ソウゴがイマジンを追って過去へ向かうと言った時、それに異を唱えてのはウォズであった。
「君はシンゴという少年を助ける為に戻ってきたのではないか?」
シンゴを放って過去へ向かうなど、言っていることとやっていることが合わない。
「そうだよ。だから、過去へ向かわないと」
「どういう意味だい?」
含みを持たせたソウゴの言葉にウォズは疑問符を浮かべる。詳細を知らない他のメンバーも同じであった。
「シンゴは──」
「恐らくこの時代の子供じゃない。そのチケットの日付が正しいのなら、2000年の一月二十九日から連れ去られてきた子供だ」
「そして、そこに居るアタルと関係している。シンゴという名には聞き覚えがあるな?」
シンゴという名を聞き、アタルは微かに目を見開いた。
「君の行方不明になった兄の名の筈だ」
「シンゴ……兄さん……」
譫言の様にアタルは言葉を洩らす。
「え、何で二人とも知っているの……?」
自分が説明する筈だったことを戦兎と照井に先回りで説明され、ソウゴは動揺する。
二人はアタルとシンゴの会話。そして、アタルの家で見たアタルの家族とシンゴが映る写真を見つけた時点で仮説として出来上がっていたという。
それを聞かされ、ソウゴは少しショックを受ける。
「ウォズ、俺ってあんまり観察力が無くて鈍いのかな……?」
「ポジティブに考えよう。我が魔王が鈍いのではなく、二人が鋭いのだと」
「喋ってないで早く行くぞ!」
マイペースなソウゴとウォズに、思わず侑斗は怒鳴ってしまうのであった。
◇
2000年。一月二十九日。
『とわの病院』と描かれた病院前にゼロライナーが停車し、中から侑斗とデネブが降りる。二人が降りるとゼロライナーは目立つので『時間の中』という名の異空間へ戻しておく。ゼロライナーに少し遅れてソウゴのタイムマジーンが到着した。
侑斗たちの背後に降り立つソウゴ。
「ここは?」
「君の生まれた日だよ」
おかしい。明らかにソウゴ一人では無い。もう一人誰かが居る。
振り返ると、病院を見上げているアタルがそこに居た。
「お前ぇぇぇ!」
「うおっ!」
侑斗はソウゴに飛び掛かり、ヘッドロックを掛ける。
「何でそいつまで連れて来たっ!」
「痛い痛い痛い痛いっ! ギブ! ギブアップ!」
ギリギリと頭蓋骨を締め上げられる痛みのせいで侑斗の詰問に答えられない。すると、締め上げる力が増し、そうなると更に答えられなくなり、悪循環に陥る。
「侑斗! そんな乱暴なことをしたら答えられない!」
そこにデネブが救いの手を出す。デネブの怪力によって侑斗からソウゴが引き離された。
「一般人をなぁ! 時間移動させることがどれだけ危険なのか分かっているのか!」
デネブに羽交い締めにされながらも、侑斗は鼻息を荒くしながらソウゴを責める。
締め付けられた部分をさすりながら、ソウゴはアタルを連れてきた訳を説明する。
「でも、あの時代に置いたままの方がもっと危ないと思うし……」
「それは──」
侑斗は咄嗟に反論出来なかった。ゼロライナーで過去へと飛ぶ際に上空から下の被害を見えた。
至る所で黒煙と炎が上がり、時折爆発が起こる。爆発や炎の側では怪人たちが蟻の様に蠢いていた。
避難させようとしても安全な場所は無く。残した戦兎たちに任せたとしても、アタルの身が保障される訳では無い。そもそも戦兎たちはその戦いの真っ只中に向かう予定なので、余計に危険が伴う。
怪人たちが存在しない過去に一緒に居た方がまだ安全だとソウゴは考えて連れてきたのだ。
侑斗は苦虫を嚙み潰したよう表情となる。過去を改変させてしまうかもしれない要素を連れ込むのは当然反対だが、ソウゴが言っていることも一理あると思ってしまった。
侑斗が落ち着いたと分かるとデネブは手を離す。
「責任以て、そいつから目を離すなよ!」
「うん。分かった」
侑斗のつんけんした態度にも、ソウゴは笑って頷く。
病院内へと入って行くソウゴたち。すると、侑斗は入ってすぐに足を止めて周囲を見回していた。
「どうしたの?」
「──いや、普通にやっているなと思っただけだ」
侑斗が当たり前のことを言うので、ソウゴは首を傾げる。
看護師たちが受付やセンターで業務をし、医者が患者に話し掛け、診察を待つ人々が長椅子に座っている。どこにでもある病院内の光景。
だからこそ侑斗は違和感を覚えた。ソウゴ知らないが、普通過去にタイムスリップをしたイマジンたちは歴史を変える為に暴れ回り、あらゆるものを破壊する。過去に降り立ったときも思ったが、そういう破壊の形跡が無く、日常が送られていた。
イマジンと何度も戦ってきた侑斗にしてみればおかしいという感想を抱く。
(歴史の改変が目的じゃないのか?)
そんなこと考えながらアタルのイマジンを探そうとした矢先──
「よし──うおっ!」
いきなり病室から出て来たアタルのイマジンと鉢合わせになる。
『……』
お互いに不意打ちで出会ってしまったせいで言葉を失うが、アタルのイマジンはクルリと背を向けた。
「今はお前らに構っている暇はねぇんだよ!」
「おい! 待て! 追うぞデネブ!」
「分かった!」
逃走するアタルのイマジン。それを追う侑斗たち。
ソウゴも追おうとするが、病室の開いたドアの前で呆然とするアタルを見て、その足が止まった。
病室に掛けられた名札は『久永香』。アタルのよく知る名──母の名前である。
恐る恐る部屋の中へと入って行くアタル。イマジンが出て来たが、室内が荒らされている様子は無い。本当に過去に跳んできてすぐに部屋から飛び出してきたのが分かった。
奥のベッドではアタルの若かりし頃の母が寝間着姿で眠っている。イマジンが出て来たせいで掛けてあったシーツが捲れ、痕跡である白い砂がベッド上に巻かれていたが、アタルの目にはそれらは入らない。彼の目に入っているのは露わになった母の大きな腹部だけ。
アタルは隣に立つソウゴに自分と母のお腹を指差すジェスチャーを見せる。そこに自分が居て、ここにも自分が居る摩訶不思議な状況。それが現実であると認めさせる様にソウゴは頷いた。
母の手は、自分の腹部に添えられていた。その手が無意識に腹を撫でる。お腹の中で産まれるその時を待つアタルと名付けられる存在をあやす様に。
アタルはずっと不安に思っていることがあった。父と母がアタルにあまり構えないのは、行方不明になった兄が理由なのではなく、最初から自分への愛情が無かったのではないかと。愛していなから、放っておいたのではないかと。
「お母さん……」
過去の自分を撫でるその手を見て、それは思い過ごしであったと知る。
アタルが過去の自分と対面している中、別の場所では侑斗たちが逃げたイマジンを捕まえていた。
「離せっての! お前らの相手をしている余裕なんてねぇんだよ!」
「何が目的でこの時間に来た! 歴史の改変がお前らの目的だろうが!」
「うるせえ! こっちにはこっちの事情があるんだよ!」
「だからそれを話せって言っているんだろうが!」
暴れるイマジンを侑斗とデネブは力尽く押さえ付けようとした。
「痛っ! いたたたたたた! 腕が! 腕が!」
突然喚き始め、デネブが掴んでいる腕の痛みを訴えるイマジン。
「あ、ごめん!」
優しい性格な故、デネブはイマジンから手を離してしまう。
「おい! 馬鹿!」
明らかに演技だというのに騙されたデネブに、侑斗は声を上げるが既に手遅れ。人間一人の力では、イマジンの力に対抗することは出来ず、力負けをして振り解かれてしまう。
イマジンは、二人から素早く距離を取り、両腕のブレードを見せつける様に構える。侑斗も戦闘に備えてゼロノスベルトを取り出す。
「うわああああああああああああ!」
子供の悲鳴が三人の耳に届く。
「シンゴ!」
「何!」
その子供の声が誰のものが瞬時に分かったイマジンが、構えを解いてすぐに悲鳴の下へ走っていく。
シンゴの危機と、その為に動くイマジンを見て侑斗は二重に驚かされるが、すぐにイマジンの後を追う。
病院外に出ると、アナザーアクセルとイマジンが戦っていた。そのすぐ後ろにはシンゴが怯えて座っている。
「シンゴを連れて行かせてたまるか!」
アナザーアクセルに掴みかかり、動きを止めようとするイマジン。
「お前、まさか……」
「あの子を守ろうと?」
イマジンは両腕のブレードを振るい、アナザーアクセルに斬り掛かるが、アナザーアクセルの剣はそれらを容易く受け止め、反撃の一撃をイマジンに与える。
「うあっ! この野郎……!」
剣で斬られ、膝から崩れそうになるが、それを耐えて尚も食い下がろうする。
「ふん!」
「ああっ!」
腹を爪先で蹴られ、地面を転がっていくイマジン。彼の抵抗も虚しく、アナザーアクセルはシンゴの腕を掴む。
その時、侑斗たちと同じく悲鳴を聞いてソウゴたちも駆け付けてきた。
アナザーアクセルの姿を見ると、すぐに変身の構えに入る。
「アナザーライダー……待て!」
だが、アナザーアクセルは盾にする様にシンゴを彼らの前に翳す。
「動くな。お前たちはシンゴがどうなってもいいのか?」
逃れようと暴れるシンゴの喉元に剣を突き付けるアナザーアクセル。シンゴも流石に恐怖を覚え、抵抗するのを止める。
シンゴを人質にされ、変身することが出来ないソウゴと侑斗。ソウゴはライドウォッチを握る手が怒りで震え、侑斗も拳が青白くなるまで握り締める。
「くくく!」
二人のその様を嘲ると、アナザーアクセルはソウゴたちに向けて剣を振るう。
『ジェットォ』
剣から放たれた衝撃波。弧状に広がりながら地面を砕き、巻き上がる破片がソウゴたちを襲う。
「うあっ!」
全身を強く打たれ膝を突くソウゴたち。
「大丈夫か! 侑斗!」
「心配、するな」
デネブが介抱しようとするが、口から流れ出る血を拭いながら無事であることを見せる。
「いってぇ……」
アタルのイマジンも頭や額を押さえ、被害を受けていた。
全員動けなくなっているのを見て、アナザーアクセルは悠々とこの場から去ろうとする。
戦える者たちが戦えない状況。だが、アタルはそんな中でもシンゴから目を離すことが出来なかった。
「兄さん……」
昔は写真で何度も見ていた。しかし、両親がシンゴのことを忘れられず自分のことを疎かにしていると分かった時から写真を見ることは無くなった。
だからだろう。シンゴと会ってもアタルは彼と兄を結び付けることが出来なかった。過去から来た、などという荒唐無稽な事実だとしてもシンゴを見て兄とよく似ていると思うべきだったのだ。
だが、シンゴは──
『アタルに手を出すな!』
──アタルを弟だと気付き、身を挺して庇ってくれた。会ったことも無い未来の弟の為に。
アタルの中で怒りが湧いてくる。
2000年にシンゴが攫われたことで、2018年までアタルも、彼の両親も、そしてシンゴ自身も苦しめられた。
その怒りが彼を突き動かす。
「この野郎ぉぉぉ!」
今までこんなに大声を出したことが無かった。こんなに拳を強く握ったことは無かった。こんなに全力で走ったことは無かった。
「あん?」
アタルの怒声に気付き、アナザーアクセルが振り返る。その顔面にアタルの拳が打ち込まれる。
こんなに誰かを殴ってやりたいと思ったことは無かった。
「てめぇ……!」
痛みはゼロに等しい。だが、下等と見なしていた相手に殴られるというのはアナザーアクセルにとって酷く屈辱であった。
「お前をあいつの玩具にしてやるよ!」
アナザーアクセルは剣を放り棄て、代わりにある物を取り出す。
『ゼェロノス』
スイッチを押されたアナザーウォッチ。そのままシンゴの体内へ押し込められる。
『アタル!』
ソウゴとイマジンが叫ぶ中、アタルはその姿をアナザーゼロノスへ変えられてしまった。
『ゼェロノス』
アナザーゼロノスとなったアタルは、ゆっくりとソウゴたちの方を見る。
「最初に言っておく。俺はかーなーり強い」
覇気の無い態度で、侑斗の台詞を言うアナザーゼロノス。
「こいつ……」
アナザーゼロノスは鼻で笑うと、地面を蹴り付け一瞬で侑斗の近くまで移動する。
「侑斗!」
デネブが庇い、アナザーゼロノスの蹴りを背中で受けるが、勢いは殺せず侑斗を下敷きにして地面に倒れる。
「うごっ!」
「ごめん! 侑斗!」
アナザーゼロノスはそこからイマジンに近付き、彼を蹴り飛ばし、更にそこから移動してソウゴを殴りつける。
「ぐあ!」
「うっ!」
さっきまで一緒に居たソウゴらへ何の躊躇いも無く暴力を振るう。アタルの意思は、アナザーウォッチによって完全に洗脳されていた。
全員を傷付けると、アナザーゼロノスはアナザーアクセルの側に戻る。
「今頃ティードが歴史を塗り替えている。お前たちは無駄足だったな」
アナザーゼロノスは空からアナザーゼロライナーを呼び出し、それに乗ってティードの下へ向かう。
「アタル! シンゴ! もうダメだ……」
膝を突いて突っ伏すイマジン。最悪の事態となったことで心を折り掛けていた。
「どうかな? まだ仲間がいる」
「……仲間?」
イマジンは顔を上げ、ソウゴたちの顔を見る。
ティードの方にはゲイツとツクヨミを向かわせており、まだ最悪の状況になるとは限らない。
シンゴとアタルを救う為に、タイムマジーンとゼロライナーに乗り込み追うソウゴたち。
アナザーゼロライナーに追い付き、並走するゼロライナー。その中では──
「おい! 何で攻撃しねぇんだよ!」
ゼロライナーのコックピット内で文句を付けるイマジン。
「お前いつの間に乗ってきたんだ! こっちじゃなくてあっちに乗れ!」
「今更乗り移れねぇだろうが。ほら貸せ! 俺がやる!」
操縦席兼バイクでもあるマシンゼロホーンの操縦を侑斗から奪おうとする。
「おい! 馬鹿! やめろ!」
「何かミサイルとかバズーカとか積んでないのかよ!」
「あそこにはシンゴとアタルが捕まっているだろうが!」
「……あ、そっか」
焦るあまり単純なことを見落としていたイマジンを、侑斗は蹴り飛ばしてデネブに指示を飛ばす。
「デネブ! そいつをここから追い出せ!」
「分かった。ささ、こっちで大人しくしてくれ」
「分かった! 分かったから! 出て行くからやめろ! お前、力が強すぎていてぇんだよ!」
突然、強い衝撃がゼロライナーを襲う。
「何だ? ──またこいつか!」
再び襲撃してきた巨大なクワガタムシ──アナザーゴウラム。
奇襲を受け、態勢を立て直せない内に大顎で掴まれ、地面へ向けて投げ捨てられる。
「おおおおおお!」
地面に不時着するゼロライナー。間もなくして、アナザークウガPに撃ち落とされたソウゴのタイムマジーンも近くに落ちるのであった。
◇
「まさか、こんなことになるとはな……」
「ごめん……」
アタルを連れて来たことで彼をアナザーライダーにしてしまった。そのことへ責任を感じ謝るソウゴ。
「あのアナザーライダーの正体があいつだったんだ。どう足掻いても成る様に成っただけだ」
侑斗はぶっきらぼうな言い方であったが、ソウゴを責めることはしなかった。そうなる流れであったと割り切り、受け入れる。ソウゴもこれ以上何か言うことは侑斗たちに失礼だと思い、口を閉ざす。
ゼロライナーは落とされ、タイムマジーンは二機とも破壊。ティードたちは未来へ移動してしまった。
日が落ちた森の中、傷だらけの状態でイマジン、ソウゴ、侑斗、デネブは炎を囲っていた。
ゲイツとツクヨミは壊れたタイムマジーンの修理をしている。
「あの列車は無事?」
「応急処置は済ませてある。ただ、これ以上壊れると俺たちじゃ手が出せない」
「……うちの叔父さんだったら修理出来たりして」
「お前の叔父さん、何をやっているんだよ?」
「時計屋」
「時計屋にゼロライナーの修理なんて出来るか」
冗談でも笑えないといった態度で顔を顰める侑斗。ソウゴが半ば本気だったとは知らぬことであった。
「あのティードって奴は、自分が仮面ライダークウガに成り代わって歴史を変え、世界からライダーが消えた時間軸を作った」
くべる為の木を折りながら、イマジンが一人語る。
「最初の平成ライダーであるクウガを消せば、平成ライダーの歴史は無いからな」
「それでライダーは虚構になったのか……」
話の中に出てくる平成ライダーというのが自分たちことを指すのは理解出来るが、そんな風に呼ばれたことが無いので侑斗は違和感を覚える。ソウゴは気にせずイマジンの話を納得しているが。
「しかし、ティードにとって障害となったのが、あのシンゴってガキだ。あいつは、特異点だからな」
「成程、そういうことか」
特異点の名が出て、今度は侑斗の方が納得し、ソウゴは聞き慣れない言葉に首を傾げる。
「特異点?」
「歴史を書き換えても影響を受けない存在だとさ。シンゴが居ると変えた歴史が元に戻る可能性があるからな。だからティードはあいつを攫った」
イマジンはそう言うと肩を落とす。
「俺はティードには勝てない。でも、シンゴを攫われるのを阻止することは出来る。そう思ってアタルと契約したが……この様だ」
失敗して落ち込むイマジン。だが、ソウゴはそれを見て微笑む。
「何だかんだ言って君もシンゴのことを助けたいんだね」
ストレートに言われ、イマジンは照れる様にそっぽを向く。
「助けよう、シンゴを」
「ただ、その前にもう少しお前の話を詳しく聞かないとな」
「え? どういうこと?」
侑斗の言葉にソウゴは戸惑う。まるで、イマジンが何かを隠している様に言っているからだ。
「な、何だよ! 詳しくって……」
「シンゴを救う為にアタルと契約したって言うが、何で二人の関係をお前が知っている? そもそもシンゴのことは何処で知った? 何で危険を冒してまでティードの計画を阻止しようとするんだ? それよりもティードの仲間になるのが普通のイマジンのやり方だ」
守ろうとする意志は本物なのかもしれない。だが、隠していることがあれば信じ切ることなど出来ない。
「……言わなきゃだめ?」
「言え」
「信じられねぇかもしれねぇぞ?」
「いいから言え」
イマジンは一回だけ深呼吸をして話し始める。
「俺は、どうやら時間の中で空回りしているらしい」
「空回り?」
「全く経験が無いのに記憶の中にあるのさ。今回の事件の記憶が」
自分の側頭部を指先で叩く。
「どういうこと?」
「何度も何度も俺は今回のことを経験しているらしい。どれもこれも失敗の記憶だがな」
イマジンが言うに、アタルと契約するまでは同じだがそれ以降は分岐していると言う。ティードに挑み、敗北する記憶。アタルを殺害されて失敗してしまう記憶。シンゴを死なせてしまう記憶。呼び出されたライダーが全滅してティードの計画通りになる記憶。
ティードの計画通りになるとそこで記憶が途切れてまた最初からになるらしい。
「何でそんなことが起きているの?」
「ああ、多分あいつのせいだ」
「あいつ?」
「一番古い記憶だよ。ティードの計画が完全に成功したと思ったら出て来たんだよ」
地に落ちていくアナザークウガ。それを見下ろすのは金と黒の覇気に満ち溢れた魔王の様な仮面ライダー。
「あの魔王みたいな仮面ライダーがよ」
魔王という名前を聞き、ソウゴの鼓動が早まる。そんな仮面ライダーをソウゴは一人しか知らない。
「オーマジオウ……」
◇
『何故だ! 平成ライダーは全て消し去った筈! 何故お前が存在する!』
「愚か者め。平成ライダーの記憶を持つ者が存在する限り、私の存在を消し去ることなど不可能!」
羽を捥ぎ取られ、甲殻を何カ所も凹まされ、黄土色の体液に塗れたアナザークウガが、血を吐きながら頭上の存在を見上げる。
そこに降臨するのはまさしく王。前人未到にして唯一無二の絶対王者オーマジオウ。
全ての計画が上手く行き、歴史に君臨する王となったと思ったとき、オーマジオウがティードの前に現れた。
「平成ライダーを消すというその愚行! 貴様の命を以て償って貰おう!」
『ほざけぇぇぇ!』
アナザークウガの口から炎弾が放たれる。
「ふん!」
オーマジオウが手を翳すと炎は停止。その手を突き出すと、放たれた炎弾はアナザークウガに逆行していき、口の中へ戻ると爆発する。
『ぐあああああ!』
悶えるアナザークウガ。
「すげぇ……」
それを眺めていたイマジンはその圧倒的な力に呆然とする。
『そうか……そうか! 特異点か! あの時代の特異点をどうにかすれば……!』
「終わりだ」
オーマジオウはクウガライドウォッチを取り出し、起動する。
『クウガ!』
ライドウォッチの力が実体化し、赤い装甲に赤い複眼、額に三つの突起の黄金の角を持つ仮面ライダークウガを召喚する。
続いて黄金のドライバーの左右にあるスイッチを同時に押し、内にある無限に等しいエネルギーを開放させる。
『クウガの刻!』
オーマジオウの動きに連動し、クウガもまた左右に両手を広げ、腰を落とし右足を下げた構えを取る。
「ふん!」
オーマジオウの手から放たれる波動。それを受けたアナザークウガは動けなくなる。受けたという意識すら無い。彼の時間はオーマジオウによって停められた。
オーマジオウが降下すると同時にクウガは駆け出し、速度が最高点へ達した時跳躍。そのまま前方宙返りをし、右足を突き出す態勢となる。
『マイティキック!』
時間解除と共にアナザークウガに打ち込まれる天と地から繰り出された二つのキック。そして、刻まれるクウガの紋章。
『馬鹿なぁぁぁぁぁぁ!』
紋章を中心に亀裂が生じ、アナザークウガが爆発する。その爆炎にオーマジオウも呑み込まれた。
「私が出来ることはここまでだ。後は任せた」
記憶が途切れる直前、イマジンはそんな声を聞いた気がした。
フータロス周回説とオーマジオウが関与していたという設定を出しました。
色々と強引かもしれませんが、こういうのも有りかなと思って。
先にどちらが見たいですか?
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IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
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IFゲイツ、マジェスティ