長く苦しい戦いの末にジオウOQはやっとクォーツァーを倒すことが出来た。リセットされようとしていた平成という時代とライダーを守り抜くことが出来たのだ。
その証であり、最後に共闘してくれた新たな時代の仮面ライダーであるゼロワンを見る。
「ありがとう」
隣に立つゼロワンにはそれしか言えなかった。ウォズが彼の存在を祝福した様に、これがジオウOQの出来る祝福と感謝の言葉。
ゼロワンはそれを聞いて頷く。すると、その体が光の粒子となって消えていく。ここでの役目を果たし、本来居るべき場所へ帰って行く。
「あっ」
ゼロワンの姿が完全に消えた。そして、ジオウOQが手に持っていたゼロワンライドウォッチもまた光になって消え始めている。もう少し話したかったので残念に思うが、すぐに気持ちを切り替える。
彼は新しい時代のライダー。その時が来ればまた会うことが出来る。平成を守った今焦る必要など無い。
「次は新しい時代で」
その言葉と共にゼロワンライドウォッチはジオウOQの掌から無くなった。
「さて、と……」
残されたのはジオウOQ。そして、その内に宿るゲイツ達。
『これからどうするんだ? ソウゴ?』
『まずはここから脱出する必要があるが……』
『何か方法がある?』
「うーん……どうしよう?」
ジオウOQの口から緊張感の無い言葉が出る。クォーツァーを倒すことばかり考えていたので、その後のことは全く考えていなかった。
『お前なぁ……まあ、仕方ない』
ジオウOQはクォーツァーによって無理矢理ここへ連れて来られたに過ぎない。入り方も知らなければ出かたも知らない。
『私達も分からないしね……』
ツクヨミ達もトリニティライドウォッチの力で『世界の玉座』に入ることが出来たが、それはジオウOQという目印があったからこそ為せた一方通行の侵入方法であった。
『なら、いっそのことこの『世界の玉座』を利用して我が魔王の名を全ての平行世界に──』
「いや、ダメでしょ」
『ダメに決まっているだろ!』
『ダメよそんなこと!』
野心溢れるウォズの提案を全員に即座に却下された。
『……分かっているさ。ただの冗談だよ』
ウォズはそう言って誤魔化すが半分くらいは本気であったのではないかと他の者達は疑ってしまう。
「でも、本当にこれから──うおっ!?」
急に襲い掛かって来る浮遊感。ジオウOQの両足が地面から離れ、浮き上がり始める。
「何!? 何!? 何が起こってるの!?」
突然のことにジオウOQは悲鳴の様な声を上げる。
『ふむ……どうやら我々がこの空間に居られたのはクォーツァーの力があったからこその様だ。クォーツァーが居なくなったことで異物を排除しようとしているみたいだ』
パニックになっているジオウOQの中でウォズが冷静に状況を分析する。
「排除って、ええっ!?」
『吞気に言っている場合か!?』
『一体どうなるの!?』
『世界の玉座』の空には大きな渦が発生していた。それが回ることで生み出される力がジオウOQを吸い上げている。
『ただこれは悪い展開では無い。上手く行けば元の世界に戻れるかもしれない』
「……上手く行かなかったら?」
『何処か分からない平行世界に辿り着くか、次元の狭間で彷徨うことになるか……』
『洒落にならんぞ!』
『いやあああああ!』
ウォズが出した最悪の未来にゲイツは声を裏返し、ツクヨミは悲鳴を上げてしまう。
抗おうにもジオウOQの体は既に空中へ浮いている状態。藻掻いてみるが、手足が無意味に空を切るだけであった。
『まあ、ここは我々の日頃の行いを信じるとしよう』
「ええ……っておおおおおおおっ!?」
前向きとも諦観とも取れるウォズの台詞の後、ジオウOQは渦へ勢い良く吸い込まれ、『世界の玉座』から強制的に退場させられるのであった。
◇
全てのカッシーン達が突如として動きを止めたかと思えば、糸が切れた人形の様に崩れ落ちていく。
空に映し出されていた映像は、ジオウOQが強烈な閃光を発した直後に映らなくなってしまったが、カッシーン達の停止を見れば彼らが勝ったことが分かる。
それは声援を送っていた人々も理解しており、声が枯れる程の声援も今は歓喜の声に変わっていた。
「終わったか……やったな、ソウゴ」
歓喜の声の中でマッハチェイサーは深く息を吐きながら戦いが終わったこと、ソウゴ達が勝ったことを安堵する。
「どうやら俺達の役目は終わったみたいだな」
「その様ですね、ハート」
「あん?」
その言葉が気になりマッハチェイサーはハート達の方に顔を向ける。彼の見ている前でハート達の体は光の粒子となり透け始めていた。
「お前ら……!?」
「あの仮面ライダーが俺達を呼んだのか、それともこの世界の人間達が呼んだのか、それとも両方か。答えは分からないが、俺達は為すべきことは為せた」
「実に貴重で有意義で素晴らしい時間でしたよ」
二人は消えていくことに納得している様子。しかし、マッハチェイサーの方は納得し切れない様子で変身を解除し剛の姿へ戻る。
「おい! いきなりかよ! 急に現れたと思ったら急に消えるのかよ!」
「そう怒るな」
「これは私達にとって不可抗力ですので」
感情的になる剛をハートとブレンが宥める。
「それに俺達の帰りを待つ友が居る」
「ええ。早く帰らないとメディックが何をするか分かりません」
そんな会話をしている間にもハートとブレンの姿は薄くなっていた。
「……もう少し待ってろ」
「何?」
「はい?」
「そしたら、次は俺がお前達を呼んでやる!」
二人は驚く。それは消滅させた彼らを復活させるという宣言であった。
「なあ、ブレン」
「何ですか?」
仮面ライダーの変身が解け、変身前の姿となる二人。ハートとブレンは互いに微笑を交わしていた。
「また人間の友達が増えそうだ」
「ええ。メディックにとても嬉しく尊く気持ちのいい報告が出来そうですね」
その微笑を剛へと向けると二人は完全に消える。
暫くの間、消えた二人を見ていた剛であったが、やがて手に握っているシフトライドクロッサーに視線を移す。
シフトライドクロッサーもまた光の粒子となり、剛の手の中から消滅する。その名残を確かめる様に剛は手を握ると──
「……またな」
──別れではなく再会を誓った言葉を送った。
◇
最早動くことのないガラクタ同然となって横たわるカッシーン。4号はそれを不様と言わんばかりに鼻で笑うとカッシーンの頭部を無慈悲に踏み砕く。
「終わったなぁ、先輩?」
その声に勝利を喜ぶ響きは無い。あるのは最初に会った時から変わらない悪意のみであった。
4号は助かったことを喜ぶ無辜の人々を見る。人々を映す複眼には無機質以外の冷たさがあり、生への喜びを嘲笑する。
「はっ。吞気なことだ」
「……お前は結局何が目的で戦っていた?」
常に悪意しか感じ取れない4号に3号は真意を問う。
「気に入らなかっただけだ」
「気に入らない?」
「我々ショッカーを差し置いて世界を牛耳ろうとしていたクォーツァーなどという連中が」
吐き捨てる様に言う。悪の敵は正義と考えられているが、悪にとって他の悪も敵ということなのだろう。
「──お前は絶対に仮面ライダーにはなれないな」
想像以上に詰まらない理由だったので、3号も敵意を以って吐き捨てた。
「ふん。せいぜい今は勝利の喜びでも噛み締めておくがいい」
3号に向けて親指を立てる。
「いずれショッカーが全てを支配する!」
その親指を地面へ向けサムズダウンにする。
「……お前も俺もあってはならない歴史だ」
「ふはははは! ショッカーが不滅な限り仮面ライダー4号は不滅だっ! いつか必ず蘇る!」
4号が高笑いをする。その体が無数の青い羽の蝶となって崩れ始めた。
「時間切れか……またな、先輩」
最後まで悪意を絶やすことなく不安を煽る様な言葉を残し、4号は消えた。
「蘇るなら何度でも蘇ればいい……俺が何度でも倒す。それが俺の贖罪だ」
3号が決意を込め、静かに呟く。
「3号!」
そこへRXが駆け寄って来た。
「無事か? ──4号は何処へ行った!?」
姿の見えない4号を警戒する。
「安心しろ。奴は居るべき場所へ帰った」
「そうなのか?」
3号の言葉を信じ、RXは警戒を解く。そして、3号へ右手を差し出し握手を望む。
真っ直ぐ向けられる純粋なまでの感謝の表れ。3号は珍しいぐらいのRXの実直な性格に握手に応じるのを一瞬躊躇してしまう。
自分はそれに応じられる様な存在ではない。そんな気持ちが3号の右手を動かなくさせる。
「君のおかげで多くの人々の命を救えた。ありがとう」
「っ! ……ふっ」
他意なく言われる感謝の言葉。3号は思わず笑ってしまった。ここまで真っ直ぐにぶつかって来たら避けてしまう方が野暮である。
3号はRXの手を掴み、握手する。すると、3号の体が光り変身が解かれた。
黒いジャケットに黒いズボンを着用し、切れ長の鋭い目をした壮年の男性。
RXはそれを見て自分もまた変身を解く。
「黒井響一郎だ」
「黒井響一郎……」
「また会った時に『誰だ?』と思われたくないからな……覚えておいてくれ、南光太郎」
その時強風が吹き、光太郎は反射的に顔を背ける。
「えっ……」
顔を戻した時、黒井の姿は消えていた。音も無く忽然と。
光太郎は彼と握手をしていた右手を見る。そこには黒井が居たという名残の様に一枚の白い羽根があった。
「仮面ライダー3号……いや、黒井響一郎。また会おう」
再び風が吹き、白い羽根が飛ばされていく。高く遠くへ見えなくなるぐらいに。
光太郎は白い羽根を見送るとポケットの中からある物を取り出す。それはシャドームーンの顔が描かれたシャドームーンライドウォッチ。彼の中に残されていたシャドームーンの力が変身解除によってこの様な形へとなった。
「俺達も元の世界に帰ろう。……信彦」
◇
長く暗いトンネルの様な異空間から吐き出される様にして飛び出すジオウOQ。
「うおっと」
かなり高い位置に放りだされたが、ジオウOQのスペックからすれば小さな段差と変わらず難無く着地する。
「ここは……」
周囲を見回す。そして、すぐに理解出来た。ここはクォーツァーに連れて来られる前の世界だと。
『無事に帰って来られたみたいだね』
『良かった……』
『取り敢えず変な場所に放りだされずに済んだか……』
異空間から帰還することができ一同安堵する。
しかし、その安堵もすぐに消し飛ぶ事態が起こる。
「常磐ソウゴ」
名を呼ばれ、ジオウOQが振り返る。そこにはクォーツァーのメンバーが並んでいた。
『貴様ら! まだやる気か!』
ゲイツの感情に呼応し、ジオウOQの右肩が上がる。
「待って、ゲイツ」
『待ちたまえ、ゲイツ君』
それを左手で押さえる。
『何故止める!?』
『落ち着ついてゲイツ』
『彼らに敵意は無いよ』
ゲイツ以外はクォーツァーの残党達に戦う意志が無いことに気付いていた。戦う意志が無い者と戦う理由など無い。ゲイツも皆の言葉を聞きメンバーを観察する。指摘された通り、敵意も戦意も感じ取れなかった。
「言われた通りだ」
「俺達にはもう戦う意志は無い」
「我らの王やあの二人が敗れた今」
「お前達に勝てる者など我々の中には居ない」
それはクォーツァーの完全な敗北宣言であった。
「じゃあ、何しに来たの?」
「お前達に聞きたいことがあって来た」
「聞きたいこと?」
「お前達は……何故我々の王に勝てた?」
「平成という世界をやり直すことが出来る完璧な王が何故敗北した?」
「美しい平成を創造出来る王は今の時代を肯定する者に負けた?」
それがクォーツァーの総意であった。バールクス、ザモナス、ゾンジスの三人が揃っている時点でクォーツァーの勝利は完璧なものだと疑わなかった。しかし、ジオウ達の抵抗によりその盤石は崩されそうになった。
だが、クォーツァーの王はそこから創成王という最早敗北を疑うことすら罪とも言うべき絶対的存在へと自らを昇華した。
なのに敗北した。これはクォーツァーのメンバーにとって理解不能なことであり、その理由をどうしても勝者であるジオウOQの口から聞きたかったのだ。
「うーん……よく分かんない」
『なっ!?』
ジオウOQからの解答にクォーツァーのメンバーらは絶句する。だが、そこからジオウOQの言葉は続く。
「だってそんなこと考える余裕なんてなかったから。ゲイツやツクヨミ、ウォズとあの戦いの瞬間、瞬間を必死に生きようとしてきただけだよ、俺は」
「瞬間、瞬間を?」
「必死で?」
ジオウOQは頷く。彼の裡に居るゲイツ達も同意であった。
「クォーツァーが創る美しい時代がどんなものか俺は分からないけど、俺はゲイツ達と創る今が大事でそれで仲間達が創る未来が見たくて。それでいつかは過去を振り返りながら一緒に笑い合いたいって思っている。それは美しいものじゃないけど、きっと楽しくて嬉しいものだと思う。──うん、きっとそうしたいから今を必死に生きていけるんだ、俺」
ジオウOQの答えにクォーツァーのメンバー達は顔を見合わせる。そして、苦笑を浮かべた。
「今を必死に生きるか……」
「過去も未来も知る俺達には確かに出来ないことだな」
定められた運命を知るからこそ、それに従って生きるクォーツァーには出来ない生き方。その生き方こそが勝利の明暗を分けたと理解する。
「だったら今からあんた達も今を全力で生きてみたら?」
「ふっ。参考にはさせてもらう」
すぐには真似できないと言いつつ、一考する価値はあることは認める。
「聞きたいことは聞かせてもらった」
「最早、俺達の出る幕じゃない」
「ここから先は元管理者として見物させてもらうよ」
「瞬間を必死に生きるお前達がどんな未来を創り出すのか」
次の瞬間にはクォーツァーのメンバーは全員消えていた。現れた時と同じく音も無い静かな退場であった。
彼らが去ったことによりクォーツァーは完全に表舞台から消える。
「……」
今度こそ全てが終わった。だが、誰も言葉を発しようとはしない。
皆が分かっていたのだ。戦いの終わりは仲間との別れを意味するのだと。
『──お別れだな』
『そのようだね』
口火を切ったのは他ならぬゲイツ。そして、それにウォズが続く。
彼らはジョウゲン、カゲンとの戦いで命を落とし、ライドウォッチに魂のみが宿った存在。既に肉体は死んでおり、ジオウOQが変身を解除すれば本当の意味で死を迎える。
「ゲイツ、ウォズ……」
『何とか、何とかならないの……!?』
現実を分かっていてもそれを上手く呑み込むことが出来ない。
『俺達がこうやってお前達と一緒に戦えたのは奇跡の様なものだ』
『だが、奇跡は永遠には続かない。いつかは終わる。……せめてその終わる瞬間は君の手であって欲しい、我が魔王』
二人は自分達の結末について覚悟を決めていた。
「……分かった」
『ソウゴ!』
「ごめん、ツクヨミ。でも、ゲイツとウォズは仲間だから……」
仲間として別れるのは言葉に出来ない程辛く、哀しい。同時に仲間の覚悟を受け止めるのも仲間としての役目である。彼らの覚悟を無下には出来ない。
『うう……』
ツクヨミは静かに泣く。泣き叫んでも誰も咎めないのに声を押し殺して泣く。自分の悲しみで彼らを足止めしない様にする為の精一杯の我慢であった。
「ありがとう……ゲイツ、ウォズ」
仮面の下で涙を流しながらジオウOQはジクウドライバーを解除──
◇
「えっ?」
いつの間にか真っ白な空間に居た。変身も解けてソウゴの姿に戻っている。
「ここは……」
「破壊の後、何が待っているかお前は知っているか?」
良く知る声。振り返ればオーマジオウがそこに立っていた。その姿を見てもソウゴは特に驚かない。
「破壊の後……創造?」
「その通りだ」
ソウゴの答えにオーマジオウは満足気に頷く。
「よくぞクォーツァーを倒した。お前が勝てる可能性は限りなくゼロに近かった。だが、お前は見事に勝利し、未来を掴み取った。今のお前には新たな未来を創造する権利がある」
「創造する権利があるって……どうすればいい?」
「私の力を使え」
ソウゴの手の中には気付かぬ内にオーマジオウライドウォッチが握られている。
「その力を使えばお前が望む世界が創造されるだろう。──ただし」
オーマジオウはソウゴの覚悟を問う。
「創造の力を使えばお前が持つ私の力は消滅するだろう。創造は破壊よりも遥かに難しいからだ」
「消滅……」
「そうすれば、お前はもう二度とオーマジオウの力は使えない」
オーマフォームにもOVER Quartzerにも成れなくなる。史上最強の力を自らの意思で手放すことが出来るかという問い。
重々しく訊くオーマジオウ。だが、ソウゴは耐え切れないといった様子で吹き出した。
「ふふふ。分かってて聞いてるでしょ?」
「──ふっ。愚問だったな」
分かりきっていたことを敢えて問う。オーマジオウなりの冗談だったのかもしれない。
「若き日の私よ」
「何?」
「誇れ。お前とその仲間達はこのオーマジオウですら為せなかったことを為した。いつの日か私がお前に言った最高最善の王の名はお前に譲るべきなのかもしれない」
「うーん。それはちょっと違うかなぁ?」
「違う?」
「だって勝てたのは俺達だけの力じゃ無いし」
「ほう? 他に力を貸した者が居たのか?」
「え? それ本気で言ってる?」
オーマジオウの返しにソウゴは困惑する。
「……あんただよ」
「何だと?」
「未来の俺が居てくれたから今の俺達は勝てたんだ」
時間を超えて手を貸してくれたオーマジオウ。その存在こそがこの勝利に欠かすことの出来ない最後のピースであった。
「オーマジオウになって俺がどんな人生を過ごしてきたのか分からない。きっと俺なんかが想像も付かない様な凄い大変な人生だったと思う……でも、そんな未来の俺が歯を食い縛って頑張ってきてくれたから」
かつてはその存在を否定した。しかし、今のソウゴにはオーマジオウへの感謝の気持ちしかない。
「時計の針はさ、未来にしか進まない。ぐるっと一周して元に戻ったように見えても、 未来に進んでるんだ。未来の俺の時間が今の俺の時間と繋がって、俺達は未来に進むことが出来たんだ」
オーマジオウという存在が居たからこそソウゴ達はクォーツァーを倒し、平成という時代を守り新しい時代へ進むことが出来る。ソウゴにとってそれが紛れもない事実であった。
「……あの人の言葉だったな?」
「うん」
「あの人の言う事は……いつも正しい」
オーマジオウは天を仰ぎ見る。
「そうか……私の時間がお前達を未来に進めたか……そう思えば、あの玉座に座り続けた甲斐があったかもしれんな……」
天を仰いでいたオーマジオウはソウゴへ向き直り、オーマジオウドライバーを外す。
「あっ……」
オーマジオウの変身が解除され、五十年後の常磐ソウゴがそこに立っていた。
黒一つ無い白髪。深く刻まれた皺。実年齢以上に老いて見えるその姿は、どれだけの苦労があったのかを物語る。
「若き日の私がどんな王道を進むのか興味があったが、これ以上私が干渉してはいけない」
オーマジオウという仮面を外し、常磐ソウゴとして最後の言葉を送る。
「ここから先はお前の王道だ。──大丈夫。仲間と一緒なら行ける気がする、と
「──うん。俺もそんな気がする」
そして、ソウゴはオーマジオウライドウォッチのスイッチを押す。
『オーマジオウ!』
◇
「……あれ?」
目を覚ます順一郎。寝ぼけた様子で周りを眺める。
場所はクジゴジ堂。いつの間にかテーブルでうつ伏せになって寝ていたらしい。
暫くの間、ボーっとしていた順一郎であったが、やがてハッとした表情となり慌ててテーブルから立つ。
「急がなくっちゃー!」
向かった先はキッチン。冷蔵庫の中身を確認し、材料があると分かるとすぐに料理を始める。
料理を夢中で作り続ける順一郎。すると、クジゴジ堂のドアが開いた音がした。
足音がクジゴジ堂奥へと向かって来る。
順一郎は料理をする手を止め、足音の方へ顔を向けると笑顔で言った。
「ソウゴ君! ゲイツ君! ツクヨミちゃん! ウォズ君! おかえりなさい!」
そこにはソウゴ、ゲイツ、ツクヨミ、ウォズが並んで立っている。
「ただいまー! おおっ! 美味そうなニオイ!」
「ソウゴ君、ちょっと待っててね! あと少しでカレーが出来るから!」
「カレーか。悪くない」
「具沢山の美味しいカレーだよー、ゲイツ君! あと皆に合わせて甘口、中辛、辛口の三つ用意したから」
「ありがとうございます、順一郎さん!」
「付け合わせの福神漬けは用意してあるのかな?」
「バッチリだよ、ウォズ君! ラッキョウもあるよ!」
調理の音しかしなかったクジゴジ堂内が一気に騒がしくなる。
ソウゴ達は食卓に座り、順一郎のカレーが運ばれて来るのを待つ。
「お待たせー!」
食卓の上に次々と皿に寄せられたカレーライスが置かれていく。
『おおっ!』
思わず感嘆の声を上げてしまいそうな程に完璧な見た目のカレーライスであった。
皆の前に配られ、スプーンも置かれる。あとは食すだけだが──
「叔父さん、叔父さん」
「うん? ──分かったよ」
ソウゴは順一郎を呼び、何かを頼む。すると、食卓の上に新たなカレーライスの皿が置かれた。
皆の分は配られている筈なのに追加されゲイツ達は首を傾げる。
その時、誰かがクジゴジ堂へ入って来る。ズカズカと遠慮の無い足音。そして、足音の主が姿を見せた時、ソウゴ以外言葉を失った。
ボロボロの服装になっている加古川飛流が睨む様にして全員を見回す。
「おかえり、飛流」
ソウゴの言葉に何も言わず、置かれてあるカレーライスを見ると鼻を鳴らしてそのカレーライスの前に座る。
「じゃあ、全員揃ったことだし──」
長く険しい戦いは終わった。だが、これから先彼らが進む道は決して平坦なものではない。これもまた一時の休憩に過ぎないのかもしれない。
しかし、この日常という名の一時の休憩こそが彼らにとってかけがえのないものなのだ。
『いただきます!』
彼らの日常が戻って来る。
◇
かくして元普通の高校生常磐ソウゴは新たな未来を書き示すこととなった。
今までご清聴ありがとうございました。私が案内出来るのはここまでです。
新たな時代を迎える常磐ソウゴがどんな未来を描くのか、それはまたのお楽しみに。
おや? どうやら近い将来、また会うかもしれませんね。
長い間読んで下さった方、感想を書いて下さった方、ありがとうございます。
これにてこの話は完結となりますが、年明けから令和ファーストかゲイツマジェスティのどちらかを投稿していきます。
どちらも書く予定ですが、アンケートで先にどっちを書くか集計します。
因みに令和ファーストは劇場版エンドから始まり、ゲイツマジェスティはテレビ版エンドの続きから始まります。
先にどちらが見たいですか?
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IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
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IFゲイツ、マジェスティ