仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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次回、最終回。


Over Quartzer その28

 太陽系を模した惑星型爆弾と世界と人々を犠牲に作り上げられた平行世界の爆弾。二つの爆弾が空間内で爆発した時、闇一色であった世界に強烈過ぎる程の灯りが点る。

 端から端までが閃光によって染め上げられる中で、少し遅れて爆発の破壊力が『世界の玉座』を襲った。

 聞いた事も無い音が『世界の玉座』内に響き渡る。それは爆音ですら掻き消されない。

 これが空間そのものが膨張して軋む音であると誰一人知らないだろう。

 そして、この凄まじい爆発を引き起こした当人らもそれを知らない。そもそもそんなことに意識など割いていられない。

 閃光、爆発、衝撃で乱れる空間内を自らのダメージに構うことなる走るジオウOQ。爆発が収まるまで待つなどと悠長なことなどしていられない。

 例え、爆発が生み出す膨大なエネルギーで外装が削られようとも、衝撃波によって装甲の一部が凹もうとも今動かなければならない。

『ライダー』の複眼の効果によって光量を制限しても尚眩しい空間内でジオウOQは、自分と同じく爆発の真っ只中を走る影を見つける。

 爆発の中でも真紅の輝きが失せる事の無いクォーツァー。ジオウOQと同じく我が身を顧みずに距離を詰めていた。

 両者とも分かっていた。様子見をしていたら爆発が収まると同時に襲われることを。だからこそ無茶は承知で爆発の中を走り抜けて必要があった。少しでもこの戦いを有利に進める為に。

 これだけ危険な真似をしても条件が五分になった程度。

 接近と同時にお互いが放ったのは拳であった。ジオウOQは下から突き上げ、クォーツァーは上から振り下ろす形で。

 ジオウOQの顔面が殴打されるのとクォーツァーの腹部が突き上げられるのは同じタイミングであった。

 

『──ッ!』

 

 二人の口から苦鳴が出るが未だに生じている爆発のせいでそれも聞こえない。

 相打ちとなった両者は距離を取ることなどせずその場で足を止め、殴り合う。

 赤い光を拳に宿して殴り掛かるクォーツァー。ジオウOQを確かに捉えたと思った瞬間──

 

『フューチャーリングシノビ!』

 

 それが分身による変わり身と発覚。本体はクォーツァーの目の前で横回転をし、回転によって勢いをつけた蹴りを鎖骨付近へと叩き付ける。

 打ち下ろしの蹴りで膝が折れるクォーツァー。しかし、すぐにその足を掴み取り地面へと風切り音と共に叩き付ける。

 受け身を取れることも出来ず凄まじい勢いで地面を跳ねるジオウOQ。クォーツァーは一度で終わる事無くもう一度地面へ叩き付けようとしジオウOQを持ち上げようとする。だが、その瞬間反対側の足か伸びた爪がクォーツァーの腕を突き刺し無理矢理離させる。

 ジオウOQはすぐに立ち上がり反撃に転じる。

 

『フューチャーリングキカイ!』

 

 ジオウOQの拳に氷柱が発生。その拳をクォーツァーへ捻じ込む。右胸部へと氷柱が突き刺さり、そこから冷気がクォーツァーを侵食していくがクォーツァーはそれにダメージを負った様子を見せず、逆に刺しているジオウOQの拳を掴んで逃げられなくする。

 クォーツァーが腕を上げる。腕部側面から赤い光が噴き出し、刃状となって連なる。

 逃げられないジオウOQの肩へ刃が押し当てられた。

 この時点で既に覚悟を決めていたジオウOQは、クォーツァーの脇腹に掌を当てる。

 

『ギンガファイナリー!』

 

 押し当てられた刃が力の限り振り下ろされるのと掌打と共に放たれたエナジープラネットが炸裂するタイミングに誤差は全く無かった。

 斬り裂かれ、前のめりになるジオウOQ。体がくの字に折れて吹き飛ばされるクォーツァー。

 ジオウOQは立ち上がろうとするが足が動かない。クォーツァーも倒れることはしなかったが、移動させられた場所から足が張り付いた様に動かせなかった。

 息つく暇も無い攻防を見せた両者だが、どんなに強い意思があろうともそれを上回るダメージを負ってしまえば簡単に動くことなど出来ないのは当然のこと。

 二人の戦いに間が出来る。丁度そのタイミングで『世界の玉座』を照らしていた爆発が収まった。常時鼓膜を震わせていたうるさ過ぎる音は僅かな余韻を残して彼方へ消える。

 例え瞼を閉じていたとしても瞼越しに眩しさを感じさせるだろう爆発の閃光もあっという間に闇の中へ消滅し、最初に来た時の様に平行世界の輝きのみがこの世界の灯りとなる。

 ジオウOQとクォーツァーは目を逸らすこと無く視線を衝突し続ける。その間にも受けたダメージを全力で回復させていく。

 激戦の中で偶然生まれたほんのひと時の間。それはあまりに静かで、お互いの息遣いが聞こえる程の静寂が鬱陶しく感じる。

 示し合わせた訳では無い。そもそも息を合わせたつもりも無い。だというのに、二人が立ち上がり構えるまでの時間はコンマ数秒の誤差の無いものであった。

 何一つ交差するどころか掠ることもしない王道を掲げる両者。しかし、相手を絶対に倒すという鋼の意思が二人に奇妙なシンクロニシティを与える。

 不思議と相手の思っていることが分かる。このまま真っ直ぐ突っ込んで殴る、という至ってシンプル、というよりも先程と全く変わらない攻め方。だが、二人はそれが分かっていても真っ向から受けて立つつもりであった。

 勝負を避けるという選択肢など有り得ない。そもそもそれを選ぶ様な相手ならばとっくに決着が付いていた。

 一歩踏み出すタイミング。そこから加速するタイミング。全てが合致し、姿が似ていないのに鏡合わせの様な動きを見せる。

 距離を詰め、互いに拳を振り上げる所まで同じ。

 行動が分岐するのはこの直後であった。

 

「問題!」

『クイズ!』

 

 拳を突き出しながらジオウOQが叫ぶ。場違いな台詞にクォーツァーは一瞬ジオウOQが何を言っているのか理解出来なかった。だが、すぐにその言葉の意味を思い知る。

 

「あんたは王様に相応しい? 〇か✕か!?」

 

 フューチャリングクイズの能力の発動。答えを間違うか、もしくは解答を拒否すればペナルティーが待っている。

 

「答えは──」

 

 クォーツァーが出す答えは一つしかない。

 

「〇だっ!」

 

 解答と共に拳が放たれる。その答えは──

 

「があっ!」

 

 闇色の空間を再び白く染め上げる雷。それは仮面ライダークイズやフューチャリングクイズの時に発生する雷よりも遥かに威力が高まっており、数え切れない程の雷がクォーツァーの体を貫く。雷が雨の様に降り注ぐ光景は、文字通りの雷雨であった。

 クォーツァーの答えは不正解だった──訳では無い。

 

「うぐあっ!」

 

 それを示す様に雷はクォーツァーだけでなくクイズを出したジオウOQをも貫いている。

 クォーツァーが王に相応しいのかどうか。それはまだ運命すら決めあぐねている難題。即ち答えの無い問題であった。故にそんな問題を出したジオウOQにもペナルティーが与えられる。

 しかし、それはジオウOQにとって想定内のことであった。こうなると分かっていた上で問題を出したのだ。その結果、二人とも雷撃を受けることとなったが大きく異なる点がある。

 クォーツァーは雷が来るとは思っていなかった。ジオウOQは来ることが分かっていた。来ると分かっているということはある程度耐えながら行動出来るということである。

 

「おおおおおおっ!」

 

 雷の衝撃で硬直するクォーツァーに対し、ジオウOQは雷を浴びながらも即座に動き出していた。

 始動が遅れたクォーツァーの顔面にジオウOQの左拳が命中。ゲイツリバイブ剛烈の力を発動していた為、メリケンサックの様に光刃が纏わせられており、それが発する振動によって威力が通常時より高められている。

 

「ぐうっ!」

 

 首が傾くクォーツァー。それを待ち構える様に反対側から次なる衝撃が来る。ジオウOQの掌打がクォーツァーの頬へ打ち込まれたのだ。こちらもギンガファイナリーの能力によって破壊力が増してある。

 限定的に超重力を発生させる掌打。そして、その前の振動と合わさりクォーツァーの仮面に亀裂が生じる。

 

『行け! 我が魔王!』

『畳み掛けろっ!』

 

 内に居るウォズとゲイツが叫ぶ。その声に背中を押され、ジオウOQは疾風怒濤の連撃を放つ。

 

「はああああああっ!」

 

 拳と掌打による連撃。左拳が側頭部、胸、鳩尾と立て続けに突くとクォーツァーの体が前のめりになる。そこへ下から突き上げられた掌打がクォーツァーの顎を打つ。仰け反った所へ両腕が何百にも分裂した様に見える程の連打。

 余すところなく打ち付けられる拳にクォーツァーも反撃出来ない。

 手も足も出ないクォーツァー。このまま一気に押し切れるかもしれないと思った矢先──クォーツァーのドライバーから赤い閃光が放たれる。

 

「うわあああっ!」

 

 その光を浴びた瞬間、ジオウOQの全身から火花が飛び散った。

 バールクスの時にも使用したキングストーンフラッシュ。それをより攻撃に特化させた光に不意を衝かれてジオウOQは転倒する。

 クォーツァーは手も足も出なかった。否、出す必要が無かった。この一撃を与える為に。

 

「ぐ、うう……」

 

 平行世界を絞り尽くすことで生み出されたエネルギーを至近距離で浴びせられ、ジオウOQは全身から白煙を上げて悶えていた。クォーツァーにとって反撃のチャンス──

 

「はあ……はあ……はあ……」

 

 ──かと思いきやクォーツァーの方も両膝を着いて呼吸を乱している。ジオウOQのダメージが尾を引いて咄嗟に動けなくなっていた。

 またも訪れる戦いの間。二人の戦いが派手で激しいので静寂さがより際立つ。

 意外な程にその間は長く続く。二人とも分かっていたのだ。自分の体に限界が迫っていることを。

 この戦いに至るまで長く激しい戦闘が行われていた。その度に尋常ならざる力で体を回復させて戦闘を継続していたが、それでもダメージは知らず知らずのうちに蓄積されていた。しかも、両者とも唯一無二に等しい強大な力を持っているので限界が来るのは必然であった。

 誤魔化しながら戦い続けていたがそれも無視出来ない段階まで来ている。全力を出せる戦いは後一回が限度。それが二人の考えであった。

 だからこそ、その全力を0.1秒でも相手より長く続ける為に回復に専念する。

 次に動く時が正真正銘、最後の戦闘である。

 二人は時間を掛けてゆっくりと立ち上がる。その間に呼吸を整え、心を落ち着かせ、だが全身には力を漲らせる。

 開戦の合図など要らない。これまでの戦いで分かっている。自分が動く時、それこそが相手が動く時なのだと。

 暗く冷たい『世界の玉座』の空間内で静かに燃え上がる二人の闘志。誰にも見ることは出来ないが、内に秘めたその熱は太陽すらも焦がすだろう。

 二人の体勢が整う。仮面に填め込まれた『ライダー』と『ライダー』の文字が強く輝く。その輝きの強さこそが両者の闘志の表れ。

 音も前触れも無く二人は同時に動き出す。雌雄を決する為に。

 

「常磐ソウゴォォォォォ!」

『創成の刻! クォーツァー!』

「おおおおおおおっ!」

『キングフィニッシュタァァイム!』

 

 初手から出し惜しみ無しの全力攻撃。互いの前方に金で描かれた『キック』の文字と赤で描かれた『キック』の文字が出現する。

 同時に跳躍する二人。『キック』の文字も敵へ導く様に動きに合わせて移動。

 ジオウOQは右足を突き出し、クォーツァーは両足を突き出す構えとなる。

 

『タイムリスタート!』

『キングタイムブレーク!』

 

 空中を飛ぶジオウOQの足裏に並んでいる『キック』の文字が収まって行く。クォーツァーの前方に並ぶ『キック』の文字は二又に分かれ、こちらもクォーツァーの両足裏へと収まっていく。

『キック』の文字が集まる度に足が放つ輝きは強くなり同時にそれは威力が増していくことを意味する。

 二人の必殺技の威力が最高潮に達した時、それが衝突した。

 

「たああああああっ!」

「うおおおおおおっ!」

 

 必殺と必殺。金と赤の光が絡み合い魂の咆哮を乗せて拮抗する。凄まじいまでの威力を秘めたそれが衝突し合った時、如何なる破壊を生み出すのか──と思われた時、その拮抗は呆気無く終わりを告げる。

 空中で衝突していた両者が重力に引かれて落下。途中で接触させていた右足と両足を離して着地する。

 拍子抜けする程にあっさりとした引き分け。技を放った本人らも戸惑った様子であった。

 両者の力はそれこそ比肩する者が限られる程に絶大なものである。しかし、運命の悪戯か目の前の相手こそがその比肩出来る相手。

 力と力が交われば何十、何百倍にまで増幅することもあれば今の様にお互いの力を相殺しゼロになることもある。それこそほんの少しのズレも許さない奇跡の様な御業であるが、様々な奇跡の上で成り立っている二人にとってはある意味で当然のことを成したと言える。

 全力の初撃が不発へと終わってしまった二人。しかし、すぐに切り替えて攻防を開始する。

 ジオウOQはゲイツリバイブ疾風にフューチャーリングシノビの技を混ぜることで高速移動しながら何十もの残像を一瞬で発生させ、クォーツァーの目を欺こうとする。

 

「二度も通用するか!」

 

 だが、クォーツァーは瞬時に本体を見極め、自分の方から間合いを詰めると掌から赤色の光剣を出して斬りかかる。

 

「くっ!?」

 

 いとも容易く見破られたことに驚きながらもジオウOQは腕を交差させてクォーツァーの手首を挟んで受け止める。

 その状態からでも徐々に押し込まれるジオウOQ。ゲイツリバイブ剛烈やフューチャリングキカイで腕力を増強しているにもかかわらずにである。

 クォーツァーの放つ怨念染みた執念がそれらを上回り、ジオウOQをじわじわと追い詰めていく。

 光剣はジオウOQの首筋を狙い、徐々に迫りつつあった。両腕で塞がっており、上から圧力で足も動かせず跳ね除けることも出来ない。

 今度はジオウOQの方が手も足も出ない状態へと追い詰められる。

 しかし、手も足も出ずとも出せるものがある。

 

「問題!」

『フューチャーリングクイズ!』

 

 もう一度発動するフューチャーリングクイズの能力。出される問題は──

 

 

「俺は王様に相応しい! 〇か✕か!?」

「分かりきったことを! 答えは✕だ!」

 

 その問題の答えは──

 

 

 ◇

 

 

 始まりは小さな子供の声援であった。

 がむしゃらに空へ向かって名を呼ぶ声を聞き、絶望の中で俯いていた人達は自然と顔を上げ、空を見上げる。

 そこに映し出される戦い。誰が何の為に戦っているのかど普通なら分からない。しかし、見ている人達の心には不思議と分かってしまった。

 二人の内一人は自分達の為に必死になって戦っているのだと。

 それが心に伝わるとその思いが口から出て来る。

 

「が、頑張れ……」

「行け……頑張れ……!」

「負けるな! 負けるなぁぁぁ!」

「仮面ライダー! 仮面ライダァァァァ!」

「ジオウゥゥゥゥ!」

 

 気付けばたった一人から始まった声援は数え切れない程のものとなっていた。

 誰もが空に向かってジオウに応援を送る。

 だが、この世界にはクォーツァーの配下であるカッシーン達が蔓延っている。そんな中で応援をし続けることに恐怖を抱かないのだろうか。

 

『カモン! ハート! バイラルカキマゼール!』

 

 何故ならば彼らを守護する仮面ライダーが存在するからだ。

 

『ヒッサーツ! フルスロットル! ハート!』

 

 仮面ライダーハートの体が赤い光に包まれ、体の各部から白煙が立ち昇る。次の瞬間、目にも止まらぬ速度でカッシーン達の間を通り抜ける。ハートが通り抜けた後、遅れて聞こえる打撃音と共にカッシーン達が宙と舞った。

 

「はああああああっ!」

 

 そこへ跳び上がったハートが全身に纏わせていた光を右足に集中させた状態で突っ込む。赤い線が空中で引かれた後、打ち上げられていたカッシーン達は全て爆散する。

 

「恐れるな! 人間達よ! 仮面ライダーの名に懸けてお前達を傷つけさせはしない!」

 

 覇気のある声が響き渡る。それは僅かに芽生えた恐怖を吹き飛ばすのに十分であった。ロイミュード達を魅了したハートのカリスマは人々にも大きく影響を与える。

 

『ヒッサツ! フルスロットル!』

 

 マッハチェイサーが跳び上がり、空中で縦回転をする。その時に発生した青と紫の炎が回転に巻き込まれて幻想的な炎の輪を作り出す。

 

『マッハ! チェイサー!』

 

 回転の勢いを殺さぬままマッハチェイサーが飛び出し、その右足から放つ必殺の一撃によって何十体ものカッシーン達を破壊する。

 

「もっと声を上げてけー! 将来王様になるって言った男だぞ! ここで応援しなきゃ損ってもんだ!」

 

 マッハチェイサーも敵を倒しながら盛り上げていく。

 

『ヒッサーツ! フルスロットル! ブレン!』

 

 先の二人に続く様にブレンがドライバーのキーを回した後、ジャンプする。

 二人と同じく右足に緑色のエネルギーを集束させながらキックの体勢へ移行。その動きを見たカッシーン達は三又槍を構えて警戒する。

 ジャンプからの急降下。そして、そのまま右足でカッシーン達を貫く──かと思いきや何故かカッシーン達の目の前に着地した。

 

「何……?」

 

 理解不能な行動にカッシーン達の動きが止まる。すると、右足に集めていたエネルギーがブレンの体を移動し、頭部へと集まる。そして──

 

「ブレンヘッドクラッシャー!」

 

 停止状態で無防備になっているカッシーンの頭突きを炸裂。頭部に集めていたエネルギーが突き抜け、後方に立っていたカッシーン達も巻き添えになる。

 

「ええ……やっぱあいつの戦い方おかしいって……」

「流石ブレンだ。持ち味を生かしたな」

 

 奇抜な戦いをするブレンにマッハチェイサーは呆れ、ハートは感心するのであった。

 

 

 ◇

 

 

『ライダー! ライダー! ライダー!』

 

 人々が集まり、精一杯の声援を送る。それを眺めていた4号はせせら笑う。

 

「烏合の衆が声を出した所で何になるのだか……」

「それが分からない限り、お前の『仮面ライダー』という称号は名ばかりのものだな」

 

 嘲る4号に3号が冷たく言い放つ。

 

「言ってくれるなぁ先輩。──お前は分かっているって言うのか?」

「少なくともお前よりはこの名の重さを知っているつもりだ」

 

 目線を合わせることなく背中越しで会話する二人。共に戦ったが3号は常に4号の動きに目を光らせていた。彼を全く信用していない為。

 

「悲しいことを言ってくれるなぁ……所詮お前も同じ穴の狢だっていうのに」

「知っているさ。だからこそ、もしもの時俺はお前を止める義務がある」

 

 二人の間に殺気が流れる。3号の右拳が震え出し電流の様な光が発生する。同じく4号も強く拳を握り締め、そこに緑色の淡い光が生じ出す。

 

「ライダー!」

「パンチ!」

 

 振り向き様に繰り出される同じ技。それが向かう先は、二人の間に置かれていた半壊状態の量産型ダイマジーン。密かに再起動しようとしていたのをとっくに見抜かれていた。

 前後からライダーパンチに挟まれ、その衝撃で量産型ダイマジーンが木っ端微塵と化し細かな破片となって落ちて来る。

 その場に残るは拳を打ち合わせた状態の3号と4号のみ。

 

「そんなに仮面ライダーの名が大事ならあいつらを助けに行ったらどうだ?」

「生憎、その役目はもっと相応しい奴が居る。──俺はお前の監視で十分だ」

「──ふん」

 

 4号が視線を声援を送る人々の方へ向ける。そこではRXが奮闘し、カッシーン達を次々と撃破していく。

 

「この仮面ライダーBLACK RXが居る限り指一本たりとも触れさせん! さあ! 皆! 恐れることなく彼に声を送ってあげてくれ!」

 

 一騎当千という言葉が相応しい程の戦いで多対一の状況でも相手を圧倒する。

 

「向こうは随分と派手に活躍しているのに、こっちは地味だなぁ先輩」

「これでいい。太陽っていうのは皆を照らすべき存在だ」

 

 RXの活躍に満足しながら3号は自分に出来ることを全うしようとする。

 

「──お前も皆の太陽になれるのか?」

 

 空を見上げた先にいるジオウOQへ静かに問う。

 

 

 ◇

 

 

 空に映し出された映像を見ながら順一郎は必死に祈る。皆が無事に帰って来ることを願って。建物に隠れていた人々も同様に応援していた。

 

「頑張れ……! ウォズ君! ゲイツ君! ツクヨミちゃん!」

 

 今の自分にはそれしか出来ない。だからこそ、誰よりも強く彼らの無事を願う。

 

「負けるなぁ! 負けるな! ソウゴ君! 叔父さんは、ソウゴ君の夢が叶うのをまだ見てないんだ! 頑張れ! 頑張れぇぇぇ! ソウゴ君っ!」

 

 しかし、その純粋な願いすらも許さない無粋な者達が居た。

 

「ここか」

「あああっ!?」

 

 建物の周りを囲むカッシーン達。遂に見つかってしまった。

 運悪く近くに彼らを守ってくれる存在は居ない。このままでは捕まってしまう。

 

「こ、このぉぉ!」

 

 順一郎が落ちていた木の枝を拾い、カッシーン達に向ける。武器としてはあまりに頼りなくカッシーン達は何の脅威も抱かない。

 

「確──」

 

 その瞬間、カッシーン達の体が内側へ向かって潰れ出し、圧縮され、最後にはゴルフボール程度の大きさにまで丸められる。

 見えざる力によって大勢居たカッシーン達は一瞬で全滅してしまった。

 

「な、何これ? 何が起こったの?」

「続けないのか?」

「え!?  どなた!?」

 

 空中で静かに佇む黄金のライダー──オーマジオウ。

 

「最早、脅威は無い。続けろ」

「続けろって……あ、ソウゴ君達の応援を?」

 

 オーマジオウは無言で頷く。

 呆気とられていた人々も徐々に声を出し始め、中断される前以上の声を張り上げる。

 それに満足した様子でオーマジオウは去ろうとするが──

 

「あ、あの!」

 

 ──そんな彼を順一郎がつい呼び止める。

 

「助けてくれてありがとうございます!」

 

 順一郎のお礼の言葉にオーマジオウはほんの僅かの間動きを止めた。

 

「……礼を言われる程のことではない」

 

 そう言い残し去って行く。

 突如としてすぐに居なくなってしまったオーマジオウ。順一郎は彼を見て不思議な気持ちになっていた。

 初対面の筈なのに知っている誰かを見ている様な気持ち。しかし、その疑問を聞ける本人はもう居ない。

 それを少し残念に思いながら、順一郎は空に向けての声援を再開した。

 

 一つの世界で生み出される大きな声。それは波紋の様に広がっていき、やがて──

 

 

 ◇

 

 

 雷撃が貫く──クォーツァーのみを。

 

「何だとぉぉ!?」

 

 答えの無い問題を答え、双方にペナルティーが発生するかと思いきや罰がクォーツァーだけに与えられる。

 これにはジオウOQも驚いた。

 

『どうやら知らず知らずのうちに認められていたようだな、ソウゴ』

『流石は我が魔王。──いや、当然の答えだったかな?』

 

 何か見えない力で背中を押されている気持ちになる。全身に不思議と活力が漲って来る。

 

「何か行ける気がする!」

 

 一方でクォーツァーの方は雷撃以上のショックを受けていた。運命がジオウOQが王であることを認めたなどクォーツァーと認められない。

 

「誰が認めようとも俺は……!」

 

 クォーツァーは怒りを限界まで燃え上がらせる。ふと、クォーツァーの近くで新たな平行世界が生み出された。それに手を伸ばし、自らの糧にしようとした時──

 

『間に合った!』

 

 ──ジオウOQの首から下げられているツクヨミが輝きを発する。その光の中でクォーツァーが平行世界に触れるが──

 

「どういうことだ!?」

 

 触れれば即座にエネルギーへと変換される筈が一向にその現象が起こらない。

 

「無駄だよ!」

 

 いつの間にか接近していたジオウOQ。その手から白刃が伸びており、クォーツァーを袈裟切りにする。

 

「があっ!?」

 

 傷口を押さえながら後退するクォーツァー。

 

「何が無駄だと言うんだ! おおおおおおおおっ!」

 

 平行世界を引き寄せて傷を回復させようとする。しかし、どれだけ力を込めても平行世界はクォーツァーの方には来ない。

 

「何だ……これは……? 一体何が起こっている……!?」

「ツクヨミの力だよ」

「何……?」

『私が……この空間そのものの時間を止めたの』

 

 ツクヨミが持つ時間停止の能力。それを『世界の玉座』に全体に行き渡らせ、それによって空間内にあるジオウOQとクォーツァーを除く全てのものの時間を止めた。

 クォーツァーが平行世界を吸収出来なかったのもこの為。時間停止という絶対不変状態になることでクォーツァーの能力を防いだのだ。

 

『凄く広かったから時間が掛かっちゃった……』

「ありがと! ツクヨミ!」

 

 通常時ならまず無理だが、ジオウOQになることで力を底上げされたことで出来た荒業。これによりクォーツァーへのエネルギー供給が断たれる。

 

「こんな事が──はっ!?」

 

 動揺するクォーツァー。その懐には既にジオウOQが潜り込んでいる。

 

「はあああっ!」

「ごああっ!」

 

 強烈なアッパーがクォーツァーを高々と打ち上げる。

 クォーツァーが宙へ舞う中、ジオウOQはオーマジオウライドウォッチとツクヨミトリニティライドウォッチのスイッチを押し込む。

 

『キングフィニッシュタァァイム!』

『ツクヨミ! ゲイツ! ウォズ!』

 

 全ての力を出し切る。そう決意した時、ジオウOQの中に宿る全ての仮面ライダーと力が解き放たれる。

 

「こ、これは……!?」

 

 地面を見たクォーツァーは戦慄する。地面に立つのはジオウOQ一人では無い。クウガから始まるジオウに至るまでの平成全ての仮面ライダー達がそこに並び立っていたのだ。

 

『キングタイムブレークジャックバーストエクスプロージョン!』

 

 ライドウォッチが技の名を叫ぶが真に相応しい名はそれでは無い。だから、代わりにジオウOQが叫ぶ。

 

「平成オールライダーキック!」

 

 一斉に地面から跳び上がった仮面ライダー達がキックのポーズでクォーツァーへと向かっていく。

 

「う、おおおおおおおおっ!」

 

 クォーツァーに逃げる術も防ぐ術も無く、光となった仮面ライダー達によってその身を貫かれる。

 

「がっ!」

 

 貫かれたクォーツァーの体に残るはその平成ライダーの足跡。歴史の重みと共にその身に刻み込まれる。

 次々とクォーツァーを貫く平成ライダー。その度にクォーツァーの体に足跡が残って行く。

 

「はあっ!」

「とおっ!」

「やあっ!」

 

 その中にはゲイツ、ツクヨミ、ウォズも混ざっており他のライダー達と同様にクォーツァーの体に自分達の歴史を刻む。

 数多の平成ライダー達によってクォーツァーの体は足跡だらけになる。しかし、肝心のライダーはまだ攻撃は無い。

 

「何処、だ……!?」

 

 地面にはジオウOQの姿は無い。そうなると──

 

「終わりだ。クォーツァー」

 

 声は頭上。クォーツァーよりも遥か高みジオウOQは居た。

 ジオウOQは最後の一撃を放とうとした時、ジオウOQの顔横で光が集まり出す。集まった光はやがて新しいライドウォッチを生み出した。

 そのライドウォッチにはジオウOQの知らない、そしてクォーツァーも知らないライダーの顔が描かれている。

 

「これって……」

 

 ジオウOQはそのライドウォッチを掴み、スイッチを押す。

 

『ゼロワン!』

「ああ……そういうことか……!」

 

 ジオウOQは全て納得した。歴史を継承し伝える。そして、それはやがて新たな時代へと繋がって行く。

 ジオウOQは確かに平成という時代を守ったのだ。だからこそ、新たな時代が生まれ、そこに新たな仮面ライダーが生まれる。

 そして、それは同時にクォーツァー敗北の証明。

 

「やめろ……! それを俺に近付けるな……!」

 

 クォーツァーは分かってしまった。新たな時代の力が自分に完全な敗北を与えると。

 ゼロワンライドウォッチのスイッチが押されたことでジオウOQの傍に新たな時代の仮面ライダーが召喚される。

 黒いボディスーツにライトイエローの装甲を付けた赤い複眼の飛蝗の面影のある仮面ライダー。

 

「行こう──ゼロワン!」

 

 今までの歴史。そして、これから繋がって行く時代が共に並び、一直線でクォーツァーへ向かっていく。

 

「止めろぉぉぉぉぉぉ!」

 

 絶叫を上げるクォーツァーの体を二人のライダーによるキックが貫く。

 

「が、あああ……」

 

 クォーツァーの胸部に残される二つの足跡。これまで(ジオウ)の足跡とこれから(ゼロワン)の足跡。

 ジオウOQとゼロワンが地面へと降り立つ。

 

「平成……ライダァァァァァ!」

 

 断末魔の叫びの後クォーツァーは『世界の玉座』の空にて大爆発を起こし、その光で全てを照らす。

 

『祝え!』

 

 光輝く光景の中でやはりこの男は叫ぶ。

 

『新時代の幕を開ける象徴! その名も仮面ライダーゼロワン!』

 

 




長かったジオウのお話も次回で最終回となります。
良ければ印象に残ったシーンなどを教えてください。

先にどちらが見たいですか?

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