ていた。

 言葉を交わさずとも互いに互いが同じ事を思っているのが、その動き、気配などの細かな情報で伝わって来る。

 

 どちらかが死ぬ。

 

 結末は見えた。そこに至る過程はこれから描かれる。

 

『セイバイ忍法ッ!』

 

 最初に動いたのはやはりシノビであった。ドライバー中央に填め込まれてある手裏剣のパーツを回転させるとシノビブレードを構えて突撃する。

 それを迎え撃とうとするゾンジスであったが、接近してきたシノビが全身を発光させゾンジスの目を眩ます。

 

「くっ……!」

 

 強烈な光を直視してしまったせいでゾンジスの視界は真っ白に染められ、一時的に盲目状態となってしまった。

 仕方なく両腕を前方に揃えて、全身に力を込めることで視力が回復するまで守りを固めるゾンジス。

 間もなくしてゾンジスの体に衝撃が走り、ゾンジスの体が上空へ蹴り上げられた。

 蹴り上げられたゾンジスは驚く。自分の体が浮き上がったことにではない。衝撃が複数あったこと、明らかに多人数によって攻撃されていた。それも今居る数よりも多い。

 白く焼けていた視界が元に戻る。ゾンジスが見たのは視界全てを覆うようにしるシノビの分身たち。視界外だが背後にも恐らくおり、ゾンジスを三百六十度囲んでいた。

 シノビの分身たちはシノビブレードで全方向からゾンジスを斬り付ける。

 余すところなく斬り付けられるゾンジスの体。しかも、厭らしい出鱈目に斬っている様で同じ箇所を何度も攻撃しており、確実な傷をゾンジスへ与えている。

 斬撃が終わると同時に数体のシノビの分身が更にゾンジスを蹴り上げる。真上に上げられたゾンジスを待ち構えるシノビの本体。

 紫炎を思わせる力を右足に纏わせ、打ち上げられてきたゾンジスの右肩へ右踵を叩き込んだ。

 関節部を正確に狙った一撃は、ゾンジスの体内に鈍い音を響かせる。だが、ゾンジスは攻撃された方の腕を敢えて動かしてシノビの右足を掴む。

 逃れられない程の握力でシノビを下へと引っ張り、ゾンジスの前へと来ると小指から人差し指を揃えた貫手を放つ。

 最上級の剛腕から放たれる貫手はシノビの腹部を容易く貫き、背中まで抜けて行く。

 完全な致命傷。これでシノビは撃破──と思いきやシノビの全身が紫炎に包まれ、次の瞬間には爆発を起こす。

 

「ぐうっ!?」

 

 これにはゾンジスも意表を衝かれ、爆発を防御する余裕も無く爆発の衝撃で壁面へ叩き付けられた。

 忍らしいシノビの最期の反撃によりゾンジスは大きな隙を晒すこととなる。

 

『ファイナルクイズフラッシュ!』

『フルメタル・ジ・エンド!』

 

 跳躍するクイズとキカイ。クイズの前方に実体化した○と✕が交互に重なり合っていき、それがゾンジスまで伸びて行く。キカイの体にチャージされたエネルギーが右足へと移動していき、充填したエネルギーは冷気に変換されキカイの右足に氷柱を形成した。

 ○と✕を潜りながら右足に赤と青のエネルギーを点滅させるクイズ。氷柱を突き出し、周囲に氷の結晶を散らしながら急降下するキカイ。

 二人のミライダーのキックが壁を背にして逃げ場所の無いゾンジスへ迫る。

 

「──来いっ!」

 

 元よりゾンジスは逃げるつもりは無かった。迫り来る必殺技に対し、両腕を広げて真っ向から迎える構えをとっていた。

 

「おおおおおおっ!」

 

 二つキックに対してゾンジスが繰り出したのは両腕からの肘。

 クイズのキックが炸裂すると赤と青のエネルギーが周囲に撒き散らされ、キカイの右足が命中すると氷柱がゾンジスの腕を貫き、凍結させていく。

 

「っぬおぁぁぁぁぁ!」

 

 しかし、それがどうしたと言わんばかりに腕力のみで二人のキックを弾き飛ばす。

 弾かれた二人は空中でバランスを整え、何とか着地するがそれを待ち構えていたゾンジスが既に突っ込んできており、立ち上がる二人の首を鉤状に構えた両腕で刈る。

 俗に言うラリアットを貰ってしまったクイズとキカイは、そのまま壁際まで運ばれていき、壁面へ叩き付けられた。

 鈍い音と共にクイズとキカイが項垂れると、二人の姿は光となって消滅してしまった。

 これで残すは二人のウォズのみ。しかし、クイズとキカイの行いは決して無駄では無い。

 ゾンジスの左腕ではキカイの一撃によって凍結しており、いつ砕けてもおかしくない状態。そして、右腕の方もクイズのキックによって装甲に大きな罅が入っている。そして、右肩にはシノビの踵落としも入っている。そのダメージは無視出来るものではない。

 シノビ、クイズ、キカイの三人のミライダーは散ったが、確実な爪痕を残してくれた。後はウォズらがそれを活かせるかどうかに掛かっている。

 ウォズはМウォズを後方に待機させて自分が前に出る。二対一で戦えば有利の筈だが、ウォズはそれをしない。

 師弟として決着をつけたい──という感傷的な理由では無い。ゾンジスに勝つ為にはМウォズを温存しておく必要があった。

 ウォズが駆ける。握り締めているジカンデスピアの入力装置を素早くスワイプする。

 

『フィニッシュタイム!』

 

 穂先に溜め込まれていく緑のエネルギー。切れ味と破壊力が増したそれを構え、ゾンジスへ急接近する。

 凍結した左腕で防げばまず間違いなく砕ける。だからといって右腕で防げば攻撃に左腕は使えない。凍った腕ではゾンジスの力をまともに発揮出来ない。

 普通に考えるのなら防御一択しかない状況。

 

『爆裂DEランス!』

 

 間合いに入ると同時に緑の残像を残しながら振り上げられたジカンデスピアが、ゾンジスの脳天目掛けて振り下ろされた。

 防ぐしか選択肢が残されていない攻撃。だが、ゾンジスの選択は違った。

 

「うおおおおおおおっ!」

 

 振り下ろされたジカンデスピアにゾンジスは躊躇うことなく凍結した左腕を叩き付けたのだ。この戦闘でもうまともに使えないと判断したゾンジスは、己の左腕を道具という扱いで割り切った。

 結果、ゾンジスの左腕は肘から下が砕け散る。だが、ジカンデスピアもまた穂先の根本が折れ、穂先部分が宙へ舞う。

 ゾンジスは選んだのは左腕を犠牲にした攻撃的な防御。これにより、ウォズは得物を破壊されただけでなく致命的な隙を作ってしまう。

 

『フィニッシュタァァイム! ゾンジス!』

 

 この光景を予測していたゾンジスは、既に行動を終えていた。

 

『タイムブレーク!』

 

 破壊の右がウォズの腹部に突き刺さる。

 

「──っ!」

 

 体をくの字に折り、声すら上げることも出来ないウォズ。ゾンジスはこの一撃で全てが終わったと思った──

 

 勝った、と思ったかい? 

 

 ──聞こえない筈のウォズの心の声が聞こえた気がした。

 ゾンジスの拳をめり込ませたままウォズが上へ真っ直ぐ手を伸ばす。その掌の中に落ちて来るはジカンデスピアの穂先。

 まだ輝きを失っていないそれを掴むと、ゾンジスの胸の中心に突き立てる。

 

「がっ!?」

 

 ゾンジスは胸に穂先を刺したまま後退していく。

 ゾンジスからすれば信じ難い思いであった。今の一撃は確実にウォズを絶命させるのに十分な威力を秘めていた。耐えられること自体が有り得ないのだ。

 ウォズが耐えられた理由は二つ有る。一つ目はシノビとクイズの攻撃を受けていたことでゾンジス本人が思っているよりも右腕を充分に使えなかったこと。百パーセントの力を発揮出来ず、少ない一、二割程力を削がれていた。

 二つ目は来ると分かっている攻撃ならその箇所に全力を集中すればある程度耐えられるということである。

 そう、ウォズは予測していたのだ。ジカンデスピアで攻撃すればゾンジスは左腕を犠牲にして防ぎ、そこから必殺の一撃を繋ぐことを。

 そして、ゾンジスは予測出来ていなかった。ウォズはゾンジスの攻撃を敢えて受け、勝利という最も気が緩む瞬間を狙っていたことを。

 ゾンジスはウォズのことを良く知っている。しかし、それはゾンジスがウォズに戦いを教えていた時までのウォズである。

 ソウゴと出会った後のウォズのことは知らない。故にこの命懸けの攻撃を仕掛けて来ることを全く予想していなかった。

 この捨て身の一撃はウォズ本人にしか出来ない。Мウォズならばゾンジスが勝利を実感する前に消えてしまうからだ。

 

「楔は……打ち込んだ……!」

 

 血を吐く様なウォズの台詞。その言葉を合図に待機していたМウォズがウォズの隣に並ぶ。

 ウォズはライドウォッチのスイッチに拳を叩き付ける。それに連動してМウォズもドライバーを操作。

 

『フィニッシュタァァイム!』

『ビヨンド・ザ・タイム!』

 

 二人同時に跳躍し、空中で回転しながら後ろ飛び回し蹴りへと移行。鏡合わせを思わせる全てが揃えられた微塵のズレも無い動き。

 二人から飛び出した『キック』の文字が二人を中心にして旋回する。

 旋回する『キック』の文字が留まるのはゾンジスに突き刺さるジカンデスピアの穂先。

 

『タイムエクスプロージョン!』

「ウォズゥゥゥゥゥゥ!」

 

 二つの声、二つの蹴りが重なり合う。

 二人のウォズのダブルライダーキックを打ち付けられたジカンデスピアの穂先は、ゾンジスを貫通し、胸に大穴を開ける。

 正真正銘最後の一撃を与えたウォズは直後に変身が強制解除され、Мウォズも消滅してしまう。

 

「ごほっ……」

 

 ウォズの口から大量の血が吐かれ、彼のストールを赤く汚す。

 ゾンジスの拳を耐えたが、それは死に至るまでの時間を僅かに伸ばしたに過ぎない。

 彼の命は尽き掛けている。だが、ウォズは宇宙にゾンジスを連れて来た時からこうなることは覚悟していた。

 

「ウォズ……」

「……何だい?」

 

 左腕を失い、胸に大穴が開いてもゾンジスは倒れるどころか膝を折ることもしない。ここまで来ると敵ながら褒めるしかなかった。

 ウォズはゾンジスの方を見るがすぐに立てなくなり、フラフラとした足取りで壁に寄りかかり、そのまま背を預けながらずり落ちていく。

 

「俺は……お前の全てを超えていた……何故、ここまで出来た?」

「簡単な……ことさ……」

 

 ウォズは微笑を浮かべる。

 

「私は変わった……君は変わらなかった……それだけだ」

「……そうか」

 

 ウォズは視界が端から暗くなっていくのが分かった。もう声すら出す力も無い。残された時間は少ない。

 

(後悔は……有るね……忠臣として……最後まで君と共に戦えなかったことを許してくれ……我が魔王……)

 

 後悔はやはり有る。ソウゴ──仲間ともう会えないことに少し寂しさを覚える。

 

(もう……君の為に祝うことは出来ないが……せめて祈ろう……君の為に……)

 

 最高最善の魔王の忠臣として最期の瞬間までを魔王へ捧げる。

 

(どうか我が魔王に勝利を……どうか我が魔王の夢が叶う様に……どうか君に幸せな結末が待っています様に……どうか……どうか……どうか……どう、か……)

 

 ウォズの目がゆっくりと閉じられた。

 

「……ウォズ」

 

 ゾンジスが声を掛ける。返事は無かった。

 

「この勝負、お前の勝ちだ」

 

 ゾンジスは自らの敗北を認める。死した弟子への同情から勝利を譲ったのでは無い。確固たる理由があった。

 

「お前を変えた魔王……常磐ソウゴに興味が出た」

 

 SOUGOの忠臣としてあってはならないことなのだろう。だが、ゾンジスは興味を抱いてしまった。ウォズを通じてゾンジスの心を動かしたのだ。それはゾンジスにとって敗北同然のことである。

 

「俺に勝った褒美だ……後始末はつけてやる……!」

 

 ゾンジスの命もまた風前の灯火。だが、この土壇場に於いてその命を激しく燃やす。

 

「俺は伏して死なん……! 俺は戦いの中で死ぬっ!」

 

 

 ◇

 

 

 殺意を込めた掌打と拳を交えるギンガと巨大ゾンジス。一進一退の攻防──と思われたが、巨大ゾンジスに異変が生じる。

 全身に亀裂が生じ出し、そこから緑色に発光する液体が漏れ出す。

 それは巨大ゾンジスを動かしている自然のエネルギーが液状化したものであり、本体のゾンジスが巨大ゾンジスを維持するのが困難になってきた証でもあった。

 その証拠に巨大ゾンジスの周囲に生い茂っていた植物たちが急速に枯れ始め出す。ゾンジスの『創星』の力もまた弱っていた。

 

『やはり、宇宙の法に従いお前が滅びる定めであったか』

 

 弱体化し出す巨大ゾンジスに特に感傷を見せることなく淡々と語ると、朽ちた体を滅ぼす為に両手でエナジープラネットを形成。棒立ちになっている巨大ゾンジスへ放つ。

 命中する、かと思いきや巨大ゾンジスはその場で跳躍し、巨体が小さく見える程遥か上空まで跳び上がる。

 

『フィニッシュタァァイム!』

 

 月から宇宙へ飛び出す高度まで跳んだゾンジスは、右足を伸ばしたキックの体勢に入るとギンガ目掛けて急降下。

 超高度からの急降下は、巨大ゾンジス自身の体に大きな負担を与え、全身にあった亀裂は仮面にまで伸びる。

『ライダー』という仮面の文字に亀裂が入るとそこから緑の液体が流れ出る。まるで双眼から涙を流しているかの様に見えた。

 

『ストライク・ザ・プラネットナイン!』

 

 ギンガも黙ってそれを見ていない。ギンガの周囲に惑星を模した九つの疑似惑星弾を形成すると、それを全弾巨大ゾンジスへ発射する。

 直撃すれば跡形も残らない威力を秘めた九つの惑星爆弾。しかし、巨大ゾンジスは恐れることなく直線で進んでいく。

 巨大ゾンジスの右足に赤い輝きが灯った時、巨大ゾンジスの体から流れ出る自然のエネルギーが彼を守る光の膜と化す。

 光の膜に疑似惑星爆弾が触れると全てが弾かれ、空の彼方へと消えて行く。自然の力が宇宙の力を跳ね除けた瞬間であった。

 その光景に動揺することなくギンガもまた上空に向かって跳躍し、宇宙の輝きを右足から発してゾンジスを迎撃しようとする。

 

『ゾンジス! タイムブレーク!』

『宇宙は、まだ滅びぬ!』

 

 ゾンジスとギンガの意志と技が衝突する。

 大自然と宇宙。戦士の矜持と宇宙の法則。それら大き過ぎる力と力が合わさり、宇宙に大きな光が生まれる。

 どちらに軍配が上がったのか。それは戦っていた当人らすらも最早知ることは出来ない。

 確かに言えることは、この世界から月という衛星が永遠に失われたということだけであった。

 




これにてゾンジス戦は終わりです。
残す戦いもあと少しとなりました。

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