暗闇の世界に太陽が落ちる。それはまるで天地開闢を思わせる神々しい光景に映るだろう──何も知らない者が見れば。
闇を塗り替える眩い赤光の正体が、平行世界に住む何千億もの人々の命を捧げて輝かせていると知れば、途端に光の解釈は万人を照らす太陽ではなく、核や大量破壊兵器が生み出す悪魔の光に早変わりする。
命をくべて輝く破滅の光。それを特等席で腕を組んで見学するのは、この光景を生み出した元凶であるクォーツァー。
彼の胸中には自らが生み出した光景に一切の罪悪感が無い。その心中にあるのは醜い平成を生きてきた者達が最期にこれだけの輝きを放てられたこと、王たる自分の役に立てたことを寧ろ感謝しろ、という思いしか無かった。
寒気立つ程の傲慢。恐ろしいまでの厚顔。だが、それを咎めることは誰にも出来ない。クォーツァーという王が有する絶対的な力の前では誰もが咎める為の口を閉じ、睨む目を伏せて首を垂れる。
どんなに理不尽でも、どんなに間違っていてもクォーツァーの暴挙を止められる者は存在しない。
──たった一人の例外を除いて。
『サイキョー! フィニッシュタァァイム!』
命の残骸を一纏めにした赤い光が、内から伸びる黄金の光刃によって貫かれる。
『キング! ギリギリスラッシュ!』
刃が返され、横薙ぎに払われると赤い光に裂け目が生じ、中からサイキョージカンギレードを握り締めたジオウオーマフォームが飛び出て来る。
そのまま上段に構えたサイキョージカンギレードがクォーツァーへと振り下ろされた。
先程の一撃で終わったと油断していたクォーツァーは、振り下ろされた段階で防御しようと腕を掲げるが、間に合わず光刃が左肩へと食い込み、両断された。
「むっ!」
左腕を斬り飛ばされる重傷を与えられたクォーツァー。しかし、その反応は鈍い。左腕を切断された痛みによって呻いたというよりも、ジオウオーマフォームがまだ動けることに驚いて声を洩らした、という感じであった。
荒く、そして小刻みに繰り返される呼吸音。それを鳴らしているのはジオウオーマフォーム。平静を保とうと試みるが、どうしても息が乱れる。肉体的疲労と精神負荷が合わさり、ジオウオーマフォームの体力を消耗させていく。
サイキョージカンギレードを振り下ろした体勢のまま固まるジオウオーマフォーム。本当ならば残心を取るべき必要があるが、消耗している彼にとって愛用の武器であるサイキョージカンギレードですら重く、簡単に持ち上げられない。
クォーツァーの腕が地面に落ちて転がる。腕や肩口から出血する様子は無く、断面部分は赤い光が発せられている。
「──思ったよりも元気そうだな。それに傷も浅い」
クォーツァーが言う通りジオウオーマフォームの装甲の一部が欠け、溶けている部分も見受けられるが、あれだけの爆発を受けたとしてその程度なら軽傷と言える。
「何かしたな、お前?」
ジオウオーマフォームが軽傷を切り抜けことを推察し始めるクォーツァー。片腕を失ったとは思えない程の余裕である。
少しの間、考える様な素振りを見せていたが、やがて一つの答えに至る。
「──ああ、そういうことか。オーマジオウの世界を破壊する力か」
クォーツァーの出した答えは正に正解であった。オーマジオウの持つ世界を破壊する力によってジオウオーマフォームはあの窮地を切り抜けていたのだ。
平行世界そのものを攻撃に転じさせるクォーツァーに対してジオウオーマフォームの世界を破壊する力は一見特攻の様に思える。事実、バールクスの時に『創世』によって強制的に科せられたルールをその力によって打ち破っている。
しかし、クォーツァー相手だと話が違って来る。もしも、クォーツァーが平行世界をエネルギーに変換するのを単発で行っていたのなら、ジオウオーマフォームも互角に渡り合っていただろう。だが、クォーツァーは幾つも平行世界を潰すことに何の躊躇も無い。
世界を破壊する力を以てしても数多の平行世界を犠牲にして攻撃をされれば限度が迎えてしまう。
先程の攻撃もジオウオーマフォームの許容量を超えた質量攻撃であり、本来ならば特攻である筈の世界を破壊する力も相手の攻撃の威力を削ぐ程度の扱いになってしまう。
ジオウオーマフォームの能力はクォーツァーに有効であるが、それとは逆にクォーツァーの平行世界や他者の命を何とも思わない非人道的な性格がジオウオーマフォームにとって有効となっている皮肉。
クォーツァーの攻撃に痛みを覚える。肉体的な痛みだけならば何てことは無い。それよりも世界と命を磨り潰す様子に心が大きく痛む。
闇の広がる大地から泡が浮き上がって来る。『世界の玉座』に新たに生まれ落ちた平行世界。しかし、出現した場所が最悪と言えた。そこはクォーツァーの足元である。
クォーツァーが生まれて間もない平行世界に右手を伸ばしていく。
「止めろっ!」
それを阻止する為にジオウオーマフォームがショートワープで接近を試みる。
黄金の光と共に消えるジオウオーマフォーム。その瞬間、クォーツァーの複眼が緑の閃光を発した。
あまりの速度で一瞬煌めいただけにしか映らないが、クォーツァーの『ライダー』の複眼から光線が放たれ、空間を貫いて空間跳躍していたジオウオーマフォームを攻撃する。
「うあっ!」
消えていたジオウオーマフォームが空間から出現する。左肩の装甲の一部が消失しており、断面が融解していた。
「お返しだ」
左腕を斬り落とされたことへの借りを返すクォーツァー。
「王の眼光の前では全ての者が屈する。お前も例外ではない」
蹲るジオウオーマフォームへ複眼を指でコツコツと叩きながら本気か冗談か分からないことを言う。
ジオウオーマフォームを無様と嗤いながらクォーツァーは切断された左腕の方へ向かっていく。
地面に落ちている左腕を徐に拾い上げる。そして、そのまま左腕を放り投げた。
真上に向かって回転しながら飛ぶクォーツァーの左腕。すると、クォーツァーは左肩を上げて腕の無い左腕を上げる。
宙を飛んでいる左腕の断面と左肩の断面に丁度挟まれる形で一つの平行世界があった。
すると、その平行世界は弾けて赤い光を伸ばす。左腕の断面と左肩の断面にその光が触れると糸の様に互いを結び付け合い、一気に引き寄せる。
断面と断面が接触し、元の位置に戻るとクォーツァーは繋がりを確認する為に一回、二回手を開閉した。左腕は平行世界を取り込んだ影響でまだ赤く輝いている。
クォーツァーが背中から噴出させている赤い光を靡かせた瞬間、ジオウオーマフォームの目の前まで接近していた。
咄嗟にサイキョージカンギレードを構えるが、クォーツァーはサイキョージカンギレードに左拳を叩き付け、再生の際に余剰となったエネルギーをぶつけてくる。
耐えようと考えなど無かった。少しでも踏ん張れば上半身が吹き飛びかねない。それを即座に判断したジオウオーマフォームは相手の一撃を逆らうことなくそのまま受け流す。
暗い世界に黄金の流星が飛んで行く。それがクォーツァーに殴り飛ばされたジオウオーマフォームであった。
音速の壁などいとも容易く突き破る程の勢いで飛ばされる。クォーツァーの姿が一瞬で見えなくなった。
(強い……!)
分かっていたことだが改めて思い知らされる。身体能力はほぼ互角だが、クォーツァーは周り平行世界を犠牲にして自らをパワーアップさせることが出来る。その時に上昇する能力はパワーアップ前と比べ物にならない程。数十億の命と世界を丸ごと犠牲にしているのだからその強さは当たり前なのかもしれないが、それを行ってジオウオーマフォーム一人を嬲るという行為に終わることを考えると理不尽さしか感じない。
殴られた衝撃で痺れる両腕を動かしサイキョージカンギレードを地面に突き立ててブレーキにする。
両肩が外れそうになる衝撃の後、ジオウオーマフォームの速度は緩まり足が地面に着く。
「単純な力は互角でも能力で大きな差がついたな」
すぐ近くで声がしたのでジオウオーマフォームは即座に構える。遥か彼方に居た筈のクォーツァーが十数メートルの位置にもう立っていた。
クォーツァーはジオウオーマフォームに見せつける様に先程殴った左手を軽く振る。その手から飛沫の様に赤い光が飛んで行く。エネルギーと化した平行世界の残滓──即ち人の命と世界の残滓である。
クォーツァーの左腕一本を治す為にまた数え切れない罪の無い人々の命が世界ごと犠牲になった。
その事実が腹立たしく、防ぎ切れなかったことが悔しくてしょうがない。
「──ふふっ。こうなってしまうとフェアじゃないな。良いだろう。俺からお前に助言を送ってやる」
「助言……?」
「お前のその世界を破壊する力を使え。そして、手当たり次第に世界を破壊しろ。そうすれば俺の力の供給を断つことが出来る」
「なっ!?」
自分が壊さない代わりにお前が壊せ。クォーツァーの言っていることはつまりそういうことである。公平を謳っておきながら出されたのは悪魔の提案であった。
「難しい話か? 所詮は俺達が歩む王道の世界から零れ落ちた世界だ。見知らぬ世界の見知らぬ者達に何故気を遣う必要がある? お前は俺を倒したいんだろう? ならば賢い選択をしないとな?」
囁く声はまさに悪魔の誘惑。
「視野を広く持て。先を考えろ。もしも、お前が俺に敗れたらどの道旧い時代は俺の手によって消滅する。お前が勝てばそれは無くなる。犠牲は最小限に済む」
クォーツァーは助言と言ったが、それはジオウオーマフォームの心を堕とす為のもの。そして、彼の心の根底を打ち砕く為のものであった。
「俺が勝たなきゃ他の世界が……」
クォーツァーの言う事は、戦う手段として間違ってはいない。実際の所、ジオウオーマフォームも薄々その方法に気付いていた。だからこそ、クォーツァーの攻撃をオーマジオウの力で防ぐことが出来たのだ。
「正しい選択をして民を導くのが王。俺は今日に至るまで自分の選択に何一つ迷いも無いし、後悔も無い。全てが完了すれば俺が統治する時代に絶対の幸福を約束しよう」
今まで所業を考えれば厚顔無恥な宣言である。だが、堂々と言い切るクォーツァーの自信にはそれらを忘れさせ、信じさせる力があった。
すると、このタイミングでジオウオーマフォームの足元から新たな平行世界が誕生する。突けば簡単に破れてしまいそうな薄い膜に閉じ込められた世界が、赤子の様な不規則で危な気な動きをしながら浮かんで来る。
「ほら。丁度いい具合に来た。どうする? このままじゃあ、その世界も俺の糧になるぞ?」
クォーツァーがジオウオーマフォームを試す様に挑発する。
「俺は……」
儚げに漂う別の世界。ジオウオーマフォームが望めばその世界は容易く破壊される。
ユラユラと彷徨う様に動くそれに、ジオウオーマフォームは手を伸ばし、その世界に触れる──ことなどしなかった。
「そんなことしない……!」
伸ばした手は拳を作り、クォーツァーへと向けられる。
「──ふん。つくづく愚かな男だ。お前は」
クォーツァーの姿が消える。生まれたばかりの世界にクォーツァーの魔の手が伸びる。
「がっ!」
だが、それを阻むジオウオーマフォームの拳がクォーツァーの頬へと突き刺さった。
「おのれっ!」
「ぐうっ!」
顔面に拳を打ち込まれたまま反撃の拳がジオウオーマフォームの頬にも命中する。
拳を交差させている形となり、一瞬の均衡が生まれる。
ジオウオーマフォームはクォーツァーの視線が先程の平行世界に向けられていることに気付いた。
「ふんっ!」
クォーツァーの膝がジオウオーマフォームの腹部を抉る。防御を貫いて背中まで突き抜け衝撃に呼吸が止まる。
ジオウオーマフォームの動きが止まった隙にクォーツァーを糧にする為に平行世界を吸収しようとするが──
『サイキョー! フィニッシュタァァイム!』
鳴り響くサイキョージカンギレードの声。しかし、現在ジオウオーマフォームは片手が塞がっている状態であり、サイキョージカンギレードも逆手に持たれ柄頭がクォーツァーに向けられている形になっていた。そこからサイキョージカンギレードが振り抜かれるよりもクォーツァーが平行世界を取り込む方が早い。平行世界を一つでも取り込めばサイキョージカンギレードの光刃はクォーツァーには効かない。
『キング! ギリギリスラッシュ!』
それでも構うことなくジオウオーマフォームは技を発動。だが、サイキョージカンギレードを逆手で振るうのではなく柄頭をクォーツァーの鳩尾辺りに叩き込む。
「ごほっ!」
「行けぇぇぇぇ!」
刃から光刃が伸び、地面に突き立てられると光刃が伸びる勢いを利用してジオウオーマフォームはクォーツァーを突いた状態でこの場から離れる。
クォーツァーを少しでもあの平行世界から引き離す為に力を込める。
確かにクォーツァーの言う通りジオウオーマフォームにとって生まれたばかりの平行世界のことなど何も知らない縁の無いもの。どんな世界でどんな人達が暮らしているのか全く知らない。
しかし、そこで暮らす人達が居る。それを知ってしまった時点でジオウオーマフォームの選択は一つしか無かった。
全ての人々が幸福で暮らして欲しい。それが常磐ソウゴが王となろうとした理由。それは平行世界の人達も例外ではない。例え、クォーツァーが出した提案が正しかろうと絶対にそれを選んではいけない。
それが王になろうとする常磐ソウゴの矜持。
「そんなちっぽけな世界を守る為に俺に抗うかぁぁぁぁ!」
ジオウオーマフォームの意図をクォーツァーは理解し、憤慨する。王たる自分よりもぽっと出の平行世界を優先して守ろうとする行為が許し難いもの。あらゆる世界よりも自らの方が価値があると断言出来るクォーツァーからすれば、その世界の方が価値あると示す行為に等しい。
憤怒の力を両足に込める。それがブレーキとなり光刃が伸びる速度が見る見るうちに落ちていき、最終的には止まってしまった。
「はああっ!」
止まった状態からクォーツァーが一歩踏み出す。押し返す力により伸びていた光刃がたわみ、次の瞬間には砕け散った。
「どこまでも俺に歯向かう奴だな! 常磐ソウゴォォォ!」
同じ名だというのに全てが対極の存在。それだけでも忌々しいが何度も何度も立ち向かって来る姿に殺意しか覚えない。
殺意のまま片手でジオウオーマフォームの首を絞め上げる。
「何度だって、歯向かうよ……! あんたに負けたら、俺は王様に、なれないから……!」
ジオウオーマフォームは首を絞めているクォーツァーの腕を掴み、力を込める。指先が装甲へと食い込んでいき、骨が軋みを上げる。
「こいつ……!」
凄まじい握力が起こす激痛にクォーツァーの指の力が徐々に弱まって行く。力だけなら対等の筈なのだが、今のジオウオーマフォームの力はクォーツァーを僅かだが上回っている様に感じた。
まるで守るという強い意思をそのまま力に換えているかの様に。
「俺がお前に劣るなど!」
それを認めようとしないクォーツァーは、ジオウオーマフォームの首を更に絞めようとするが、彼の意思とは裏腹にジオウオーマフォームの握力によって首から指が完全に離れてしまった。
「俺は絶対に!」
掴まれた腕が押し返されていく。腕力もジオウオーマフォームが上回ってきている。しかし、クォーツァーの高過ぎるプライドはその事実を決して認めない。
「認めん!」
拒絶の言葉を吐き出した瞬間、クォーツァーの意志に周囲の平行世界が引き寄せられていく。突き抜けた傲慢さと底知れない非情さがブラックホールの如く贄となる平行世界を搔き集めていく。
ジオウオーマフォームはそれを止めようとするが、クォーツァーの能力は引き寄せている段階で平行世界を赤いエネルギーへと変換する。それぞれの平行世界が紐を解く様に赤い光となり、それらは全てクォーツァーへと吸収されていく。
押し返していたクォーツァーの腕が止まる。そこから空中で固定しているかの様に微動だにしなくなった。
純粋な意思の力ならばジオウオーマフォームの方に分があるだろう。だが、それを嘲笑う非情という真逆の意思の力がクォーツァーにはある。
正しいことを為そうには間違っていること以上の力を必要とするが、クォーツァーの非情さは類を見ないものであり、生半可な正しさでは突破出来ないものであった。
「はあっ!」
クォーツァーの肘がジオウオーマフォームの顎に打ち付けられる。その一撃でジオウオーマフォームは一瞬意識が飛び掛けた。だが、間合いが近かったことも幸いした。あと一歩下がっていたら肘ではなく肘から生える突起によって顎を切り裂かれていただろう。
顎を通して脳を揺さぶられたジオウオーマフォームの動きが止まる。その間にクォーツァーは後退すると同時にドライバーの左右を二度押し込む。
『創成の刻!』
響き渡る音声と共にクォーツァーは自分と相手との間合いを完璧に調整し、立ち尽くしているジオウオーマフォームの鳩尾に赤い閃光を発する左前蹴りで突いた。
「っ!」
ジオウオーマフォームの防御を軽々と破り、爪先が深々と突き刺さる。衝撃で声を発することは出来ず、ただ肺の中の空気が強制的に押し出される。
『クォーツァー!』
クォーツァーはジオウオーマフォームを左足に乗せたまま脚を上げ、真上に掲げる。
「そんなに零れ落ちた世界が大事なら、それに合った手向けをくれてやる」
クォーツァーは右足で地面を強く踏み付ける。地面を踏んだ反動はクォーツァーの体を通じてジオウオーマフォームへと流れ込み、ジオウオーマフォームは左足から打ち上げられた。
「世界と共に散れ!」
『タイムリスタート!』
打ち上げられたジオウオーマフォームへ追い付く様にクォーツァーも跳び上がり、右足によるキックへ叩き込む。
「うわああああっ!」
天高く蹴り上げられるジオウオーマフォーム。その体はクォーツァーの放った一撃の影響で赤い光に包まれていた。
ジオウオーマフォームは天に集まっている平行世界の中へと入って行く。ただ通過するだけならば何の問題も無かった。しかし、クォーツァーの放ったキックがただの蹴りで終わる筈が無い。
ジオウオーマフォームが纏っている赤い光が周囲の平行世界に影響を及ぼす。通過する度に何も無かった平行世界が赤い光を放ち始める。その光は感染する様に広がっていく
ジオウオーマフォームもそのことに気付き始めるが、打ち上げられた勢いを殺すことが出来ずにいた。
遂には視界に映る全ての平行世界が赤い光を発する様になる。
「これは……!?」
何をしようとしているのか嫌でも分かってしまう。先程のクォーツァーの攻撃はただの攻撃ではない。ジオウオーマフォームに自らの力を纏わせることで、平行世界そのものを爆弾へと変える誘爆装置にしてしまったのだ。
「消えろ」
その言葉を合図に平行世界が爆発を引き起こす。連鎖する極大の爆発の前にジオウオーマフォームの姿など一瞬にして消えてしまった。
◇
──ゴ。──ウゴ。ソウゴ!
「え……?」
自分の名を呼ばれ、目を覚ます。まるでビッグバンの様な爆発の中心に置かれたジオウオーマフォームだったが、どういう訳か軽傷で横たわっていることに気付く。
「無事ね? 良かった……」
「ツク、ヨミ……?」
居る筈の無いツクヨミが自分に膝枕をしている。ジオウオーマフォームは夢でも見ているのかと思ったが、伝わってくる感触でそれが現実であることに気付く。
「何で!?」
上体を跳び上がる様にして起こすジオウオーマフォーム。元の世界に戻ったのかと思ったが、暗闇と浮かび上がる平行世界の泡を見て、まだ『世界の玉座』に居ることが分かる。
つまりツクヨミの方がこちら側に来たことを意味する。
「ツクヨミ!? どうしてここに!? っていうかどうやって来たの!?」
体のダメージなど無視て質問を捲し立てる。クォーツァーの能力があってこそ『世界の玉座』に入ることが出来た。幾らツクヨミが特別な力を持っていてもそう簡単に来られる空間では無い。
「これを使ったの」
ツクヨミが差し出したのは通常のライドウォッチよりも厚みのあるライドウォッチ。よく知るデザインのライドウォッチであった。
「トリニティライドウォッチ!? ……じゃない?」
ジオウトリニティライドウォッチかと思ったが、よく見ると違う所がある。描かれている顔がジオウトリニティではなく仮面ライダーツクヨミであった。
「このウォッチの力で私達はここに来られたの」
「このウォッチで……?」
トリニティライドウォッチを使えば時間や空間を超えて召喚されることは彼も知っている。しかし、それは変身者を起点とするもの。本来ならばジオウオーマフォームがツクヨミに引き寄せられる筈である。
「そのウォッチ、どうやって手に入れたの?」
「オーマジオウがくれたの。──正確に言えば手に入れるきっかけを作ってくれた」
「オーマジオウが……」
「このウォッチを持って私達がソウゴに会いたいって強く願ったらここに着いたの。というかここは何処なの?」
ツクヨミが行ったことはその召喚の応用であった。殆ど無意識にやったことから彼女の潜在能力の高さが分かる。そして、クォーツァーの力が無ければ辿り着けない『世界の玉座』もジオウオーマフォームとツクヨミの心が強く結ばれていることから入り込むことが出来た。
「えーと、ここは『世界の玉座』で……いや、説明している暇はなんてない! 今は見失っているみたいだけど! いずれは見つかる! ツクヨミは早く避難を──」
「避難なんてしない。私達は、貴方と一緒に戦う為に来たの」
「一緒にって……私達?」
ツクヨミの背後に薄っすらと何かが浮かび上がって来る。段々と姿と輪郭がハッキリし出し、やがてゲイツとウォズとなった。
「ゲイツ! ウォズ!」
「……二人のことは二人自身から聞いた。私が知らない間に……」
『お前が悔やむ必要は無い。こうなったのは俺達の弱さが招いたことだ』
『そういうことさ。それにこの姿も割と便利なことが分かった。こうやって我が魔王と再会出来たのだからね』
半透明の実体の無い存在ながらも二人の口調は重々しいものではない。
「もしかして、二人共今はそのライドウォッチの中に……」
『ああ、そうだ。こんな俺達でもまだお前の役に立てる方法があると言われたら、乗るしかない』
『生憎、まだ我が魔王にタップリと未練があったからね。都合が良かったよ』
死して尚一緒に戦おうとしてくれる二人に胸が熱くなる。
「私も二人と同じ気持ち。私は皆と一緒に戦いたい。最後の最後まで。私達は……仲間だから」
「ツクヨミ……」
ツクヨミがジオウオーマフォームへトリニティライドウォッチを差し出す。
「……敵は今までにない程に強い」
『ああ』
「でも! 俺は! 絶対に彼奴にだけは負けたくない……!」
『そうかい』
「俺は彼奴を超えて行く! だから……だから……! その為に俺と一緒に戦ってくれ……皆っ!」
「ええ。一緒に戦いましょう」
ジオウオーマフォームはツクヨミからトリニティライドウォッチを受け取る。そして、ライドウォッチを起動。
『ツクヨミトリニティ!』
それをジクウドライバーのスロットにセットしようとした時、不意にオーマジオウの言葉を思い出す。
『……お前はオーマジオウとなってその力を得る道では無く、ジオウとしてオーマジオウの力を継承した』
『その違いを覚えておくことだ』
オーマジオウドライバーとジクウドライバーを比べてそう言っていたが、今になってその意味を理解した。
オーマジオウドライバーには他の力を使う為のスロットが存在しない。オーマジオウは平成ライダーの歴史を背負いながら戦っている。しかし、その隣に一緒に並んで戦う者が存在しない孤高の強さの表れでもあった。
だが、ソウゴはジオウでありながらオーマジオウの力を得た。それは、オーマジオウとは違い、今の様に仲間と共に並び一緒に戦うことが出来る。
「そうか……そういうことだったんだ……」
オーマジオウは最初から示していたのだ。独りで戦うな、と。
「──ありがとう」
ツクヨミトリニティライドウォッチをスロットに挿し、リューズを回す。
『ツクヨミ! ゲイツ! ウォズ!』
ツクヨミトリニティライドウォッチが三段階に開き、ジクウドライバーの中央を覆って時計盤を出現させる
「──未来の俺」
『キングターイム!』
◇
「何だ!?」
クォーツァーは突如発現した巨大な力に気付き、視線をそちらへ向ける。
「まさか……あの爆発でも生きているのか……!」
その力の源がジオウオーマフォームであることを察知する。どんな絡繰りを使って脱出したのかは分からないが、生きているのなら一刻も早く始末する必要がある。
そして、何よりも発現している力にクォーツァーは嫌なものを感じ取っていた。
すぐさま移動を始めるクォーツァー。今の彼ならば空間と空間を歪めて繋げることは容易い。
空間を通り抜け、現れた先はまさに力の発現の真っ最中であった。
「これは……!?」
『トリニティターイム!』
ジオウオーマフォームを囲う様に右側に仮面ライダーゲイツ、左側に仮面ライダーウォズ、正面に仮面ライダーツクヨミが立つ。
ゲイツから分裂する様に現れる仮面ライダーゲイツリバイブ剛烈と疾風。ウォズからもフューチャリングシノビ、クイズ、キカイ、ギンガファイナリーが出現。
ゲイツとウォズの体は変形し、腕時計の様な形態になると二人の体は光を発してゲイツは金色にウォズは銀色となる。
変形した二人の頭部が右肩、左肩へと装着されると出現していたゲイツリバイブ達は金色の枠に、ギンガファイナリーらは銀色の枠に囲まれてレリーフとなる。
ゲイツリバイブ疾風のレリーフは左脚、フューチャリングシノビは右脚の脚甲となって装着され、クイズは右腕、キカイは左腕の装甲として付く。そして、ゲイツリバイブ剛烈は左手、ギンガファイナリーは右手、それぞれ甲の部分まで覆う手甲へと変化し、装備された。
正面に立つツクヨミが祈る様に指を組む。その背に羽織る白いマントが翼の様に広げされた。
ツクヨミを左右から挟む金と銀の枠。それに囲まれたツクヨミは金と銀のレリーフと化してジオウオーマフォームへと飛んで行き、広げられたマントがチェーン代わりになってジオウオーマフォームの首へ掛かり、首飾りの様にツクヨミのレリーフが下げられる。
「な、何だ……その姿は……?」
仲間達が歩んできた歴史と力がジオウオーマフォームと一つになる。
だが、この姿は最強を目指すものではない。仲間と共に戦うことでこれから進むべき王道を真っ直ぐ歩く為の、その一歩目。
そして、
仮面ライダージオウOver Quartzer
色々と考えてオーマフォーム、トリニティ、グランドジオウを混ぜ合わせた姿にしてみました。基本ベースはオーマフォームのイメージで。
ついでに名前も変更しました。ジオウオーマフォーム、ジオウオーマフォームばっかり書いていると読み難いかと思ったので。
先にどちらが見たいですか?
-
IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
-
IFゲイツ、マジェスティ