仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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反撃回となります。


Over Quartzer その21

 振り下ろす斬撃と斬り上げる斬撃。その二つが衝突した時、互いの武器が弾かれるのではなく世界が弾かれた。

 

「くっ!」

 

 地を捲り上げる衝撃波から身を守るRX。SOUGOの玉座が置かれてあった古墳風の遺跡は地を這う衝撃波によって粉砕されていき、二人の戦いを見守る筈であったクォーツァーのメンバーらは慌てて移動し、安全な場所まで離れざるを得なかった。

 衝撃波は大地だけでなく空に向かっても伸びて行き、武器の衝突時点で二人の頭上にあった雲が全て消し飛ばされていた。

 たった一合の打ち合いによりジオウオーマフォームとバールクスを中心にして周囲のものが全て吹き飛ばされ、一瞬で荒地となってしまう。

 

「何て激しい力の衝突なんだ……!」

 

 二人の攻撃の余波を浴びたRXは流石に無傷であったが、まだ探り合い程度の初撃だと理解しているので底知れぬ両者の力に戦慄する。

 このまま鍔迫り合いに移行するのかと思いきや、ジオウオーマフォームはバールクスの側面に瞬間移動し、光刃が伸びるサイキョージカンギレードを振るう。

 前は指二本でそれを受け止め、その上で折ってみせたバールクスだったが、『創世』のルールを覆された以上の同じ真似をすることは出来ず、身を低くして回避という選択するしかなかった。

 一度目は易々と防いだ攻撃を二度目は恐れをしたかの様に身を縮まらせて避ける。バールクスにとって屈辱の極み。

 バールクスの頭上を光刃が通過していく。瞬間移動と攻撃をほぼ同時に行ったにも関わらず、バールクスは初見で反応してみせた。対平成ライダーの能力は封じたが、バールクス自身のスペックは侮ることは出来ない。

 バールクスは低くしていた体勢から体を伸ばすと同時に長剣で斬り上げる。ジオウオーマフォームはその場から三歩後退する。振り上げられた長剣はジオウオーマフォームの眼前を通り過ぎて行く。

 紙一重の回避。しかも、偶然ではなく意図した上での見切りであった。

 軽々と避けられたことに苛立ちを覚えながらもバールクスはもう一歩踏み、ジオウオーマフォームの胴体を狙って長剣を払う。下から振り上げられたサイキョージカンギレードの剣身が長剣の刃と接触。ジオウオーマフォームはそのままサイキョージカンギレードを振り抜く。

 刃と刃を交えたサイキョージカンギレードと長剣が両者の手から離れ、宙に舞う。無手となるジオウオーマフォームとバールクス。バールクスはこれをジオウオーマフォームの挑戦と受け取る。得物ではなく己の拳で強さを実証してみせろというバールクスにとっては生意気を通り越して殺意しか湧かない挑発であった。

 

「ふん!」

 

 二人の武器が舞う真下でバールクスは突きを繰り出す。ジオウオーマフォームは手の甲でバールクスの拳を簡単に弾く。しかし、バールクスは防がれることも想定しており、敢えて弾かれた時の流れに逆らわず、軌道を外れていく動きを利用し、肘を曲げて刃状の突起でジオウオーマフォームを斬り付け様とした。

 だが、その動きはジオウオーマフォームにとっても予想通りのものであり、ジオウオーマフォームは黄金の光を宿す掌を突起に翳すと平行に動かす。すると、最初から決められたルートをなぞる様にバールクスの肘はジオウオーマフォームの掌の動きに合わせて横へ滑って行き、当たることなく空振りさせられてしまう。

 緩やかな掌の動きに反し、相手を屈服させる様な力の流れ。このままジオウオーマフォームの力に屈するかと思いきや、それを許さないバールクスのプライドが体の動きを強引に止める。

 流れに沿おうとした腕に力を込める。それに連動していた足腰の動きも筋肉や骨を使い、流れを断ち切る。

 ギチギチという音がジオウオーマフォームの耳にも届く。無理矢理体を止めたバールクスの肉体の悲鳴であった。

 従うぐらいなら自傷も厭わないバールクスの高過ぎるプライド。しかし、そのプライドによってバールクスは踏み止まり、反撃の前蹴りをジオウオーマフォームの腹部へ突き刺す。

 だが、バールクスが止まったと同時にジオウオーマフォームも動いており、鏡合わせの様に彼もまた前蹴りを繰り出しており、バールクスの腹部にめり込む。

 互いの蹴りによって弾かれる両者。蹴り飛ばされながらも二人は頭上へ手を伸ばす。糸に引かれる様に空中から引っ張られ、二人の手の中へ収まるサイキョージカンギレードと長剣。

 息つく間もなくバールクスは長剣を突き出す。ジオウオーマフォームの額を狙った最速の一突き。バールクス自身も完璧と酔い痴れてしまいそうな程に全身駆動を用いた渾身の一刺しであり、吸い込まれる様にジオウオーマフォームの額にその剣先を埋める──かと思われた刹那、まるで待ち構えていたかの様に翳されたサイキョージカンギレードの側面がそれを防ぎ、押し返す。

 直前まで当たると思っていたバールクス。渾身の一撃が避けられたせいでジオウオーマフォームに対して無防備な体勢を晒してしまう。

 

「はあっ!」

 

 繰り出されるのはサイキョージカンギレードによる突き。意趣返しの一撃が胴体の中心を狙って真っ直ぐと突き進むが──

 

『バイオライダー!』

 

 バールクスが液体化し、上半身が真っ二つに割れることでサイキョージカンギレードの突きは空を切ってしまう。

 バールクスはそこから全身を液体化させ、ジオウオーマフォームから離れながら空中を飛翔。

 

『ロボライダー!』

 

 液体化の状態から起動されるロボライダーライドウォッチ。すると液体の一部が触手の様に伸び、それがバールクスの手となる。半透明の手に握られているのは同じ半透明のボルティックシューター。それ一丁ならまだ驚くことは無かったが、それがタコやイカの様に八、十と増えたのなら話は別である。

 

「ボルティックシューターの複製まで……何という能力だ……!」

 

 元の持ち主であるRXも驚いていたが無理も無い。二つの能力を組み合わせたことによる相乗効果により、液体化した体を利用しての武器の複製など、目の当たりにすれば誰もが驚愕する。

 液体化しているバールクスは全てのボルティックシューターから光弾を発射。十を超える光弾がジオウオーマフォームやRXを狙うが──

 

『覇王斬り!』

『ギリギリスラッシュ!』

 

 ジオウオーマフォームは瞬時にサイキョージカンギレードを分割してジカンギレードとサイキョーギレードに戻すと、二刀を振るい光刃を飛ばす。

 光弾はボルティックシューターの光弾を切り裂く、もしくは相殺し光弾をジオウオーマフォーム達まで届かせない。

 光弾を切り裂いた光刃がバールクスに触れるが、液体となっているバールクスの体を通過してしまう。

 

「光太郎! ここは俺に任せて他の人達を!」

 

 光弾を撃ち落としながらジオウオーマフォームはRXへ声を飛ばす。

 

「しかし!」

 

 今もカッシーン達は平成生まれの人々を狙っている。RXの優れた聴力にも逃げ惑う人々の悲鳴が聞こえていた。

 それを守るのにRXの力は必要となる。だが、ジオウオーマフォームを一人残してバールクスと戦わせるのはRXも躊躇してしまう。

 

「大丈夫! 俺を信じて!」

 

 長く迷えばその分だけ助からない人々が増える。故にRXは決断する。

 

「──分かった! 頼むっ!」

 

 傍から聞けば即断即決と思うだろう。しかし、ジオウオーマフォームは極短い時間の中でのRXの葛藤を分かっていた。

 RXはソウゴが戻って来るのを信じてバールクスを足止めした。ならば、自分に出来ることは今度はRXをこの場から送り出すことである。

 RXはジオウオーマフォームやバールクスに背を向けて走り出す。その無防備な背中にバールクスは容赦無くボルティックシューターの引き金を引いた。

 同時に発射された光弾がRXを狙うが──

 

「何っ!?」

 

 バールクスの体を通り抜けてきた七色の光刃とマゼンタの光刃がそれらを打ち落とす。先程バールクスを通過した光刃が、ジオウオーマフォームの時間を巻き戻しによって戻され、バールクスの光弾と相殺になったのだ。

 RXは一切振り向かず、速度も緩めることなく走り去っていく。そこにはジオウオーマフォームが背中を守ってくれるという無言の信頼が込められていた。

 次弾を発射しようとした時には既にRXの姿は無い。絶好の機会を邪魔され、まんまとRXを逃してしまったことへの怒りをジオウオーマフォームへと向けるが、バールクスの殺気などそよ風の様に受け流してしまう。

 

『W!』

 

 何処から響き渡る声。ジオウオーマフォームの隣に緑のつむじ風が吹く。つむじ風が吹き抜けた後には仮面ライダーが一人立っていた。

 緑と黒の体色。それを中央で分ける煌めく装甲。Xの意匠が施された仮面。仮面ライダーWの最強フォームであるサイクロンジョーカーエクストリームである。

 

「──それがどうした?」

 

 サイクロンジョーカーエクストリームの登場に対し、バールクスは白けた反応を示す。平成ライダーの力が通じる様になってもバールクス自身のスペックは顕在である。Wの最強フォームもそれなりの力を持っていることは知っているが、自身と比べれば脅威には感じない。

 オーマジオウの力を宿してやったことが、最強フォーム状態の平成ライダーを召喚した程度なら驚きに値しない。

 

「何にも見えてないね?」

「何だと……? どういう意味だ?」

 

 ジオウオーマフォームの言葉にバールクスはつい聞き返してしまう。

 

「そうやって見下していたら、痛い目を見るって意味」

「──戯言だな」

 

 バールクスはその一言で切って捨てる。

 

『エクストリーム! マキシマムドライブ!』

 

 サイクロンジョーカーエクストリームはドライバーにセットしてあるエクストリームメモリを閉じ、再び開く。エクストリーム中央から緑と黒の色が混じった竜巻が発生し、バールクスを呑み込んだ。

 

「やはり大したことはないなっ!」

 

 竜巻に閉じ込められるバールクスであったが、液体化している体にはダメージは通らない。風圧で変形しそうになるが少し力を加えれば押さえられ、何の問題も無い。

 バールクスは竜巻の内側からボルティックシューターを連射し、文字通り風穴を開けて脱出を試みようとするが──

 

「──うん?」

 

 ──バールクスの目の前を落ちていく半透明の物体。それはボルティックシューターを握るバールクスの手であった。

 

「何だと!?」

 

 気付かない内に攻撃されたことに驚くバールクス。すると、またもバールクスの腕が一本斬り落とされた。

 

「くっ!」

 

 液体化している為、ダメージは皆無であったが斬り落とされた部分は竜巻に巻き込まれ、水滴の大きさまで分解されて彼方へ散っていく。そこまでサイズを変えられてしまうと、例え体の一部であってもバールクスの操作が及ばなくなる。

 

「何処だ……!?」

 

 反応が遅れることにおかしさを感じる。バールクスの能力なら相手がどんな速度だろうと反応出来る自信があった。攻撃された後に攻撃に気付くなど有り得ない。何かからくりがあると見て間違いない。

 次なる攻撃こそ見極め様と思っていた矢先、ボルティックシューターを持つ腕が全て同時に切断される。

 切断された腕の一部は取り込むことは出来たが、残りは風に飛ばされて回収不可能となってしまった。

 

(このままでは不味いか……!)

 

 ある程度なら減っても問題は無いが、そろそろそのある程度を超えようとしている。見えない斬撃、強烈な竜巻。それぞれ単独ならばバールクスにとって脅威でも無かったが、組み合わせることで厄介な攻撃になる。

 

(ギリギリまで見極め、攻撃の正体を──)

 

 そう考えた瞬間、液体状のバールクスの体が爆ぜた。飛沫となった体の一部が竜巻によって吹き飛ばされる。

 

「なっ!?」

 

 またも攻撃の瞬間は見えなかったが強烈な一撃を打ち込まれたというのが感覚的に分かる。

 そして、この時バールクスは視界の端にあるものを捉えていた。それは赤、黄、緑の残像。

 反応出来ない動き。同時に落とされた腕。三色の残像。その三つから一つの答えが導き出される。

 

「そういうことか……!」

 

 バールクスは心の内で悔しさで歯嚙みする。もう少し早く気付けたら反撃する方法を思いついたかもしれない。しかし、先程の一撃によってバールクスの体は限界寸前まで減らされており、このままでは命に係わる。

 バールクスは仕方なく能力を解除し、通常形態と戻る。これによってもう液体化した体は減らされることは無いが、バールクスの心は屈辱で満たされていた。これが相手の狙いだと分かっていたので。

 

『スキャニングチャージ!』

 

 上空から聞こえる音声。バールクスの頭上に居るのはオーズであったが、その姿は通常時のものとは異なる。

 同時にバールクスを閉じ込めていた竜巻が上昇していき、バールクスの視界が晴れる。竜巻によって空中へと運ばれており、そのまま投げ出される形となった。

 赤い翼の広がったタカの頭部。より長く、鋭くなったトラの爪を装備した胴体。鮮やかな緑が増え、プロテクターが増えたバッタの脚。

 オーズの基本フォームであるタトバコンボの各生物要素をより強調した姿。それは、未来の技術によって作られたコアメダルで変身したオーズスーパータトバコンボ。

 全てが腑に落ちた。スーパータトバコンボの動きを追えなかったのも無理は無い。スーパータトバコンボは時を止める能力を秘めている。バールクス自身にも時間に干渉する能力を持っているが、時間を止める原理が異なっているせいで気付くのに遅れてしまった。

 スーパータトバコンボはコアメダルの能力を引き出し、背中から赤い光翼を生やし、脚部をバッタの足に変形させ、空中を跳ねる。更に高度を増した所で赤翼により急降下する。

 バールクスはギリギリまで液体化によりスーパータトバコンボのキックを躱すかどうか考えていたが、地上から別のプレッシャーを感じ、視線を下げた。

 バールクスから離れた竜巻が地上に居るサイクロンジョーカーエクストリームを呑み込み、再びバールクスへ向かっていた。

 その竜巻の中心にサイクロンジョーカーエクストリームがいるのだが、吹き荒れる風の中でサイクロンジョーカーエクストリームの姿が変化する。

 背中からは風車を連想させる三対の薄羽が展開され、体の中央で煌めいていた結晶の様な装甲が金に色を変えた。

 仮面ライダーWが変身に用いるサイクロンメモリ、ジョーカーメモリ、そこにエクストリームメモリが加わることで極限まで能力が高められたフォーム──サイクロンジョーカーゴールドエクストリームとなったのだ。

 サイクロンジョーカーゴールドエクストリームとスーパータトバコンボに挟まれる形となっているバールクス。どちらのスペックもバールクスの頭の中に入っているが、数値以上の力を出す不確定要素もある。

 万が一の場合を考え、バールクスは止むを得ずバイオライダーの能力を解除。液体の体から実体へと戻る。

 

『ロボライダー!』

 

 そして、ロボライダーライドウォッチを再起動。攻撃の為では無く力と防御を高める。

 サイクロンジョーカーゴールドエクストリームは三対の羽根を胸の前に一旦畳み、それを広げることで急加速。スーパータトバコンボは降下の際にOの字に似た光の輪が出現し、それを潜りながら脚部の発光を強めていく。

 

「来いっ!」

 

 逃げもせず真っ向から受け止める選択を選んだバールクスに上下からのライダーキックが炸裂する。

 サイクロンジョーカーゴールドエクストリームのキックを右腕で防ぐとオーロラの様な光が空間に波の様に広がっていく。

 スーパータトバコンボのキックが左腕に命中すると同時に、潜り抜けてきた三つの輪が横並びになりOOOという光が発生。

 

「ぐ、うおおおおおっ!」

 

 挟み込む必殺の一撃。大抵の敵ならばまず間違いなくこの時点で終わりであろう。最強を自負するバールクスでさえ無意識に絞り出す様な声を上げて攻撃を受け続けている。

 

「──はああああああっ!」

 

 バールクスのライドウォッチ及びジクウドライバーから発せられる光、即ちキングストーンフラッシュがサイクロンジョーカーゴールドエクストリーム、スーパータトバコンボに浴びせられる。

 神秘の力に対抗出来るのは、やはり神秘の力であり、バールクスのキングストーンフラッシュを至近距離で受けた二体の仮面ライダーは、キングストーンフラッシュの光の中に溶け込む様にして消えてしまう。

 両腕に伝わる言葉では表現出来ない攻撃から解放されたバールクスはそのまま地面に降りるが、すぐに膝を突いてしまった。

 想像していた以上にダメージが大きい。『創世』の力が万全だったのなら無効化出来ていた攻撃だが、ジオウオーマフォームのせいでまともに受けてしまった。

 無防備な姿を晒してしまったバールクスはジオウオーマフォームの攻撃を警戒するも、とっくにあってもおかしくない攻撃がまだ来ない。

 不審に思いジオウオーマフォームが居た場所を見るが、そこに姿は無い。視線を動かして探すバールクス。間も無くしてジオウオーマフォームを発見する。

 ジオウオーマフォームはバールクスを無視してショートワープを繰り返しながら空を昇っていた。目指す先にあるのはダイマジーン達が作り出す異空間。バールクスよりもクォーツァーの計画の要である異空間を破壊することを優先していた。

 並んで輪を作っているダイマジーン達の一体でも破壊すれば、平成生まれの人々のみ吸い上げる異空間は消滅する。人々の安全を最優先しての行動であった。

 当然ながらバールクスからすれば面白くない行動である。計画の邪魔は勿論のことだが、王である自分を無視するなど黙って見ていられない。

 

「させるかっ!」

 

 バールクスが空に向かって手を翳す。ダイマジーン達が作り上げる異空間が上昇していく。

 

「行けっ!」

 

 続いて指揮の様に腕を振るう。すると、ジオウオーマフォームを追って無数の影が地上から飛び立つ。それはカッシーン達であり、平成生まれの人々を捕えるのを止めてジオウオーマフォームの妨害へと向かっていた。

 バールクスの指令で地上に居た三分の二が飛行ユニットを展開して空へ飛んで行く。元から大量の数が居て、後から幾らでも補充出来る兵士である。多少捕獲要員が少なくなってもどうにでもなる。

 大量のカッシーン達が群れ為して一斉に飛行する光景は羽虫の大群を彷彿とさせ、見ている人間にとっては鳥肌や生理的嫌悪を覚える光景であった。

 短距離の瞬間移動で離れていくダイマジーン達を追っていたジオウオーマフォームであったが、自分を追って来ているカッシーンの群に気付く。

 一旦瞬間移動を止め、空中に止まるジオウオーマフォーム。その背部に時計盤が浮かび上がり、マントの様にしていた長針と短針が時計盤を回る。

 止まったジオウオーマフォームにカッシーン達が群がろうとして一定の距離まで近付いた時、先頭に居たカッシーンの黄色のボディが瞬く間に赤茶色に染まり、飛行ユニットが機能停止する所か接続部から捥げ、カッシーン自体も動かなくなり地面へと落下していく。

 それを皮切りに後続のカッシーン達も変色して墜落していった。

 ジオウオーマフォームは時を操る能力によりカッシーン達の時間を急速に進めているのだ。クォーツァーによって製造された機械兵士、耐久年数も百年や二百年では済まない。つまり、ジオウオーマフォームは一瞬でカッシーン達の時間を数千年以上進ませ、錆びさせ、劣化させ、朽ちさせた。

 時の王者に相応しい、凄まじさと恐ろしさを感じさせる能力である。

 しかし、自らが朽ち果てようともカッシーン達はワラワラとジオウオーマフォームへ群がろうとする。彼らには恐怖心は無い。王の忠実なる僕というプログラムのみで行動し、命を投げ捨てることも辞さない兵士達なのだ。

 カッシーン達の手がジオウオーマフォームに届くことは決していないが、ジオウオーマフォームがカッシーン達を相手すればその分異空間を閉じるのが遅れる。

 地球の外側まで離れようとするダイマジーン達を追うことを優先し、ある程度数を減らすと再びショートワープで高く昇って行く。

 それを追跡するカッシーン達。何とかして行く手を阻もうとする。

 カッシーン達は見落としていることがある。確かに時の王者としての能力は強力だが、ジオウオーマフォームはそれよりももっと信頼している力がある。

 彼は時の王者であると同時に平成ライダーの王でもあるのだ。

 

『フォーゼ!』

 

 銀色の流星がカッシーン達の群れを真っ二つに切り裂かれていく。

 青とピンクのラインが入ったロケットを両腕に付け、星が散りばめられた紫のボディに金色のプロテクターを付けた青い目のフォーゼが高速で突き抜ける。

 恋と友情を一つに重ねたフォーゼの究極の形態──メテオなでしこフュージョンステイツは、立ちはだかるカッシーンらを全て粉砕する。

 メテオなでしこフュージョンステイツが音速で突き抜けた後、遅れて粉砕されたカッシーン達が爆発し、群れが二つに分かれる。

 メテオなでしこフュージョンステイツは、その片方の群れに両腕のロケットを飛ばし、次々とカッシーンを撃墜していくが、推進力となるロケットを失ったせいでメテオなでしこフュージョンステイツもまた自由落下し始めた。

 

『ウィザード!』

 

 落下していくメテオなでしこフュージョンステイツが空中で止まる。彼の胴体にはドラゴンの尾が巻き付いていた。

 金剛石の輝きを放つウィザード。その背中にはドラゴンの翼、両腕には爪、腰部からは尾が生えている。

 ウィザードのインフィニティースタイルに彼の力の根源であるウィザードラゴンが加わることで得た姿──インフィニティードラゴン。

 インフィニティードラゴンはその場で回転して勢いを付けると、尾を巻き付けていたメテオなでしこフュージョンステイツを投げ放つ。カッシーンの群れに接近していくが、そのタイミングで発射していた二つのロケットが両腕に戻り、カッシーンの群れに大きな風穴を開けていく。

 インフィニティードラゴンもその後を追って飛翔し、二つに分かれているもう一つのカッシーンの群れへ飛び込んでいくと、その爪と尾、翼で近付く者全てを撃破していく。

 二人のライダーはカッシーンの密集を無傷の状態で通り抜け、最初の時から三分の一に数を減らしたカッシーン達を更に高い位置から見下ろす。

 

『NADESHIKO』

『METEOR』

『DRILL』

『ON』

 

 ドライバーにセットされている三つのアストロスイッチを起動。メテオなでしこフュージョンステイツの左足にエネルギーが物体したドリルが装着される。

 

『チョーイイネ! フィニッシュストライク! サイコー!』

 

 爪を一旦解除し、五色の宝石とドラゴンの意匠で飾られた金の指輪をドライバーに翳すインフィニティードラゴン。インフィニティードラゴンの前方に赤く輝く魔法陣が出現する。

 メテオなでしこフュージョンステイツがロケットを噴射する。同じタイミングでインフィニティードラゴンが魔法陣の中へ前方宙返りをしながら飛び込むと、インフィニティードラゴンの右足にドラゴンの頭部が出現した。

 噴射する炎の勢いは爆発に等しく、メテオなでしこフュージョンステイツの上空になった雲がその衝撃波だけで消し飛ぶ。それが生み出す速度もまた脅威の一言であり、一瞬にして最高速度に達したメテオなでしこフュージョンステイツは、流星の如くカッシーンの群れを貫き、触れるものは跡形も無く、触れていなくとも余波だけで粉々にする。

 メテオなでしこフュージョンステイツが物理的な力で加速するのなら、インフィニティードラゴンは魔法の力により時間干渉することで加速。回避する暇も与えず、右足のドラゴンがカッシーンの群れに喰らい付くと同時に全身を錐揉み回転。インフィニティードラゴンが通過していくと数多のカッシーンらが爆散していく。

 

「おのれぇ……!」

 

 大量のカッシーンがたった二人のライダーに全滅させられ、その上こうなる事が最初から分かっていた様にジオウオーマフォームは振り向きもせずにダイマジーン達を追っていく姿を見せられ、バールクスは腸が煮えくり返る思いであった。

 こうなれば自分が直接ジオウオーマフォームを追うしかないと考えた矢先──

 

『鎧武!』

『ドライブ!』

『ゴースト!』

 

 ──呼び出される三人のライダー。その姿を見てバールクスの動きが止まった。

 ドライブの頭部型のアームズを鎧として纏う鎧武ドライブアームズ。

 オレンジに似た三度笠を被る橙色姿のドライブタイプフルーツ。

 パーカーを被っている以外ほぼエグゼイドそのものであるゴーストエグゼイド魂。

 枠を超えて交差したことで異なるライダーの力をその身に宿したライダー達がバールクスの前に立ち塞がる。

 

「何て姿だ……」

 

 バールクスは三人の仮面ライダーを見て嫌悪と共に吐き捨てる。

 ドライブアームズはハンドル剣を、タイプフルーツは無双セイバーと大橙丸を、エグゼイド魂はガンガンセイバーを構え、一斉に掛かる。

 

「これだから平成ライダーって奴は!」

 

 本来ならばジオウオーマフォームを優先すべきだが、バールクスの敵意は既に三人のライダーに向けられている。

 急加速と共に突っ込んで来たドライブアームズのハンドル剣を手刀で弾き、正拳で胸の突く。

 

「整合性も繋がりも説明も無く勝手に交わる!」

 

 無双セイバーと大橙丸の柄頭を繋げ、ナギナタモードにした武器を振り回してくるタイプフルーツ。その斬撃を避けてタイプフルーツの胴体に中段蹴りを打ち込む。

 

「それが醜いって言うんだよっ!」

 

 本物のエグゼイドの様に周囲を跳び回るエグゼイド魂。バールクスはその動きに翻弄されることなく目で追う事すらしない。

 エグゼイド魂がバールクスの背後に回り込み、ガンガンセイバーを払おうとした時、バールクスはそれよりも先にエグゼイド魂の首を掴み、持ち上げる。

 

「紛らわしいんだよ! お前らは!」

 

 あるべき枠から解き放たれ、本来ならば交わる事の無いものが交わることで生まれる異なる世界を結び付ける仲間の証とも言うべき姿も、バールクスからすれば醜悪の体現、歪さの証明、不合理の具現化に過ぎない。

 目障りだと言わんばかりエグゼイド魂の首を絞め、倒そうとするが──

 

「むっ!」

 

 ──するりとエグゼイド魂の本体であるゴーストが纏っていたパーカーを脱ぎ捨てる。バールクスの手に残るのはエグゼイド魂のパーカーゴースト。

 抜け出たゴーストを掴まえ様とした時──

 

『カイガン! ノブナガ! ヒデヨシ! イエヤス!』

 

 ゴーストは新たなパーカーゴーストを呼び出し、纏っていた。その名は──

 

『果たすのはいつ? テンカトウイツ!』

 

 金色のパーカーの頭部、両肩に表情の異なるホトトギスの意匠。仮面には武将らしい髭のマークが描かれている。三人の英雄の魂を一つにしたゴーストテンカトウイツ魂。

 

『ダイカイガン! ノブナガ! ヒデヨシ! イエヤス!』

 

 テンカトウイツ魂はバールクスの懐に既に潜り込み、刀身から赤、青、黄の光を放つサングラスラッシャーとディープスラッシャーの二刀流を押し当てていた。

 

『オメガドライブ!』

 

 X字に斬られるバールクス。

 

「ぐっ!」

 

 テンカトウイツ魂はその場で体を回転させ、今さっき斬り付けた箇所に同色の光を纏わせた右回し蹴りを打ち込んだ。

 

「がはっ!」

 

 流れる様な連続攻撃に呻くバールクス。だが、平成ライダー達の反撃はまだ終わらない。

 

『エグゼイド!』

 

 またも呼び出される平成ライダー。バールクスの視界の先には二体のエグゼイド一体のエグゼイド。

 腕、両肩に付けられた白い装甲。胸部には虹色の発光ゲージ。腰回りにはエグゼイドカラーのローブが追加されている。顔面には顔の大きさの半分以上を占めるVRのゴーグルに似せた意匠があった。

 エグゼイドクリエイターゲーマーは、ゲーマドライバーにセットされていた変身アイテムであるマイティクリエイターVRXガシャットを引き抜き、それをコントローラーにして空中に何かを描き始める。

 一刻も早く止めるべきだと思うバールクス。ここは様子を見て動かないべきだと考えるバールクス。

 クリエイターゲーマーは空中にジグザグの模様を描く。それはデフォルメされた雷であり、クリエイターゲーマーがガシャットを絵筆の様に払うと一つだけであった絵が無数にコピーされる。

 クリエイターゲーマーがガシャットを突き付けると描かれた雷は本物と変わらない速度で奔り、本物と同じ衝撃をバールクスに与える。

 

「あぐあっ!」

 

 一瞬で無数の雷に貫かれるバールクス。その体からは白煙が昇っていた。

 クリエイターゲーマーが再びガシャットで何かを描き出す。

 今度こそ止める為に動くバールクス。やはり、すぐに動くのは危険と判断して動かないバールクス。

 クリエイターゲーマーは先に黒い丸が付いた螺旋を描き、ガシャットで突くと二つになる。

 それが鎖と鉄球であると気付いたバールクス。すぐに回避をバールクスの腕には既に鎖と鉄球が巻き付いていた。

 

「何っ!?」

 

 いきなり両腕が拘束され、鉄球の重りのせいで自由に動かせなくなる。

 

「こうなれば……!」

 

 バイオライダーライドウォッチを起動。液状化して鎖の拘束から抜け出す。運悪くライドウォッチの不具合が発生し、不発に終わる。

 

「馬鹿な! 俺のライドウォッチが……!?」

 

 バールクスは何かがおかしいことに気付き始める。さっきからバールクスの意志に反して都合の悪いことばかりが起こっている。

 

(何が……一体何が……っ!?)

 

 そこでバールクスは見つけた。クリエイターゲーマーの隣にもう一人の仮面ライダーが居ることに。

 

「何だと……」

 

 バールクスは信じられない思いであった。あんなに堂々と隣に立っているのに今まで気が付かなかったのだ。

 そして、何より衝撃的だったのは、その仮面ライダーはバールクスも知らない平成ライダーであることだ。

 姿形はエグゼイドと変わらないが、体色は白。その白い体に黒いラインが入っており、ヘッドパーツの先端部分も黒く染められ、身長程もある毛筆を装備している。

 未知なるエグゼイドを認識出来なかったのは、このエグゼイドの能力によるもの。この白いエグゼイドは『運命を決める』ことが出来る。即ち、未来を決める力を持っているのだ。このエグゼイドが望めば、それが未来となる。

 そして、バールクスが白いエグゼイドを知らないのは仕方のないこと。バールクスを始め、クォーツァーは既に平成ライダーを切り捨てている。この白いエグゼイドは切り捨てられた未来に誕生する姿。

 バールクスは、ノベルゲーマーレベル(エックス)の存在も名も知らない。

 




取り敢えず色んな限定フォームを出してみました。
書いてて思いましたけど、今でも現存している限定フォームはどれくらい存在するんでしょうね?

先にどちらが見たいですか?

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