次からはまた同じようなダイジェストな話になります。
港に降るアナザーアクアが敗北したことで散った海水の雨。だが、一部で奇妙な現象が起きていた。とある港の倉庫、そこだけ雨が途中で止まっているのだ。
それを起こしたのは、その現象の中心に立つ人物──スウォルツ。彼の能力によって周囲の時間が停止されていた。
事の顛末を見ていたスウォルツは、アナザーアクアの敗北を見るとさっさとこの場から立ち去ろうとする。
「あわよくばと思っていたが、まあいいだろう」
湊ミハルという一人から二体のアナザーライダーを生み出すことが出来る存在を上手く利用出来ないかと考えたスウォルツであったが、結果としてアナザーポセイドンとアナザーアクアのアナザーウォッチは破壊されてしまった。
だが、そのことに対してスウォルツは気分を害した様子は見られない。スウォルツの今回の行動は言葉通り、成功しても失敗してもどちらでも良かったのだ。
幾つもの策の内、降って湧いたイレギュラーを用いた策などに元より本腰を入れるつもりなど無い。
何の未練も悔しさも無くスウォルツは去ろうとするが、一旦足を止めてジオウたちの方を見下ろす。
「今回の騒動は、お前が一番振り回されたようだな、ウォズ」
ポセイドンによって体の主導権を奪われている白ウォズに嘲笑を送った後、スウォルツは新たな策の為にこの場から消え去った。
◇
「終わったね、全部」
「ああ」
みはるの父親を地面に降ろしているアクアに、ジオウは声を掛けるとドライバーからライドウォッチを外して変身を解く。アクアもまた降ろし終えると変身を解除した。
「おい!」
二人の行動をゲイツが咎める。二人は何故ゲイツが怒っているのか一瞬分からなかったがすぐに気付き、揃ってポセイドンの方を見る。
ポセイドンは、槍の柄頭を着けた体勢で二人の迂闊さを見ている。心なしかその視線に呆れが混じっている様に思えた。
「大物と言うべきか、緊張感が無いと言うべきか」
台詞からして実際に呆れていた。いくら共闘したからといって完全な味方になった保障は何処にも無い。未だに変身を解いていないゲイツの行動の方が正しいと言える。
「でも、そっちは戦う気無いでしょ?」
事もなげに言い切るソウゴ。真っ直ぐと見つめてくる双眼は、何かも見通してくる様な錯覚を覚える。ポセイドンは、ソウゴの王様になるという夢はあながち夢で終わらないのでは、と一瞬思ってしまい、すぐにソウゴから視線を逸らして心の裡で『馬鹿馬鹿しい』と一蹴する。
「チッ。調子が狂う」
「あっ、そうだ。今白ウォズってどうなってるの?」
「ずっと頭の中で騒ぎっぱなしだ。とっとと出ていって欲しいらしいな。言われなくとも出て行くさ。──やることをやってからな」
「やること?」
ポセイドンは、白ウォズのノート型タブレット端末を取り出すと、徐に何かを書き始める。
ソウゴはポセイドンが何を書くのか興味津々といった様子で眺め、ゲイツとツクヨミは書いたことを現実に引き起こすそれに何を書くのか強く警戒する。
一方でミハルは三人とは異なり、ポセイドンのその姿に嫌な予感を覚えた。良からぬことを企んでいるというものでは無く、ポセイドンの姿に何か覚悟を感じたのだ。
「──これで終わりだな」
「何を書いたの?」
ソウゴが書き終えたタブレットを覗き込む。ポセイドンは、特に嫌がる態度を見せなかった。
「……え?」
ソウゴは困惑した声を洩らす。
「何が書いてあったの?」
戸惑うソウゴに、ツクヨミがタブレットの文章について聞く。
「それが……」
「これだよ」
ソウゴが答えるより先に、ポセイドンの方から皆にタブレットの文章を見せる。
『ポセイドンミライドウォッチから仮面ライダーポセイドンの力が完全に消える』
ミライドウォッチから仮面ライダーの力が消える。書いてあることの意味を理解した瞬間、ポセイドンの体から粒子の様なものが抜け出ていく。抜け出たそれは、空気に溶け込んでいく。この粒子が仮面ライダーの力であった。
その現象にソウゴたちは驚く。特にミハルはひどく動揺していた。
「消えたらどうなるんだ!? 君はそれに力だけじゃなくて君の意識も入っているんだろう!?」
「当然、俺の意識も消えるだろうな」
「そんなの、そんなの死ぬのと変わらないじゃないか!」
初めて知る事実にソウゴとゲイツは絶句する。ミハルの言葉通りなら、ポセイドンは自ら死を選んだに等しい。
「いいんだよ、もう」
「いいって……!」
「俺はもう満足した。──少し違うか。お前の満たされていなかった部分が埋まったから俺も満たされたんだ。欲しいものが手に入った今、俺が存在する理由は無い」
ポセイドンの体から色が抜け落ちていき、それに合わせて纏っていた装甲の輪郭もぼやけていく。
「それって……」
「これも持っていけ」
「うわっ!」
ポセイドンが投げ渡した物を慌てて受け取る。いつの間にか回収していた三枚のメダルであった。
「お前にはもう必要ないかもしれないが、この時代には置いていくなよ? まあ、メダルは壊すなり捨てるなり好きにしろ」
渡されたそのメダルを、ミハルは強く握り締める。
「そんなことする訳無い。これがあったから、俺は今まで戦ってこれたんだ」
勇気が無かった自分が、怪人たちとの戦いで生き残れたのは間違いなくこのメダル──ポセイドンの力のおかげであった。ミハルの中には純粋に感謝の念しかない。
「持っておくなら覚悟しておけ。お前の心の中で何かが失われたとき、俺はまた生まれる。今度は一時的じゃない。完全に乗っ取られると思っておけ」
警告とも言えるし、ポセイドンなりの叱咤とも言えた。
「──分かった。……だから、さよなら」
ミハルはポセイドンに別れの言葉を送る。二度とポセイドンとは会わないという意思であり、胸の内にある勇気を失わないという誓いであった。
「──ああ、さよならだ」
ポセイドンもまた別れの言葉を口にする。再会が無いことを願って。
「思い返せば短い人生だったが……まあ、時間の無駄じゃなかったみたいだ」
最期にそう言い残すと、ビヨンドライバーに挿されていたポセイドンミライドウォッチがブランク状態となり、変身が解けて白ウォズへと戻る。
「──全く、酷い目にあったよ」
ポセイドンから解放された白ウォズは、いつもの余裕がある笑みを流石に浮かべることが出来ず、不機嫌さと苛立ちで片頬を歪めていた。
「どうやら完全に戻ったみたいだな」
白ウォズの反応を見て、ゲイツはようやく変身を解除する。
「我が救世主の前で、とんだ恥をかかされてしまったよ……!」
言葉にも怒りが滲み出ているが、それを向かうべき相手が居なくなってしまったせいで、怒りの遣り処も無くなってしまい、余計に白ウォズを苛立たせた。
「これに懲りたら、無理矢理力を奪う様な真似は止すんだな」
「……忠告として受け取っておくよ」
外に溢れ出そうな怒りを押し込んだ白ウォズだが、まで笑みを浮かべる程の余裕は無く無表情であった。
「とにかくさ、みはる君のお父さんも取り戻せたし、早く戻ろう! あの子もこの人やミハルのことを待っているし」
「……ソウゴ。その人のことを頼む」
「え?」
「俺は……このまま未来に帰るよ」
ミハルは、ポセイドンによって作られた裂け目を見上げていた。
「最後にあの子に会わなくていいの?」
「何時までもこの時代にいたら、どんな影響があるか分からない。それに、少しでも早く2051年に戻らないといけないんだ」
ミハルがソウゴたちを見る。その顔を決意に満ちた男の顔であった。
「俺は、あの世界の明日を守る仮面ライダーだから……!」
「──そっか! 分かった!」
ソウゴは引き留めることはせず、ミハルの決めたことを素直に受け入れる。
「──だそうだ」
ミハルの話を聞き、ゲイツが白ウォズに意図を含ませて振る。白ウォズは一瞬だけ嫌そうに顔を顰めたが、すぐにそれを笑みによって覆い隠した。
「我が救世主がお望みとあらば」
ノート型タブレットを出し、そこに文章を書き込む。
『湊ミハル、無事に元の時代へと帰る』
この文章が書かれたことで、ミハルは確実に2051年へ戻ることが出来る。
「二度と会わないことを願っているよ。イレギュラーに振り回されて乗っ取られるのはもう御免だ」
仮面ライダーアクアのミライドウォッチを収得することを完全に諦め、白ウォズは嫌味を言い残して足早に去って行った。
「じゃあ、俺はこれで」
ミハルは変身し、仮面ライダーアクアへと成る。
「うん。じゃあね」
ソウゴは別れの言葉を送り、ツクヨミは手を振る。ゲイツは別方向を向いていたが、その口が『──じゃあな』とだけ動いた。
「──あ、そうだ」
裂け目に跳び込む寸前、アクアはソウゴに近寄る。
「みはる君にこう伝えておいて」
「何?」
「『──』って」
「うん。分かった、伝えておく」
「ありがとう。皆元気で! 君たちと会えて本当に良かった!」
アクアは大きく手を振り、それが終わると全身を水で覆い、裂け目の中に入っていった。
「……行っちゃったね」
「ええ」
「──さあ、この人をあの子に会わせないと! ゲイツ! 手を貸して!」
「何で俺がお前の頼みを……!」
「俺じゃなくて、この人とあの子の為だよ?」
「──くっ!」
◇
「お父さーん!」
クジゴジ堂へ運ばれた父親に、みはるは泣きながら抱きついた。まだ気絶しているせいで抱き返すことが出来ないが、それも間も無くのことであろう。
ソファーに寝かされた父親にしがみついてみはるは会えなかった分だけ涙を流す。
泣くだけ泣くと落ち着いてきたのか、ソウゴに話し掛けてきた。
「お兄ちゃん、約束守ってくれた! お父さんが帰ってきた! ……お兄ちゃんは?」
ようやくミハルの不在に気付き、みはるはキョロキョロと周囲を見回し、ミハルを探す。
「ミハルはね……ちょっと事情があって帰ったんだ。ミハルを必要としている場所に」
「帰っちゃったの? 僕……お礼言ってないのに……」
「きっと、きっとまたいつか会えるよ。そのときにお礼を言えばいい」
「また会える?」
「会えるよ。ミハルも言ってたから」
『いつかの明日にまた会おう』
◇
「うあああああ!」
裂け目から勢い良く飛び出るアクア。一瞬のことなので受け身を取ることも出来ず、地面を転がり、その先にある資材の山に突っ込む、その山を崩す。
「痛い……」
崩れた資材の山から変身を解いたミハルが頭を押さえながら出てくる。
「本当に戻ってきたのかな……ん?」
2051年に戻って来たのか確認する為に周りを見る。よく見ると、倒れている怪人たちを見つける。ミハルが2019年に飛ばされる前に倒した怪人たちである。
「やっぱり、戻って来たんだ!」
無事帰って来たことに喜ぶミハルであったが、その喜びの束の間、無数の足音がこちらに向かって来る。
新たに現れる怪人たち。それらがミハルの周囲を取り囲む。
「援軍か……!」
数は怪人たちが圧倒的に上回っている。逃げ道は塞がれた。だが、ミハルの心に恐怖は無い。
ポケットの中にしまったメダルを強く握り締める。自分を見守ってくれるもう一人の自分はここに居る。
ミハルは臆せずに、アクアドライバーを装着する。
「変身!」
仮面ライダーアクアの名を刻む2051年初めての戦いが、今始まろうとしている。
◇
2051年。日本は謎の怪人たちに襲われ、平和を脅かされていた。
正体も目的も不明な怪人集団。それによって多くの血が流れている。
しかし、人間もただ黙ってやられている訳では無い。密かに対抗するための手段を開発していた。
「完成したか……」
怪人たちに対抗するための力──アクアドライバーを前に一人の男性が呟く。だが、その声に明るさは無い。
鴻上という人物からの資金援助を受け、その甲斐あって完成させることが出来た水を力に変えることが出来るアクアドライバー。だが、ある問題が残っていた。
「後は誰にこれを渡すかだ……」
アクアドライバーの変身者。それが一番の問題だった。
本音を言えば男は自らが変身したかった、しかし、既に全盛期を過ぎた肉体、それに科学のみを専攻しているので一般的に見れば貧弱な部類である。
そのとき、大きな揺れが男のいる建物を襲う。
「奴らめ……! ここを嗅ぎ付けたか!」
アクアドライバーをしまい、すぐ部屋から飛び出す男。
「早く! こちらです!」
警備員に急かされ緊急用のシェルターに急いで入る。
シェルター内は、男と同じ白衣を着た研究者たちが既に避難していた。ふと、そのとき見つける。白衣の中で青いジャケットを着ている者を。
その姿に心臓が早鐘を打つ。
「──彼は?」
近くにいた警備員に尋ねる。
「彼? ああ、見学者ですね。怪我をした研究社員を連れてきたのでついでに入ってもらったんです」
「──そうか」
男は静かに近寄る。青いジャケットの青年は、体育座りをして膝に顔を埋めており、男の接近に気付いていなかった。
「……君」
「うわっ! は、はい?」
急に話し掛けられ、驚いて青年は顔を上げる。
その顔を見て、男は言葉を失った。
彼には二人のヒーローが居た。一人は父親である。男で一つで彼を立派に育て上げ、世界の命運を担う研究者までにした。
もう一人のヒーローは、その父親を救ってくれた青年。
その青年の名前は──
「君の、名前は……?」
「湊、ミハルですけど……?」
男はこれを運命と悟った。自分たちは出会うべくして出会ったのだと。
「いつかの明日は、今日だったか……」
「え?」
「ミハル君。君にこのアクアドライバーを託す」
「ア、 アクアドライバー? な、何ですかこれ?」
突然手渡されて、ミハルは困惑する。
「これを使えば、君は仮面ライダーアクアへと成れる」
「仮面ライダー? アクア?」
事情が呑み込めず混乱し続けるミハル。
一見すれば無謀極まりない行動。しかし、
彼が誰かの明日を守れる存在になれることを。
アナザーポセイドン
身長:204.0cm
体重:89.0kg
特色/能力:三種の海洋生物の能力を操る。
アナザーアクア
身長:198.0cm
体重:80.0kg
特色/能力:水の力を操る/水を吸収し力に変える。
先にどちらが見たいですか?
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IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
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IFゲイツ、マジェスティ