仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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最後にちょっとアンケートを入れてみました。


アナザー歌舞鬼&アナザー斬鬼2019(後編)

「あれが魔化魍なのかな?」

 

 ハサミと化した腕をカチカチと鳴らす異形の男女を見て、ウォズが二人に尋ねる。

 

「魔化魍を知っているんですか?」

 

 ウォズは、逢魔降臨暦の中で鬼は清めの音によって魔化魍を祓うというのを知識として持っているが、実物はどんなものかは知らない。

 魔化魍についても、古い伝承などにある妖怪の名を冠した怪物であり、自然に満ちた負の力が土塊に宿って誕生する異物であるとしか知らない。

 

「あれは童子と姫だ」

「童子に姫?」

 

 アナザー斬鬼の答えにウォズは聞き返すことで詳細を得ようとする。

 

「魔化魍の親みたいなもんです。餌を運んだり、魔化魍の力が弱いときに守ったりするのが役目っス」

「あの姿……バケガニか」

 

 童子・姫の役割と知ると同時に、退治すべき魔化魍についても知る。

 バケガニの童子と姫は、烈雷と烈斬を構える轟鬼たちを警戒しながらじりじりと横に移動していく。

 最初の狙いを無手のウォズに定めたらしく、童子たちの移動はウォズに近付くものであった。

 

「なるべく素手で触るな。奴らは体から溶解性の泡を出す」

「流石は年季の入った鬼だ。参考にさせて貰おう」

 

 魔化魍に関する知識が豊富故に事前に戦い方を教えてくれる。ウォズは戦いの中では参謀に近い立ち位置に居るので、戦いの助言をされることに新鮮味を感じていた。

 

「ちょっと痛いよ」

 

 童子がハサミを下から振り上げる。ハサミが川原の石を掬い上げ、大小様々な石礫をウォズに向けて放った。

 生身の人間ならば、骨が砕ける速度を得た礫。しかし、ウォズは迫ってくるそれらを両手で叩き落していく。

 石礫はウォズに直撃せず、全て叩き落とされた。だが、その直後に姫がハサミを振り上げて飛び掛かって来ていた。更には、アナザー斬鬼が言っていた溶解性の泡をその身に纏いながら。

 

「ちょっと熱いよ」

 

 石を払い終えた直後で体勢が整っていないウォズへの奇襲。しかし──

 

『ジカンデスピア!』

 

 ウォズのビヨンドライバーから『ヤリ』の文字が飛び出し、それが言葉通りに槍へと変化する。

 

「えっ」

 

 ウォズと姫との間に突如現れた槍。急停止など出来ず姫は自分に向けられたジカンデスピアの穂先に自ら突っ込み、腹部を貫かれる。

 

「あっ」

 

 血の代わりに白い体液が穂先と傷口の間から流れる。プルプルと震えるハサミで刺さったジカンデスピアを抜こうとするが、それよりも早くウォズがジカンデスピアを引き抜いてしまった。

 

「あう」

『ヤリスギ!』

 

 ウォズの行為を咎めるかの様にジカンデスピアがヤリモードであることを示す音声を鳴らす。

 

「やるな」

「やりますね」

 

 轟鬼とアナザー斬鬼は、ウォズの戦い方に感心していた。童子・姫の情報を得てすぐに先程の戦法を思い付いたのだろう。わざと懐に誘い込んでのカウンター。見事に決まって姫に重傷を与えた。

 姫が傷を負い、動揺を見せる童子。僅かな間、轟鬼たちから視線を外してしまった。その隙を見逃す程、熟練の鬼たちは甘くない。

 

「はっ!」

 

 童子に向かって、アナザー斬鬼が跳ぶ。十メートル近く離れた距離を助走も無しに。

 跳躍と共に烈斬を上段に構え、着地よりも早く童子に振り下ろす。

 間一髪それに気付いた童子は、ハサミを掲げて烈斬の刃を防御する。ハサミの殻半ばまで烈斬が食い込むが、それ以上刃が進むまない。

 ギリギリの所で防ぐことが出来た童子──と思っているだろうと予想するアナザー斬鬼。狙い通りの動きであった。

 

「はあっ!」

 

 アナザー斬鬼の背後から突如として現れる轟鬼。童子の横を通り抜けていく間際に、逆手に持った烈雷で同時の腹を裂く。

 

「ううっ」

 

 臓物ではなく白い液体が零れ出す。

 アナザー斬鬼を隠れ蓑として轟鬼による斬撃に童子は避ける間すら無かった。

 かつての師弟による息の合った連携により童子は致命傷を負う──が苦しむことは無かった。

 アナザー斬鬼は、片手を烈斬から離して拳を握る。握り締められた拳が帯電し雷の力が宿ると、柄に向けて鉄槌打ちを放った。

 食い込んだ刃に加わる鬼の力と雷の力。ハサミはそれによって完全に切断され、その下にある童子の額に刃が埋まる。そして烈斬を伝わって流し込まれる雷。

 童子は体を仰け反らせた後、爆散する。散った後に残るのは、舞う木の葉と盛られた土塊だけであった。

 師弟連携で難なく童子を倒される。そして、ウォズの方も決着が迫っていた。

 

『ビヨンド・ザ・タイム!』

 

 ミライドウォッチが挿し込まれたレバーを素早く引いて倒す。ビヨンドライバーからキューブ型のエネルギーが放たれた。

 迫ってきたそれを両腕で咄嗟にガードする姫。しかし、キューブは姫を通り抜けて背後で止まる。時計の文字盤が描かれたそれは、縦、横、斜めと目まぐるしく回転していた。

 

『タイムエクスプロージョン!』

 

 ウォズが跳び上がる。空中で姫に背を向けた体勢になり、そこから更に体を捻り、正面を向こうとする動きに合わせて右脚を振るう。

 現れた『キック』の文字がウォズの回転に同調する。

 

「はああああああ!」

 

 姫を再び正面に捉えると共に炸裂する後ろ回し蹴り。『キック』の文字を足裏に収めた蹴りが、姫をキューブの中に叩き込む。

 一瞬の時間の空白を置いた後、キューブは内に閉じ込めた姫ごと爆発し、姫を原型も跡形も残さずに爆散させた。

 結果だけ見れば、苦戦も無く童子・姫を倒したウォズたち。

 

「さて、倒したのはいいが……」

「肝心の魔化魍はまだ倒せていませんからね」

「気を抜くな。童子たちが倒されたことが分かったら、自分で餌を探し始めるかもしれん」

 

 だが、本命である魔化魍のバケガニは倒せていない。それを倒さなければ本当の意味で鬼の仕事を果たしたとは言えない。

 チャポン、という水音。咄嗟に川を見るウォズたち。川には水紋が広がっていた。

 水紋が広がっていく様を黙って見続ける三人。沈黙は水紋が消えるまで続く。

 川面を走る水紋が消えかけた時、川の中から何が飛び出す。川面から跳ねたのは川魚。銀色の体に太陽の光が反射させた後、川の中に戻り水紋が広がる。

 ウォズは張り詰めた緊張が緩むのを感じた。どうやら思い過ごしであったらしい。

 そう思って轟鬼たちを見る。二人は張り詰めた空気を維持したまま川の方を睨む様に見ていた。

 ウォズはもう一度川を見る。先程と同じく水が穏やかに流れ──

 

「うん?」

 

 川面に広がる二つの水紋。その水紋の中心には黒い楕円形の物体。それが何なのかウォズが凝視した時、黒い楕円形からも視線を感じ取る。

 

「まさか──」

「来るッスよ!」

 

 轟鬼の言葉の直後、爆薬でも仕掛けられていたかの様に川の水が噴き上がる。

 建付けの悪い扉を開けた時の様なギギギギという音。

 薄緑色の甲殻。赤い巨大なハサミ。鉄骨よりも太い四本の脚。蠢く触覚と無機質な黒目。

 

「これがバケガニか……」

 

 言葉通り化け物の様な蟹であった。見上げる程の体格は、軽く見積もっても七メートルは超えている。

 川から上がってきたバケガニは、口部分にある左右にある顎をカシャカシャと動かす。その姿には嫌悪を覚えた。

 

「一体何を食べたらここまで大きくなるのやら」

 

 ウォズからしてみれば軽口のつもりであったが、それを聞いた轟鬼とアナザー斬鬼は口を閉ざし、重苦しい沈黙を放つ。

 

「──そういうことか」

 

 沈黙で察せることが出来た。これぐらいの巨体を生み出すなら、餌もそれなりに大きなものが必要となる。そして、こういう手合の餌はいつだってどういうものか決まっている。二人は答えないが恐らくは餌となったのは人間なのだろう。

 目の前の巨体を生み出す為にどれ程の数の人間が犠牲になったのか。ベテランの轟鬼たちには、きっと一目でそれが分かった筈である。

 

「なら尚のこと倒さなければならない」

 

 敬愛する彼の魔王は、民を傷つけられることを嫌う。ここに居ればきっとバケガニに怒りを覚えるだろう。王の怒りは、我が怒りも同然。不在の王に変わってこのバケガニに裁きを下さなければならない。

 黒光りするバケガニの目に轟鬼たちの姿が映り込んだ瞬間、バケガニのハサミが動く。

 轟鬼たちを薙ぎ払う為のハサミの大振り。直撃すれば上半身が悲惨なことになるだろう。

 ウォズは身を低くして躱し、轟鬼たちは跳躍して躱す。

 一撃目を空振りしたバケガニ。今度はもう一本のハサミでしゃがんだ体勢のウォズを狙う。

 真紅のハサミによる突き。閉じられた先端がウォズを穿つ為に振り下ろされる。

 ジカンデスピアの穂先で先端を受け止めるウォズ。

 

「くっ!」

 

 だが、バケガニの攻撃は想像以上に重かった。受け止めウォズの両足が地面にめり込んでいる。

 何とかして押し返そうとした途端、閉じられていたハサミが開く。

 急に引かれたせいで前のめりになるウォズ。それを狙って左右からウォズを挟み込もうとするバケガニの凶器。

 

「たあっ!」

「はあっ!」

 

 轟鬼たちが側面からバケガニの脚を斬り付ける。硬い甲殻を切断するまでは至らなかったが、脚二本が内側に入り込む様に折れたことでバケガニの体が片側に傾く。その結果、ウォズを挟もうとしていたハサミは真上に上がり、ウォズの頭上で勢い良く閉じられた。

 

「大丈夫ですか!」

「感謝する!」

 

 真上に上がったハサミはすぐに振り下ろされるが、その時にはウォズは既に間合いの外にいた。

 アナザー斬鬼はバケガニの背中に乗り、その甲殻を烈斬で斬る。轟鬼は懐に潜り込み、ハサミが届かない様にすると、バケガニの腹を烈雷で斬り付けていく。

 

『デカイ! ハカイ! ゴーカイ!』

『フューチャーリングキカイ! キカイ!』

 

 キカイミライドウォッチで仮面ライダーキカイの力を宿したウォズ。変化したウォズにバケガニは轟鬼たちを何とかしようともがきつつ、口から泡を吐き出す。

 泡の射線上から移動するウォズ。外れた泡が地面にかかると、草、石、土が溶け始め原形を失う。

 童子・姫と同じ溶解性の泡を吐き掛けてくるバケガニ。しかし、ウォズにとっては脅威では無い。

 

『ビヨンド・ザ・タイム!』

『フルメタルブレーク!』

 

 ウォズの両肩からチェーンで繋がれたウィンチが発射される。二つのウィンチはバケガニの顔の横を通り過ぎていくと軌道を変えて折り返してくる。そのままバケガニの顔に何重にも巻き付き、溶解性の泡を吐けない状態にした。

 

「ふん!」

 

 バケガニウィンチを振り解こうとハサミによる切断を試みるが、ウィンチと繋がる鎖はびくともしない。ならばと繋がった先に立つウォズをウィンチごと振り回そうとするが、フューチャーリングキカイで得た圧倒的剛力がウォズを地面に根付かせたように不動とさせ、バケガニの力でも揺るがない。

 相手の注目がウォズに集中したこの瞬間を好機と見て、二人の鬼は動く。

 轟鬼は腹部中央に装着した弦が張られたバックル──音撃震・雷轟を烈雷の側面に合体させる。

 刃部分が左右に展開し、音撃を放つ為の準備が整う。

 そして、アナザー斬鬼もまたバケガニの背にて音撃を放とうとする。バックルに収められた弦。それを烈斬にセット。本来ならば専用の音撃震が必要な筈だが、姿は異なれば斬鬼であうことは変わりなく、無理矢理烈斬を音撃モードにする。

 

「ふん!」

「はああ!」

 

 音撃弦の先端をバケガニに突き刺す二人の鬼。そこから繰り出すは清めの音。

 

『音撃斬!』

 

 雷電激震

 雷電斬震

 

 烈雷、烈斬に張られた弦がかき鳴らされる。

 ウォズはその音を聞いた時、初めて驚いた。清めの音というには荒々しく、騒々しい。全てを周りの音を呑み込む様な大音量。だが、荒ぶる魔化魍を退治するならばこれ程相応しい音は無いとも思えた。

 二つの音撃が重なり合い、バケガニを蹂躙する様に清めていく。

 音撃に苦しみ、鬼を振り払おうとするがウォズの力がそれを制する。三つの力がバケガニを完全に封じていた。

 もがき続けるバケガニであったが、その抵抗も徐々に弱まっていく。あとひと押しと感じたその時──

 バケガニの脚から力が抜け、腹の下にいた轟鬼を押し潰した。

 

「しまった!」

 

 故意ではない不意の攻撃、というよりも事故。トン単位はあるだろうバケガニの全重量を受けた轟鬼も無事では済まないとウォズはその時思う。

 だが、弟子であった筈の轟鬼が押し潰されたというのにアナザー斬鬼の音撃の手は緩まない。

 

(冷徹となり魔化魍を祓う。それが彼の鬼としての生き方なのか?)

 

 とウォズが考えたとき、バケガニの下から何かが聞こえてくる。それは間違いなく音撃弦をかき鳴らす音。

 

「おおおおおおおお!」

 

 倒れ伏したバケガニの巨体が持ち上げられていく。潰された筈の轟鬼が突き刺した烈雷でバケガニを押し上げながら、更に演奏も続けていた。

 アナザー斬鬼が音撃を続けていた理由、なんてことはない彼は轟鬼があれしきのことで負ける訳が無いと信じていただけだ。信じていたからこそ、音撃の手を緩めることは無かった。

 

「──成程。見事なまでの師弟愛! 及ばずながらその演奏に華を添えさせて貰おう!」

 

 ウォズが足元にジカンデスピアを突き刺す。そこから大地に流し込まれる金色のエネルギー。変化はすぐに起きた。

 川辺に転がる大小の岩。そこに金色のエネルギーが流し込まれと、岩の一部が丸型に凹む。

 その丸型から発せられるは、轟鬼たちが鳴らす清めの音。フューチャーリングキカイのフルメタルブレークによって周辺の岩を改造し、即席のスピーカーへ変える。

 スピーカーは轟鬼たちの音を広い、増幅させ、放つ。

 直接打ち込まれる音撃。四方から放たれる音撃。逃げ場の無い清めの音がバケガニの力を奪っていく。

 

「祝え! 死して尚断たれることのない師弟の絆を!」

 

 あれ程苦心していた祝福の言葉が、ごく自然に出てくる。この祝福を以て、自分の迷いが吹っ切れたことをウォズは理解した。

 その祝福の言葉を受け、バケガニの背で音撃を放っているアナザー斬鬼に変化が起こる。異形の体が崩れ始め、その下から轟鬼と似た鬼の姿が現れる。

 アナザーではなく真の姿の斬鬼へと変身していた。

 加速する音撃。

 

 雷

  轟鬼

  斬鬼  

 巨大 

  師弟協演

   破壊

      豪快

 祝福

 

 最後の弦一本を弾き終えたとき、バケガニは爆散し、元の土塊へと還る。

 バケガニを退治し終えた斬鬼に、轟鬼が駆け寄る。

 

「ザンキさん! それ……」

「ん? ああ、いつの間にか元に戻ったみたいだな」

 

 アナザーライダーから鬼としての斬鬼の姿に戻ったことに、斬鬼は特に驚いた様子を見せない。

 

「──あの、やっぱりザンキさんと一緒に戦うのは最高でした!」

 

 轟鬼が斬鬼に頭を勢い良く下げる。

 

「あれ、まだやっているのか?」

「あれ?」

「ほら、魔化魍を祓った後にしてただろう?」

「ああ、あれッスか! 今もやってます!」

 

 そう言うと轟鬼は烈雷をかき鳴らし始める。若手の頃に、まだ自信が無かった轟鬼が魔化魍を祓った後の自然を自分なりに清める目的で始めたもの。

 いつしか彼にとって魔化魍を清めた後の習慣となっていた。

 轟鬼が鳴らし始めたのを見て、斬鬼もまた弦を鳴らし始める。

 師弟によるセッション。ウォズはそれを黙って眺めていた。

 

 演奏をしながら斬鬼が轟鬼に問う

 

「トドロキ、俺は良い師匠だったか?」

「はい! 勿論です! 俺にとっての師匠はザンキさんだけです!」

「俺が良い師匠であれたのは、良い弟子に巡り会えたからだ」

「え!」

「こいつを立派な一人前にしようっていう気持ちが、きっと俺を良い師匠に育ててくれたと思う」

「そんな、俺なんて……」

「トドロキ。お前は良い弟子だった。一人前の鬼にもなった。後は良い師匠になるだけだ。じゃなきゃ勿体無い」

「ザンキさん……やっぱり、俺が師匠になる覚悟が無いから蘇って……」

「違う。ただのお節介だ」

 

 フッと斬鬼は笑いながら演奏する手を止めた。

 

「ザンキさん?」

 

 轟鬼が斬鬼を見る。斬鬼の体は薄っすら透き通り始めていた。

 

「トドロキ。自分なりに行け。お前だけの鬼の道を行け」

「ザンキさん……」

 

 轟鬼は、もう一度深々と斬鬼に頭を下げる。

 

「俺、覚悟を決めました! 頑張ります! ザンキさん! 何度も、何度も、本当にありがとうございました!」

 

 暫くの間、頭を下げ続けていた轟鬼。顔を上げたとき、そこに斬鬼の姿は無く、突き立てられた烈斬と地面に転がるウォッチだけが残されていた。

 轟鬼がウォッチを拾い上げる。そこにはアナザー斬鬼の顔では無く、仮面ライダー斬鬼の顔が浮かんでいた。

 名残を確かめる様に轟鬼は斬鬼ライドウォッチを握り締める。その時、小さな電流が起こり、ライドウォッチの中へと流れ込んでいく。

 

「──これを」

 

 轟鬼はウォズにウォッチを差し出す。

 

「いいのかい? これは師匠の形見とも言えるのに」

「いいんです。ザンキさんから貰ったものはしっかりと受け継いでいるので!」

 

 胸を張って言う轟鬼。

 

「そうか。感謝する。鬼よ」

 

 手渡されたライドウォッチ。それを見たウォズは瞠目する。

 

「これは……!」

 

 ウォズの口から驚嘆の声が洩れ出た。

 

 

 ◇

 

 

 本物のヒビキを誘い出す為に何度も姿を見せては暴れるアナザー歌舞鬼。それを止めようとするゲイツやソウゴであったが、その都度京介がアナザー歌舞鬼を守る為に妨害して来た

 ヒビキと偽っていたことへの負い目からなのか、自分の身を盾にしてでもアナザー歌舞鬼を守ろうとし、傷付く。

 こんなことでしかアナザー歌舞鬼ことツトムを守れない京介。

 ソウゴは京介に問う。何故、ヒビキを襲名出来なかったのかと。

 京介は自分が師匠であったヒビキの様に成れなかったと零す。

 どんな時でも諦めず、強くて、男らしくて、今でも京介にとって尊敬すべき人物。

 ソウゴはそれを聞いて微笑を浮かべる。ツトムもまた京介の姿を見て、同じことを言っていたと教える。

 京介がヒビキに憧れを抱いた様に、ツトムもまた同じ憧れを京介に抱いた。

 ツトムにとってのヒビキは紛れもなく京介なのである。

 そして、再び起こるアナザー歌舞鬼の襲撃。現場となった工場へと向かったソウゴたち。

 そこで、京介はアナザー歌舞鬼──ツトムと向き合って初めて本音を語る。

 ツトムが弟子入りを願った時、京介はヒビキを襲名することが出来ずに焦っていた。

 初めはツトムが弟子にすることは乗り気では無かった。

 しかし、ツトムと師弟関係を続けていく内にツトムの存在が京介の支えとなり、やがて彼を一人前の鬼へと成長させた。

 だからこそ、絶対にツトムを救うと宣誓する。

 その誓いと共に京介のポケットの中にライドウォッチが現れた。中に入っていたのは、ソウゴたちが探していた響鬼ライドウォッチ。

 遠くにいるヒビキが、京介を次のヒビキと認めた瞬間であり、彼が響鬼となる時でもある。

 

 

 ◇

 

 

『響鬼!』

 

 ライドウォッチのスイッチを起動させると、京介の額に鬼の顔飾りが浮かび上がり、紫炎で彼を包み込むと、彼を仮面ライダー響鬼へと変身させる。

 

「祝え! 新たな響鬼の誕生を!」

 

 何事もなかったかの様に現れ、祝うウォズ。

 

「ウォズ」

「もう悩みはいいの?」

「悩み? そんなものはもう捨てた。我が魔王、数々の醜態を見せてしまい申し訳ない」

「良く分からないけど、まあ、元気になったからいいや。俺たちも行こう」

 

 戦い始めた響鬼とアナザー歌舞鬼に参戦しようとするソウゴ。

 

「我が魔王、これを」

 

 ウォズからライドウォッチが手渡される。

 

「え? 何これ?」

「この戦いに相応しい、師弟の力だ」

「何のことか分からないけど──行けそうな気がする」

 

 ジオウライドウォッチを起動させ、そして新たなライドウォッチのスイッチも押す。

 

『斬鬼! 轟鬼!』

「え! 二つ!」

 

 ライドウォッチを思わず見る。顔の形は同じだが、よく見ると左右隈取の色が異なっている。

 

「一つのウォッチに二つのライダーの力だと……?」

 

 見ていたゲイツもツクヨミも驚いていた。

 

「おお! 何か凄そう!」

 

 ソウゴは無邪気に喜びながら二つのライドウォッチを挿し、変身と共にライダーアーマーを召喚する。

 

『仮面ライダージオウ!』

『アーマーターイム!』

 

 かき鳴らされる弦の音と共に中央を挟んで銅と銀色のアーマーが呼び出され、分解してジオウに装着される。

 

『斬鬼! 轟鬼!』

 

 胸に交差する弦型の胸飾り。深緑色のボディの上に右は銅色、左は銀色の装甲が付いている。額かた伸びる一本角もまた銅と銀の二色に分かれていた。

 顔面に嵌った文字は、右が『ザンキ』、左が『トドロキ』。

 右手には烈斬を一回り小さくした音撃真弦──烈斬Z。左手にはこちらまた一回り小さくし、片刃となった烈雷Zを握っている。

 

「祝えっ! 全ライダーの力を受け継ぎ、時空を超え過去と未来に知ろしめす時の王者。その名も仮面ライダージオウ斬鬼轟鬼アーマー。如何なる力を以てしても断ち切れない師弟の絆が形となった瞬間である!」

「何か絶好調だねー」

 

 声高らかに祝うウォズにジオウはある種の安心感を覚えつつ、響鬼の戦いに手を貸す。

 

「はあ!」

 

 金棒から刀に切り替えたアナザー歌舞鬼が、響鬼に斬りかかる。それを巧みに避けつつ、隙を見つければそこに撥を当てる響鬼。

 よろめくアナザー歌舞鬼であったが、すぐに口から炎を噴き出す。

 

「はあ!」

 

 走る二つの斬撃。烈斬Zと烈雷Zが炎を斬り裂く。

 

「お前、その姿──」

「話は後!」

「──ああ、そうだな!」

 

 裂けた炎を走り抜けて響鬼の撥がアナザー歌舞鬼の腹部を強打。アナザー歌舞鬼の体がくの字に曲がる。

 

「がああああ!」

 

 怒るアナザー歌舞鬼は、すると彼の前に円形で半透明の巴紋が浮かび上がる。そこに向けて金棒を打ち付けると、太鼓の音と共に巴紋型の衝撃波がジオウたちを襲う。

 

「うう!」

「くっ!」

 

 後退る程の衝撃。だが、二人の鬼──否、正確には三人の鬼はこれしきのことで怯まない。

 

「たあああ!」

 

 ジオウがアナザー歌舞鬼に烈雷Zを投げ放つ。半透明の巴紋を突き破り、アナザー歌舞鬼に刺さる。

 

「あああっ!」

 

 アナザー歌舞鬼の動きが遅くなる。この瞬間、響鬼はバックルに収まっていた音撃鼓・火炎鼓をアナザー歌舞鬼に投げ放つ。

 火炎鼓はアナザー歌舞鬼に張り付き、巨大化してアナザー歌舞鬼の動きを完全に止めた。

 響鬼が走り、ジオウもまた走り出す。

 ジオウはアナザー歌舞鬼の目の前で百八十度と回転して背を向けながら烈斬Zを烈雷Z目掛けて突き出す。烈雷Zの刃が付いていない方は溝になっており、そこに烈斬Zが滑り込み合体してツインネックギター型へと変わった。

 

『フィニッシュタァァイム』

『斬鬼! 轟鬼!』

 

 全開放されるエネルギーと共にドライバーも一回転する。

 

『音撃斬! タイムブレーク!』

 

   響鬼

 時王

   協演    双鬼

 

 繰り出される響鬼の太鼓。かき鳴らされるジオウの弦。太鼓と弦の清めの音がアナザー歌舞鬼を浄化していく。

 双撥による最後の一打。掻き上げられた弦の最後の一音。それらが重なり合った時、アナザー歌舞鬼の許容を超え、爆発を起こす。

 

 

 ◇

 

 

 アナザー歌舞鬼との戦いが終わり、ツトムは京介と和解し再び師弟関係となった。京介から響鬼ライドウォッチも譲って貰い、残りのライドウォッチは四つとなる。

 その夜、ソウゴの誕生日会が盛大に行われ、色々と吹っ切れたウォズもいつものようにソウゴを祝福する。

 そして──

 

「私が我が魔王の側に居ることこそ何よりの祝福。そして」

「そして?」

「君が最高最善の魔王となるなら、私も最高最善の臣下となることを誓おう。王は臣下を育て、臣下は王を育てる。私は今回のことでそう学んだ」

「おお、言うねぇウォズ。うん、分かった。ありがとう」

 

 かくして王と臣下は絆を深め、彼らが進む道をより強固なものとする。

 そして、次に待つライダーは……

 




アナザー歌舞鬼
身長:225.0cm
体重:165.0kg
特色/能力:鬼の力を操る。

アナザー斬鬼
身長:210.0cm
体重:161.0kg
特色/能力:鬼の力を操る

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