仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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次回でようやく最後です。


アナザーアクア2051 その8

『ポセイドン!』

 

 倒した筈の仮面ライダーの力が目の前で使われ、アクアは暫し呆然としてしまう。そんなアクアの心境など無視して、白ウォズはポセイドンミライドウォッチをビヨンドライバーへと挿す。

 

『アクション!』

 

 ミライドウォッチのスイッチを再び押す。開かれたウォッチの中にはこれから成る白ウォズの未来の姿が描かれていた。

「変身」

『投影!』

 

 未来の姿をドライバー中央に填め込み、未来を現在に映し出す。

 

『フューチャータイム!』

『サメ! クジラ! オオカミウオ!』

 

 白ウォズの背後に四角のパネルが出現し、そこから伸びる光の線と白ウォズの周囲から伸びる光が、彼が纏うべき装備を描き出し、実体化させる。

 

『フューチャーリングポセイドン! ポセイドン!』

 

 完了を締め括る言葉と共に実体化した装備が白ウォズへ自動的に装着され、最後にパネルから飛び出していた文字が顔に填め込まれることで、彼を仮面ライダーへと変身させた。

 両肩には、ポセイドンが胸に描いていた逆三角形型のメダルのマークが刻印され、胸部の装甲には、サメメダル、クジラメダル、オオカミウオメダルが縦に並んで描かれていた。

 額にはポセイドンドライバーに似た黄色い丸鋸状のヘッドパーツが装着されている。

 そして、顔には『ポセイドン』の文字。『ポセ』は水色。『イ』は蒼色。『ドン』は赤色。文字は三色に分かれている。

 仮面ライダーウォズフューチャリングポセイドン。新たな未来の仮面ライダーの力を手中に収めた瞬間であった。

 

「彼には少々手こずらされたが、君のおかげでこの力を手に入れることが出来た。礼を言わせて貰うよ」

 

 言葉だけ見ればさも感謝している様だが皮肉しか聞こえない。アクアにしてみればポセイドンとの戦いに泥を塗られた様な気持ちになり、怒りが湧いてくる。

 敵対したが、一つの体を使い無意識下だが共闘して戦い抜いてきた不思議な関係。それでも、何も思わないなど嘘である。

 

「それを返してくれ!」

「返してくれ? おや? 君と彼は敵同士じゃなかったかい?」

「そんなこと関係無い!」

「奇妙なことを言うね。しかし、断らせて貰うよ。これは、我が救世主がゲイツリバイブに至る後押しになる。当然、君の力もだ」

「ゲイツは、そんな無理矢理奪った力なんて望まないわ!」

 

 ウォズの言葉にツクヨミは異を唱える。

 

「それはどうかな? これや彼の力を得れば逢魔の日に魔王を倒す勝算が増す。その先には、我が救世主や君が望む未来が待っているかもしれないというのに?」

「それは……」

 

 ツクヨミは、咄嗟に反論出来なかった。ウォズの言葉を全て肯定することは出来ない。しかし、一部否定し切れ無いことがあるのも事実。何を言うべきか、言葉を選んでしまい、そのせいで詰まってしまう。

 

「そして、湊ミハル君。喜びたまえ、君もまたその輝かしい未来の礎になるのだから」

『ジカンデスピア! ヤリスギ!』

 

 ドライバーからジカンデスピアを召喚し、掴むと同時にアクアへ突きを繰り出す。

 

「くっ!」

 

 刃の側面に放った掌打で突きの軌道を逸らしつつ、身を捻って完全に回避してみせたアクア。だが、ウォズは即座に突きから払いに変え、避けたアクアを追撃する。

 

「はあっ!」

 

 胴体目掛けての払いに対し、アクアは両手でジカンデスピアの刃を上下で挟み、白刃取りによって止めてみせた。

 

「ふっ」

 

 本気の戦いの場で曲芸染みた技を見せたアクアに対してのウォズの反応は、失笑であった。アクアの行為がまるで意味を為さない滑稽なものであると告げる様に。

 アクアが止めていたジカンデスピアの刃が水色に輝く。

 自分が如何に迂闊であったか、アクアは身を以って教えられる。

 刃から飛び出した水色の衝撃波がアクアの脇腹に直撃し、衝撃と爆発によってアクアは吹き飛ばされる。

 ポセイドンと同じ技。仮面ライダーポセイドンの力を宿しているウォズが使っても何らおかしくは無い。

 

「く、ぐっ……!」

 

 アクアは立ち上がろうとするが、すぐに片膝を着き、攻撃を受けた脇腹を押さえる。近距離での衝撃波で痛め、動くだけで鋭い痛みが脳を貫く。

 

「そのままじっとしている方が良い。その方が、私にとっても君にとっても楽だ」

 

 ジカンデスピアを突き付けながら、ウォズが勝ち誇った様に言う。

 アクアは何とか立ち上がろうとするも、やはり体が上手く動かない。先程の一撃もあるが、ポセイドンとの精神と肉体を消耗する戦い、必殺技の連発、熾烈な戦いを終え、集中力が一旦切れてしまったことで、その反動からアクアの体力は大分削られ万全では無い。

 

「止めなさい!」

 

 ライドウォッチ型のマルチデバイス、ファイズフォンXを銃形態に、銃口をウォズの背中に向けながらツクヨミが警告を飛ばす。

 

「止めておいた方が良い。その選択は君の為にはならない」

 

 銃口を向けられたウォズは、それを何の脅威に感じておらず、ツクヨミの行動を我儘な子供の様に呆れを混ぜた溜息を吐きながら忠告する。

 

「私は本気よ! 無理矢理力を奪うなんてこと、許される筈が無い!」

 

 ツクヨミの怒気の籠った言葉を聞き、ウォズは再度溜息を吐く。

 

「なら撃ってみたまえ」

 

 ウォズは、アクアに槍を突き付けたままツクヨミの方を見向きもしない。

 ツクヨミは、無防備なウォズの背を狙い、ファイズフォンXの引き金の引く──が、銃口から光弾が発射されない。

 

「流石だね、ツクヨミ君。我が救世主も君ぐらいの覚悟があれば、私も楽に事を進められるんだが」

 

 ツクヨミの覚悟を讃えつつ、ウォズは背後のツクヨミにノート型タブレットの中身を見せ、書かれている文章を読ませる。

 

『ツクヨミ、仮面ライダーウォズに銃撃を行うが発射されず』

 

 この文章のせいで、ツクヨミはウォズを攻撃する手段を失った。

 

「逃げなさい!」

 

 すぐにツクヨミはアクアに逃走を促すが、五体に力が入らないアクアは即座に行動に移せない。

 そんなアクアを嬲る様に、楽しむ様に、ゆっくりとブランクミライドウォッチを取り外す。

 

「さあ、これで君の……うっ!」

 

 突然ウォズは呻き、前屈みになる。

 

「どういう、ことだ! これ、は……!」

 

 ブランクミライドウォッチを持つ手がブルブルと震え、やがてその手から落ちる。

 

「まさか、あのライドウォッチの中に……!」

 

 そこでウォズの言葉はぶつりと切れ、顔を伏せたまま動かなくなる。

 

「な、何が起こったんだ……?」

「白ウォズ……?」

 

 突然の事態にアクアは戸惑い、ツクヨミはウォズの様子を窺う。すると、いきなりウォズが伏せていた顔を上げ、二人は驚く。

 

「言っただろう? 後悔することになるぞ、とな」

 

 二人には訳が分からない台詞を一人喋るウォズ。

 ウォズは戸惑っているアクアに、槍を突き付ける。咄嗟に構えるアクア。

 

「……ふっ」

 

 ウォズは一笑し、突き付けていた槍を一回転させ、柄頭を地面に着け、槍にもたれ掛かる体勢となった。

 その姿にアクアは既視感を覚える。

 

「まさか……!」

「俺の力が欲しいっていうからくれてやった。──俺の意識ごとな」

 

 ウォズとは全く異なる口調。アクアもツクヨミもすぐに誰のものか分かった。何せ数分前まで、聞いていたからだ。

 

『ポセイドン!』

「その通り」

「あんた、白ウォズの意識を乗っ取ったの!」

「まあな。そいつ以外の体に入るのは初めてだったが、上手くいった」

「何の為に……!」

「何の為、か……」

 

 突如廃倉庫の壁が爆発し、中から何かが飛び出し、何度も地面を跳ねていく。飛び出した何かは、そのままの勢いで海の中へと落ちていった。

 暫くすると、爆発した壁の向こうからゲイツと、彼に肩を貸されているジオウが引きずられて出てくる。

 

「しっかり歩け!」

「ごめん……。あれ、元に戻ると、物凄く疲れるみたい……」

 

 ガタキリバフォームの分身を解除し、一つに戻った途端分身五人分の疲労がジオウに一気に掛かり、結果としてオーズフォームは解除され、元のディケイドアーマーの状態に戻っていた。

 

「ソウゴ! ゲイツ!」

「ツクヨミ、白ウォズだと……? それにあの仮面ライダーは……」

 

 仮面ライダーウォズの姿を見てゲイツは警戒を強め、仮面ライダーアクアの姿に少し驚いた。

 

「ミハル、変身出来たんだ! それでポセイドンは倒したの?」

 

 アクアをすぐにミハルだと見抜いたジオウは喜び、同時にポセイドンが居なくなっており、ウォズが見たことも無い姿になっていることから二人で倒したのかとジオウはそう推測する。

 

「何というか、倒したと言ったら倒したけど……」

 

 ジオウの問いに、アクアは歯切れの悪い言葉で濁す。

 

「まさか、お前が奴を倒したのか? 白ウォズ?」

「俺のことよりも、そっちはどうなんだ? あの仮面ライダー擬きを倒したのか?」

 

 自分の知っている白ウォズとは明らかに異なる口調で返され、ゲイツは少し困惑する。

 

「あ、そうだ! 三人とも、アナザーライダーを見なかった? いきなり爆発して逃げたんだけど」

「壁から出て何処かに向かわなかったか?」

 

 アクアたちは、アナザーアクアの姿は見ていない。だが、壁から出て来た何かを見た。三人の視線が自然と海の方に向けられる。

 その視線を向けられた先を見て、ジオウとゲイツは仮面の下で顔色を変えた。

 

「不味い……!」

「何か、やばそうな気がする……」

 

 アナザーアクアの能力を知っているジオウとゲイツは、これから起こる最悪の事態を想定する。

 そして、それは起こった。ただし、予想とは異なる形で。

 アナザーアクアが落ちた海面が盛り上がる。盛り上がりは段々と大きくなっていき、やがて先端が五つに枝分かれし、巨大な手となって足場の縁に叩き付けられる。

 

「嘘っ!」

 

 巨大な手を見て、ツクヨミは叫んでいた。アクアもまた同じ心境である。

 

「うわー……大きそう……」

「分裂の次は、巨大化か……」

 

 ジオウとゲイツはうんざりした声を出す。

 

「随分と多芸な奴だな」

 

 アナザーアクアの変貌に、ウォズことポセイドンは肩を竦める。

 

「まだ戦えるか?」

 

 ポセイドンは、アクアにそう問う。ジオウ、ゲイツ、ツクヨミはポセイドンがアクアにまだ戦う気なのかと身構えるが、アクアの印象は違っていた。本当に、まだ戦うことが出来るか確認しているだけの様に聞こえた。

 

「最後まで仮面ライダーをやり通せるのか?」

「大丈夫、だ!」

 

 体中が痛むが、やせ我慢をしながらアクアは立ち上がる。

 

「なら問題ないな。とっととアレを倒すぞ」

『えっ!』

 

 アクア以外の面々が声を揃えて驚く。

 

「一緒に戦うつもり?」

「どういう風の吹き回しだ? ──何を企んでいる?」

 

 意図が分からず、警戒を強めるゲイツとツクヨミ。

 

「そっか。分かった。じゃあ、一緒にやろうか」

 

 ジオウの方は、あっけらかんとした態度ですんなりとそれを受け入れた。

 ポセイドンは、ジオウに少し呆れた目線を向ける。

 

「おかしな奴だ。一度戦った相手の言葉を、そんなに簡単に信じるのか?」

「王様になるんだったら、そういうことは水に流してみせる度量も必要だからね」

「あいつの中で聞いていたが、本気で王様になるつもりなのか? どうやら俺が思っていた以上におかしな奴みたいだな、お前は」

 

 馬鹿にしているというよりも、物珍しいものでも見るかの様な態度。

 

「ミハルはどう思う?」

 

 ポセイドンと共に戦うことへの是非をアクアに聞く。

 

「俺は──一緒に戦っても大丈夫だと思う」

「そう。という訳でゲイツ」

「ちっ。変な真似はするなよ」

「ふっ」

 

 ゲイツも渋々了承する。

 

「みんな、来るわ!」

 

 ツクヨミの声に、皆がアナザーアクアの方を見た。

 海面から飛び出した二本の手が、巨体を海中から引き上げる。

 海中から姿を現す数十メートルの巨体。見た目はアナザーアクアとほぼ変わらないが、大量の海水を取り込んで膨張したせいか体は半透明になっており、体内で泳いでいる魚た ちが見えた。

 敵は巨大。しかし、四人の仮面ライダーが集った今、彼らが敗北する光景は見えない。

 

「タイムマジーン、呼ぶ?」

「呼ぶ暇があったらな! 来るぞ!」

 

 地面に上がったアナザーアクアは、足元にいるジオウに向けて右手を振り下ろす。

 四人は右手が届く前に散らばって移動し、右手の範囲から逃れる。

 凄まじい音と共に、掌の跡がコンクリートの地面に残る。掌の大きさだけでジオウたちが簡単に入ってしまうほどであった。

 

「図体がでかい分、動きは鈍いな!」

「これなら!」

 

 ポセイドンは、槍から衝撃波を放ちアナザーアクアの右脛を削り、アクアも両足から放出する水流を操ってアナザーアクアに接近し、左脛を蹴り付ける。

 

「なら速さで攪乱する!」

『タジャドルコンボ!』

 

 ブレイブライドウォッチからタジャドルライドウォッチに交換し、タジャドルアーマーを召喚する。

 

『タカ! クジャク! コンドル! タジャドル!』

 

 纏うと同時に翼を広げて飛翔し、腕に装着してあるタジャスピナスピナーから炎弾を放ち、更に翼から孔雀の羽を模した炎弾も放ちながらアナザーアクアの周囲を飛び回る。

 炎弾が着弾した箇所は、水蒸気の煙を上げながら抉れ、溜め込んだ水ですぐにその抉れた箇所を塞ぐ。一発の被害は大したことは無いが、それが立て続けに何十と撃ち込まれると大きなダメージとなる。

 

「あ゛あ゛あ゛あ!」

 

 ゲイツを鬱陶しく感じたのか、アナザーアクアは咆哮を上げて左手で掴み取ろうとする。

 迫る巨大な手を空中で回避するゲイツ。アナザーアクアは、飛翔するゲイツを逃すまいと、その手を伸ばす。

 関節など最初から無いように何倍もの長さに伸び、飛ぶゲイツの後を追跡するアナザーアクアの手。

 高速飛翔で追い付かれない様にするゲイツであったが、逃げ場を遮る壁としてもう一つの手が正面から迫る。

 

「くっ!」

 

 方向を変えられないと悟るゲイツだったが──

 

『ドライブ! デュアルタイムブレーク!』

 

 三つのタイヤ型のエネルギーが、逃げ道を塞いでいた手を破壊する。

 

「ジオウか」

 

 ゲイツが目線を下げると、ライドヘイセイバーを振り下ろしたジオウの姿を見つけた。

 

「ゲイツ! 大丈夫?」

「俺より自分の心配をしろ」

「え? うわっ!」

 

 巨大な足が迫っていることに気付き、ジオウは慌てて身を低くしてそれを躱す。

 アナザーアクアは、失った手の断面を海に向かって伸ばす。断面が海に触れるとそこから海水を吸い上げ、手を再生させた。

 

「どうやらちまちま削っても、海がある限り無駄みたいだな」

「どうする?」

「どうしよう……」

 

 ジオウ、アクア、ポセイドンは集まり、ゲイツが敵の注目を集めているうちに戦い方を話す。

 

「諦めるか?」

『まさか』

 

 ポセイドンの冗談か本気か分からない言葉を、二人は声を揃えて即否定する。

 

「あいつが水を補給出来ない状態にして」

「尚且つ強力な一撃叩き込んだら……でも、そんなこと──」

「出来るぞ。あいつの動きを止めて水も断つことが」

「えっ!本当に?」

「俺の言葉を信じるか信じないかは自由だがな。ただ、そんなことを議論しても時間の──」

「俺は信じるよ」

 

 アクアは、ポセイドンの言葉に被せて言う。

 

「だって、君はもう一人の俺だから……」

「……ちっ。お人好しが」

 

 ポセイドンは舌打ちをし、目線をアクアから離す。照れ隠しと思える仕草であった。

 

「なら俺も信じるよ。ゲイツ! ゲイツも信じるよねー!」

「いいからさっさとしろ! 長くは持たんぞ!」

 

 ジオウがゲイツにも聞くと、怒声となって返ってきた。だが、怒っていてもポセイドンの策に乗る様子。

 

「ふん。なら行くぞ。最後をしくじるなよ!」

 

 ポセイドンは、ドライバーのハンドルを引き、また倒してドライバー中央にミライドウォッチを填める。

 

『ビヨンド・ザ・タイム!』

 

 ジカンデスピアを地面に深々と突き刺し、柄がしなる程力を込める。地面に亀裂が生じ、その亀裂はアナザーアクアに向かって一直線に伸びる。

 

『ディープスパウダー!』

 

 ポセイドンがジカンデスピアを地面ごと振り抜く、亀裂が割れそこから液体状のエネルギーが噴き出し、津波となってアナザーアクアに襲い掛かる。

 迫る津波に気付き、身構えるアナザーアクア。すると、津波の中からエネルギーで形作られた巨大なオオカミウオが飛び出してアナザーアクアの両足に噛み付き動きを止め、続けて巨大なサメも飛び出し、アナザーアクアの喉に喰らい付く。

 二匹の巨大魚によって拘束されるアナザーアクア。そして、最後の一頭はアナザーアクアの足元に伸びた亀裂を突き破って現れる。

 巨大なクジラ型のエネルギーが、サメやオオカミウオごとアナザーアクアを呑み込み、その状態で大ジャンプする。

 アナザーアクアの動きを止め、空中の為海から補給も出来ない。後は再生も出来ない強力な一撃を放つだけ。

 

「行けっ!」

 

 ポセイドンの言葉を合図に、ジオウ、ゲイツ、アクアは最後の一撃を放つ。

 ジオウとゲイツはライドウォッチのスイッチを押し、ライドウォッチの力を最大限まで解放する。

 

『フィニッシュタァァイム!』

『ディケイド!』

『オーズ!』

 

 ジオウの前にカード型のエネルギーが、アナザーアクアまで導く様に並び、ゲイツは両脚に折り畳まれていた爪が展開され、タジャドルの力で赤熱化する。

 アクアは全身に水のエネルギーを纏い、それをアナザーアクアまで伸ばす。

 

『アタック! タイムブレーク!』

『ギガスキャン! タイムバースト!』

 

 ジオウはキックの体勢でカードの中に飛び込み、カードを通過する度にその力を得ながら加速。アクアもジオウと並んで伸ばした水の中を滑る様にして駆けていき、ゲイツは翼を羽ばたかせて加速する。

 上に向かって飛ぶジオウとアクア。下に向かって急降下するゲイツ。

 

『はあああっ!』

 

 ジオウの、アクアの、ゲイツの必殺の一撃がアナザーアクアを貫く。

 三つの力が、アナザーアクアの体内で交差し、干渉し、影響し合った結果アナザーアクアは膨張し、三人のライダーが発した力を内包しきれなくなると巨体を吹き飛ばす爆発と化す。

 アナザーアクアが蓄えていた海水が雨の様に降り注ぐ中、アクアは落下していくあるものを発見し、足から水流を出して地面に落ちる前に受け止める。

 アクアの腕の中で意識の無い壮年の男性。みはるの父親であった。その胸は上下しており生きていることが分かる。

 アクアの足元には、埋め込めまれていたアナザーアクアウォッチが転がっており、ウォッチはショートした様に火花を発すると砕けて壊れる。

 

「良かった……!」

 

 無事にみはるの父親を助けることが出来たアクアは天を見上げる。降り注ぐ海水のせいで、双眸から滂沱の涙を流している様に見える。

 

「仮面ライダーに変身出来ても、泣き虫は治らないみたいだな」

 

 その姿を眺めていたポセイドンの声は、笑いながらもどこか安堵した響きがあった。

 




いつの間にかアナザーポセイドンとアナザーアクアの話が全体の半分近くになってしまいましたね。書く前はこんなに長くなるとは思いませんでした。

先にどちらが見たいですか?

  • IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
  • IFゲイツ、マジェスティ

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