頭部には左右に広げられた鷹の翼を思わせる飾り。右肩の装甲は孔雀の頭部、左肩には尾羽。孔雀の象徴とも言うべき長い上尾筒は折り畳まれた状態で背中に装備されている。
胴体中央には円形のプレートが有り、その形に合わせて丸みを帯びた文字で『たか』『くじゃく』『こんどる』が上中下に描かれていた。そして、左腕には胸のプレートを縮小させた円形の手甲──タジャスピナスピナーを装着。
脚部には脛、踵には鉤爪状のものが装甲から突き出ている。
全身を真紅の色に統一された姿。唯一、異なる色である『たじゃどる』という形の黄色の複眼が、ゲイツの顔面で輝く。
「お゛……お゛お゛お゛お゛! 危険、危険だ……!」
タジャドルアーマーを纏ったゲイツの姿を見て、アナザーポセイドンが警鐘の様に叫び始める。赤い色をしたゲイツを信号か何かと勘違いでもしたのだろうか、槍を滅茶苦茶に振り回しながら突進してくる。
「どっちが危険だ」
相変わらず嚙み合わない行動をするアナザーポセイドンに呆れつつも、突拍子も無いその行動に、契約者の理性は殆ど残されていると悟る。
振り回される槍が、ゲイツの脳天を裂く為に振り下ろされる。
「はっ!」
穂先が届く前に、ゲイツは左腕のタジャスピナスピナーを穂先の側面に当て、そのまま腕を払う。
槍が弾かれ、アナザーポセイドンの体勢が横に流れる。
ゲイツがその場で飛び上がる。同時に背部で畳まれていた真紅の翼が展開。その翼を羽ばたかせながら、アナザーポセイドンの胸部に足底を叩き付ける。
その一撃で後退するアナザーポセイドン。そこに更なる一撃。再び後ろに下がるポセイドン。またもや追撃の蹴りが入る。
飛翔するゲイツは、アナザーポセイドンとの距離を一定以上離すことなく詰め、左右の足で連続の蹴りを繰り出し続ける。
ゲイツの猛撃に、アナザーポセイドンは回避も防御も出来ず、その体に何度も蹴りを打ち込まれる。
「あ゛あ゛あ゛っ!」
痛みに悶える様な咆哮。アナザーポセイドンの鮫の口が限界まで開かれる。すると、連なって並ぶ鮫の歯が一斉に向きを変え、前に突き出す形になる。
相手が何をするか予想が付いたゲイツは、最後の蹴りを入れるとその反動で上空に飛ぶ。一瞬の間の後、空を飛ぶゲイツを追って鮫の歯が放たれた。
鋭利な歯が弾丸の様に連射される。抜けた箇所にはすぐに歯が生え、機関銃を思わせる連射性を見せる。
空中を疾走するゲイツ。すぐ背後に攻撃が迫ってきているのを見ずとも感じていた。
ゲイツは、最速を維持したまま空中で円を描く様に向きを反転する。
対象が急旋回したことで歯弾はつい先ほどまでゲイツが居た場所を通過。アナザーポセイドンは咄嗟に狙い直すことが出来ず、そのせいでゲイツが攻撃出来る間と無防備な隙を作ってしまう。
空中で円を描く最中、ゲイツの体勢は丁度上下逆さまとなっている状態であった。頭の下に立つアナザーポセイドンを見下ろしながら、ゲイツはタジャスピナスピナーを下方向に突き出す。
タジャスピナスピナーは赤く発光したかと思えば、円盤が燃え上がる。燃え上がり、生み出される炎は、円の縁から弾となってアナザーポセイドンに放たれた。
炎の塊がアナザーポセイドンの右肩に着弾。続けて胸、腹、頭部と連続して命中し、炎が当たった箇所を黒く焦がす。
連発して受けた炎に叫び声を上げるアナザーポセイドン。上空にいるゲイツを睨み付けると持っている槍をゲイツ目掛けて投擲した。
放たれた槍は、解放されたかの様に背鰭、胸鰭を広げ、穂先で出来た口を開けながら空中を直線ではなく、右へ左へと蛇行しながら泳ぐ様に飛ぶ。
アナザーポセイドンの槍が向かってきているのを見て、ゲイツは落下する様に下へ向かって飛ぶ。
対象に逃げられ天高く飛んでいってしまう槍であったが、柄を体の様にくねらせて反転し、ゲイツの後を追う。
後ろから槍が追って来ていることに気付いたゲイツは、振り返って槍と向き合う形となる。
すると、背後に広げられた翼が白い光を放ち、それが翼の先に集まると翼から無数の光弾が槍に向けて放たれた。
十を超える光弾が槍に着弾。急降下していた槍を再び空に押し上げる。すると、残りの光弾はそれぞれ軌跡を変えながら左右、上下など様々な角度から槍を撃ち、槍を上へ上へと舞い上げていく。
光弾が直撃する度に、背鰭、胸鰭を失い、柄がひび割れ、穂先が欠けていく。
ゲイツは、ウォッチに手を伸ばし、ゲイツライドウォッチとタジャドルライドウォッチのスイッチを連続して押す。
『フィニッシュタァァイム!』
『オーズ!』
ライドウォッチ内部の力が解き放たれ、ドライバーを介してその力がゲイツの左腕にあるタジャスピナスピナーへと流れ込む。
『ギガスキャン! タイムバースト!』
槍に向けて突き出す左腕。タジャスピナスピナーは一層激しい光を放ち、その光は炎となってゲイツを包む。
炎を纏った状態で、ゲイツは槍に向かって突進する。纏う炎は鳥の形となり、炎で作り上げられた姿は、さながら不死鳥であった。
不死鳥が貫く為の槍を逆に貫く。柄を真っ二つに折られた槍は、悲鳴を上げる様に穂先の口を大きく開いた後、炎に呑み込まれ、その炎の中で爆散した。
槍を破壊したゲイツは、反転して地面を見下ろす。そして、視界の中にこちらに向かって猛スピードで近付いてくるバイクを捉える。
二人乗りで走るそのバイクは、ゲイツも所有しているライドストライカーと呼ばれるもので、ゲイツの他にもう一人所有している。
ライドストライカー、二人の搭乗者。誰が乗っているかなどすぐに分かる。
「来たか」
ライドストライカーに乗る二人──ソウゴとミハルはアナザーポセイドンを発見し、運転手であるソウゴはすぐにライドストライカーを停車させる。
「いくよ!」
「ああ……!」
降りた二人は、ジクウドライバーとポセイドンドライバーを同時に装着する。
『変身!』
声を揃えながら、ソウゴはライドウォッチをセットしたジクウドライバーを一回転させ、ミハルはポセイドンドライバーにメダルを填め込む。
『仮面ライダージオウ!』
『サメ! クジラ! オオカミウオ!』
ジオウ、ポセイドンへと変身した二人。上空を見上げていたアナザーポセイドンもこの時に二人の存在に気付く。
「はっ!」
「たあっ!」
剣モードのジカンギレードを構えたジオウとディーペストハープンを両手で握り締めたポセイドンが同じタイミングで走り出し、接近と共に斬撃を繰り出す。
二人の攻撃を受け、ヨロヨロと後ろに下がっていくアナザーポセイドン。
この間にポセイドンは決着をつけようとメダルの力を──
『まだ早い』
「えっ?」
前触れも無くポセイドンの変身が解け、元のミハルの姿に戻ってしまった。
「何で! どうして!」
再変身を試みるが、ドライバーもメダルも反応しない。
「まさか今になってアナザーライダーの影響が……!?」
最悪のタイミングで変身出来なくなったミハルに、ジオウは焦った様な声を出すが、アナザーポセイドンが殴り掛かってきたせいですぐに戦いに戻される。
左右の拳の連打を剣の腹を盾にして防ぎ、その流れで出された前蹴りも同じく剣で守る。しかし、威力を殺すことが出来ず後方へ蹴り飛ばされてしまう。
数メートル以上移動させられるジオウ。そのせいでアナザーポセイドンの前に、戦う力を失ったミハルを置いてきてしまう形となった。
「う、ああ……」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……」
「逃げろ! ミハル!」
変身出来なくなったショックに、迫って来るアナザーポセイドン。立て続けに起こったことのせいでミハルは完全に恐怖に呑まれ、動けない。
アナザーポセイドンがミハルに襲い掛かろうとしたそのとき、炎弾がアナザーポセイドンの頭部に炸裂し、アナザーポセイドンを仰け反らせる。
炎に苦しむアナザーポセイドンの前に降り立つゲイツ。アナザーポセイドンに拳を打ち込み、ミハルから下がらせる。
「ゲイツ……?」
前に見た時の姿と違うので思わず尋ねる。
「下がっていろ!」
その声でゲイツだと分かり、ミハルはひとまず安心する。
「ゲイツ、ミハルが変身出来なく──」
「分かっている! ジオウ! とにかく奴を倒すぞ! その話は後だ!」
完全に撃破出来ないことは分かっているが、アナザーポセイドンを野放しすれば更なる被害が起きる。
「──分かった!」
アナザーポセイドンを倒すことを優先し、ジオウはスロットが一つ付けられたライドウォッチ──ディケイドライドウォッチを取り出し、スイッチを押す。
『ディ、ディ、ディ、ディケイド!』
それをジクウドライバーにセットし、ライダーアーマーを呼び出す。
ドライバーから飛び出す十のカード。それらがアーマーの各パーツへと変わる。
『アーマーターイム!』
『カメンライド・ワーオ! ディケーイ! ディケーイド! ディーケーイードー!』
仮面ライダーディケイドの力を宿したディケイドアーマーを纏ったジオウは、すぐに新たなライドウォッチを出し、ディケイドライドウォッチのスロットにそれを填める。
『ファイナルフォームターイム!』
『ウィ、ウィ、ウィ、ウィザード!』
魔法の力を操る仮面ライダーウィザードの力がディケイドの力と合わさり、更なる力をジオウに与える。
液晶画面の様な顔は『ディケイド』と描かれた顔から、額に黄金の線で作られた菱形、銀の線で隈取りが描かれた装飾が施されたルビーの様な顔となる。
ディケイドアーマーの右肩に描かれた『ディケイド』の文字が『ウィザード』に。胸部に並ぶバーコードと数字の羅列は『フレイムドラゴン』という文字に置き換わる。
全身が赤を主としたローブをアーマーの下に纏い、足元近くまで伸びている裾が風で揺らめく。
仮面ライダージオウディケイドアーマーウィザードフォームへの変身がここに完了する。
ジクウドライバーが彩色の光に輝き、その輝きの中から一本の剣が現れる。
『ライドヘイセイバー!』
ドライバーから出したライドヘイセイバーとジカンギレードを持ち、二刀流となったジオウは、その場で跳躍する。
跳んだ先に居るのはゲイツの炎に苦しむアナザーポセイドン。着地と共に両手の刃を交差させる様にアナザーポセイドンを斬り付ける。
「あ゛あ゛あ゛!」
悲鳴を上げるアナザーポセイドン。ジオウの連撃は止まらず、右で袈裟切りをしながら左の剣の逆胴でアナザーポセイドンの肩と脇腹を斬り、更に返す刃で逆袈裟、横薙ぎの斬撃を放つ。
斬撃を浴びせられ反撃も出来ず翻弄されるアナザーポセイドン。そこにゲイツも加わり、ジオウの斬撃の隙間を、ゲイツの拳打が埋める。
赤い二人の戦士の怒涛の攻め。アナザーポセイドンは為す術無く打ちのめされていく。
『はあっ!』
息を揃えたジオウたちの横蹴りを腹部に受け、アナザーポセイドンは大きく飛ばされていく。
両者の間に出来る距離。必殺の一撃を放つには十分な距離であった。
ジオウはディケイドライドウォッチのスイッチを押し、ゲイツはゲイツとタジャドルライドウォッチのスイッチを押してドライバーを回転させる。
『ウィ、ウィ、ウィ、ウィザード!』
『ファイナルアタック! タイムブレーク!』
『フィニッシュタァァイム! オーズ!』
『ギガスキャン! タイムバースト!』
ジオウの胸部前に赤い光で描かれた魔法陣が浮かび上がり、そこから赤い光で形作られた半透明のドラゴンの頭部が現れる。
ゲイツは、左腕を後ろに引き、拳を突き出す構えをとる。
ドラゴンの口から放たれる灼熱の炎。
ゲイツが突き出したタジャスピナスピナーからメダル型の複数のエネルギーが放たれ、それが集まり丸鋸の様に回転し、更に大きな円を描く。
走る炎。高速回転するエネルギー。アナザーポセイドンにそれらを防ぐ手立ては無く、二つの力をその身に受けてしまう。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
絶叫を上げ、アナザーポセイドンの体は二つの力に耐え切れなくなって爆発する。
爆発の余韻が消え、アナザーポセイドンが居た場所には壮年の男性が横たわっていた。間違いないが無ければみはるの父親である。
すぐにみはるの父親を救出しようとするジオウたち。しかし、それをすんなりと通さなれない。
ジオウたちが一歩踏み込んだ瞬間、全てが静止する。ジオウたちは一歩も動くことが出来なくなり、音が消える。まさに時間が停められていた。
「まだ倒させる訳にはいかないな」
アナザーポセイドンを生み出したタイムジャッカー、スウォルツが悠然とした歩みでみはるの父親の側に移動すると、その体に腕を突き入れる。
沈み込むスウォルツの手。それが引き出されたときには、その手にウォッチが握られていた。
『ポセイドン……』
機能停止させられていたアナザーウォッチを再起動させる。もう一度、アナザーポセイドンを復活させようとするスウォルツ。しかし、停められているジオウたちは、それを見ているしかない。
起動させたアナザーポセイドンを、みはるの父親に埋め込もうとしたとき──
「この時を待っていた」
スウォルツの手を誰かが掴む。
「何だと……?」
スウォルツの手を掴んでいるのは、ミハルであった。
「お前の時代ではどうかは知らないが、俺の時代じゃ時間停止は大して珍しい能力じゃないんだよ」
ミハルの目が青く輝き、スウォルツに拳を打ち込む。それを咄嗟に払い距離をとるスウォルツ。
「貰うぜ、これ」
ミハルの手には、アナザーウォッチが握られていた。
「何をする気だ……?」
「こうするんだよ」
ミハルは自分の体にアナザーウォッチを埋め込む。
「くっ! ぐっ!」
悶えるミハル。すると、アナザーウォッチの力が体内で解放され、おどろおどろしい色の力がミハルを包み込む──のではなく、ミハルの目の前で集まり、アナザーポセイドンの形となった。
「馬鹿な……!」
スウォルツは驚愕する。契約者が変身せずにアナザーライダーが生み出されたことに。同時に動揺からか時間停止も解除される。
「どういうことだ……!」
「ミハルの体からアナザーライダーが!」
時間停止させられていても意識はあった二人は、今までに無い事態に驚くしかない。
「ようやく自由に動ける体が手に入った」
「──え! な、何で? キミは、誰なんだ!」
ミハルもまた目の前ことに驚くしかなかった。気が付いたら目の前にアナザーポセイドンが居る。みはるの父親はまだ横たわっているというのに。
「俺か? 俺は──」
アナザーポセイドンがミハルに向けて手を翳す。すると、ミハルが巻いていたポセイドンドライバーがひとりでに外れ、アナザーポセイドンに装着される。
「変身」
『サメ! クジラ! オオカミウオ!』
アナザーポセイドンが仮面ライダーポセイドンへと変身する。
「仮面ライダーだ」
「そんな……!」
もう一人の仮面ライダーポセイドンが現れる。
「アナザーライダーが仮面ライダーに……」
「変身した!」
連続して起こる異常事態。それに振り回されるジオウたち。その中で一人、冷静に行動に移す者がいた。
「他に使う予定だったが仕方ない」
スウォルツはウォッチを出し、みはるの父親目掛けて投げ放つ。ウォッチはみはるの父親に入り込み、その中で宿した力の名を呼ぶ。
『アクア……』
「うぐ、ああああああああ!」
ウォッチの力がみはるの父親を取り込み、新たなアナザーライダーを生み出す。
全身には水色と銀色の鱗を生えていた。手は指と指の間に膜が張った水かきの形をしており、足は長く伸びた三本の指の間に膜のあるフィンの形をしていた。
頭部は顔の右半分、左半分が楕円状の装甲で覆われ、その装甲にゴーグル型の黄色い複眼が備わっており、口は長さが異なった牙が生え、カチカチと音を鳴らしている。
腹部中央にはスクリューの羽の様なドライバーらしきものがあり、その横からベルトが伸びている。そのベルトの右側に『AQUA』、左側に『2051』の刻印があった。
半魚人を彷彿とさせるアナザーライダーに姿を変えたみはるの父親。
最早驚いている暇は無い。事態を一刻でも早く収束させる為にゲイツは叫ぶ。
「変身しろ! もう一つの仮面ライダーに!」
新たなアナザーライダーが、ミハルの異なる力を持ったもう一つの仮面ライダーであることは分かっていた。
そのアナザーライダーを倒させる為にミハルに変身する様に叫ぶ。
しかし、ミハルは動揺する様な眼差しをゲイツに向けた後、俯いてしまう。
「どうした!?」
「ははははははははは!」
ミハルのその姿を、ポセイドンは嘲笑する。
「言ってやれよ、本当のことを」
ポセイドンはミハルを見下しながら言う。
「……きないんだ」
「何?」
「俺、もう一つの仮面ライダーには、変身、出来ないんだ……!」
絞り出す様な震えた声。
「なっ!?」
「えええええええ!」
この土壇場で告げられた事実にゲイツもジオウもただ驚くことしか出来なかった。
この中でのポセイドンとアクアは、全く異なる技術を使っているという設定なので、ミハル一人で二つのアナザーウォッチが出せることになっています。
書いてて作中の設定ならタジャドルでアナザーポセイドンを倒せるかもと思いましたが、まあ、ミライダーはそれに対応したライダーの力じゃないと無理ということでお願いします。
先にどちらが見たいですか?
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IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
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IFゲイツ、マジェスティ