仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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Over Quartzer その24

「こんなことが……!」

 

 バールクスの体がワナワナと怒りで震える。

 長い時間を掛けた完璧な計画であった。実行すれば労せずして今の醜い平成は綺麗に無くなり、クォーツァーを主導とした輝かしい新たな時代が始まる筈であった。

 しかし、その結果はバールクスの望むべきものではなかった。

 平成生まれを全て吸い込み、リセットする筈の異空間は閉ざされ、それを展開するのに必要なダイマジーンは次々と破壊され、平成生まれの者達を抹殺する為に動いているカッシーンの大群は何の成果も得られずに倒されていく。

 だが、それは同じ時間を掛ければ取り戻すことが出来る。バールクスにとって最も痛手だったのは忠臣であるジョウゲンとカゲンを失った事であった。今のクォーツァーのメンバーの中であれだけ能力を持つ者は居らず、替えが効かない。

 全ての計画外の発端であり、何もかもの破綻の元凶がバールクスの目の前に立っている。

 ただ効率良くライドウォッチを集め、それによって平成ライダーの歴史を束ね、後は邪魔者に消されるか、クォーツァーによって抹消される運命が定められた替え玉に過ぎなかった。

 それがどういう訳かバールクスの前に居る。それも忌まわしきオーマジオウの力を纏った状態で平成ライダーらを引き連れながら。

 こんなことはあってはならない。常磐ソウゴは一刻も早く消え去らねばならない。何故ならば真の王はバールクスこと常磐SOUGO唯一人なのだから。

 

『ロボライダー!』

 

 バールクスはボルティックシューターを握り、その銃口をジオウオーマフォームへ向ける。すると、彼を守る為にゴーストテンカトウイツ魂、鎧武ドライブアームズ、エグゼイドクリエイターゲーマーが前に出る。

 体を張って盾になろうとしている様だが、それごと撃ち抜くつもりでバールクスは引き金を引く。

 この距離、決して外さない。ボルティックシューターから発射された光弾はテンカトウイツ魂の顔すぐ傍を通り抜けてしまう。

 

「なっ!?」

 

 絶対に当たる距離なのに外してしまいバールクスは動揺する。続けて引き金を引き、光弾を連射。

 今度こそ命中する。バールクスが放った光弾は全てことごとく外れてしまった。

 顔の傍、胴と腕の隙間、足の間など狙わなければ逆に難しい外し方。ジオウオーマフォーム達はその場から一歩も動いていない。

 

「くっ……!」

 

 バールクスは不可思議な現象を突き止める為にボルティックシューターを撃ち続ける。

 全て命中する軌道。だが、全て外れてしまい、弾丸の雨が降る中でテンカトウイツ魂、ドライブアームズ、クリエイターゲーマーは己の武器を取る。

 テンカトウイツ魂が両手に一丁ずつ握るのは、彼の仲間である仮面ライダースペクターと仮面ライダーネクロムの武器であるマジックハンド型の武器、ガンガンハンドとガンガンキャッチャー。それぞれの形態を変え、長筒の銃にしてバールクスを狙う。

 ドライブアームズが構えるのは車のドアを模した銃。名前もそのままドア銃である。冗談と疑う様なネーミングの銃をテンカトウイツ魂と同じくバールクスへ向ける。

 二人のライダーが銃を構えるのに対し、クリエイターゲーマーが握るのは己のガシャット。これが描く創作こそがクリエイターゲーマーの最強の武器である。

 テンカトウイツ魂とドライブアームズが発砲。ライフルに近い二丁の銃と拳銃と変わらない大きさのドア銃が光弾を吐き出す。

 相手が撃ち返してきたのを見て、バールクスは一旦発砲を止める。すぐにバイオライダーライドウォッチを起動し、液状化で弾を避ける。その前に光弾が命中し、バールクスの動きが止まった。

 

「がはっ!」

 

 やはり不自然な事態が起きているのをバールクスは身を以って確認する。バールクスが思っていることが何一つ上手く行われず、逆にジオウオーマフォーム達のすること全てが上手く行き過ぎている。

 

(やはりあいつが……!)

 

 バールクスは自分の身に起こっている異常事態の原因が未知の白いエグゼイド──ノベルゲーマーにあると当たりを付けていた。

 目に見えない力で干渉し、バールクスにとって都合の悪い様にジオウオーマフォーム達にとって都合の良い様に動かしている。

 今もテンカトウイツ魂とドライブアームズの弾が全弾外れる事無くバールクスに命中しているという異常事態が起きている。ロボライダーライドウォッチの効果で防御力が上がっていなければかなりのダメージになっていた。

 

(どうにかしなければ……!)

 

 百発百中の弾幕の中を駆け抜けていくのは至難の業であるが、仮にそれを抜けたとしてもノベルゲーマーを守る様にまだジオウオーマフォームとタイプフルーツが残っている。

 しかし、立ち尽くしていてはいずれは相手の弾で削り切られるだけである。

 一か八か。もしくは後の流れに任せるしかない。そんな運頼みの選択しか今は選べられない事にバールクスは臓腑が焼け爛れそうな屈辱感を覚える。

 王であり自分の進む道こそが王道であると疑わない自分が何かに縋る様な方法を取る。今まで生きて来た中で一度も無い経験。

 だが、それでも替え玉の王に敗北するかもしれない、と思うよりは遥かにマシであった。

 身を削る弾幕の中でバールクスは意識を集中させる。今度は中断などさせない。

 

『バイオライダー!』

 

 バールクスの集中力はテンカトウイツ魂らの攻撃を超え、ライドウォッチの起動に成功。同時にバールクスの体は液体化し、テンカトウイツ魂とドライブアームズの攻撃がすり抜けていく。

 こうなればバールクスの方に分がある。バールクスは肉体を液体そのものにすると、激しい弾幕の中を飛んで行く。

 僅かな隙間も許さない弾幕。そこにノベルゲーマーの能力が加わって全ての弾がバールクスに命中するが、液体そのものとなっているバールクスの体を光弾が通り抜けていってしまうのでダメージは皆無。

 ようやく得た反撃の機会。それを活かせる内にバールクスは距離を詰めて行く。狙うは厄介な能力を持つノベルゲーマー。それを倒せばバールクスの身に起こる異常も無くなる。

 だが、ノベルゲーマーを守る為に同じエグゼイドであるクリエイターゲーマーがバールクスに立ち塞がった。

 クリエイターゲーマーの手にはガシャット。クリエイターゲーマーにとって力の根源であり、彼が持つ唯一無二の武器。

 クリエイターゲーマーは迫るバールクスに向け、ガシャットで大きな円を描く。

 もう一つ描き加えようとしたとき、バールクスがその円の中に突っ込んで来た。

 

「ぬうっ……!」

 

 バールクス本人は円を警戒して近寄るつもりは無かったが、気付けば突っ込んでいた。この無意識の行動もまたノベルゲーマーの仕業である。

 突っ込んでしまったからには仕方なくこのまま突き抜けようとするバールクスであったが、彼はまた同じ様な呻きを上げる。

 円から出ようとするバールクスを阻む見えざる膜。その強固な膜のせいで円の向こう側に立っているクリエイターゲーマーにすら触れることが出来ない。

 そんなバールクスの前でクリエイターゲーマーは悠々と円の中に楕円を描く。嫌な予感を覚えたバールクスは後ろに下がろうとするが、後ろにも見えない膜が作られており、完全に閉じ込められた。

 クリエイターゲーマーが描き上げたのは大きなシャボン玉。最後に描いた楕円は光沢を表現している。

 そのシャボン玉は風に揺られて左右に動く。クリエイターゲーマーが描いたシャボン玉は完全に二次元であり、バールクスが中に入っているのに横から見ても平面であった。

 三次元の存在を二次元の中に閉ざす。これにより液体化したバールクスも簡単には脱出出来ない。

 

『──!』

 

 シャボン玉の中で叫ぶバールクス。その声はシャボン玉の外には届かないが、行動で何を叫んでいるのか大体予想が出来る。

 液体化した体を実体化させ、直剣──バイオブレードと長剣を取り出すとシャボン玉の内側から攻撃する。

 二次元でもシャボン玉はシャボン玉。攻撃すれば容易く割れる。シャボン玉はバールクスの攻撃にビクともしなかった。

 バールクスがシャボン玉を何度も攻撃して破ろうとしている最中、クリエイターゲーマーはガシャットを使い、シャボン玉に何かを描き足していく。

 光沢以外の部分を塗り潰す。抗うバールクスの姿は見えなくなり、バールクスも外の様子が見えなくなる。

 シャボン玉の天辺に長方形を描き、その中心に蛇行した長い線を描く。線を描き終えると線の先に紅葉の様な外側に広がっていくギザギザを描いた。

 描き終えるとギザギザ部分が音を立てて線を昇って行く。見て分かる通り導火線である。

 クリエイターゲーマーが自らが描き上げた絵から離れていく。近くに居たら自分も巻き添えを喰らうからだ。クリエイターゲーマーの手によりシャボン玉が爆弾へと描き換えられていた。

 無から有を創り出す。想像から生み出す創造こそが彼の武器なのだ。

 導火線が根本まで辿り着いた瞬間、爆弾が爆発した。広がる爆風と共に空間にマンガ調の爆発と爆炎が描かれる。

 ファンシーな光景であるが見た目に反して威力は本物以上であり、クリエイターゲーマーの想像力によって周囲の被害は最小限にし、爆心地では最強クラスの火力が炸裂しているという都合の良い爆弾となっていた。

 その証拠に爆心地では焦げ跡ぐらいしか出来ておらず、その中心では体が炭化寸前にまでなっているバールクスが横たわっていた。

 

「……っ!?」

 

 声すら発せない。それだけのダメージを受けている。だが、バールクスは運が良いと言える。直前に液体化を解除し、実体に戻ったことである程度爆発のダメージを抑えることが出来たのだ。もし、液体のままだったらバールクスの体は爆弾の威力で四散し、続けてくる熱によって体の大半が蒸発していただろう。

 

『BLACK RX!』

 

 途切れそうになる意識を動かし、RXライドウォッチの能力を発動。太陽の光を取り込んでダメージを負った体を回復させる。

 しかし、通常なら瞬時に傷が治るが今回は回復の速度が遅い。それ程までに深いダメージを負っていることを意味している。

 起き上がったバールクスの体から焦げた部分が脱皮をする様に剝がれ落ちて行く。一見すれば無傷。しかし、ダメージはバールクスの芯まで残っており、起き上がってもすぐには動けない状態である。

 バールクスを倒せる最大にして最後かもしれないチャンス。この機会をジオウオーマフォーム達が見逃す理由は無かった。

 

『キングフィニッシュタァァイム!』

 

 ジオウオーマフォームのオーマジオウライドウォッチが叫ぶ。それは王の号令であると同時に解放される黄金光が周囲のライダー達に力を分け与える。

 

『ガシャット! キメワザ!』

 

 一番手となるのは最も後方へ待機していたノベルゲーマー。ガシャットをドライバーのスロットに挿し込んでいた。

 天高く跳び上がるノベルゲーマー。頂点に達すると右足を突き出し、急降下する。

 

『ノベルクリティカルディスティニー!』

 

 ガシャットが必殺技の名を叫ぶ。ノベルゲーマーの右足から白い輝きが放たれる。

 

「くっ!」

 

 気付いたバールクスは回避しようとしたが、その意志に反して体が動かない。何故なら既にノベルゲーマーは宣言している『キメワザ!』と。その宣言が為された時点でバールクスの運命は決定されていた。

 無防備なバールクスの体にノベルゲーマーのキックが打ち込まれる。白い光が反転して黒い光となった。

 そのままバールクスは蹴り飛ばされる──と思いきや、ノベルゲーマーの右足を弾き飛ばして耐えてみせた。

 

『運命の一撃!』

 

 バールクスの方も思っていた以上の威力が無かったことから戸惑った様に蹴られた箇所に触れる。

 必殺技を弾かれたノベルゲーマーは空中で体勢を整えて着地する。その姿に焦りは感じられない。

 そう、ノベルゲーマーの一撃が入った時点でバールクスの運命は決定される。先程のノベルゲーマーの一撃は倒す為のものではなく、書き込む為のもの。

 バールクスの運命に『必殺必中』という運命が新たに加わった瞬間である。

 それに続くのはドライブアームズとタイプフルーツ。

 

『ソイヤッ! 必殺! あ、フルスロットル!』

『ヒッサーツ! フルスロットル! フルーツ!』

 

 ドライブアームズは戦極ドライバーのカッティングブレードを一回倒し、タイプフルーツはドライバーのキーを回し、シフトブレスに収まっているレバーになっているシフトフルーツを同じく一回倒す。

 一歩前に出るドライブアームズ。前方にエネルギーで出来た道が伸びる。その道に乗った瞬間、ドライブアームズは高速で移動を開始。

 目にも止まらぬ速度ですれ違い様にバールクスの胴体をハンドル剣で斬り付けていた。

 

「がっ!?」

 

 視認出来ない速度から繰り出される想像以上の一撃。ノベルゲーマーが運命に書き込んだことでドライブアームズの一撃は何倍にも高められているのだ。

 当然ながらこの効果が及ぶのはドライブアームズだけでは無い。後続から詰めるタイプフルーツが輪切りのオレンジの形をしたエネルギーに乗り、サーフィンの様にドライブアームズが敷いた道を滑走すると、その二刀流でバールクスを連続して斬り付けた後、通り過ぎて行く。

 ドライブアームズと同等の攻撃力を叩き込まれて声を上げる事も出来ないバールクス。

 

『Uターン!』

 

 そこへ言葉通りUターンをして来たドライブアームズとタイプフルーツが戻って来る。

 ドライブアームズはハンドル剣の中央を押し込み、タイプフルーツは無双セイバーと大橙丸の柄頭を連結させナギナタモードにする。

 

『ドリフトカイテーン!』

 

 ハンドル剣のエネルギーが脚部へと伝導し、高速回転しながら道を疾走するドライブアームズ。それに合わせてタイプフルーツも武器を振り回す。

 回転と回転が組み合わさって放たれる必殺の斬撃がバールクスへ命中。その体に深い傷跡を残すと共にダメージがフィードバックしたのかロボライダーライドウォッチに亀裂が入る。

 

『ガシャット! カミワザ!』

 

 クリエイターゲーマーが描き上げたのは、災害でも武器でも無く一体のキャラクターであった。

 一頭身の体に手足を付け、尖った髪型に大きなゴーグルを付けたピンク色のキャラクター。エグゼイドに良く似ているが、実際は逆でエグゼイドがそのキャラクターに似ているのだ。

 彼の名はマイティ。エグゼイドの基となったゲーム、マイティアクションXの主人公である。

 そして、これこそがクリエイターゲーマーが最も強いと思っている力。

 

『マイティクリティカルストライク!』

 

 クリエイターゲーマーがガシャットを振るうと一体であったマイティが無数に増える。そして、バールクスを取り囲み、全方向から一斉にパンチを繰り出す。

 一頭身の可愛らしい見た目のキャラクターであるが、クリエイターゲーマーが自分自身を投影させているので同じスペックを誇る。

 そんなマイティによる一斉攻撃によりバールクスはマイティに囲まれて見えなくなるが、次の瞬間にマイティ達に蹴り上げられ、宙を舞っていた。

 

『神撃の一発!』

 

 全身殴打されたバールクスの体にはマイティ達の拳の跡がハッキリと残っている。そして、その大ダメージにより今度はバイオライダーライドウォッチに罅が入った。

 

『ダイカイガン! ノブナガ! ヒデヨシ! イエヤス!』

 

 打ち上がったバールクスを待ち受けるのは既に跳躍していたテンカトウイツ魂。

 テンカトウイツ魂の背後で赤、青、黄の光が描かれた目の紋章が浮かび上がり、それがテンカトウイツ魂の右足に集まって金色の光となる。

 

『オメガドライブ!』

 

 撃たれた弾の様に一直線に飛び、バールクスの体にキックを命中。過去の英雄と共に命だけでなく魂すら燃やして放つ一撃がバールクスの体を貫くとシャドームーンライドウォッチが半壊する。

 力を綺麗に一点集中させた一撃だったのでバールクスは蹴り飛ばされることなく、そのまま真下へ降下。背中を地面に打ち付けた。

 

「ば、か、な……この……俺が……」

 

 蹂躙する絶対的立場であった筈の自分が逆に圧倒される。その現実がまるで悪い夢でも見ている気持ちになり譫言の様に声を洩らす。

 しかし、地面から伝わって来る重厚な足音が紛れも無い現実であることをバールクスに叩き付け、その意識を無理矢理足音の主へと向かせた。

 バールクスへと近付いていくジオウオーマフォーム。そして、その隣にはもう一人のライダーが居た。

 黒い装甲に金のラインが巡り、ベルト中央に黒い石を収めた四本角に赤い目のその姿。

 クウガの究極の姿であるクウガアルティメットフォーム。

 ジオウオーマフォームが呼び出した平成ライダーの原点が彼と共に歩む。

 

「はあ……はあ……はあ……!」

 

 寝そべっていればいいものを、わざわざ重傷を負った体で立ち上がるのはバールクスの王としての矜持であった。

 バールクスがよろけながら立ち上がった時、ジオウオーマフォーム達は既に目の前に立っている。

 

「う、おおおおおおっ!」

 

 ダメージを押し殺し、渾身の拳を繰り出すバールクス。先にバールクスへ打たせたのは、ジオウオーマフォームにとってのせめてもの情け。

 

「はあっ!」

「がはっ!」

 

 バールクスの拳が届く前に後から放たれたジオウオーマフォームとアルティメットフォームの拳がバールクスの胸に突き刺さる。

 すると、アルティメットフォームの体に電撃に似た金色の光が走る。光を帯電する様に纏うとアルティメットフォームの外見が変わる。

 黒い鎧の一部が金色に変改し、金と黒の配色の割合が変わる。そして、四本の角が鋸の様な細かい刃が付いたものへと変化。

 本来ならばアルティメットフォームで極めたことになるが、ジオウオーマフォームの力という外的要因によってライジングアルティメットフォームへと昇華され、雷光の様な光を発する二撃目の拳がジオウオーマフォームと共にバールクスへと打ち込まれた。

 重い一撃によりバールクスの足は己の意思とは無関係に後退させられる。

 両者の距離が開く。その間合いは必殺の一撃を与えるのに必要な間合い。

 ジオウオーマフォームとライジングアルティメットが一心同体の様に寸分のズレも無く同時に跳躍し、空中にて前方宙返りをしてキックの体勢へ移行。

 

『キングタイムブレーク!』

 

 ジオウオーマフォームの背後に時計盤を模してエネルギーが発生。その王者の威光を間近で浴びたライジングアルティメットの体が更なる変化を起こす。

 枝分かれした四本の角は数を倍に増やし八本となり、今まで黒だった箇所が金によって塗り替えられ、黒と金の配色が完全に逆転する。

 ライジングアルティメットを超えた姿となったクウガと共にジオウオーマフォームはバールクスへ同時にキックを叩き込んだ。

 接触の瞬間、二人の右足に込められたエネルギーが解放され、天と衝く光の柱が生まれる。

 やがて、光の柱の中から後方宙返りでジオウオーマフォーム達が飛び出し、二人が離れると光の柱もまた消え去る。

 光の柱が消えた後、その中心には変身が解けたSOUGOの姿があった。

 

「っ……!」

 

 SOUGOは力無く膝を突く。豪華な真紅のローブは見るも無惨に裂かれ、焼け焦げている。膝を突いた拍子にSOUGOの体から何か破片が零れ落ちる。

 それはジクウドライバーの残骸と彼がRXとシャドームーンから奪ったライドウォッチの破片。SOUGOは変身能力を失い、奪った力も光太郎達の許へ帰る。

 

「もう終わりだ……」

 

 ジオウオーマフォームがSOUGOへ声を掛ける。その声には既に戦意は無い。

 敵ではあるが、戦う力を失った相手を害する様なことをジオウオーマフォームは好まない。

 

「平成をリセットすることを諦めて、二度俺達の前に現れないでくれ。そうすれば──」

「く、ははは……ははははははははっ!」

 

 ジオウオーマフォームの情けの言葉を遮り、SOUGOは幽鬼の如くユラユラと揺れながら立ち上がる。

 整えられた髪は乱れ、口や頬、額から流血しているが、その目は全く死んでおらず鬼気が宿っている。

 

「俺に……! 王である俺に情けを掛けるか……! 随分と見下してくれるな……! 替え玉の王の分際で……!」

 

 SOUGOはジオウオーマフォームの情けを振り払う。だが、そこに自棄になった雰囲気は無い。何かしらの勝算がある、ジオウオーマフォームはSOUGOの目を見てそう感じた。

 

「まさか……こんな事になるとはな……認めてやる……平成ライダーの価値を……」

 

 SOUGOの口から出る言葉は聞けば賞賛の様にも聞こえるが、ジオウオーマフォームには不穏なものに聞こえた。

 

「ただし……! 俺を高みに上げる為の踏み台としてなっ……!」

『ジクウドライバー!』

「なっ!?」

 

 SOUGOが新たなジクウドライバーを装着したことに驚く。だが、そのジクウドライバーを見た時、更なる衝撃がジオウオーマフォームを襲った。

 片側のスロットが破損したジクウドライバー。それは、ソウゴがSOUGOに初めて敗北した時に奪われたソウゴのジクウドライバーであった。

 

「ジョウゲン! カゲン! 最後の忠誠を示す時だ……!」

 

 SOUGOは既に居ない忠臣達に向けて叫ぶ。

 

「その力! 王である俺に捧げろぉぉぉぉぉ!」

 

 SOUGOが命じた瞬間、大地を突き破ってザモナスライドウォッチが出現し、空からは真っ赤に燃えながらゾンジスライドウォッチが降下してくる。

 SOUGOの傍で宙に浮かぶ忠臣らのライドウォッチ。そして、SOUGOの手の中には破壊を免れたバールクスライドウォッチ。

 

『バールクス!』

 

 SOUGOはバールクスライドウォッチを起動させ、それをジクウドライバーに挿す──のではなく自らの体に埋め込んだ。

 

「ライドウォッチを!?」

 

 SOUGOの体へと取り込まれるバールクスライドウォッチ。

 

『ザモナス!』

『ゾンジス!』

 

 それだけでなく二つのライドウォッチもSOUGOの体へ飛び込んでいく。

 

「くっ! ぐがあああ……おおおおおおっ!」

 

 三つのライドウォッチと同化し、苦悶の声を上げるSOUGO。ライドウォッチを取り込んで苦しんでいるが、反面肉体の方は凄まじい速度で再生しており、血が止まり傷も塞がっていく。

 その手は止まること無くジクウドライバーに触れる。しかし、ジクウドライバーにはセットすべきライドウォッチは無い。

 

「何をする気だ!?」

「ジクウドライバーには……! お前達も、ウォズすらも知らない隠された機能がある……!」

「隠された機能……」

 

 ウォズすらも知らない。それは機密中の機密としか言い様がないジクウドライバーの秘密。

 

「ジクウドライバーは……使用したライドウォッチの力を……保存することが出来る……! ライドウォッチを使えば使う程、その力は蓄積される……!」

 

 ジオウオーマフォームが初めて知るジクウドライバーの機能。しかし、力を溜めるだけなら特に脅威には感じないが──

 

「そして……その蓄積された力を使えば……ライドウォッチ無しでも変身することが可能だ……! お前は……随分と溜め込んでいるみたいだな……!」

 

 ──次の言葉でジオウオーマフォームは戦慄した。SOUGOが付けているジクウドライバーには歴代の平成ライダーだけでは無い、グランドジオウライドウォッチも使用している。

 

「止め──」

「遅い」

 

 SOUGOがジクウドライバーのロックを解除した瞬間、内包されていたエネルギーが解放される。

 それは、SOUGOの背後で像となって顕現した。クウガから始まり、ジオウの像までもそこにある。

 

「平成ライダーが無意味な存在だったらこの力は使えなかった……! お前だ! お前が俺のルールを破壊し、平成ライダーの意味を取り戻させたんだ……!」

 

 こうなった原因はジオウオーマフォームにあると皮肉を言うSOUGO。

 SOUGOはジクウドライバーを回転させる。平成ライダー達の像は崩れ、塵となってSOUGOへ吸収されていく。

 クォーツァーのライドウォッチ。そして、平成ライダー全ての力を取り込んだSOUGOは静かにその言葉を放つ。

 

「──変身」

 

 世界から音が消えた。世界から形が消えた。統一された力は世界を瞬時に包み込む程の光で満たす。

 だが、それも刹那のこと。時が巻き戻る様に世界を包み込んだ光は一人の体の中へ戻って行く。

 光が消え去った時、それはそこに降臨していた。

 

「な、何なの……?」

 

 ジオウオーマフォームはそう言うしか無かった。目の前の存在が自身の理解を超越している存在故に。

 その姿はバールクスに近いが異なる部分も多々あった。

 全身が真紅に染め上げられ、体から立ち昇る抑え切れない力が赤い蒸気になって翼或いはマントの様に広がっていく。

 仮面に納まっていた『ライダー』の文字は紅から深緑へと変わり、神々しい輝きを発する。

 腹部に装着しているジクウドライバーは外装が剥がれ、左右のスロットには歯車が設置され、それと繋がる大小様々な歯車や発条が連なり、時計のムーブメントの様になっていた。

 これこそがクォーツァーの最後の切り札。大いなる計画が狂った時、クォーツァーが敗北に近い大打撃を受けたという万が一を想定した、クォーツァーにとって敗北と同時に絶対的勝利を約束する姿。

 

()()()──」

 

 それは新たなる平成を創造する王。

 

「──クォーツァー」

 

 そして、歴史の管理者の名の下に刃向かう者を断罪する力。

 




ここから最終戦へ入ります。
この話もあと数話で終わりそうです。

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