二人の男が対峙する。
「聞いたよ。あんた、世界の破壊者なんだって? ……俺もあんたに見覚えのある」
「ほお? 何処かで会ったかな?」
「はっきりと覚えている……あの時のバスの運転手、あんただった!」
激昂する男──加古川飛流は問い詰める。
「何であんたがバスの運転手なんてしていた! あの時何が起こるのか分かっていたのか!」
「さあな」
飛流の怒りも惚けて受け流す男──門矢士。
「力尽くでも本当のことを喋ってもらうぞ!」
『ゲイツ』
飛流はアナザーゲイツウォッチを起動させる。
「──やれやれ」
士は、面倒そうに呟きながらネオディケイドライバーを下腹部に装着し、ドライバーに付いているカードホルダーからカードを一枚取り出す。
「変身!」
『カメンライド』
カードを挿し込んだネオディケイドライバーを左右から押し、九十度回転させる。
『ディケイド』
幾つもの紋章、残像が周囲に現れ、それが士に重なると、彼の姿を仮面ライダーへと変える。
仮面に何枚もプレートが填め込まれると、灰色だった全身にマゼンタを主とした色が差し、双眼も緑へと変わる。
士が仮面ライダーディケイドへと変身している間に、飛流もアナザーゲイツへと変身していた。
「はあ!」
「ふん!」
アナザーゲイツは斧で斬りかかり、ディケイドはカードホルダー──ライドブッカーを剣形態へと変え、斧の刃を受け止める。
両者の間で巻き起こる火花の嵐。攻めては防ぎ、防いでは攻める、まさに攻防。
守ることを捨てた捨て身の一撃を同じタイミングで二人は放つ。結果、威力に押されて後退していくが、アナザーゲイツは弓を構え、ディケイドはライドブッカーを剣から銃に変える。
弓音と銃声音が重なり、二人の肩を掠めていく。
ここまではほぼ互角の戦い。ここから先は、それぞれの特性を生かした戦いとなる。
「最初はこいつだ」
『カメンライド』
選んだカードは、ゲームの力で患者を救うドクターライダー。
『エグゼイド』
『マイティジャンプ! マイティキック! マイティマイティアクションX!』
デフォルトされた目。ピンク色のくの字が連なったヘッドパーツが目立つ仮面ライダー、エグゼイドへとカメンライドしたディケイド。
『ゲンムゥ』
アナザーゲイツもまたエグゼイドと対と成る存在アナザーゲンムとなる。
ディケイドエグゼイドは、ブレードモードにしたガシャコンブレイカーを取り出し、刀身を指でなぞる。
「いくぞ」
ディケイドエグゼイドがジャンプすると、アナザーゲンムも跳ぶ。二人の足元に出現するブロック。それを踏み台にして、空中で飛び交いながらチェーンソーの刃と剣の刃も交える。
数度目の打ち合い。最初に一撃を貰ったのはアナザーゲンムであった。大振りのチェーンソーでは、手数の多い長剣に一歩遅れてしまう。
「くっ!」
ブロックに乗ることが出来ず、地面に落下するアナザーゲンムだったが、その最中に別のアナザーライダーへと変身する。
『バロンレモンエナジーアームズ……』
アナザーバロンLEAと変わると、バリスタの様な右手をディケイドエグゼイドに向け、光矢を放つ。
「ちっ!」
光矢は、足元のブロックに命中し、ディケイドエグゼイドは落下する。
『カメンライド・フォーゼ』
宇宙飛行士の様な白い戦闘服。ロケットを連想させる尖った頭部。仮面ライダーフォーゼとなったディケイドは、背部のブースターを噴出させ、宙に滞空する。
アナザーバロンLEAは、何発も光矢を射ち込んでくるが、ディケイドフォーゼはブースターを巧みに操作し、それらを回避してみせる。
「今度はこっちの番だ」
『アタックライド・ランチャー』
『アタックライド・ガトリング』
両足に、ガトリング砲とミサイルランチャーのモジュールを装着し、弾丸とミサイルの雨を降らす。
『スペクタァ』
アナザーバロンLEAが分裂し、複数体の黒い亡霊となる。それらは射ち込まれる弾丸、ミサイルを縫う様に避け、一か所に集うとアナザースペクターとなった。
「はっ!」
アナザースペクターの不可視の腕が、ディケイドフォーゼを殴りつけ地面に叩き落す。
体勢を立て直して何とか無事着地したディケイドフォーゼは、カードを一枚取り出す。
「見えない攻撃か? 微塵切りにしてやる」
『カメンライド・鎧武』
『オレンジアームズ! 花道・オンステージ!』
オレンジ色の鎧武者を模した仮面ライダー鎧武。鍔が銃となっている片刃の直剣、無双セイバーを担ぐ様に持ち、もう一方の手にはカットされたオレンジの断面を彷彿させる刀、大橙丸を握る。
『デルタァ』
接近戦を仕掛けてくるだろうディケイド鎧武に、それを望む所と言わんばかりアナザーデルタへ変身する。
同時に距離を詰める二人。
先制はディケイド鎧武であった。無双セイバーの間合いに入ると、上段から斬り下ろす。
斜め後ろに足を下げて回避するアナザーデルタ。だが、彼は見た。振り下ろされた無双セイバーの鍔──即ち銃口が自分に向けられているのを。
頭部目掛けての発砲。しかし、アナザーデルタは身を低くして避けると共に前進し、拳を突き上げる。
大橙丸でそれを受けると、拳を弾いて大橙丸で袈裟切り。アナザーデルタは大橙丸を握る手を拳で叩き、刀の軌道を逸らさせる。
詰め合った距離で拳と刀が激しく振るわれる。突き出し拳はすぐに引かれ、剣を弾き、振り下ろされた刀は切り返して拳を払う。
アナザーデルタの拳がディケイド鎧武の顎を打ち抜き、ディケイド鎧武の無双セイバーが、アナザーデルタの腹部を突く。
互いによろけながら後退していき、距離を開ける。
ディケイド鎧武がカードを取り出し、ドライバーに挿す。
『ファイナルアタックライド・ガ、ガ、ガ、鎧武!』
無双セイバーと大橙丸の柄頭を合わせて合体させ、ナギナタモードにすると、橙色のエネルギーを纏った無双セイバーを振るい、そこから斬撃を飛ばす。
一方でアナザーデルタもディケイド鎧武に、指を銃の形にして向けていた。白い骨の様なラインに光が走り、その手に注ぎ込まれる。
指先から放たれる光弾が、無双セイバーの斬撃と衝突し拮抗する。
「はああああああ!」
アナザーデルタが駆け出す。その全身からは白炎の様な噴き出し、それを纏ったまま撃ち出した光弾の中へ飛び蹴りの体勢で突っ込んでいく。
ディケイド鎧武もまた走っていた。大橙丸に橙色の輝きを宿しながら。
アナザーデルタの蹴撃とディケイド鎧武の斬撃と零距離でぶつかり合い、大きな衝撃波を生む。
互いに吹き飛ばされ、その中でアナザーデルタはアナザーゲイツに戻り、ディケイド鎧武はディケイドに戻った。
「中々やるな」
「くっ……まだだ!」
余裕を以って立ち上がるディケイド。アナザーゲイツも少し遅れて立ち上がる。実力的にはまだ互角だが、優位に立っているのはディケイドに思えた。
だが、飛流は事前にディケイドのことを聞かされている。その力や能力について。そして──
「あんた、世界の破壊者だが、こいつは苦手らしいな」
アナザーゲイツが新たに取り出したアナザーウォッチ。それに描かれた顔を見て、仮面の下の士は露骨に表情を歪める。
「お前……」
「こいつは破壊出来るか?」
『ディエンドォ』
作中で書こうとしましたが、流れ的に無理と思ってIFの話にしました。
本編でもアナザージオウとディケイドが戦うかもしれないという期待を込めて。
先にどちらが見たいですか?
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IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
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IFゲイツ、マジェスティ