仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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アナザーAクウガ2000 その3

 アナザーAクウガに対して有効打となる筈のクウガアーマーの一撃が不発に終わった。

 

「どうして効かないんだ……!」

 

 同じライダーの力で倒せないとなると、ジオウたちは完全に詰みとなってしまう。

 今もアナザーAクウガは負傷した箇所を凄まじい速度で再生させていた。脱皮をしてまた強くなられるよりもマシかもしれないが、ジオウたちにも体力の限界というものがある。連戦すれば先に底を突くのは間違いなくジオウたちの方。

 

『がが、あああ、ああああ!』

 

 人語を発する知識すら奪われたかの様に理性無き叫び声を上げるアナザーAクウガ。しかし、その複眼はジオウたちの存在を敵としてはっきりと捉えていた。

 

「ちっ!」

 

 クローズマグマによって使い物にならなくなっていた隻腕が再生していく。このまま攻撃をされるよりも先にゲイツの方から仕掛けていく。

 隼の力で飛翔し、空中で加速するとそのまま水牛のレリーフを輝かせる。水牛の頭部を具現化させた力が右肩を覆い、アクセルとタイムマジーンの協力攻撃でまだ完全に治っていない腹部の傷に水牛の頭で突進する。

 硬い甲殻に沈んでいくゲイツの体。アナザーAクウガの口から黄土色の体液が吐き出される。

 しかし、その攻撃でも転倒させるに至らず、アナザーAクウガは数歩下がって立ち止まるに止まってしまう。

 

「うおらぁ!」

 

 そこにすかさず殴り掛かっていくクローズマグマ。アナザーAクウガの顔に蹴りを打ち込む。

 巨体が転倒し仰向けとなる。だが、ゲイツとクローズマグマにそれへの喜びは無い。戦っているからこそ分かってしまう。この程度では到底倒し切れないと。

 案の定、上体を起こすアナザーAクウガ。その顔面に衝撃波がぶつかり、顔を上向きにさせる。

 アクセルのエンジンブレードから撃たれた衝撃波。ゲイツ、クローズマグマに続きアクセルもまた参戦しようとする。

「照井刑事! 大怪我しているんだから大人しくしていないと!」

「大丈夫だ……!」

 

 明らかに歯を食いしばって耐えている声であった。

 

「ちょっと待て」

 

 その肩にビルドが手を置き、制止させる。

 

「まだ戦える……!」

「だから待てっての」

 

 ビルドが置いた手が燃え上がり、その炎がアクセルを包み込む。

 

「何っ!?」

「ええっ!?」

 

 炎上するアクセル。本人もジオウもビルドの突然の凶行に驚く。だが、少し間を置いてアクセルはあることに気が付いた。

 

「熱くない、だと……」

 

 全身を焼かれているのに全く熱を感じない。それどころか、先程まであった体の痛みが消えていた。

 

「このベストマッチの力だ。大分マシだろ?」

「──礼を言う」

 

 怪我を治癒されたアクセルがエンジンブレードを振り抜くと、包み込んでいた炎が消え去った。

 全快したアクセルが、二人に続いてアナザーAクウガへ戦いを仕掛ける。

 アクセルの治癒を終えたビルドもフェニックスロボのフォームを生かし、炎と機動性でアナザーAクウガを攻撃していく。

 四人の仮面ライダーがアナザーAクウガとの戦闘音が響く中でジオウは今までになく頭を動かしていた。

 クウガアーマーの一撃でもアナザーAクウガを倒し切れない、その理由は──そう考えた時、ビルドのある言葉が思い浮かぶ。

 

『ティードだよ。尤も二回も脱皮して姿も強さも変わっているけど』

『早くどうにかしないとまた脱皮して力が増すぞ』

 

 アナザーAクウガは、アナザークウガから二回の脱皮を経て力を増した。つまり二段上の力を持っている。ならば、今のクウガライドウォッチの力ではアナザーAクウガを倒すのに力不足だとしたら──

 

「どうやったらティードを倒せるだけの力が……」

 

 その考えに至ったが、肝心のクウガライドウォッチをパワーアップさせる都合のいい手段など思い付かない。

 何か方法はある筈だと分かってもその答えを導き出すことは出来ない。それよりもアナザーAクウガを相手に皆が戦っている間、棒立ちでいることも出来ず、答えの出ない難題を抱えたままジオウも戦いへ赴く。

 五人のライダーによって確実にダメージが与えられていっているが、決定打が出ない。アナザーAクウガも何度も打ち倒されているが、その度に立ち上がってくる。心なしか倒れる度に再生の速度が早まっている気がした。

 

『キマイライズ! タイムバースト!』

『ボルケニックアタック!』

 

 顕現した獅子の頭が、召喚された八頭の火龍が、アナザーAクウガに咬み付く。獅子と火龍を纏ったゲイツとクローズマグマの必殺の蹴りにアナザーAクウガは大きく仰け反り、そのまま転倒──するかと思いきや踏み止まり、再生を終えた隻腕で二人を弾き飛ばす。

 

「うおっ!」

「くっ!」

 

 ビルの壁面に叩き付けられる二人。

 

『エンジン! マキシマムドライブ!』

 

 アクセルが突き出したエンジンブレードから巨大なA字の型のエネルギーが撃ち出されアナザーAクウガに直撃する。アナザーAクウガは呻いて片膝を突くがすかさず反撃の火球を吐いた。

 

「おおっ!」

 

 足元に火球が命中し、爆風で飛ばされるアクセル。

 どんどんアナザーAクウガがこちらの攻撃に対応出来る様になってきており、攻撃が効き難くなってきていた。

 

「おりゃあ!」

 

 ジオウはそれでも臆することなくアナザーAクウガに向けて跳躍すると、その顔に拳を打ち込む。アナザーAクウガの首が傾くが倒すには至らず、逆に反撃の隻腕がジオウに伸ばそうとする。

 

『オクトパス! ライト! ベストマッチ!』

 

 伸ばされる隻腕。しかし、横から伸びた桃色の八本の触手がそれを絡め捕り、締め付けて動きを止める。

 

『稲妻テクニシャン! オクトパスライト! イェーイ!』

 

 タコと電球の形の複眼。右肩にはタコの頭部が付いており、触手はそこから伸びていた。左肩には電球型のアーマー、左腕には遮光されたスポットライトが付いている。

 

「おおおおお!」

 

 オクトパスライトフォームの触手で隻腕を何とか止めていビルドであったが、アナザーAクウガが引けば、足元がじりじりと滑っていきドンドン引き寄せられていく。

 しかし、ビルドの手助けのおかげでジオウは無事地面に降りることができ、すぐに距離をとった。

 それを見たビルドは、ドライバーのレバーを即座に回す。

 

『ボルテックフィニッシュ!』

 

 触手を両手で掴みながら右肩をアナザーAクウガへ突き出す形にすると、タコの口からスミが吐かれアナザーAクウガの上半身を雲の様に覆う。

 視界を奪われ動揺するアナザーAクウガ。そこへ左腕のスポットライトが──と、攻撃のチャンスを作るビルドであったが、ビルドと同じ考えを持つ者がもう一人いた。

 

『フィニッシュタァァイム!』

『クウガ!』

 

 ジオウもまたこれをチャンスだと判断してしまい、攻撃の体勢に移ってしまったのだ。

 開けた距離を走ることで一気に詰め、跳躍と共に前方宙返り。キックの体勢となってスミの中に捕らわれたアナザーAクウガに当てようとする。

 

「あ、おい! 待て!」

 

 ビルドが気付いた時にはもう遅かった。スポットライトを遮光していた板が開き、閃光が発せられる。左肩の電球で発電された光には多量の電気が含まれており、スミに光が当たると雷雲の様に帯電し始める。

 

「え?」

 

 ジオウも飛んでいる最中に異変に気付くがこちらも遅かった。ジオウの右足がスミの中へ突っ込まれた。

 

「あががががががががが!」

 

 帯電したスミに触れたことで感電するジオウ。雷鳴と共にスミが爆ぜ、その衝撃で転倒するアナザーAクウガと、吹っ飛ばされるジオウ。

 今まで上手く連携出来ていたが、ここに来て大きな連携ミスが起こってしまう。共に戦った時間は極短いものであった為、今までが奇跡的であったに過ぎないかもしれない。

 だからこそ気を抜けば大きな失敗が生まれる──と傍から見ればそう思うだろう。だが、事情を知る者がここに居れば、このことを奇跡と讃えるに違いない。

 

「流石、我が魔王! 運命という名の偶然すら我が魔王の前では必然なのかもしれない!」

 

 今のウォズの様に。

 

「大丈夫か!?」

 

 慌ててビルドがジオウに駆け寄る。ジオウの体はまだ帯電しているのか、電流が走っている。

 

「ん?」

 

 ビルドはおかしなことに気付く。青白い電流が金色へと変わり、脈動する様に現れては消えてを繰り返し続ける。

 すると、クウガアーマーに変化が起こった。装甲を縁取る銀色が金へと変色し、右足に金色のアンクレットが新たに出現する。そして、ジクウドライバーのクウガライドウォッチも変化し、赤と金の外装が金一色となった。

 

「変化した……?」

 

 別の姿へと変わったクウガアーマー。彼らは知る由も無かったが、仮面ライダークウガは死の淵に瀕した際、電気ショックを受けたことでベルトであり力の根源であるアマダムが影響され新たな力を引き出すことが出来た。金の力或いはライジングフォームと呼ばれるこの力を。

 ティードは追い詰められたことで生まれた屈辱や怒りなどの負の感情でそれに至ったが、ジオウは偶然にも本家と同じ方法でライジングフォームの力を得た。

 全身の痙攣や痺れが無くなったジオウは自分の体を見て、変化に気付く。

 

「なんか、さっきよりも行ける気がする!」

 

 ジオウは直感的な自信が湧いてくるのを感じた。すぐに立ち上がり、アナザーAクウガを見る。アナザーAクウガも立ち上がっている最中であった。

 

「行くよ!」

「あ、おい!」

 

 ビルドが見えている前でジオウは走り出し、その途中でライドウォッチを押し、ジクウドライバーを一回転。

 

『フィニッシュタァァイム! ライジングマイティ!』

 

 ジオウが走る度に両足に稲妻の様な金色の光を発し、後には炎の足跡を残す。

 

『ライジング! タイムブレーク!』

 

 跳躍。前方宙返り。体勢を変え、右足を突き出す。稲妻を放ち、炎を纏う右足から繰り出されたキックがアナザーAクウガの胸部を打つ。

 

『がっ!』

 

 大きく刻まれた『キック』の文字が燃え上がり、帯電しているかの様に金色に輝く。

 背中から倒れるがキックの威力はそれだけでは抑え切れず、背中を削りながら巨体が何メートルも後方へ滑っていく。

 必殺の一撃を直撃させたジオウ。その右足から白煙が昇っている。

 ビルドにはアナザーAクウガを倒した様に見えた。だが、打ち込んだ本人の感想は違った。

 

「もう少し……!」

 

 アナザーAクウガを倒すにはあと一押し足りない。現にアナザーAクウガは呻いているもののそれだけであり、刻まれた『キック』の文字も徐々に薄れ始めていた。

 

「戦兎! もう一度俺に電流を流して!」

「いや、待て。これ以上は危険かもしれないんだぞ」

 

 下手をすれば命を落としかねない提案に、ビルドは簡単に了承は出来ない。

 

「俺を信じて! 俺は、王様になるまで死ぬつもりは無いから!」

 

 合理的に考えれば仮に同じ事をしてジオウがもう一度パワーアップする保証はない。ただジオウが命の危機に晒されるだけで終わる可能性が高い。

 しかし、そう考えながらもビルドは左手を差し出していた。確率ではなくジオウが『王様になる』という強い意思を信じて。

 

「──死ぬなよ」

「死なないよ」

 

 ジオウがビルドの手を掴む。肩の電球が発光し、発電が始まるとそれがビルドの手を通じてジオウへ流れる。

 

「う、く、ああああああ!」

 

 目でも音でも分かるぐらいの電気がジオウへ注ぎ込まれていく。苦鳴を上げながら耐えるジオウ。しかし、かなりの量の電気を流しても変化が起こらない。

 

「どうなってる!? さっきと同じぐらい流している筈なのに!?」

 

 変化の起きないジオウに、ビルドはこれ以上は危険だと思い手を離そうとする。

 

「まだ、だよ……!」

 

 ジオウがその手を強く掴んで離さない。

 

「きっと、電気の、力が、足りないんだ……! もっと電気を……照井刑事!」

 

 ジオウがアクセルの名を叫ぶ。アクセルのエンジンブレードには電気を起こす力があるのをジオウは知っていた。

 

「それで、俺に、もっと、電気を……!」

 

 エンジンブレードのことを指しているのにはすぐに気付いたが、躊躇する。アクセルの目から見ても危険な状態にあったからだ。

 アクセルは仮面の下で強く目を閉じ葛藤する。長い時間は掛けられない。その分ジオウを苦しませることになる。

 共に戦った仲間の命を奪いかねない行為。悩まない方がおかしい。おかしいが、アクセルが目を開けた時には既に覚悟は出来ていた。

 アクセルは急いで二人に近付き、エンジンブレードを構える。

 

『エレクトリック!』

「照井!」

「──桐生。もしものことがあれば、全ては俺が背負う」

 

 もし、これでジオウが死ぬこととなればそれを全て背負う。アクセルからはその覚悟が伝わってくる。

 

「馬鹿言うんじゃないよ。俺は、俺のしたことを誰にも背負わせるつもりはない」

 

 ビルドもアクセルの言葉に覚悟を決める。

 

「行くぞ、常磐!」

 

 放電するエンジンブレードをジオウへ押し当てた。

 

「うああああああああああ!」

 

 今まで以上の電気が流れ込み、ジオウは思わず絶叫を上げてしまう。

 

「気をしっかり持て!」

「ここで死ぬつもりはないんだろ!」

 

 すぐにでも止めたい気持ちを押し殺し、ジオウへ電気を流し続ける。

 

「くっ! ううううう!」

「王様になって世界中の人たちを幸せにするんだろ!」

「俺たちをその王国にスカウトしたんだ! お前が居なくちゃ意味ないだろ!」

 

 激励を飛ばす二人。ジオウの体に電流が吸収され、そして──

 

「うっ──」

 

 ジオウは力無く倒れてしまう。

 

「おい!」

「しっかりしろ!」

 

 電気を止め、ジオウを抱え起こそうとするが──

 

「前向きに……」

『は?』

「前向きに、考えて、おいてね……スカウトの話……」

 

 ジオウは意識を失っておらず、自力で立とうとしていた。

 爆ぜる様な音がジオウから鳴る。体から金色の電気が放出され、クウガアーマーを変化させていく。

 赤い装甲は黒く染まり、右足だけにあった金のアンクレットが左足にも装着される。金一色のライジングマイティクウガライドウォッチは、黒と金の外装へと変わった。

 

「祝え!」

「うおっ!」

「いつの間に!」

「あ、ウォズ……」

 

 この時を待ちかねていたと言わんばかりに声を張り上げながら登場するウォズ。

 

「全ライダーの力を受け継ぎ、時空を越え過去と未来をしろしめす時の王者。その名も仮面ライダージオウクウガアメイジングマイティアーマー! 苦難を乗り越え、驚異なるライダーの力を継承した瞬間である!」

 

 敵がすぐ側に居るというのに、新しいライダーアーマーを纏うジオウへ祝福の言葉を捧げるウォズもアクセルもビルドも呆れた眼差しを向けた。

 

「ヒントも無く自らその力を手にするとは、まさに驚異! そのアーマーを纏うに相応しい偉業だったよ」

「もしかして、ウォズ。ずっと見てた?」

「ええ。見守らせてもらったよ」

「その言い方、何かずるいなー」

 

 ウォズの行動にしっくりと来ないものを感じるが、アナザーAクウガに対するアメイジングマイティアーマーの力にはしっくりと来ており、いつものあの台詞が自然と出てくる。

 

「何か、行けそうな気がする!」

 

 親指を除く指を揃えた右手を左斜め前に出し、左手はドライバーの上に沿える様に置く構えをとるジオウ。

 構えるジオウに、アナザーAクウガが立ち上がり見下ろす。その複眼には明らかに警戒する色が浮かんでいた。理性が無くなり始めていても、自分を脅かす力であることは本能で理解している様子。

 ジオウを挟んで左右に並び立つビルドとアクセル。

 

「俺たちが奴の隙を作る」

「お前は、そこに最高の一撃を叩き込んでやれ」

「うん。分かった!」

 

 アクセルはエンジンブレードのトリガーを押して内部のエンジンメモリから力を引き出し、ビルドはフルボトルを換え、フォームも変える。

 

『スチーム!』

 

 エンジンブレードから大量の蒸気が発生。白い蒸気はアナザーAクウガへと伸びていき、その視界を白一色に染める。

 

『ウルフ! スマホ! ベストマッチ!』 

『Are You Ready?』

「ビルドアップ!」

 

 狼の成分ウルフフルボトルとスマホの成分スマホフルボトルを組み合わせることで誕生するベストマッチ。

 白銀と青の装甲が前後から挟まる。受話器と狼の複眼に、狼の爪を模した鉤爪とスマートフォン型の盾を装備したビルドが形成された。

 

『繋がる一匹狼! スマホウルフ! イェア!』

 

 スマホウルフフォームになったビルドはすぐ必殺技の為にレバーを回し始める。

 

『ボルテックフィニッシュ!』

 

 ビルドを中心にしてアプリアイコンが映写され、輪を作る。ビルドがアナザーAクウガを指差すと輪になっていたアイコンがアナザーAクウガへ移動し、輪投げの様にアナザーAクウガを輪の中心へ入れる。

 映写されたアイコンの中を黒い狼の幻影が走り始め、スチームの中に捕らわれているアナザーAクウガ目掛け、アイコンの中から飛び出した。

 視界が閉ざされた中、アナザーAクウガは二次元の狼の幻影に四方から咬み付かれ、引っ掛かれ翻弄される。

 隻腕、火球を以て撃退しようとするがどれも空振りになってしまう。

 アナザーAクウガの苛立ちが頂点へ達しようとした時、それは聞こえた。

 

『フィニッシュタァァイム! アメイジングマイティ!』

 

 熱せられた本能が、冷水でも浴びせられたかの様に冷え、冷静を通り越して恐怖を覚えさせる。

 

『アメイジング!』

 

 咆哮を上げ、来るなと喚く。このまま背を向けて逃げ出そうとするが、足が思った様に動かず、その場に縫い留められてしまう。

 

『タイムブレーク!』

 

 纏わりつく蒸気が一気に消し飛ばされ、それは現れた。両足を突き出し、そこから雷光の如き金色の光を生み出しているジオウ。

 

「おりゃああああああああ!」

 

 両足がアナザーAクウガの胸部へと命中。ジオウは命中と共に曲がった膝を思い切り伸ばすと、アナザーAクウガの巨体が面白いぐらいに簡単に吹き飛んだ。

 その胸部に『キック』の文字を二つ刻みながら蹴り飛ばされるアナザーAクウガ。ティードの城目掛けて飛んでいく。

 アナザーAクウガに刻まれた二つの文字が今度は消えることが無かった。それどころか文字を中心にして亀裂が生じ始める。

 このままでは終わる。そう直感したアナザーAクウガは、覚悟を決め、その手を自分の胸に突き刺す。

 直後、アナザーAクウガの巨体はティードの城の城壁を突き破っていった。

 

 

 ◇

 

 

 空中でデンライナーとアナザーゴウラムが火花を散らす。

 アナザーゼロライナーと一体化したアナザーゴウラムは、巨体そのものを武器とし、尾の様に取り込んだアナザーゼロライナーを振るう。

 デンライナーはそれを巧に躱しながら縦横無尽に飛び回るアナザーゴウラムと並走すると、各車両から武装を展開させた。

 先頭車両からはカノン砲。二号車からは犬の頭部型のランチャー。三号車からは猿を模した爆弾投擲機。四号車は雉型のミサイルを発射する発射台。

 雉型ミサイル発射台からバーディーミサイルが発射され、アナザーゴウラムを追尾するとその両翼で固い甲殻を斬り付ける。

 斬り付けて箇所から黄土色の体液を流すアナザーゴウラムは、バーディーミサイルを嫌がって離れようとする。そこへ先頭車両のカノン砲──ゴウカノンと二号車のドギーランチャーが火を噴く。

 連射される光弾がアナザーゴウラムの動きを鈍らせ、その間にドギーランチャーのミサイルが何発も直撃する。

 爆炎に包み込まれ、蛇行するアナザーゴウラム。炎と煙に視界を覆われ、気付くと隣を走っていたデンライナーの姿が無い。

 アナザーゴウラムの頭に球体が接触。同時に爆発を起こす。既にアナザーゴウラムの上へ移動していたデンライナーが三号車のモンキーボマーから爆弾を投下していた。

 上をとったことで先頭車両から四号車までの火器が一斉発射され、アナザーゴウラムを集中砲火する。

 大顎は片方欠け。甲殻が破壊され、胴体となっているアナザーゼロライナーも破壊されていく。

 遠距離攻撃の手段を持たないアナザーゴウラムは、これ以上の戦いは不利だと悟り逃亡を図ろうとする。

 アナザーゴウラムの意識は完全にデンライナーへ向けられていた。だからこそ、真下から来るそれに気付くのに一歩遅れる。

 鳴り響く汽笛の音。ゼロライナーがドリルを唸らせ、下からアナザーゴウラムへ迫る。

 アナザーゴウラムはとっさに身を捩った。ドリルはアナザーゴウラムの体を掠り、脚を一本持っていく。

 だが、被害を最小限に抑えられた、とアナザーゴウラムが思った直後、ゼロライナーの二号車『ナギナタ』の車両上部が変形してプロペラとなり、アナザーゴウラムの胴体をその羽で縦に斬り裂く。

 

 キシャアアアアアアアアアアア! 

 

 アナザーゴウラムは絶叫と体液をまき散らしながら悶え苦しむ様に空を右往左往した挙句、地面へ落下していった。

 アナザーゴウラムは倒したデンライナーとゼロライナーが地面に降りる。ゼロライナーの扉が開き、ゼロノスが出ると変身を解除する。その側にはフータロスも居た

 デンライナーも扉が開き、中から薄幸そうな青年と赤い鬼の様な怪人、青色の亀の甲羅を思わせる怪人、黄色く熊の様な大柄の怪人、小生意気そうな紫色の怪人が出てくる。

 

「野上……」

「侑斗、やっと見つけれた……っていうかそのイマジンは……?」

 

 侑斗の顔を見て、野上と呼ばれた青年は安堵の息を吐くが、同時に侑斗の隣にいるフータロスへ視線が向けられる。

 

「おい、てめぇ。勝手に居なくなりやがった。そのせいで俺たちは良太郎に付き合わされてあちこち行く羽目になっちまったんだぞ! それに誰だ!? そのイマジンは!? おデブはどうした! おデブ!」

「色々と言っているけど、先輩も心配してたんじゃない?」

「いい加減なこと言うな! 嘘吐き亀公!」

「素直やないからな、モモの字は」

「やーい、モモタロスのあまのじゃくー」

「うるせぇ! てめぇらも黙ってろ!」

 

 言い争ったかと思えば、騒ぎながら暴れ出す怪人たち。

 

「ギャアギャアうるせぇ連中だなぁ」

 

 フータロスがうるさそうに耳を押さえる。

 

「んだとぉ? つーか誰なんだよ! おめぇは! イマジンなのは間違いないが!」

「フータロスってもんだ」

「フータロスだぁ? パクってんじゃねぇぞ! パクリ野郎!」

「何がパクリだ! おめぇなんて知らねえよ! センスのねぇ見た目しやがって!」

「うるせぇ! 好きでこうなったんじゃねぇ!」

 

 争いはフータロスにも飛び火し、喧嘩が始まる。

 

「皆、ちょっと落ち着いて……!」

 

 青年は止めようとするが、か細い声では止めることが出来なかった。

 

「野上良太郎!」

 

 いきなり叫ばれたその名に、青年──良太郎は驚き、怪人たちの喧嘩も止まる。

 アナザーゴウラムの戦いで隠れていたアタルが騒ぎを聞いて出て来ると思わずその名前を叫んでいた。

 

「え? どちら様……?」

 

 知らない人間に名を呼ばれ戸惑う良太郎。しかし、アタルの口は止まらない。

 

「モモタロスにウラタロス! キンタロス、リュウタロス!」

 

 目を輝かせながら怪人もといイマジンである彼らの名を続けて出す。

 

「何であいつら俺たちのことを知っているんだ?」

「さあ? 僕にも分からない」

「俺らの名もいつの間に売れてたちゅーわけやな」

「わーい! 僕たち有名じーん!」

 

 この世界の事情を知らない為、アタルの存在に困惑する。

 

「野上。少しの間、こいつを頼む」

 

 アタルの腕を引っ張り、良太郎の下へ連れて行く。

 

「え?」

「俺はこいつの兄さんを助けに行く。デネブはもう先に行っている」

「二人で?」

「──いや、向こうで待っている奴らが居る」

「──うん、分かった。任せて」

 

 深くは聞かず、良太郎はアタルの預かることを了承する。

 

「まだ逃げている人たちもいる。そっちも任せた。俺はついでに元凶も叩いてくる」

「一体、ここで何が起きているの?」

「話すと長くなる。アタル、任せた」

「え!? 俺!?」

 

 説明を丸投げされたアタルが驚くが、侑斗は返答を待たずにゼロライナーへ乗る。

 

「おい! 行くぞ!」

 

 互いに胸倉を掴んでいるフータロスとモモタロスに声を掛ける。

 

「命拾いしたな!」

「それはてめぇの方だろう!」

 

 また喧嘩が始まりそうなので、他の三人のイマジンがモモタロスを羽交い締めにし、フータロスはブツブツと文句を言いながらもゼロライナーへ搭乗する。

 

「侑斗。無事に戻って来てね」

「──ああ」

 

 ゼロライナーが発進する。最終決戦の場所に向けて。

 




新年最初の投稿となります。今年もよろしくお願いします。

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