仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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大体一話五千文字前後を目安にして、超える様なら前後編に分けるつもりです。


アナザーメイジ2012(前編)

 ある日のソウゴたちは、ソウゴの大叔父常磐順一郎からある有名マジシャンの話を聞き、交流を深める目的も含めてそれを見に行くこととなった。

 メイジ早瀬が見せるマジックショーは常識を凌駕するものであり、ソウゴは素直にそれを楽しんだが、ツクヨミとゲイツは過去に魔法を使い仮面ライダーが存在したことから、彼をアナザーライダーではないかと疑う。

 公演が終わって早瀬を待つソウゴたち。現れた早瀬にソウゴは話でアナザーライダーかと探ろうとするが、ゲイツは強引な手段をとる。

 

「馬鹿が。聞いたところで正直に言う筈がないだろう」

 

 吐き捨てると共に、ゲイツはゲイツライドウォッチを起動させる。

 ゲイツのただならぬ気配に危険を感じたのか、早瀬はその正体を現す。

 

『仮面ライダーゲイツ!』

 

 ゲイツが仮面ライダーへと変身したと同時に、早瀬の全身を黒い波動によって包まれ、その下から異形が姿を現す。

 罅割れた琥珀色の仮面。目に当たる部分は深く窪み、その奥に白い目。仮面の下に薄らと剥き出し歯が見える。後頭部には輪が付いており、琥珀色の仮面と合わさって頭部そのものが指輪を連想させる形となっている。

 胴体も仮面と同じ罅割れた宝石の様な形をし、両肩から胸にかけて骨の手を模した外装。腹部には揃えられた歯が透けて見え、腰に巻いたベルトの中央は白骨化した人の掌のレリーフとなっている。

 右手の中指に顔を同じ形の指輪。左手は右手より一回り大きくなっており、手の形に沿う様に骨を外骨格の様に纏っていた。こちらも中指に指輪を填めている。そして、左脚から左足首にかけて、骨が尾の様に巻き付けられている。

 襤褸切れの様なマントを羽織り、マントの中心には『MAGE』。その下には『2012』の刻印があった。

 アナザーライダー──アナザーメイジは、一方的に襲い掛かってくるゲイツの姿に怯え、戦うのではなく逃げることを選択する。

 しかし、ゲイツはすぐに追い付き、逃げ腰のアナザーメイジに拳を叩き込んだ。

 

「うっ!」

 

 頬を強打されて怯んでしまうアナザーメイジ。ゲイツはそこを容赦なく蹴り付け壁に叩き付けると、アナザーメイジの肩を押さえて三度顔面を殴打、ついでと言わんばかり膝で腹を突き上げた後、地面に向けて投げる。

 最早、戦いと呼べるものではなくただの暴力であった。

 

「ううっ……」

『グラビティ』

 

 堪らずアナザーメイジは、左手の指輪をベルトの前に翳す。すると、声の後に周囲の物が細かく震え出す。

 

「ぐっ!」

 

 ゲイツの後頭部に伝わる衝撃。後ろを振り返ると、空き瓶が転がっている。その途端、周りの物が重力を無視して一斉に浮き出す。

 放置された自転車。空き缶。一斗缶。果てはドラム缶までが浮き上がり、ゲイツに向かって次々と突撃してくる。

 

『ジカンザックス! Oh! No!』

 

 取り出したジカンザックスの刃が飛んでくる物体を次々と切り落とす。

 ゲイツが他に気を取られている内に逃げ出そうとするアナザーメイジであったが、ゲイツはそれを見落さなかった。

 

『You! Me!』

 

 斧から弓へと変形したジカンザックス。それから放たれる光弾が、逃げようとするアナザーメイジを撃つ。

 

「うわっ!」

 

 背中を撃たれ、転倒するアナザーメイジ。慌てて体を起こすと、次弾を放とうとするゲイツの姿。

 

「やめてくれっ!」

『アロー』

 

 悲鳴を上げながら指輪を翳す。アナザーメイジの周囲に光で作り上げられた矢が現れ、ゲイツを狙って放たれる。

 

「チッ!」

 

 ジカンザックスを撃つのを中断し、放たれた矢を避ける。と同時に、再びアナザーメイジを狙って光弾を撃つ。

 

『バリア』

 

 空間に張り付く様に現れた光の壁がそれを阻み、アナザーメイジの代わりにその身を削る。

 ゲイツはゲイツライドウォッチを外し、ジカンザックスに填めようとし──

 

「止めてよ! ゲイツ!」

 

 ゲイツの暴挙に、ジオウへと変身したソウゴがその腕を掴んで止める。

 

「ジオウ……! 貴様!」

 

 邪魔をされ怒りを露にするゲイツ。

 

『テレポート』

 

 この隙にアナザーメイジは魔法を発動させる。アナザーメイジの周囲が歪み、歪みの中にアナザーメイジは消える。

 彼らは、アナザーメイジを逃がしてしまった。

 

 

 ◇

 

 

 アナザーライダーは即刻倒すべきだと考えるゲイツ。

 何も悪さをしていないならば倒すべきではないと考えるソウゴ。

 敵対する関係であったが、少しずつ距離が埋まっていくことに不満とも焦りとも呼べる感情を抱いていたゲイツは、この考え方の違いでソウゴと対立し独自に動くことを決めた。ソウゴもまたゲイツは違う方法でこの件を解決しようと行動し出す。

 一方でゲイツの襲われたことで自宅で心身共に疲労していた早瀬は、またゲイツに襲われることを恐れ、身を隠そうとする。

 そこに同じマジックハウスに勤める長山が尋ねてきた。長山に暫くの間、マジックショーの舞台には出ないことを告げるが、そこで長山から衝撃的な事実を知らされた。

 

「俺……お嬢さんと結婚するんです」

 

 長山が何を言っているのか、早瀬は最初理解出来なかった。尤も、それよりも前のマジックハウス『キノシタ』を畳む話からついていけなくなっていた。

 思考が回らない。相手の言葉を飲み下せない。手足が震える。汗が出る。世界が驚くほど色褪せていく。

 

「……ふざけるな」

 

 自然にその言葉が出てきた。

 六年間。六年間ずっとマジックハウス『キノシタ』の為に働いてきた。そこにはマジックハウスの経営者で恋慕の感情を寄せるお嬢さん──木ノ下香織の存在があったからである。

 何時かこの想いが伝わることを願って、尽くしてきた。しかし、それら全ては無駄だった。六年間の想いは無駄。そもそも最初から叶わぬ恋であったのだ。

 早瀬は、木ノ下香織にとって最後の希望では無かったのだ。

 蓄積された思いは全て反転し、制御出来ない憎悪、怒りへと変わる。

 

「何の為に……何の為にここまでやってきたと思ってんだぁぁぁぁぁ!」

 

 弾け、突き破られた感情のまま、早瀬はアナザーメイジへと変身する。

 

「うああああああ!」

 

 突然怪物に変身した早瀬に、長山は驚き、そして恐怖し、逃げようとする。

 

『チェイン』

 

 地面から現れる魔法の鎖が、長山を縛り付け逃さない。

 

「ううう!」

 

 憤怒の感情のまま長山へと歩み寄っていくアナザーメイジ。身を捩って逃げようとするが、鎖が緩むことは無かった。

 

「ふんっ!」

「うっ!」

 

 アナザーメイジは、左手の指輪を長山の胸に押し当てる。

 

「うわあああああ!」

 

 琥珀色の光に包まれていく長山。それに合わせ、アナザーメイジの脚に巻き付いていた骨が消える。

 光が消えると、そこにはもう一体のアナザーメイジが立っていた。顔などは同じだが、右手の爪、肩の外装、下腹部の歯と一部装飾が欠けているが、左脚には少し前のアナザーメイジと同じく骨が巻かれている。

 

「はあぁぁ……」

 

 アナザーメイジの中で次なる標的は定まっていた。木ノ下香織である。

 六年間、他人の為にアナザーライダーの力を使っていた早瀬はもう居ない。彼の箍は完全に外れてしまった。

 

 

 ◇

 

 

 暴走し、自らの仲間を増やすアナザーメイジ。それを、早瀬を探していたゲイツによって発見され、戦いへと突入する。

 二対一という不利な状況であったが、相手の戦闘経験の少なさとライダーアーマーの力によって押し返していく。

 

『Standing by Complete カイザ!』

 

 ゲイツはカイザアーマーを纏い、カイザブレイガンを転送し、二人のアナザーメイジを斬り、撃つ。

 火花を上げながら飛んでいくアナザーメイジたち。だが、彼らの反撃も過激なものとなっていく。

 

『スペシャル』

 

 アナザーメイジが揃って同じ魔法を発動させた。すると、早瀬のアナザーメイジの腹部から口がせり出し、閉じていた口を開口する。そして、長山が変身させられたアナザーメイジは、左脚に巻き付いた骨が解け、一本の長い骨の尾となる。

 開けられた口から放たれる巨大な火球。防げないと判断したゲイツは、転がってそれを回避するが、その先を狙った骨の尾が迫る。

 体を起こすと共にカイザブレイガンの光刃で斬り上げ、それを弾いてみせる。

 アナザーメイジの第二の口から再び火球を放とうとする。そうはさせまいと、ゲイツはその口目掛けてカイザブレイガンを投擲。光刃が口の奥深くへ突き刺さる。

 

「あああ!」

 

 苦鳴を上げるアナザーメイジ。それに連動し、もう一方の動きも鈍る。

 ゲイツはカイザライドウォッチを外し、召喚したジカンザックスに填める。

 

『フィニッシュタァァイム!』

『カイザ!』

 

 弓モードとなったジカンザックスのストリングを引き絞り、狙うは動きの鈍ったアナザーメイジ。

 

『ギワギワシュート!』

 

 ジカンザックスから撃たれた光弾は、アナザーメイジに着弾後に網状となって展開し、身動き出来なくする。

 

『Oh! No!』

 

 弓から斧へと変え、グリップを逆手に握り、走る。目の前に現れるχの字型の光。それに突入し、ゲイツの体そのものが光の刃と化す。

 

『ザックリカッティング!』

 

 技の名と共に貫き、斬り裂く。

 アナザーメイジたちの背後に立つゲイツは、ジカンザックスを斬り上げた構えとなっていた。

 χの紋章が浮かび、アナザーメイジが爆発する。

 爆発したアナザーメイジの跡に横たわる長山の姿を見つけ、仮面の下で驚くゲイツ。彼はもう一人のアナザーメイジを魔法で生み出した分身だと思い込んでいたのだ。

 

「お前……」

 

 自分の手で傷付けてしまったとはいえ、遂に一般人を巻き込んだアナザーメイジに怒り、そして、微かな失望を滲ませる。所詮、アナザーライダーはアナザーライダーに過ぎなかったのだ。

 ようやく刺さっていた光刃を抜いたアナザーメイジ。そこでゲイツは気付く。先程まで無かった筈の骨の尾が、アナザーメイジの左脚に巻き付いていた。

 

「アナザーライダーの力を分け与えたのか」

 

 厄介な能力である。早急に倒さなければならない相手と改めて認識する。

 刺された傷が重いのか、アナザーメイジの動きは緩慢である。

 その間にカイザショットを転送し、強烈な右の一撃をアナザーメイジの顎に撃ち込み、立てなくする。

 気絶はしていないが、満足に動けない状態となった。

 倒すべき時間は分からず、同じライダーの力も無いが、放っておけば被害が広がる。ここで動けなくなるまで叩きのめすしかない。

 ライドウォッチの力を全開にしようとしたとき、乱入者が現れる。

 

「ジオウッ!」

 

 再び入るジオウの横槍。ゲイツの苛立ちは最高潮まで高まる。

 ジオウにしてみれば、ウォズからゲイツが暴走していると聞き、駆け付けアナザーメイジが襲われている現場に出くわし反射的に動いてしまった結果である。

 両者の考え方の違いが大きなズレを生む。

 仮面の下でゲイツはジオウを睨み付けた。

 

「こいつは人を襲い始めた! それどころか力を与えて手駒にしている! それも全てお前の温さが招いた結果だ!」

 

 ゲイツはジオウを糾弾する。

 アナザーメイジが人を襲ったことにショックを受けるジオウであったが、それでも彼はゲイツのやり方に賛同出来なかった。

 

「それでも……ここまでする必要は無かったと思う!」

 

 あくまで己の信条を貫く。

 

「なら……やるしかねぇな」

 

 これ以上の会話は不要。そう判断したゲイツは構える。

 相手が本気だと分かり、ジオウも嫌々ながらも構える。

 譲れないものの為に相対する両者。

 

「二人とも止めて!」

 

 しかし、それを見つけたツクヨミが声を張り上げ、二人を止めようとする。

 ツクヨミの制止する声に張り詰めていた気が少し緩む。

 だが、これが二人、否三人にとって致命的なミスであった。

 

『チェイン』

 

 魔法陣から現れた鎖が、ジオウとゲイツを拘束する。

 

「何っ!」

「くうっ!」

 

 回復したアナザーメイジの魔法である。一方は自分を襲う者。もう一方は庇う者。だが、精神的にどん底に陥っている彼には、全てが敵にしか見えない。

 ジオウたちが動けない間に逃げ出そうとするアナザーメイジ。その前に、ファイズフォンXを銃モードにしたツクヨミが立ち塞がる。

 

「止まりなさい!」

 

 ファイズフォンXから放たれる光弾。

 

『バリア』

 

 六角形状の光の壁が空間から現れ、放たれた光弾を全て防ぐ。

 それでも撃ち続けるツクヨミ。だが、アナザーメイジはあっさりと彼女の前に立ち、ファイズフォンXを握る手を掴み上げる。

 

「邪魔だ!」

 

 ツクヨミの胸に、アナザーメイジの指輪が押し当てられると、アナザーメイジの両肩の外装が消え、ツクヨミの体は琥珀色の光に包まれる。

 光が消え、その後から現れるのは新たなアナザーメイジ。

 

「そんな……!」

「馬鹿な……! ツクヨミ!」

 

 変えられツクヨミの姿に大きな衝撃を受ける二人。

 

「やれっ!」

 

 アナザーメイジの指示に無言で頷くと──

 

『サンダー』

 

 ジオウたちに向け、無慈悲な雷を放つ。

 




最後辺りは、後の設定次第でかなり矛盾した展開になるかも。ツクヨミが特別な設定を持っていたらですけど。
まあ、アナザーブレイブの段階で設定無視をしていますから今更ですよね。
2016年でブランクを渡して、2018年に手に入る予定のライドウォッチを即入手しているので。

先にどちらが見たいですか?

  • IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
  • IFゲイツ、マジェスティ

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