仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

57 / 163
またもや独自設定があります。強引ですが出したかったので。


アナザークウガT2000

「オーマジオウ? 誰だそいつは?」

 

 ソウゴが呟きは、しっかりと侑斗の耳に届いていた。

 

「今から五十年後の未来で、最低最悪の魔王って言われている仮面ライダー」

「──初耳だな」

「で、それが五十年後の俺みたい」

『はあ!?』

 

 あっけらかんとした態度から放たれた衝撃的な発言に、侑斗とイマジンが声を揃えて驚く。

 

「何だそりゃあ! 最低最悪の魔王って何が最低最悪なんだよ!」

「そりゃあ、最低最悪なことをしたんじゃない?」

「──そんな存在にお前はなるのか?」

「ならないよ。なるとしても最高最善の魔王に俺はなる。俺の夢はそういう王様だから!」

『はあ!?』

 

 侑斗とイマジンが再び声を揃えた。王様になる、という荒唐無稽な夢を聞かされればこの様な反応も無理は無い。

 

「凄いぞ、侑斗! 俺、王様なんて初めて会った!」

「まだ予定だけどね」

「じゃあ、お近づきの印にデネブキャンディーをどうぞ。あ、あと侑斗もよろしく!」

「おお、ありがとう!」

 

 デネブの顔が描かれた鮮やかな色の棒付きキャンディーを受け取るソウゴ。空腹を感じていたので有難く頂戴する。

 一舐めして目を見開く。

 

「うおお! 美味しい! 何これ!」

 

 想像以上に舌に合ったらしく夢中で食べる。半分以上食べると一旦止めて、デネブの方を見る。

 

「キミ、俺の王国の専属パティシエにならない?」

「侑斗どうしよう! 俺、スカウトされた!」

 

 非常時だというのに、出来るかどうかも分からない自分の王国へ誘うソウゴと、それを真に受けて喜びつつも悩むデネブ。緊張感の無いやりとりに逆に頼もしさすら感じさせる。

 

『はあ……』

 

 イマジン、侑斗が揃って溜息を吐く。彼らの心境が似た様なものであることを表していた。

 

「お前、こんなやりとり何回も見てきたのか?」

 

 そうなら少し同情するつもりであった侑斗。だが、イマジンは首を横に振る。

 

「いや、お前らと会った記憶はねぇ。今回が初めてだ」

「そうだったのか……」

「殆ど初めての奴だ。仮面ライダージオウにゲイツ、ゼロノス、アクセル。ビルドの連中は何回か喚び出した」

「へぇー。じゃあ、俺たちって本当の意味で初対面だったんだ」

 

 デネブとのやりとりをいつの間にか終え、ソウゴも話に参加してきた。

 

「そうなんだよ。アタルと契約が出来るだけたくさんの仮面ライダーに会いたいってのだからな。俺が選ぶんじゃねぇ、完全にランダムで喚ばれんだよ。つーか多過ぎなんだよ、お前らは!」

 

 段々と愚痴が混じり始める。

 

「ランダムなせいで当たり外れもでけぇ。前の時は敵味方関係無しの凶暴でおっかない紫のライダーに、やたら陰気な二人組の仮面ライダーだったな。あれは最悪だった……」

 

 記憶を振り返るのすら嫌だという口調。酷い目に遭わせられたのが伝わってきた。

 すると、今までの元気が嘘の様にイマジンが肩を落とす。

 

「今回は行けると思ったんだよ。ジオウ、ゼロノス、アクセル。皆、初めて見る奴ばっかりだ。あのティードに一泡吹かせてやれる! っと思ったんだが、結果はこの有り様だ。ティードどころかあいつの下っ端にすら叶わなかった」

 

 シンゴは奪われ、アタルはアナザーライダーに変えられ、自分は過去の世界で途方に暮れている。結果だけ見れば惨敗だ。

 

「そんなことないんじゃない?」

「──下手な慰めは止めろ」

「でもさ、今まで失敗した時って一人だったんでしょ?」

「まあ、俺の中の記憶ではそうだな……」

 

 過去へシンゴを助けに行き、失敗して2000年に置いてけぼりにされたとき、ソウゴの言う通り一人であった。

 

「今は一人じゃない。仲間がいる!」

 

 真っ直ぐにイマジンを見て言い切るソウゴ。

 

「仲間って……俺とお前らが、か?」

「え? 仲間じゃん。シンゴとアタルを助けたいって目的は一緒だし。ねえ、侑斗?」

「そんな恥ずかしい台詞、一々声に出して言うな」

 

 尋ねられた侑斗はソウゴたちから顔を背ける。

 

「気を悪くしないでくれ。仲間と言われて、侑斗はホントは嬉しい筈だ。侑斗は少し恥ずかしがり屋だから」

「デーネーブ!」

 

 侑斗がデネブに飛びつき、そのまま腕ひしぎ十字固めに入る。

 

「だから勝手なことを言うんじゃねぇ!」

 

 技を掛ける侑斗に掛けられるデネブ。それを見て笑っているソウゴ。状況的に見れば追い詰められているのは自分たちだというのに、それを受け止めた上で普段通りに振る舞う彼らを見ていると、イマジンは悩む自分を馬鹿らしく思えてしまう。

 

「そういえばさ、名前まだ聞いてなかったよね?」

 

 追い掛け、追い掛けられをしていたせいで肝心なことを聞き忘れていたことをソウゴは思い出す。

 

「イマジン、って呼ぶのも何か変だし」

「名前ねぇ……別に何でもいいだろ、そんなの。名無しの誰かさん、とかでよ」

「それはちょっと……うーん、誰かさん……誰か……誰……あ、フーっていう名前は?」

 

 誰から連想して出てきた英語の『Who』を名前として提案するソウゴ。

 

「そんな可愛いらしい名前が似合う見た目だと思うか?」

 

 反応は不評。

 

「なら『フータロス』だ」

 

 デネブに技を掛けるのを止め、侑斗が別の名を出す。

 

「タロスって何だ? タロスって?」

「何でもいいだろ、別に」

 

 彼の知り合いのイマジンたちに共通している名前の部分を適当にくっつけただけである。

 

「どう? フータロス?」

「ちょっと待て! 考えさせろ!」

 

 暫くの間、腕組んで考える素振りを見せる。

 

「よし決めた! お前たちの意見を参考にして、俺の名前は『フータロス』だ!」

「参考にって……そのまんまじゃん」

「良く聞け! 発音が違うだろ! お前たちフータロスは『Who』! 俺のフータロスは『Foo』だ!」

 

 与えられたものを素直に受け取らず、多少のアレンジを加えるのは彼のプライド故か、もしくは気恥ずかしさからくるものかもしれない。

 

「誰タロスなんて思われるより、意味は無いがFooタロスって思われた方がマシだ」

「そう思うならそれでいいんじゃないかな? という訳でよろしく、フータロス」

 

 妙な拘りを見せるフータロスに、ソウゴはあっさりとした態度でフータロスの名を呼ぶ。

 

「お、おう……何かやっぱり変な気分になる。やっぱ、名前は無しでいいんじゃねぇか?」

「えー、いいじゃん。ねえ、侑斗?」

「好きにすればいいだろうが」

「侑斗、そういう態度は良くない! 名前は大切なものだ!」

 

 ゲイツとツクヨミがタイムマジーンの応急処置を終えて戻ってくるまで、四人の間でフータロスの名に付いてあれこれと話し合っていた。

 ティードの計画を阻止出来た訳では無い。まだ、ティードによって翻弄されているソウゴたち。彼らの苦難はこの寒空の下、身を切る様な寒風と似ていた。しかし、この交流彼らの前で焚かれた焚火の様に暖かなものであった。

 そして、彼らは知る由も無いが、ソウゴたちの干渉により既にティードの計画に狂いが生じ始めている。

 フータロスが周回することで記憶が残り、それを次に生かしてきた。このループの中でティードもまた記憶が蓄積している。とは言え、フータロスの様にはっきりとした記憶ではなく無意識の行動として現れており、周回を重ねる度にティードの計画は緻密なものへなっていた。

 だが、緻密になればなる程に計画に余裕というものが無くなる。ましてや、歴史に干渉する大掛かりな計画である。時計のムーブメントの様に精密なものに微かな狂いが生じれば不具合同士が嚙み合い始め、積み重なって大きな狂いとなる。

 そして、シンゴ誘拐の阻止とクウガの力の奪取の妨害現れたソウゴたちというイレギュラーは、ティードの計画に大きな波紋を与え、その結果歴史上類を見ない、タイムマシン同士の接触事故という破綻を生み出した。

 彼らの行動は、決して無駄では無かったのだ。

 

 

 ◇

 

 

 一つの意思を持った塊の様に蠢く怪人たちの集団。彼らは形ある物を破壊し、命ある者を仇為す。

 阿鼻叫喚を生み出す徘徊する地獄。その地獄に真っ向から挑む者たちが存在した。

『ボルテックブレイク!』

『エンジン! マキシマムドライブ!』

 

 マシンビルダーを疾走させるビルドが、フルボトルを挿し込んだドリルクラッシャーを突き出し、高速回転によって生み出される光刃で前方の怪人たちを斬り裂き、バイク形態となったアクセルが炎を纏い、立ち塞がる怪人たちを次々と打ち砕いていく。

 行く手を阻む敵を一掃していくビルドたち。そうはさせまいと怪人たちも進路方向に密集し始め、阻む壁を厚くする。

 しかし、その壁も彼らを止めるには薄い。

 

『ドラゴニックフィニッシュ!』

 

 マシンビルダーの後部座席に跨っていたクローズが飛び上がる。

 跳び上がった先には蒼炎の龍──クローズドラゴン・ブレイズが既におり、その時を今か今かと待っている。

 クローズがドラゴンの眼前まで行くと、ドラゴンは大口を開け、クローズ目掛けで蒼炎を吐き出した。

 蒼炎と同化する様に炎の勢いに乗り、立ち塞がる怪人たちの壁をクローズは蹴り砕き、活路を開く。

 跳んだクローズのタイミングに合わせてマシンビルダーを走らせるビルド。着地場所に計算通り通過し、後部座席にクローズを乗せる。

 股が裂ける! と後ろのクローズが叫んでいるが、無視してマシンの速度を限界まで上げた。

 怪人の集団を突破し、彼方にそびえ立つティードの城を目指す。だが、敵もまた易々とはビルドたちを通さない。

 マシンビルダーとアクセルが急ブレーキを掛ける。彼らの前には重油の様な黒い液体が広がり、その前に立つ二人の怪人。

 アナザーグリスとアナザーローグである。

 

「こいつら……」

 

 グリスとローグによく似て且つ醜悪に歪められたアナザーライダーたちに、ビルドは驚きと動揺、そして怒りを混ぜた声を上げる。

 三人をこれ以上ティードの城へ向かわせない為の番人として立ち塞がるアナザーライダーたち。

 

「戦兎、照井。こいつらは俺が引き受ける。お前たちは先に行け」

 

 マシンビルダーからクローズが降り、アナザーグリスたちへ向かって行く。

 

「おい! 万丈!」

「元々こいつらを相手していたのは俺だ。なら、きっちりと俺が倒しておかねえとな」

「──桐生、行くぞ」

 

 戦いが長引けば無辜な人たちが傷付く。一刻も早く元凶を倒さなければならない。

 

「──死ぬなよ、このバカ」

「うるせぇ。バカって言う方がバカなんだよ。すぐに追いつくから早く行けバカ」

 

 軽口を言い残し、クローズがアナザーグリスへと駆け出す。

 

「おりゃあ!」

 

 アナザーローグに殴りかかるが、蒼炎を纏った拳を胸部で難無く受け止められる。しかし、クローズは怯まず、その状態からアナザーグリスへ蹴りを放った。

 アナザーグリスがクローズの足を掴まえる。

 

「今だ!」

 

 クローズが叫ぶと、ビルドとアクセルが高速で突っ込んでくる。三人を撥ね飛ばすかと思いきや、直前に跳び上がり、三人の頭上を超えて行く。アナザーグリスもアナザーローグもクローズを相手していたせいでそれを防ぐことが出来なかった。

 

「任せたぜ! 戦兎! 照井!」

 

 小さくなっていく背に声を飛ばすクローズ。すぐに後を追おうとするアナザーグリスたちの肩を掴み、殴りつける。

 

「お前らの相手は俺だ!」

 

 倒すつもりで全力で挑もうとするクローズ。しかし、アナザーグリスたちは構えない。それを不気味に思い始める。

 

「何だ? 何でこねえ?」

 

 すると、徐に胸の前に手を翳すアナザーグリスたち。黒いエネルギーが二人の中から飛び出し、手の中で収束し、アナザーウォッチへと戻る。

 変身解除されたアナザーグリスたちを見て、クローズは啞然とした。

 虚ろな眼差しで幽鬼の様に立つ一海と幻徳。戦う相手が自分の仲間であったことを知り、衝撃を受ける。

 

「一海、幻さん……! 何でお前らが!」

 

 ティードの洗脳によって施されていた細工。仲間と会った時に変身を解除させ正体を明かす。これにより相手の動揺を誘う。

 クローズが戸惑っていると判断した二人は、再びアナザーウォッチを体内に入れる。

 

『グリィス』

『ロォォグ』

 

 立ち尽くすクローズに二体のアナザーライダーが襲い掛かる。

 

 

 ◇

 

 

 城に向かい走るビルドとアクセル。妨害する怪人たちの姿は無い。このまま一直線で向かおうとしたとき──唸る第三のエンジン音。

 音の方に目を向ければ、炎の車輪を回すアナザーアクセルがバイクの姿で並走していた。

 

「もう一体来たのかよ……!」

「桐生! 奴は俺が相手をする!」

 

 アクセルはハンドルを切り、アナザーアクセルへと衝突する。火花を散らしながら並んで走る両者。

 

「アナザーライダーは同じ力を持ったライダーでしか倒せない! ここで奴を倒す!」

「──本当にいいのか? 照井」

「ふっ。俺に質問するな」

 

 染みついた口を出しながら、アクセルはアナザーアクセルを道路の外へと追い出していく。

 舗装された道路を超え、ガードレールへ衝突し、その勢いで宙に舞う二人。その間にバイク形態から人型へ戻ると、空中で斬り結ぶ。

 

「ここで終わりにしてやる! アクセル!」

「邪魔をするな!」

 

 着地までの間に繰り返される剣戟。一合、二号と互角。しかし、三合目でアクセルの斬撃が、アナザーアクセルに命中し、怯んだ間にもう一撃食らわされた。

 

「くうっ!」

「はあ!」

 

 傷を痛がるアナザーアクセルに、追撃の突き。腹にそれを受けたアナザーアクセルは背中を削りながら地面を滑っていく。

 

「くっ、う! 同じ力で、何故こんなにも差が……!」

 

 アナザーアクセルは戦って分かってしまった。自分ではアクセルに勝てないことに。実力も経験もアクセルが圧倒的に上回っている。

 だが、それでもアナザーアクセルには、彼にしか見えない勝機が見えていた。

 

「く、くう! はっ!」

『ジェットォ』

 

 剣先から放たれる衝撃波。苦し紛れのそれをアクセルは軽く避けてしまう。

 

「絶望がお前のゴールだ」

 

 アクセルはエンジンブレードにエンジンメモリを装填しようとする。

 

「く、くく、くはははははは!」

「──何がおかしい?」

「同じ力でも、こうも差があると笑えてくるもんだな」

「それがどうした?」

「でも、同じ力でも俺には出来て、お前には出来ないことがある」

「何?」

「さっきのはお前を狙ったものじゃない」

 

 不穏なものを感じ、背後を振り返るアクセル。

 

「なっ!」

 

 彼は見た。先程の衝撃波によって中央部分が破壊されたビル。今にも崩れそうなそのビルの下に、逃げ遅れた子供と母親。しかも母親はビルの破片によって頭部を負傷し、動けない状態となっている。

 

「き、さま……!」

「俺はあの親子を見捨てることが出来る。お前はどうだ? 仮面ライダー?」

 

 迷いは無かった。アクセルはすぐにビルの下へ走り出す。今もなおビルは崩壊しており、崩れ落ちるまで時間の問題であった。

 

(間に合え!)

 

 アクセルがビルの下へ辿り着く。泣き叫ぶ子供と動かない母親。幸い、母親は息をしており、まで生きていた。

 

「大丈夫か! すぐに──」

 

 その時、二発目の衝撃波がビルを直撃。崩壊を加速させる。

 離れた位置から剣を突き出しているアナザーアクセルがそれを眺めていた。

 最早、猶予など無い。

 

「少し我慢をしてくれ!」

 

 アクセルは二人を抱き上げると、急いで投げる。投げた先には低木の街路樹があり、それをクッションにする。

 二人を無事な場所まで移動させた直後、崩壊したビルの破片がアクセルを吞み込んだ。

 

 

 ◇

 

 

 一人残されたビルド。アクセルとクローズのおかげで城にまで辿り着くことが出来た。城内にも敵は残っているが、二人に後を託されたビルドの敵にはならず、城の最奥に付く。

 そこでティードが腰掛け、その側には長方形の箱に閉じ込められた意識の無いシンゴが居た。

 

「あー、ビルドか」

 

 ビルドの名を呼ぶティード。最後まで邪魔をしてくる彼の存在に心底うんざりした様子であった。

 

「平成ライダーは既に存在しない。この世界ではお前たちは虚構の存在だ。それなのに何故足掻く?」

「全て計算通りの筈なのに、理屈に合わないか? お前の気持ち、少しは分かるよ」

「ほう?」

「俺も一度は世界を変えた。それによって仮面ライダーの存在は消えた。でもな、どういう訳か消えないバカが居たんだ」

 

 新たな世界を創り直し、その果てに孤独になったと思った。それなのに、戦兎の計算などお構いなしにひょっこりと姿を見せた万丈。

 

「世界は理屈だけじゃない。それだけじゃあ、回らないってのをバカから教えて貰ったよ」

 

 ティードは俯くと、肩を震わせて笑う。

 

「そうか、そうか、そーかー。歴史を変えて消されないって言うのなら──」

 

 立ち上がり、アナザーウォッチを取り出す。

 

「死んで消えろ」

『クウガァ』

「お前も!?」

 

 ティードを覆う黒い力。身構えるビルド。

 覆い尽くしていた力が消える。が、ティードの姿が無い。

 

「どこに……!?」

『こっちだ』

 

 上を見上げると天井ギリギリまで跳び上がった巨体──アナザークウガ。

 

『ふん!』

「ぐぅ!」

 

 そこから落下と共に繰り出される蹴り。ビルドは咄嗟に腕を交差して防ぐが、アナザークウガの蹴りを防ぐには脆弱過ぎた。

 

『はあああ!』

 

 炎の様に燃え盛る右足が打ち込まれると、ビルドの両足が床に沈む。更に押し込められると沈んだ足を中心にして亀裂が生じ、最後には床を砕く。

 

「うおっ!」

 

 床の破片と共に落下するビルド。しかし、着地する前に空中で停まる。アナザークウガに足を掴まれていたせいで。

 

『これ以上は暴れられないな。俺の大事なシンゴが傷付く』

「ぬけぬけと……うお!」

 

 アナザークウガはビルドを振り回し、壁に叩き付けた。壁は砕け、ビルドは城外へ飛んでいく。

 

「うがっ!」

 

 背中から地面に着地し、そこから数回バウンドして止まる。

 痛む体で立ち上がろうとするビルドの耳に耳障りな羽音が入って来た。

 ビルドが出て城の穴から、背部に収めていた薄羽を羽ばたかせてアナザークウガが飛び出す。

 

『まるで地べたを這う虫けらだな?』

「それは、何かの冗句か? 万丈の頭の中よりつまんねぇ」

 

 皮肉を返すビルドであったが、アナザークウガはそれをせせら笑う。

 

『ここまで粘ってくれたサービスだ。死に方を選ばせてやる。殴殺が良いか? それとも銃殺がいいか?』

「はっ。どっちも御免だ」

『決めたよ。お前は斬殺だぁぁぁ!』

 

 アナザークウガが手を伸ばす。その先にあるのは電柱。それを引き抜くと、アナザークウガの姿が変わる。

 目は紫、体の甲殻が厚みを増し、両肩にプロテクター状の甲殻が追加され、赤色から紫で縁取られた銀色へ変色。

 腹部の石も赤から紫に変わると、手に持っていた電柱が巨大な両刃剣へ変異する。

 

「嘘だろっ!」

 

 姿を変えたアナザークウガ──アナザークウガTは、更にもう一本電柱を引き抜くと、それを砕きながら上空へ投げ放つ。

 数秒後、破片全てが両刃剣となってビルドへ降り注いできた。

 

「マジかよ!」

 

 慌てて避けるビルド。右に避けると右に落下し、左に避けると左に両刃剣が落ち、逃げ道を塞ぐ。

 最終的に四方を閉ざされ、即席に檻と化す。

 

『斬り方はどれがいい? 真っ二つか? それとも微塵切りか? まあ、ここはクウガらしく──』

 

 アナザークウガTは両刃剣を水平に構え、剣先をビルドに向ける。

 

『串刺しだ!』

 

 

 




この作品内ではフータロスの綴りが違います。fooではなくfuの方が正しいですが、fu単品だと下品なスラングになるので、fooにしました。

先にどちらが見たいですか?

  • IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
  • IFゲイツ、マジェスティ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。