仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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長い話となりました。これからも序盤ダイジェスト、後半ガッツリ書くという感じになるかもしれません。


アナザーワイルドカリス2019&         2019(後編その2)

『フィニッシュタァァイム!』

『シノビ!』

 

 ジカンザックスにシノビミライドウォッチを填め、仮面ライダーシノビの力を宿す。

 

『ザックリカッティング!』

 

 ジオウトリニティから分身を生み出され、紫の炎めいたエネルギーで燃えるジカンザックスで、アナザーバロンとアナザーカリスたちを斬る。

 アナザーバロンは虚像へと戻り、アナザーカリスたちは霧散。敵の今の攻撃で敵の半数を倒す。

 流れる様な動作でジオウトリニティは、ジカンギレードを銃モードにし、クイズミライドウォッチを装填。

 

『フィニッシュタァァイム!』

『クイズ!』

 

 銃口の先で〇と×が激しく入れ替わりながら浮かぶ。

 

『ファイナルフォームライドォ・ブ、ブ、ブ、ブレイブ』

 

 ジオウトリニティよりも引き金を先に引くアナザーディエンド。右手から撃ち出された光線が、アナザーブレイブを貫く。

 アナザーブレイブは剣を持った両手を上に向けて真っ直ぐ上に向ける。頭部は胴体の中に収納され、両脚は揃えられると捩じれながら伸びた。

 アナザーブレイブの背にある巨大な骨の顔に、大剣が突き刺さった様な形状となると、旋回しながらアナザーディエンドの方に向かう。

 

「あぶなっ!」

 

 身を屈めて避けるジオウトリニティ。アナザーディエンドと戦っていたディエンドも、接近するアナザーブレイブに気付き、距離を開けながら撃つ。

 ディエンドとアナザーディエンドの間にアナザーブレイブが入り込み、文字通りの盾となる。

 アナザーディエンドは、アナザーブレイブの両脚もとい柄を引っ張り抜く。炎と冷気という相反する属性を放つ大剣と骨の顔の大盾に分離し、切っ先をディエンドへ向ける。

 

「また厄介なものを……」

「切れ味は君の体で確かめるといいさ」

 

 接近しようとする相手に、光弾を打ち込み続けるディエンド。それを全て大盾で防いでみせるアナザーディエンド。

 状況的にディエンドの方が押されていると判断したジオウトリニティは、すぐに彼を助ける為に、まずは邪魔なアナザーカリスたちを一掃しようとする。

 アナザーディエンドに気を取られて待機状態であったジカンギレードの銃口を、アナザーカリスたちに向け、待たせていた力を放つ。

 

『スレスレシューティング!』

 

 銃口から〇×型のエネルギー弾が発射され、アナザーカリスたちに着弾する。ダメージは無いが、その体に〇と×のマークが張り付いた。

 すると、アナザーカリスたちの頭上に暗雲が発生し、そこから落雷も発生。〇×マークが付いているアナザーカリスたちの脳天に雷が落ちる。

 閃光、轟音は一瞬。貫かれたアナザーカリスたちは、すぐに消滅してしまった。

 妨害する敵を一掃し、ディエンドの援護に向かうジオウトリニティ。その時、聞こえてきた音が彼らの足を止めた。

 

『EVOLUTION KING』

『EVOLUTION』

「え? キング?」

 

 王という言葉に反応したジオウトリニティは、そこで見た。ブレイドとカリスの体に王の力が宿る瞬間を。

 ブレイド、カリスから飛び出てくる13枚のカード。それらが全て彼らの体へと取り込まれていく。

 カリスは、黒の肉体が赤と黄金の鎧と化し、赤の複眼は緑に、胸部には変身の際に使用したパラドキサアンデッドの緑の紋章が浮かんでいる。

 カリスからワイルドカリスへと進化すると、両腿のホルスターに収まれた一対の鎌──ワイルドスラッシャーを抜いて構える。

 13体のアンデッドと同時に融合したブレイドは、銀の装甲が、重厚感のある金の鎧へと変化し、鎧の各部には取り込んだアンデッドのレリーフがあった。

 額の一本角は王冠と見間違う三本へと変わり、胸部には黄金のコーカサスアンデッドのレリーフ。

 開かれた手の中に出現する蒼の柄と黄金の剣身で形成された大剣──キングラウザー。

 仮面ライダーブレイドキングフォーム。荘厳、圧倒、絢爛、強者、それらの言葉で飾るのも陳腐に思える程の王がそこに立っていた。

 

『祝え……はっ!』

「え! 急にどうしたの?」

『私としたことが、王の気配に当てられてつい……我が魔王が居るというのに』

『何だ、いつもの悪癖か』

 

 ブレイドキングフォームとワイルドカリスの存在感に、つい何時もの感覚で祝福の儀式を行おうとした自分を恥じる。

 ジオウトリニティ内でそんな黒ウォズを見て、ソウゴとゲイツはやや呆れる。

 

「──おおっ!」

 

 ブレイドたちに気を取られている時に、視覚外から何か来るのを察し、一歩後退する。

 すると、飛び退いたと思われるアナザービーストが目の前に着地した。

 アナザービーストが、ジオウトリニティに目を向ける。その目が獰猛に輝く。

 途端、爪でジオウトリニティを斬り裂こうとしてきた。

 

「うおっと!」

 

 ジカンザックスで振り下ろされる一撃目を弾く。二撃目は下から掬い上げる形で迫って来た。それをジカンギレードの弾丸で撃ち抜く。

 時間差で繰り出した両手の攻撃を簡単に捌かれたアナザービースト。今度は大口を開けてジオウトリニティの頭を噛み砕こうとする。

 

『ヤリスギ!』

 

 ウォズの仮面から『ヤリ』の文字が飛び出し、それがジカンデスピアと成ると、ジオウトリニティの周囲を旋回しながら飛び掛かって来るアナザービーストの胴体を穂先で斬り付ける。

 思わぬカウンターで後ろに吹き飛ばされるアナザービースト。

 ジカンデスピアはジオウトリニティの正面で止まり、柄頭を向ける。

 柄頭に蹴りと放ち、ジカンデスピアをアナザービーストへ蹴り飛ばす。

 薄緑の残像を線の様に残しながら、ジカンデスピアの刃がアナザービーストに突き刺さる。

 本当なら胸部に命中するコースであったが、アナザービーストが咄嗟に避けたことで右肩の付け根部分に刺さっていた

 咆哮を上げて苦しむアナザービースト。

 一方で、ディエンドとアナザーディエンドの戦いも白熱している。

 アナザーディエンドが振るうアナザーブレイブだった大剣を紙一重で躱していくディエンド。しかし、刃は避けられても剣身から放つ熱と冷気までは避けられず、装甲の一部が焦げ付いていたり、凍り付いていたりしていた。

 少しでも距離が開けば銃撃を行い、怯ませようとするが、どれも大盾によって完全に防がれてしまう。

 

「ふん!」

「くっ!」

 

 アナザーディエンドが放った突きを完全に回避することが出来ず、肩に受けてしまう。突きの威力で転がっていくディエンド。だが、距離を開けるには好都合であった。

 

『アタックライド・ブラスト』

 

 転がりながらカードをネオディエンドライバーに装填したディエンドは、立ち上がる様に銃口をアナザーディエンドに向ける。

 大盾を構えてそれを防ごうとするアナザーディエンドであったが、ふと気配を感じて空を見上げる。

 宙に描かれる金色の魔法陣。その中に飛び込もうとする仮面ライダービースト。

 

『キックストライク! ゴー!』

 

 魔法陣を潜り抜けると、ビーストの右足に獅子の頭部の形をしたエネルギーが宿る。

 天地からの同時攻撃。両方を防ぐ手段は、アナザーディエンドには無い。

 

「ちっ!」

 

 アナザーディエンドは素早くカードを右手に挿す。

 

『ファイナルアタックライドォ・ブ、ブ、ブ、ブレイブ』

 

 力を全開放したので、炎と冷気が激しさを増す。狙うは上から仕掛けてくるビースト。斜め上に向けて大剣を振るう。

 剣身から炎弾、氷柱が無数に放たれビーストのキックと衝突する。一発一発はビーストのキックよりも威力は劣るかもしれない。しかし、それが何十、何百ともなればキックの威力も相殺され、ビースト本体にも直撃する。

 炎弾と氷柱を大量に浴びせられ、ビーストは光となって消滅した。

 アナザーディエンドがビーストを迎撃した間に、ディエンドは光弾を撃つ。数は最初のときと比べたった二発。だが、その二発はそれぞれ複雑な弾道で動き、大剣、大盾を躱してアナザーディエンドの両手に命中した。

 ビーストを倒した直後に両手に受けた衝撃で、アナザーディエンドは大剣と大盾を離してしまう。

 そこにすかさず高速移動で距離を詰めるディエンド。アナザーディエンドは反応して右手を向けようとするが、ディエンドは指先を向けられる前に右手首を掴み、アナザーディエンドの胸に押し当て、顎下にネオディエンドライバーを突き付ける。

 

「勝負あり、とっいった所かな?」

「──いや、まださ」

 

 負け惜しみには聞こえなかった。何かを狙っていることに勘付く。それを証明する様に聞こえる音。

 

『ファイナルフォームライドォ・ビ、ビ、ビ、ビーストォ』

「何っ!」

 

 ディエンドの動きを察していたアナザーディエンドは、こうなる展開を予想して二枚カードを挿し込んでいた。

 そして、右手は最初からディエンドに向けるつもりは無かった。向けるのは当然カードの能力の対象となったアナザービースト。

 アナザーディエンドの指先から放たれた光線が、串刺しになっているアナザービーストを撃つ。

 

「えっ!」

 

 アナザービーストを倒そうとしていたジオウトリニティは、すぐ側を通っていく光線に驚き、思わず射線から離れる。

 光線が命中したアナザービーストは、まず手足が体の各部にある獣の口の中に収納される。

 頭部と胴体だけになると、頭部が前に倒れ、胸部の位置に移動する。四肢各部にある隼、水牛、イルカ、カメレオンが正面を向く。すると、背部から肉食獣を思わせる新たな体や手足が生え、四つん這いの状態で地面に立つ。

 胸部であった場所は頭部となり、五つの頭を持つキマイラと化した。

 その変貌ぶりに思わず目を奪われるジオウトリニティ。ディエンドもまたそうであった。

 

「ふん!」

「うっ!」

 

 気を取られている隙に、アナザーディエンドの膝がディエンドの脇腹を突き上げ、動きが鈍らせると共に右手の光弾でディエンドを撃ち続ける。

 

「くぅっ!」

 

 下がらざるを得ないディエンド。

 

『オオオオオオ!』

 

 アナザービーストが吼え、翼を生やして飛翔。後退しているディエンド目掛けて各口から五色の光線を撃ち込む。

 

「うああああ!」

 

 直撃は避けたが、光線が地面に命中すると地面が爆発し、その衝撃と熱がディエンドを襲った。

 

「くっ……!」

 

 地面に横たわるディエンド。体を起こし、屈辱だと言わんばかりの声を洩らす。

 

『ファイナルアタックライドォ・ビ、ビ、ビ、ビーストォ』

 

 止めの一撃を発動させたアナザーディエンドは、上空に向かって大きく跳び上がった。

 上空で羽ばたいていたアナザービーストが、技の発動と共に再び姿を変形させる。

 四肢が折り畳まれ、胴体が二つ折りになる。隼、水牛、イルカ、カメレオンの頭部の首が伸び、四本の首を指球、アナザービーストの頭部を掌球に見立てた獅子の足に変わった。

 跳び上がったアナザーディエンドは、二つ折りになったアナザービーストの胴体に右足を乗せる。

 アナザービーストは、アナザーディエンドの右足の延長となり、そこからディエンドを踏み潰す為のキックが放たれる。

 咆哮を上げ、ディエンドを亡き者としようとする各頭部。負傷しているディエンドに、それを避けている時間は無い。

 しかし、その間に入る人影──ジオウトリニティである。彼らはディエンドを守る様に立ち塞がる。

 

「何を──」

『お前の為じゃない。奴には色々と借りがあるだけだ』

『我が魔王が作る未来を阻む、もう一人の私を倒しに来ただけのこと』

 

 あくまでディエンドを守るのでは無いと主張するゲイツと黒ウォズ。

 

「いくよ! 皆!」

 

 ジオウライドウォッチのスイッチを一回、ジオウトリニティライドウォッチのスイッチを三回押す。

 

『フィニッシュタァァイム!』

『ジオウ! ゲイツ! ウォズ!』

 

 ライドウォッチのエネルギーを解放させ、ジクウドライバーを一回転させる。

 

『トリニティ! タイムブレーク! バースト! エクスプロージョン!』

 

 

 ◇

 

 

 ブレイドキングフォームとワイルドカリスを見て、その姿に恐れを抱いたのか、アナザーワイルドカリスは、レンゲルを殴りつけ、刺さっているレンゲルラウザーを無理矢理引き抜かせる。

 

「うっ!」

 

 後退するレンゲルの肩を、ブレイドが後ろから支える。

 

「大丈夫か?」

「はい。まだ行けます!」

 

 怯むことなくやる気を見せるレンゲル。

 ブレイドとワイルドカリスは、赤と緑の目でアナザーワイルドカリスを睨み付ける。

 レンゲルから受けた毒に苦しみながら後ろに下がっていくアナザーワイルドカリスは、石板から追加で現れたアナザーカリスたちの中に紛れ込む様にして入り、彼らに向けてカードを投げつける。

 カード内に封じされていくアナザーカリスたち。そのままアナザーワイルドカリスの胸部に吸収される。

 すると、レンゲルの毒を受け変色していた傷が瞬く間に回復していく。カードを取り込むことで、自己強化だけでなく自己回復も可能とするらしい。

 傷が治ったアナザーワイルドカリスは、アナザーカリスたちをブレイドたちに向かわせる。

 それを迎え撃つのはブレイドとワイルドカリス。ワイルドカリスがワイルドスラッシャーを一閃させる。アナザーカリスの胴体が簡単に両断される。

 アナザーカリスを一撃必殺で下したワイルドカリス。その手に持つワイルドスラッシャーを巧みに操り、アナザーカリスたちを葬っていく。

 

「ゥエイ!」

 

 ブレイドが大剣──キングラウザーを振るう。アナザーカリスたちの一体の胴体に刃が入るとそのまま斬り払う。振り抜かれたキングラウザーは横並びになっていたアナザーカリスたちをまとめて三体同時に斬り飛ばす。

 尚も接近してくるアナザーカリスたち。ブレイドが拳を握り締めると、ライオンのレリーフが輝く。ブレイドが拳を打ち付けるとアナザーカリスは一撃で粉砕される。

 今度はバッタのレリーフが輝く。装甲の厚みが増した脚から繰り出される回し蹴りは、一度に数体も巻き込みながら軽々と蹴り飛ばす。

 キングフォームとなったことでブレイドはラウザーにカードを通さずにその能力を行使することが出来る。

 その能力を十二分に使い、斬撃が、拳が、蹴りが、雷撃がアナザーカリスたちを滅していく。

 レンゲル、ギャレンもまた二人の戦いを傍観せず、彼らが打ち洩らしたアナザーカリスたちを的確に倒していく。

 石板から生み出されるアナザーカリスたちの数よりも、ブレイドたちが倒す数の方が勝ってきた。

 状況を変えようとしたのか、アナザーワイルドカリスは周囲のアナザーカリスたちをカードに封じ、それを吸収しようとする。

 だが──

 

『BULLET』

『FIRE』

『RAPID』

 

 アルマジロ、ホタル、キツツキが描かれたカードが浮かび、ギャレンに取り込まれる。

 

『BURNING SHOT』

 

 ギャレンが構えた銃から火炎の弾丸が撃ち出され、それが正確にアナザーカリスたちを封じたカードを撃ち抜く。

 

「これで強化も回復も出来ないな!」

 

 敵の数を減らし、能力も封じるという見事な射撃術を見せる。

 

「剣崎! 始! 今だ!」

 

 ギャレンの言葉に二人が頷く。

 ブレイドはレリーフから五枚のカードを具現化させ、ワイルドカリスは十三枚のカードを体から出現させ、それらを一枚のカードに融合させる。

 ワイルドカリスは、二本のワイルドスラッシャーを折り畳み、カリスアローの中央に填め込む。

 ブレイドは、キングラウザーの中に五枚のカードを装填する。

 

『SPADE 10 SPADE J SPADE Q SPADE K SPADE A』

 

 ワイルドカリスもまた融合したカード──WILDをワイルドスラッシャーの間に通す。

 

『WILD』

 

 破壊の力を緑の旋風として具現化させ、カリスアローに纏わせる。

 

『ROYAL STRAIGHT FLUSH』

 

 キングラウザーに装填したカードが、ブレイドの前に光の壁となって並ぶ。その光は、ロイヤルストレートフラッシュの言葉に相応しい黄金の輝きであった。

 アナザーワイルドカリスは、黄金と緑の輝きに本能的な危機感を覚え、アナザーカリスたちを防壁として前に出しながら自分は後退する。

 ワイルドカリスが不可視の弦を引く。

 ブレイドがキングラウザーを構えるとキングラウザーに黄金の光が宿る。

 ワイルドカリスが弦を離すと、カリスアローから圧縮された破壊の旋風が撃ち出され、ブレイドが光の壁にキングラウザーを振るうと、剣身から黄金光が伸び、壁を突き破る度にその強さを増していく。

 破壊旋風と黄金光。有象無象のアナザーカリスたちでは、触れるどころかその余波を受けただけで消滅していき、防壁にすらならない。

 膨大な数のアナザーカリスたちを瞬時に消し去っていく二つの力に、逃げることが叶わないと悟ったアナザーワイルドカリスは、両腕を合わせ持てる全ての力を込めて矢を放つ。

 しかし、アナザーワイルドカリスの足掻きは、ささやかな抵抗でしかなかった。

 矢は一瞬にして破られ、アナザーワイルドカリスは光と旋風に呑まれる。

 そのまま飛ばされ、石板中央に衝突する。石板は大きく罅割れ、這い出ようとしていたアナザーカリスたちは、その時の力で消滅させられる。

 罅割れの中心で埋め込まれるアナザーワイルドカリス。辛うじて原型を保っていた。僅か抵抗が、彼に僅かな時間を与える。

 だが、それも間も無く終わる。

 

「剣崎さん! これを!」

「剣崎。受け取れ」

 

 レンゲルとワイルドカリスから投げ渡される二枚のカード。

 

「剣崎──これを使え」

 

 ギャレンからも渡される二枚。その内の一枚を見て、ブレイドは驚いた。

 

「橘さん、これ……!」

「……いつかそれで、お前や始のジョーカーの力を封じられればと思って研究していた。今はあれを倒す為に使え!」

「──はい!」

 

 渡された四枚のカードに、ブレイドが持つ一枚を加え、キングラウザーへ装填する。

 

『SPADE A HEART A DIAMOND A CLUB A──』

 

 そして、最後に入れるのは、ある男が野心の為に生み出した本来ならば存在しない五十四番目のカード。描かれるのは三つの頭を持つ地獄の番犬とAマーク

 

『──WILD A』

 

 ブレイドが重力に逆らい飛翔する。どんどんと高度を上げいき、石板を見下ろせる高さまで昇る。

 そして、解放する力。在り得ないカードを使用した在り得ないカードのコンボ。だが、ルールによって自動的に動く石板を破壊するには、ましてや世界を破壊する様な存在には、これ以上相応しい技は無いだろう。

 

『FIVE CARD』

 

 

 ◇

 

 

 巨大な足に向かってジオウトリニティは跳ぶ。ジオウトリニティから現れるジオウ、ゲイツ、ウォズの三体の幻影。そして、ジオウトリニティを導く様に現れる三色の『キック』と『きっく』の文字。

 伸びる文字を右足裏に収めながら、ジオウトリニティは猛るアナザービーストに突撃する。

 上空から押し潰すキックと迎え撃つキック。空中でぶつかり合い、拮抗し、行き場を失ったエネルギーが周囲に飛び散り山をも崩す。

 

『おおおおおおお!』

「はあああ!」

 

 勝ちを譲らず、意地を掛けた気迫の声。

 しかし、三つの幻影がジオウトリニティと再び一つとなった時、拮抗は崩れる。

 アナザービーストの体は押され始め、ジオウトリニティのキックの威力にも負け始めて崩れ出す。

 

『たあああ!』

 

 最後の気合いを乗せた声と共に、アナザービーストは蹴り破られ、爆発を起こす。

 

「ぐああっ!」

 

 アナザーディエンドが地面に落ちた。本来ならばジオウトリニティのキックが直撃する位置に居たが、アナザービーストの爆発で何とか逃れられた。

 だが、まだ戦いは終わらない。ジオウトリニティとディエンドがアナザーディエンドを見ている。そして、アナザーディエンドもまた、まだ負けを認めていない。

 

「流石、魔王。そのウォッチを使いこなせている……」

「一つ聞いていい?」

「……何かな?」

「何で俺にこのウォッチを渡したの?」

「何でかか……それはきっと、私がそのウォッチを絶対に使うことが出来ないと分かっていたからだろうね。……見てみたかったのさ、その力を」

 

 その言葉に自嘲を感じられた。もっと聞きたかったが、右手を突き付けるアナザーディエンドがそれを許さない。

 

「さあ、まだ終わりじゃないぞ、魔王!」

 

 アナザーディエンドは、右手首の中にカードを挿し込もうとする。

 

「受け取りたまえ」

 

 ディエンドがジオウトリニティに向けた何かを投げた。受け取るとそれはライドウォッチであり、ディエンドの顔が浮かんでいる。

 

「それを貸してあげるよ。借りをつくるのは嫌いだからね」

『お前、ライドウォッチだけじゃなくブランクウォッチまで……!』

 

 ディエンドの手癖の悪さに、ゲイツは呆れと憤りを半々にした声を上げる。

 

「何か、いけそうな気がする!」

 

 ジオウトリニティは銃モードのジカンギレードを出し、ディエンドライドウォッチを填め込む。ディエンドもまたネオディエンドライバーにディエンドのマークが入ったカードを挿す。

 

『フィニッシュタァァイム!』

『ディエンド!』

『ファイナルアタックライド・ディ、ディ、ディ、ディエンド!』

 

 ネオディエンドライバーの銃口の先に、青緑色のカード型のエネルギーが連なった渦を描き、銃身の延長を作り出す。ジカンギレードもまた同じ様にマゼンタ色の『ライダー』という文字が回転し、銃身を形成する。

 

『ファイナルアタックライドォ・ディ、ディ、ディ、ディエンドォ』

 

 アナザーディエンドもまた右手指先から青黒いカード型エネルギーが銃身となり、照準をジオウトリニティたちに定める。

 

『スレスレシューティング!』

 

 ジオウトリニティが引き金を引くと同時にディエンド、アナザーディエンドも撃つ。

 エネルギーの銃身を通っていく青黒いエネルギー。それに対するはマゼンタと青緑色のエネルギー。

 衝突する力と力。だが、青黒いエネルギー──アナザーディエンドの力は二人の、否四人のライダーの力に貫かれ、アナザーディエンドをも撃つ。

 

「ぐあああああああ!」

 

 エネルギーの奔流の中で爆発するアナザーディエンド。爆発が収まった後には、倒れている筈の白ウォズの姿は無く、代わりに砕けたアナザーディエンドウォッチがあった。

 

「あれ?」

 

 白ウォズを探すが見つからない。

 

「何処に──ってあれ?」

 

 行ったんだろうとディエンドに話し掛けようとしたが、ディエンドも側に居ない。

 

「さて、偽者は退治出来たし僕はおさらばさせてもらうよ」

 

 ディエンドはいつの間にか数十メートル向こうに移動していた。

 

「あと、これは返して貰うから」

 

 手にはディエンドライドウォッチ。気付かない内にジカンギレードから抜かれている。

 

「ええ!」

「貸すだけって言った筈だよ。じゃあね」

『アタックライド・インビジブル』

 

 ネオディエンドライバーを真上に撃つと、ディエンドの姿は透明になり消えてしまった。

 

『何て奴だ……』

 

 その勝手さにゲイツは辟易した声を出す。

 

『そうだ、我が魔王。ブレイドたちは──』

「もう終わるよ」

『え?』

 

 ジオウトリニティは石板の方を見る。

 石板に向かって並ぶ五枚のカード。カブトムシ、カマキリ、クワガタムシ、クモ、ケルベロスという異なる五つの絵柄。

 その中を通り抜けていくブレイド。最初の一枚目で剣に青い光が宿り、次に黒、その次は赤、四枚目は紫、そして五枚目の通り抜けたときに黄に輝く。

 五色の光で輝く王の剣が、石板の天辺に剣を振り下ろす。

 下に落ちながら斬り続け、アナザーワイルドカリスをも真っ二つにし、石板を一刀両断にする。

 斬られた石板は塵と化し、アナザーウォッチと共に跡形も無く消え失せた。

 暗雲で覆い尽くされた空が晴れ渡る。そこから降り注ぐ光が、降り立ったブレイドを輝かせる。

 世界が救われた、そう感じさせる光景であった。

 

 

 ◇

 

 

 剣崎と始は、仮面ライダーの力を再びライドウォッチに戻し、二度戦いが起きない様にソウゴたちに渡す。

 気絶していた天音の無事に起き、始と再び笑い合うことが出来た。一度は溝が空いてしまった剣崎たちだが、その溝が埋めるには十分な時間がある。何よりも共に戦った戦友同士、そう時間も掛からないことだろう。

 夜が更け、空にレグルスが輝く。その光の下で二人のウォズが言葉を交わす。

 

「今この時が、新しいオーマの日となったようだね」

「ああ。私と君が知らない新たな歴史が始まる」

 

 白ウォズと黒ウォズ。戦いを終えた二人は傷だらけであった。

 

「オーマの日、私と君、どちらかが存在しなくなる。君は私を選ぶ様な真似をした、何故だ?」

 

 白ウォズはオーマの日に魔王が倒されたことで派生した歴史から生まれた。その可能性が無くなるということは消滅を意味している。ソウゴが疑問に思った様に、黒ウォズもまたこちらを助力する行為に疑問を抱いた。

 

「私だって負けるつもりは無かったさ。ただ、あのウォッチは仲間が居ることで真価を発揮する。私には到底相応しくない。何故なら私は仲間を作ることが出来なかった──今の君の様には」

「仲間、か」

 

 黒ウォズはその言葉を少し戸惑った様に受け止める。

 白ウォズは、今なら何故アナザーディエンドの力を得たのか分かった気がする。一度だけでもいい。共に戦う者が欲しかったのかもしれない。仮初めの存在でもいい。肩を並べて戦う戦友を無意識に欲したのだと。

 

「気に入ったよ、あの魔王。彼なら面白い未来を作れそうだ。大事にするんだね」

 

 そんな思いを胸に秘め、白ウォズは黒ウォズに警告を告げる。

 

「スウォルツ氏には気を付けろ。彼は私たちの知らない底知れぬ野望を抱いている」

 

 その言葉に黒ウォズは表情を引き締める。戦いはまだ熾烈を極めていくと思い。

 白ウォズの体がブレ始め、姿が薄まっていく。

 

「どうやら時間の様だ。君の未来が闇に包まれぬことを祈る……ああ、そうだ」

 

 最後に何かを思い出す。

 

「君たちとは争ってばかりだったが……思い返すと思いの外悪い思い出じゃなかったよ。君はどうだい?」

 

 白ウォズの問いに、黒ウォズは答えず、言葉の代わりに微笑を見せる。同じ者同士、それで十分伝わるのが分かっていた。

 白ウォズもまた同じ微笑を浮かべ、粒子となり風にのって消えていった。

 白でも無く、黒でも無く、ただのウォズとなった彼は夜空に消えていくもう一人の自分の名残をいつまでも見つめ続けていた。

 




アナザーカリス
身長:204.0cm
体重:109.0kg
特色/能力:弓を操る

アナザーワイルドカリス
身長:204.0cm
体重:109.0kg
特色/能力:弓を操る/カードを操る

アナザービースト
身長:198.0cm
体重:94.0kg
特色/能力:獣の魔法を操る

アナザーディエンド
身長:194.0cm
体重:88.0kg
特色/能力:アナザーライダーの召喚/アナザーライダーの武器化

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  • IFゲイツ、マジェスティ

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