ジオウOver Quartzerの姿を目の当たりにしたクォーツァーは静かに息を呑む。単純に考えればジオウオーマフォームにたった三人の仮面ライダーが加わっただけに過ぎない。だというのにその変化は劇的なものであった。
先程までのクォーツァーは、平行世界の吸収する能力があればジオウオーマフォームに勝てると見込んでいた。それは確信であった。だが、ジオウOQを見た途端に確信していた勝利が揺らぐのを感じた。
それは、クォーツァーが全能力を発揮したとしてもジオウOQに勝てる保証は無いことを意味する。クォーツァー自身の高い能力がその現実を突き付けてきた。
「──ふっ。随分と歪な姿になったな?」
しかし、クォーツァーはそれをおくびにも出さず、ジオウOQの姿を嘲る。
「まだ前の姿の方がバランスが良かったぞ? それが今じゃ……まるで俺の言う平成を体現した姿だな」
絶対に勝てる未来が勝てる保証が無い未来になったとしてもクォーツァーは下手に出るつもりも無いし、へりくだった態度をとるつもりも無い。頂点に立つ王としてこれでもかというぐらいの傲慢さを見せつける。それはある種の精神力の強さの証でもあった。
「何とでも言えばいいよ」
それに対してのジオウOQの態度は至って冷静なもの。嘲笑されたことへの怒りは微塵も無い。
「この姿が俺の全部だ」
誇る様に告げるその姿に、クォーツァーは仮面の下で顔を顰める。ジオウOQの超然とした態度が癪に障る。
「ほざけ」
継ぎ接ぎだらけの格好を二度と見られない形にすることに決めたクォーツァーは、全身に力を込める。クォーツァーという巨大な存在が放つ引力に幾つもの平行世界が引き寄せられていき、一定の距離まで近付くと赤い光となって吸収されてしまう。
「──ツクヨミ」
その光景を見てジオウOQは小声で囁く。意識が自らの内側へ向けられる。
ジオウトリニティの時と同じく、ジオウOQの精神世界にはツクヨミが存在している。死者であるゲイツとウォズも当然存在しており、精神体或いは幽霊としてジオウOQの脳内に確かに存在していた。
『どうしたの?』
脳内にツクヨミに声が響く。
「頼みたいことがある。凄い大変なことだけど」
『言って。私に出来ることならやってみせる!』
ツクヨミの頼もしい答えが返って来る。
「じゃあ──」
声に出さず、頭の中に投影する様にツクヨミにやって欲しいことを示す。ツクヨミが言葉を失うのが伝わって来る。残りの二人の反応も似たようなものであった。
「お願い! 今の俺達の力なら行けそうな気がするんだ!」
『……ソウゴがそう言うのなら、やってみせるわ! でも時間をちょうだい!』
伝えられた内容は無茶なものであったが、ツクヨミは頼もしさを感じさせる力強い了承をする。
『おい、ウォズ』
『何かな?』
精神世界でゲイツがウォズへ声を掛ける。
『いつものアレはやらないのか?』
『──ああ、そのことか』
アレとはソウゴが新たな姿になる度にウォズが行っている祝福の儀のこと。ここに至るまでウォズが口を閉じていることを不審に思い、ゲイツの方から催促する様に尋ねる。
『正直、感無量で祝福する言葉すら思いつかない始末だよ。それに相手が相手だけに考えている余裕すら無い。だが、安心してくれたまえ。必ず私は祝福しよう。勝利を確信したその時に!』
『……別にそんなものに期待している訳じゃない。お前が黙っているのが不気味に思ったからだ』
祝福に対する情熱を燃やすウォズに対してゲイツの方は呆れた様な態度であった。
ジオウOQ自身、そんな彼らのやりとりを楽しんでいた。これから平成という時代を賭けた決戦だというのに気の抜けるやりとりなのかもしれないが、これこそが彼らにとっての日常の一部。
そのおかげで気負いすることなく普段通りに戦える。
「──ふぅ。行くぞ! クォーツァー!」
『ゲイツリバイブ疾風!』
『フューチャリングシノビ!』
ジオウOQの両脚にあるレリーフが輝く。そこに込められた力が足へと伝播する。
最速と最速が組み合わさった時、そこから生じる力は如何ほどのものか? 最速+最速という足し算ではない。最速×最速という掛け算でもない。最速の二乗でもない。
そもそも単純な計算で答えが導き出されることではないのだ。最速と最速が組み合わさて生み出す速度、通常の計算を超えた光速となる。
物理法則を捻じ曲げ、時を狂わせる速度を以ってジオウOQはクォーツァーへ急接近する。この時点で大半の相手は何もすることも出来ず、何かされたことを認識すら出来ないまま散ることだろう。だが、ジオウOQの相手は創成王クォーツァーである。不可侵である光速の世界にこの王の感覚は追い付いていた。
『俺達の速さについてこれるか?』
(速ければいいというものじゃない!)
速度に任せ直線を愚直に進んで来るジオウOQをクォーツァーは嘲笑する。平行世界の力を多数取り込んで性能を向上させた彼にとって光速の動きも『少し速い』と思う程度。感知出来るということは当然ながら対応も出来るということである。
真っ直ぐ突っ込んで来たジオウOQに対し、クォーツァーは五指を揃えた右手を振り上げる。
ジオウOQが間合いに入り込むと同時に刹那の速度で振り下ろされる手刀。ジオウOQの肩から入り胴体半ばまで沈み込む。
「──ッ!」
おかしい、と異変を感じ取ったクォーツァー。直に触れているからこそ分かる感触。
このジオウOQは本物では無い。そう思った瞬間、手刀によって裂かれた肩から圧縮された風が吹き出し、クォーツァーに浴びせられる。
突風は形を変えて竜巻と化し、その内部にクォーツァーを閉じ込める。
(これは……!?)
『残念。外れだよ』
内側からの一振りで竜巻を真っ二つに割って脱出するクォーツァー。その背後にジオウOQが迫っている。
クォーツァーは振り返り様に後ろ回し蹴りを放つ。ジオウOQの胴体にクォーツァーの足がめり込み、それにより胴体の三分の二以上が潰された。
すると、ジオウOQの体が膨れ上がり、破裂すると中から火炎が噴き出す。
(分身……!)
間近で火炎を噴かれ、腕で咄嗟に防御する。鉄すら瞬時に蒸発させる温度を秘めていたが、クォーツァーを焼くには火力が足りない。
クォーツァーが眼光を発すると火炎は爆ぜる様にして消える。
そこへ真っ直ぐ飛び込んで来るジオウOQ。本物か偽物か判断する間も無くクォーツァーはそのジオウOQの顔面に拳を打ち込んでいた。
打ち込んだ拳が顔面を貫いた時、ジオウOQの全身に亀裂が入り、弾けると共に内部に仕込まれていた強烈な光がクォーツァーの目を焼く。
「ぐあっ!」
太陽を直視した様に視界が全て白光で覆い尽くされる。失明状態にあるが、クォーツァーの回復力を以ってすれば一、二秒で元の状態に戻る。
しかし、その僅かな時間も彼らの戦いに於いては戦況を大きく変える。
(やはり、フューチャリングシノビの分身と変わり身!)
極短い時間の中でクォーツァーは高速で思考を動かす。
ジオウOQはゲイツリバイブ疾風の能力にフューチャリングシノビの忍術を加えることでクォーツァーを翻弄してきた。クォーツァーですら攻撃するまで本物かどうかも分からないぐらい精緻な分身を生み出し、しかも攻撃をすれば中に仕込んである竜巻、火炎、閃光がクォーツァーに炸裂するという質の悪いもの。
次なる攻撃を予想しながらクォーツァーは回復した視界を開く。
「──」
吐息の一つも漏らさなかったのは流石と言えよう。目の前に千を超えるジオウOQの分身が並んでいる光景に。
無数のジオウOQの左足に、足を挟み込む様に一対の蒼爪が出現する。それは、つめモード時のジカンジャックローの爪そのものであった。
ジオウOQ達が一斉に左足を振るう。そこから放たれる爪型の光弾。周囲三百六十度。その上、上空からも攻撃を放つジオウOQの分身もいる。徹底して逃げ場を塞ぐ完全包囲攻撃。
数え切れない光弾がクォーツァーたった一人に行われる。普通ならば絶望してもおかしくはない光景であったが、クォーツァーという規格外にはその絶望を跳ね返すだけの力が備わっていた。
「舐めるなっ!」
クォーツァーが吼えると背部から赤い光が孔雀の羽の様に広がる。クォーツァーはその光を広げながらその場で一回転した。
赤い光はマントの如く翻り、迫りくる光弾を全て弾き飛ばしてしまう。そして、ついでと言わんばかり光を伸ばし、その光に触れたジオウOQの分身を消し飛ばす。
一回転し終えたクォーツァーがドライバーの片側を押し込む。
『創生の刻!』
読み上げられるのはザモナスの力。クォーツァーは広げていた赤い光を自分に巻き付かせ繭の様にする。
『ザモナス! タイムバースト!』
繭状になっていた赤い光が形状を変え、あらゆる方向に棘を伸ばす。棘の一本一本から更に複数の棘が枝分かれし密度を高めたジオウOQへの意趣返しを込めたクォーツァーの全方位攻撃である。
光の棘に貫かれた分身達が煙と共に次々と消滅していく。そんな中で一人だけ棘による攻撃を搔い潜っているジオウOQが居た。このジオウOQこそが本体である。
迫る棘に敢えて自分から向かっていく。貫かれると思った瞬間、棘は虚空を刺しておりジオウOQは実体が無い筈の棘を足場にして走る。
足の幅よりも細い棘の上を難無く全力疾走するジオウOQ。それを妨害する様に棘から新たな棘が伸び刺し貫こうとするが、まるで予知していたかの様にジオウOQは事前に跳び、別の棘に移動してクォーツァーとの距離を詰める。
クォーツァーもこの時点で本体を見極めており、範囲攻撃を止めて本体への攻撃に集中する。
棘が集まり壁の様になってジオウOQへと迫る。それを見たジオウOQは次に踏み出す右足を棘の上に力一杯に踏み付ける。
右足裏から紫に光る糸が伸びて蜘蛛の巣の様に急速に広がっていく。それに絡み取られた棘の動きが停止した。
フューチャリングシノビによる忍法時間縛りの術。これによりクォーツァーの攻撃は時間の糸に絡み付かれ、自由を奪われる。
こうなれば迫っていた棘の壁も攻撃ではなく道を妨げるものに成り下がり、ジオウOQはスピードを緩めないまま跳び上がって左足を一閃。一対の爪によって裂かれてクォーツァーまでの道が文字通り切り開かれる。
速度を維持したままジオウOQはクォーツァーに強襲を仕掛ける。降下と共に左足の爪で攻撃する様は獲物を襲う鷹を彷彿とさせる。
ジオウOQの爪に対し、クォーツァーは腕を掲げることでそれを防ぐ。爪はクォーツァーの装甲を薄く削っただけに留まり、ダメージには程遠い。
攻撃を防いだクォーツァーは反撃の拳を突き出すが、ジオウOQは空中で軌道を変えて背後へ回り込む。だが、その動きを読んでいたクォーツァーは後ろへ向けて蹴りを放っていた。
咄嗟に上体を仰け反らせて回避するジオウOQ。その際に足が微かに掠り、胸部装甲の一部が削られる。
クォーツァーは反転。その間にジオウOQは仰け反った体勢から後方へ宙返りし一定の距離を開ける。
クォーツァーは向き直ると同時に前蹴りを繰り出し、ジオウOQは左手による縦拳を出す。
『ゲイツリバイブ剛烈!』
『フューチャリングキカイ!』
ゲイツリバイブ剛烈とフューチャリングキカイの力が解放され、ジオウOQの左腕に比類なき剛力が宿る。
衝突するジオウOQとクォーツァーの拳。ジオウOQの拳周りには鋸状の光刃が発生しており、左足と同様にジカンジャックローののこモードを再現していた。
拳をぶつけ合い火花が断続的に飛び散る。
「はあああああっ!」
「おおおおおおっ!」
光刃が高速回転することで生じる振動がクォーツァーへと流れ込み、彼の体を痙攣させる様に震わす。
「があっ!?」
遂にはクォーツァーとの打ち合いに勝利するジオウOQ。
拳を弾かれたクォーツァーはすぐさま体勢を立て直し、もう一度攻撃を繰り出そうとするが──
「何っ!?」
クォーツァーは己の拳が完全に凍結していることに気付く。凍結の浸食は拳だけに留まらず腕まで上って来ていた。
先程の拳に込められていたのはゲイツリバイブ剛烈だけでなくフューチャリングキカイの力も足されてある。剛力だけでなく相手を凍結させる力も有しており、打ち合いの最中に流し込んでいたのだ。
このまま攻撃すれば腕が砕け散ることが分かったクォーツァーは、咄嗟に反対側の腕に切り替える。しかし、その僅かな間すらジオウOQにとっては絶好のチャンスであった。
「たああああっ!」
『はあ!』
『ふん!』
三つの声が一つに重なり、クォーツァーの鳩尾に左拳が捻り込まれる。
「がはあっ!」
重い一撃が突き刺さりクォーツァーは苦鳴を洩らす。だが、ジオウOQの攻撃はそこから光刃による削りと超振動を放ち、その上でキカイによる絶対零度の凍結を行う。
凍結によって脆くなった体に大きな振動を加えれば瞬く間に粉微塵と化すだろう。
それを悟ったクォーツァーは攻撃を受けながらドライバーを操作。
『創星の刻!』
ゾンジスの能力を発動。一時的に力を上昇させ、力任せにジオウOQの顔面を殴りつけた。
「うわあっ!」
押し付けた攻撃をしていたので咄嗟に離れることも防御も間に合わず、相手の攻撃の直撃を受けてしまう。しかし、攻撃を受けた際に悪足搔きの様に左拳を突き出したことで両者は互いの力によって殴り飛ばされる。
力があまりに強過ぎて彗星の尾の様な残像を残しながら飛んで行く二人。勢いを殺して止まった時にはお互いに相手が見えなくなる程の距離を移動していた。
『ゾンジス! タイムエクスプロージョン!』
クォーツァーが手を掲げるとそこに平行世界が引き寄せられていき、世界がただのエネルギーの塊へと変換されていく。相手が捕捉出来なくとも関係無い。この攻撃の前に逃げ場など存在しないからだ。
「消えろ……!」
ジオウOQが居るであろう凡その場所へ向け、腕を振り下ろす。
その光景はジオウOQ側からも見えていた。世界と人々の命を犠牲にして放つ禍々しい輝きを見落とす筈が無い。
「ツクヨミ!」
『ごめん! もう少し時間をちょうだい! あと少し、あと少しなの!』
『我が魔王! ここは私が!』
ジオウOQの内側でウォズが買って出ると両手を頭上へ掲げる。
『ギンガファイナリー!』
発動するウォズギンガファイナリーの能力。右手の上空に水星を始めとし海王星までの太陽系八つの惑星を模したエナジープラネットを生成。その大きさは本物に比べれば遥かに小さいが、それでも通常時のギンガファイナリーが放つエナジープラネットの数十倍の大きさを持つ。
惑星型のエナジープラネットは円を描いて周回する。その中心には煌々と輝く太陽。大きい筈の惑星型エナジープラネットが小さく見える程の大きさを持っている。
ギンガファイナリーだけでなくワクセイフォーム、タイヨウフォームの力を一つにし、『世界の玉座』にて太陽系を顕現させた。
『私もこれを放てばどうなるのか想像も付かない……覚悟はいいかい?』
『──ああ、遠慮せずに行け!』
『大丈夫。私の覚悟はもう決まっているから!』
「行くよ! 皆っ!」
ジオウOQが太陽系を投げ放つ。それと衝突するのは無数の世界を糧としたエネルギー。
『世界の玉座』にて有り得ない程のエネルギーとエネルギーがぶつかり合い、誰も踏み込んだ事の無かった領域は内側に発生した凄まじいエネルギーによって膨張。エネルギー量が桁外れであった為、膨張し過ぎて空間の一部が裂ける。
その裂け目はとある世界に影響を及ぼした。
◇
『ライダーキック!』
二つの声と共に放たれる必殺の一撃。それを胴体に受けた量産型ダイマジーンは粉砕される。
息の合ったコンビネーションを見せた二人が降り立つが、そこに勝利の喜びは無く目を合わせることもしない。
仮面ライダー3号にとってこの戦いは贖罪であった。世界はショッカーの為にあると豪語した仮面ライダー4号に対し、共闘していても一切の隙を見せない。
「そんなに怖い顔をしてどうした? 先、輩?」
4号が顎を擦りながらわざとらしく訊いてくる。その問いに対して3号は無言を貫く。敵の敵は味方という言葉があるが、それを素直に信じる程3号はお人好しではない。今も人々の為に戦うRXの代わりに不審な動きがないか目を光らせる。
4号がおかしな真似をしないか警戒しながらRXの様子を窺う3号。RXは無数の量産型ダイマジーンの残骸の中心で空を見上げていた。
ほぼ全ての量産型ダイマジーンを倒したが、それでもRXのその行動は無警戒過ぎる。余程の事情があって空を見上げていると思った3号は、それを確認する為に自分もまた空を見上げた。
「あれは……?」
空には投影されたかの様にある映像が浮かび上がっている。そこでは金と銀の仮面ライダーと真紅の仮面ライダーが激しい戦いを繰り広げていた。
3号も空に浮かんでいる映像がまさか異空間の裂け目から漏れ出たものがこの世界に干渉した結果映し出されているとは知らず、困惑する。
「ソウゴ……頑張れ……!」
その呟きは3号の耳にも届いた。どうやら空に映し出された仮面ライダーの片方とRXには面識があるらしい。
RXは声援を送りながらも強く拳を握り締めている。本当なら手助けに行きたいが、そうすることも出来ず応援しか出来ないことに歯がゆさを覚えている。
「どっちが勝つんだろうな?」
4号が試す様な口調で尋ねてきた。
「仮面ライダーとしては正義が勝って欲しいか?」
「……勝てば正義。負ければ悪。──そういうもんだ」
「何だ。意外と話が通じるな、先輩」
「だからこそ──」
3号の中に宿る正義が囁く。本当は誰に勝って欲しいのかを。
「──彼奴には勝って欲しいと俺は思っている」
その目は真っ直ぐジオウOQへと向けられていた。
◇
仮面ライダーマッハチェイサーが握るゼンリンシューターの前輪がカッシーンへ押し当てられる。ゼンリンシューターが振り下ろされると前輪がカッシーンの装甲を大きく削り取る。
その一撃で怯んだカッシーンにマッハチェイサーはゼンリンシューターで狙いを定めて光弾を発射。削られた装甲部分に光弾が命中し、カッシーンは破壊される。
仮面ライダーハートは四方をカッシーンらに囲まれながらもその力を以ってカッシーン達を圧倒していた。
「ふんっ!」
囲まれていようと関係無い。ハートが拳を突き出せばそれだけ必殺に等しく、受けたカッシーンは一撃で粉砕される。
数をものともしない力で捻じ伏せられていくカッシーン達。ハートが手足を動かす度にカッシーン達が吹き飛び、散らばり、宙を舞う。
そして、三人の仮面ライダーの中で一際異彩を放つのがこのライダー。
「ライダァァァ」
手刀がカッシーンの胴体を貫く。
「毒手ぅ!」
その言葉通り貫いた手には毒々しい色をいた粘液が纏わりついており、機械兵士であるカッシーンは明らかに手刀によるダメージではなく毒によるダメージで体を細かく震わし、体の各部から煙を出して動かなくなる。
「いーひっひっひっひっ!」
仮面ライダーらしからぬ卑しい笑い声を上げるのは仮面ライダーブレン。カッシーンの胴体から手を引き抜き、他のカッシーンに毒液で濡れた両手を見せつけて威嚇する。
「うへぇ、何て戦い方だ……」
「まあ、あれがブレンにとって最も好ましい戦い方なんだろう」
一足早く自分達の相手を倒したマッハチェイサーとハートは、奇声を発しながらカッシーンの顔面に毒液を塗りたくる姿を見て片や呆れ、もう片方はそういうものだと納得する。
既に一帯のカッシーンらは三人のライダー達によって全滅させられていた。
このまま別の地点へ向かおうとした時──
「ねえねえ」
『うん?』
幼い声を掛けられマッハチェイサーとハートは同時に振り向く。小さな子供一人、二人のライダーを見上げていた。
「おい。ここは危ないぞ?」
「一刻も早く離れた方が良い。親はどうした?」
カッシーン達を一掃したとはいえまだ何処に潜んでいるかは分からない。マッハチェイサーとハートは幼子を気遣い、近くに身内がいないか訊く。
「……分かんない」
幼子は首を横に振る。目立った外傷は無い。恐らくは避難している最中にはぐれたものだと推測出来た。だが、幼子は自分の身に何が起きているのか正確に把握していない様子。
自分の置かれている状況が分かっておらず、不安は抱いているが恐怖までは抱いていない。だからこそ、仮面ライダーへ平然と話し掛けられたのかもしれない。
「おや? 迷子ですか?」
カッシーン達を倒したブレンが合流する。
「ねえねえ」
幼子は同じ言葉を発しながら視線を上に向けていた。その視線は明らかにライダー達から外れている。
「あれもお兄ちゃん達のお友達?」
指差した方向へ目を向けると空に映し出された映像の中でジオウOQとクォーツァーが激しく戦っている。
「ソウゴ!?」
「成程。あれか……」
「そうですね。私達を招き寄せたのはあのライダーのようです、ハート」
マッハチェイサーは驚き、ハートとブレンは直感的にジオウOQが自分達を召喚した存在だと悟る。
「お友達……?」
「──ああ。あいつはな、君達が笑って過ごせる時代にする為に今一生懸命頑張っているんだ」
マッハチェイサーは幼子の前でしゃがみ込み、目線を合わせる。
「何ていうお名前?」
「仮面ライダー……仮面ライダージオウだ」
名を知り、幼子は再び上空を見上げる。不思議なもので映っているどちらがジオウなのかマッハチェイサーは教えていなかったというのに幼子の視線はジオウOQの方へ向けられていた。
見ていて感じ取ったのかもしれない。どちらが自分達の為に必死になって頑張っているのかを。
だからこそ幼子は空に向かって精一杯の声を送る。
「頑張れー! 仮面ライダージオウ!」
あと二回で最終回となる予定です。最後までよろしくお願いします。
先にどちらが見たいですか?
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IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
-
IFゲイツ、マジェスティ