仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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新しいライダーが発表され、ジオウの小説も発売されましたね。
小説の方は店に無かったのでまだ買っていませんが。


Over Quartzer その15

「うん……?」

 

 剛はソウゴが無事にこの建物から出て暫くして外が静かになったのを感じた。窓の端から見つからない様に外を覗く。あれだけ動き回っていたカッシーンたちの姿が見えない。

 ここの探索を諦めて他の場所へ向かった、と普通ならば考えるかもしれない。しかし、剛は何故か胸騒ぎを覚える。

 嵐の前の静けさの様な落ち着かない嫌な感覚。

 剛は自らの感覚を信、もしもの時に備えて眠っている光太郎の傍に寄る。

 その時、凄まじい爆発と共に建物が揺れた。

 

「何だ!?」

 

 爆発は一度で治まらず、何度も何度も繰り返され、爆発の後に別の建物が倒壊する音が聞こえて来る。

 

「あいつらまさか……!?」

 

 再び起こる爆発と振動。天井が揺れ、溜まっていた埃が落ちて来る。

 

「くそっ! ここに居たら不味い!」

 

 剛は急いで光太郎を抱えて建物の入り口に向かう。

 直後に天井の一部が破壊され、瓦礫となって床へ落ちて来る。剛の判断が遅ければ光太郎が瓦礫の下敷きになっていた。

 空けられた天井の穴から見えるのは上空で滞空しているカッシーンたち。探索に痺れを切らした彼らは強硬手段に映り、上空から周囲の建物に無差別攻撃を開始していたのだ。

 このまま外に出ればカッシーンたちにまんまと炙り出されたことになってしまうが、建物内に隠れていてもやがては倒壊に巻き込まれてしまう。

 剛に残された選択肢は一つしかない。だが、それでも残された選択に全力を尽くすつもりであった。

 そうでなければ光太郎を託してきたソウゴに顔向けが出来ない。

 光太郎に肩を貸した体勢で彼を引きずりながら建物外を目指す。成人男性一人運ぶことはかなりの重労働の為、中々外に出られない。

 

「はあ……はあ……あと少しっ!」

 

 いつ来るかも分からない攻撃の重圧に耐えながら剛は光太郎と共に外への扉を潜った──直後に建物に光弾が命中。着弾の衝撃で二人は吹き飛ばされる。

 

「うわあっ!」

 

 地面を転がっていく剛。衝撃のせいで光太郎から離れてしまう。

 

「いてて……」

 

 耳鳴りや体の痛みに顔を顰めながら剛は立ち上がる。爆発の衝撃でクラクラする頭を軽く振りながら離してしまった光太郎の姿を探す。

 視線を左に向ける。光太郎の姿は無し。今度は右に向ける。横たわる光太郎の姿を発見。そのすぐ傍に三又槍を構えたカッシーンが立っていた。

 その光景を見た時、自分の身に起こっていることなど全て忘れて剛は走り出していた。

 カッシーンが光太郎に三又槍を振り上げる。

 

「止めろぉぉ!」

 

 その時、横から飛び込んで来た剛がタックルを当てる。不意を衝かれて脇腹にもろに受けてしまったカッシーンは、手から三又槍を離して転倒する。

 剛はカッシーンが手離した三又槍を掴み、立ち上がろうとしていたカッシーンの胴体を斬り付ける。

 

「ぐう……!」

 

 機械の兵士が呻き、確かなダメージがあったことを伝える。人の手で振るわれても得物が同じならばそれなりのダメージを与えられるらしい。

 

「おりゃあっ!」

 

 今度は突いてカッシーンを再度転倒させる。同じ箇所を攻撃されたカッシーンは暫くの間、動けなくなる。

 今のうちに光太郎を安全な場所へ避難させようとした矢先、幾つもの足音が剛たちの方へ集まってくる。

 

『標的を発見。我が魔王の命により、南光太郎を抹殺する』

 

 二十近いカッシーンたちが剛たちを囲み一語一句間違えず、ずらさずに喋る様は不気味であり、圧迫感があった。

 数でも力でも圧倒的不利な状況。常人ならば心が折れてもおかしくはなく、そして誰も責めないだろう。しかし、剛は恐怖を表情に出さず、強く意思を宿した目でカッシーンたちを睨み付け、三又槍を構える。

 

「こいつは殺らせない……!」

『お前は抹殺対象に入っていない。武器を下ろし、すぐに立ち去れ。命は惜しいだろう?』

「俺の今の目的は生き残ることじゃない! こいつを守ることだ! 来るならさっさと来い! 遅いのは嫌いなんだよ!」

 

 堂々と啖呵を切ってみせる剛。カッシーンたちのバイザー状の眼が一瞬冷たい殺意の輝きで光った。

 

『愚かな』

 

 カッシーンたちは剛の啖呵を蛮勇と嘲り、数居るカッシーンたちの中からたった一体を前に出す。この程度で十分と言わんばかりの見下した行為。

 

「舐めやがって……」

 

 立場を考えれば寧ろ有難い行為だが、実際にやられると腹が立って仕方ない。

 前に出たカッシーンは、剛の頭上に三又槍を振り下ろす。剛は同じく三又槍でそれを受け止めるが、やはり人間と機械との腕力の違いで出て一撃で剛の膝が折れそうになる。

 それでも歯を食い縛って耐える剛であったが、がら空きなっている胴体にカッシーンの前蹴りが突き刺さり、あっけなく崩れて地べたを転がっていく。

 その姿に周りのカッシーンたちが嘲笑を上げる。機械の兵士の癖に悪趣味な機能だけは付いている、と痛みに悶えながら剛は内心で毒吐いた。

 カッシーンは慌てず、急がず一定の間隔の歩みで倒れ伏している剛の傍に行き、止めを刺す為に無慈悲に三又槍を振り上げる。

 万事休す、と剛が腹を括った時、三又槍を振り上げていたカッシーンの顔面に拳が突き刺さり、顔面を凹ませながら殴り飛ばす。

 

「ようやく起きたのかよ……」

 

 カッシーンを殴り飛ばした人物を見て、剛は愚痴る様に言っていたが自然と口角が上がっていた。

 不思議なものである。言葉など何一つ交わしていない相手だというのに、彼がそこにいるだけでカッシーンに囲まれているこの状況下でも安堵を覚えてしまう。

 

「色々と迷惑をかけた」

 

 申し訳なさと感謝を半々に込めながら昏睡から復活した光太郎が真っ直ぐ剛を見る。

 

「あー、寝ていたから分かっていないと思うが、俺は──」

「大丈夫だ。体は動かなくとも君とソウゴが俺をずっと守っていたことは知っている」

 

 光太郎は完全には意識を失っていなかった。体を自由に動かすことは出来なかったが、その耳でソウゴや剛の会話を聞いており、今に至るまで命懸けで守ってくれたのをきちんと分かっていた。

 

「──今度は俺が君を守る番だ!」

 

 堂々とし、そして真っ直ぐな光太郎の言葉。味方には安心を、敵には威圧を与える。事実、カッシーンたちは囲んでいるのに光太郎の気迫に押されて一歩も動けずにいた。

 

「今時珍しいくらい暑苦しい奴だなー。……でも、頼んだぜ? 仮面ライダー」

 

 剛の言葉に光太郎は漢気ある笑みを彼に見せる。そして、カッシーンたちに向き直った時、その顔は悪を許さない戦士の顔付きとなっていた。

 光太郎が今まで動くことが出来なかったのはハッキリとした理由がある。

 地下牢内ではエネルギー源である太陽光を浴びることが出来なかった。それでも少しずつ力を溜め込んでいき、やっとの思いで変身し、ソウゴと共に脱出をすることが出来たが、地上に出た途端、エネルギーが枯渇状態であった光太郎の体に太陽光が降り注いだことで一気にエネルギーが供給されたが、逆に衰弱していた体に強い負担が掛かって動けなくなってしまった。

 だが、動けない間に光太郎は十分に満たされたエネルギーを用いて体を回復させていた。そして今、完全なる変身が成せる。

 光太郎は上半身を右に捻ると同時に左腕を水平に、右腕を垂直に曲げる。顔付近まで近付けた両手は拳を形作っており、握り締める強さで指抜きの皮グローブがギチギチと音を立てる。そこまで拳を強く握り締めるのは悪に対する怒りか、或いは信念の表れか。

 捻っていた上半身を正面に向けると両腕は位置を変え、右拳が腰の横に添えられ、指先まで真っ直ぐな左腕が右斜め上に伸ばされる。

 

「変──」

 

 左腕が大きな弧を描きながら右斜め上から左斜め上へ向きを変える。

 

「──身っ!」

 

 その掛け声と共に両腕で同時に右斜めへと向けられた。

 光太郎の腹部から先に赤い光が放たれるとそれを囲う様に銀色の金属で出来たベルト──エナジーリアクターが出現。中央には力の源となるキングストーンが収められており、それが生み出すエネルギーが光太郎の全身に送り込まれる。

 エナジーリアクターが放つ太陽の光を思わせる眩しい輝きの中で光太郎の体がバッタ男へと変わるが、その表皮を更に頑丈な黒い外骨格──リプラスフォームが覆う。

 光が収まるとそこには漆黒の戦士が立っていた。

 手首、足首、首回り、頭部に入った黄と赤のストライプ。肘や肩などの関節部には筋肉組織が見える。シャッター状の銀色の口部にキングストーンと同じ赤い複眼。胸には銀の点と横に倒したSに似たマーク。

 余剰のエネルギーが各関節部から蒸気となって噴き出す。

 

「仮面ライダー……BLACK!」

 

 自分が何者か、そして敵にはこれから倒す者の名を叫ぶ。

 

「とおっ!」

 

 BLACKの変身にカッシーンたちが動揺している隙にBLACKは前方目掛けて跳躍し、生身の状態で顔を凹ませたカッシーンの顔にもう一度拳を打ち込む。

 今度は凹ませるだけに納まらず、BLACKの拳はカッシーンの頭部を一撃で破砕した。

 頭部を失い、今にも機能停止しそうな状態にあるカッシーンの体を掴むと、他のカッシーンたち目掛けて投げ放つ。

 カッシーンたちの目の前に来た所でそのカッシーンは爆発し、カッシーンたちを怯ませた。

 

「さあ! 今のうちに!」

 

 剛がここから離れる為の時間稼ぎをしてくれたBLACK。剛も本音を言えば彼と一緒に戦いたかったが、カッシーンたちと戦うには剛は非力であり何よりもBLACKの気遣いを無下には出来ない。

 

「負けんなよ!」

 

 悔しさを噛み締め、BLACKに激励の言葉を送るとなるべく迷惑が掛からない場所まで避難する。

 剛が十分安全な場所まで移動したのを見届けたBLACK。そんな余所見をしている彼にカッシーンたちが一斉に三又槍を突き出す。

 

「たあっ!」

 

 後ろに跳び退いてそれを回避するBLACK。下がった場所を予測していた別のカッシーンが着地と共に三又槍で突いてくるが、BLACKは手刀で穂先を払い、そのカッシーンの胴体に横蹴りで反撃を与える。

 衝撃が突き抜け、カッシーンの背中から内蔵されていた機械部品が突き抜けていく。

 

「むっ!」

 

 カッシーンの何体かが背部に収めていたクローユニットを展開し、そこから光弾を発射する。

 BLACKは横に飛び込みながら回避し、着地と共に前転をしてすぐに跳躍出来る体勢に移ると今度は大きくジャンプする。

 カッシーンたちは撃ち落とそうとするが、上手く行かず発射された光弾はBLACKが通った後を通過し外れていった。

 ジャンプ後のBLACKは滑らかな動作で走り出し、カッシーンの一体へ接近すると──

 

「ライダーチョップ!」

 

 キングストーンのエネルギーが右手に集中することで赤熱発光し、その右手刀を払うとカッシーンの胴体は熱したナイフでバターを切るが如く両断される。

 更にそこから跳躍し、もう一体のカッシーンへ飛び掛かるBLACK。カッシーンは咄嗟に三又槍を翳して防御しようとするが、BLACKの手刀は三又槍の柄を簡単に断ち、カッシーンの脳天から入った手刀は胸部まで一気に振り下ろされた。

 右手を引き抜くと二体のカッシーンが爆散する。

 一対多でありながBLACKはカッシーンたちを圧倒していた。しかし、それは当たり前のことと言える。

 力を奪われて弱体化しているBLACKだが、激しい戦いを生き抜いてきたことで得た経験までは奪われていない。

 培ってきた技術がBLACKの姿でも衰えることは無く十二分に発揮される。カッシーン程度ではBLACKの足止めぐらいにしかならない。

 三又槍や光弾を扱う相手に己の手足のみの徒手空拳で戦うBLACK。だが、武器の有無など関係ないぐらいにカッシーンたちを圧倒し、数を減らしていく。

 気付けばカッシーンの数も残り三体となっている。

 BLACKはベルト上で両拳を合わせた後、変身前に見せた両拳を顔の傍に持って来るポーズを取る。

 キングストーン内で生成されたエネルギーがBLACKの全身を駆け巡り、身体能力を高める。

 BLACKが跳ぶ。空中で屈伸した後、両脚を伸ばすという動作を行い、それによって技術による攻撃力の底上げをする。

 

「ライダーパンチッ!」

 

 充填されたエネルギーで赤熱発光する右拳がカッシーンの一体に炸裂。力と技が組み合わさった一撃はカッシーンの体を瞬時に粉砕し、それだけに留まらず飛び散った破片が近くに居たカッシーンの体を貫いて機能停止に追い込む。

 一撃で二体のカッシーンを破壊したBLACKはそこで止まらずまたも跳躍。ライダーパンチの時と同様に空中で両膝を曲げ、力を溜め込むと技の名と共に一気に解放する。

 

「ライダーキック!」

 

 カッシーンに赤熱する右足が触れた瞬間、カッシーンの体は消し飛ぶ様に粉々になった。バッタ男の時とは比較にならない破壊力を見せつける。

 全てのカッシーンたちを倒したBLACK。取り敢えずの危機が去ると身を隠していた剛が駆け寄る。

 

「すっげぇじゃねぇか!」

 

 BLACKの強さに痺れた剛は笑いながらBLACKの肩を叩く。

 

「ああ。君やソウゴのお陰でここまで戦える様になった。ありがとう!」

 

 感謝の意と共に握手を求める手を差し出す。

 

「お前……熱い奴って言われない?」

 

 BLACKの直球過ぎる感謝に剛は照れ臭さを感じながらも握手に応じ、その手を握る。

 数秒間程の握手を交わした後、手を離す。

 

「さあ! ここから離れよう! 俺が君を安全な場所まで護衛する!」

「待った」

 

 BLACKの提案を制止する剛。

 

「ここからは俺一人でいい」

「ダメだ! まだ敵は居る! いつ襲われるか分からない!」

「それでも、だ。あいつらは親玉を倒さない限り無限に湧く。だったら、とっとと親玉を倒す方がいい。お前はソウゴの手助けに行ってくれ」

「しかし……!」

 

 今度は即座に却下は出来なかった。剛の言う通りこの戦いを終わらすにはクォーツァーの王であるSOUGOを倒すことが最も早い。だが、危険な場所に剛を置いて行くことはBLACKを躊躇わす。

 

「いいから行けって。自分の身は自分で守れる!」

 

 剛はそう言い、カッシーンから奪った三又槍を見せる。

 

「それに、俺自身覚えていないが俺も仮面ライダーだったらしいからな……仮面ライダーだったら仮面ライダーの言う事を信じたらどうだ?」

 

 BLACKに余計な気遣いをさせない為にわざと軽い口調で言う。その気遣いはBLACKにも伝わり、彼は裡にある感情を押し殺す様に拳を強く握り締めた。

 

「必ず……必ず無事でいてくれ……!」

「ああ、分かったよ」

 

 ブラックは決断し、ソウゴの許へ向かって走り出す。

 剛はその背を見つめながら、自分の白いパーカーを指先で摘まむ。

 

「黒も悪くないな」

 

 

 ◇

 

 

 ソウゴは走る。全力で走る。クォーツァーの計画を阻止する為に上空で待機しているダイマジーンの真下に向かって。

 

(ウォズ……!)

 

 ソウゴは走りながら、またあの時の喪失感を覚えていた。ゲイツに続きウォズまでも何処か遠くへ行ってしまった様な感覚。

 二人に何が起こったのか。それを知るのが怖くてソウゴは喪失感を吹き飛ばす為に走り続ける。

 不思議なことに走るソウゴを阻むものは何一つ現れ無かった。あれだけいたカッシーンたちも追ってはこず、助けを求める人々の声も聞こえない。

 ソウゴはまるで導かれる様にある場所へと辿り着いていた。

 

「よお」

 

 古墳の形をした玉座。そこにクォーツァーのメンバーを並ばせ最初に出会った時の様にその男はソウゴを見下しながらそこに座っていた。

 

「いつまでコソコソと逃げ回っているのかと呆れていたが、ようやく俺の前に姿を現したな、替え玉」

 

 クォーツァーの王であるSOUGOは走り続けて息を乱しているソウゴを嘲笑する。

 

「ウォズから聞いたよ……あんた、俺たちの時代を無かったことにして全部創り直すつもりなんでしょ?」

 

 ソウゴの口調は静かなものであったが、言葉の内には炎の様な激情が籠められており、それが外に出るのを必死に押さえていた。

 

「全く……お喋りな奴だな」

 

 ウォズから計画の内容が洩れていたことに不快感を露にするSOUGO。こうなることは分かっていたが、ソウゴに全てを話すということは完全に心が移っていたことを示しており、不快感はそれに向けられたものであった。

 

「まあ、お前の言う通りだ。平成に関わるものを全てリセットし、平成ライダーも破壊する。そしてその後に俺達が新たな平成を創造する」

「……何でそんなことを?」

 

 心の底から思った疑問であった。何故そんなに簡単に全てを無かったことに出来るのか。ソウゴにはまるで理解が出来なかった。

 

「お前たちの平成って……醜くないか?」

 

 最初その言葉の意味を理解出来ず、ソウゴは言葉を失ってしまう。

 SOUGOは構わず言葉を続ける。

 

「まるで凸凹で石ころだらけの道だ。全くもって見苦しい」

「醜い……? 見苦しい……?」

 

 ソウゴは言葉の意味を呑み込み始めるとその目付きは鋭くなり、掌に爪が食い込む程拳を握る。

 

「俺が平成という道を、綺麗に舗装し直してやろうってことだ」

 

 当然の様に傲慢に言い放つSOUGOにソウゴの怒りが爆発する。

 

「凸凹の道で何が悪い! 皆一生懸命になって作り上げた道だ!」

「俺が気に入らなければ無意味だ!」

「ふざけるな! あんたも王様だろう!? 世界を良くして皆を幸せにするのが王様だろ!?」

「違う。世界も幸福も全ては俺が創り上げる。その中に全てが囲われてこそ美しい人生と時代が約束される」

 

 二人の掲げる王道は決して交わるものではない。ソウゴの王道が献身ならばSOUGOが掲げる王道は支配。平行線どころの話ではない。相反するものは反発し合うしかないのだ。

 ウォズはSOUGOとは決して戦うなと忠告していた。しかし、SOUGOのこの言葉を聞いて黙っていられる筈が無い。

 

(ウォズ、ごめん……!)

 

 SOUGOはソウゴが王道を貫く上で決して避けては通れない壁であると悟った。その壁を突き破るには戦うしかない。

 ソウゴはジクウドライバーを装着する。SOUGOはそれを見て一笑し、玉座から立ち上がると共に彼もまたジクウドライバーを身に付けた。

 

『ジオウ!』

『グランドジオウ!』

 

 起動されるジオウライドウォッチとグランドジオウライドウォッチ。グランドジオウライドウォッチの存在にSOUGOは一瞬だけ眉を動かしたが、すぐに無かったことにし自分もまたバールクスライドウォッチを起動した。

 

『バールクス!』

 

 ほぼ同時にライドウォッチをジクウドライバーへセットした両者は最後に己の意思をぶつけ合う。

 

「俺は世界を良くする為に皆の幸せの為に戦う! 最高最善の魔王として!」

「なら俺は至高にして究極の大魔王だ。──全てをリセットし、新たに創造する!」

 

 王としての矜持を衝突させた後、開戦の言葉を上げる。

 

『変身!』

 

 ソウゴを見守る様にして空中に投影される歴代の平成ライダーたちの像。

 

『グランドターイム!』

 

 それらの像はレリーフと化し、黄金に彩られたジオウへと集っていく。

 

『祝え! 仮面ライダー! グ・ラ・ン・ド! ジオーウ!』

 

 平成ライダーたちのレリーフを外装として纏いグランドジオウへと変身するソウゴ。

 

『ライダーターイム!』

 

 薄羽と特殊な形の針で飾られた多色の時計盤型のエネルギー。それが発する力は光に変わり、その光の中で変身していくSOUGO。真紅の『ライダー』の文字が仮面へ填まり込む。

 

『仮面ライダーバールクース!』

 

 平成ライダーたちの象徴と相対するのは、それを否定する者──仮面ライダーバールクス。

 グランドジオウはすぐさまサイキョージカンギレードを装備して構えるが、バールクスの方は武器を取り出すどころか構えすらしない。

 

「俺とお前の格の違いを教えてやる。特別サービスだ。最初の一撃は避けないでやろう」

 

 バールクスの小馬鹿にした発言。グランドジオウの力を格下にしか見ていないことに怒りを覚える。

 

「だったら遠慮なく!」

『サイキョー! フィニッシュタァァイム!』

 

 サイキョージカンギレードから天を衝く程の光刃が伸びる。グランドジオウはそれだけに止めず──

 

『フィニッシュタァァイム! グランドジオウ!』

 

 グランドジオウライドウォッチの力もサイキョージカンギレードへ加える。天を衝く光刃は宇宙にすら到達しそうな程の長大な刃と化し、スパークの様な光を放っている。

 これにはバールクスの戦いを見守ろうとしていたクォーツァーのメンバーも動揺し、ざわめき出す。

 

「静まれ」

 

 そんなメンバーを一言で黙らすバールクス。バールクスは光刃を目の当たりにしてもその場から一歩も動いていない。

 

『オールトゥエンティー! タイムブレーク!』

『キング! ギリギリスラッシュ!』

 

 極限まで高められた力が、バールクスへと振り下ろされた。まるで捌きの様に光の柱が落ちて来るが、バールクスは無駄な力を一切省いた様な軽い動作で右手を上げる。

 そして──

 

「そん、な……!」

 

 グランドジオウは驚愕に満ちた声を出し、それとは対象的にクォーツァーのメンバーは歓声を上げる。

 グランドジオウはウォズの言葉を思い出していた。

 

『バールクスは平成ライダーの天敵だ。彼には全ての平成ライダーの力が通用しない』

 

 その現実をグランドジオウは目の当たりにする。

 グランドジオウが渾身の力で振るったサイキョージカンギレードの斬撃は、バールクスの二本の指で挟まれ軽々と止められていたのだ。

 

「『ジオウサイキョウ』か」

 

 バールクスは剣身に浮かんだ文字を嗤う。

 

「覚えておけ、替え玉」

 

 指先に力が加わった途端、光刃に無数の亀裂が発生する。

 

「俺が最強だ」

 

 バールクスの言葉が真実であるかを表すかの様にサイキョージカンギレードの光刃は粉々に砕け散った。

 

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