仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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五千で区切ると言いましたが、あれは嘘になりました。
後の展開の伏線かなーと思う描写を改変して、後々矛盾するかもしれませんが、『明日の話より今日の話』ということで。




アナザーメイジ2012(後編)

 アナザーメイジと化したツクヨミから放たれた魔法は、ジオウたちを直撃するのではなく目の前に着弾した。

 閃光が視界を灼き、目の前が真っ白になっている内に、アナザーメイジたちは姿を消してしまった。

 二度目の逃走を許してしまったのである。

 そのまま拠点であるクジゴジ堂へと戻ってきた二人。しかし、二人の間に流れる空気は最悪なものであった。

 アナザーメイジが誕生した日は、ソウゴによって判明していた。

 そして、倒す為の同じライダーの力は、ゲイツがアナザーメイジと戦っている最中に、ライドウォッチを持つ謎の人物を見ていた。

 ゲイツは、ライドウォッチを手に入れる為にその人物を探そうする。しかし、ソウゴはそれよりも何故早瀬が暴走したのかを考えることを優先した。

 アナザーライダーを一刻も早く倒そうとするゲイツ。

 今回の件を解決する為にアナザーライダーの心を知ろうとするソウゴ。

 異なる考え方のせいで、二人は対立する。

 ツクヨミをアナザーライダーへと変えられたゲイツにはソウゴの言葉は届かず、力で解決する道を選ぶ。

 ソウゴは早瀬の心を知る為に、アナザーメイジへと変えられた長山の話を聞きに行く。

 入院している長山の話を聞き、ソウゴは早瀬の想いを知ると同時に、次に誰が狙われるかを察した。

 一方ゲイツもライドウォッチを持つ人物を見つけるが、その人物は何故自分がライドウォッチを持っているのかを思い出すまで誰にも渡さないと言われ、門前払いをされてしまう。

 

 ◇

 

 薄暗い高架下のトンネルを一人歩く香織。

 人の気配を背後に感じ、振り返る。そこには憎しむに彩られた表情の早瀬が居り、いきなり香織の首を絞める。

 

「何故です! 何故こんな仕打ちをっ!」

 

 怨嗟の感情を込めて吐き出す早瀬。彼の中では、香織が自分の想いを踏み躙ったことになっていた。だが、事実は違う。そもそも香織は早瀬の想いに気付いていない。彼女にとって早瀬は恩人である。寧ろ早瀬の将来を思い、小さな見世物小屋からもっと広い世界に羽ばたいて欲しいとすら思っている。

 しかし、早瀬の欲しいものはそんな想いではない。故に感情が空回り、彼女が裏切ったと自己完結する。

 相手を想う言葉をマジックハウスに勤めてきた数年間何一つ言わなかったどころか、目すら合わせようとしなかった自分という存在に目を背け。

 

『メイジ……』

 

 香織の前で、早瀬はアナザーメイジへと変身する。

 知人にいきなり襲われる恐怖。そして、それが怪人へと姿を変える恐怖に香織の顔は血の気を失う。

 

「許さん……許さん……許さんぞぉぉぉ!」

 

 完全に愛情と憎悪が入れ替わってしまったアナザーメイジ。香織の首に更に指を喰い込ませようとし──

 

「止めるんだ!」

 

 側面から何者かの体当たりを受け、その衝撃で手が離れる。

 そのまま壁に叩き付けられるアナザーメイジ。

 

「また貴様かっ!」

 

 自分を押さえ付ける人物──ジオウを見て、アナザーメイジは怒りの言葉を吐き捨てる。

 

「来いっ!」

 

 アナザーメイジが何かを呼ぶ。

 

『アロー』

 

 魔法を発動の音。しかし、アナザーメイジはベルトに触れていない。だとすれば──

 ジオウは素早くアナザーメイジから離れる。その直後に、ジオウの眼前を魔法の矢が通り過ぎていく。離れるのがもう少し遅ければ直撃していた。

 

「──ツクヨミッ!」

 

 トンネルの出入口付近に立つもう一人のアナザーメイジ。姿を変えられたツクヨミであった。

 ジオウが見ている前でベルトに指輪を翳す。

 

『スペシャル』

 

 両肩の外装が開き、そこから拡がることで、飛膜の無い骨の羽が展開される。

 羽を羽ばたかせてアナザーメイジは飛翔し、ジオウの前に急接近すると大きく羽を動かす。

 発生した突風に思わず腕で顔を守るジオウ。守りを解くと、先程まで居たアナザーメイジたちの姿は消えていた。

 

 

 ◇

 

 

 ある程度の情報だけを集め、クジゴジ荘へと戻ってきたソウゴとゲイツ。 

 ライドウォッチを持つ者たちは、皆過去の記憶を失っている共通を知る。彼らの失った記憶をどうすれば戻せるのか、その時ソウゴは閃き、ある人物の名を呼んだ。

 

『ウォズ』

 

 ソウゴに呼ばれ、現れたウォズ。ゲイツとは旧知の間柄であり、何かしらの蟠りを持つ相手であるが、現状最も情報を持つ彼に協力を求める。

 未来で仕えるソウゴの頼みとあってウォズの口から二つの事実を得る。

 タイムジャッカーが歴史に介入し、アナザーライダーを生み出すことで、オリジナルの力を持つライダーたちは、ライダーとしての歴史を失い、同時に力も記憶も失う。

 アナザーライダーを不完全でも倒すことで一時的に歴史を修正され、オリジナルのライダーたちは少しの間記憶を取り戻す。

 これを知り、ソウゴは一つの作戦を考えた。

 

 

 ◇

 

 

 神社の境内でテントを張り、焚火をして食事をしている男。テントには『仁藤』という名札が張られている。

 野外の生活に慣れている男からは、その生活もあって現代人には無い野性味が溢れていた。

 木の葉を踏み締める音に気付き、その方角に男は目を向ける。

 

「おー、ツンツン。分かったか? 何で俺がこいつを持っているのか?」

 

 ツンツンことゲイツに、男はライドウォッチのことについて聞いて来る。

 

「いや、まだだ。だが、直に分かる筈だ」

 

 ゲイツは、木に寄りかかりその時を待つ。──ソウゴがアナザーライダーを倒すその時を。

 黙々と食事をしている男を、ゲイツもまた黙って見ている。時折、異常なまでにマヨネーズをかける光景に、顔を顰めながら。

 そして時は来た。

 弾かれた様に男が倒れる。ゲイツは急ぎ近寄る。

 

「記憶が戻ったのか?」

 

 男はゲイツの顔を見て、暫し考える様に目を細めるが、何かを思い出した表情となる。

 

「──お前か。また会ったな」

「何?」

 

 口振りからして、明らかに昔会ったことがあるかの様であった。

 

「兎に角、今はライドウォッチのことを──」

「ああ。皆まで言うな」

 

 男はゲイツの言葉を遮り、左手に獅子を彷彿とさせる仮面が彫られたリングを填める。

 

「そういや、まだ名乗って無かったな。俺の名は仁藤功介」

 

 右手を腹部に翳す。

 

『ドライバーオン!』

 

 すると、銀色の扉の様なバックルが出現する。

 

「変──」

 

 突き上げられる左手。手首を返し、手の甲を見せる。

 両腕が交差する様に円を描き、それが一定の位置まで動くと、仁藤は獲物に飛び掛かる前の肉食獣の様に身を低くし、両腕で逆Cの字を形作る。

 

「──身!」

 

 左手の指輪が、ベルトの側面に押し当て──

 

『セット!』

 

 捻る。

 

『オープン!』

 

 銀の扉が開き、現れるのは黄金の獅子のレリーフ。

 

『L! I! O! N! ライオーン!』

 

 ベルトを中心に金色の魔法陣が出現し、それが仁藤の体を通過したとき、黄金の鬣を彷彿させる仮面、獅子の顔の意匠が施された左肩の装甲。

 仁藤の持つ野性味をそのまま表した仮面ライダーへと変わる。

 

「またの名を仮面ライダービーストだ。ライドウォッチだったか? あれを本当に渡していいのか試してやるぜ、ツンツン」

「──結局こうなるのか」

 

 ゲイツは一度溜息を吐いた後、その顔を戦士のものへと変える。

 ジクウドライバーをセットし、ゲイツライドウォッチのスイッチを押す。

 

『ゲイツ!』

 

 ジクウドライバーにライドウォッチを填め、ドライバーのロックを解除。両手でドライバーを挟み込む。

 

「変身!」

『ライダーターイム! 仮面ライダーゲイツ!』

 

 解放された力は円を描き、ゲイツを仮面ライダーゲイツに変身させる。

 

「んじゃ、行くぜ!」

 

 ビースト先制による前蹴り。ゲイツはそれを手で払うが、すぐに払われた足がゲイツの足元を刈る下段蹴りに変わる。

 蹴りを蹴りによって迎え撃つゲイツ。力がほぼ互角の為、互いに数歩後退する。

 

「グルル!」

 

 獣の唸りの様な掛け声と共に突進し、距離を詰めての肘打ち。両腕でそれを防ぎ、ゲイツの反撃の膝がビーストの鳩尾を狙う。間一髪のところを間に入れたビーストの腕が阻み、一旦距離が空く。

 

『ジカンザックス! Oh! No!』

 

 武器を取り出すゲイツ。するとビーストのベルト前に魔法陣が展開し、ビーストはそこから細身の剣──ダイスサーベルを取り出した。

 二人の間に、斧の刃とサーベルの刃によって起こる火花。範囲は狭いが的確に振るうゲイツの斧に対し、範囲は広いが常識に捉われずに振るうビーストのサーベル。

 対照的な武器の扱い方だが、力量に差は無かった。

 強打と強打が衝突し、一際派手な音と火花を散らす。

 ビーストは素早く右手の指輪を変え、ドライバーに挿し込む。

 

『バッファ!』

 

 挿し込んだのは、水牛の雄々しい姿が彫られた指輪。

 

『ゴー! バッバ、ババババッファ!』

 

 ビーストの右肩に水牛の頭部を模した装甲と、赤い色のマントが装着される。

 

「おりゃっ!」

 

 ビーストが右手で地面を叩く。赤い衝撃が地表を走り、それにゲイツの足が触れた途端、突き上げる衝撃が発生し、ゲイツの体は宙に打ち上げられる。

 

「くっ!」

 

 視界がぐるりと回る中で、ビーストが右手の指輪をサーベルに挿し込む姿を見つける。何をしようとしているのか、似た様な技を持つゲイツはすぐに察し、自分もまたゲイツライドウォッチをジカンザックスに填める。

 

『フォー! バッファ! セイバーストライク!』

 

 振るわれたサーベルから現れる四匹の水牛の幻影。実体を持つそれが、ゲイツをその角で貫く為に疾走する。

 

『フィニッシュタァァイム! ゲイツ!』

 

 しかし、その角の群れを阻む──

 

『ザックリカッティング!』

 

 ──ゲイツ必殺の刃。

 水牛の突撃を、刃から発せられるエネルギーが受け止める。均衡した力は行き場を失い、爆発となって自らを完結させる。

 爆発で閉ざされる視界。ゲイツが一瞬見逃した内に、ビーストの姿は消えていた。

 何処へ行ったのか。その声無き問いの答えは、向こうから教えてきた。

 

『──! カメレオン! セイバーストライク!』

 

 声は背後。ゲイツはジカンザックスを弓モードにして振り返ろうとするが間に合わない。

 次に来る衝撃に覚悟を決めようとしたとき──

 コツン、という軽い衝撃が脛に受ける。

 見下ろすとカメレオンの幻影が懸命に舌でゲイツの脛を突いている。

 爪先でカメレオンの幻影を軽く蹴ると、呆気無く消えてしまった。

 

「こんなときに一かよー!」

 

 少し離れた場所でビーストが頭を抱えている。右肩は水牛ではなくカメレオン。赤から緑のマントに変わっていた。

 

「──なんのつもりだ?」

 

 ジカンザックスで狙いながら真意を問う。

 

「こっちは真面目だっつーの。──まあ、こんなもんか。取り敢えずは」

 

 ビーストは変身を解く。それを見て、ゲイツも変身を解いた。

 

「試させてもらったぜ。運はお前の方が良いみたいだ。まあ、実力なら俺の方が上だな」

「……ならもっと試してみるか?」

 

 下に見られたことにカチンときたのか、負けず嫌いな一面を見せるゲイツ。仁藤は『冗談だよ』と言って笑った。

 

「その腕なら、俺たち魔法使いの力を容易く奪われる心配は無いな」

 

 仁藤は置いてあったライドウォッチを拾い上げる。

 

「この二つは、過去にお前に渡されたんだったな。いつの間にか、俺やあいつの顔が浮かんでたが」

 

 仁藤は手に持つライドウォッチをゲイツに放り渡──そうとして途中で止める。

 

「一つ聞いていいか?」

「何だ?」

「お前は、この力で何をするつもりだ?」

「アナザーライダーを倒す。それだけだ」

「違う違う。もっと深い理由が知りたいんだよ。お前が最終的に何がしたいのかが知りたい」

「……話す必要は無い」

「じゃあ、これ、やんね」

 

 手に持っているライドウォッチを引っ込める。

 ゲイツは苦虫を嚙み潰したよう表情をした後、一言だけ言う。

 

「……未来を救うためだ」

「ふーん……未来の為か……」

 

 仁藤は笑うことなく、その言葉を噛み締めるとライドウォッチをゲイツに向かって投げた。

 

「やるよ、それ」

 

 投げられたそれを慌てて受け取る。

 

「俺たちの力を遠慮なく使え──何かお前、危なっかしい感じがするからな」

 

 仁藤は笑い、張ってあるテントに戻る。

 

「おい、これ──」

「あー。皆まで言うな。感謝の言葉はいい。あと先輩からのアドバイスだ。明日の命を救うのも悪くないが、今日の命を救うのも悪く無い。意外と繋がっているもんだぜ?」

 

 最後に助言を送り、テントの中に入ってきっちり入口も締めてしまう。

 ゲイツは、渡された二つのライドウォッチを見る。どちらもアナザーメイジと異なるライダーの顔が描かれていた。

 少し悩んだ末、ゲイツは嫌々ながらもある言葉を呼ぶ。

 

「……ウォズ」

「珍しいね。君の方から私を呼ぶとは」

 

 名を呼んで少しも経たないうちにウォズが現れた。

 

「何か用かな?」

「……渡されたライドウォッチが、二つともアナザーライダーと同じ力じゃない」

「そのことか。問題は無い。姿は違えど力の根源は同じ。そのライドウォッチならあのアナザーライダーを倒せる」

 

 ウォズが説明するに、ライダーの中には見た目が違うが同質の力を持つライダーたちが存在する。多少効果に差はあるが、同質の力ならばアナザーライダーを完全に消滅出来ると言った。

 

「そうか……なら」

 

 ゲイツはウォズに、仮面ライダービーストの顔が描かれたライドウォッチを突き付ける。

 

「──奴に持っていけ」

「……ほう? 君も我が魔王に対する敬意の払い方を覚えたのかな?」

「違うな。最初から最後まで奴の筋書き通りに動くのが癪なだけだ」

「まあ、そういうことにしておこう」

 

 突風が吹き、枯葉が巻き上がる。すると、ウォズの姿は消えていた。

 ゲイツは、不満そうに鼻を鳴らすと、時間を行き来するマシン──タイムマジーンを呼び出し、2012年へ跳んだ。

 

 

 ◇

 

 

 ジオウは苦戦していた。一度はアナザーメイジを倒したが、今は逆に倒されそうになっている。

 その理由は、目の前並ぶ四人のアナザーメイジたち。

 骨の翼を広げるアナザーメイジ。肥大化した左手の爪を構えるアナザーメイジ。骨の尾を揺らすアナザーメイジ。そして、腹部から巨大な口をせり出したアナザーメイジ。

 アナザーメイジを倒した後、戦いは継続し、もつれた末に人の居る場所まで移動してしまった。そこでアナザーメイジは、二人の人間に力を与えてアナザーメイジ化。更に呼び出されてツクヨミのアナザーメイジも加わり、数の力で押されていた。

 

『フレイム』

『サンダー』

『ブリザード』

『グラビティ』

 

 四人のアナザーメイジが一斉に発動させる魔法。炎、雷、氷が、不規則な軌道を描いてジオウを襲う。

 

『アーマーターイム!』

『スリー! ツー! ワン! フォーゼ!』

 

 召喚したフォーゼアーマーがそれからジオウを守り、同時に分解されてジオウに装着される。

 

「うおりゃ!」

 

 両手に装着された推進器ブースターモジュールを放つ。ブースターモジュールは、アナザーメイジたちに何度も突進し、彼らを攪乱する。

 

「我が魔王」

「え? ウォズ? 何しに来たの?」

「私は何時だって魔王の為に来ます」

「今、忙しいんだけど……」

 

 ウォズを見ながらもチラチラとアナザーメイジたちの様子を窺う。

 

「これを」

「これって……」

 

 ウォズからライドウォッチを手渡される。

 

「どうしてウォズが?」

「そんなことよりも、早くその力を使った方が良いのでは?」

 

 アナザーメイジたちがブースターモジュールを魔法で迎撃し始めている。

 ジオウは、渡されたライドウォッチをじっと見つめる。

 

「何か、行けそうな気がする!」

『ビースト!』

 

 渡されたライドウォッチのスイッチを押し、フォーゼライドウォッチと交換する。

 

『アーマーターイム!』

『オープン! ビースト!』

 

 ジオウの前に黄金の仮面を持つライダーアーマーが出現し、獣の様に咆哮するジェスチャーを見せる。

 

「おりゃっ!」

 

 新たなアーマー──ビーストアーマーに前蹴りを入れると、各パーツに分かれ、ジオウへと装着される。

 マスクは鬣を連想させる形となり、顔の文字の『ライダー』は『ビースト』へ変わり、左肩にはビーストの顔を模した装甲。右肩には、黒い四角の枠の中に隼、水牛、カメレオン、イルカのレリーフが納められた装甲。その装甲には橙、赤、緑、青という配色のマントが装着されている。

 

「祝え!」

 

 ウォズの高らかな声。そして、ブースターモジュールが消えたことでアナザーメイジたちはジオウたちに意識を向ける。

 

「全ライダーの力を受け継ぎ、時空を超え過去と未来に知ろしめす時の王者。その名も仮面ライダージオウビーストアーマー! また一つ、ライダーの力を継承した瞬間である」

「それ毎回言うの?」

「ええ、大切な儀式なので」

 

 呆れた様に問うジオウに、ウォズは満足した笑顔で即答。

 

「では我が魔王。賊の退治を」

 

 頭を下げながらウォズが下がると、アナザーメイジたちは停まっていた時が動き出したかの様に走ってきた。

 右肩のカメレオンのレリーフが光る。緑のマントから舌の様な線が伸び、アナザーメイジの一人に巻き付くと、もう一人に叩きつける。

 今度は隼のレリーフが光る。ジオウが地面を蹴って飛び上がると落下することなく、そのまま宙を疾走。

 

『ジカンギレード! ケン!』

 

 出したジカンギレードの刃でアナザーメイジの一人をすれ違い様に斬る。

 アナザーメイジたちの背後に回ると、水牛のレリーフが光る。

 

「はあ!」

 

 右拳を地面に打ち付ける。赤い波動が広がり、アナザーメイジたちにそれが届くと彼らを一斉に宙へ打ち上げた。

 その隙に、ジオウはビーストライドウォッチをジカンギレードに填め込む。

 

『フィニッシュタァァイム!』

 

 すると、ジオウの前に半透明のサイコロの幻影が現れ、高速で回る。

 

「え? ……止めればいいの?」

 

 手で軽く小突く。止まったサイコロの目は三。

 

『スリー!』

「いいのこれ? それとも悪いの?」

『ビースト!』

 

 訳の分からないままジカンギレードを構える。

 

『ギリギリスラッシュ!』

 

 流れのままに剣を振るう。現れるのは三人のジオウの幻影。アナザーメイジたちに飛び掛かると斬り上げ、斬り下げ、貫く。

 爆発する三人のアナザーメイジたち。爆発が収まると三人の男女が横たわっていた。その中にはツクヨミの姿もある。

 ジオウの仮面の下で、ソウゴは固唾を呑む。すると、三人の呻く声が聞こえ、取り敢えず無事であったことに安堵した。

 

「何でだよ……」

 

 数というアドバンテージを失ったアナザーメイジがポツリと呟く。

 

「何で俺の邪魔をするんだよ! この力が、この力さえあれば、全部上手く行く筈だったのにぃぃぃぃ!」

 

 無茶苦茶に魔法を連打するアナザーメイジ。最早子供の癇癪に等しかった。

 魔法の嵐を上手く躱し、アナザーメイジに接近するとジオウは彼を壁に押し付ける。

 

「そうかな? ライダーの力は、何かを上手くいかせる力じゃない──何かを守る為の力だ!」

「だ、だから俺は……お嬢さんの為に……」

「彼女を襲って、怖がらせて、本当に彼女の為に、って言えるのかな?」

 

 アナザーメイジは言葉を詰まらせる。

 

「あんた、あの人ことが好きなんだろ? 好きならこれ以上傷付ける様なことはするなよ。彼女だけじゃない。あんたも後悔して傷付くだけだ!」

 

 早瀬の奥底にある本当の想い。木ノ下香織への恋心。ただ喜んで欲しくて、ただ悩み、苦しむ姿が見たくなくて、ただ、彼女に幸せを願って。

 

「う、うるさぁぁぁぁぁぁい!」

 

 だが、今の早瀬には立ち止まる勇気は無かった。

 

『スペシャル』

 

 分け与えた力が全て戻ってきたことで、アナザーメイジは完全なる力を解放させる。

 飛翔する羽。蠢く尾。鈍く輝く爪。大きく開かれる第二の口。その姿は悪魔を連想させる。

 

「うああああああああああ!」

 

 アナザーメイジは叫びながら飛び上がる。一定の高さまでいくと周囲に四つの魔法陣が現れ、それらがアナザーメイジに重なる。

 

「──俺は守るよ」

『フィニッシュタァァイム! ビースト!』

 

 二つのライドウォッチのスイッチを押し、力を合わせる。

 飛び上がり、ジクウドライバーを回す。

 

『キマイライズ! タイムブレーク!』

 

 前方宙返りをしながら、浮かび上がる金の魔法陣の中へと入るジオウ。

 アナザーメイジは、突き出した右足に四色の光を宿しながら落下。ジオウは、右足に黄金の輝きを放つ獅子の頭の幻影を宿してそれを迎え撃つ。

 衝突し合う力と力。拮抗する力は、空中に輝きとなって散っていく。

 力は互角。ならばその均衡を崩すのは──

 

『フィニッシュタァァイム! ビースト!』

 

 ジオウは、もう一度ライドウォッチを押す。

 

「あんたの!」

 

 更にベルトを回転。

 

「本当の想いを!」

『キマイライズ! タイムブレーク!』

 

 巨大化する獅子の頭が、アナザーメイジを呑み込み、噛み砕く。

 

 ──相手を思う心。そして、それに向かって恐れることなく進む勇気であった。

 

 

 ◇

 

 

 そこに早瀬が来たのは六年振りであった。

 かつてマジックハウス『キノシタ』があった場所には、既に別の店が構えている。

 変わらないものは無いという哀愁を感じる。

 

「もしかして……早瀬君?」

 

 驚き、見るとそこには見知った女性と見知らぬ子供。

 

「もしかして、お嬢さんですか?」

「凄い偶然! また会えるなんて……」

 

 六年間音沙汰無しであった早瀬との再会に、香織は素直に喜ぶ。

 

「その子は……?」

「ええ。私の子よ」

 

 不思議と早瀬にショックは無かった。幸せそうに子供を紹介する香織の姿を見て、安心している自分が居ることに驚く。

 変わらないものは無い。改めてそう思う。

 早瀬は、香織の子供の前に立ち、身を屈める。

 かつてマジックハウスで働いていたときは、人と碌に目を合わせることも出来なかった。

 

「初めまして。お名前は?」

 

 だけど、今は合わすことが出来る。

 




アナザーメイジ
身長:195.0cm
体重:80.0kg
特色/能力:魔法を操る/力の一部を与えてアナザーメイジ化させる

先にどちらが見たいですか?

  • IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
  • IFゲイツ、マジェスティ

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