仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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キングギリギリスラッシュと平成ライダーズアルティメットブレークってどっちが強いんでしょうね。


アナザーG42019(後編)

 辛くもアナザーG4たちから逃げることが出来たソウゴたちは、クジゴジ堂にてアギトに変身した男と互いの自己紹介をする。

 男の名は津上翔一。ソウゴとゲイツが訪ねたレストラン『AGITΩ』で聞いた翔一は彼のことであった。

 一方で翔一もまたソウゴのことを聞いていた。レストランで王様になりたい男と自己紹介をすれば、記憶に残るだろう。

 そんな中でツクヨミは暗く悩んでいた。自分が人質になったことでアギトの力が奪われてしまったこと。時間を操る力をはっきりと自覚し、更にスウォルツが自分の失った過去について知っていること。

 二つのことが重なり、心配するソウゴらに拒絶する様な態度をとってしまい、それが更なる自己嫌悪を生み、一人何処かに行ってしまう。

 ソウゴたちも深く聞くことはしなかったが、ツクヨミが時間を停める力を持つことに気付いており、悩める彼女を心配するソウゴたち。

 だが、翔一は特別なことをせず今まで通り一緒に居てあげればいいとアドバイスを送る。

 過去よりもソウゴたちと歩む未来の方が、ツクヨミにとって大事なことだと教えた。

 そこへ、翔一に尾室からの連絡が入る。街でアントロードたちが暴れていると。

 アギトの力を取り戻す為にソウゴとゲイツはアントロードたちの下に向かい、翔一は悩めるツクヨミを手助けする為に彼女の下へと向かう。

 

 

 

 

 駆け付けたソウゴたちが見たものは、アントロードたち人々を襲っている光景であった。

 

「や、やめ──」

 

 アントロードに首を掴まれていた男性が命乞いをするが、その顔に容赦なく爪が突き立てられ、そのまま振り抜かれる。

 

「ぎゃああああ!」

 

 手を離され、血塗れの顔を押えながら男は悶え打つ。

 別の所では、初老の男性がアントロードたちに周囲を囲まれ逃げ場を失い、腰を抜かしている。

 アントロードたちはジッと初老の男性を見つめたかと思えば、左手の甲に右手の指で印を描くと、初老の男性の顔に蟻酸を吐きかける。

 

「かっ、かっ……」

 

 初老の男性の口から、水中にいるかの様に泡が立ち、首を引っ搔きながら苦悶に満ちた表情で絶命する。

 相手によって命を奪うか、傷付ける程度かと選んでいる。

 アンノウンをよく知る者なら何故そんな行動をとるのか理解しているが、ソウゴたちから見れば無差別に人を襲っているにしか見えない。

 この惨劇を終わらせる為に、二人はアントロードの群れに突撃する。

 

『変身!』

『ライダーターイム!』

『ジオウ! ジオウ! ジオウⅡ!』

『リ・バ・イ・ブ! 剛烈! 剛烈!』

 

 ジオウⅡ、ゲイツリバイブ剛烈へ変身した二人は、すぐさまサイキョーギレード、ジカンジャックローを取り出す。

 視界一杯に広がり蠢く黒。剣一本、丸鋸一つで挑むには、第三者が見れば無謀そのもの。

 だが、ジオウⅡは間合いに入れたら即アントロードの一体を斬り、ゲイツリバイブもジカンジャックローで殴り飛ばす。

 数の差など彼らを恐れさせるには足りない。無辜の人々が救えない方がよっぽど恐ろしい。

 ジオウⅡとゲイツリバイブの先制で、アントロードたちの矛先が一般市民からジオウⅡたちに移った。多数のアントロードが牙をかち鳴らし威嚇してくるが、人々から離れさせたいジオウⅡたちにとっては都合が良い。

 

「ゲイツ。他の皆が逃げられる様に引き付けるよ」

「分かった」

 

 じりじりと距離を詰めてくるアントロードたち。歩調に合わせてジオウⅡたちも後退する。意図を探られないようにゆっくりとした動きで。

 ジオウⅡらがアントロードたちの気を引いてくれたおかげで市民たちはどんどんと逃げていく。

 しかし、睨み合いに痺れを切らしたのかアントロードの一体がジオウⅡに向かって飛び掛かって来た。

 ジオウⅡは後ろに下がりつつ、飛び掛かってきたアントロードの胴体を薙ぐ。腹部に斬撃を与えられ、アントロードは着地と共に蹲る。

 その間にジオウⅡは、ジオウの仮面を模した鍔部分のスイッチを押し、『ライダー』を『ジオウサイキョウー』へと切り替える。

 

『覇王斬り!』

 

 時計盤型の七色のエネルギーが斬撃に乗せて放たれ、アントロードを真っ二つにすると、アントロードの頭上に白い円が浮かんだ後、爆発する。

 一体やられたことで、アントロードたちはジオウⅡとゲイツリバイブを完全に敵と見なし、一斉に襲い掛かってくる。

 数体のアントロードたちが、爪を掲げ一つの塊となってジオウⅡらを襲う。

 

「ふん!」

 

 前に出たゲイツリバイブが、最前線にいるアントロードにジカンジャックローを打ち込む。一体のアントロードが止められたことで、後方にいたアントロードたちが圧し掛かってくるが、ゲイツリバイブの足はその場から微動だにせず。どんどんと後続が詰まっていく。最初の倍近い数はいるアントロードたちの進撃が、ゲイツリバイブの腕一本の剛力によって阻まれる。

 

『のこ切斬!』

 

 打ち込んでいたジカンジャックローのトリガーを押すと、丸鋸が高速回転し、そこから放たれる橙の刃がアントロードたちを纏めて斬り裂く。

 一撃で十を超えるアントロードたちが粉砕された。しかし、喜んでいる暇は無い。ジオウⅡたちが倒したアントロードはほんの一握り。まだ大量のアントロードたちが殺気立って睨み付けている。

 

「なら、これだ!」

 

 ジオウⅡは、銀のジオウライドウォッチⅡを外し、そこにディケイドライドウォッチを填める。

 

『ディ、ディ、ディ、ディケイド!』

 

 ディケイドライドウォッチを挿し込むとジクウドライバーからライドヘイセイバーが召喚され、ジオウⅡはそれを握り、サイキョーギレードと合わせて二刀流となる。

 

『ヘイ! ファイズ!』

 

 ライドヘイセイバーの針を回し、ファイズの力を選び、柄にあるトリガーを引く。

 

『ファイズ! デュアルタイムブレーク!』

 

 ライドヘイセイバーに宿る赤い光。ジオウⅡは、ライドヘイセイバーの切っ先を地面に向け、下から斬り上げる。すると、剣に宿っていた赤い光が地面を走り、途中何条もの光に分かれ、その光がアントロードたちに接触すると彼らを赤い光の柱で拘束する。

 

『ジカンジャック!』

 

 ゲイツリバイブもまたジカンジャックローにライドウォッチを填める。

 

『ウィザード!』

 

 填めたのはウィザードライドウォッチ。丸鋸が橙ではなく紅蓮の炎を纏い、唸る様に回転する。

 ゲイツリバイブに連動してジオウⅡもディケイドライドウォッチを外し、ライドヘイセイバーに填め、長針を何周もさせ、次々と各仮面ライダーの紋章を浮かばせる。

 

『フィニッシュタァァイム!』

『ヘイ! 仮面ライダーズ!』

『ヘイ! セイ! ヘイ! セイ! ヘイ! セイ! ヘイ! セイ! ヘヘヘイ! セイ! ヘイ! セイ! ヘイ! セイ! ヘイ! セイ!』

 

 騒々しい待機音がこれから放つ技の強大さを暗示させる。

 ジオウⅡとゲイツリバイブが同時に武器のトリガーを引く

 

『ディ、ディ、ディ、ディケイド!』

『ヘイセイライダーズ! アルティメットタイムブレーク!』

『スーパーのこ切斬!』

 

 アントロードたちの前に出現する横並びの十枚の光の壁。各ライダーの紋章と『ヘイセイ』の文字が書かれたそれにジオウⅡがライドヘイセイバーを振るうと、光の壁に合わせて彩り鮮やかな光の斬撃が放たれる。

 斬撃は並んでいる光の壁を取り込むことでより鮮烈さを増し、アントロードたちを一掃。ライドヘイセイバーを振り抜いたジオウⅡは、すかさず剣を斬り返す。すると、再び十枚の光の壁が並び、一撃目以上の光がアントロードたちを通り抜ける様に斬り裂く。

 ゲイツリバイブがウィザードライドウォッチの力で四人に分身する。四人のゲイツリバイブがジカンジャックローを横に振るうと、炎の輪がジカンジャックローから飛び出し、アントロードたち頭上まで行き、輪投げの様にアントロードたちを輪の中に入れる。

 炎の輪は、アントロードたちを拘束すると回転し炎上。火柱となってアントロードたちを燃やし尽くす。

 しかし、戦いの余韻が消えない内に爆炎、黒煙を突き破りながら残ったアントロードたちがジオウⅡらに襲い掛かってくる。

 

「くっ! どれだけいるんだ!」

 

 数が減らないアントロードたちに、ゲイツリバイブは思わずそう叫ぶ。

 ジオウⅡは、アントロードたちと交戦しながら、額に付けられた二対の長針短針を回転させる。浮かび上がる未来の光景。そこには地面を掘って次々とアントロードたちが現れるものであった。

 

「まだ増える!」

 

 戦いはまだ始まってすらいない。四方八方から襲い来るアントロードたちに、ジオウⅡとゲイツリバイブは必死に反撃する。

 

「ふっ。やってるね」

 

 それを高所から見下ろすウールとアナザーG4。ジオウⅡたちの足搔きを、文字通り高みの見物をする。

 隣にいるアナザーG4は、低く唸りながらそれを見ている。

 

「ところでさ」

 

 笑っていたウールは笑みを消す。

 

「暴れるのはいいけど、あんまり気持ち悪いの見せないでくれるかな?」

 

 負傷で苦しんでいる人々、そして息絶えた人々の姿を直視せず、視界の端に捉えながら苦情を言う。

 すると、アナザーG4はウールの方を見た。無言で、睨む様に。

 

「──何だよ」

 

 アナザーG4の反抗的な態度に、ウールは気丈に振る舞う。

 

「ア、 ギト……」

「何だって……?」

「アギトッ!」

「うあっ!」

 

 アナザーG4は突如として声を張り上げ、その声量でウールは驚く。

 

「──────────!」

「うっ!」

 

 アナザーG4の口から発せられる悲鳴の様な甲高い絶叫。

 その途端、アントロードたちの動きが変わる。ジオウⅡとゲイツと戦っていた筈の彼らが一斉に引き、別々の方向へ走り出す。

 

「うあああああ!」

 

 負傷して動けない人たちの下へ向かうアントロード。

 

 

「きゃあああああ!」

「来るな! 来るな!」

 

 この場か逃げている人々を追うアントロード。

 何かの箍が外れた行動をする。

 

「おい! 何の──」

 

 ウールは、アントロードたちを統率出来なくなったアナザーG4を責めようとするが、その言葉を聞くよりも先に、アナザーG4が勝手に動き出す。

 

「待てよ!」

 

 ウールの言葉を聞かずアナザーG4は何処かに向かう。

 

「何だよ、あいつ……!」

 

 その時、ウールはスウォルツの言葉を思い出していた。

 

『お前の持つアギトの力は奴らにとっては忌むべき力だ』

『ウォッチの力である程度は操れるが、アギトの力の前では制御出来ん』

 

 スウォルツの言葉通りの展開になり、ウールは悔しそうに表情を歪ませる。

 

「これが、そうだって言うのか……!」

 

 タイムジャッカーの手を離れ、アナザーG4は暴走し始めた。

 

 

 

 

 悩めるツクヨミは、彼女を探していた翔一と合流する。

 時間を操る力を知って初めて過去の記憶が無いこと苦しむツクヨミに、翔一は自分もまた記憶喪失であったことを告げた。

 記憶が無くても、人には無い力があっても自分は自分であることに変わりはない。ツクヨミもまたそうやって生きてきた筈だと。

 翔一は、ツクヨミにソウゴたちの下へ帰るよう促す。ツクヨミがツクヨミであったからこそ出来た仲間の下へ。

 その言葉で悩みが吹っ切れたツクヨミは、急いでソウゴたちの下へ向かう。

 ソウゴたちを見つけたツクヨミは、まず心配を掛けたことへの謝罪をしようとするが、ソウゴはそれをやんわりと止める。

 ソウゴは世界を、未来を良くしたいと思い王になることを決めた。それには、ゲイツ、ウォズ、ツクヨミの力があってこそ、最高最善の魔王になれると。

 ツクヨミもまたその想いに賛同し、自分もまた未来を良くしたいと語る。例え、過去の自分が何者であったとしても、自分が自分だから。

 ツクヨミの迷いが晴れ、ソウゴたちの不安が一つ消える。

 あとは、アナザーG4を倒すだけ。そこへ、ウォズが現れた。悪い報せを持って。

 

「我が魔王。アナザーG4を倒すならなるべく急いだ方がいい」

「どういうこと?」

「本来ならば、アンノウンはアギトとなる可能性があるものを抹殺することが使命。だが、今のアンノウンはアナザーG4も含めて無差別に人を襲っている」

「何だと?」

 

 その凶報にソウゴたちの顔色が変わる。

 

「恐らくは、アギトの力を取り込んだせいで暴走状態になっている。タイムジャッカーが制御出来ないぐらいのね。このままでは多くの人々が犠牲になる」

「待て。アナザーG4は変身者の命を奪う。直に自滅するんじゃないのか?」

「厄介なことに、暴走の原因であるアギトの力がそれを防いでいる。アギトは進化する力、アギトの力であの女王蟻は、アナザーG4が扱える様に進化即ち適応をさせている。時間切れを期待しない方がいい」

「何てこった……」

「そんな……」

 

 アナザーウォッチとライドウォッチの力が組み合わさり、凶悪な存在へ進化したアナザーG4。

 

「──ウォズ、アナザーG4を倒したら何とかなる?」

「分からないが……少なくとも女王蟻が居なくなればこれ以上アンノウンが増えることは無い」

「じゃあアナザーG4を倒して、アギトの力を取り戻さないとね」

「容易いことじゃない。アナザーG4はジオウⅡと同じ未来を予知する力がある。そこに、アギトの力で超人的な感覚も備えている」

「──確かにあれは厄介だったな」

 

 中身は違うが、ゲイツはドライブアーマーで高速戦闘を仕掛け、全て見切られアギトに返り討ちにされた苦い記憶を思い出す。

 

「私に……」

 

 皆の視線がツクヨミに集まる。

 

「私に任せて!」

 

 

 

 

「オオオオオオオ!」

「があっ!」

 

 アナザーG4が一般市民の頭を鷲掴みにし、そのまま素手で砕こうとする。周囲では、同じアントロードたちが人々を蹂躙し、阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっていた。

 

「やめろ!」

 

 大量のアントロードたちに向かって叫ぶのはソウゴ。ソウゴの声に反応し、アナザーG4はそちらを向くと、他のアントロードたちの目も集中する。

 

「何て数だ……!」

「これ程とは……!」

 

 想像を絶する数に、ゲイツとウォズは戦慄する。

 

「アギトの力、取り戻すよ!」

 

 各人がドライバーを装着し、ライドウォッチを出す。

 

『変身!』

 

 ソウゴはジオウⅡ。ゲイツはゲイツリバイブ剛烈に。ウォズはフューチャーリングシノビへ変身する。

 

「オオオオオオ!」

 

 アナザーG4は市民をゴミの様に放り棄て、ジオウⅡらを排除すべき敵と認識すると、咆哮を上げてアントロードたちをけしかける。

 ジオウⅡたちとアントロードたち。三対無数という圧倒的な数の差の乱戦が始めった。

 

 

 

 

「くっ! 一旦後退だ!」

 

 尾室は、暴れるアントロードたちを何とか撃破しようと指示を飛ばしていたが、数で上回るアントロードたちに次々とG3が戦闘不能に追い込まれていく。

 襲撃のせいで数が減っていたこともあって、今では動けるG3は半数しか居ない。

 ここで引けば一般市民に害が及ぶ。だからといって自分たちが全滅すれば、それも一般市民にアントロードたちの魔の手が伸びることを意味する。

 苦戦するG3たち。その背に絶望が見える。終わりの見えない戦いに心が折れ掛けているのが分かる。

 

(どうすれば、どうすればいい……!)

 

 隊長である尾室にも、その絶望に呑まれそうになったとき──響き渡るサイレン音。それは、G3専用バイク、ガードチェイサーのもの。

 全てのG3はこの場所に集結している筈。ならば誰が乗っているのか。

 

「あっ」

 

 ガードチェイサーが近付く。ぼやけていた輪郭がはっきりとし出す。

 

「ああ」

 

 もっと近付く。尾室は段々と絶望が晴れていくのを感じた。

 

「ああああ!」

 

 ガードチェイサーが着く。降り立ったのはG3だが、装甲が増し、青一色に染め上げられた姿をしており、左肩には『G3-X』の刻印。

 

「G3-Xだ……」

「G3-X!」

 

 誰かがその名を呼ぶ。G3-XはG3を強化したもの。しかし、そんなことよりも重要なことがある。それを誰が着ているのか。答えは一つしか無い。警察の中でG3-Xを使いこなせるのは唯一人。

 

「無事ですか! 尾室さん!」

「氷川さん……!」

 

 尾室は思わず泣きそうな声を上げる。

 

「本物? 本物の氷川誠!?」

「G3-Xの氷川誠だ!」

 

 G3ユニットに関わる者、否、警察という組織に属する者ならば氷川誠の名を知らない者は存在しない。

 

「ど、どうしてここに!」

「アンノウンが出たのに、出撃しない筈が無いです!」

 

 階級からして既に前線に出る必要など無いのに、持ち前の純粋さで躊躇することなく自分から危険地帯へと飛び込んでいく。

 新たな存在に危機感を覚えたのか、アントロードの何体かがG3-Xに飛び掛かってくる。

 

「はっ!」

 

 G3-Xは正拳でアントロードの顔を打ち抜き、中段蹴りで蹴り飛ばし、胸部に連続で拳を叩き込むなどをして、襲い掛かってきたアントロードたちを薙ぎ倒す。

 

「す、凄い!」

 

 苦戦を強いられていたアントロードたちをあっさりと返り討ちにするG3-Xに、誰もが驚く。

 G3-Xは、ガードチェイサーの後部座席に置いてあるアタッシュケースに番号を打ち込む。

 

『解除シマス』

 

 アタッシュケースは二つ折りされたガトリング式機銃であり、暗証番号でロックを解除したことでアタッシュモードからガトリングモードへと組み直される。

 GX-05ケルベロス。G3-X専用の武器である。

 アントロードたちの大群に銃口を向け、引き金を引く。ケルベロスから吐き出される秒間三十発の特殊徹甲弾。

 それを浴びせられたアントロードたちは耐え切れず、爆散する。

 いとも簡単にアントロードたちを撃破してみせたG3-X。

 その雄姿にG3たちの萎えかけていた、失いかけていた戦意と正義が蘇る。

 

「うおおおおおお!」

 

 G3の一人が腕に装着した超高周波ブレード── GS-03デストロイヤーでアントロードの一体を斬り付ける。

 

「はああっ!」

 

 また別のG3が専用銃に追加したグレネードランチャー──GGー02 サラマンダーでアントロードたちを纏めて粉々にする。

 氷川誠という英雄的存在によって、G3たちは息を吹き返しアントロードたちを押し返していく。

 

 

 

 

『つめ連斬!』

『一撃カマーン!』

 

 ゲイツリバイブ疾風が上空から爪の形をしたエネルギーを降らし、地上では分身したウォズがアントロードたちを斬り裂いていく。

 天地からの挟撃に多くのアントロードたちが撃破されるが、それでもまだ半数以上残っている。

 

『キング! ギリギリスラッシュ!』

 

 サイキョージカンギレードによる光の巨大刃によってアントロードたちが一撃で屠られていく。ジオウⅡの周囲に開かれる空間。しかし、すぐにそれを埋める様にアントロードたちが押し寄せてくる。

 

「──ゲイツ!」

 

 ジオウⅡがゲイツリバイブに向かって叫ぶ。ゲイツリバイブは、自分に向かって飛んで来るミサイルを見て回避する為に急いで下降する。それを見越しての二発目がゲイツリバイブを狙っていた。

 

「何! ぐあっ!」

 

 空中で爆撃されるゲイツリバイブ。

 

「ゲイツ君! はっ!」

 

 ゲイツリバイブの撃破と同時に三発目がゲイツリバイブに気を取られていたウォズの足元に着弾する。

 

「ゲイツ! ウォズ! でぃやああああああ!」

 

 大剣を振り回し、纏わりつくアントロードたちを払い除けていく。目指すはアントロードたちの奥に居るアナザーG4。

 

「はああああ!」

 

 アナザーG4の辿り着くとその頭目掛けてサイキョージカンギレードを振り下ろす。だが、それを交差させたフレイムセイバーとストームハルバードによって受け止められた。

 

「何! ぐっ!」

 

 防御直後にアナザーG4の前蹴りがジオウⅡの腹に突き刺さる。

 後退させられるジオウⅡ。すると、アントロードたちがジオウⅡの手足にしがみつき、動けなくする。

 

「くっ! 離せ!」

 

 力ならジオウⅡが上だが、腕一本にも三、四体もアントロードがしがみつくと動かせなくなる。

 

「ハァァァァァ……」

 

 アナザーG4の呼気と共に、足元に金色の紋章が浮かび上がる。左右対称の六本角、アギトの紋章であった。

 アギトの紋章が、アナザーG4の両足に吸い込まれる。

 アナザーG4は跳躍し、空中で右足を出して蹴りの体勢となると、動けないジオウⅡに向かって滑空する。

 直撃する。ジオウⅡ自身もそう思った時、アナザーG4の横っ腹が爆発し、真横に吹っ飛んでいく。

 更なる爆発がジオウⅡにしがみついているアントロードたちにも起こり、拘束が緩まるとジオウⅡは一気にアントロードたちを引き剥がす。

 

「手伝いに来たよ!」

 

 現れたのは、サラマンダーを構えるG3。その声は翔一のものであった。

 不意を衝かれた一撃でよろめくアナザーG4、チャンスは今しかない。

 

「ツクヨミ!」

「分かった!」

「ツクヨミちゃん!?」

 

 姿を隠していたツクヨミが現れ、アナザーG4に向けて手を伸ばす。

 初めて自分の意思で力を使う。仲間の為に。

 

「今だ! 狙って!」

「──ああ!」

 

 ジオウⅡに言われ、何をするか分からないままだったが、翔一はグレネードランチャーから弾を放つ。

 ジオウⅡも駆けながらジクウドライバーを回転させる。

 

『トゥワイスタイムブレーク!』

 

 立ち上がったアナザーG4は、迫ってくる弾とジオウⅡを見ると、弾の軌跡を予知する。

 タイミングを合わせて弾を弾き、それをジオウⅡに当てる。

 それがアナザーG4の予知した上での行動。

 構えるアナザーG4。

 直後、体が爆発を起こし、いつの間にか目の前にいたジオウⅡの金とマゼンタの色を宿した拳で顔を殴り飛ばされていた。

 その威力でアナザーG4の体内からアギトライドウォッチが飛び出し、ジオウⅡの足元に転がっていく。

 アナザーG4の目は赤に、ベルトもアギトのものでは無くなる。

 

「──出来た!」

 

 混乱するアナザーG4。ツクヨミは噛み締める様に自分の掌を見る。

 相手が未来を予知するならば、それに対応出来なくすればいい。ツクヨミは、アナザーG4の時間を見事に停めてみせた。

 自分の意志で力を操ってみせたツクヨミ。しかし、それがアナザーG4の逆鱗に触れる。

 

「オオオオオ!」

 

 アナザーG4が叫ぶと、アントロードたちの何体かがツクヨミに向かって行く。

 

「ツクヨミ!」

「私のことはいいから! ソウゴたちはアナザーライダーを!」

 

 ツクヨミはアントロードたちを引き付けながら、この場から離れていく。

 

 

 

 

「はあ……はあ……!」

 

 時間停止とファイズフォンXで何とかアントロードたちから逃れていたツクヨミであったが、体力が限界を迎えようとしていた。

 まだ慣れない力のせいで、必要以上に体力が削られる。

 

(どうにかしないと……!)

 

 曲がり角を曲がった時、向こうから来た人物と接触してしまう。転びそうになるが咄嗟に手を掴まれたおかげで転倒せずに済んだ。

 ツクヨミの手を掴んでいるのは、茶髪のやや近寄りがたい雰囲気を出している男であり、その手にリードが握られ、先には犬が繋がれている。

 

「気を付けろ」

「そ、それよりも早くここから──」

 

 逃げて、という暇も無く追いかけてきたアントロードたちが現れる。アントロードたちの姿を見て、男は怯える所かその目を鋭くさせる。

 

「──こいつを頼む」

「え!? ちょっと!」

 

 ツクヨミに犬のリードを渡すと、男はアントロードたちの方に向かって行く。

 

「危険よ! 貴方の命が──!」

「安心しろ」

 

 焦るツクヨミに、男は静かな声を掛ける。

 

「俺は不死身だ」

 

 男は眼前で腕を交差し、叫ぶ。

 

「変身!」

 

 ツクヨミは、男に重なる様にして緑色の甲虫を思わせるライダーが重なり合わさっていくのを見た。

 

「グアォォォォォォ!」

 

 

 

『ひれ伏せ! 我こそは仮面ライダージオウトリニティ! 大魔王たるジオウとその家臣ゲイツ! ウォズ! 三位一体となりて未来を創出する時の王者である!』

 

 アナザーG4からアギトの力を取り返し、翔一をアギトに変身させるとジオウⅡは三人の力を一つとしたジオウトリニティとなる。

 その途端、いつものようにウォズが祝福の言葉を挙げる。

 

「面白いなぁ、君たち。俺も負けてられないな!」

 

 アギトがベルトの両端を押す。両肩の装甲が変わり、フレイムセイバーとストームハルバードがその手に握られる。

 ジオウと同じくアギトトリニティフォームと化してみせた。

 その姿を見て、ウォズは再び声を張り上げる。

 

『祝え! ジオウトリニティとアギトトリニティフォーム! 三位一体と三位一体! 合わせて六位一体の力が!』

「もういいでしょ」

『ダメだ!』

「ええ……」

『三位一体と三位一体! 合わせて六位一体の力が未来を創造し、進化の道筋を示す為に今ここに降臨する! ──では我が魔王、蟻の駆除といこう』

『──恥ずかしいから一人の時にやれ。巻き込むな』

 

 言い終えるとスッキリとしたウォズに、ゲイツは心底嫌そうな声を掛ける。

 

『それにトリニティになったが、どうするんだ? 奴の未来予知にはジオウしか対応出来ないぞ?』

『それなら問題無い。もう、あのアナザーG4は未来予知どころかまともに戦うことすら出来ない』

「どういうこと?」

『兵隊蟻がいくら死んでも代わりはいる。だが、女王蟻はただ一匹だけ。決して死ぬことを許されない。死ぬことは群れの全滅に繋がるからね。──今のアナザーG4は命懸けで戦うことは出来ないってことさ』

「それなら、いける気がする!」

 

 アナザーG4の強みは死を恐れないアントロードたちが使ってこそ。死ぬことが出来ないクイーンアントロードでは、その能力を十全に使えない。

 その証拠に、アナザーG4はジリジリと後ろに下がりこの場からに逃走しようとしている。

 ジオウトリニティたちが自分を見ていることに気付き、アントロードたちを動かして壁とするアナザーG4。

 しかし──

 

『キング! ギリギリスラッシュ!』

「はあっ!」

 

 サイキョージカンギレードの光刃が、アギトが振り抜いたことで発生する灼熱の竜巻がその壁を一撃で破壊してみせた。

 ついに背を向けて逃亡し出すアナザーG4。

 

『フィニッシュタァァイム! ジオウ! ゲイツ! ウォズ!』

 

 ジオウトリニティは、トリニティライドウォッチのスイッチを押しドライバーを回転。アギトは、額の一対の角を展開させ、六本角となると大地にアギトの紋章を浮かび上がらせ、その力を両足に取り込む。

 共に跳躍する二人のトリニティ。

 

『トリニティ! タイムブレーク! バースト! エクスプロージョン!』

 

 ジオウ、ゲイツ、ウォズの幻影がジオウトリニティと重なり、三色の光を放ちながら両足を突き出したアギトと一緒にアナザーG4の背に向かって急降下。

 三位一体にして六つの力をアナザーG4へ炸裂させ、地面に叩き付ける。

 生じる爆発の中でジオウトリニティたちは見た。アナザーG4の体から排出されたアナザーG4ウォッチが壊れるのを。

 アントロードたちを統率していたアナザーG4は倒した。だが、その余韻を味わうことなくアントロードたちがジオウトリニティたちを取り囲む。

 

「女王蟻を倒したら全滅する──って訳じゃないみたい」

『まあ、そう都合よくはいかないね』

『まだ大分残っているな』

 

 アントロードたちの残党が、ジオウトリニティらを襲い掛かろうとした時──

 激しい銃撃音と共にアントロードたちが爆散していく。

 現れるのはG3たちを引き連れたG3-X。

 

「津上さん!?」

「あ、氷川さん」

「帰国していたんですか!? それならちゃんと連絡を──」

「え? 入れましたよ、ちゃんと。見てないんですか? あー氷川さんはおっちょこちょいだからなー」

「誰がおっちょこちょいですか! 仕事が忙しくて確認出来なかっただけです!」

「まあ、そういうことにしておきますね」

「だから──」

「無駄話なら後にしろ」

 

 声を共に跳躍してきた緑の仮面ライダーが、アントロードの肩にかかと落としを決める。踵からは鋭い爪が伸びており、それがアントロードの心臓を背中側から貫いていた。

 もう片方の足でアントロードの胸を蹴り付け、一回転して着地する緑のライダー。蹴り飛ばされたアントロードは爆発する。

 

「葦原さん!」

「久しぶりだな、津上」

「はい! お久しぶりです!」

 

 仮面ライダーギルスこと葦原亮は、仮面の下で微笑を浮かべる。

 

「ソウゴ! ゲイツ! ウォズ! 無事!?」

「ツクヨミ!」

 

 ギルスの後ろからツクヨミが無事な姿を見せる。

 まだ数はアントロードたちが上回っている。だが、この場に揃った仮面ライダーたち。そして、その胸の中で高まっていく気持ちが負ける気を消し去る。

 

「何かいける気する!」

 

 最後の戦い。誰が勝ったなど言うまでも無い。

 

 

 

 

 

 

「はあ……はあ……」

 

 傷だらけのクイーンアントロードが、地面の中から這い出てくる。

 あの一瞬、地面を掘り何とか逃れることが出来た。

 体力はほぼ限界。周りにアントロードたちも居ない。

 人間にここまでの追い詰められたことに、クイーンアントロードは復讐の炎を燃やす。

 傷を癒し、いずれアントロードたちも増やして逆襲することが、彼女の目的となった。

 ガサゴソと何かが歩いてくる音。反射的にそちらを見る。

 傷だらけの数体のアントロードたちが、こちらに向かって来ていた。

 まだ兵が生き残っていることを喜ぶクイーンアントロードであったが、すぐに異変に気付く。

 爪や牙を鳴らして近付くアントロードたち。明らかに殺意に満ちていた。

 クイーンアントロードは気付かない。アントロードたち全員の触覚が破壊されており、敵味方の区別が付かなくなっていることに。そして、アギトライドウォッチを埋め込まれたことで、クイーンアントロードがアギトの力の残り香を放っていることに。

 最期の悲鳴。誰がどうなったかは言うまでも無い。

 




アナザーG4
身長:198.0cm
体重:187.0kg
特色/能力:未来予知/使用者の命を奪う

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  • IFゲイツ、マジェスティ

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