仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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またも長くなってしまったので前後編に分けます。


アナザー✕✕✕✕✕✕✕2019(前編)

「ふふ。驚いているね。ゲイツもウォズも」

 

 ウォズとゲイツリバイブの戦いに参戦したアナザーシノビとなった加古川飛流の存在に驚き、動きを止めている光景を、ウールは遠巻きから眺めていた。

 飛流に未来のアナザーライダーの契約者の情報を伝え、彼と一緒に力を奪った。当然ながら奪われた者たちは、意識を失ったが彼らにとっては些細なことである。

 

「僕も危険を冒した甲斐があったってことだ」

 

 ウールも過去にスウォルツの手によってアナザーライダーに強制的に変身させられたことがあり、それによって飛流にその力を与えることが出来た。ウールの意識があるのは、タイムジャッカーだからか、それともアナザーライダーになった経緯が他の者たちと違うからなのか理由は分からないが、結果として飛流の行く末を見ることが出来る。

 

「さあ、見せてよ。君が救世主になるところをさ」

 

 

 ◇

 

 

「まさか未来のアナザーライダーの力まで得られるとは……!」

 

 アナザーシノビに、ウォズは二度驚かされる。一度目は、突然現れたこと。二度目は、その突然現れたアナザーシノビが自分を守る様にして立っていることだ。

 

「お前ら、手を結んだのか? まさかジオウの敵になる男とまで協力させるとはな。──やはり、お前はそういう男だったんだな、黒ウォズ」

「信じてくれるとは思っていないが、彼がここに現れたのは私にとっても予想外だよ……」

 

 ジカンジャックローを構えるゲイツリバイブ。ウォズもアナザーシノビの動向を窺っていた。

 

「おい」

「──何かな?」

「いつまでそうやっているつもりだ? こいつを倒すんだろ?」

「……取り敢えず、味方、ということでいいのかな?」

「今、はな」

 

 敢えて今を強調するアナザーシノビであったが、ウォズからすれば正直有り難かった。ウォズ一人では、ゲイツリバイブ相手では時間稼ぎも難しい。

 

「いくら増えようと無駄だ。お前たちでは俺には勝てない」

「試してみるか?」

 

 アナザーシノビが地面に何かを投げつける。球体のそれは地面に触れると破裂し、灰色の煙を周囲に撒く。

 身を隠す煙幕を投げた様子。灰色の煙幕の中にアナザーシノビとウォズの姿が消えていく。

 

「させるか!」

 

 ゲイツリバイブが煙幕の中に突っ込んでいく。疾風による超速度を以って、煙幕の中に浮かぶシルエットをジカンジャックローの爪で斬り裂く。

 一振りで漂う煙幕ごと斬り払われる。だが、煙幕が消えた後の光景に、ゲイツリバイブは小さく唸る。

 

「無駄なことを……」

 

 並ぶ並ぶ無数のアナザーシノビとウォズがあちこちに。仮面ライダーシノビの能力を生かした分身の術。それを二人合わせて発動したので多重分身の術となり、その数は百を超えていた。

 どれもこれもが個々として動き、見た目も全て同じ。本物を見分けることは不可能に近い。だが、ゲイツリバイブが焦ることなど無かった。そもそも見分けるつもりは最初から無い。

 

「どれだけ数が居ようとも──全部倒すだけだ!」

 

 瞬間ゲイツリバイブの姿が消え、ほぼ同時に十の分身も消えた。消えたゲイツリバイブが姿を見せる。それに合わせて今度は二十の分身が消える。

 ゲイツリバイブの高速移動の前に多数の分身など、案山子に過ぎない。誰もがゲイツリバイブの動きに付いて来られず、棒立ちのままジカンジャックローで斬り裂かれる。

 数秒も経たずに分身は最初の数から三分の一になる。このときになって分身たちも武器を構えるが、何もかもが遅かった。

 青い疾風の前に数など無意味。ゲイツリバイブの高速世界に誰も入って来られない。

 

「本物はそこか」

 

 時間にして十秒弱。百を超えた分身は残り二人となっていた。となれば本物の居場所が何処か答えは明らかである。

 自分たちだけになり、アナザーシノビとウォズは動揺しながら後退る。

 

「手間が掛かったが、これで終わりだ」

『つめ連斬!』

 

 ジカンジャックローのスイッチを押し、一対の刃にエネルギーを充填させ、トリガーを引くことで溜め込まれた力を斬り裂く力に転じる。

 青い光の刃で斬り付けられるアナザーシノビとウォズ。だが、斬られると同時に二人の体は白い煙となって消えた。

 

「何!」

 

 残った二人もまた分身であった。ならば、ウォズたちは何処に消えたというのか。

 

『ビヨンド・ザ・タイム!』

 

 聞こえてくるその声にゲイツリバイブは急いで周囲を確認する。右にも左にも前後にも居ない。

 

『忍法! 時間縛りの術!』

 

 再び聞こえる声。声がしたのはゲイツリバイブの足元。日の光によって出来たゲイツリバイブの影の中。

 ゲイツリバイブの左手が動くのと、影から出て来る鎌モードのジカンデスピアの刃、どちらの方が速かったのだろう。

 ゲイツリバイブの影に潜み、機会を窺っていたウォズ。ようやく得た好機を逃すまいとゲイツリバイブの足首に刃を引っ掛ける。

 帯電した様に輝くジカンデスピアのエネルギーが、ゲイツリバイブへと移り、発動した技の名の通りゲイツリバイブの動きを停める。

 その直後に、ウォズと同じく影の中に隠れていたアナザーシノビが飛び出し、両手の甲に装備した鉤爪でゲイツリバイブを斬り付ける。

 

「──くそ!」

 

 斬り付けた直後にアナザーシノビは毒吐いた。鉤爪が斬ったのは、ゲイツリバイブの胸部を覆う重装甲。ウォズの時間縛りの術を受ける前に、ゲイツリバイブはゲイツリバイブライドウォッチを回転させ、疾風から剛烈へと形態を変えていた。

 桁外れの防御力を持つ剛烈には、アナザーシノビの鉤爪もウォズの鎌も通ることは無いだろう。

 

「だったらこれだ!」

 

 飛流が新たに得た三つの未来の力。その中で最も攻撃力の高いアナザーライダー。

 

『キカイ』

 

 アナザーシノビの体が黒いエネルギーに包み込められ、彼を別のアナザーライダーへ変身させる。黒いエネルギーが剥げたとき、そこにはライダーという言葉が似つかわしくない怪人が立っていた。

 人型の体型をしているが、体には大小大きさも形も異なる木の破片が張り付けられ、赤い糸で固定されている。ベルトの部分には木の一部が伸びて交差していた。装甲と呼ぶには不細工であり貧相でもあった。

 右手は辛うじて人の手の形をしているが、左手は右手よりも一回り太く、巻き付けられた木に五本の枝が突き刺す様に生えている。

 頭部は円筒型で赤い糸で括られた薪束の様な見た目をし、その中心には先端が二又に分かれたVの字状の鼻にも細工にも見えるパーツが付いており、口に当たる部分にはギザギザの傷跡、目に当たる部分には縦の裂け目があった。

 悪趣味な人形、人を呪う為の呪術具の様な見た目をした怪人もといアナザーキカイは、ゲイツリバイブに掛けられた術が解ける前に、両手を下腹部中央のベルトという名の木に添える。

 両手を順に突き出し、それを同時に引いて腰横へと持ってくる。すると、アナザーキカイの全身が白銀色に輝き、その輝きは凍気によるものであり浴びた水分が一瞬にして氷結し、アナザーキカイの周囲に氷の結晶が舞う。

 跳び上がり、左脚を曲げて右足を突き出す。凍気の輝きが右足へと流れ込み、右足は氷結し氷柱を形成する。

 

「はあっ!」

 

 氷柱と化した右足を、ゲイツリバイブに打ち込む。氷柱は砕け、凍気がゲイツリバイブを覆い、氷の結晶が舞う。

 白い霜によって覆われたゲイツリバイブ。呻く声すら聞こえない。

 

(感じる。感じるぞ……!)

 

 アナザーゲイツウォッチの脈動が更に強まったが分かった。未来のアナザーライダーを使えば使う程に求めている力に近付いていく。

 

「何を呆けている」

「何──ぐあっ!」

 

 高まっていく力への感動を打ち壊す容赦の無い暴力が、アナザーキカイの顔を襲った。

 地面を転がっていくアナザーキカイ。体を起こすと拳を突き出しているゲイツリバイブの姿がある。

 無防備な所に必殺の一撃を与えても余裕で動けていることに理不尽さを覚える。こちらの方は、一撃を貰うだけでもこんなにもダメージを受けるというのに。

 ゲイツリバイブは、そのままアナザーキカイに追撃を行うのではなく、矛先をウォズへ向ける。まるでアナザーキカイならば何時でも倒せると暗に告げているかの様であった。

 フューチャーリングシノビでは、剛烈の装甲を貫けないと判断したウォズは、素早くミライドウォッチを交換する。

 

『デカイ! ハカイ! ゴーカイ!』

『フューチャーリングキカイ! キカイ!』

 

 鋼鉄のボディを持つフューチャーリングキカイへと姿を変えた。飛流と同じ選択である。

 力の源流は同じだというのに、フューチャーリングキカイとアナザーキカイの見た目は対照的過ぎた。無機物と有機物という真逆の存在である。

 

『ヤリスギ!』

 

 ジカンデスピアを鎌から槍にモードを変え、その穂先で近付いてきたゲイツリバイブに先手を仕掛ける。

 仮面ライダーキカイの力で、フューチャーリングシノビの時よりも力が上がってはいる。

 しかし、ガキンという穂先が弾かれる音で、その力でもまだ足りないことを思い知らされる。

 ジカンデスピアの刃をその身で受けながら、ゲイツリバイブはのこモードにしたジカンジャックローを振り上げる。

 その時、背後から伸びてきた蔓がゲイツリバイを縛り付ける。その蔓は、アナザーキカイから両手から伸びていた。

 

「無駄だ!」

 

 何重に拘束しようと、所詮は植物の蔓。剛烈の腕力を以ってすれば引き千切れる。

 

「それはどうかな?」

 

 反論したのはウォズであった。頭部のレンチ状のパーツからレンチ型のエネルギーが何百と飛び出し、ゲイツリバイブに巻き付いている蔓に吸い込まれていく。

 途端、その強度は何十倍にも増し、更には蔓から放電が起きる。

 

「くあああ!」

 

 フューチャーリングキカイの力で有機物の蔓は、機械の様に改造された。これにより、ゲイツリバイブは蔓の拘束から容易く逃れることは出来ない。

 その僅かな時間で、ウォズとアナザーキカイは動く。

 ウォズは、ミライドウォッチを挿したスロットを前に倒し、もう一度引く。アナザーキカイは、ベルトに両手を添える。

 

『ビヨンド・ザ・タイム!』

 

 ウォズの体は電気を放ち、それが右足へと流れていく。アナザーキカイもまた同じ現象が起こり、同じく右足にその力が込められる。

 

『フルメタルブレーク!』

 

 前後から挟む様にして繰り出される中段回し蹴り。蓄積された破壊のエネルギーがゲイツリバイブへと流し込まれる。

 

「うぐ、おおおおおおお!」

 

 だが、ゲイツリバイブは二人の必殺技を喰らってもなお動く。拘束していた蔓を腕力で千切り、前後に立つ二人のキカイにジカンジャックローの丸鋸を振るう。

 

「くっ!」

「うあっ!」

 

 ゲイツリバイブの反撃で変身が解けてしまう二人。だが、ゲイツリバイブもその場で膝を着き、変身が解除される。

 

「言った筈だよ……ゲイツリバイブの力には、リスクがあると……」

 

 生身に戻ったゲイツは、両眼、鼻、耳から流血している。明らかに体が異常を訴えていた。

 飛流もその姿に驚く。敵対していても、流血しているゲイツの姿に愉悦を覚えることは無く──

 

(大丈夫なのか? いや、怯んでどうする! これから手に入れる力に!)

 

 ──逆に覚悟を強め、すぐに迷いを払拭する。

 

「時間稼ぎが、お前の狙いか……!」

「今の君に、我が魔王と戦う力が残っているかな……?」

 

 悔し気に睨むゲイツ。黒ウォズは余裕を含ませた笑みを見せるが、呼吸は乱れ、汗がとめどなく流れている。ゲイツも黒ウォズもかなり消耗していた。当然ながら飛流の消耗も激しい。

 

「ここで一緒に、体力の回復を勧めるよ。君の健康の為にもね」

 

 ゲイツだけでなく飛流にも向けられている。

 しかし、ゲイツはよろめきながらも立ち上がり、ソウゴと決闘を約束した場所に向かおうとする。

 

「ゲイツ君!」

「約束したんだ……決着をつけると! 奴との約束を破る訳にはいかない……! 黒ウォズ、お前でも俺は止められない……!」

 

 足元をふらつきさせながら、ゲイツは歩いていく。黒ウォズは止めることは出来なかった。言葉でも止められないし、力尽くでも止める体力も無い。

 

「君も……行くのかい?」

「常磐ソウゴを倒すのは、俺だ……!」

 

 ゲイツと同じ様にふらつきながら、飛流は歩き出す。

 

「君も身を以って知った筈だ。例え未来のアナザーライダーでもゲイツリバイブには勝てない。アナザーゲイツも同じだ。そして、我が魔王の力ジオウⅡにも──」

 

 黒ウォズの言葉が止まる。飛流が振り返り見せた意味深な笑み。その笑みに黒ウォズは、彼が何か勝機を見出していると感付く。

 

「君は一体何を企んでいるんだ?」

「もう少し、もう少しだ……!」

 

 飛流は答えず、黒ウォズにとって意味不明な言葉を呟きながら疲労し切った体を引き摺る様にして去って行く。

 

「……アナザーゲイツ、アナザーシノビ、アナザーキカイ、もし彼がアナザークイズまで所有していたとしたら……まさか!」

 

 

 ◇

 

 

 巨大な破壊兵器が暴れる世界で、スウォルツによって連れて来られた子供たちは、驚き、恐怖し、逃げ惑う。

 その中で幼き飛流は、破壊に巻き込まれ瓦礫に押し潰されようとしていた。それを救ったのが、幼きソウゴである。

 彼の意思がそのまま形となって飛び出し、飛流を押し潰そうとしていた瓦礫を破壊。更には、迫りくる巨大な兵器すらも急速に劣化させ、塵に変えてみせた。

 スウォルツの狙い通り、王の候補者の中から未来の王となるソウゴを見出す。

 スウォルツの手によって、ソウゴが過去に出会ったという記憶は一部は封じられ、飛流とソウゴは元の世界へと戻される。

 ツクヨミが一部始終を見ていたことを終ぞ知らずに。

 

 

 ◇

 

 

 ウールが頭上を見上げる。レグルスの輝きは更に増していた。オーマの日が近いことを意味している。

 そこに突如として白ウォズが現れ、ドライバーとミライドウォッチを奪ったことへの報復をウールに行う。

 地面に投げつけ、その背を踏み、容赦無く顔を蹴り飛ばした後の、苦しめる為に胸を踏み潰していく。

 時間を停めて逃げようにも、白ウォズのノートがある限り時間停止は彼に効かない。

 黒ウォズと通じて何を企んでいるのか詰問する白ウォズに対し、自分が知る未来と食い違う事実を逆に問い返すウール。白ウォズ、スウォルツが自分の知らない何かを目的として動いていることに不信感を爆発させた。

 彼が何も知らないことを知り、白ウォズは嘲笑する。自分だけが全てを知っていると言わんばかりに。

 

「ゲイツリバイブが魔王を倒す。魔王がゲイツリバイブを倒す。アナザーゲイツが二人とも倒したとしても、私たちの計画に支障は無い」

「私たちって──」

「俺も詳しく聞きたいな」

 

 背後から回された手が、白ウォズの肩を掴む。視線だけを横に向けると、ギョロリとした単眼と目が合った。

 右肩、左肩には赤と青の脳みその形をした装甲。その脳みそには電極棒が刺さり、棒には赤と青のコードが繋がっている。胸部には〇と×のマークに両脚には?マークが描かれている

 頭部もまた黒い脳の様な形状をしており、目の周辺には橙色で?がペイントされている。額中央からはシルクハットの様な形をした器官が突き出ており、白ウォズと目が合ったのはこれである。

 

「これは……!」

 

 かつて自分が倒したアナザークイズが現れ、白ウォズの顔色が変わった。

 

「もう一度言う。その話、俺も詳しく聞きたいな」

「くっ!」

 

 白ウォズは素早くノートを開き、逃れる為の未来改変を行おうとする。しかし、その手が止まった。

 すぐ側に居る存在の名前が出て来ない。アナザークイズの名も、変身者である飛流の名も。

 

「問題。お前は俺の名前を正しく書ける。〇か×か?」

「やってくれたね……! 私の頭から知識を……!」

 

 アナザークイズには相手の知識を吸収する能力がある。これによって白ウォズの中から飛流の名が吸い取られた。

 

「正解は×だ」

 

 白ウォズの胸倉を掴み、そのまま投げ飛ばす。茂みの中に姿を消した白ウォズ。現れる気配は無かった。逃げたらしい。

 

「助かったよ」

「丁度こいつの力が使いたいと思っていたところだ」

 

 アナザークイズの変身を解く。

 

「あのまま逃がして良かったのかい? 何か知っていたみたいだけど」

「興味無い」

 

 飛流は一言で切り捨てる。良くも悪くも飛流の目的は一つ。それ以外のことは邪魔であり雑音にしか過ぎない。

 

「……まあ、君がそう言うならいいよ。僕は気になるけどさ。で? 救世主の力はどうなのさ?」

「あと少しなのは分かる。だが、何かが足りない。……後は戦いながら見つけるだけだ」

 

 飛流はアナザーゲイツウォッチを見る。力の脈動が更に強まっているが、まだアナザーゲイツのままである。

 

「ジオウたちの所に行くんだ?」

「ああ。決着を付けてやる」

「次に会う時には王様と呼べると期待しているよ」

 

 飛流は答えずにウールへ背を向ける。ソウゴと自分、交差する運命を断ち切る為に。

 

 

 ◇

 

 

 ソウゴとゲイツ。互いの決着を付ける場で二人は向き合う。

 向き合ったとき、ソウゴの口から出て来たのはゲイツとツクヨミに出会えたことへの喜びであった。

 二人と出会うまでソウゴは孤独であり友達が居なかった。二人と出会えたことで初めて信じられる友達が出来た。ありがとうという言葉は無かったが、言葉の一言一言に感謝の念が込められる。

 それが伝わってしまったからこそ、理解してしまったからこそゲイツは怒る、というよりも動揺する。これから命懸けで戦う前にそんなことを言われたら決めていた覚悟が揺らいでしまう気がしたからだ。

 揺らぐ覚悟に芯を入れる様にソウゴの言葉を否定する。自分たちは友達では無い、と。

 だが、ソウゴはそのゲイツの決意も受け入れた。

 前にオージオウになると確信したのなら自分を倒せばいいとゲイツよツクヨミに話した。友達と思った二人の判断なら信じられると。

 今がその時であり、ゲイツが確信したのなら、それを受け入れるとソウゴもまた決意を込めて告げる。

 

「──そんなことはどうだっていい」

 

 ソウゴの問いに迷うゲイツを一蹴する冷めた声。飛流が二人の決着の場に現れた。

 

「迷っているなら引っ込んでいろ。常磐ソウゴは俺が今ここで倒す」

 

 アナザーゲイツウォッチを構え、飛流がソウゴに近付いていく。

 

「──待て」

 

 そこにゲイツが割って入った。

 

「何のつもりだ? どけ!」 

「断る!」

「こいつはお前にとって敵の筈だろ? お前の代わりに魔王を倒してやるんだ! 邪魔をするな!」

「ジオウが魔王だと……? そんな訳があるか!」

 

 ソウゴの言葉を聞いてゲイツもまた信じることにした。

 

「こいつは誰よりも優しく、誰よりも頼りになる男だ! そして──俺の友達だ!」

 

 友としてソウゴが魔王とならないことを。

 初めてゲイツに友達と呼ばれたことにソウゴは、言葉にならない嬉しさを覚えた。だが、一方で飛流は言葉に出来ない怒りで震える。

 ソウゴを倒すと息巻いていたゲイツがソウゴの味方をしようとしている。誰も彼もがソウゴの味方の様に思えた。それこそ運命すらも。

 ありとあらゆるものがソウゴを王の未来へ押し上げ様としている。

 

「ふざけるな、ふざけるなよ……! そんな未来、俺が壊してやる!」

 

 アナザーゲイツウォッチの脈動が最高まで達する。理由はどうあれ、未来を変えようとする強い覚悟が、最後の引き金となる。

 

「おおおおお!」

『ゲイツ』

 

 アナザーゲイツへ変身する飛流。しかし、その体からは赤黒いエネルギーが放電する様に放たれている。

 明らかに今までとは異なる現象を見て、ソウゴもゲイツも最初から全力で挑む。

 

『ジオウⅡ!』

『ゲイツリバイブ! 剛烈!』

 

 ジクウドライバーに素早く装填される二つのジオウライドウォッチⅡとゲイツライドウォッチ、ゲイツリバイブライドウォッチ。

 

『変身!』

『ライダーターイム!』

『仮面ライダー! ライダー!』

『リ・バ・イ・ブ! 剛烈!』

『ジオウ! ジオウ!』

『ジオウⅡ!』

『剛烈!』

 

 ジオウⅡとゲイツリバイブ剛烈への変身が完了した二人。

 

『ゲイツ……ゲイツ……ゲイツ……ゲイツ……』

 

 一方でアナザーゲイツのウォッチは壊れた様に何度も同じ言葉を繰り返している。その様子に何かただならぬ気配を感じ取った二人は、そのただならぬことが起こる前に仕掛ける。

 サイキョーギレードとのこモードにしたジカンジャックローを装備し、斬りかかる二人。

 

『ゲイツ……』

 

 アナザーゲイツの体が黒いエネルギーに覆い尽される。構わず斬ろうとするが、黒いエネルギーから突き出てきた両手が二人の武器を素手で止める。

 武器を掴まれた瞬間、凄まじい火花が散り、腕が痛くなる程の振動が伝わってくる。よく見ると、武器を掴んでいない手は指先から幾つもの輪によって構成されており、それが高速で回転し、火花を生み出していた。

 

『ゲイツリバイブ』

 

 繰り返していたウォッチが告げた名に、ジオウⅡとゲイツリバイブは驚愕し、その隙に二人は弾き飛ばされる。

 

「ゲイツリバイブだと……!?」

「そんな、ゲイツの力を……!」

 

 黒いエネルギーを突き破って出て来たアナザーゲイツの新たな姿。胸部には胸骨を思わせる装甲が追加され、額からは鬼の様に二本の細長い角が生えている。全身は白を基調にしているが、その表面を赤い血管の様な線が走っている。それにより憤怒の赤に染め上げられていた。

 下腹部中央の黒いドライバーの右側にはアナザーゲイツウォッチ。そして、左側には砂の入っていないひび割れた砂時計型のウォッチが装填されていた。

 透明状のバイザーに刻まれた『GEIZ』の文字に『REVIVE』の字が追加される。

 アナザーゲイツは未来のアナザーライダーの力を吸収し、アナザーゲイツリバイブへと進化してみせた。

 

「お前たちは……二人とも俺が倒す!」

 

 

 




アナザークイズの扱い方は悩みました。個人的にアナザーライダーの中で一番弱いと思っているので。

先にどちらが見たいですか?

  • IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
  • IFゲイツ、マジェスティ

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