仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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Over Quartzer その25

 創成王クォーツァー。新たな姿へ変身したSOUGOは自らをそう称した。対峙するジオウオーマフォームは、その言葉が見かけだけのものではないと肌で実感する。

 今の彼の脳裏に浮かび上がるのは初めてオーマジオウと邂逅した時と同じ感覚。少なくともクォーツァーはオーマジオウと同等以上の力を有している。

 クォーツァーは変身した後、己の変化を確認する様に掌を眺めていた。ただ黙って立っているだけだというのに存在するだけで世界が圧壊してしまいそうな威圧感がある。

 

「──まずは褒めてやる。そして、認めてやる。お前が俺と対峙するに相応しい王の器の持ち主だと」

 

 クォーツァーから不意打ち気味に賞賛の言葉が出る。

 

「この姿は組織にとって勝利を与える姿であると同時に、そこまで追い詰められた証でもある」

 

 歴史を管理するクォーツァー。その力は絶対的なものである筈だった。しかし、平成をリセットするという計画の中に一歯車として組み込まれているに過ぎない常磐ソウゴという存在が、クォーツァーが生み出した大いなる計画を狂わせ、破綻寸前にまで追い込んで来た。

 創成王クォーツァーとは歴史の管理者という立場が揺らいでしまった時に備えて用意されていた切ることを望まれない切り札。切ってしまった時点で自らの立場を守ろうとする必死さが露わになってしまう。

 しかし、それでも常磐SOUGOはクォーツァーとなった。恥も誇りも捨て、ジオウオーマフォームを倒す為にこの姿になることを選んだのだ。

 そして、彼は得た。絶対的な力を。

 クォーツァーは、わざわざ見せつけていると思わせる程緩慢な動きで手を翳していく。まるで一動作毎に区切りを入れているかの様な動きであった。

 当然のことながらジオウオーマフォーム達はその動きを警戒する。しかし、警戒するだけで攻撃までは至らなかった。未知数な敵に対し不用意な行動は危険──などと言い訳をするつもりは無い。

 圧倒的な威圧感を持つクォーツァーに足が竦んで前に出られなかったのだ。

 クォーツァーは閉じていた手を開き、五指をジオウオーマフォーム達に見せつける。その瞬間、クォーツァーの手から赤い波動が放たれ、ジオウオーマフォーム達を呑み込む。

 赤い波動を浴び、ジオウオーマフォームは特に変化は無く無事であったが、他のライダー達は違っていた。

 赤い波動に触れた途端、全員が光に還って行く。消滅したのではなく居るべき場所へ強制送還されているのをジオウオーマフォームは消えたライダー越しに感じ取っていた。

 直前にノベルゲーマーが自らの能力でクォーツァーの能力の無効化を試みたが、効果が発揮することは無かった。

 運命すらも自分が思い描いた未来に変えることが出来るノベルゲーマー。だが、その反則的な能力すらもクォーツァーは自身の純粋な力のみで捻じ伏せてしまったのだ。

 

「王同士の戦いに部外者は必要無い」

 

 召喚されていた平成ライダー達をいとも容易く還してしまったクォーツァー。ほんの戯れとでも言うかの様な撫でる程度の力加減で。

 それは同時にジオウオーマフォームへの警告でもあった。召喚が無意味と見せつけることで『これからの戦いに部外者は介入出来ない』。そう伝えて来たのだ。

 

「──いいよ。俺とあんたで決着をつけよう」

 

 ジオウオーマフォームはそれを受けて立つ。それを聞き、クォーツァーが仮面越しに笑った気がした。尤も、親しみを込めたものではなく邪笑の類である。

 

「なら、相応しい場所を用意してやろう! 王の戦いに! そして、新たな時代の創造に相応しい場所を!」

 

 クォーツァーは腹部に付けたドライバーの両端を押し込む。左右に設けられた銀色の歯車が回り、それと噛み合う全ての歯車や発条が動き出す。

 

『創世の刻!』

 

 重々しい声がドライバーから発せられ歯車や発条の動きが一層激しくなり、連結部分から火花が飛び散り出す。その声を聞き、ジオウオーマフォームはオーマジオウのドライバーを連想した。

 

『バールクス! タイムブレーク!』

 

 クォーツァーのドライバーが光を放射する。赤、緑、銀の三色の光は、ジオウオーマフォームが視界を腕で覆う程に眩いものであり、やがて、強過ぎる光が世界を塗り替えていく。

 

 

 ◇

 

 

 世界を照らす三色の光が収まっていくのを覆った視界越しに感じる。時間にすれば僅かなものであったが、その間にクォーツァーがジオウオーマフォームに攻撃を仕掛けてくることは無かった。

 新たな力を得たことから来る余裕か、それとも別の意図があるのかジオウオーマフォームがそれを知る由も無いが不気味さだけは絶えず感じている。

 光が消えたのを見計らって遮っていた視界を広げる。その目に映り込んだ光景にジオウオーマフォームは絶句した。

 そこはさっきまで居た場所とは全く異なる異空間。

 まずは視界一杯に広がる闇。足元を見れば底の見えない暗い底の様な地面が広がり、ガラス板の上に立っている様な錯覚を覚え、まるで宇宙へ放りだされた気分になる。上を見上げれば同じく無限に闇が続いているが、それだけでなく輝きを放つ球体が数え切れ程浮かび上がっている。それが唯一の光源となってジオウオーマフォームとクォーツァーの姿を闇から浮かび上がらせていた。

 

「うわっ」

 

 足元から何かが浮き上がってきたのでジオウオーマフォームは反射的に避ける。ユラユラとシャボン玉の様に浮き上がるのは、上から暗闇を照らす球体と全く同じものであった。

 

「あっ……」

 

 ジオウオーマフォームは息を吞む。球体には何か映像が投影されていた。最初に映っていたのは山。映像が切り替わり海となり、林が映り、住宅街が映り、様々な動物達が映った後に人種が異なる人々の映像となりその次に地球の映像となる。ジオウオーマフォームが最後に見たのがそれであった。

 球体はジオウオーマフォームの頭上を超えて、上空を漂う他の球体に混じって行く。

 

「『地球(ほし)の本棚』って知っているか?」

 

 不意にクォーツァーが質問を投げ掛けて来た。

 

「……一応」

 

 地球の本棚とは地球のありとあらゆる情報を有したデータベースのこと。この世には存在せず、とある探偵の相棒の精神世界にのみ存在する。

 ジオウオーマフォームは実際に見た事も入った事も無いが、平成ライダーの力を継承したことで知識として知っていた。その気になれば今のジオウオーマフォームでも入ることは可能である。

 

「なら話は早い。重要なのはこの世の何処かに知識や力などが一点に集まる場所が存在するということだ。普通の人間ならまず発見することは出来ない。だが特定の条件、『地球の本棚』なら泉というアクセスポイントを見つけ、接触することで極めて低い確率だがそれを閲覧する権利を得られた」

「……ここもその『地球の本棚』って言うの?」

「似て非なる場所だここは。精神世界ではなく異なる次元の最奥に存在し、俺達が追い求めていた神聖なる地!」

 

 両手を広げながら天を見上げるクォーツァー。その声は今までに無い程に興奮している。

 

「ここは観測地だっ! 全ての世界の外側であり観測し、干渉することが出来る真の王のみに許された『世界(ほし)の玉座』!」

「『世界の玉座』……!」

 

 世界が何らかの選択をした時、その時点で世界は分岐する。Aの選択をした世界、Bの選択をした世界。隣同士でありながら決して交わることのない所謂平行世界というものである。

 

「じゃあ、この泡みたいなもの一つ一つが……!?」

「そうだ! 分岐をしたことで生み出された異なる次元の世界だ!」

 

 今にも壊れそうなシャボン玉の様な見た目だというのに、その内には数え切れない程の生命を内包していると考えると鳥肌が立ちそうになる。

 

「歴史を管理するクォーツァーという組織は、不完全ながらもこの『世界の玉座』を観測することが出来た。分岐した世界の結末を観測することで基本軸となっている世界を正しい方向へと導いてきた」

 

 選ばれた選択が破滅へと繋がるならそれを修正する。それを陰ながら行っているのがクォーツァーという組織である。

 

「だが、どれだけ技術を発展させようとも俺達は『世界の玉座』に入ることは出来ず、指を加えて見ているだけだった……だが、それも今日で終わりだ!」

 

 本来干渉するなら何かしらのアクセスポイントが必要となるが、クォーツァーは単純に力任せで『世界の玉座』に繋がる道を強引にこじ開けてしまったのだ。

 

「俺はこの玉座を手に入れ、新たな時代を手に入れる!」

 

 クォーツァーは虚空へ手を伸ばし、その宣言通りに掴み取るジェスチャーをする。

 クォーツァーがここを手にすれば、ありとあらゆる世界がクォーツァーの手中に収まることを意味する。そんなこと断じてあってはならない。

 

「そんなこと俺がさせない!」

「なら、お前がこの玉座を手にすると言うのか?」

「俺は……そんな玉座なんて要らない!」

「王が玉座を否定するか……とことん愚かだな! 常磐ソウゴォォォ!」

 

 開戦の火蓋がクォーツァーによって切られた。

 両者の間には数十メートル程の距離が開いていたが、二人の王が一歩踏み出したかと思った時、黄金と紅の光が散った。

 最初から無かったかの様に距離間がゼロとなる。ジオウオーマフォームの短距離間での瞬間移動。クォーツァーもまた同様の移動手段を使用していた。

 互いの姿が眼前に現れると、二人は動揺することもなくそれどころか既に振り翳していた拳を放っていた。

 拳と拳が衝突すると纏っていた黄金と紅の光が波紋状に広がる。天に浮かぶ平行世界らは猛風に煽られて揺れ、『世界の玉座』もまた物理を超えた衝撃に揺れる。

 両者の打ち合いは全くの互角。お互いにその場から一歩も動かない。息を合わせたかの様に二人は同時に拳を引くと、入れ替わりに反対の手でジオウオーマフォームは掌底を、クォーツァーは肘打ちを繰り出す。今度は軌道が異なり掌底は顔面を狙い、肘打ちは胴体を狙う。

 クォーツァーは触れればその箇所が消し飛んでもおかしくない掌底の動きを寸前まで見極め、首を最小限傾けて紙一重で躱す。

 ジオウオーマフォームは撫でられれば斬り飛ばされる肘から生えるブレード状の突起に対し、下から膝を突き上げて弾いた。

 防御と回避によって防がれると二人は一歩後ろに下がり、同じタイミングで中段蹴りを出す。

 足と足が交差し、同じ威力であった為に弾かれ合う。

 片足を軸にして独楽の様に回りながら蹴りの反動で離れていくジオウオーマフォームとクォーツァー。

 その最中にジオウオーマフォームは背部に黄金の時計盤を出現させる。時計盤を長針、短針が高速で回るとクォーツァーの周囲に一回り小さな時計盤が幾つも出て来た。

 ダイマジーンにも使用した時間操作による他者への時間加速。小さな時計盤の針が進み始め、クォーツァーの時間の一気に加速させようとする。

 

「鬱陶しい!」

 

 クォーツァーの一喝で進む筈であった針が一斉に止まる。そして、クォーツァーは回転する勢いを利用し、背中から噴射させている赤い光で囲んでいた時計盤を触れていく。

 実体の無い赤い光が通過すると全ての時計盤は砕け散ってしまった。

 回転を止め、向き合う両者。再び開いた距離の間で視線をぶつけ合う。

 時間操作が通用しなかったことはある程度予想が付いていたのでジオウオーマフォームは特にショックを受けなかった。あくまで試してみただけのこと。クォーツァーにも通用していたら、そもそもここまで苦戦を強いられていない。

 それよりも気になったのはクォーツァーの身体能力である。ジオウオーマフォームとクォーツァーのスペックは全くの互角。相手が手を抜いているとは思っていない。直に触れて理解したがクォーツァーは本気で戦っている。当然ながらジオウオーマフォームも同じであった。

 バールクスの時と比べれば格段の上昇だが、それ以外で『世界の玉座』に侵入する能力も凄いかもしれないがクォーツァー製のライドウォッチ三つに加えて全ての平成ライダーの力を取り込んで得た力としてはやや釣り合っていない様に思えた。

 この程度で済む筈が無い。敵として戦って来たからこその確信がジオウオーマフォームにあり、クォーツァーの赤く輝く体に底知れないものを感じ取ってもいた。

 

「『この程度の訳が無い』。──そう思っているな?」

 

 ジオウオーマフォームの内心を正確に見抜きながらクォーツァーはせせら笑う。

 

「まあ、俺もお前のその強さは認めてやろう。俺とお前の力に差は無い。互角と断言してやる」

 

 クォーツァーもまたジオウオーマフォームと互角であることを認める。だが、相変わらずその声には嘲笑と余裕が込められており、その事についてクォーツァー自身は大した問題ではないことを表していた。

 

「しかし、それだけだ。身体能力の差などここに来た時点で全くの無意味になる!」

 

 クォーツァーの不敵な宣言の後、足元の闇から新たに分岐した世界が浮かび上がって来る。風の無い空間で左右に不規則に揺れながら天に集う他の平行世界に混ざろうとしていた。

 

「丁度いい」

 

 だが、そうはならなかった。浮かび上がるそれをクォーツァーが掴み取ってしまった。

 

「これで説明してやる」

「何を──」

 

 ジオウオーマフォームが問う前にクォーツァーは手に掴むそれを──躊躇無く握り潰す。

 

「なっ!?」

 

 クォーツァーの行動に言葉を失ってしまった。

 

「言っただろう? ここでは観測だけでなく干渉も出来ると。尤も、それが可能なのは俺だけ──」

「……をやってる」

「うん?」

「何をやってるんだ!」

 

 得意気に説明しようとしていたが、ジオウオーマフォームの怒声がそれを遮る。

 

「それは……その中には別次元の世界が入ってるって……! そう言っただろ! そんな、そんなことをしたら……!」

「ああ、もうこの世界はお終いだ。この世界の地球はたった今滅び、全生命の命も潰えた」

 

 何の罪の意識も持たず、事も無げに言うクォーツァーにジオウオーマフォームは再び言葉を失ってしまう。

 

「言っただろう? 俺達は平成という時代をリセットすると。平行世界でも平成は平成。俺達が創る新しい平成に旧い平成は必要無い」

 

 クォーツァーは文字通り今までの平成を一掃しようとしているのだ。そこに例外は無い。例え分岐した世界であっても旧い平成の流れを組んでいる時点で抹消対象なのだ。

 

「正気じゃない……」

 

 その為に数十億の人間の命を平然と握り潰すクォーツァーにジオウオーマフォームの本音が零れ落ちる。ジオウオーマフォームの目には、人の姿をしている筈がなのに最早怪物としか映らなかった。

 

「少し勘違いをしているが、決して俺は無意味に破壊した訳じゃない」

 

 握り締められているクォーツァーの拳の隙間から赤い光が漏れ出す。

 

「ちゃんと再利用はする」

 

 クォーツァーの拳から伸びる赤い光。それは二メートル程伸びると燃焼した炎の様に揺らぐ赤光の剣となる。

 

「中々良い輝きをしていると思わないか……? 世界で形を作り、人の生命で磨き上げた唯一無二の剣だ」

 

『世界の玉座』に入り込むことはクォーツァーの能力の一端に過ぎない。その真の能力は平行世界を犠牲にして自らの力へと変換すること。創成王であるクォーツァーにのみ許された世界を蹂躙する力。

 一つの世界を犠牲にして一振りの剣を創り出すクォーツァー。ジオウオーマフォームはクォーツァーの剣の赤光に生命の嘆きを幻視した。

 

「そんな、ことの、為に……!」

「十分だろ? ()()()()の扱いで」

「クォーツァァァァァ!」

 

 あまりに道を外れた行為にジオウオーマフォームは自分を抑え切ることが出来ず走り出していた。剣が凄まじい圧を放っているのが分かっていても不用意に動かざるを得なかった。

 あんな行為を見せられて動かない理由など無い。

 ジオウオーマフォームの冷静さを欠いた行動を一笑すると、クォーツァーは肘でドライバーの右側を押し込む。

 

『創生の刻!』

 

 鳴り響く音声の後、クォーツァーは腕だけで剣を振るう。棒振りと変わらないやる気の感じられない動作であったが、一振りした瞬間、ジオウオーマフォームの激情が一瞬で冷える光景が現れる。

 世界がずれる。クォーツァーの赤い剣線を境目にして。たった一振りで次元が容易く斬り裂かれていく。

 反射的にジオウオーマフォームは空中へショートワープする。剣線は地平線の彼方へと飛んで行ってしまう。

 脅威を前にして逆に冷静さを取り戻し、ギリギリで回避したジオウオーマフォーム。だが、彼は知らない。今の行動はクォーツァーにとって握り心地を確認する為の動作に過ぎなかったことを。

 ここからが本気の一振りである。

 

『ザモナス! タイムバースト!』

 

 空中に居るジオウオーマフォーム目掛けてクォーツァーが剣を振る。ジオウオーマフォームの視界が全て赤い光で埋め尽くされた。

 

「くっ、おおおおおおおお!」

 

 放たれた斬撃の軌道から逃れる為に必死の思いでショートワープを発動。行き先など指定する暇も無く、兎に角範囲から逃れることを優先する。

 ジオウオーマフォームが黄金の光に包まれて消えた直後、その場所を赤い光が通過していく。

 それを少し離れた場所で呼吸を乱しながらジオウオーマフォームは見ていた。本当に紙一重の差であった。

 しかし、その安堵もすぐに吹き飛ぶこととなる。

 外れた斬撃は上空に浮かぶ分岐した世界に触れる。その瞬間、次々と世界が爆ぜて消滅していった。

 

「あ、ああ……」

 

 一つの世界に数十億の人々が存在している。クォーツァーの一撃によって数え切れない程の世界が破壊された。

 数多の世界を破壊しながらも斬撃の威力は衰えることはなく、天の彼方まで飛んで行く。果ての見えない暗闇の空。

 やがて、内包しているエネルギーが斬撃の形を維持出来なくなったのか、暗闇の空に小さな小さな赤い点が浮かび上がった。

 そのすぐ後のことであった。エネルギーが解放されたことによる余波が頭上から襲い掛かり、ジオウオーマフォームは下に叩き付けられる。

 

「うぐっ!」

 

 地上から大気圏外までの距離があったが、それでもこれ程の威力。直撃していたら跡形も無くなっていても不思議ではない。

 ジオウオーマフォームが立ち上がる。クォーツァーは剣を構えようとするが、剣が急に崩れ出し光へ還っていく。

 

「まあ、こんなものか」

 

 埃でも落とす様な仕草で掌に残った光の粒子を払うクォーツァー。嘗て命だったものが空中で塵の様に散っていく。

 

「お前は……! どれだけの命を奪えば気が済むだ……!」

「さあ? 気に入らないものを一掃するまで、か……?」

 

 何一つ罪悪感を抱いていない答えが返って来た。

 

「まあ、今ので数千億はいったか……? それとも兆の単位まで届いたかもしれないな。俺にとってはどうでもいいことだ。数えるのも面倒だ」

 

 クォーツァーにとって不要な世界の命など何の関心も抱かない。命の尊さなど微塵も感じない。数は数であるとあっさりと割り切る。

 それを割り切ることの出来ないジオウオーマフォームにとっては、クォーツァーの台詞は日本語なのに理解不能な未知の言葉に聞こえた。

 

「そんな簡単に割り切るなっ!」

「ならお前が数えてろ。──数え切れるならな?」

 

 ジオウオーマフォームの怒りを嗤いながらクォーツァーはドライバーの左側を押し込んだ。

 

『創星の刻!』

 

 クォーツァーが両掌を天に向ける。それに吸い寄せられ、浮かんでいた世界がクォーツァーの周囲に集まっていく。

 

「や、止めろ……」

 

 クォーツァーが何をするのか嫌でも分かってしまう。

 左掌を前に突き出し、右拳を大きく引いた構えを取るクォーツァー。弓を引く前のポーズか正拳突きを繰り出す前のポーズ、どちらとも取れる構え。

 その構えを取ると周囲の世界が赤く輝き出す。それはその世界と命が純粋な力へと強制的に変換されていく現象であった。

 

「止めろぉぉぉぉぉ!」

 

 世界が欲望一つで壊されていく様子にジオウオーマフォームは絶叫する。

 

「世界と命の重み、身を以って思い知れ」

『ゾンジス! タイムエクスプロージョン!』

 

 悪意に満ちた言葉と共に突き出される右拳。それが引き金となって数多の平行世界がジオウオーマフォームへ撃ち出された。

 

 

 ◇

 

 

「ソウゴ、ゲイツ、ウォズ……」

 

 建物の外でツクヨミは心配そうに仲間の名を零す。

 順一郎に頼んで外の見回りをしていたツクヨミ。空中に浮かんでいたクォーツァーの計画の要であったダイマジーンは突如として破壊され、計画は中断された。

 平成生まれの人々を狩っているカッシーン達もどういう訳か建物周辺に姿を見せない。何者かがカッシーン達に抗っているのではないかとツクヨミは考えていた。

 事はツクヨミ達にとって望ましい方向へと進んでいる筈なのだが、どういう訳かツクヨミの胸中は不安で一杯だった。

 二度感じた嫌な予感。それはゲイツとウォズに何か不幸が起きたのでは無いかとツクヨミは直感していた。そんな不吉なことは考えるべきではないと分かっているのだが、どうしてもそう思ってしまう。

 そして、今も感じている不安。それは間違いなくソウゴに関わるものであるとツクヨミは感じていた。

 出会い、衝突し、理解し、仲間となって自分達。そこに加わる永遠の別れの予感。その不安でツクヨミは心細くなる。

 

「不安か?」

 

 背後から耳朶を打つ覇気に満ちた声。その瞬間、ツクヨミはファイズフォンXを構えながら振り返る。

 

「オーマジオウ!?」

 

 この世界に居る筈の無いオーマジオウがツクヨミのすぐ後ろに立っている。ツクヨミはその事実に驚きながらも銃口がオーマジオウからブレることは無かった。

 

「何で貴方がここに……!?」

「そのことについてお前と問答している時間は無い。単刀直入に聞く」

 

 オーマジオウはツクヨミの目を真っ直ぐ見つめる。

 

「お前は、若き日の私──常磐ソウゴの為に命を懸けられるか?」

 

 それは覚悟を問うもの。未来においてツクヨミとオーマジオウは敵対していた。彼女がその問いを一蹴しても不思議ではない。

 だが──

 

「ソウゴに何かあったの!? いえ、これから起こるの!? 話を訊かせて!」

 

 ツクヨミはファイズフォンXを収め、オーマジオウへ詰め寄る。その行動だけで答えは十分であった。

 

「──覚悟はあるようだな。ならば、これを受け取れ」

 

 オーマジオウが両掌を出す。その掌にはゲイツライドウォッチとウォズライドウォッチが握られていた。

 

「これってゲイツとウォズの……!?」

 

 言われるがまま二つのライドウォッチを手にするツクヨミ。すると、二つのライドウォッチが光り、その光がツクヨミと結び付く。

 ライドウォッチとツクヨミによって三角形が作り出され、その三角形の中心には──

 

「これは……!?」

「真の脅威が迫っている……それを乗り越えられるかどうかはお前達次第だ……」

 

 




最終戦に相応しくインフレさせてみました。頂上決戦ですし、これぐらいでも良いかと思って。

先にどちらが見たいですか?

  • IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
  • IFゲイツ、マジェスティ
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