仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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究極の闇をもたらす者2018 その1

 アナザーAクウガを追って城へ乗り込んだジオウたち。アナザーAクウガが突き破った衝撃で内部は滅茶苦茶になっており、壁に亀裂が生じ、至る箇所で瓦礫が落ち、その落下に巻き込まれた怪人たちが抜け出そうともがいていた。

 怪人たちを後回しにし、上の階へ行く一同。その階にアナザーAクウガが居る筈の場所なので緊張感が高まる。

 扉を蹴破る様にして中へ入るが、アナザーAクウガの姿は無い。あの巨体が一瞬で隠れるとは考え難い。

 

「どこだ! ティード!」

 

 ジオウがティードの名を叫ぶ。城内にその声が反響していき、余韻を残す。

 カチャン、と小さな瓦礫が落ちる音。一斉に武器を構え、音の方へ向けた。

 

「まさか、ここまで、追い込まれるとはな……!」

 

 瓦礫にもたれ掛って立つティード。アナザーライダーの変身は解除したせいで理性を取り戻し、流暢な喋りに戻っている。

 整えられた髪は乱れ、額や口の端から流血しており、胸も血で濡れていた。満身創痍という姿だが、その両眼は今までにない殺気と怒気で満たされ、危うい輝きを発している。

 

「あと一秒、あと一秒判断が、遅かったら、終わっていた……!」

「それは!?」

 

 血に濡れたティードの手にはアナザークウガウォッチが握られている。ジオウたちは知らないが、アメイジングクウガアーマーの力がアナザーウォッチへ届く寸前、無理矢理引き抜き、強制的に変身解除していた。その判断の結果、アナザーウォッチを破壊されることは無かったが、代償として生身で痛みを受けることとなった。

 アナザーウォッチも無傷という訳では無く、一瞬でもライドウォッチの力に触れたせいで所々に罅が入り、辛うじて形を留めているのが現状である。

 

「もう諦めてシンゴを返せ。お前の力じゃ、俺たちには勝てない」

「シンゴを返して、この世界を元通りにしろ! 

 

 ティードに降伏を促すジオウとビルド。それを聞いて、ティードは哄笑する。

 

「くくく、はははははははは! 確かに俺一人ではクウガの力を引き出させてもアメイジングが限界だ……! だが、もし、それ以上の力を引き出す方法があるとしたら……?」

 

 苦し紛れの言葉には聞こえない。確かな勝機があるのを感じさせる。

 

「ジオウ。説得など無駄だ。ここで仕留める!」

「あ、おい!」

 

 ゲイツが弓モードのジカンザックスから光矢を射る。クローズマグマが止めようとしたが間に合わず、一直線にティードを狙うが──

 

「はっ!」

 

 ティードが手を翳すと、光矢は眼前で停止し消失してしまう。前にフルボトルバスターの光弾を止めたことがあるが、負傷し弱った今でもジカンザックスの光矢を止めるぐらいの力は行使出来るらしい。

 光矢を消し去ったティードは、そのままジオウたちへ掌を向ける。

 

「不味い!」

 

 何をするか察したジオウが、皆に逃げる様に言おうとするがティードの方が早かった。

 突き出された掌から波動が放たれ、ジオウたちを通過していくと彼らを停止させる。

 タイムジャッカー固有の時間停止能力により身動きがとれなくなってしまう。

 

「はははははははははは!」

 

 時間停止させられたジオウたちを嗤い、ティードは上の階を目指し足を引き摺りながら昇っていく。

 

「まだだ……まだだ……!」

 

 ブツブツと自分に言い聞かせる様に呟きながら、ティードは上へ上へと昇る。目指すはシンゴを封印した部屋。

 シンゴと自分、そしてアナザーウォッチがあればこの状況を打破することが出来る。ティードはアナザークウガウォッチを強く握った。腕の流血がアナザークウガウォッチへ伝わり、罅の中へ入っていくとあたかもアナザークウガウォッチが血を流している様に見える。

 

「俺は……俺は、この力で、王になる……!」

 

 全ての平成ライダーの原点であるクウガ。ティードによって新しく紡がれていく歴史の始まりに相応しい力であり、平成ライダーの中で最も魅了された力と言って良い。

 最強と認めた力とタイムジャッカーを超えた自分の力、そして、特異点でありこの世界で唯一平成ライダーの記憶を持たない存在シンゴ。

 シンゴの存在は、この世界に喚び出された仮面ライダーたちにとってアンチテーゼとなる存在。虚構、本物以前にシンゴの記憶の中に平成ライダーは存在しない。それを上手く利用すればジオウたちを纏めて葬ることも可能である。

 

「はは、ははははは!」

 

 追い詰められたが、最後の最後で逆転される仮面ライダーたちの絶望を思い描くと自然と笑いが零れ出てくる。

 そして、ティードは最上階のシンゴが居る間に辿り着き──

 

「よお」

「な、に……」

 

 ──シンゴが封印されている装置の前に立つ侑斗に声を掛けられ、足を止めざるを得なかった。

 

「馬鹿な……! いつの間に……!」

「気付かなかったか? お前が、常磐たちと戦っている間だ。常磐たちのおかげで楽に入れた」

 

 ティードは歯ぎしりをする。侑斗の侵入を簡単に許してしまったこと。それに察知出来ない程ジオウたちに追い込まれていたことが腹立たしくてしょうがなかった。

 

「そこをどけ……! シンゴから離れろ! それは俺の物だ!」

「言わなくたってどいてやるよ」

 

 侑斗が一歩横に動く。ティードは愕然とした。装置の中にシンゴの姿が無い。

 ティードの顔色が蒼白となる。

 

「シンゴをどこにやったぁぁぁぁ!」

「とっくに逃がしたに決まっているだろうが」

 

 ティードがここに現れる数分前に侑斗はここへ密かに潜入し、シンゴを救出していた。

 

 

 ◇

 

 

「おい、おい、起きろ」

 

 装置に閉じ込められたシンゴは軽く揺さぶられゆっくりと目を開ける。

 

「お兄ちゃんたちは……」

 

 侑斗とフータロスの顔を見て間が置かれる。目覚めたばかりで寝惚けたようであったが、すぐに完全に覚醒した。

 

「早く、早くしないとあいつが!」

「大丈夫だ。まだ戻って来ない。お前はこいつと一緒にここを出ろ」

 

 侑斗はフータロスを指す。フータロスの容貌にシンゴは少し躊躇する。

 

「まあ、ビビるのは仕方ねぇ、こんな見た目だ。アイツらと何も変わんねぇ。でもなぁ、本の少しの間だけでいい。俺について来てくれねぇか?」

 

 フータロスはしゃがみ込み、シンゴと同じ目線になる。

 

「病院で、助けようとしてくれた……」

「ん? まあ、そんなこともあったなぁ」

 

 2000年でシンゴをアナザーアクセルから助ける為に戦ったことを本人から改めて言われ、照れた様にフータロスは視線を逸らした。

 

「──うん。分かった。一緒に行く」

「良い子だ。今度お兄ちゃんになる奴は、やっぱ違うなぁ」

「もうなってるよ。アタルって、俺の弟だろ?」

「……気付いてたか。頭が良いな、シンゴは」

 

 誰よりも先に真相にたどり着いていたシンゴをフータロスは褒める。

 

「早くここから逃げろ。ゼロライナーを使え。フータロス、簡単な操作ならお前も出来るだろ?」

「お前、残るつもりなのかよ。止めておけって! ティードみたいな得体の知れない奴の相手をするのは!」

「いいから行け」

「それにお前、怪我をしてるじゃねぇか! 俺が離れたらその怪我だって!」

「大したことない。こんな怪我」

 

 侑斗は傷を軽く叩く。『いっ!』と一瞬言い掛けたが、すぐにその言葉を呑み込み『ほらな』、と言う。冷や汗をダラダラと流しながら。

 

「どう見てもやせ我慢じゃねぇか……」

「いいから行けっ!」

「ど、怒鳴るなよ……」

 

 フータロスの図星を指すが侑斗は聞く耳を持たない。今の侑斗の頭の中に突き刺す様に腕の痛みの信号が送られおり、治療すべきである。しかし、侑斗にとってそれは優先すべきことでは無い。自分のことより、シンゴを放っておくこと、ティードを放っておくことが出来ない。

 

「ティードを放っておけばまたシンゴは捕まる。だから、足止めさせておく必要がある。俺の役目だ。そして、シンゴを一刻も早くここから連れて行く必要がある。お前の役目だ。分かった? 答えは聞かない! ……ああ、くそっ! これじゃあいつの台詞だ!」

 

 何故か自分の言葉に苛立つ侑斗。

 

「ほら! 早く行け! 時間もあまり無いぞ!」

 

 脱出することを急かす。

 

「──ありがとう。俺、お兄ちゃんに助けてもらったこと絶対に忘れない」

「……大袈裟だ。こんなこと大したことじゃない。さあ、行け」

 

 突っぱねる様な言い方だが、侑斗は微笑を浮かべながらシンゴとフータロスを脱出させた。

 

 

 ◇

 

 

「馬鹿な……」

 

 ティードは膝から崩れそうになる。逆転の一手を求めてここへ来たというのに、既に自分の手から離れていた事実を知り、精神で辛うじて支えていた肉体が悲鳴を上げる。

 

「ティード! ……侑斗!?」

 

 時間停止から抜け出たジオウたちも現れ、侑斗の存在に驚く。

 

「侑斗! シンゴは!?」

「フータロスに任せてここから脱出させた」

「よし!」

「おっしゃあ!」

「侑斗! 流石だ!」

 

 シンゴの安全も確保出来た。残すはティードだけである。

 

「お前の企みもここまでだ。この世界は元に戻る」

 

 切り札であったシンゴはいない。周囲を取り囲む忌々しい平成ライダー。最後の最後で逆転。そして、絶望。思い描いていた真逆のことが起こり、ティードは呆然と立ち尽す。

 アナザーライダーという兵を失い、ティードもまたもうアナザークウガへ変身する力は残されていない。

 そんな絶望の中、潜んでいた悪意が動き出す。

 

「この時を待っていたぁぁぁぁぁぁ!」

 

 叫びと共に閉じられた空間内で起こる白い砂嵐。砂嵐によって一瞬だがティードへの視界を妨げられる。

 砂嵐が収まると、ティードの背後に元アナザーアクセルのイマジンが立っている。その腕はティードの首を絞め上げていた。

 

「お、まえ……!」

「待ってたぜぇ! ティード! このチャンスを!」

 

 逃亡したイマジンがこの場所に現れたことを驚くジオウたち。だが、どう見てもティードを助けに来た様に見えない。何も無いイマジンであったも、ティードに向ける敵意は明らかであった。

 

「消えたと、思ったら、何のつもりだ……!」

「偉そうな口を叩くな! こんな情けない姿でもお前の首をへし折るぐらいは出来るんだよ!」

 

 腕に力を入れ、首を絞める。ティードの顔色が青黒くなる。

 

「どうだぁ? どんな気分だぁ? 散々こき使って見下してきた相手に主導権を握られる気分はぁ?」

 

 今までの鬱憤を晴らすかの如くティードを舐めた態度で話すイマジン。

 

「最後の最後でツキは俺に巡って来た!」

 

 イマジンにとってこれは賭けであった。ジオウ、ゲイツ、アクセルに敗れ、アナザーライダーの力を失ったイマジンは、身を潜めることを決意した。今に至るまでイマジンに三つの幸運が訪れていた。

 選んだ場所はシンゴが封印されている間。ティードがもしここで待機していたらその時点で命は無かったが、ビルドを相手にする為に不在となる。この間に部屋の隅に見つからない様に隠れた。これが一つ目の幸運。

 ビルドたちと戦い、疲労した状態で戻って来たティード。もし、ビルドたちに負けたおかげでティードに余裕は無く室内に居るイマジンに気付くことが出来なかった。万全の状態なら見つかっていた。これが二つ目の幸運である。

 途中、侑斗とフータロスが現れた時は心臓が止まる思いだったが、シンゴを助けることに夢中でイマジンの存在に気付かなかったし、探す時間も無い。これが三つ目の幸運。

 幸運の積み重ねによって、ティードの命運はイマジンの掌中にある。

 

「裏切る、気か……!」

「うるせぇ! どうせ損得だけの関係だ! お前のことなんて知るか! それに、最初から大嫌いだったんだよ! 空っぽ野郎が!」

 

 ここぞとばかりにティードを罵る。

 

「一体何をするつもりだ! 自分から現れやがって!」

 

 自分からのこのこと姿を現したイマジンに、クローズマグマは理由が分からず訊いてしまう。しかし、イマジンについて知っている者たちは、何をしようとしているのか凡そ察しが付く。

 

「お前、まさか……!」

「ティード! 俺はお前の為に戦ってやった! アナザーウォッチが壊れるまでなぁ! これで契約は完了だっ!」

「止めろ! 過去へ逃げる気だ!」

 

 イマジンが自分の命を救う為の最後の手段。契約を完了させ、ティードの記憶を通じての過去への逃亡。

 イマジンはティードの背に指先を押し当てる。門の様に開いて過去へタイムスリップをするだけ。

 

「ははははは! ──は?」

 

 彼は気付くべきであった。幸運がそう何度も続く筈が無いと。運命というものがあるとすれば、想像を絶する程に残酷であると。

 

「──どうした?」

「何で、何でだよ……!?」

 

 焦りに満ちたイマジンの言葉。契約完了。それだけで過去への扉が開く筈なのに──

 

「何で開かねぇ!」

 

 ──ティードにその扉が出現しない。

 

「何だと……?」

 

 これには様々なイマジンと戦ってきた侑斗も驚くしかない。こんな状況は初めて見る。

 

「在り得ない……過去が無いって言うのか……?」

 

 声を震わすイマジンに、ティードは強引に首を動かして背後を見る。

 

「契約完了って言ったな? まだ早い」

「な、何を……!」

『クウガァ』

 

 アナザーウォッチを起動させ、イマジンに押し当てる。すると、イマジンの体が崩れ始め、アナザーウォッチの罅の中へ吸い込まれていく。

 

「何だ!? 何だこれは!?」

「ひゃあははははははははははは! 『俺の力になれ!』 おめでとう! これで契約は終了だ!」

「嫌だぁ! 嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 イマジンがティードから離れようとするが、その体は砂の様に細かく分解されていく。伸ばした手が空を掴むが何も起こる筈も無く、悲痛な叫びを上げながらイマジンはアナザーウォッチへ吸収されてしまった。

 

「何、それ……」

 

 耳の奥に残るイマジンの絶叫。敵であったとしてもその最期に何も感じない筈が無い。

 

「くくく、くはははははは! 最後の最後まで俺に利用されるだけだったなぁ! ははははははははははは!」

 

 ティードが狂った様に甲高い声で笑う。撒き散らされる狂気に、ジオウたちの背筋は冷たくなっていく。

 その時、建物が突然揺れ始める。

 

「何だ!?」

「地震!?」

 

 また何か異変が起こることを警戒するジオウたち。揺れは激しくなり、天井から塵や小さな破片が落ちてくる。

 だが、徐々にこれが地震でないことに気付く。建物外から聞こえてくるのは破砕音。何かがこの城を破壊している。

 壁を突き破り、外から中に侵入してきたのは、一対の大顎。侑斗にとって見覚えのある忌々しい大顎。

 

「まさか……!」

 

 大顎が上に向けて振り上げられ、天井の一部が捲り上げられる。出来た大穴から覗き込むのは侑斗が倒した筈のアナザーゴウラムであった。

 

「生きてたのか……!」

 

 倒し切れなかったことを後悔する侑斗であったが、ゼロライナーで斬り裂いた時、アナザーゴウラムは間違いなく致命傷を負っていた。瀕死で虫の息状態であったが、落下した場所がアナザーゴウラムにとって幸運であった。

 そこは駐車場であり、放置された自動車が大量にあった。アナザーゴウラムはそれを餌にして飛翔出来るまで再生したのだ。

 

「よく来た。お前は、あいつと違って最後まで役に立つ。さあ、お前も俺と一つになれ」

『クウガァ』

 

 起動させたアナザーウォッチをアナザーゴウラムに向ける。妖しい光が放たれ、それを浴びたアナザーゴウラムが分解、吸収されていく。吸収するのはアナザーゴウラムだけでは無い。アナザーゴウラムと一体化したアナザーゼロライナーもアナザーウォッチの中へ入っていく。

 

「これでぇ! これでぇ俺は今度こそ、平成ライダーの歴史を終わらせられるっ!」

 

 イマジン、アナザーゴウラム、アナザーゼロライナーを吸収し切ったアナザークウガウォッチから闇が黒煙の様に噴き出し、金色の雷光を発する。

 

「闇だ! 闇だ闇だ闇だ闇だ闇だ闇だ! 俺の究極の闇で世界を包み込んでくれる!」

 

 ティードは全員に見せつける様にアナザーウォッチを握り、スイッチを押す為に親指を立てる。その形は、ジオウたちに向かってサムズアップをしているかの様に映った。

 

『クウガァ』

 

 溜め込まれた力が起動されることで開放され、黒い闇と金の光がティードを覆っていく。

 

「ライダーは俺一人だっ! ひゃははははははははははは! 俺だけが笑顔であればいい!」

 

 狂気に染まったティードがアナザークウガウォッチを体内に押し込む。途端、闇が周囲を蝕み、放たれる雷光が内壁を破壊していく。

 

「不味い! ここを離れるぞ!」

 

 崩壊していくティードの城からジオウたちは脱出し始める。

 

「はははははははははははははは!」

 

 独り残されたティードは狂笑し続ける。自分が放った闇が自らを侵食しようとも。

 肉体も心も、何もかも喰らい尽された時、最後に残ったウォッチがそれを告げる。

 

『クウガァ』

 

 

 ◇

 

 

 ティードの城から大分離れた場所にゼロライナーは停車。フータロスとシンゴが降りる。

 

「ここまで来りゃあひとまず安心だろ」

「大丈夫かな……」

「シンゴ、そう心配すんな。あいつらは平成ライダーだぞ?」

「平成ライダーって?」

「……そう言われると俺も詳しく知らねぇ」

 

 安心させるつもりが、逆に不安にさせる様なことを言ってしまうフータロス。自分でも失言だったと思うのか、フータロスは頭を掻く。その妙に情けなくて人間臭い仕草は、ティードは人の姿をしていたが全く人らしさを感じなかったせいもあって、シンゴは安心感を覚える。

 

「まあ、あれだ。あいつらがティードの奴をどうにかすれば──あん?」

 

 フータロスはティードの城を見て、訝しむ声を出す。シンゴもティードの城を見て驚く。最上階付近が黒い雲で覆われていた。

 

「何だありゃ……」

 

 黒い雲の中で金色の光が何度か瞬く。その光は鼓動そのものであった。

 

「やべぇことが起きてねぇか……?」

 

 フータロスの不安を的中させるかの様に、黒い雲が吹き飛び、中から異形が現れる。

 遠くから見ているフータロスたちが大きいと思える金色の外骨格の巨体。鎧の様に纏っており、覆われていない部分は黒い甲殻になっていた。

 額から伸びる計五本の金の角。茨の様に小さな棘が無数に生えている。真っ直ぐな中央の角に対し左右二本の角は長さが違い、右側が長く、左側は短い非対称。

 非対称なのは角だけではない。右半身は長く太い腕が一本、左半身からは右腕の半分の長さの腕が肩から二本、脇腹から一本生えていた。

 黒く染まった複眼。その姿に理性など無い。

 クウガが至る筈の究極の姿。『聖なる泉』と比喩される優しい心が枯れ果て、戦う為だけの生物兵器になる危険性があった。しかし、元からそんなものを持ち合わせていないティードは、究極に至った段階で完全に心を失い、ティードという存在は死んだと言える。

 残ったのはただ破壊をするだけの生物兵器。それも自分の力で究極に至ったのではなく、外部の力によって究極へ押し上げられたもの。

 それは究極と成長という矛盾する名を持った存在。

 世界に闇を齎す、究極であり究極ではない者(アナザーライジングアルティメットクウガ)

 




 アルティメットを飛び越えてライジングアルティメットを出しました。アルティメットとライジングアルティメットは別の存在と解釈したものと思って下さい。ちなみにライジングアルティメットのイメージは雌雄同体のクワガタです。
 作中でアナザーライジングアルティメットの目は黒と書きました。以前アナザーアルティメットが赤目なのは『ディードが自分の意思で怪物になることを選んだ』という解釈を頂きましたが、今回は別の解釈をしてみました
『アナザーアルティメットは全てシンゴの素質』。弟の為に自己犠牲を行えるシンゴだからアナザーアルティメットになれたと。
 ティードが融合したのは意識の無いシンゴを操縦する為、ロボットの操縦者ポジションみたいなもんです。だからアナザーアルティメットが撃破された時、シンゴ本人は無事で外付けのティードは消滅したと解釈します。アナザーライダー変身者は死なないので。
 作中でも書きましたが、作中設定でティード本人はアナザーAクウガまでが限界で他所の力を得てアナザーライジングアルティメットになりましたが、自分の限界を超えているので即黒目になって理性消失した訳ですね。

先にどちらが見たいですか?

  • IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
  • IFゲイツ、マジェスティ

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