体を拘束する光の網。どれだけもがいても緩む気配が無い。
光刃を振り上げるアナザーライダー──アナザーカイザがジオウたちに向かって駆け出してくる。
走るアナザーカイザの前方に現れる黒と黄が混ざり輝く巨大なχの字。その先にはゲイツ。アナザーカイザは、最初にゲイツに狙いを定めていた。
このままではゲイツにアナザーカイザの攻撃が直撃する。ゲイツも何とか逃れようとするも、間に合う様子が無い。
ジオウは一か八かの賭けに出る。
仮面ライダーフォーゼの力を宿したフォーゼアーマーには幾つもの噴射ノズルが備わっている。ジオウはそれを全て噴射させた。
炎と煙を噴き出しながら飛び立つジオウ。しかし、本来なら体勢の制御に両手に握っているブースターユニットを使用するが、縛られているのでそれが出来ない。その為、ジオウは天井目掛けて一直線に飛んで行く。
天井付近まで上昇したジオウは、そこで噴射していたノズルを全て停めた。突き出さんばかりの勢いは一気に弱まり、凸状の頭を天井に激しく打ち付ける。
天井から跳ね返るジオウ。空に向かっていた頭は、今度は逆に地面に向かって落ちていく。しかし、これこそがジオウの賭けであった。
反射し角度が変わった先、そこには今にもχの字に飛び込もうとしているアナザーカイザの姿が在る。
「いけぇぇぇぇぇ!」
停めていたノズルを再び噴射させる。
ジオウの捨て身の体当たりは、アナザーカイザの横っ腹に直撃し、攻撃を強制的に中断されて吹き飛んでいく。
同時にジオウ、ゲイツを拘束していた光の網も解除された。
アナザーカイザはすぐに立ち上がる。すると、剝がれ落ちたアナザーメテオの外装が再び覆い、アナザーカイザからアナザーメテオに戻る。
「元に……戻った?」
戦いもまた振り出しに戻ってしまった。
しかし、二対一でこれ以上戦うのは不利と判断したのか、アナザーメテオは逃げ出していった。
◇
2018年。山吹カリンは、アナザーライダーだけでなく草加雅人という男性からも襲われる。彼女を守ろうとするツクヨミ、そこに新たな人物、乾巧が現れ、ツクヨミとカリンを助けた。
深まる二つの力を持つアナザーライダーとカリンの謎。2011年から始まったと思われた事件は、もっと根の深い事件ではないかと改めて事件を調査し直す。
ソウゴと巧はカリンの護衛。ツクヨミとゲイツは事件の再調査。
そこで知る。カリンが十五年前に既に交通事故で亡くなっているという事実と、死んだ筈の彼女が十五年もの間、歳をとらずに生きてきたということを。
そして、それこそがアナザーライダーの目的であることを。
また、カリンを調査していたソウゴたちも天ノ川学園には、今日で二人目の天秤座の十八才になる女子生徒の存在を知った。
ゲイツたちからアナザーライダーの目的を教えられ、ソウゴたちも二人目の天秤座十八才の女子生徒のことを教える。
急ぎゲイツたちと合流しようとした矢先、ソウゴたちはある人物から呼び止められた。
「ちょ、ちょっと待った!」
背丈は高いが、あまり肉の無い細身の体。大きいよりも長いという印象を受ける男性。天ノ川学園の教師であり、仮面ライダー部の元顧問である大杉忠太である。フォーゼライドウォッチも女子生徒の情報も彼から与えられたものである。
「何だよ? 急いでいるんだ」
巧がぶっきらぼうに言うが、大杉は怯まずある小箱を取り出す。
「君たちにアレを渡してから思い出したんだ。これのことを」
ソウゴは小箱を受け取る。箱には筆記体で名前らしきものが書いてあった。
「これは?」
「外国に言っている元教え子が送ってきたものだ。『いつか弦太朗が預けたものを渡すときが来たら、これも渡して欲しい』って」
小箱に書かれた名前を読む。
「りゅうせいさくた……」
「朔田流星。仮面ライダー部の元部員だ」
ソウゴの記憶から、仮面ライダー部のボードに張られた流星の写真が掘り起こされる。
小箱を開けると中には新たなライドウォッチ。それを手に取り、重みと感触、そして託された思いを確かめる様にしっかりと握る。
「何か、いけそうな気がする!」
◇
二人目の天秤座十八歳の女子生徒がアナザーメテオに襲われたが、間一髪のところにカリンが現れ、それを阻止する。
更にそこへ草加雅人も現れる。彼はカリンと同じ養護施設、流星塾の出であり、更にアナザーライダーの変身者である佐久間龍一もまた彼と知り合いであった。
巧、ソウゴたちが駆け付けたこと、そして、カリン自身からもう自分の為に誰かを犠牲にしたくないと懇願され、アナザーメテオは逃げる様に立ち去っていく。
関係者が全員揃ったことで、草加雅人はカリンを狙った理由語る。
アナザーメテオは、天秤座十八歳の女子生徒の命を使い、カリンを延命させていた。その妄執を断つ為、今のカリンを無きものとし、何処かへ遺体を隠す。それが草加雅人の目的であり、カリンから頼まれたことでもあった。
全てを解決する為、巧からソウゴにファイズライドウォッチが渡され、そして過去に跳ぼうとするゲイツにも──
「待て」
草加がゲイツを呼び止め、何かを放り投げる。反射的にそれを取ると、それは新しいライドウォッチであった。
「いつの間にか持っていた。気味が悪いからいつか捨てようと思っていたが……お前が持っていた方が、都合がいいみたいだ」
渡されたそれにゲイツは礼を言わなかった。草加も軽く鼻を鳴らし、興味が無さそうにゲイツから視線を外す。
だが、これで同じライダーの力が手に入った。後はアナザーライダーが生まれた時間に行けば、アナザーライダーを倒す条件が整う。
表面上は鉄面皮だが、ゲイツの中でより強く意思が燃え上がる。
ゲイツが場を離れようとしたとき──
「あ、あの!」
カリンもゲイツを呼び止める。その目には何か決意が秘められていた。
「お願いがあります!」
◇
2003年。
「今日から貴方が、仮面ライダーカイザよ」
異形な姿になった自分に、佐久間は大して動揺は無かった。彼の心中で渦巻くのは悔恨の念だけ。
カリンと流星群を見るという約束を、雨が降っているという理由で破ってしまった。その結果待っていたのはカリンの死という非情なもの。
たった一度約束を守れなかったせいで、佐久間はカリンという女性を永遠に失ってしまった。
そこに現れた謎の女性、オーラから渡された力。この力を使えば、死んだカリンを蘇らせることが出来る。その為に別の人間を犠牲にしなければならないが、そんなことは今の佐久間を立ち止まらせる理由にはならなかった。
目の前に怯える女性を蒼白い炎の様なエネルギーにして吸収する。後はそれをカリンに注ぎ込むだけでいい。
その筈だった。
「成程な」
突然現れた青年──ゲイツに、アナザーカイザは驚く。
「そうやって山吹カリンを生かしていた訳か」
初対面の相手からカリンの名、そして自分がこれからすることを言い当てられ驚く。
「お前に一つ言っておく」
ゲイツは腹部にジクウドライバーを当て、射出されたベルトで固定する。
「山吹カリンは死んだ。その事実はどうやっても変えられない」
その言葉は、アナザーカイザを激昂させるに十分であった。
「うあああああああ!」
否定の言葉を否定する為にアナザーカイザは拳を振り上げる。
『ゲイツ!』
ゲイツはライドウォッチを起動させ、ベルトに填めると同時に突き出された拳を避ける。
懐に潜り込み、拳を振り難くするとジクウドライバーを両手で掴む。
「変身!」
『ライダーターイム!』
周囲に展開する同心円状の力によって弾かれるアナザーカイザ。すぐさま殴りに掛かるが、その身を仮面ライダーへと変えていたゲイツはアナザーカイザの頭上を大きく跳び越え、それを避ける。
『仮面ライダーゲイツ!』
着地するゲイツに追い付く様に顔に填め込まれる『らいだー』の文字。
変身してすぐにゲイツは、渡されたライドウォッチを展開、浮かび上がる仮面ライダーの顔。続けてライドウォッチを起動させる。
『カイザ!』
迫るアナザーカイザに焦ることなく冷静にそれをジクウドライバーに装填。
『アーマーターイム!』
ゲイツの背後に出現するライダーアーマー。襟元を直す様な仕草をする。
接近してきたアナザーカイザに、拳の迎撃。アーマーが腕に、足に 肩に次々と装着されていく。
『Standing by Complete カイザ!』
『らいだー』の文字が『かいざ』へと変わった時、ゲイツはカイザアーマーを全て纏っていた。
銀の胸甲に走る黄色の線。それは腕、両足にまで繋がっている。両肩にはχの紋章が中央にあるスライドされた携帯電話の様な装甲が付いていた。
「あああああああ!」
アナザーカイザの手首から光刃が生える。するとゲイツは可変マルチデバイス、ファイズフォンXを取り出し、グリップをスライドさせてある番号を入力する。
『レディ。ブレイガン。オン』
音声と共にゲイツの手の中にχ字型の剣と銃が一体と化した複合武装カイザブレイガンが転送され、アナザーカイザの光刃を同じく光刃で受け止める。
火花散る斬り合い。横に振るわれるアナザーカイザの刃を、ゲイツは逆手に持ったカイザブレイガンの光刃で斬り上げる。
隙が空く胴体。ゲイツは再びファイズフォンXのEnterボタンを二回入力し、モニター画面を九十度倒す。
『バーストモード』
ファイズフォンXの先端から撃ち出される三発の光弾を受け、アナザーカイザは大きく後退。更にカイザブレイガンの銃口も向ける。
浴びせられる光弾の雨。アナザーカイザの体の至る所から火花が噴く。
体を押さえるアナザーカイザ。その指の隙間からは白煙が立ち上っている。
『レディ。ポインター。オン』
ファイズフォンXを操作し、ゲイツの右脛に双眼鏡型ツール、カイザポインターが装着させる。
『フィニッシュタァァイム!』
『カイザ!』
ゲイツライドウォッチ。カイザライドウォッチのボタンを続けて押すゲイツ。体に走るラインを伝って右足に光が収束する。
ゲイツの動きに危険を察し、アナザーカイザの全身を巡る黄色のラインが発光。同時に放たれた黒い光と合わさる。
ゲイツは駆ける。離れていても人を超えた脚力ならば一瞬であった。
アナザーカイザの全身を光が包み込む前に、その腹部にゲイツの右の横蹴りが突き刺さる。
「うぐっ!」
前屈みになるアナザーカイザ。
『エクシード! タイムバースト!』
カイザポインターから黄色の閃光が放たれ、その光に押されるアナザーカイザ。光は四角錐状に展開し、アナザーカイザの動きを止める。
「でぃやああああ!」
揃えられた両足からその光のキックの姿勢のまま入り、そして貫く。
「あ、ああ……」
蹴り貫いた後に着地したゲイツは、背後でアナザーカイザが立ち上がる気配を感じたが、振り返ることはせず、そのまま離れていく。
「あああああ!」
アナザーカイザの体にχの紋章が浮かび、その身を砕き、溢れ出た力が爆発と化す。
「後はお前に任せる」
すれ違う人影への言葉。爆発の後に向かうその人物への最後の言葉。
結末は見ない。
ここから先は、あの二人だけのものだからだ。
◇
2011年。
「今よりお前は、仮面ライダーメテオだ」
長い時間が経ってしまったことで劣化したアナザーライダーの力。それを補う為にタイムジャッカーの一人スウォルツから新たなアナザーライダーの力を受け取った。
どんなことをしてもカリンを生かす為に。
そして2018年。
カリンから逃げる様に去ったアナザーメテオは、それでも天秤座十八歳の女子生徒を狙っていた。
廃工場内で彼女を追い詰めるが、ソウゴによってそれを阻まれる。
ジオウへと変身したソウゴ。アナザーメテオと互角の戦いを繰り広げる。
ジオウは言う。アナザーメテオの行為は、彼女を苦しめているだけだと。
アナザーメテオは答える。それでも彼女に生きて欲しい、と。
カリン自身から否定されてももう止まることが出来ない。
十五年の歳月によって固められた妄執。
それを断ち切り、アナザーメテオ──佐久間を救う為に新たな力を使う。
『メテオ!』
ジクウドライバーにメテオライドウォッチを填め、アーマーを呼び出す。
『アーマーターイム!』
ジオウの前に出現する新たなアーマー。それは青い光に包まれ、アナザーメテオに突進する。
「うあ! ぐう!」
流星の様に光速の体当たりを何度も受け、飛ばされるアナザーメテオ。
アナザーメテオを飛ばしたアーマーは、ジオウの頭上に移動し、分解され、ジオウにパーツが装着されていく。
『METEOR、Ready? メテオ!』
流れ星を彷彿させる尾を描く流星を模した左右非対称の水色の頭部。仮面には『メテオ』の文字。両肩にはスイッチの様な形状をしており、両手には頭部と同じ流星の形をした手甲を装着している。
「祝えっ!」
「うわ! いきなり出た……」
アーマーを装着した途端、どこからともなく現れた人物。自らを預言者と称し、時の王者となるジオウを信奉する者ウォズである。
「全ライダーの力を受け継ぎ、時空を超え過去と未来に知ろしめす時の王者。その名も仮面ライダージオウメテオアーマー! 短い期間に二つもライダーの力を継承するとは流石我が魔王」
うやうやしく頭を下げるウォズの調子が狂わされる。
『SA、TUR、N』
ウォズに気を取られている隙を狙われ、アナザーメテオが光輪を放つ。
『SATURN』
するとジオウの手甲からも同じ光輪が現れ、それを迎撃する。
ジオウが視線を少し動かすと、既にウォズの姿は無かった。
「はあっ!」
ジオウが跳躍すると、その体は青い光の球体と化し、アナザーメテオと衝突する。アナザーメテオはそれを受け止めて耐えるが、光が解除され中から拳を構えたジオウが現れ──
『JUPITER』
──木星に力が込められたエネルギーをアナザーメテオに打ち込む。木星はそのまま拳から放れ、アナザーメテオを転倒させるが、力は弱まらず地面を削らせながらアナザーメテオを大きく後退させる。
『フィニッシュタァァイム!』
『メテオ!』
止めの一撃の為の工程は済ませた。後はそれを打ち込むだけである。
ジオウは終わらせる為に走り出す。
『リミット! タイムブレーク!』
その音声が鳴ったとき、既にジオウはアナザーメテオの前に居た。まだ完全に立ち上がっていないアナザーメテオの胸に、流星の如き拳が打ち込まれる。
「ほわちゃっ!」
何故か腹の底から出てくる掛け声。打ち上げられるアナザーメテオ。
「ほわちゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
浮かぶアナザーメテオに高速の連打が襲い掛かる。蒼い軌跡を残す拳。アナザーメテオの体は、連打のせいで地面に落ちることすら出来ない。
「ほわたっ!」
突き上げた一撃でアナザーメテオは高々と上げられる。それを追って跳躍するジオウ。一瞬にしてアナザーメテオを追い抜いた後──
『ほわたぁぁぁぁぁぁっ!』
──一際甲高い声と共に、真上から蹴りを放つ。光の尾を残し、宙を疾走するそれは、紛れもなく流れ星であった。
「あああああ!」
ジオウのキックが、アナザーメテオを蹴り抜き、爆発が起きる。
地面に落下するアナザーメテオ。だが、すぐに立ち上がる。
外装が剥がれ、前の様にアナザーカイザの姿となった。
「ダメなのか……」
同じライダーの力だが、倒す時代が違う。完全に倒し切れ無いのかと思った。
そのとき──
◇
「う、うう……」
倒され、変身を解除された佐久間は呻く。意識は朦朧とし、体も凄まじい疲労感で動かない。
そんな碌に動かない状態で佐久間は手を伸ばす。その先には砕けたアナザーウォッチ。
既に砕かれていても、佐久間はそれに縋るしかなかった。
伸ばす手、だがその手が暖かな感触に包まれる。
「佐久間君」
「カ、リン……?」
夢だと思った。死んだ筈のカリンが居るなど夢にしか思えなかった。
「ごめん……! ごめんな、カリン……! 俺が、俺が……約束を守っていたら……!」
出てきたのは後悔の言葉だった。悔やんでも悔やみきれない。カリンを前にしてそれしか言えなかった。
「佐久間君。自分を責めないで」
カリンは、ただ優しく佐久間の手を握る。
「私知っているから。どんなに佐久間君が苦しんでいたのかって。ちゃんと知っているから。だからそんなに自分を責めないで」
「でも、でも……」
カリンは佐久間を見て、微笑む。
「私は、佐久間君に幸せになって欲しい。自分の為に生きて欲しいの」
「カリン……俺は……」
視界が暗くなる。意識が遠のいていくのを感じる。
「佐久間君。十五年間、ずっと側に居てくれてありがとう」
包み込んでいた暖かさが消える。
同時に佐久間の意識も失われた。
ありがとう。カリンの残した言葉だけは、佐久間の心から消えることは無かった。
◇
「あっ……」
ジオウの前で、アナザーカイザの体が光の粒となって消失していく。
それを見たジオウは変身を解き、ソウゴへと戻る。
何となくだがソウゴには分かった。
かつて桐生戦兎と万丈龍我を見て歴史が変わってもライダーとなる道を選ぶと思った様に、佐久間龍一は、もうアナザーライダーへの道を選ぶことは無いのだろう。
消え行くアナザーカイザの姿を見て、ソウゴはそう確信した。
◇
「今年も来たよ」
墓石の前に立つ男性。その手には花束が握られている。
墓石には山吹カリンという名が刻まれていた。
男は花を供え、線香をあげる。暫く手を合わせた後、男は立ち上がった。
過去に思いを馳せた後──
「また来年も来るよ、カリン」
──佐久間龍一は、これからの未来に向かって歩いていく。
アナザーカイザ
身長:189・0cm
体重:95・0kg
特色/力:生体エナジーの吸収と供給
アナザーメテオ
身長:210・0cm
体重:93・0kg
特色/力:生体エナジーの吸収と供給/惑星を象った各種エネルギー
先にどちらが見たいですか?
-
IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
-
IFゲイツ、マジェスティ